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現代青年の友人集団における「空気」を読めない言動への対処行動

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心理学研究 2020 年 第 91 巻 第 4 号 pp. 000-000 原 著 論 文 Original Article 地域社会の崩壊やネットメディアの普及による親密 圏の変容は,現代青年の友人関係に不安定さをもたら している(土井,2014)。友人関係の取捨選択が可能 となったことで,現代青年は友人として選ばれない不 安や対立の恐れにさらされるようになった。さらに, 青年がもつ友人関係の悩みや不安が 2000 年を境に上 昇していることが報告されており(内閣府,2014), 現代青年が友人関係に抱く不安や懸念の高まりが示さ れている。 現代青年の友人関係 流動化や不安の高まりに伴い,現代青年の友人関係 は変容をとげている。岡田(1995, 1999)は現代青年 の友人関係の特徴を,互いの内面に踏み込まない「自 己閉鎖」,友人からの評価を懸念する「自己防衛」,友 人を不快にさせないよう気をつかう「友だちへのやさ しさ」,表面的で円滑な関係を重視する「群れ」の四 つの側面から明らかにした。さらに,岡田(2007a)は, それぞれの得点の高さから友人関係を分類し,伝統的 な友人関係である「個別関係群」のほかに,現代的な 友人関係の形として「群れ志向群」と「関係回避群」 があることを明らかにした。 「群れ志向群」は,表面的で円滑な関係を志向する 友人関係である(岡田,2007a)。「群れ志向群」は, 集団での享楽的な関係を求め,常に友人と一緒にいる ことを志向する(岡田,2007b)。また,群れとしての 関わり方が,先行世代と比較して有意に増加している という報告もあり(白井・大谷,2017),群れとして の友人関係は現代青年に特徴的な形であるといえる。 他方で「関係回避群」は,友人との関係性を遠ざけ る友人関係の形である(岡田,2007a)。「関係回避群」 では,当たり障りのない会話が多く,内面的な関わり を避ける傾向にある(岡田,2007b)。内閣府(2004,

現代青年の友人集団における「空気」を読めない

言動への対処行動

1, 2

小岩 広平

 東北大学 

小松 眞峰

 仙台市教育委員会 

若島 孔文

 東北大学

Coping behavior against the inability to “take a hint” in a contemporary adolescent group of friends Kohei Koiwa (Tohoku University), Mao Komatsu (Sendai City Board of Education),

and Kobun Wakashima (Tohoku University)

In contemporary adolescent friendships, there is a problem of people attacking those who fail to “take a hint.” In this study, we introduced four scenarios in which one friend failed to “take a hint” based on Bateson’s concept of the communication mode. We also investigated the differences in the coping behavior that the adolescent chose, depending on their relationship with their group of friends. We conducted a questionnaire survey of 226 university students. As a result, four types of coping behaviors for people who failed to “take a hint” were found: “Ignore,” “Criticize,” “Jeer or Tease,” and “Follow Along.” Furthermore, an adolescent’s relationship with their friend group was associated with their coping behavior. Adolescents who built an avoidant friendship tended to choose “Ignore” as their coping behavior. On the other hand, adolescents who built a mob-like friendship were likely to choose “Jeer or Tease.” This discussion deals with the possibility of becoming sensitive to the people who fail to “take a hint,” if the adolescent needs the friendships in the group.

Key words: contemporary adolescents, “taking a hint,” communication mode, friendship, coping behavior.

The Japanese Journal of Psychology

J-STAGE Advanced published date: September 15, 2020

Correspondence concerning this article should be sent to: Kohei Koiwa, Graduate School of Education, Tohoku University, Kawauchi, Aoba-ku, Sendai 980 9576, Japan. (Email: [email protected]

1 本研究は,2019 年度東北大学大学院教育学研究科大学院生

プロジェクト型研究の助成を受けて行われた。

2 本研究の結果の一部は,日本家族心理学会第 36 回大会(2019)

において発表された。

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2019)の社会調査でも,悩みの相談相手に友人を選ぶ 青年の割合の大幅な低下が報告され,心を打ち明けな い友人関係の在り方が示唆されている。一方で,現代 青年の友人関係において,内面を打ち明けるような関 わりはむしろ増加しているという知見もあり(白井・ 大谷,2017),回避的な友人関係の増加については, 議論が分かれているところである。これらの議論をも とに,岡田(2007b, 2016)は,回避的な友人関係が現 代的なものであるかどうかには議論の余地があるもの の,現代には回避的な友人関係を築く青年が一定の割 合でいることを結論付けている。 これまで示されてきた知見を整理すると,現代にお いて,(a)友人関係における不安や懸念が高まってい ること,(b)群れとしての友人関係が促進されている こと,(c)回避的な友人関係を築く青年が多数いるこ との 3 つがいえる。さらに,友人関係の不安定化やそ れに伴う変化により,現代青年の友人関係において重 視されるようになったのが「空気」の読み合いである。 現代青年における「空気」の実態 我が国において「空気」は,かねてより重要な規範 として日本人の判断に大きな影響を与えてきたとされ る(山本,1977)。「空気」に関連することとして,自 己観の文化差を検討した北山・宮本(2000)は,東洋 社会において,集団との関係性に依存した自己観を持 ち,他者志向的な価値観が根付きやすいことを報告し ている。また,コミュニケーションの文化差を検討し た鍋倉(1997)は,我が国のように異文化交流の少な い国においては,ルールの共通性を前提としてコミュ ニケーションが行われるため,会話の文脈から相手の 意図を察することが求められるとしている。さらに, 社 会 的 な 規 範 の 強 さ を 検 討 し た Gelfand, Nishii, & River(2006)は,集団的な関係性を重視しつつ社会 規範からの逸脱に非寛容な国として日本を説明してい る。これらの文化的背景から,我が国には「空気」を 重視する価値観があったといえる。 一方で,現代青年の友人関係における「空気」は, 絶対的な規範や畏怖の対象となりつつある(土井, 2008)。「相手や場面を認識する能力」を重視する価値 観の高まりや(文化庁,2017),若い世代ほど空気に 過敏になっていることを示すデータなど(朝日新聞, 2013),友人関係における「空気」が重要な規範となっ ていることを示す知見がある。「空気」の影響力が強 まる一方で,「空気」を読むことができない人物への 攻撃行動が,学校現場では問題となりつつある。内藤 (2009)は,「空気」の中の一つとして「ノリ」を位置 づけ,「空気」や「ノリ」から逸脱した生徒がいじめ の被害者になってしまうとしている。さらに堀(2015) は,「空気」を読めなかった者が叱責され,徹底的に 排除される危険性を指摘している。 このように,現代青年の友人関係における「空気」 は攻撃やいじめに結び付くリスクを含むが,概念の広 さにより,定義や場面の想定が難しいため,心理学的 な検討が少ない。そのため本研究ではまず,従来の「空 気」に関する研究を概観し,「空気」の定義を行う。 空気の定義 従来の研究における「空気」の扱いは研究者によっ て異なるが,多くに共通する側面として「ふるまいの 基準」であることがある。日本人にとっての「空気」 について検討した山本(1977)は,空気を「判断の基 準」として扱っている。山本(1977)によると日本人 には,論理的判断と「空気」による判断の二つがあり, 日本人の「空気」による判断を優先する傾向を指摘し ている。また,日高・小杉(2012)は,「空気」のイメー ジの調査を行い,「空気」と「暗黙のルール」の類似 性について考察を行っている。さらに,内藤(2009) によると,現代青年の友人関係では「空気」によって 秩序が形成されており,この秩序が規範の準拠点とし て機能していることを示している。これらの研究によ り,「空気」にはその人のふるまいや行動を決定する 秩序や規範の側面があるといえる。 また,「空気」と類似の概念に,「世間」がある。世 間とは,「自分が関わっている,お互いに顔見知りの 人間関係」である(阿部,1995)。従来の研究によると, 世間の最も重要な要素は,利害関係への配慮である。 例えば,人々が「世間への迷惑」の回避を基準に行動 選択するように,日本人は相手に望まれているふるま いであるかどうかを重視する(佐藤,2001)。一方で, 「空気」は「世間」の一部が機能した状態であるとい う指摘のように(鴻上,2006),「空気」と「世間」の 類似性が考察されている。したがって,「空気」にも 同じ特徴があると考えられる。 これらの研究をもとに,本研究では「空気」を「そ の場にいる人々に望まれているかどうかを基準とし た,その場面でのふるまいの規範」と定義する。 空気を読むことの失敗とコミュニケーション・モード との関連 空気を読めない人物への攻撃行動を検討するために は,現代青年が「空気を読めない」と判断する場面の 検討が必要である。本研究では空気を「適切なふるま いの規範」として定義しているため,コミュニケーショ ン や ふ る ま い 方 に 関 連 す る 概 念 で あ る,Bateson (1972 佐藤訳 2000)のモード理論を取り上げる。モー ドとはコミュニケーションに割り振られるラベルであ り,「遊び」,「まじめ」,「空想」,「神聖」,「比喩」な どがある。Bateson(1972 佐藤訳 2000)によると, コミュニケーションの送り手は,受け手が適切なモー ドをラベリングできるように,姿勢・身振り・表情・

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声の抑揚などを介してシグナルを発する。一方で,コ ミュニケーションの受け手は,送り手が発するシグナ ルや文脈から,送り手のコミュニケーションが,「遊び」 としてのものなのか,「非遊び(まじめ)」のものなの かを,瞬時にラベリングする。そして,ラベリングに 合わせた行動を選択するというのが,Bateson(1972 佐 藤訳 2000)のモード理論である。 大石(2009)は,友人関係において空気を読めない と感じた場面について,自由記述により調査を行って いる。その結果,「自分一人だけが楽しそうな場面」, 「一人だけノリが悪い場面」などの場面において,現 代青年はその人を「空気が読めない」と判断すること が示された。Bateson(1972 佐藤訳 2000)のモード 理論をもとに,大石(2009)の調査結果を読み解くと, 現代的な友人関係において,適切なモードを割り振れ なかった場面において,空気を読めないと判断される ことが考えられる。例えば,現代青年が最も空気を読 めないと判断しやすい「一人だけが楽しそうな場面」 は,周囲の人たちが「まじめ」のモードの振る舞いを している場面である。この場面において,「まじめ」 のモードで返さなくてはならないにも関わらず,その 人が「遊び」のモードを割り振ったふるまいをしてし まった場合に,周囲はその人を「空気が読めない」と 判断するといえる。そのため本研究では,「周囲のコ ミュニケーション・モードに合わせることに失敗した 場面」を「空気を読むことを失敗した場面」として設 定する。 空気を読めない言動への対処行動 空気を読めない言動や対人 藤場面に遭遇した際の 対処行動に関する研究もいくつか存在する3。対人 藤における対処行動の研究に,吉野(1987)がある。 吉野(1987)は,対人関係における 藤への対処行動 を整理し, 藤を表面化させ根本的な解決を図る「強 硬型」,理性的に 藤と折り合いをつける「柔軟型」, 藤を自分の中に留めて表面化させない「放置型」の 三つに分類している。 また大石(2009)は,空気を読めない人物に遭遇し た際の対処について,現代青年を対象とした調査を 行った。その結果,最も現代青年にとられやすい対処 として,「その発言を放置する」のように,その人物 との間に距離を置くことがあることが示された。他方 で大石(2009)の調査では,「はっきりと注意する」, 「冗談めかして指摘する」など,空気を読ませようと する対処もみられている。大石(2009)の結果につい て,吉野(1987)の対処行動の分類との間に,類似点 がある。大石(2009)の「その場の雰囲気が悪くなら ないようにフォローする」という対処は,その場での ふるまいを理性的に選択している点で,「柔軟型」の 対処行動と類似する。さらに,大石(2009)の「放置 する」といった行動は,空気を読めなかったことによ る 藤を表面化させていない点で「放置型」と,「はっ きりと注意する」などの対処行動は, 藤を表面化さ せている点で「強硬型」と,それぞれ類似する。 一方で,大石(2009)で示された空気を読めない言 動への対処は,「冗談めかして指摘する」などユーモ アを用いた対処行動がある点で,吉野(1987)とは異 なる。現代青年が友人に欠点の改善を求める際に「い じり」を多く用いているという報告(瀧澤,2015)を 踏まえると,空気を読めない言動への対処として攻撃 的ユーモアが用いられることも考えられる。したがっ て,空気を読めない言動に対しては,吉野(1987)の 「強硬型」,「放置型」,「柔軟型」のほかに,ユーモア を含めた関わりを含めた,4つの対処行動があると想 定される。 本研究の目的 これまでの議論のように,現代青年の友人関係にお いてお互いに空気を読み合うことが重視されており, 空気を読むことに失敗した場面で攻撃行動が生じる危 険性が指摘されている。しかしながら,空気を読めな い言動への対処行動に関する知見は不足しており,対 処行動に影響を与える要因の検討は行われていない。 上述した問題について検討するため,本研究では空気 を読めない言動への対処行動を分類する。また,対処 行動に影響を与える要因として,友人関係とコミュニ ケーション・モードの二つを取り上げる。具体的には, 岡田(2007a)の友人関係尺度を用い,友人関係を類 型化した上で,友人関係による対処行動の違いを明ら かにする。また,コミュニケーション・モードのうち, 友人関係において多く交わされると考えられる「遊び」 と「まじめ」の二つを取り上げ,それぞれの場面によ る対処行動の差異を検討する。 なお,友人関係が対処行動に与える影響として,以 下のような予測が可能である。まず,空気が現代青年 の友人集団を維持するための秩序として機能している ことや(内藤,2009),群れ志向をもつ青年が集団で の友人関係を重視することを踏まえると(岡田, 2007b),群れ志向群において,積極的な対処が優先さ れると考えられる。また,お互いに距離をおいた対人 関係を築いている現代青年にとって,空気を読めない 言動は適度な距離感の阻害につながるとされる(土井, 2008)。土井(2008)の指摘する距離を保った関係性は, 岡田(2007b)の関係回避群と類似しているため,関 係回避群は空気を読めない言動に過敏になっているこ とが考えられる。以上より,群れ志向群と関係回避群 はどちらも,空気を読めない言動に対して,吉野(1987) 3 本研究では,「対処行動」について和田(2000)をもとに,「問 題が起こった時に行われる行動」と定義した。

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の「放置型」のような対処行動を選択せず,吉野(1987) の「強硬型」や瀧澤(2015)の「いじり」のような積 極的な対処を用いると予想される。次に個別関係群の 予測について述べる。空気は友人集団において重視さ れる秩序であるが(内藤,2009),個別関係群は集団 よりも個別の関係性を重視しているとされる(岡田, 2007b)。したがって個別関係群は,集団の維持よりも, 空気を読めない人物との関係性を重視するため,空気 を読めない人物に比較的寛容であり,ほかの群よりも フォロー得点が高いことが予想される。 一方で,コミュニケーション・モードが対処行動に 与える影響としては,空気による重要度の違いが影響 すると予想される。「遊び」と「まじめ」で比較した 場合,冗談としてのやりとりを期待される「遊び」の モードよりも,真剣なやりとりを期待されている「ま じめ」のモードの方が,人間関係を築く上で重要であ ると考えられる。重要度の高い 藤であるほど,積極 的な対処が行われ,柔軟な対処が選択されなくなると いう吉野(1987)の知見を踏まえると,「まじめ」場 面において,「柔軟型」,「放置型」の対処行動は少なく, 「強硬型」に類するような対処行動が選択されやすい と考えられる。 方  法 調査対象 調査対象は日本の大学生 226 名(男性 143 名,女性 82 名,年齢無回答 1 名,M = 19.32,SD = 0.88)であっ た。 調査時期 調査時期は,2019 年 7 月であった。 質問紙の概要 回答者には,高校時代の「仲良しグループ」の想起 を求め,その友人たちとの当時の関係性を測定した。 また,「仲良しグループ」のメンバーの一人が空気を 読むことに失敗した場面を四つ提示し,その場合に行 うであろう対処行動を測定した。なお,本研究では空 気を読めない言動が 藤につながりうる状況として, 「仲良しグループ」の中で行われるコミュニケーショ ンを検討した。 さらに本調査は,具体的な人物の想起を求め,その 友人が空気を読めなかった場面を提示しており,いじ めや攻撃行動を促進するリスクがあった。そのため, 藤野・長沼(2013)の倫理的配慮を参考に,調査対象 を大学生とし,高校時代の友人関係の想起を求める調 査とした。 質問紙の構成 友人関係尺度 岡田(2007a)が作成した尺度であり, 現代青年の友人関係や距離の取り方を測定するために 作成されたものである。本研究では,高校時代の「仲 良しグループ」を想定して回答を求めた。本尺度の下 位尺度としては,友人との内面的関わりを避ける「自 己閉鎖」,友人から自分が否定的に評価されないよう 気をつかう関わりを示す「自己防衛」,友人を不快に させないよう気をつかう関わりを示す「友だちへのや さしさ」,楽しく円滑な関係である「群れ」があり, 計 35 項目により構成される。なお,岡田(2007a)に おいて尺度化され,信頼性が検討されている尺度であ るため,本研究では下位尺度の合計得点を変数として 用いている。 教示の仕方 場面については,「これから,4 つの 場面を提示します。あなたが高校生のころ,『仲良し グループ』と一緒にいるときに,もしこのような場面 があったら,あなたはどのような行動をとるでしょう か。想像して答えてください。」と教示した。 場面の設定 Bateson(1972 佐藤訳 2000)のコミュ ニケーション・モード理論を基盤とし,大石(2009) をもとに場面を作成した。「まじめ」のモードの失敗(A さんが一人だけ楽しそうな場面,A さんが話をきちん と聞かない場面)と「遊び」のモードの失敗(A さん のノリが悪い場面,A さんがしらけさせた場面)の 4 つの場面を作成した(Table 1)。それぞれの場面とし ては,社会的文脈や周囲の様子により,その場面での コミュニケーション・モードを規定し,A さんがその モードから逸脱した言動を行った場面を設定した。場 面 1 を例に示すと,友人からの悩み相談という文脈や 周囲が真剣に解決策を考えている状況により,この場 面が「まじめ」のモードのやり取りであることを示し た。これに対して A さんのふるまいとして,「関連し た自慢話」や「明るいテンション」など,「まじめ」 のモードから逸脱した言動を設定した。 A さんについて 「同じ仲良しグループにいるが, 二人きりで話すことはない人物」の想起を求め,その 人物を A さんとした。なお,「仲良しグループ」の中 で「二人きりで話すことがない人物」の想定が難しい 可能性があったため,分析では操作チェック項目にお いて「まったく想像できなかった」と回答した人を除 外した。 妥当性の確認 空気を読めない場面の妥当性の検討 のため,調査ではそれぞれの場面で,「このときの A さんの言動は,『空気が読めている』と感じますか」 と尋ね,「はい」,「いいえ」の二件法での回答を求めた。 その結果,「いいえ」と答えた割合は,場面 1 では 95.29%,場面 2 では 95.29%,場面 3 では 94.24%,場 面4では 92.67% であった。いずれの場面でも,その人

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物を「空気を読めない」と評価した割合は 90% を超 えていたため,内容的妥当性が確認されたと判断した。 空気を読めない言動への対処行動 大石(2009)を もとに,14 項目を設定した。それぞれの対処行動に ついて,「まったく当てはまらない」,「あまり当ては まらない」,「どちらかというと当てはまらない」,「ど ちらかといえば当てはまる」,「少し当てはまる」,「非 常に当てはまる」の 6 件法を用いて回答を求めた。な お大石(2009)では,認知的側面と行動を同時にカテ ゴリ化しているが,本研究ではその場面での行動に限 定して項目を設定した。例えば,「その場の雰囲気が 悪くならないようにフォローする」のように意図と行 動が同時に含まれているカテゴリでは,行為者の意図 を除外し,「A さんの発言に理解のあるようなことを 言う」という項目に変更した。 操作チェック 提示した 4 つの場面について「これ らの場面について,どの程度思い浮かべることができ ましたか」と質問し,「まったく当てはまらない」,「あ まり当てはまらない」,「どちらかというと当てはまら ない」,「どちらかといえば当てはまる」,「少し当ては まる」,「非常に当てはまる」の 6 件法での回答を求め た。操作チェックの記述統計は M = 4.41,SD = 1.38 であった。平均値が理論的平均点である 3.5 点を超え ているため,調査対象の多くが提示した場面を想像す ることができたと判断した。 結  果 空気を読めない言動への対処行動の分類 空気を読めない言動への対処行動を分類するため, 最尤法・プロマックス回転を用いて因子分析を行った。 分析に際して,以下のような手続きで分析を行った。 まず,高校時代の友人関係を想起できなかった 27 名 と,操作チェック項目において提示場面を「まったく 想像できなかった」と回答した 8 名を除き,191 名(男 性 119 名,女性 72 名,M = 19.33,SD = 0.90)を分析 対象とした。次に,提示した場面による因子構造の違 いや,含まれている項目の差異を検討するため,4 つ の場面についてそれぞれ因子分析を行った。その結果, すべての場面において 4 因子が抽出され,一貫した因 子構造が確認された。そのため,14 項目の平均値を 算出し,その値を項目得点として再度因子分析を行っ た(Table 2)。 抽出された因子のうち「A さんの発言を無視する」 のように,その言動への反応を回避する項目が含まれ る因子を,「放置」と命名した。次に,「A さんのこと を非難する」など,その人物の言動を責める項目が含 まれる因子を「叱責」と命名した。また,「A さんを いじったり,ツッコミを入れたりする」など,ユーモ アを交えつつその言動に言及する項目が含まれる因子 を「いじり・からかい」と命名した。さらに,「A さ んの発言に理解のあるようなことを言う」など,A さ んの言動に味方する項目が含まれる因子を「フォロー」 と命名した。 クロンバックの α 係数は,「放置」が α = .914,「叱責」 が α = .883,「いじり・からかい」が α = .852,「フォロー」 が .863 であった。それぞれの因子は,α 係数が .85 以 上であるため,十分な信頼性が確保されているといえ る。 また,対処行動間の相関を算出した結果,「いじり・ Table 1 本研究で提示した場面 空気の種類 場面 提示した場面 まじめ A さんが話をきちんと 聞かない場面(場面 1) 放課後,「仲良しグループ」で話していました。「仲良しグループ」の一人が,「実 は…」と最近の悩みを打ち明けてくれました。みんなが真剣にその悩みについて 解決策を考えている中で,A さんは「この前,自分もさぁ」と,その人の悩みに 関連した自慢話を明るいテンションで話し始めました。 A さんが一人だけ楽し そうな場面(場面 3) 文化祭が近い時期,クラスの出し物を決めなければいけない締め切りが迫ってい ました。あなたのクラスでは,出し物が決まらず焦っていたため,放課後に「仲 良しグループ」で真剣に意見を出し合っていました。しかし,A さんだけが現実 的ではないふざけた案を繰り返し出し続けました。 遊び A さんがしらけさせた 場面(場面 2) 昼休み,あなたの「仲良しグループ」は談笑をしていました。そのとき,グルー プの中心的な人物が,過去の失敗に関する冗談を言いました。その冗談に対して, グループのメンバーはみんな笑っていました。しかし,Aさんは一人だけ笑わずに, 「なにがおもしろいの?」と言いました。 A さんのノリが悪い場 面(場面 4) あなたの「仲良しグループ」の間では,担任の先生のモノマネが流行っていました。 モノマネの内容は,担任の先生の特徴的な話し方をマネして話すという,誰にで もできるような簡単なものでした。仲良しグループのメンバーが それぞれ順番に モノマネをし,A さんの順番になりました。ところが A さんは,モノマネをせず に普段の声のトーンで会話を続けました。

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からかい」と「放置」の間に負の相関がみられた(r = .29, p < .01)。一方で「いじり・からかい」と「叱責」 との間に弱い正の相関が(r = .26, p < .01),「いじり・ からかい」と「フォロー」の間に弱い正の相関が(r = .27, p < .01),それぞれ示された。さらに,「フォロー」と 「 叱 責 」 の 間 に 弱 い 正 の 相 関 が み ら れ た(r = .23, p < .01)。 さらに,空気の種類による対処行動の違いを検討す るため,「遊び」および「まじめ」のモードの空気を 読めなかった場面の対処行動について,それぞれ最尤 法プロマックス回転による因子分析を行った。分析に は,各モードに含まれる 2 つの場面の平均値を用いた。 その結果,抽出された因子と含まれている項目は,同 様であった。 友人関係の類型 友人関係尺度の項目得点を変量とし,Ward 法によ るクラスタ分析によって,回答者を分類した(Table 3)。 友人関係を分類した理由としては,現代的な友人関係 が「関係回避群」,「群れ志向群」に二極化されるとす る岡田(2007b)の理論に基づいているためである。 さらに,友人関係尺度は 3 クラスタに分類されること が想定されているため(岡田,2007b),3 クラスタに 分類可能な基準点として,距離係数 .15 を指標とした。 それぞれのクラスタの特徴を明らかにするため,各 クラスタの友人関係尺度の平均値を求め,クラスタ間 での一元配置分散分析を行った。その結果,下位尺度 についてすべて p < .01 で有意な差がみられた。なお, 本研究により得られたクラスタの構造を岡田(2007b) と比較すると,第 1 クラスタは,「自己閉鎖」以外の 標準得点が低い点で「個別関係群」と,第 2 クラスタ は「友達へのやさしさ」以外の得点が高い点で「関係 回避群」と,第 3 クラスタは「群れ」「友だちへのや さしさ」の得点が高い点で「群れ志向群」と,それぞ れ主な特徴が類似していた。そのため,クラスタの命 名は岡田(2007b)に従った4 Table 2 空気を読めない言動への対処行動の分類 項目文 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 第 1 因子「放置」(α = .914)     (4)A さんの発言を無視する .904 .054 .023 .019 (7)A さんの発言が聞こえないふりをする .902 .038 .010 .016 (1)A さんの発言に極力ふれないようにする .820 .114 .026 .076 (13)Aさんの発言に対して,何かを言うのを控える .760 .039 .012 .111 第 2 因子「叱責」(α = .883) (10)Aさんのことを批判する .034 .970 .035 .001 (6)Aさんのことを非難する .069 .842 .017 .118 (14)A さんの発言をはっきりと注意する .084 .719 .043 .080 第 3 因子「いじり・からかい」(α = .852)   (11)A さんをいじったり,ツッコミを入れたりする .077 .042 .914 .013 (8)A さんを茶化したり,冷やかしたりする .100 .046 .805 .082 (5)ふざけた様子で A さんの発言について指摘する .012 .117 .768 .113 第 4 因子「フォロー」(α = .863)   (12)A さんの発言に理解のあるようなことを言う .101 .130 .026 .902 (9)A さんの言っていることに合わせた発言をする .002 .042 .108 .829 (3)Aさんをかばうようなことを言う .083 .125 .093 .711 因子間相関 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ .153 .044 .313 Ⅱ .247 .267 Ⅲ .297 Ⅳ 4 同尺度を用いた岡田(2007a)と比較すると,クラスタの構 造が,部分的に異なっていた。関係回避群と比較した群れ志向 群の自己閉鎖得点は,本研究や岡田(2007b)においては低く, 岡田(2007a)では高かった。また,自己防衛得点についても同 様であった。本尺度のクラスタの構造の一貫性については,検 討の余地があるといえる。

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友人集団との関係性とコミュニケーション・モードが 対処行動に与える影響 友人集団との関係性と求められているコミュニケー ション・モードが空気を読めない言動への対処行動に 与える影響を明らかにするため,対処行動を従属変数, コミュニケーション・モードの種類と友人関係を独立 変数として,それぞれ二要因分散分析を行った(Table 4)。「放置」を従属変数とした結果,友人関係の主効 果がみられた(F(2, 191) = 5.23, p < .01)。多重比較の 結果,群れ志向群(M = 9.87)よりも,関係回避群 (M = 12.10)のほうが「放置」の得点は高いことが示 された(t = 3.26, p < .01)。また,コミュニケーション・ モードの主効果もみられており(F(2, 191) = 69.26, p < .01),「遊び」のモードを求められた場面(M = 9.86) よ り も,「 ま じ め 」 の モ ー ド を 求 め ら れ た 場 面 (M = 12.13)のほうが「放置」の得点が有意に高いこ とが示された。 次に,「叱責」を従属変数とした場合にコミュニケーショ ン・モードによる差 が みられ た(F(2, 191) = 110.18, p < .01)。「遊び」のモード(M = 5.33)よりも,「まじ め」のモードを求められた場面(M = 7.76)において, 叱責得点が有意に高いことが示された。 さらに,「いじり・からかい」を従属変数として分 散分析を行った結果,友人関係の主効果がみられた (F(2, 191) = 6.30, p < .01)。多重比較の結果,個別関係 群(M = 9.61)と関係回避群(M = 9.70)よりも,群 れ志向群(M = 10.90)のほうが,「いじり・からかい」 得点がそれぞれ高いことが示された(t = 2.91, p < .01; t = 2.92, p < .01)。 一方で,「フォロー」を従属変数として分散分析を 行った結果,コミュニケーション・モードによる主効 果がみられた(F(2, 191) = 47.13, p < .01)。「まじめ」 のモードのふるまいを求められた場面(M = 6.76)よ りも,「遊び」としてのふるまいを求められた場面 (M = 7.85)において,「フォロー」得点が有意に高い ことが示された。 さらに,「まじめ」場面(場面 1・場面 3)および「遊 び」場面(場面 2・場面 4)における対処行動の違い を検討するため,それぞれの場面を独立変数,対処行 動得点を従属変数として,対応のある t 検定を行った。 「まじめ」のモードとして設定された場面を比較した ところ,場面 1 よりも場面 3 での「放置」得点および 「 叱 責 」 得 点 が 高 く(t = 2.82, p < .01; t = 4.74, p < .01),「フォロー」得点が低いことが示された (t = 1.73, p < .01)。一方で,「遊び」のモードとして設 定された場面では,場面 2 よりも場面 4 において「放 置」得点は低く(t = 6.36, p < .01),「いじり・からかい」 得点は高いことが示された(t = 4.32, p < .01)。 考  察 空気を読めない言動への対処行動の分類 空気を読めない言動への対処行動を分類した結果, 「放置」,「叱責」,「いじり・からかい」,「フォロー」 に分類された。本研究において得られた 4 因子は,先 行研究との類似点と相違点がみられている。吉野 (1987)は 藤への対処行動を,「強硬型」,「柔軟型」, 「放置型」の三つに分類しているが,本研究における「叱 責」は, 藤を表面化させている点で吉野(1987)の 「強硬型」と類似している。また,「放置」は吉野(1987) の「放置型」と,「フォロー」は吉野(1987)の「柔 軟型」と,それぞれ対応する。一方で,「いじり・か らかい」は,大石(2009)や瀧澤(2015)において指 摘されていたものの,吉野(1987)においてみられな かった対処行動であった。このことについて,空気を 読めない言動は,吉野(1987)が想定していた対人 藤場面よりもあいまいな 藤であるため,多義性をも たらせながらも相手の言動を指摘する方法としてユー モアが用いられる可能性があると考えられる。 また,相関係数を比較すると,「叱責」,「いじり・ からかい」,「フォロー」の間にはそれぞれ弱い正の相 関がみられている。「叱責」と「フォロー」は,対処 行動の質が大きく異なるが,両者の間には有意な正の 相関がみられた。これらの対処行動の共通点は,空気 を読めない言動に言及しているという点である。すな Table 3 友人関係の類型 全体 関係群個別 (n = 49) 関係 回避群 (n = 107) 群れ 志向群 (n = 35) F 値 多重比較結果 自己閉鎖 M 51.21 48.04 54.89 44.43 F = 21.65** 1 = 3 < 2 SD 9.99 8.99 9.44 7.84 Z 0.32 0.37 0.68 自己防衛 M 30.66 22.35 35.99 26.00 F = 122.83** 1 < 3 < 2 SD 8.17 5.52 5.32 5.51 Z 1.02 0.65 0.57 友だちへのやさしさ M 38.59 34.12 40.22 39.86 F = 26.93** 1 < 2 = 3 SD 5.59 5.81 4.93 3.47 Z 0.80 0.29 0.23 群れ M 12.94 10.96 12.99 16.00 F = 51.74** 1 < 2 < 3 SD 2.39 2.44 2.78 1.26 Z 0.73 0.02 1.08 注) 1 = 個別関係群,2 = 関係回避群,3 = 群れ志向群 **p < .01

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わち,対処の方向性は異なるものの,空気を読めなかっ た言動に対して関わろうとした点で共通しているた め,「フォロー」と「叱責」の間には相関が示された と考えられる。一方で,「いじり・からかい」が「叱責」 「フォロー」との間にそれぞれ弱い正の相関がみられ た。ユーモア研究において,攻撃的な印象を弱めつつ 相手を非難するためにからかいが用いられる場合があ ると報告されているが(Martin, 2007),空気を読めな い言動へのからかいは Martin(2007)と一致する。す なわち,空気を読めない場面における「いじり・から かい」は,相手を非難したり,空気を読ませるように フィードバックしたりする側面があると推測される。 一方で,「いじり・からかい」は「フォロー」との相 関も示されている。いじり・からかいはユーモアを含 んでいるため,その言動を笑いに変えている点で,空 気を読めない言動をフォローする側面もあると考えら れる。 コミュニケーション・モードによる対処行動の差異 空気を読めない言動への対処行動について,コミュ ニケーション・モードによる差異がみられた。まず, 「まじめ」場面において「叱責」得点が高く,「フォロー」 得点が低かったことについて,本研究の予測と一致す る結果となった。対人 藤の研究では, 藤の重要度 によって対処行動が異なることが示されているが,「遊 び」の空気と「まじめ」の空気では,空気の重要度が 異なることが予想される。すなわち,冗談としてのや りとりを期待される「遊び」のモードよりも,真剣な やりとりを期待されている「まじめ」のモードの方が, 人間関係を築く上で重要であるため,叱責に結びつき やすく,フォローが選択されることが少ないと考えら れる。 他方で,「放置」得点が「遊び」場面よりも「まじめ」 場面で高いことについて,本研究の予測と一致しない 結果となった。この点について,対処行動がその場面 の重要性とともに,場面に適しているかを基準にして 選択されるためであると考えられる。例えば,「遊び」 場面で空気を読めない言動への反応を回避することに より,その場面での 藤を強めてしまうと考えられる。 反対に,「まじめ」な空気を読めなかった人物を擁護 すると,対処行動を行った人物も攻撃のターゲットと なってしまう危険性がある。このように,対処行動は その場面に適しているかどうかを基準として選択され る側面もあるため,「遊び」場面では放置が選択され ない可能性がある。 一方で,「いじり」やからかいについては,コミュ ニケーション・モードによる差異はみられなかった。 「いじり」やからかいは,「まじめ」場面・「遊び」場 面のどちらにも起こりうることが推察される。この点 について,からかいがもつ多義性の性質が関連すると 考えられる(Keltner, Young, Heerey, Oemig, & Monarch, 1998)。例えば,「遊び」の空気を読めなかった者をか らかった場合,からかいにはユーモアの側面が含まれ ているため,その言動に積極的に関わっても,その場 面が 藤的になるリスクは低い。他方で,からかいに は攻撃としての側面も内包されているため,「まじめ」 の空気を読めなかった者をからかった場合でも,その 人の味方をしているとは受け取られず,自身が周囲か Table 4 友人関係とコミュニケーション・モードが空気を読めない言動への対処行動に与える影響 個別関係群 (n = 49) 関係回避群(n = 107) 群れ志向群(n = 35) モードの 主効果 友人関係の 主効果・ 多重比較 交互作用 放置 「まじめ」のモード 12.26(4.61) 13.07(3.70) 11.06(3.80) F = 69.26** F = 5.23**3 < 2 ns 「遊び」のモード 9.76(4.03) 11.12(3.68) 8.69(3.39) 叱責 「まじめ」のモード 7.63(2.90) 7.58(2.96) 8.07(2.82) F = 110.18** ns ns 「遊び」のモード 5.24(2.37) 5.62(2.23) 5.14(1.73) いじり・からかい 「まじめ」のモード 9.47(3.45) 9.49(2.76) 10.79(3.68) ns F = 6.30** 1 = 2 < 3 ns 「遊び」のモード 9.76(2.94) 9.90(2.79) 11.01(3.09) フォロー 「まじめ」のモード 6.50(1.94) 7.02(2.17) 5.99(1.93) F = 47.13** ns ns 「遊び」のモード 7.42(2.25) 8.27(2.72) 7.83(2.56) 注)1 = 個別関係群,2 = 関係回避群,3 = 群れ志向群 **p < .01

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ら責められることは少ないと考えられる。このように, 空気を読めない人へのからかいは,多義的な性質によ り,「遊び」,「まじめ」のどちらの場面にも用いられ ると考察される。 友人関係が対処行動に与える影響 友人関係によって空気を読めない言動への対処行動 が異なることが示された。まず,群れ志向群よりも関 係回避群において,「放置」得点が高いことが明らか になった。また,ほかの群と比較して群れ志向群は, 「いじり・からかい」を選択しやすいことも示唆された。 これらの結果は,群れ志向群が空気を読めない言動に 積極的に関わるという本研究の予測と一致していた。 すなわち,群れとしての友人関係では,集団内での規 範が重視されるため,空気を読めない言動に対して放 置が困難であると考察される。また,群れ志向群は, ユーモアを用いてその言動を指摘することで,空気を 読めない言動によって揺らいだ友人関係を維持しよう とすることも推察される。 一方で,「関係回避群」が選択する対処行動は,予 測と異なる結果となった。空気を読めない言動が適切 な距離間の阻害につながるという指摘をもとに(土井, 2008),本研究では関係回避群が積極的な対処を行う と予測していた。しかしながら分析の結果,空気を読 めない言動への放置が行われることが示された。この 結果について,回避関係群がもつ自己防衛的な態度が 関連する(岡田,2007b)。土井(2008)によると,現 代青年が友人と距離を保つのは,傷つくのを恐れるた めである。一方で,空気を読めない人物は,関係回避 群にとっての適度な距離間を妨げるため,傷つくリス クを高める。そのため,回避的な友人関係を築く青年 は,自身の傷つきを懸念し,空気を読めない人物との 関わりを回避するのではないかと考えられる。した がって,空気を読めない言動が起きた際に,群れ志向 群は関係性への影響や雰囲気の悪化を懸念し,「いじ り・からかい」を選択するのに対して,関係回避群は その人物の言動により自身が傷つくことを懸念し,「放 置」を選択するのではないかと推測される。 一方で,「叱責」や「フォロー」については友人関 係による対処行動の有意差はみられなかった。そのた め,個別関係群がフォローを選択するという本研究の 予測とは異なる結果となった。また,ほかの群と比較 して,個別関係群において得点が高い対処行動は示さ れなかった。本研究では空気を読めない人物を「同じ 仲良しグループにいるが,二人きりで話すことはない 人物」として設定したが,個別関係群は個別の関係性 を重視する青年の傾向であるため(岡田,2007b),個 別関係群にはこのような人物の想定が難しかった可能 性がある。 さらに,群れ志向群がほかの対処行動よりも「いじ り・からかい」を選択することについて,対立の回避 の観点からの考察が可能である。現代青年には友人と の対立を恐れる傾向があるが(土井,2014),空気を 読めない人を叱責することにより,その場の雰囲気を 悪化させてしまったり,対立のきっかけになったりす るリスクがある。一方でからかいは,ユーモアを含ん だ攻撃行動であり,冗談としての意図を主張すること で対立を回避することが可能である(Keltner et al., 1998),つまり,「いじり・からかい」は, 藤を回避 しつつ空気を読めない言動を指摘するコミュニケー ションとして群れ志向群に用いられやすいのではない かと考えられる。 現代青年の友人関係への示唆 本研究で得られた結果は,現代青年の友人関係にい くつかの示唆を与えるものである。まず,現代的な友 人関係の形であるとされる群れ志向群および関係回避 群において,どちらも特徴的な対処行動がみられたこ とがある。群れとしての友人関係において,空気を読 めない言動に対して「いじり・からかい」を行うこと が示された。これまでの研究では,「いじり」や「か らかい」がいじめの一種として扱われてきた(土井, 2008)。これに対して,本研究における「いじり」や からかいは,フォローと相関していた。また,集団で の友人関係を志向する青年が用いることも示された。 これらの知見を踏まえると,空気を読めない言動への 「いじり」やからかいは,攻撃ではなく集団での友人 関係を維持するために行われると推測される。他方で 本研究では,関係回避群が自身の傷つきを防ぐために 「放置」を選択する可能性についても考察された。そ のため,「いじり・からかい」や「放置」は,関係性 の維持や自己防衛のために,現代青年が用いる対処努 力としての側面があると考えられる。 一方で,これらの対処行動は,繰り返されたり,エ スカレートしたりすることで,いじめに発展するリス クもあると考えられる。まず,からかいは多義性をも つため,送り手に攻撃的な意図がない場合でも,受け 手にはいじめとして認識されてしまう危険性がある (Keltner et al., 1998)。特に,受け手の社会的スキルが 低い場合には,受け手はからかいを否定的なものとし て受け取ってしまうことが報告されている(遠藤, 2007)。また,空気の読めなさと社会的スキルの低さ の関連を指摘する研究もある(大石,2009)。これら の知見を踏まえると,群れとしての友人関係において, 社会的スキルの低い者は,空気を読めない言動を繰り 返すことで「いじり」や「からかい」の対象となるが, 受け手はそれらを攻撃として認識してしまい,いじめ として問題となる可能性も考えられる。 一方で,空気を読めない人物が友人集団から繰り返 し「放置」を受けるようになった場合にも,いじめと

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して問題となる可能性がある。従来の研究では,空気 を読めない人物への攻撃が「叱責」の形で生じると指 摘されてきた(堀,2015)。これに対して,本研究に おける「叱責」は「フォロー」と正の相関を示し,「放 置」は「フォロー」と負の相関を示していた。このこ とから現代青年は,空気を読めない人物に対して攻撃 を行う際に,「放置」を用いることが多いと推測される。 すなわち,現代青年は空気を読めない人物に対して, 明確な形で攻撃を行うよりも,存在を無視するという, より現代的な方法で排除を行うのではないかと考えら れる。 以上の議論のように,「放置」や「いじり・からかい」 は,現代青年の対処努力としての側面があるが,同時 にいじめとして問題になるリスクも含んでいることが 考察される。しかし本研究の知見は,いじめとの関連 を検討したものではないため,これらの考察には検討 の余地がある。そのため今後の研究では,本研究で示 された対処行動といじめとの関連を明らかにすること が必要である。 本研究の意義と今後の課題 本研究では,空気を読めない言動への攻撃行動を問 題とし,友人集団との関係性や求められているふるま いが,空気を読めない言動への対処行動に与える影響 について検討した。その結果,「まじめ」なふるまい が求められている場面では叱責や放置が選択されやす いことが示された。また,本研究では群れとしての友 人関係においていじりやからかいが行われやすいこと が示された。この知見は,集団での友人関係を維持す るためにいじりやからかいが行われ,受け手がそれを いじめとして認識するという,現代青年の友人関係に 起きうる新たな問題を明らかにするものであった。さ らに,本研究では回避的な友人関係において,空気を 読めない言動をした人物を放置する傾向が示された。 この結果より,空気を読めない人物に対して,直接的 な攻撃ではなく,その人物を遠ざける方法で,排除が 行われる可能性について考察した。 最後に,本研究に残された課題について述べる。ま ず,いじめ研究への発展についてである。先に述べた ように,本研究は空気を読めない言動が生じた場面で の対処行動を扱ったものであり,いじめとの関連につ いて検討したものではない。そのため,対処行動とい じめ加害行為との関連について,今後の研究で実証的 に示すことが必要となる。また,このことに関連して, 空気を読めない言動に遭遇した際の認知的・感情的な 反応を扱えていない点も,本研究の限界としてある。 相手への不快感情や傷つける意図をもって行われる対 処行動について明らかにすることで,空気を読めない 人物への排除やいじめの予防に結びつく知見が得られ ると考えられる。さらに,本研究では友人の一人が空 気を読めなかった場面を,場面想定法を用いて検討し たが,想定場面については検討の余地がある。例えば 本研究において,「まじめ」場面として設定した場面 1 と場面 3 の間に,「放置」,「フォロー」,「叱責」得 点の差がみられた。場面 1 と場面 3 では,「空気を読 めない」と判断した割合に大きな差はみられないこと から,空気の種類や「空気を読めていない」と判断さ れる度合いが同程度であっても,その場面がもつ性質 によって,対処行動が異なるといえる。そのため今後 の研究では,その場面の緊急性や重要性などを統制し, 対処行動の変化を明らかにすることが求められる。 利益相反について 本論文に関して,開示すべき利益相反関連事項はな い。 引 用 文 献 阿部 謹也(1995).「世間」とは何か 講談社現代新 書 朝日新聞(2013).「場の空気」気づかう 20 代 朝日 新聞 Digital Retrieved from https://www.asahi.com/ articles/ASF0TKY201312270214.html(2020 年 1 月 17 日)

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