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留学生の「日本語プレゼンテーション」実践 : 教師フィードバックと学習者の「振り返り」を中心に

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Academic year: 2021

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留 学 生 の

「日本 語 プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン」 実 践

教 師 フ ィー ドバ ック と学 習 者 の 「

振 り返 り」 を 中心 に

How to Improve Presentation in Japanese by

Foreign Students : Self-Reflection and Teacher Feedback

山 田 陽 子 Yoko Yamada 1  は じめ に 2  授 業 実 践 と指 導 プ ロセ ス 3  教 師 フ ィー ドバ ッ クー ス ライ ド内容 と話 し方 に 関 す る教 師 フ ィー ドバ ッ クの学 習 者 へ の反 映 4  振 り返 り一 よ り良 い 「日本語 プ レゼ ンテ ー シ ョン」 の た め に 5  お わ りに一 日本語 学 習者 の課 題 と教 師 の課 題 要 旨:本 稿 で は、 教 師 の役 割 に 関 して、 学 習者 の次 期 発 表 機 会 に生 か せ る課 題 解 決 方 法 の一 つ で あ る教 師 フ ィー ドバ ッ クの 反 映 と タイ ミン グに つ い て検 討 を行 った。 これ ま で 日本 語 学 習 者 自身 の 「振 り返 り」 の意 義 に 関 す る指 摘 は少 な い が、 授 業 改善 を 目的 とす るな らば学 習 者 自身 に よ る 授 業 の 振 り返 りが 必要 で あ ろ う。 そ こで 本稿 で は、 大 学 の留 学 生 を対 象 と した 「日本 語 プ レゼ ン テ ー シ ョン」 授 業 で の 口 頭 表現 技 術 、 研 究調 査 、 ス ライ ド作 成 、 発表 態 度 等 実 践 プ ロセ ス か ら、 日本 語学 習者 自身 が 向上 を 自覚 で きた 日本 語 能 力、 よ り良 い プ レゼ ンテ ー シ ョンの あ り方 、 授 業 の 成 果 、課 題 等 を検 討 し留学 生 の 日本 語 授 業 に お け る 「振 り返 り」 の意 義 を指 摘 す る。 本 研 究 の 位 置 付 け は、 留学 生 の授 業実 態 に即 した教 育 体 制 を構 築 す るた め の基 盤 研 究 で あ る。 キ ー ワ ー ド:留 学 生 日本 語 プ レゼ ンテ ー シ ョ ン 振 り返 り 教 師 フ ィ ー ドバ ック  異 文 化 間 コ ミュ       ニ ケ ー シ ョン 1.は じ め に   本研 究 の背 景 お よ び 「日本 語 プ レゼ ンテー シ ョン」 授 業 の意 義 ・役 割 、 留 学 生(日 本 語 学 習 者) の プ ロ フ ィ ール 、 実 践 例 、 授 業 デ ザ イ ンに 関 して は前 号(『 人 間文 化 研 究 』17号)1)で 、 ま た授 業 実 践 の 学 習 プ ロ セ ス に関 して は、 日本 語 教 育 学 会 研 究 集 会2)に お い て 報 告 して い る。 参 照 さ れ た い 。 本稿 で は、前 号 に続 き 日本 語 プ レゼ ンテ ー シ ョンの実 践 プ ロセ ス か ら教 師 の役 割 、 学 習 者 の

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振 り 返 り、 授 業 の 成 果 と 課 題 を 検 討 す る 。 本 研 究 対 象 の 大 学 に お け る 日 本 語 プ ロ グ ラ ム は 、 「日 本 語 プ レゼ ン テ ー シ ョ ン」 の ほ か に リー デ ィ ン グ、 リス ニ ン グ、 ラ イ テ ィ ン グ 、 デ ィ ス カ ッ シ ョ ンの 授 業 が あ る 。 「日本 語 プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン」 授 業 で は 、 学 部 留 学 生 の 専 門 科 目 へ の 架 橋 お よ び 研 究 発 表 に 役 立 つ よ う に 、 多 く の 人 の 前 で 「話 す 」 能 力 、 「説 明 す る 」 能 力 、 「発 表 す る 」 能 力 を 身 に つ け る こ と を 目 標 に した 。 2.授 業 実 践 と 指 導 プ ロ セ ス プ レゼ ン テ ー シ ョ ン の テ ー マ 決 定 か ら発 表 会 ま で の 実 践 内 容 を 見 て い く。 1)日 本 語 プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン発 表 会 の テ ー マ を 決 め る 学 習 者 自 身 が 関 心 の あ る テ ー マ を 考 え 、 仮 テ ー マ と し て 決 め て お く。 調 査 結 果 や 内 容 構 成 に よ り 、 テ ー マ を 見 直 し確 定 す る。 2)研 究 調 査 と 発 表 練 習 ① イ ン タ ビ ュ ー 、 ア ン ケ ー ト、 聞 き取 り、 イ ン タ ー ネ ッ ト検 索 、 文 献 調 査 等 の 実 施 (質 問 紙 ・ア ン ケ ー ト用 紙 な ど作 成 → 内 容 の 確 認 作 業) ② イ ン タ ビ ュ ー や ア ン ケ ー ト調 査 に 必 要 な 会 話 練 習 学 習 者 が 行 う フ ィ ー ル ド調 査 日 本 語 学 習 者(以 下 、 学 習 者)は 主 た る イ ン タ ビ ュ ー 場 所 を 大 学 生 協 食 堂 と し た 。 日本 人 大 学 生 と 留 学 生 が 多 く集 ま る場 所 で 、 イ ン タ ビ ュ ー し や す い と い う理 由 か ら で あ る 。 イ ン タ ビ ュ ー の 項 目 を リス ト ア ッ プ し、 調 査 対 象 者 が 答 え や す い よ う に 質 問 の 仕 方 に 工 夫 す る よ う指 導 し た 。 ア ンケ ー ト調 査 の 場 合 は、 調 査 者 で あ る学 習 者 が ア ン ケ ー ト用 紙 を あ ら か じ め 日本 語 で 作 成 し、 そ れ を 教 師 が チ ェ ッ ク して 、 間 違 い を 指 摘 し修 正 を 指 示 し た 。 調 査 者 が 学 内 で 日本 人 学 生 、 教 職 員 と 留 学 生 に ア ン ケ ー トや イ ン タ ビ ュ ー を 実 施 し た 。 学 習 者 が 調 査 に 出 か け る前 に 、 教 師 は 授 業 で 以 下 の 項 目 を 確 認 す る作 業 を 行 っ た 。 [確 認 事 項] 1.何 を 調 べ た い の か(調 査 項 目)、 そ れ ら は テ ー マ に 沿 っ た も の か 。 2.何 の た め に 調 べ る の か(調 査 目 的)。 3.誰 に 聞 くの か(調 査 対 象 者)、 ど の く ら い の 人 た ち に 聞 くの か(調 査 人 数)。 4.ど こ で 聞 くの か(イ ン タ ビ ュ ー の 場 所)。 調 査 方 法 を 決 定 し発 表 す る 学 習 者10名 の 調 査 方 法 は、 イ ン タ ビ ュ ー が9名 、 ア ン ケ ー ト調 査 が1名 で あ っ た 。 そ の 他 情 報 収 集 と して イ ン タ ー ネ ッ ト検 索 と文 献 調 査 を 行 っ た 。 質 問 項 目 を 作 成 し、 プ リ ン トの 質 問 項 目 欄

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に記 述 して も らっ た。 どの よ うな調 査 を 行 うの か、 質 問 を す る場 合 は どの よ うな質 問 をす る のか 、 あ らか じめ学 習者 に 口 頭 発表 を して も らい、 事 前 準 備 の た め の指 導 を行 った。 3)プ レゼ ンテ ー シ ョンの組 み 立 て ① 基 本 的 な3段 構 成 序 論 → 本 論 → 結 論 序論 … は じめの挨 拶 ・簡単 な 自 己紹介 ・テ ーマ紹 介 ・テー マ選 択 の理 由 ・研究 調 査 方法 ・ 調 査対 象者 本論 … 調 査 内容 の報 告 ・具 体 例 ・内容 の概 要 ・分 析 ・ま とめ 結論 … 考 察 ・結 論(調 査 か らわ か った こ と、 自分 の意 見 ・考 え)・ 終 わ りの挨 拶 ② 概要 発 表 学 習者 に よ るプ レゼ ンテ ー シ ョンの 内容 発 表 プ レゼ ンテ ー シ ョン発 表 ま で の部 分 練 習 各 授 業 日に 、学 習者 が そ れ ぞ れ作 成 した視 覚 資料(ス ライ ド)を 見 な が ら 「部 分 」 ご との発 表 練 習 を 行 った。 日本語 プ レゼ ンテ ー シ ョン全 体 を 内容 的 に ま とま りの あ る部 分 に 区切 り、90分 授 業 の 中で10名 の 「話 す」、 「説 明 す る」 練習 を段 階 的 に行 った。発 表 の際 に は、 声 の大 きさ ・高 さ ・ 間(ま)・ 速 さ に留 意 す る よ う指 導 した。 ま た、 「話 す」 練 習 の前 に発 声 練 習 を し、 ウ ォー ミング ア ップ を行 った。 あ行 か らわ行 まで の 発 声練 習 表 を作 成 し、学 習 者 に配 布 し、 発声 指 導 を行 っ た。 視 覚 資 料 作 成(MicrosoftPowerPointに よ る ス ライ ド10枚)と 口頭 発 表 練 習 の 流 れ ①1-2枚 目の ス ライ ド部 分[挨 拶 ・自 己紹 介 とテ ー マ の 発 表 ・そ の テ ー マ を 選 ん だ 理 由] を 口頭 発表 練 習 ②34枚 目の ス ライ ド部 分[調 査対 象 者 と調 査方 法]を 説 明 ・口頭 発 表 練 習 ③56枚 目の ス ライ ド部 分[質 問 項 目 あ る い は ア ンケ ー ト質 問 紙 項 目]に つ いて の説 明 ・ 口頭 発表 練 習 ④7枚 目の ス ライ ド部 分[調 査結 果]の説 明 ・口頭 発表 練 習 ⑤8枚 目の ス ライ ド部 分[調 査 結 果 を も とに考 察]し た内 容 に つ い て説 明 ・口頭 発 表 練 習 ⑥9枚 目の ス ライ ド部 分[ま とめ ・結 論]を 説 明 ・口頭 発 表 練 習 ⑦10枚 目の ス ライ ド部 分[最 後 の挨 拶 ・お礼 の こ とば]口 頭 発 表 練 習 ⑧ 全 体練 習(ス ライ ド1か ら10ま で を通 して 口頭 発 表) この よ うに 、部 分 的 に ス テ ップ を踏 み な が ら発 表 練 習 を重 ね て い く こ とで、 学 習 者 に 「話 す」 要 領 が 身 に つ い て きた。 ま た、 ひ とつ ひ とつ の項 目内容 を熟 考 し丁 寧 に話 す こ とが で きる よ うに

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な った。 徐 々 に学 習者 は 自信 を深 め て い った。 学 習 者 は、 この活 動 を通 して 「人 前 で」 発 表 す る 不 安 感 が 薄 れ て い った。 段 階 的 に授 業 を組 み立 て る こ とで、 上 記 の成 果 を確 認 で きた。 さて 、 効 果 的 な 視覚 資料 とい うの は、 内容 が よ くわ か る資料 の こ とで あ る。 ス ライ ド作 成 に あ た り、 中 間 発 表 で は10枚 程 度 、 期 末 発表 で は13枚 程 度 に お さ ま るよ うに計 画 を立 て た。 中 間発 表 を 発 展 させ た もの が 期 末 発表 とい う位 置付 け に し、 中 間発 表 を さ らに発 展 さ せ、 深 く考 察 を加 え る こ とに した。 大 きい テ ー マ の枠 内 で分 析 視 点 を変 え、 相 互 に 関連 が あ る もの に した。 当初 は 中 間 発 表 と は別 の新 しい テ ー マ に取 り組 む こ とを考 え て い た。 しか し、 二 つ の発 表 間 の授 業 数 が多 くな い こ と、 日本語 レベ ル の 問題 か ら調 査 へ の負 担 感 が あ る こ と、 中 間発 表 テ ー マ に深 い考 察 を 加 え た 発 表 を した い と考 え る留学 生 の存 在 等 か ら、 学 習 者 の希 望 に沿 って フ レキ シ ブル に対 応 す る こ とに 決 め た。 ス ライ ド作 成 で は、 聞 き手 が一 目見 て ス ライ ドの 内容 を理 解 で きる よ うに、 文 章 形 式 で はな く、 メ ッセ ー ジ(伝 え た い 内容)を フ レー ズ化3)し た り、 図 解 化(イ ラ ス ト、 絵 、 グ ラ フ、 図 表 等)の 工 夫 を行 うよ うに教 師 は指 導 した。 写 真 、 イ ラス ト、 グ ラ フ、 図表 等 を入 れ す ぎて か え って見 に く くな らな い よ うに、 ま た ス ライ ドは次 の① ② の観 点 か ら簡 潔 に整 理 して書 き、 ス ライ ド内容 の補 足 説 明 を 口頭 で行 うよ うに指 導 した 。 ① 文字 の 大 き さ と レイ ア ウ トを考 え る。 「日本語 」 学 習 が 目的 の た め、 ス ライ ド作 成 の 際 の 図解 化 に 関 して は、 聞 き手 の理 解 を深 め る こ との み を 目的 に 行 った。 視 覚 資料(ス ライ ド)は 、 聞 き手 に わ か りや す く伝 え る役 割 が あ るだ けで はな く、話 し手 の プ レゼ ン力 を ア ップ さ せ信 頼 感 を高 め る効 果 もあ る。 ② ス ライ ド内 容 に お い て、 誤 字 ・脱 字 、 日本 語 表 記 上 の 問題 が な い か教 師 と学 習 者 とで確 認 作 業 を 行 った。 4)表 現技 術 の 学 習(言 語 と 非言 語 表現 の一 体 化) 教 師 は学 習者 に対 して、 こ とば の用 法 、 声 の大 きさ ・高 さ ・話 す速 さ、 話 の 間、 ア イ ・コ ン タ ク ト、 身 振 り、 立 ち位 置、 姿 勢 、 原 稿 の持 ち方 、 服 装 に 関 す る説 明 を行 った。 発 表 の 際 の は じめ と終 わ りの挨 拶 は、教 室 の参 加 者 一 同 を 見 て笑 顔 で 明 る く行 うよ うに指 導 した。 ① 最 初 の こ とば の練 習(自 己紹 介 ・あ い さ つ、 テ ー マ) ② 最 後 の こ とば の練 習[ご 清聴(ご 静 聴)あ りが と う ござ い ま した] 5)リ ハ ー サ ル の 実 施 実 施 は以下 の① か ら⑥ を考 慮 し行 った。

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① 発 表 会 と同 じ教 室 で 同 じ機 器 と資料 を使 用 し、 全 体 を通 して練 習 を行 う。 ② 時 間 を 計 り、 決 め られ た 時 間 内 に終 了 で き るよ うに練 習 す る。 ③ な るべ く原稿 を 見 な い で 発表 で き るよ うに す る。 ④発 表 内容、 日本 語 表現 、 話 し方 、 発表 態 度 を 日本語 学 習 者 が相 互 に評価 し合 う(チ ェ ック シー トを 配 布)。 ⑤ 質疑 応 答 ス トラテ ジー を学 習 す る(答 え られ な い質 問 が きた と きの対 応 も考 え る)。 ⑥ 聞 き手 と して、 ほか の人 の発表 を よ く聞 き、 内 容 に 関す る質 問 を考 え る(質 問 シー トを配 布)。 リハ ーサ ル で は、 ス ライ ドを1枚 ず つ見 な が ら、 一 人10分 程 度 の カ ンフ ァ レ ンス4)を行 い、 誤 字 ・脱字 ・表 現上 の誤 りを学 習者 に 口 頭 で指 摘 した。 同様 に 口頭 発 表 原 稿 の 日本 語 表 現 も修 正 す るよ うに 伝 え た。 学 習者 は教 師 の 日本 語 説 明 を理 解 し、 返 答 した。 教 師 が指 摘 した 内容 を忘 れ な い 内 に ノー トに書 い て お くよ う学 習者 に伝 え た。 6)発 表 会(発 表→ 質 疑応 答) 中 間発 表 は8分 、 期末 発 表 は10分 で 日本語 プ レゼ ンテ ー シ ョンを行 った。5名 ず つ2週 に分 け、 二 度 の 発 表 会 を 実 施 した。 発 表会 は公 開 プ レゼ ンテ ー シ ョン形 式 を と り、 外 国人 留 学 生 だ け で は な く、 日本語 母 語 話 者 に も参 加 して も ら った。 授 業 担 当教 師 だ け で は な く、 で きる だ け多 くの人 か ら 日本語 を学 ぶ機 会 を学 習者 に提 供 す るた め で あ る。 日本 語 母 語 話 者 と学 習 者 か らの多 様 な質 問 と、 そ れ らへ の 発表 者 の応 答 に よ り 日本語 の聴 解 能 力 、対 話 力 を育 む 実 践 の 展 開 が確 認 で き た。 発 表 者 以 外 の受 講 生9名 は、 「聞 き手 」 の立 場 か ら積 極 的 に 日本 語 で 質 問 を した。 聞 き手 側 の ゲ ス トと して 、 日本 人大 学 教 員1名 、 大 学 職 員1名 、 受 講 生 以 外 の留 学 生3名(イ タ リア か らの 交 換 留 学 生)、 日本 人 大 学 生(3年 生 と4年 生)6名 が 発 表 会 に参 加 した。 発 表 会 参 加 者 は ビデ オ 撮 影者 、 授 業 担 当 の筆 者 を加 え、 合計23名 で あ る。 発 表 会 参加 者 に は、 発 表 の 中 に 出 て く る新 出語 を説 明 した リス ト ・語 彙 表 を配 布 した。 日本 語 母 語 話者 の 大学 教 員 と大 学 生 か ら学 習者 の 発表 内容 に 関 す る質 問 が あ った。 留 学 生 対 象 の発 表 会 参 加 に 慣 れ て い る 日本 人 大 学 生 や学 習者 の チ ュー ター、 留 学 生 宿 舎 の世 話 係 を つ とめ る学 生 が参 加 した た め 、 質 問 の 日本 語 表現 、 話 す速 さに 日本 語 学 習 者 へ の配 慮 が見 られ た。 一 方、学 習者 に と って は 日頃 か ら学 習 の手 伝 い、 生 活 面 で の サ ポ ー トを して くれ て い る 日本 語 母 語 話者 の 参加 に よ り、 安 心 して 発表 に 臨 む点 も見 受 け られ た。 この よ うに 日本 語 母 語 話 者 か ら の 質 問 の み な らず 、 聞 き手 と して の学 習者 か らの質 問 もあ り、 活 発 な質 疑 応 答 の場 とな った。 発 表 か ら質疑 応 答 に 至 るま で の言 語 活 動 か ら、 学 習 者 は大 勢 の人 た ち に対 す る伝 え方 を学 ん だ。 日 本 語 母語 話 者 の場 合、 発表 者 の文 化 的背 景 に 関心 が あ り、 発 表 内容 よ り も発 表 者 本 人 に 関 す る質 問 に 特 徴 が 見 られ 、 日本 語 学 習者 か らは、 発表 者 の 日本 語 に よ る説 明 内容 の不 足 点 を指 摘 す る な ど発 表 内 容 そ の もの に 関 す る質 問 が 多 く寄 せ られ た。

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質 問 を受 けた 際 に は、 発表 者 は 質 問 に該 当 す るス ライ ドを再 び提 示 し説 明 す る よ うに した。 大 部 分 の 発 表者 は質 問 に対 して適 切 に答 え る こ とが で きた が、 中 に は質 問 の 回答 が冗 舌 で、 長 す ぎ た もの もあ り、 次 回 発表 時 の課 題 とな った。 質 疑 応 答 の 際 に は、 質 問者 と発 表 者 二 人 だ け の 時 間 に な って しまわ な い よ う、 会 場 の出 席 者全 員 に考 慮 しなが ら回答 す る よ うな 心 が けが重 要 で あ る。 日本語 科 目以 外 に、 実 際 の学 部 の一 般 的 な授 業 で は、 日本 語 母 語 話 者 の大 学 教 員 、 大 学 生 、 日 本 語 学 習者 が コ ミュニ ケ ー シ ョンを取 り合 う場 面 が 出 て く るだ ろ う。 この よ うな現 状 を踏 ま え れ ば 、 学部 授 業 と同 様 の 日本語 環 境 設 定 で発 表 が行 わ れ た こ とに な り有 意 義 で あ った。 い わ ば異 文 化 間 コ ミュニ ケ ー シ ョンの観 点 か ら発 表 会 を構 築 す る こ とで、 日本 語 能 力 だ け で は な く、 異 文 化 間 の 相互 理 解 を 深 め る機 会 に もな った。 日本 人 との異 文化 接 触 の機 会 を と らえ、 質 疑 応 答 を学 習 で き るの も 「日本語 プ レゼ ンテ ー シ ョン」 授 業 の利 点 で あ る。 日本 語 プ レゼ ンテ ー シ ョ ン発 表 会 を 、 国 際 交 流 推 進 セ ン ター ス タ ッ フに ビデ オ収 録 して も ら った。 教 師 は発 表 の評 価 を以 下 の① か ら④ の観 点 か ら行 った。 ① 内 容(目 的 、構 成、 調 査)、 ② 話 し方(日 本 語 の確 か さ、 発 音 、 声 の 大 き さ、 話 す 速 度)、 ③ 発 表 態 度 、④ 時 間 ヨー ロ ッパ 圏 ドイ ツか ら来 て い る学 生 は 自国 の再 生 エ ネ ル ギ ー政 策 に 関 す る発 表 内容 、 中 国 か らの 学生 は歴 史認 識 に 関 す る大 学 生 へ の調 査、 韓 国 か らの学 生 は韓 流 に 関 す る 日本 事 情 を と りあ げ た 。 そ の他 の学 生 の 発 表 内容 と して は、 来 日後 に気 づ い た 日本 の環 境 問題(水 資 源 保 護 、 ゴ ミ 問 題 な ど)に 関 す る もの が 多 か った。 学 習者 出身 国独 自の科 学 技 術 に 関 す る用 語 ・専 門用 語 に つ い て は、 教 師 と学 習者 が協 働 で新 出語 リス ト ・語 彙 表 を作 成 し、 参 加 者 全 員 に配 布 した。 以 上 の 授 業 実 践 か ら、 教 師 の 果 た した役 割 を ま とめ る と以 下 の① か ら⑤ の よ うに な る。 ① 口頭 表 現 技 術 の 指 導、 ② 発 表 ス キル の 指導 、 ③ 日本 語 プ レゼ ンテ ー シ ョ ンの特 性 へ の理 解 促 進 、 ④ コ ミュニ ケ ー シ ョン能 力 の 育成 、 ⑤ 学 習者 同士 、 学 習 者 と 日本 語 母 語 話 者 の コー デ ィネ ー ター

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3.教 師 フ ィ ー ドバ ッ ク ー ス ラ イ ド内 容 と 話 し 方 に 関 す る 教 師 フ ィ ー ドバ ッ ク の 学 習 者 へ の 反 映 日 本 語 プ レゼ ン テ ー シ ョ ン の 授 業 で は 、 発 表 し て し ま え ば 完 了 と い う こ と で は な く、 授 業 で の 教 師 フ ィ ー ドバ ッ ク 、 発 表 時 の 聞 き手 で あ る 日 本 語 学 習 者 か ら の フ ィ ー ドバ ッ ク`)を 通 し て 、 よ り 良 い プ レゼ ン テ ー シ ョ ン の あ り方 を 日 本 語 学 習 者 全 員 で 考 え る機 会 と し て い る。 ど の よ う な 形 態 の フ ィ ー ドバ ッ ク が 日 本 語 学 習 者 の 発 表 改 善 や 日本 語 能 力 向 上 に つ な が る の だ ろ う か 。 授 業 の 中 で は 、 教 師 の コ メ ン トだ け で は な く、 日本 語 学 習 者 の 意 見 や 考 え を 重 視 し た 。 日本 語 学 習 者 は 、 そ れ ぞ れ プ レゼ ン タ ー で あ る と 同 時 に 聞 き手 で も あ る。 聞 き手 に わ か り や す く伝 わ っ て い る か ど う か 、 聞 き手 の 立 場 か ら 見 て 、 プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン を 評 価 す る こ と も重 要 で あ る 。 発 表 練 習 の 際 に は 、 同 じ授 業 を 共 有 す る学 習 者 同 士 が ス ラ イ ドの 内 容 や 発 表 の 仕 方 、 日本 語 の 誤 り に つ い て 相 互 に ア ドバ イ ス を 行 う ピ ア フ ィ ー ドバ ッ ク方 式 を 採 り入 れ た 。 日本 語 学 習 者 と し て の 同 じ仲 間 か ら の ピ ア フ ィ ー ドバ ッ ク は 、 日本 語 能 力 の 面 、 プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン能 力 の 面 か ら の 指 摘 が 多 か っ た 。 た と え ば 、 「発 表 者 の ス ラ イ ドに 書 か れ て い る 漢 字 熟 語 が 日本 語 に は な い 」、 「発 表 者 の 声 が 小 さ い 」 と い う 指 摘 、 「原 稿 を 見 て ば か り い な い で 聞 き 手 を 意 識 し た ほ う が よ い 」 と い う 発 表 態 度 に 関 す る ア ドバ イ ス 、 ス ラ イ ド内 容 に 関 す る説 明 不 足 の 指 摘 な ど が 多 か っ た 。 こ の 授 業 で は 、 中 間 発 表 と 期 末 発 表 の2回 の 発 表 機 会 を 設 け て い る。 次 回 の 発 表 に 今 回 の 発 表 が 生 き る よ う 、 教 師 と して 学 習 者 ひ と り ひ と り に ス ラ イ ド内 容 、 日本 語 表 現 、 話 し方 、 発 表 態 度 に 関 す る 改 善 に 向 け た 指 摘 を 行 っ た 。 教 師 か ら の フ ィ ー ドバ ッ ク は 学 習 者 の プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン に 反 映 さ れ た の だ ろ う か 。 学 習 者 そ れ ぞ れ の ス ラ イ ド内 容 に 関 す る教 師 フ ィ ー ドバ ッ ク の 学 習 者 へ の 反 映 に つ い て 考 え た い 。 ス ラ イ ド内 容 に 関 して 、1回 目 の リハ ー サ ル 時 の 教 師 か ら の 指 摘 や コ メ ン トを 翌 週 の 発 表 時 に

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生 か して い な い学 習者 が 多 か った。 教 師 は一 方 的 に学 習 者 の ス ライ ド内容 の修 正 を求 め る こ とは せ ず 、学 習者 に説 明 を 求 め、 双方 が相 談 の上 で修 正 す る とい う方 法 を と った。 教 師 が 口頭 で伝 え た こ とを学 生 は ノー トに書 き とめ ず、 記 録 と して残 して い な か った。 授 業 内 に お け る教 師 の 口 頭 に よ る フ ィー ドバ ッ クが反 映 さ れ な か った こ とで、 次 に授 業 外 活 動 を 行 う こ とに した。 メ ー ル 本 文 に修 正 す べ き内容 を詳 述 し、 該 当 す る学 生(修 正 を必 要 とす る学 生)に 送 信 した。 メー ル で あれ ば、 パ ー ソナ ル な指 摘 を学 習 者 が1人 の と き にゆ っ く り読 め る し、 メー ル を 保 存 して い つ で も読 め る とい う利 点 が あ る。 学 習 者 か らメ ー ル が届 い た 旨、 返 信 が あ っ た 。 しか し、 この メ ー ル の方 法 で も翌 週 の ス ライ ド内容 に反 映 さ せ て い な い学 生 が い た。 そ こで、 口 頭 とメ ー ル に よ る伝 達 方 法 に加 え て、 用紙 に修 正 内容 を記 述 し学 生 に対 面 指 導 の形 式 で 口頭 に よ る説 明 を加 え 直接 手 渡 した。 これ ら授 業 内、 授 業 外 活 動 の一 連 の試 行 を通 して、 教 師 フ ィー ド バ ックが 次 の 発 表機 会 に反 映 され生 か さ れ た こ とを確 認 で きた。 授業 で は教 師 か らの フ ィー ドバ ッ ク と して、 まず 口頭 で伝 え る、 続 いて修 正 内容 を記 述 して メ ー ル で 送 る方 法 、 最 後 に 修正 内容 を用 紙 に記 述 し学 生 に 直接 手 渡 す とい う多 重 フ ィー ドバ ック形 式 を 採 用 した。 各 々 の方 法 に よ り、 どの く らい の学 生 の発 表 内容 に教 師 フ ィー ドバ ック が反 映 さ れ た の か 表 に 示 した。 表3ス ラ イ ド内 容 に 関 す る教 師 フ ィー ドバ ック の反 映 教 師 フ ィ ー ドバ ッ ク は、 口 頭 だ け の 場 合 、 反 映 率 は10%、 口 頭 の 上 で 、 さ ら に メ ー ル で の フ ィ ー ドバ ッ ク の 反 映 率 は50%、 そ の 後 記 述 用 紙 に よ る フ ィ ー ドバ ッ ク の 反 映 率 は100%に 達 し た こ と が 確 認 で き た 。 わ ず か10名 の 留 学 生 調 査 で は あ る が 、 教 師 フ ィ ー ドバ ッ ク に 関 し て は 、3つ の 方 法 を す べ て 行 う 多 重 フ ィ ー ドバ ッ ク で 効 果 が 認 め ら れ た も の の 、 教 師 の フ ィ ー ドバ ッ ク が そ も そ も 学 習 者 に と っ て 良 い こ と な の か ど う か と い う観 点 も 含 め 、 今 後 の 研 究 課 題 と し た い 。 教 師 が ス ラ イ ド内 容 の 修 正 を 求 め た 理 由 を 学 習 者 が 理 解 し納 得 し て 書 き 直 し た か ど う か 、 日本 語 プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン の 授 業 実 践 に よ り教 師 フ ィ ー ドバ ッ ク の あ り方 を 考 え る契 機 と な っ た 。 教 師 フ ィ ー ドバ ッ ク が 学 習 者 の 推 敲 活 動 の 活 性 化 を 意 味 す る の か と い う 疑 問 を 抱 い た 広 瀬 (2007)は 、 教 師 の 指 摘 ど お り に 原 稿 を 書 き 直 し た こ と は 、 学 習 者 の 内 部 で 必 要 な も の と し て 認

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識 され た 結 果 行 わ れ た の か ど うか は 不 明 で あ る と述 べ て い る(広 瀬 、2007、151)。 そ して教 師 と い う絶対 的 な 存 在 か らの 指 摘 を無 批 判 に受 け入 れ る こ とは、 か え って学 習 者 の 自律 的 な推 敲 活 動 を 阻 害 す る こ とに な るの で は な いか と指 摘 して お り(前 掲 書)、 この点 に つ い て は学 習 者 へ の実 態調 査 を積 み重 ね なが ら深 く議 論 しな けれ ば な らな い課 題 で あ る。 一 方 、 教 師 は学 習 者 と の間 で 、 フ ィー ドバ ックや対 面 指 導 な ど多 くの や り と りを通 じて心 的交 流 の深 ま りを感 じた こ とは確 か で あ る。 ス ライ ドの 内 容 で はな く、 話 し方 ・口 頭表 現 技 術 に 関 す る学 習 者 へ の教 師 フ ィー ドバ ッ クは ど うな の だ ろ うか。 教 師 は学 習者 の発 表 練 習 時 に気 づ い た発 音 の誤 り、 話 す速 さ な ど改 善 した方 が よ い 箇 所 を 指 摘 し、 そ の場 で 口 頭練 習 さ せ た。 宿 題 と して課 す の で は な く、 そ の場 で 口頭 練 習 を 課 した た め 、学 習者 はす ぐに教 師 が指 摘 した箇 所 の練 習 に取 り組 み、 発 音 と話 す速 さ の改 善 が見 られ た 。 本 研 究 に お いて 前 号 で行 った ニ ー ズ分 析6)か ら、 大 部 分 の 学 習 者 は ス ラ イ ド上 に文 字 を 「書 く」 こ と よ り も日本 語 プ レゼ ン テ ー シ ョ ンの 「話 す」 口頭 表 現 技 術 の 向上 に深 い関 心 の あ る こ とが わ か って い た。 ま た教 師 か ら修 正 を求 め られ た と きに は、 後 か ら修 正 しな くて済 む現 場 で の 修 正 、 即 時対 応 型 を好 む特 徴 が あ った。 この こ とか ら、 教 師 は フ ィー ドバ ッ クの方 法 だ け で は な く、 タイ ミン グに つ い て も検 討 す る必 要 性 を感 じた。 4.振 り返 り一 よ り良 い 「日本 語 プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン」 の た め に 「振 り返 り」 に 関 して は、 日本 語 教 師 が実 施 した授 業 の 「振 り返 り」 を 「観 察 」 と位 置 付 け、 「良 い授 業 」 に近 づ け たか ど うか 振 り返 って 見 な けれ ば な らな い との 副 島(1999)の 指 摘 が あ る。 本 稿 で は、 「日本 語 プ レゼ ンテ ー シ ョ ン」 授 業 に 関 す る教 師 の 授 業 改 善 の た め の観 察 を実 施 す る と同 時 に 、学 習者 自身 の 「振 り返 り」 の意 義 に つ い て も検 討 した い。 日本語 プ レゼ ンテ ー シ ョン発表 会 後 の授 業 で、 教 師 と学 習 者 が発 表 会DVD(ビ デ オ撮 影)を 見 な が ら、 話 し方 ・声 の 大 き さ ・発 表 態 度 、 質 疑 応 答 な ど を振 り返 り7)、課 題 を 探 究 した。 この よ うな 客観 的 な観 察 は、 学 習者 自身 が 発表 で気 づ か な か った こ とを発 見 で き る と と もに教 師 と学 習 仲 間 か ら ア ドバ イ ス を受 け る こ とが で き、 改善 に繋 が る。 外 国 人 留学 生 の 日本 語 プ レゼ ンテ ー シ ョン と 日本 人 大 学 生 の プ レゼ ンテ ー シ ョンの相 違 点 は、 日本 語能 力 以 外 で は 「臨機 応 変 さ」 に あ る と考 え られ る。 日本 語 母 語 話 者 な らス ピー チ メ モ程 度 の もの が あ れ ば 、 プ レゼ ンテ ー シ ョンを難 な く こな せ る場 合 が多 い。 しか し留 学 生 の場 合 は、 慣 れ るま で はス ライ ドご とに 発表 原 稿 を作 成 し、 そ れ を 見 な が ら発 表 す る こ とが多 い。 時 間 に合 わ せ て 臨機 応 変 に話 す こ とや ア ド リブを入 れ るだ け の余 裕 は な い。 しか しな が ら 「日本 語 プ レゼ ン テ ー シ ョン発 表 会」 で は、 リハ ー サ ル 時 の気 づ きを も とに練 習 を積 ん で きた学 習 者 が多 く、 本 番 で 原 稿 を ず っ と見 て話 す学 習者 は ほ とん どい な か った。 ま た10人 全 員 が規 定 時 間 内 に発 表 を終 え る こ とが で きた。

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発 表 後 に、 「復 習 レポ ー ト」 と題 した振 り返 り シー トを 学 習 者 自身 が 記 述 す るプ リ ン トと して 用 意 した。 課 題 を 次 の 発表 で解 決 で き るよ うに振 り返 る こ との重 要 性 を学 習 者 に説 明 した。 振 り 返 り シー トに、 学 習 者 が工 夫 ・努 力 した点 、 困難 を覚 え た点 、 今後 の課 題 等 を 「研 究調 査 の過 程」、 「日本 語 の話 し方 」、 「発 表 態 度 」 の 項 目別 に 自 由記 述 して も らっ た。 ま た 聞 き手 に な っ た と き に は、 各 発 表者 に対 し率 先 して 質 問 す る こ とで 日本 語 能 力 の 向上 に繋 が る こ と も発 表DVDの 振 り 返 り作 業 か ら後 述 の よ うに確 認 で きた。 1回 目の 発 表(中 間)と2回 目の発 表(期 末)を 比 べ、 改 善 が 見 ら れ た点 (発 表DVDに よ る振 り返 り と教 師 の参 与 観 察 か ら) ① 日本語 表 現 が 的 確 に な った 、② 話 し方 で は、 声 が大 き くな り、 自信 を も って話 せ る よ うに な っ た 、⑧ 原稿 を 見 な い で 発表 で き、 発表 態度 の 向上 が感 じ られ た、 ④ 研 究 調 査 能 力 に 関 して は、 よ り深 い イ ンタ ビュ ーや文 献 調 査 が で き るよ うに な った、 ⑤活 発 な質 疑 応 答 が で き るよ うに な っ た。 学 習者 が 発 表 後 に書 い た 振 り返 り シー トか ら、 日本 語 学 習 者 が 向上 した と思 う点 と今 後 の課 題 を 取 り上 げ る と次 表 の よ うな結 果 に な った。 表4日 本 語 プ レゼ ン テ ー シ ョンの 授 業 を 通 じて 向 上 した と思 う点

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① 自国 以 外 の人 た ち と親 しい交 流 が で きて よ か った ② 様 々 な 国 の こ とに つ い て知 識 が増 え た ⑧ 専 攻 す る分野 の勉 強 に役 立 った ④ 話 し方 、 視線 の 当 て方 、 手 の動 き、 顔 の表 情 の大 切 さ が わ か った ⑤ 第1回 目の 発 表 を 反 省 し、 第2回 目の発 表 に生 か し も っ とが ん ば りた い と思 った ⑥ 調 査 の方 法 が わ か った の で、 今 後 は も っ と深 くイ ン タ ビ ュー で きる よ うに した い ⑦ 関心 の あ る分 野 か ら 自由 に テ ー マ を決 め る こ とが で きた の で意 欲 的 に の ぞ め た

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学 習者 は発 表 体 験 を 通 して、 口 頭 発表 能 力 が 向上 し、 人 前 で話 す こ とに 自信 を もつ こ とが で き た こ と、 今 後 の課 題 と して は 「話 し方 」、 「発音 」 等 で あ る こ とが わ か る。 学 習 者 の 「振 り返 り」 は、 自己課 題 を 発 見 す る こ とが で き る とい う点 に意 義 が あ る。 ま た、 テ ー マ の決 定 で重 要 な こ と は、 学 習者 自身 が興 味、 関心 を もち、15回 の授 業 の 間、 意 欲 を持 ち続 け られ る テ ー マ を選 択 す る こ とで あ る。 学 習 に と って意 味 が あ り、 内容 を伴 った テ ー マ で な け れ ば意 欲 的 な取 り組 み は 困難 で あ る。 学 習者 の感 想 か ら、 日本 語 プ レゼ ンテー シ ョンの授 業 は、 多様 な文 化 的 背 景 か らの知 識 の獲 得 、 専 攻 分 野 へ の 架 橋 的役 割 を 果 た して い る こ とが わ か る。 学 習 者 は 「振 り返 り」 を通 じて、 常 に改 善 の 余 地 を 探 る習慣 を 身 に つ け る こ とが重 要 とい え よ う。 5お わ りに 一 日本 語 学 習 者 の 課 題 と教 師 の 課 題 日本語 プ レゼ ンテ ー シ ョンの授 業 実 践 か ら、 学 習 者 は プ レゼ ン ター と して の 「話 す力 」、 「研 究 調 査 能 力」 の 向上 を 自覚 して い た。 日本語 表 現 に 関 して、 学 習者 の発 音 の誤 りを教 師 が 口頭 で指 摘 し、 正 確 な発 音 が で きる よ うに 口 頭 練 習 を 行 った。 教 師 が常 に学 習者 の発 表 に高 い期 待 を寄 せ て い る姿 勢 を もて ば、 学 習 者 の意 識 に 変化 を もた ら し発 表意 欲 に繋 が って い く と考 え た。 発 表 会 で は、 発 表者 に対 して質 問 を す る学 習 者 が多 数 存 在 した。 とい う こ とは、 日本 語 の発 表 内 容 を 聞 き取 れ た だ けで はな く、 内容 を把 握 で きた こ と、 そ の 中 で疑 問点 を発 見 し、 日本 語 で質 問 で き る力 が 身 に つ い た こ とを意 味 して い る。 学 習 者 の 中 に は積 極 的 に発 表 者 に質 問 を寄 せ る こ とで 質疑 応答 時 間 を異 文化 接 触 の場 と して活 用 して い る者 が い た。 この よ うに 「日本 語 プ レゼ ン テ ー シ ョ ン」 とい う科 目は、話 し手 と聞 き手 の両 体 験 を通 じて、 留 学 生 の 日本 語 習得 の一 助 にな っ て い る と考 え られ る。 学 習者 の課 題 は、 プ レゼ ンテ ー シ ョ ンの 内容 構 成 を考 え る前 に、 テ ー マ に対 す る深 い掘 り下 げ、 的 確 な 調 査 な どプ レゼ ン内容 そ の もの の充 実 とそ れ を生 か す 日本 語 能 力 の 向上 で あ る。 そ の た め に は、 授 業 の 中 だ けで はな く、 事 前 準 備 が必 要 で あ る。 プ レゼ ンテ ー シ ョン発 表 に 向 け た計 画 を 学 習 者 各 自が 明 確 に立 て、 そ の計 画 に沿 って 資料 収 集 や 内容 の 吟 味 を行 な って お く こ とが重 要 で あ る。 そ れ らの 事前 準 備 が 整 った うえ で、 日本 語 の 口頭 表 現 技 術 と して の プ レゼ ンテ ー シ ョ ンの 練 習 に 入 る こ とが で き るの で あ る。 そ の練 習 の 中 に は、 話 す速 さ、 声 の高 低 、 大 き さ な ど の調 整 や 発 表 態 度 等 も含 ま れ る。 プ レゼ ン ター も聞 き手 も 日本 語 母 語 話 者 で あ る場 合 と異 な り、 外 国人 留 学 生 の 発 表 に対 して、 聞 き手 は 発表 内容 よ り先 に 日本 語 能 力 に評 価 を集 中 さ せ る傾 向 に あ る。 しか し日本語 能 力 だ けで はな く、 研 究 発表 の た め の論 理 性 もま た 日本 語 プ レゼ ンテ ー シ ョ ンに は 求 め られ る こ とを学 習者 は実 践 か ら学 び と った。 発 表 会 に お い て 、原 稿 を 見 る こ とな く、 ス ライ ドを指 差 しな が らわ か りや す く説 明 で きる プ レ

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ゼ ン能 力 と 、 日 本 語 で 丁 寧 に 説 明 で き る能 力 を あ わ せ も つ 留 学 生 も存 在 し て い る 。1回 目 の 発 表 と2回 目 の 発 表 を 学 習 者10名 に つ い て そ れ ぞ れ 比 べ て み る と、2回 目 の 発 表 で は 言 語 と非 言 語 要 素(ボ デ ィ ラ ン ゲ ー ジ、 ア イ ・コ ン タ ク ト等)の 両 方 を 生 か し た プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン が 見 ら れ る よ う に な っ た 。 発 表 体 験 の 増 加 に よ り、 日本 語 の 話 す 力 、 説 明 す る力 に 加 え 、 聞 き手 に 「わ か り や す く伝 え る 力 」 が 身 に つ い て き た と考 え ら れ る。 教 師 は学 習 者 に 対 す る授 業 中 お よ び 授 業 外 に 行 っ た フ ィ ー ドバ ッ ク を 通 じ て 、 そ の 反 映 の 困 難 を 感 じ る一 方 、 交 流 の 深 ま り も感 じ る こ と が で き た 。 教 師 の 課 題 は 、 学 習 者 が 真 に 伝 え た い こ と を 表 出 す る た め の 具 体 的 な 話 し方 や 日本 語 プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン を 通 し て 個 々 の 学 習 者 の ど の よ う な 能 力 を 伸 長 さ せ る の か と い う観 点 か ら の 明 確 な 目標 を 掲 げ た 教 授 活 動 で あ る 。 今 後 も 国 際 交 流 を 育 み な が ら 留 学 生 の 学 習 実 態 に 即 した 教 育 支 援 と な る き め 細 か い 実 践 指 導 に 取 り組 み た い 。 謝 辞 本 研 究 に あ た り、 ご協 力 い た だ い た 皆 様 に 感 謝 申 し上 げ ま す 。 注 1)山 田陽 子(2012a)「 ス ライ ド作 成 と 口頭 表現 技 術 を学 ぶ 日本語 教 育 留 学 生 の 「日本 語 プ レゼ ンテ ー シ ョ ン授 業 」 か ら一 」 『人 間 文化 研 究 」 第17号 、169-180頁 。 留 学 生 の 性 別 、 年 齢 、 国籍 、 滞 日歴 、 日本 語 学 習歴 に 関 して は 、172頁 掲 載 の表1を 参 照 さ れ た い。 2)山 田 陽 子(2012b)「 留 学 生 対 象 の 『日本 語 プ レゼ ンテ ー シ ョ ン』 授 業 実 践 報 告 話 し方 ・研 究 調 査 ・ス ライ ド作 成 の 学 習 プ ロ セ ス か ら一 」 日本語 教 育 学 会 『日本 語 教 育 学 会 北 陸地 区第3回 研 究 集 会 予 稿 集 」 11-12頁 。 3)フ レ ー ズ化 の 代 表 的 な もの に、 体 言(名 詞 ・代 名 詞)で と め る方 法 が あ る。 そ うす る こ とで 、 聴 衆 が 内 容 を一 目で理 解 で きる とい う効 果 が期 待 さ れ る。 4)こ の 場 合 の 「カ ンフ ァ レ ンス」 と は、 主 に授 業 中 に教 師 が学 生 に対 して ス ライ ド内 容 と発 表 原 稿 につ い て の 不 明 点 を 確 認 す る作 業 を指 して い る。 この 作 業 にお いて 日本 語 表 現 上 、 不 適 切 と思 わ れ る箇 所 につ い て は 直 した ほ うが 内 容 面 で よ り良 くな る旨 の 指 摘 を した。 日本 語 で行 い、 教 師 と学 生 相 互 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンが とれ て い る こ とを確 認 した。 5)フ ィ ー ドバ ック と は、 結 果 を 原 因 に 反 映 させ る こ と を い う。 評 価 結 果 を 日本 語 学 習 者 本 人 に伝 え る こ と を指 して い る。 本 稿 で は、 教 師 や受 講 仲 間 の 日本 語 学 習 者 が 発 表 者 に対 して 文 法 上 、 内 容 上 の誤 りや気 づ い た 点 を 伝 え る こ と お よ び教 師 が ス ライ ドの 日本 語 表 現 、 原 稿 を添 削 す る こ とな どを 含 め て 使 う。 同 じ学 習 仲 間 の留 学 生 か らの コメ ン トや意 見 、 指 摘 な ど を ピア フ ィー ドバ ッ クと い う。 6)山 田 陽 子(2012a)173頁 。 7)本 稿 で は授 業 で の学 習 過 程 、 と りわ け発 表 行 動 を 思 い返 し、 話 し方 、 ス ライ ド内 容 、 日本 語 表 現 、 発 表 態度 等 で気 づ い た こ とを教 師 と学 習 者 とで話 し合 い、 次 の発 表 に つ な げ る こと を指 して い る。 参 考文 献 奥村 訓 代(2005)「 大 学 の学 部 に お け る 日本 語 教 育 の使 命 と役 割 一PowerPointを 利 用 した プ レゼ ンテ ー シ ョ ンの実 践一 」 日本語 教 育 学 会 『日本 語 教 育 」126号 、pp55-64 副 島 健 治(1999)「 日本 語 教 育 実 践 に お け る授 業 の 振 り返 り」 立 命館 大 学 言 語 セ ン タ ー 『ポ リグ ロ シ ア』 第 2巻 、pp95-107 広 瀬 和 佳 子(2007)「 教 師 フ ィー ドバ ッ クが 日本 語 学 習 者 の作 文 に 与 え る影 響 一 コ メ ン トと カ ン フ ァ レ ンス の 比 較 を 中心 に 」 早 稲 田 大 学 日本 語 教 育 研 究 科 『早 稲 田 大 学 日本 語 教 育 研 究 セ ン タ ー 紀 要 』20、 pp137-155

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福井 有 監 修 ・大 島武 編著(2009)『 プ レゼ ンテ ー シ ョ ン概 論 』 樹 村 房 森脇 道 子 監 修 ・武 田 秀子 編 著(2011)『 ビ ジネ ス プ レゼ ンテ ー シ ョ ン改 訂 版 」 実 教 出版 山 田 陽 子(2012a)「 ス ライ ド作 成 と 口頭 表 現 技 術 を学 ぶ 日本 語 教 育 一 留 学 生 の 『日本 語 プ レゼ ンテ ー シ ョ ン 授 業 」 か ら一 」 『人 間 文化 研 究 」 第17号 、pp169-180 山 田 陽子(2012b)「 留 学 生 対 象 の 『日本 語 プ レゼ ンテ ー シ ョ ン」 授 業 実 践 報 告 話 し方 ・研 究 調 査 ・ス ライ ド作 成 の学 習 プ ロセ スか ら 」 日本 語 教 育 学 会 『日本 語 教 育 学 会 北 陸 地 区 第3回 研究 集 会 予 稿 集 』pp11-12 山 田 陽子(2012c)『 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンのた め の 話 し方 練 習 帳 」 黎 明 書 房 山 田 陽 子(2012d)「 『日本語 プ レゼ ンテ ー シ ョ ン」 授 業 に お け る学 習 者 自身 の 『振 り返 り』 の 意 義 」 『日本 語 教 育 学 会 中 国地 区第9回 研 究集 会』

参照

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