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ゼオライトを用いたエタノール混合ガソリン燃料の吸着分離

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(1)

成 膜 大 学 理 工 学 研 究 報 告 J,Fac.Sci、Tech.,SeikeiUniv. Vol.48No.2(2011)pp.105-110 (特 別 研 究 費 に 係 る 論 文)

ゼ オ ラ イ ト を 用 い た エ タ ノ ー ル 混 合 ガ ソ リ ン 燃 料 の 吸 着 分 離

栗 原 瞭 輔*1・ 向 山 昂*2・ 浦 崎 浩 平*3・ 山 崎 章 弘*4・ 里 川 重 夫*5

Adsorptive

Separation

of Ethanol-Blended

Gasoline

Fuel by Zeolites

Ryosuke KURIHARA*1,

Takashi MUKOYAMA*2,

Kohei URASAKI*3,

Akihiro YAMASAKI*4° Shigeo SATOKAWA*5

(Received October 5, 2011)

1.は じ め に

1.1研

究 の 背 景

21世 紀 へ 引 き継 がれ た大 きな 問題 と して 「

エ ネ ル ギ ー

問 題 」 と 「

地 球 環 塊 問題 」 が あ る。 この2つ の 問 題 は,

と もに 緊 急 性 を有 して お り,それ ぞれ 深 く関 わ っ て い る。

エ ネ ル ギ ー 問 題 」 で そ の 対 処 を急 が れ て い るの が 化 石

燃 料 の 枯 渇 で あ る。石 油 や天 然 ガ ス は21世 紀 半 ば に,石

炭 もそ れ ほ ど遠 くな い未 来 に 使 い 果 た して し ま うと予 測

され て い る。一 方,「 地 球 環 境 問 題 」で は,特 に人 類 の 活

動 に 起 因 した 膨 大 な 温室 効 果 ガ ス の排 出 に よ り温暖 化 が

加 速 し,地 球 環 境保 全 に 深刻 な影 響 を与 え始 めて い る。

この よ うな こ とか ら環 境 に や さ しい 代 替 エ ネ ル ギ ー の 開

発 が 求 め られ て い る1)。

1.2バ

イ オ 燃 料 の 種 類

現在,バ

イ オ マ ス 由 来 の燃 料 が 世 界 的 に注 目され て い

る。 バ イ オ マ ス とは植 物 由 来 の 資 源 の こ とで あ る。植 物

は 光 合 成 に よっ て 大 気 中の 二 酸化 炭 素 を 吸 収 して 炭 素 を

固 定 化 して い るた め,燃 焼 して エ ネ ル ギ ー を 利 用 して も

地 球 上 の 二 酸 化 炭 素 量 を増加 させ た こ と にな らな い2)。

欧 州 や 米 国 で は この よ うな植 物 起源 の 燃 料(バ イ オ 燃

料)の 導 入 に積 極 的 に 取 り組 ん で お り,導 入 目標 が 設 定

され る と と もに 政 策 的 な 支 援 も行 な わ れ,様

々な 側 面 か

らバ イ オ燃 料 に 対 す る期 待 が 高 ま っ て い る3)。欧 州 で は,

燃 費 の 良 さか らデ ィー ゼ ル 自動 車 の 導 入 が 積 極 的 に行 な

わ れ て きた の で,バ イ オ 燃 料 と して はデ ィー ゼ ル 燃 料(軽

油)と 性 状 の近 いバ イ オ デ ィー ゼ ル燃 料(植 物 油 を原 料

と した脂 肪 酸 メ チル エ ス テル)の

導入 が盛 ん に 行 な われ

て い る。 一 方,北 米 で は ガ ソ リン 自動 車 が 多 く利 用 され

て い る こ とか ら,ガ ソ リ ン燃 料 に性 状 の 近 い エ タ ノール

混 合 ガ ソ リ ン(ガ ソ リン に植 物 由 来 の エ タ ノー ル を 一 定

割 合加 えた もの)燃 料 の利 用 が進 め られ て い る。

*1:理 工 学 研 究 科 理 工 学 専 攻 博 ± 前 期 課 程 学 生 *2:理 工 学 研 究 科 理 工 学 専 攻 博 ± 前 期 課 程 修 了 生 *3:物 質 生 命 理 工 学 科 助 教 *4:物 質 生 命 理 工 学 科 教 授 *5:物 質 生 命 理 工 学 科 教 授(satokawa@st .seikei.ac.jp) 1.3バ イ オ エ タ ノ ー ル 燃 料 の 利 用 動 向 エ タ ノ ー ル は 一 般 に 発 酵 法 で 製 造 さ れ,サ ト ウ キ ビ, 大 麦,ト ウ モ ロ コ シ,大 豆 と い っ た 植 物 資 源 に 含 ま れ る グ ル コ ー ス な ど の 糖 を 発 酵 させ て 生 成 す る 。 こ の よ うな 方 法 で 製 造 す る エ タ ノ ー ル は 植 物 由 来 の 燃 料 で あ る こ と か らバ イ オ エ タ ノ ー ル 燃 料 と 呼 ん で お り,酒 類 に 含 ま れ る ア ル コ ー ル と 同 様 の 製 法 で あ る 。 北 米 で は ト ウ モ ロ コ シ を 主 原 料 と し て 製 造 し た エ タ ノ ー一一ル を 用 い た エ タ ノ ー一一ル10%混 合 ガ ソ リ ン(ElO)が 主 流 で あ る が,さ ま ざ ま な 濃 度 の エ タ ノ ー ル 混 合 ガ ソ リ ン が 使 用 可 能 な フ レ キ シ ブ ル 燃 料 自 動 車(FFV)も 普 及 し つ つ あ り,エ タ ノー一一ル85%混 合 ガ ソ リ ン(E85)も 燃 料 と し て 使 用 され て い る。 一 方,中 南 米 で は サ ト ウ キ ビ を 主 原 料 と し た バ イ オ エ タ ノ ー ル を 用 い て お り,ブ ラ ジル の 一 般 車 両 は 全 て エ タ ノ ー一一ル25%混 合 ガ ソ リ ン(E25) 対 応 と な っ て い る。 ま た,一 般 車 両 の 他,100%エ タ ノ ー一一 ル を 燃 料 と す る エ タ ノ ー ル 専 用 車 も利 用 さ れ て い る 。 欧 州 で は,デ ィ ー ゼ ル 車 が 多 い こ と か ら 自動 車 用 バ イ オ 燃 料 と し て は バ イ オ デ ィ ー ゼ ル 燃 料 の ほ うが 主 流 で あ る が,バ イ オ エ タ ノ ー ル の 利 用 も 増 加 し て い る 。し か し, 混 合 割 合 は 北 米 や 中 南 米 と 比 べ る と低 く,フ ラ ン ス や ス ペ イ ン で は バ イ オ エ タ ノ ー ル そ の も の で は な く,石 油 由 来 の 原 料 で あ る イ ソ ブ テ ン と反 応 し て 得 たETBE(エ チ ル タ ー シ ャ リ ー ブ チ ル エ ー テ ル)を 用 い る こ と が 特 徴

(2)

で あ る。 尚,日 本 も同様 の 方 式 を採 用 して い る。 ア ジ ア

各 国 に お い て もバ イ オ エ タ ノー ル の 導 入 は盛 ん で あ り,

中国 で は トウモ ロ コ シや 小 麦 を,東 南 ア ジア 諸 国 や イ ン

ドに お い て は サ トウキ ビを 原 料 とす るバ イ オ エ タ ノー ル

が ガ ソ リン と混 合 され て 利 用 され,混 合 割 合 につ い て は

10%が 主流 に な っ て い る。 表1に

各 国 に お け るバ イ オ エ

タ ノー ル 混 合 ガ ソ リンの 混 合 比 率 を 示 す4)。

表1各

国 の エ タ ノー ル 混 合 比率 と そ の原 料4)

地 域 国 混 合 率/% 原 料 北 米 アメリカカナダ 10.85 5∼10、85 トウモ ロコシ トウ モ ロコシ 、小 麦 、大 麦 中南 米 コロン ビアブラジル 20∼25、100 10 サ トウキビ サ トウキビ ヨー ロツパ ス ウ ェー デ ン ス ペ イン フランス ドイツ イギ リス 5、10.85 3∼7(ETBE) 6∼7(ETBE) 低 率 5 小 麦 小 麦 、大 麦 甜 菜 、小 麦 ライ麦 、小 麦 トウ モ ロコシ 、小 麦 アジア イン ド 中 国 タイ フィリピ ン 5 10 10 10 サ トウ キ ビ トウ モ ロコシ 、小 麦 キ ャッサ バ 、サ トウ キ ビ サ トウ キ ビ オ セアニアニ ュー シ ー ラン ドオ ー ス トラリア 10 3、5.10 サ トウキビ 乳 糖

1.4燃

焼 制 御 に よ る 燃 費 向 上

近 年,内 燃機 関 は さ らな る燃 焼 効 率 の 向上 や 排 ガ ス ク

リー ン化 を要 求 され て い る。 そ の キ ー テ ク ノ ロ ジー と し

て 予 混 合 圧 縮 着 火(以

下HCCI)エ

ン ジ ンの研 究 開 発 が

あ り,実 用 化 が期 待 され て い る。 しか し,こ のHCCIエ

ン ジ ンは 低 負 荷 領 域 に お い て は 失 火,高 負 荷 領 域 で は ノ

ッキ ン グが 起 こ る とい っ た 重 大 な 課題 を 抱 え て い る。 こ

れ らの 問題 を解 決 す る手 段 と して エ タ ノー ル の 利 用 が 検

討 され て い る。 エ タ ノー ル は 高 オ ク タ ン価 燃 料 で あ るた

め,エ

ン ジ ンの 負 荷 が 高 い とき は エ タ ノー ル 割 合 を増 し

て オ クタ ン価 を増 大 させ,負 荷 が 低 い と きは エ タ ノー ル

の 割 合 を 減 ら しオ ク タ ン価 を減 少 させ て燃 焼 させ る こ と

が で き る。 この よ うな 制 御 を行 うこ とが で きれ ば,広 範

囲 で のHCCIエ

ン ジ ン の利 用 が で き,高 い効 率 と超 低NOx

が 実 現 で き る と され て い る5)。

しか し,こ の よ うな燃 焼 制 御 を実 現 す るた めに はエ タ

ノー ル とガ ソ リン を別 々 の タ ン クに貯 蔵 す る必 要 が あ り,

自動 車 に2種 類 の 燃 料 タ ン クが 必 要 にな るほ か,エ

タ ノ

ー ル の 供 給 イ ン フ ラを 新 た に 構 築 す る必 要 が あ る

。 これ

ま で 述 べ て き た エ タ ノー ル 混 合 ガ ソ リン燃 料 はエ タ ノー

ル とガ ソ リン を直接 混 合 して 供 給 ・

利 用 す る手 法 で あ り,

別 々 に 供 給 す るの は 難 しい と され て い る。 そ こで 車 両 に

供 給 され た エ タ ノー ル 混 合 ガ ソ リン を車 上 で 分 離 して 燃

焼 に利 用 す る方 法 が 考 え られ る。 燃 料 タ ン ク に供 給 され

た エ タ ノー ル 混 合 ガ ソ リン を走 行 中 に 分 離 して エ ンジ ン

に 供給 で き れ ば 走行 モ ー ドに応 じて エ タ ノール とガ ソ リ

ン の燃 焼割 合 を 制御 す る こ とが 可 能 とな る。

1.5分

離 技 術 の検 討

混合 され た エ タノ ール とガ ソ リ ンを 分離 す る 方 法 と し

て は蒸 留,抽 出,吸 着,膜 に よる 分離 が考 え られ る。 車

上 で の利 用 を考 える と,で き るだ け簡 易 な 装置 で必 要 な

とき だ け分 離 で きる 方 法 が 望 ま し く,上 記 方 法 の うち膜

分 離 が 最 も適 当 と考 え られ,我 々 の研 究 グ ル ー プ で も有

機 高分 子膜 を利 用 した浸 透 気 化 分 離 法 の検 討 を 行 な っ て

き た6)。 しか し,有 機 高 分子 膜 を利 用 した 方 法 で は 十 分

な 流速 が得 られ な い た め,無 機 膜 を利 用 した分 離 法 の 開

発 が必 要 とな っ て い る。 一方,吸

着 を利 用 した 分離 法 も

車 上搭 載 が 可能 な分 離 法 で あ る。 吸着 分離 法 の 場合 は,

吸 着 工 程及 び脱 着 工 程 が 必 要 な た め膜 分離 に 比 べ る と設

備 の 大型 化 は避 け られ な い が,高 性 能 な 吸 着剤 が 見 出せ

れ ば無 機 膜 素材 と して の応 用 も考 え られ,実 用 化 が 期待

され る研 究 分 野 とい える。 そ こで,本 研 究 で は 吸着 剤 で

あ り,無 機 膜 素材 と して も研 究 の進 め られ て い るゼ オ ラ

イ トに 着 目 した。

1.6ゼ

オ ラ イ ト

ゼ オ ライ トは1756年

に発 見 され た 細 孔 内 に ガ ス を 取

り込 む こ との で きる 天然 鉱 物 の 一 種 で,現 在 は 結 晶性 多

孔 質 ア ル ミ ノケ イ 酸塩 の 総称 と して 定 義 され て い る。 構

造 の基 本 単位 は 正 四 面 体構 造(SiO4)4'で あ る が,そ の一

部 が(AlO4)5'に

置 換 され る こ とで 骨 格 構 造 に負 電 荷 を

生 じ る物 質 で あ る。 こ こ で はSiO4及 びAlo4を

総 称 して

TO4と

呼 ぶ 。 各TO4単

位 は そ れ ぞ れ 隣接 した4つ

のTO4

単位 と頂 点 酸 素 を 共 有す る こ とに よ り,3次

元 的 に 連結

した骨 格 構 造 を 形成 す る。 そ の形 成過 程 で他 の 分子 が入

り込 む こ との で きる 細 孔構 造 を 生成 す るの が特 徴 で あ る。

主 なゼ オ ラ イ トの細 孔 直径 は0,4∼0.8nmで

あ り,細 孔

直径 よ り小 さい 分子 は細 孔 内 に侵 入 で きる が,大 き な分

子 は侵 入 で き な い とい う分子 ふ る い作 用 を 持 つ。

SiのAlへ の置 換 に よ り生 じ る骨 格 構 造 の負 電 荷 を 中和

す るた め,骨 格 構 造 外 に 交換1生の 陽 イ オ ン を 取 り込 む こ

とが で き る。 交 換1生陽 イ オ ン は イ オ ン 交換 反 応 に よ りそ

の 種類 を変 える こ とが で き る の で,イ オ ン 交換 に よ り細

孔 内 の 吸着 分子 へ の親 和 力 を 変化 させ る こ と も可能 で あ

る。 さ らに,骨 格 のSUAI比 を 変 え る こ とに よ り親 疎 水性

を 制御 で き る。 この よ うに合 成 お よび合 成 後 の修 飾 に よ

り,吸 着特 性 を 大 幅 に制 御 す る こ とが 可能 な の が ゼ オ ラ

イ トの 特徴 で あ る。主 なゼ オ ライ トの構 造 を 図1に 示 す 。

ゼ オ ライ ト細 孔 の 大 き さは,一 般 に 出入 り 口の 酸 素環

(3)

の 酸 素 数(員 数)に よ っ て 分 類 され る 。 大 ま か な 分 類 と し て は 小 細 孔 の8員 環(0.22×0.40∼0.37×0.51㎜),中 細 孔 の10員 環(0.26×0.49∼0.53×0.56㎜),大 細 孔 の12 員 環(0.42×0.42∼0.74×0.76㎜)と な る 。 員 数 と 孔 径 が 一 定 で は な い の は,環 を 構 成 す る 面 の 形 状 が 異 な る 場 合 や,平 面 か ら の ず れ が あ る 場 合 が あ る か ら で あ る 。ま た, 一 般 に 結 晶 学 的 細 孔 径 よ り も 実 効 吸 着 細 孔 径 の ほ うが 大 き い と 考 え ら れ て い る。 細 孔 径 を 制 御 す る 方 法 の1つ が 交 換1生陽 イ オ ン 種 を 変 化 さ せ る こ と で あ る 。LTA型 ゼ オ ラ イ トが そ の 典 型 例 で あ る が,LTA型 ゼ オ ラ イ トの 実 効 細 孔 径 は,陽 イ オ ン がNa+イ オ ン の 場 合 は 約0,4㎜,K+ イ オ ン に 交 換 す る と小 さ く な り約0.3㎜,逆 にCa2+イ オ ン に 交 換 す る と 約05㎜ に な る7)。 虜一ぞ・

B,・ミこち 鵬Eへ 曝 違∋1

E:、:r.二 二う二〇e 〔EPI鷹 ・害1 G1、 一∩・C二 ・ヒ {{}ISF毎 ・∋

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難輪

懸 鐙

一x豊 、 、「襲 一 〔Fへt噌星コき1 ZSSI5 {、IFI「耳:?一.1

2.実

験 方 法

2.1試

吸着 剤 と して は表2に

示す 市販 の 粉 末 状 の ゼ オ ライ ト

を 用 い た。 表2に は 吸着 剤 と して 用 い た 各試 料 の 結 晶構

造,交

換1生陽 イ オ ン種,製 造 元,SUAI比

の 違 い を示 し

て い る。前 処 理 と して400℃,2時

間,空 気 中 で加 熱 処理

して細 孔 内 に あ る水 分等 を 除 去 した。

表2使

用 した 吸 着 剤 一 覧

吸着剤

製造先

Si/Al比 K-LTA-1LTA Na-LTA-1LTA Ca-LTA-1LTA H-FAU-2.65FAU H-FAU-2.75FAU Na-FAU-2.75FAU H-FAU-1925FAU H-FAU-375FAU H-MF卜12MFl H-MFI-45MFl H-BEA-125BEA H-BEA-75BEA 東 ソー 東 ソー 東 ソー 触 媒 化成 工 業 東 ソー 東 ソー 東 ソー 東 ソー 東 ソー 東 ソー 東 ソー 東 ソー 1 1 1 2,65 2.75 2.75 1925 375 12 45 125 75

図1ゼ

オ ラ イ トの 骨 格 構 造8)

ゼ オ ラ イ トと 吸 着 分 子 の 親 和 力 の 大 き さ の 違 い に よ っ て 吸 着 量 は 大 き く 変 化 す る 。Si/AILLが 低 い ほ ど 強 い 親 水 性 を 示 し,極 性 吸 着 剤 と し て 作 用 す る 。LTA型(Si/Al=1.o), 低si/Al比 のEAu型(suAI=1.o∼1.5)ゼ オ ラ イ トは 典 型 で あ る 。Si/Al比 が 高 く な る に 従 っ て 静 電 場 強 度 が 低 下 し て,極 性 分 子 に 対 す る 相 互 作 用 が 弱 く な り,疎 水 的 ・ 親 油 的 性 質 が 現 れ る 。

1.7本

研 究 の 目的

本研 究 で は ゼ オ ライ トの 持 つ 多 様 な 性 質(細 孔 形 状,

細 孔径,交

換性 陽 イ オ ン種,表 面 の親 疎 水 性 の 相 違)を

利 用 し,こ れ らが ガ ソ リン成 分 とエ タ ノー ル の 吸 着 性 能

に どの よ うな影 響 を与 え るか を 検 討 した。 ま た,分 離 能

を評価 す るた め,ゼ オ ライ ト中 に 吸 着 され た 成 分 の 脱 離

条 件 に 関 す る検 討 も行 っ た。

2.2吸 着 試 験 吸 着 実 験 は 図2に 示 す よ うな 水 素 炎 イ オ ン化 検 出 器 付 き ガ ス ク ロ マ ト グ ラ フ(島 津 製 作 所GC-8A)に 接 続 さ れ た パ ル ス 式 反 応 装 置 を 用 い て 行 っ た 。反 応 器 内 径 は4㎜ φ で,こ の 中 に 粉 末 状 の 吸 着 剤 を20mg充 填 し て 石 英 ウ ー ル で 固 定 し た。 反 応 器 を 一 定 温 度(60∼100℃)に 保 持 し た 後,エ タ ノ ー ル 混 合 ガ ソ リ ン の モ デ ル 燃 料 と し て 調 整 し た ノル マ ル ヘ プ タ ン(n-C7Hl6:関 東 化 学)と エ タ ノ ー ル(EtOH:関 東 化 学)の 混 合 物 を マ イ ク ロ シ リ ン ジ で2 μL注 入 し た 。混 合 比 率 はn-C7Hl6:EtOH=1:1(重 量 比) の 条 件 で 行 っ た 。 吸 着 率 は ブ ラ ン ク 実 験 と 吸 着 実 験 で 得 ら れ た 各 成 分 の ピ ー ク エ リ ア の 比 率 か ら 求 め た 。 ガ ス ク ロ マ ト グ ラ フ の カ ラ ム に はGLサ イ エ ン ス 製 の BX-10(4㎜ φ ×3m)を 用 い た 。 触媒 層 反 応 器 80℃ INJfDET120ec BX-103m 100℃

図2パ

ルス 式反 応 装 置

(4)

2.3脱 離 試 験 脱 離 試 験 は 触 媒 分 析 装 置(BEL-CAr日 本 ベ ル 製)を 用 い,昇 温 脱 離 法 に よ り行 っ た 。 試 料 を ヘ リ ウ ム 気 流 中 で400℃ で 前 処 理 し た 後,n-C7Hl6とEtOHの1:1混 合 液 (重 量 比)を 気 化 させ た 蒸 気 を60℃ で 試 料 管 に 流 通 し て 飽 和 吸 着 さ せ,気 相 中 の ガ ス を ヘ リ ウ ム で パ ー ジ し た 後, 10℃/minで 昇 温 し な が ら脱 離 し て き た 成 分 を 質 量 分 析 計 で 分 析 し た 。

3.結

果 と 考 察

3.1ゼ オ ラ イ トの 種 類 に よ る 影 響 図3に 各 種 ゼ オ ラ イ トを 用 い た 場 合 のn-C7Hl6とEtOH の 吸 着 率 の 違 い を 示 す 。 H-BEA`75 H'BEA'125 H・MFI・45

H・MFI・12_

H.FAU.375 H.FAU'192 Na・FAU・2.75一 H'FAU・2.75_ H'FAU'2.65一 Ca'LTA.1・ Na・LTA'1■ K・LTA'1 020406080100 Adsorptionratio'% 図3各 種 ゼ オ ラ イ トに 対 す るn-C7Hi6吸 着 率(黒)とEtOH 吸 着 率(グ レ ー) 同 一 構 造 を 有 す る ゼ オ ラ イ トの 性 能 の 比 較 と し て,交 換1生 陽 イ オ ン 種 の 異 な るLTA型 ゼ オ ラ イ ト(K-LTA-1, Na-LTA-1,Ca-LTA-1)を 用 い た 吸 着 実 験 を 行 っ た 。 供 給 し た エ タ ノ ー一一ル 混 合 溶 液 の 混 合 比 は1:1と し た 。 K-LTA-1のn-C7Hl6吸 着 率 は ほ ぼ0%で あ り,EtOH吸 着 率 は17%で あ っ た 。Na-LTA-1のn-C7Hl6吸 着 率 は4.8%で あ り,EtOH吸 着 率 は74.10/・ で あ っ た 。Ca-LTA.-1の n-C7Hl6吸 着 率 は3.20/・で あ り,EtOH吸 着 率 は91.5%で あ っ た 。 以 上 の 結 果 か らLTA型 ゼ オ ラ イ トは い ず れ も n-C7Hl6を ほ と ん ど 吸 着 し な い が,EtOH吸 着 率 に 関 し て はCa-LTA-1が 高 い 吸 着 率 を 示 す こ と が わ か っ た 。 従 っ て,交 換1生 陽 イ オ ン 種 の 違 い がLTA型 ゼ オ ラ イ トの 吸 着 性 に 大 き く影 響 を 及 ぼ し て い る こ と が わ か っ た 。 一 般 に 交 換1生陽 イ オ ン 種 の イ オ ン 半 径 が 大 き い ほ ど ゼ オ ラ イ トの 細 孔 径 が 小 さ く な る た め,カ ル シ ウ ム イ オ ン に 比 べ て イ オ ン 半 径 の 大 き い ナ ト リ ウ ム イ オ ン や カ リ ウ ム イ オ ン の 場 合 は,ど ち ら の 吸 着 質 も 細 孔 内 部 に 侵 入 し に く く な っ た た め だ と考 え ら れ る 。 次 に 同 一 の 骨 格 構 造 を 有 し な が らSi/Al比 の 異 な る 場 合 の 影 響 に つ い て 検 討 し た 。 ゼ オ ラ イ トに はLTAee造 よ り も 細 孔 径 が 大 き く,物 理 的 に は ど ち ら の 吸 着 質 も 吸 着 可 能 なEAU構 造 を 有 す る ゼ オ ラ イ トを 用 い た 。 骨 格 構 造 を 形 成 す る金 属 イ オ ン のSUAI比 は2.65∼375の 範 囲 で4種 類 の 試 料(H-EAU-2.65,H-EAU-2.75,H-FAU-lg25, H-EAU-375)を 用 い,交 換1生 陽 イ オ ン 種 は い ず れ も 水 素 イ オ ン タ イ プ を 用 い た 。 供 給 し た エ タ ノ ー ル 混 合 溶 液 の 混 合 比 は1:1と した 。H-EAU-2,65を 用 い た 場 合,EtOH は100%吸 着 した が,n-C7Hl6吸 着 率 は17.7%で あ っ た 。 H-EAU-2.75の 場 合 はC7Hl6吸 着 率 が20.8%で あ り,EtOH 吸 着 率 は81,8%で あ っ た 。H-EAU-192.5を 用 い た 場 合 は n-C7Hl6吸 着 率 が91.3%と な り,EtOHは 全 く 吸 着 し な か っ た 。 さ ら に,高si/Al比 のH-FAu-375を 用 い た 場 合 は n-C7Hl6吸 着 率 が100%で あ る の に 対 し,EtOH吸 着 率 は lo,3%で あ っ た 。 以 上 の 結 果 か ら,Si/Al比 が 低 い H-EAU-2.65やH-EAU-2.75はEtOHを,Si/Al比 の 高 い H-EAU-1925やH-EAU-375はn-C7Hl6を 選 択 的 に 吸 着 す る 性 質 の あ る こ と が 分 か っ た 。 一 般 的 に ゼ オ ラ イ トは SUAI比 が 低 い も の は 親 水 性,SUA1比 が 高 い も の は 疎 水 性 に 富 む こ と か らn-C7Hl6とEtOHの 選 択 性 にSUAI 比 が 影 響 し た と 考 え られ る。 さ ら に,構 造 が 異 な っ た 場 合 に ど の よ うな 影 響 を 起 こ す か 調 べ る こ と を 目 的 と し,MFI構 造 を 有 す る H-MFI-12,H-MFI-45やBEA構 造 を 有 す るH-BEA-12.5, H-BEA-75を 用 い て 吸 着 実 験 を 行 っ た 。 供 給 し た エ タ ノ ー ル 混 合 溶 液 の 混 合 比 は1:1と し た 。MFI構 造 を 有 す るH-MFI-12を 用 い た 場 合 はn-C7Hl6吸 着 率 が55,8%で あ り,EtOH吸 着 率 は96.6%と な っ た 。 同 一 構 造 でSi/Al比 の 高 いH-MFI-45の 場 合 はn-C7Hl6吸 着 率 が809%で,

EtOH吸 着 率 は97.20/・と な っ た 。MFI構 造 で もSUAI比 が 高

いH-MFI-45の ほ うが 疎 水 的 に な る の で,H-MFI-12に 比 べn-C7Hl6の 吸 着 量 が 多 く な る こ と が 確 認 で き た が ,EAU 構 造 やLTA構 造 に 比 べ る と 吸 着 率 の 差 は 小 さ か っ た 。 BEA構 造 を 有 す るH-BEA-12.5を 用 い た 場 合,n-C7Hl6吸 着 率 は999%で,EtOH吸 着 率 は100%で あ っ た 。 同 構 造 でsi/Al比 の 高 いH-BEA-75を 用 い た 場 合 はn-c7Hl6吸 着 率 が96,2%でEtOH吸 着 率 は95.2%で あ っ た 。BEA構 造 の 場

(5)

合 は,ど のSUAI比 で も 同 じ よ うな 吸 着 率 と な り吸 着 率 の 差 は ほ と ん ど 見 ら れ な か っ た 。 こ れ はBEA構 造 の 細 孔 径 は12員 環 で あ る こ と か らn-C7Hl6とEtOHの 両 吸 着 質 が 細 孔 内 に 侵 入 し や す く,8員 環 細 孔 のLTA構 造 や10員 環 細 孔 のMFI構 造 よ り も 吸 着 質 に 対 す る 選 択 性 が 小 さ か っ た た め と 考 え ら れ る 。 吸 着 分 離 プ ロ セ ス に 用 い る 吸 着 材 と し て はn"C7Hl6と EtOHの 吸 着 率 の 差 の 大 き な 場 合 に 選 択 性 が 高 い と 判 断 で き る。 これ ま で の 検 討 結 果 か らCa-LTA-1がEtOH選 択 性 に 優 れ た 試 料 で あ り,H-FAU-375が πC7Hl6選 択 性 に 優 れ た 試 料 で あ る と い え る 。 3.3吸 着 温 度 の 影 響 吸 着 材 にCa-LTA-1とH-FAU-375を 用 い て,吸 着 温度 に よ る影 響 を 調 べ た 。Ca-LTA-1は60℃ の 場 合 はnmC7Hl6吸 着 率 が13%で あ り,EtOH吸 着 率 は100%で あ っ た 。 吸 着 温 度 を80℃ に し た 場 合,n"C7Hl6吸 着 率 は14%で あ り,EtOH 吸 着 率 は100%で あ っ た 。 さ ら に,100℃ に し た 場 合, n-C7Hl6吸 着 率 は6%で あ り,EtOH吸 着 率 は80%で あ っ た 。 温 度 上 昇 に よ り全 体 に 吸 着 率 は 低 下 傾 向 に あ る が,選 択 性 に 大 き な 変 化 は な か っ た 。 一 方,H-FAU-375は,60℃ の 場 合 はn--C7Hl6吸 着 率 は100%で あ り,EtOH吸 着 率 は67% で あ っ た 。 温 度 を80℃ に し た 場 合 は,πC7Hl6吸 着 率 は 100%の ま ま で あ る が,EtOH吸 着 率 は6%と な っ た 。100℃ に し た 場 合 は,n-C7Hl6吸 着 率 は60%に 低 下 し,EtOH吸 着 率 は0%に 低 下 した 。 こ ち ら も 温 度 上 昇 に よ る 吸 着 率 の 低 下 傾 向 は 同 じ で あ る が,選 択 性 へ の 影 響 は 大 き い こ と が 示 唆 さ れ た 。 3.3脱 離 試 験 K-LTA-1,Na-LTA-1,Na-FAU-2.75の 場 合 は πC7Hl6の 脱 離 ピ ー ク は 全 く 検 出 さ れ な か っ た 。 こ れ らの 試 料 は い ず れ も パ ル ス 法 で もnrrC7Hl6の 吸 着 が 認 め ら れ な か っ た 試 料 で あ る の で,ど ち ら の 試 験 で もnTC7Hl6は ほ と ん ど 吸 着 し て い な い も の と 思 わ れ る 。EtOHは100∼300℃ の 間 で 脱 離 ピ ー ク が 観 測 さ れ,加 熱 に よ り脱 離 す る こ と が 認 め ら れ た 。 一 方,H-FAU-2,75,Ca-LTA-1は πC7Hl6の 脱 離 ピ ー一一 ク が 検 出 さ れ た ほ か に,EtOH由 来 の 脱 離 ピ ー一一ク と して エ チ レ ン に 起 因 す る ピ ー ク も 現 れ た 。図4にH-FAU-2.75と Na-FAU-2.75の エ チ レ ン 及 びEtOHの 昇 温脱 離 ス ペ ク トル を 示 す 。Na-FAU-2.75がEtOHの 脱 離 ピ ー ク し か 示 さ な い の に 対 し,H-FAU-2,75の 場 合 は180℃ 付 近 にEtOHの 脱 離 ピ ー ク を 示 す だ け で な く,250℃ 付 近 と400℃ 付 近 に エ チ レ ン に 起 因 す る ピ ー一一ク が 観 察 さ れ た 。H-FAU-2.75は 酸 触 媒 と し て の 性 質 を 有 す る の で,EtOHは 単 純 に 脱 離 す る だ け で な く,一 部 は 脱 水 反 応 に よ り エ チ レ ン を 生 成 し て し ま う も の と 思 わ れ る 。 -、 h 壱 5 祠5 、 h ↓ 個 u堕 唱 ① ↓ 唱 印 100200300400500600 Temperature/OC 100200300400500600 Temperature/oC 図4Na-FAU-2.75(上)とH-FAU-2.75(下)の 脱 離 試 験 結 果 エ チ レ ン(黒),EtOH(グ レ ー) 4.ま と め エ タ ノ ー一一ル 混 合 ガ ソ リ ン の モ デ ル 試 料 と し てn-C7Hl6と EtOHの 混 合 物 を 用 い て ゼ オ ラ イ トに よ る 吸 着 分 離 を 試 み た 。 ゼ オ ラ イ ト構 造,交 換 性 陽 イ オ ン,Si/A1に よ り 吸 着 性 能 は 異 な る が,低Si/A1の ゼ オ ラ イ トで はEtOHを,高 Si/A1の ゼ オ ラ イ トで はn-C7Hl6を 吸 着 す る 傾 向 が あ っ た 。 Na型 ゼ オ ラ イ トで は 吸 着 し たEtOHは300℃ 以 下 で 脱 離 す る が,H型 ゼ オ ラ イ トで はEtOHの 他 に エ チ レ ン の 生 成 が 認 め られ,脱 水 反 応 が 進 行 す る こ と が 分 か っ た 。

参考文献

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参照

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