NII-Electronic Library Service 【論 文
1
UDC ;691.
32 :69.
059.
22 :624.
012.
45 日本建 築学 会 構 造 系 踰 文 報 告集 第 3B4 号・
昭 和 63 年 2 月鉄 筋
コン
ク
リ
ー
ト
造 建 築 物
に
お け る
鉄 筋
の
か
ぶ
り
厚
さ
の
信 頼 性 設 計
手
法
の
提 案
一
コ ン ク リー
トの中性 化
に よ っ て鉄 筋
が腐食
す る場 合
一
正 会 員 正 会 員 正 会 員和
嵩
押
泉
田* 料 ホ ホ ホ
志
雄
雄
登意
英
文
1.
序 鉄 筋 コ ン ク リー
ト造 建 築 物は,
従 来 耐 久 性に優れ た も の との社 会 的 評 価がな さ れ て い たが,
近年の劣 化 故 障の 顕 在 化によ り,
期 待 されて いる耐 久 性が確 保さ れて いる か,
疑 問 視さ れる よ うになっ て き た3}−
6)。
今 後 新設 され る 鉄 筋 コ ン ク リー
ト造 建 築 物の耐 久性を確 保する ために は,
耐久設 計 技 術 を確 立す ることが 不 可 欠である。 建 築 物の設計者は, 常に耐 久 性 を考 慮し た設 計 を行っ て き た はずで あ るが,
定 量 的な算 定 手 法は標 準 化さ れ て い な かっ たのがこ れまで の実 状であろう。 建 築 物 ま たは部 材の経 時 的 な 品 質特性 を 『耐 久 性』と か 『寿 命』など とい う言 葉で表 現し てきた。
こ れ ら の言 葉に は定性的な定 義は あっ ても, 定 量 的に定 義され て い な かっ た。
この こ とが,
耐 久 性 設 計とか寿 命 予 測な どの 定 量 的 な算 定 法を確 立す る上で の障 害と なっ て い た の で は ないか と思わ れ る。
信頼性工学の分 野では, 信 頼 性 を 「アイテムが与え られ た条 件で規 定の期 間 中,
要 求さ れ た機 能を果た す こと がで き る性 質」 〔JIS
Z
8115 )7]と定 義し,
耐 久 性を含むより広い概 念と して用い てい る。 信 頼 性を定 量 化 し,
確 率で表し た ものが, 信頼度 7) で あ る。
こ の 信頼度 を 数 量 的に扱うこ とに よっ て,
定 量 的な設 計 や予 測が可能と なっ ている。
鉄筋コ ンクリー
ト造 建築物の耐 久 性の設 計 とか寿 命の 予測を行う た めに は, 信 頼 性 工 学における定 量 的な考え 方を導入 す る必要が あ る と考える。
まず 最 初に必 要な こ と は,
対象と は何か, そ の適 正な機 能 とは何か, し たがっ て故障と は何か,
規定の 使用 環 境,
規 定の時 間,
を 明確にす ることであ る8) 。 本 研 究は, 定量的な耐 久性設計 法がい ま だ確 立されて い ない状況に おい て,
信 頼 性 工 学の考え方 を導 入した新 しい鉄筋の か ぶ り厚さ の耐 久 性 設 計 手 法を提 案する こと 本論文の一
部は, 昭 和59, 61年度日本 建 築 学 会 大 会学 術講 演 梗概 集1)・
Z] に発表して い る。 * 〔株 )竹 中 工 務 店 技 術 研 究 所 主 任 i* (株)竹中工務 店 技 術研究 所 主 席 研 究 員 *1* 〔株 )竹中工務店技術研究所 研究 員 (昭 和 62 年 7 月7日原 禍 受理 ) を 目的と し たものである。
鉄 筋の か ぶ り厚 さの耐 久 性 設 計につ い て は,
鉄 筋の腐 食を引き起こす劣 化 原 因ご とに 手 法 を確 立する必 要が あるが,
こ こ で は,
筆 者ら が数 年 来 自ら実 施 してきた経 年 劣 化 建 築 物の実態調査の統 計処 理結 果9 }・
1ωを 基に,
コ ン ク リー
トの中 性 化によっ て鉄 筋 が腐食 す る 場 合に つ い て報 告する。
2.
本手法の基本概 念 鉄 筋コ ン クリー
ト造 建 築 物におけるコ ンク リー
トの中 性 化は,
経 年 的に着 実に進 行 し て いく。 こ の ため,
コ ン ク リー
ト中の鉄 筋は中 性 化に よっ て いつ か は腐 食す る宿 命にある。
本 手 法では,
コ ンクリー
トの 中性 化に よっ て 鉄 筋が腐 食し, 鉄 筋コ ン クリー
ト構 造 物とし て の所要の 機能を満た すこと が できなくなる場 合に限 定して いる。本手法の基 本 的な考え方は
,
44件の実 際の経 年劣化 建築 物に お け るコ ンク リー
トの中性 化 深さ, 鉄 筋の腐 食 状況 お よびか ぶ り厚さの実 態 調 査 結 果9LI°) をべ一
ス に し た もの で あり,
信 頼 性工学の考え方に基づい て, 鉄 筋コ ン クリー
ト造 建 築 物にお け る鉄 筋 腐 食に よ る故 障 (以 下 腐 食 故障と呼ぶ )を,
鉄 筋が腐食する確 率で定 量 的に定 義し よ う と す る もので あ る。
し た がっ て, 上 述の明 確に すべ き4項 目s)を以 下の よ うに定め る。
対 象とは何か :鉄 筋コ ンク リー
ト造 建 築 物ま た は鉄 筋コ ン クリー
ト部 材 故 障とは何か :コ ン ク リー
ト中の鉄 筋が腐 食し て要求性 能 を満た さ な くなっ た 状 態 (鉄 筋の腐 食 確 率で定 義 す る) 規 定の使 用 環 境 :一
般大気 中 (屋内外 ) 規 定の時 間 :目標 耐用年 数 し た がっ て,
水や土に常 時 接し てい る場 合,
有 害な塩 分 を含ん でいる場 合, 化 学 的 作 用また は激し い気 象 作用 を 受ける場 合な どは,
対 象か ら除 外す る。3.
鉄 筋の腐食確率 3,
1 定 義 鉄 筋の腐 食 確 率とは, 対 象と する鉄筋コ ン ク リー
ト部 材 中の鉄 筋の内,
有害な腐 食 状 態に あ る鉄 筋の確 率 と定一
58
一
N工 工一
Eleotronio Library義する
。
有 害な腐 食 状態 とは,
鉄 筋コ ン ク リー
ト部 材を 構 造 面,
機 能 的 安 全 面また は美 粧 面の いずれ か ら捕え る か に よっ て異っ て く る。 しか し,
これ らに関し ての研 究 は森永博士等11 )に よっ て進め ら れ て は い る もの の,
いず れの面か ら も有 害と さ れ る鉄 筋 腐 食の定 量 的な状 態は明 ら か に さ れ ていない のが現状であ る。 し た がっ て,
こ こ で は鉄 筋の有 害な腐 食状態を,
腐食グレー
デング12 )がm
(断 面 欠 損は 目視観 察で は認め ら れ ないが,
鉄 筋の 全 周 また は全 長に わ たっ て浮き さびが生 じて いる;さ び評点 3) または】V
(断 面 欠損を生 じて い る ;さ び評点 6)の 状態と定性的に定義 する。 腐食 確率は, 環境条 件別, 部材別お よ び鉄 筋の種 類 別 に表す。
例えば,
屋外に面す る柱の フー
プ 筋の全長をL
と し, この 中で有害な腐 食 (腐 食グレー
デング がm
ま た はW
)を生じ てい る部 分の全 長を1
と す る と,
鉄 筋 の 腐 食 確 率P
とは,P
= (l
/L
)の こ とで ある。 こ の値 (l/L)は ラ ンダム にN
本の フー
プ筋 を はつ り出し,
有 害 な腐 食 を生 じて い る フー
プ 筋 をn 本とし た場合, /V
が 十 分に大きい値で あ れ ば(n/N>に一
致す ることにな る。
3.
2 算 定の た め の与 条 件 筆者ら が実 施し た経 年 劣 化 建 築 物の実 態 調 査の統 計 処 理結果9)・
1°) や既往の研 究 成 果を基に,
以 下の条 件 を設 定 す る。
3.
2,
1
中性 化速度 中性 化 速 度は,
経 過 時 間 tの平 方 根に比 例して進 行 す る とい うv7 則で 表 さ れ るの が最も一
般的で あ る9〕・
13) 。 こ こ で も,
v7 則に従い, 中 性 化 深さの平 均 値 α は以 下の式で示すことにす る。
Ct=
α×β×γ ×A
………・
・
…・
…・
…・
……・
・
(1) α :環 境 条 件による係 数 β:仕 上 材に ょ る 係数 γ :コ ン ク リー
トの品質によ る係 数 t:材 令 3.
2.
2 中 性 化 深さのば らつ き 経 年建物の実態調 査9や レデー
ミ クス トコ ン ク リー
ト の中 性 化 深さの ば らつ きに関 する実va14
)に 基づ き 「中性 化 深さ の ば らつ き は正 規 分 布で, 変 動 係 数 v は材 令に 関 係な く一
定である」と設 定する。
3.
2.
3 鉄 筋の か ぶ り厚さの ば らつ き 経 年 建 物の実 態 調 査1°} に基づ き 「鉄 筋のか ぶ り厚さの ば らつ き は正 規 分 布であ る」と設 定す る。
3.
2.
4 コ ン ク リー
トの中 性 化と鉄筋腐食との関 係 経 年 建 物の 実 態 調 査9 }か ら,
図一
ユが得られ て い る。
図一
ユ で は,
縦 軸は平 均さび評 点 を表し,
横 軸は鉄 筋 表 面か ら 中 性 化 領 域 までの距 離 を 表 してい る。
この図か ら,
屋外では中性 化 領 域が 鉄 筋 に 到 達 す る と 急速に腐 食し始 めるが,
屋 内では中性 化 領 域 が鉄 筋に到 達して も急 速に 腐 食 する ことは な く,
腐 食の進 行は比 較 的 緩やか で あ る こ と が分か る。
有 害な鉄 筋の腐 食 状態 (腐 食グ レー
デン グがHI
ま た はIV
)は,
さび評 定が 3以 上 となっ た状 態と 定義した の で,
さび評 点が 3と な る鉄 筋の表面 か ら中性 化 領域まで の距離を,屋 内 外につ い て そ れぞれ求める と, 屋外で は0
, 屋内で は一
20mm− −
30 mm と なる。
し た がっ て,
屋外面で風雨に さ ら さ れ る場 合に は,
「コ ンク リー
ト中の鉄筋 は中性 化領 域が鉄 筋 表 面に到達する と 同時に有害な腐食 状態 と な る」,
屋 内 面の場 合に は安 全 側 とし て一
20mm を と り,
「コ ンク リー
ト中の鉄 筋は’
中 性 化領域が鉄 筋の か ぶ り 厚 さ を20mm 通 り こ し た時 点で有害な腐食状態と な る」と設定す る。 3.
3 算定 方 法 ば らつ き を もっ たコ ン ク リー
トの中 性 化の進 行と ばら』
つ きをもっ た鉄 筋の か ぶ り厚さの関 係を,
概 念 的に図一
2に示す。
中 性 化深さ は,
材令と ともに大 きく な り,
そ の標 準偏差 σ も材令t
と と も に 大 き く な る。一
方,
鉄 筋の か ぶ り厚さは材 令に関係な く あ る ば らつ き を もっ て 存 在して いる。 図一
2に示し た中 性 化 深さの分布の経 時 的な進 行と,
鉄 筋の か ぶ り厚さの分布との関 係 を,
よ り 分か り やすくするために,一
次 元 的に表 し たのが 図一3
で あ る。
中性化 深 さ は,
材 令と ともに平 均 値が大き く な 平 均 さ び 評 点 6543210x (mm ) 》−
30−
20−
1Q Q lO 20 30 40 50 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜』
30−
20−
10 0 10 20 30 40 50 図一
1 鉄筋の腐 食に 及 ぼ す 鉄 筋 表面か ら中 性 化 領 域まで の影 響 9) し 中 性 化 深 さ一
Cー
材 令 t 図一
2 中性 化の進 行と鉄 筋の か ぶり厚さNII-Electronic Library Service 中性 化 深さCt のぱ らつ き かSb 厚さD } 図
一
3 中 性 化 深さのば らつ き と鉄 筋のか ぶ り厚さ の関係 り,
ばらつ き の度合も材令と と も に増大 し,
あ る時 点か ら中性化深さの分布は,
か ぶり厚さの分布と重な る よ う にな る。
この ことは,
中 性 化 深 さ が 鉄 筋のか ぶ り厚さに 到達し た個
所が,あ る確率で存在す るこ と を示して いる。 材 令 tに お け る中 性 化深 さの分布ノ(C
,)を,
平均 値 がC
,で,
標 準 偏差 がC
,・
v で あ る 正規 分 布 N。(C
,,
Ci・
vt)と し,
鉄 筋の か ぶ り厚 さ の分 布f
(D
)を平 均 値 がD で,
標準偏 差が σ である正規分布 N。(D,
♂)と す る。
鉄 筋の か ぶ り 厚 さ と中性 化 深 さの 差の 分布f
(D − C
,)は, (D − C
,)を平均値と し, (ci・
ガ+σ 211/2を 標 準 偏 差とする正 規 分 布 N。.
c[(1)− Ct
),
(ci・
が+σ2)]と な り,
以 下の式で示される15)。
1 /(D − c
∂菖
_
2 π・
(Cl・
vt +σ’).
exp−
1
(b
,・〕一
の一C
謂….
(、) 2(Cf・
v2 +σ2) し たがっ て,
材 令t
にお け る鉄 筋の腐 食 確 率P
は, 上 述の与 条 件に より, 図一
4に示 す 正 規 分 布No−
c のO
mm 以下 (屋外 )ま た は一
20 mm 以下 (屋内 )の面 積 で, 以 下の式で示され る。
1) 屋 外 面で風 雨に さらされる場 合P −
∫
二
∫ω一
・即一
ω・
…・
・
一 …・
……
(・)2
) 屋 内 面の場 合P ・
・
f
二
t °f
(・一
・・)・{D − c
・)一 ・
…一 ・
・
…・
(・) こ こ に,C ,
,
v,D ,
お よ びσ を与え る ことに よっ て,
鉄 筋の腐食確率P
を算定す るこ と がで き る。4.
鉄 筋の腐 食故障 4.
1 定 義 鉄 筋コ ン ク リー
ト構造物ま た は部 材が, コ ンク リー
ト 中の鉄 筋 腐 食に よっ て, 要求さ れ ている機能を満た さ な く なっ た状 態 を,
「鉄 筋の腐食故障」と呼ぶ ことにする。
4.
2 鉄 筋の腐 食 確 率に よ る定 量 化 耐 久 性 設 計や寿 命予測を定量的に算定す る た めに は,
「鉄 筋の 腐 食 故 障 を 定 量 化」す る必要が あ る。
鉄 筋の 腐 食 故 障を鉄 筋の腐 食 確 率で定 量 化する場合, 以下の項目 を考 慮して設 定する必 要が あると考え る。
建築 物の社会・
文化 的な重要 性 日常時の安全性 (コ ンク リー
トの は く落が生じ る よ う な事 故が発 生し た場 合の,
人 体や器 物に対する 損 傷 を 与え る可能性 )一
60
一
表F −
1 鉄 筋の腐食確率と劣化症状との対 応 鉄 筋 の腐 食 確率P {% ) 劣 化 症 状 の 発 生 状 況 P<0.
5 健 全で、
劣 化症状が見られ ない 0,
5≦P< 3 少数の劇・
な ひびわ れ (錆汁冨
) 3≦Pく15 各所に ひびわ れ (錆汁革
〕,
少数の鋼離・
劔 落 15≦Pく 50 各 所 に剥 離・
劔 落や鉄筋 霈出 50≦P 半分 以 上の面に剥 離・
剥 落や 鉄筋 露 出 *錆汁は屋 外の場 合に顕 著に現 わ れる 表一
2 鉄 筋の腐 食 故 障 と 考え る鉄 筋の腐 食 確 率P の提 案 値 損 傷 を 与 える可 能 性の 建 築 物の重 要 性 有 り 無 し 特に大きい 7 %以 下 15 % 以 下 大きい 15 %以下 30 %以 下 普 通 30 % 以 下 50 %以下 t)
鉄 筋 廨 食に よ り、
か ぶ りコ ン ク リー
ト が 落下 し たと き、
人 身 や 器 物に損 傷 を 与 え る 可能 性 鉄 筋の構 造 的な重 要 性 (どの部 材にど ういう機 能 を持っ て使 用さ れて い る か,
鉄 筋の種 類 ) 鉄筋の腐食確 率で鉄 筋の腐食故 障を設 定 する の は,
構 造 設 計 者が あ た るべ きであ る。 構 造 設 計 者は,
建 築 物の 所 有 者 (ま た は管 理 者 )の意 向を十 分 理 解した上で,
自 己の設計思想に基づい て こ の値を設 定す る必 要が ある。
参 考まで に,
筆 者 等の建 物 調 査の経 験 を もとに し て, 建 築 物の劣 化 症 状におお よその鉄 筋の腐 食 確 率 を対 応さ せ た もの が表一
12)で ある。
筆 者ら は,
上 述の 3項目を 考 慮し,
表一
1を参 考に, かつ文 献 15) を 参 考に して,
鉄 筋の 腐 食 故 障 と 考える 鉄 筋の腐 食 確 率の最 大 値を表一
2の ように提 案する。5.
鉄 筋 の 設 計かぶ り 厚 さ5.1
定 義 耐 久 性 上 必 要 とされ る鉄 筋の か ぶ り厚さに対して, 施 工誤 差 (ばらつ き)を見込ん だ,
設 計に用い る か ぶ り厚 さの ことを 「鉄 筋の設 計か ぶ り厚さ」と定 義する。
5.
2 算 定 方 法 鉄 筋の腐 食 故 障 を 鉄 筋の腐 食 確 率 P で定 量 的に定 義 (P
を 設 定 )し, 目 標 耐 用 年 数T
をt
に代入 し,C
,, v および σ を定める と, 式 (2)〜
(4> を 用いて鉄 筋 の か ぶ り厚 さD
を 求める ことがで き る。
こ の算 出され たD
の値が鉄 筋の設 計か ぶ り厚さD
.と な る。 設計か ぶ り厚さD,を 定めて施 工した場 合,
実 際の か ぶり厚さの ば らつ き は,
D. を 平 均 値とし,
σ を標 準 偏 差とする正 規 分 布と な る。 具 体 的な 数値 計 算は, 以 下の手 順で行う。 1> 標 準 正 規 分 布N
(0,
1)の下 側 100P パー
セ ン ト 点 を, 以 下に示すHastings
の近似式 t7) で求め る。
0
<P
≦0.
5
の と き, N工 工一
Eleotronio Libraryu(・)
一一
(
・一
2.
30753十〇.
27061z
1十 〇.
99229z 十 〇.
04481 z・
・
・
…
tt・
tt・
・
・
・
・
・
・
・
…
一・
・
tt・
・
・
・
・
…
(5 > こ こ に,
z;
》=死 「戸 P :鉄 筋の腐 食 確 率)
一
2 0.
5くP ≦1の とき,
P’
=
1−
P に対 し て,
(5) 式 を適 用 し,
u (P’
) を求め,
u (P
)=−
u (P ’
)と す る。
2
) u(P
)に正規分布AV
.−
t の標 準 偏 差Cl・
vz+σ 2 を乗じ,L
を求め る。L =
u(P
)×ci・
v2十σ2・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
…
(6
) 3 )設計かぶ り厚 さD
,を 次 式によ り求め る。
屋外の場合,D
己;C
,− L =
αXβ× γXv/アー
u(P
) ×CI。
v2十σ2・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
…
.
…
(7) 屋 内の場 合,D
ご=C
,一
ゐ一20=
a ×βX γXv 「〒「−
u(P
) × Cl・
が+σ2− 20・……・・…一 ……・・
(8) 5.
3 試 算 5.
3,
1 定 数の設 定 設 計か ぶ り厚さを 設定する ために は,C
,,
v お よび σ を具 体 的に設 定する必 要が ある。
こ れ らの値を, 筆 者ら が実 施し た既 存 建 築 物の実 態 調 査 結 果に基づい て以下の よ うに設 定す る9 )・
]o] 。 1) 式 (1 }に お け る 環境係 数 α α=1,0
(屋外面で雨 風に さ ら さ れ る場 合 ) α=
1,
7 (屋 内 面の場 合) 2) 式 (1)に おける仕 上 げ 材 によ る 係 数ββ
=
1.
0
(仕上 げが無い場合 )β〈1
.
0
(仕 上 げ が ある場 合;仕 上 げの種 類によ ? て 異 な り,
中性 化 抑制効.
果が大きい も の ほ ど小さい ) 3)式 (1
)に お け るコ ンクリー
トの品 質に よ る係 数 γ は一
般 的な 条件にお け る 中 性化速度式 と して最も 実 用 的な岸 谷式1Sjに基づ き, 水セ メン ト比 の関数と する (普 通 骨 材,
普 通セ メン トの場 合 〉。
(x−
0.
25} (x ≧O.
6) γ=O
.
31.
15十3x.
(g
> γ=
=
O.
37.
(4.
6x−
1.
76) (x≦0.
6) 4) 中性 化 深さの変 動 係 数 v.
v;
O.
3 (ば.
らつ き が小さい場 合 ) v=0.
4 (ば らつ き が 普 通の場 合) v=0.5
(ばらつ き が大きい場合) 5) 鉄筋のか ぶ り厚さの標 準 偏 差 σ・
=
5mm 〔ば らつ き が小さい場 合 ) σ=
10mm (ば ら つ き が普 通の場 合 ) σ・
i15 mm (ばらつ き が大きい場 合 ) 5.
3.
2
設 計 か ぶ り厚さの算 出 〕,
〔Ct2。
v2.
十σ2〕) CD−
Ct ) 図一
4 鉄筋のかぶり厚さ と中性深さの差の分布な らびに鉄筋の 腐 食 確 率 式 (1 .
)お よび 式 (9)で示 し たよ うに,
CT
はα,
β およびx を設 定 し,
t=T
とすることに よっ て求め るこ と が で き る。
し たがっ て,
a,
β,
x,
T,
σ お よ び v をパ ラ メー
ター
とすれ ば,
鉄 筋の設 計か ぶ り厚さD
.は,
鉄 筋の腐 食 故 障 時の鉄 筋の腐食 確率P
。の関数と し て求め る こと がで きる。 D. とPe
との 関 係を計 算し た結 果の 例を図一
5に示 す。 図一5
(a)お よ び (b
)は,
水セ メン ト比60
% で仕 上 げ な しの場 合につ い て,
目標 耐 用 年 数T
をパ ラメー
ター
と し た と きの,D
.とP
。の 関 係を表 し た もの で あ る。Dd
はP
。 が小さ く な るに従っ て増 大す る が,
この増 大 率 はT
が 大 きい ほ ど 大 き く,
ま た 屋 外 よ り も 屋 内の 場 合に大き く な る。.
これ は,
屋 外よ り も屋内の場 合に中性 化 速 度が大であ り,
経過年数が大きい ほ ど中 性化 深 さの 差が大 き く なる ことに起 因 して い る。
屋内 外の D. を 比 較する と, T が 65年 以 上の場 合.
に屋 内の D,が屋 外よ りも大きくなる。
.
図一
5(c>お よ び (d
)は,
仕上 げな し で 目標 耐 用 年 数 T を 65年とし た場 合につ い て,
水セメ ン ト比 コcを パ ラメー
ター
と し た と きの,D
. とPe
の関係を表し た もの であ る。D。 はP。が小さ く な るに従っ て増大す る が,
この増 大 率はx が大きい ほ ど 大 き く,
ま た 屋 外 よりも 屋 内の場 合に大き く な る。 これ は,
屋 外よ り も屋内の場 1 合に中 性 化 速 度が大であ り,
また x が大きい ほ ど中 性 化 速 度が大である ことに起 因し.
て い る。 屋内 外のD
.を 比 較 する と,
x が55 %以上でP
。が 15%以 下の 場 合 に,
屋内の Ddが 屋 外 よりも大き くなる。
図一
5(e) お よ び (f
)は, 水セ メ ン ト比 60% で 目標 耐 用年数T
を65
年 と し た 場合につ い て, 仕 上 げ材によ る係 数 β をパ ラ メー
ター
とし たと きの,
D,と Poの 関 係を表し た もの である。 D.は,
P。が小さ くなるに従っ て増 大 する が,
こ の 増 大 率は βが大きい ほ ど大き く,
ま た屋 外よ り も 屋内の場 合に 大 き く な る。
これは, 屋外 よりも 屋内の場’
合に中性化 速 度が大であ り,
また β が 大きい ほ ど中性化 速度が大で ある ことに起 因して い る。
屋 内 外のD
.を 比較す る と, βが0.
8
以.
.
ヒでP
。がユ5
% 以 下の場合に,
屋内の D,が 屋外よりも大き く な る。
図一
5(g)お よ び (.
h
)は,
水セメ ン ト比60 %,
屋外 で仕 上 げな し,
目標 耐 用 年 数T
を60年と し た場 合につい て
,
かぶ り厚さの標.
準偏差 σ ま たは中 性 化深 さの変NII-Electronic Library Service 100 so か 60 り 厚 さ Ddtee ) 4e 20 035 7 10 15 30 50 駐 筋の腐 食 確 峯 Po e6) (e ) 耐 用 年 散 の 彫 響 【屋 外1 ]co 80 計 か ぶ 60b 40Ddfm ) 即 o3571015 30 鉄 筋 り腐食 確 $Po 隔1 0》) 耐 用年致の影智1屋 内〕 50 100 BO 50 蹴 か ぶ り 厚 さ 瑰 dOltb レ 20 o35 T 10 r530 50 鉄 筋の腐 食 確 畢PO〔% ) 〔c} 水セメ
ン
ト比の彫 脚 〔屋 外〕 100 80 殴 か ぶ GO り 厚 さ Dd dOtrm120 o35 7 to t5 30 鉄 筋の腐 食 確 箪 PO 晄 } 【d) 水セメン
ト比の影唇[屋内 } 50 100 80 60 設 翫 か ぶ ウ 埠 さ 40Dd [皿
) か ぶ り 厚 さ Dd1凹
) zo 0 100 80 60 40 20 D 357LO15 30 50 跣筋O 腐 食 確 學LPoe も1 工t} 仕 上 げ 材 の 影 響 {昆 外 } 3 5 7 10 15 30 50 鉄 筋の厨 食 碗 里PO‘%I le] か ぶb厚 さ の 標 $ 偶 差o 彫 響 100 80 50 設 鮒 か ぶ り 厚 ざ Dd 90 〔
閲
} 20 o 100 80 か ぶ 60 り 厚 さ DdCm”
} 40 2e o 35 7 LO 15 30 鉄筋り腐衰確 車Po幌〕 ω 仕 上 げ 材の影 響 【屋 円150 3 5 7 LO ↓5 30 鉄 筋の腐 食 確 率PJ %レ ω 中k化 深 さ の変 動 係 数り
影 辱 50 図一
5 設計かぶ り厚さの算定図62
N工 工一
Eleotronio Library動 係 数 v
.
をパ ラメー
ター
と し た と きの,D
,とPo
の関 係を表 し た もの であ る。 D。は P。が小さ く な るに従っ て増 大す る が,
この増 大 率は σ ま た は v が 大 きいほ ど.
大 きく,
ま た屋 外 よりも屋 内の場 合に大 きく な る。 こ の ことは,
鉄 筋の施工精 度が悪か っ た り,
コ ン クリー
トの 品 質の ぱ らつ きが大き かっ た り す ると, Dα が大き く な ることを示して い る。 以 上 述べて き たよ うに,
設 計か ぶ り厚さ Dd は,
ある 条 件で屋 外よりも屋内の場 合に大き な値を 必要と し,
図一
5(b
)のT
が 65年 以上 で ,P
。が10
%以 下で は,D
。 が60mm 以 上と な る よ う な算 定 結果 が得られ るこ と.
も あ る。
これ らの場 合 は,
吹 き抜けの部屋の天井面 がコ ン ク.
リー
ト打 放し で あ り, 中性 化 速 度が大で 鉄筋の腐食故 障によ る人 身 事 故の可能 性が大きい な ど,
「
特 殊な条件に 限 ら れ る。一
般に は,
屋内では仕 上げ が施さ れ,
かつ鉄 筋の腐食 故障に よ る人身事 故の可 能性が小さい のでP
。 の値を大き く設 定でき,
異常に大きいか ぶ り厚さ を 必要 と す る 場 合は まれ であ ろ う。
設計か ぶ り厚さPd
は,
鉄筋の腐食故 障時の鉄 筋の腐 食確 率P
。,
目標耐 用年数T ,
水セメ ン ト比 x,
仕 上 げ 材に よ る 係 数 β,
鉄 筋のかぶ り 厚 さの標準偏 差 σ, 中 性 化深さの変動 係 数 v に よっ て影 響を 及 ぼ さ れ, これ ら の値 が大きい ほど大き な値 が必 要 とな る。
5,
4JASS 5に おける設 計か ぶ り厚さ と の比 較JASS
sig)で は,
い かなる場 合で も確 保 し な ければな ら ない鉄 筋の最 小か ぶ り厚さ (JASS
5解 説 表一
9.
2> を規 定 し,
この 値に 10mm 上乗せ し た値を設 計か ぶり 厚さの 最 小 値 (JASS
5表一9.
1)と してい る。 ま た 17 節で は,
表一9.1
の 値に10mm
上乗せ して値を高耐久 性コ ン クリー
トの設 計か ぶり厚さの 最 小 値 (JASS
5表一17.6
)と して規 定してい る。 これ らの値は,
屋内,
屋 外,
地 中の別に,
仕上 げの有 無に分けて設 定さ れて いる。°
本 手 法か ら得ら れ る設 計か ぶ り厚さ は,
種々 の パ ラ メー
タ を定 量 化す ることに よっ て求められ るもの で あ り,JASS
5
に規定さ れ た値と直接比較す るこ と は で き ない。
し か し,
パ ラメー
タを固定すれば,
JASS
5の表一
9,
1お よ び表一
17.
6の値と比較することがで きる。一
般コ ンクリー
トで は,
目標 耐 用 年 数T =
65年,
x=
0.
6,
σ±
10 mm,
v=
O.
4と設 定し,
高 耐 久 性コ ン クリー
トで は,
目標 耐用年数 T=
100年,
x=
O.
55,
σ=
10mm,
v=
0.
4と設 定 し た と き,Po
が 5%,
15% お よ び30
% の場 合に お け る設 計か ぶ り厚さ の計算 値D
.をJASS
5
の設 計 かぶ り厚 さの最 小 値Ds
と 対 比 して表一3
に示 す。
同 時に,
JASS
5
の設計か ぶ り厚さの最 小 値を用いた 場 合に お け る,
目標耐用年数に 達 し た時点の鉄 筋の腐食確 率P
。を表一
3に併 記す る。 表一
3より,一
般コ ンクリー
トで はDs
に近LSD
,を 示す 尸。の値は ま ち ま ちであ る が,
仕上 げ有り の場 合に 表一
3JASS 5の設 計か ぶ り厚 さの最 小 値 との比 較 JASS5による諱計かぶり厚さの最4
頼D5本手怯によδ設計かぶ口厚さの計算面)d〔皿m}昼
種 麺 髓 位 仕 上げ か ぶり厚き 〔■
冫 定 馼 POi5鷺 嚇 Poi15瓢 嚇 P。
覃
n魅 噸飜
} 5 72 71 9L L 醐 有 無 3 03 α 6 85 54 35 L 擢風ス ラ ブ 凩 ス ラブ 非嵶 力壁 有 3 0 3 83.
1z 51 7_
_
,
舟 ∫セ コ ン ク リ 1 ト 斷 慧 4 0 5 64 63 82 5 T=
砺年 瓢置
o.
6q=
L幅 v=
D.
咽零
1,
βロ
邑
LO 雨.
53 72 71 93 鵬 有 鶏 4 04 0 6 85 54’
33 4 妊 は り 耐 力壁 有 4 0 3 83 12 5」
3 野 無 5 0 5 54 63 81 0 3 42 5179 動 有 無 3 04
.
0 6 45 且 4 03 0 毘 岨 ス ラ ブ 床ス ラブ 鋼 か壁 有 4 0 3 73 02 38鼕
琴
ト 醐 猛 5 0 5 34 43 62 Toloo 年・
x=
9.
55σ
■
n■
》
;
o.
嘲暉
1卩
β富
聖.
.
oDn 63 42 51 76 鼬 有 盤 4 05Lo 6 45 且 4 01 6 柱 は り 耐 力壁L3
73 02 3 且 脳 有 熱 5 06 0 5 34 43 62 :1:齶 靆 凌寒蹴 攤 ワ:β=
ロ.
5P
。が小さ、
く, 仕 上げ無 しの場合にP
。が大きい傾 向 を示 す。
高 耐 久 性コ ンクリー
トで は,D
。に近いD
,を 示すP
。の値は 5%近 傍 が 最 も多く,
一
般コ ンク リー
トに比 較 して,P
。は小さい こ とが わか る。
本手
法を 用いて算 定 し た設 計か ぶ り厚さD
。 は,P
。 を5〜30
% と設 定す ると,一
般コ ン クリー
トの屋 内で仕 上 げ がない 2つ の ケー
ス を除き,
JASS
5の設 計か ぶ り厚 さの最小 値 D。 と 同等の値と なっ てい る。
屋 内で仕.
上 げがな.
い 2っ の ケー
ス は,一
般の建 築 物において は,
配 管ス ペー
ス,
天 井 裏な どの 直 接 目につ か な い箇 所で ある た め,
P。 を大 き く採る こ と.
がで き,
Dd はDs に近づ く。 た だ,
天 井 面が コ ンク リー
ト打放 しの よ う な場 合には,Ds
以 上 の 設計かぶ り厚さD
.が 必要と考え る。
JASS
5の設 計か ぶ り厚さの最 小 値Ps
を用いた と き, 目 標 耐 用 年 数に達.
し た時点の 鉄 筋の 腐食確 率P
。の 値 は,一
般コ ン クリー
トで は仕 上げ有りで平 均8、
5
%,
仕 上 げ無 しで平 均30.
0%で あり,
高 耐 久性コ ンク リー
ト で は仕 上 げ 有り で平 均6.
0%,
仕上 げ無しで平 均12.
5
% で あ る。
同一
部 材で は,
P。の値は,.
高耐久性コ ンク リー
トが一
般コ ン クリー
トの場 合より小さ く,
ま た 仕 上 げ有り が仕上 げ無しの場 合よ り小さい傾 向に あ る。
し た がっ て,
JASS
5の設計かぶ り厚さの最 小 値 を 用いる場 合, それぞれ 目標耐用年 数に達し た時 点で は,
高 耐 久 性 コ ンクリー
ト (水セメ ン ト比 55% )が一
般コン ク リー
ト (水セ メ ン ト比60% )の場 合より鉄 筋 腐 食の劣 化 症 状が軽 微で ある こ と,
仕上 げ が 無いといずれ の種 類の コ ン クリー
トで もこ の 劣 化症状が重く な ること が わか る。
6.
本 手 法の応 用’
6.
1 新 設建築 物の設 計・
施 工へ の応 用 鉄 筋の設 計か ぶ り厚さD
.は,P
。,
T ,
a,
β,
x,
σ お よ び v を設定す ることに よ り算 定で き た が,
その他に も さま ざ まな用 途に利 用で き る。P
。,
T ,
x,
a、
β,
σ、
v お よびD
.の 8変 数の う ち,
任 意の 6変 数を固 定し,
残り の 2変 数を縦 軸と横 軸に とり,
その関係を曲線で表せば,
NII-Electronic Library Service 図
一
6 水セメ ン ト比と設 計か ぶ り厚さの関係 図一
7 仕上げ材と設計か ぶ り厚さの関 係 横 軸の変 数を定め る ことに よっ て,
縦 軸の変 数の値を容 易に求 めることができる。 この こ とを 利 用して,
新 設 建 築 物の設 計 や 施工を行 う際,
耐 久 性上必 要なコ ンク リー
トの水セ メ ン ト比を定め た り,
仕一
ヒげ材を選定した りす ることがで き る。
図一6
は,T
またはPe
の い ずれか と β,
a および v を 固定し,
水セ メン ト比 コc を縦 軸に,
設 計か ぶ り厚さD
. を横 軸にとり,
目 標 耐 用 年 数 T と α,
または鉄 筋の 腐 食 確 率P
。と α をパ ラ メー
ター
と し た もので あ る。
こ れら の 図 か ら,
設計かぶ り 厚 さ を定め,
目標 耐用年 数ま た は鉄 筋の腐 食確 率を設 定す るこ とに よっ て, コ ン ク リー
トに要 求さ れ る水セ メ ン ト比 を 求める こと がで き る。
図一
7は, T ま た は Poの い ずれ か とx,
σ お よ び v を 固 定 し,
仕 上 げ 材に よる係 数 βを縦 軸に,
設 計か ぶ り厚 さDa
を横 軸にとり,
目標 耐 用 年 数 丁 と α,
ま た は 鉄筋の腐食確率 P。と α をパ ラ メー
ター
とし たもの で あ る。 これ らの 図 か ら, 設 計か ぶ り厚さを定め,
目 標 耐 用 年 数 または鉄 筋の腐 食 確 率 を 設 定 する ことに よっ て,
コ ン クリー
ト面に必要な仕上げ材の グレー
ド 〔中性化 抑 制 性 能)を求め ること が で き る。
な お, 図中の曲線は原 点 を 通 ら ない場 合がほと んどで ある。
こ れ は,
設 計か ぶ り 厚さ をD
. と して施工 し た と き,
実 際の か ぶり厚さに は ば らつ き が あ り, こ の ば らつ き の分布の平 均 値が D.で あ るこ と に起因 し てい る。
例え ば, 屋 外でβ』
Oの とき,
鉄 筋の腐 食 確率を50% 以 下 とす る た めに は,D
. を0 以 上とする必 要が あ り,
σ=
0 ま たはP
。=
50 %の場 合 を除き,0
を通る こと は ない。 また,
図一
8 は,
T,
α,
σ,
お よび v を 固定し,
P 。
お よ び D. をパ ラ メー
ター
と して,
縦軸 をx,
横 軸をβと し たもの であ る。 これ ら の 図 か ら, 設 計かぶ り厚さを定 め たと き,
所定の 目標 耐用年 数まで鉄 筋の腐 食 故 障を生 じ さ せ ない条 件を満足 させ る, 耐 久 性上必 要なコ ン ク リー
トお よび 仕 上 げ材の品 質 性 能を求め るこ と ができ る。
表一
4は,
図一
8を 用い て,
JASS
5に規 定さ れ た 設計か ぶ り厚さ の最 小 値 (JASS
5の表一
9.
1お よび表一
17.
6) を用い る場 合に,
耐 久 性上 必要な水セメ ン ト比 の最 大 値 を求 めたもので あ る。 6.
2 既存建 築 物の耐 久 性 診 断へ の 応用 耐久 性 診 断に は,
調 査 時 点 以 後の寿 命の予 測が欠か せ ないが,
こ れ まで実 用 的な予 測 手 法が確立さ れ ていな かっ た。 本手法にお ける鉄 筋の腐 食 確 率の考え方を応 用 す れ ば,
コ ンク リー
トの 中性 化に起 因し た鉄 筋の腐 食に よ る 『寿 命』の予 測が可 能と なる。
寿 命 予 測 手法 を 以 下一
64
一
N工 工一
Eleotronio Library0
.
7 水 セ メ 0,
6 ン ト 比 x O.
5 0.
4 0.
7 水 セL
O.
6 メ ン ト 比 x o.
5 30 40 50 o O.
2 (a) O.
4 D.
6 0.
8,
1.
0 仕 上げ材 に よ る係 数 β一
般コ
ンクリー
ト{T・
=
65 年 }.
屋 外 0.
7 水 セ メ 0.
6 ン ト 比 X D.
5 0.
4 目標 耐用年 数 65 年 屋 内鬪
・
一
「−
POP5 %−
PO=
ユ5%、
、 、 、 、 、 し 、 巳 亀 、:
1
秘
鵡
605e403e 0,
7 水 セ メ 0・
6ン
ト 比 x O.
5 0 O.
2.
価} 0.
4 0.
6 0.
8 且.
0 仕 上 げ 材 に: る 係 数 β一
般コンク リー
ト{T=
65 年 〕,
屋内:
:
翻
O.
4 0.
4 0 0.
2 0・
4 0,
6 0.
8 1・
0 0 0.
2 0.
4’
O.
6 0、
8 仕 上 げ 材 に よ る 係 数 β 仕 上げ材に よ る 係 数 β (e).
高 耐 久 性コン
ク リー
ト〔T=
100 年 }.
屋外 (d } 高 耐 久性コンク リー
ト{T=
100 年〕,
屋 内 図一
8 水セ メ ン ト比と仕 上げ材による係 数 との関 係 表一
4 耐 久性 上必 要 な水セ メ ン ト比の最 小 値JASS5
による設計かぶ;厚さの最小値 本手法を用いて得られる水セメント比の最大値伽 纖 都 位 仕上 げ かぶり厚さ lr > 定 救 驪 % Po=
15駕 嫐 Po茜
鱒 冤 囎 有 3 0 5 76 3 串 圃 無 3 0 4 95 35 5 屋根ス ラブ 床 ス ラブ 誚 耐力嘩 有 3 0 5 26 0拿
}
磐’
渉 ¥ ト 斷 懸 4 0 丁=
55年σ
=
L』■
v卩
昌
.
脚
9.
嬬 β 司.
00 司.
65 25 76 3 有 4 0 6 3・
零 寧 圃 無 4 0 5 35 65 9 柱 は り 耐力壁 府 4 0 6 3零
零
酬 無 5 0 5 76 4 寧 有 3 0 5 35 7、
竃 曝 鼬 無 4 0 5 05 25 5 屋程 ス ラ ブ 俵ス ラ ブ 欄 有 4 0T二
1皿年 5 7 事 潔 零 喀輕
ξ
ト 剛 諏 5 0 5 45 7 准 虚 有 4 0 σ=
仙■ v昌
o.
4塞
.
,
β=
し、
.
00rO 65 7 廓 窟 串 ホ 助 無 5 0 5 25 55 8 柱 は り 耐力壁 有 5 0 零 事 鵬 寧 窟 寥 斷 無 6 0 5 7 寧 窟.
寧 廓 渇 0置
β し 撫 肚,
罰 熊 胱 脯 出 上 時 冊 仕・
:・
距 掌…
嘔 8 に示す。
1) 耐 久性 調 査を実 施し,
コ ン ク リー
トの中 性 化 深さ の平 均 値C
、,と変 動 係 数 v,
鉄 筋の平 均か ぶ り厚さD
と標 準 偏 差σ お よ び調査時の経 過 年 数 tiを求め る。
2) 寿 命 時の 鉄筋の腐 食確率P
。 を設 定す る (表一L
恥 鉄 筋 の 腐 食 確 率 p 1.
0k
命時 tt 経 過年 数t 図一
9 寿命 時 に お け る経 過 年 数 t,
の求め方 2参 照 )。
3)中 性
化
深さ万,と材 令 tの関 係 を,
次 式に より求 め る。
.
.
C
,= 沌π コ (C 、
,/V71’
}×A
4) 式 (2 )〜
(4 )に,D ,
σ.
、C
,お よ び v を代入 す るこ とに よっ て,
鉄 筋の腐 食 確 率P
と 材 令t
の関 係P
=f
(t
)を得,
図 示する。
5
) 直線P
・
!
PD
と曲 線P =
f
(t
)との交 点 を求め,.
NII-Electronic Library Service
’
そ の時点で の経 過 年 数 t2を 求 める
。
t2が寿命に達 した と きの経過年数とな る (図一
9参 照 )。 6) 調 査 時か ら寿命に達す る ま での余 寿 命は,
(tt−
t、) と な る。 7) 調 査 対 象 建 築物の 要求耐 用 年 数 tsが,
ts≧ t:の 場 合な ら現状の ま ま で要 求寿命 を 満 足 するこ と ができ ると判 断す る
。
ti>ts>ti
の場合
な ら現 状の ま ま で要 求 寿 命を満足 する ことが で きず, 鉄 筋の腐 食の 進 行を抑 制す る処 置が 必要と判 断さ れる。
7.
結 論 実 際の経 年 劣 化 建 築 物の実態調査 結 果を基に,
信 頼性 工学の考え方を導入 し て, コ ンクリー
トの中 性 化に よっ て鉄筋が腐食す る場 合に お ける鉄 筋のか ぶ り厚さの耐久 性 設 計 方 法を検討し た。
結果は以 下の ように要 約さ れ る。
1) コ ンク リー
トの中性 化深 さお よ び鉄 筋のかぶ り厚 さがほ ぼ正規分布すること を基に,
中 性 化 深さの平 均 値 と変 動 係 数,
お よび鉄 筋の か ぶ り厚さ の平 均 値と標 準偏 差を設定す ることに よっ て, 鉄 筋が腐 食す る確率を求め る方 法を 見いだ した。
2)
この鉄 筋の腐 食 確 率を耐久 性の 指 標 と して
,
鉄 筋 の腐食に よ る建 築 物の故 障 を定 量 的に定 義できた。
3) 耐 久 性 上 要 求さ れる鉄 筋の 設計かぶ り厚さを
,
目 標 耐 用 年数, 中 性 化の速度と ば らつ き,
鉄 筋の か ぶ り厚 さの ばらつ きおよ び目標 耐 用 年数に達した時の鉄 筋の腐 食確 率の関 数 として求め る,
信頼性 設計 手法 を提 案で き た。4
)本手 法 を 用い て
,
新 設 建 築 物に耐久 性 上必要な,
コ ン ク リー
トお よ び仕上 げ材の 品質性能 を定 量 的に設 計 で き るこ と,
お よ び既 存 建 築 物の余 寿 命を定量的に予測 で き ることを例 証した。な お
,
塩 害によっ て鉄 筋が腐食し た ケー
スへ の本 手 法 の 拡 張が今後の課 題である。
謝 辞 本 研 究の一
部は,
昭 和55年か ら 5年間に わ たっ て実 施さ れ た建 設 省 総 合技術開 発 プロジェ ク ト 「建 築 物の耐 久 性 向 上 技 術の開 発 :鉄筋コ ン ク リー
ト造 分 科 会 (分 科 会 長 :岸 谷 孝一
東 京 大 学教授 [現日本 大 学 教 授 ])」にお い て行っ たもの であ る。
本 研 究 を進める に当た り, 東京 大 学 岸 谷 孝一
一
教 授 (現 日本 大 学 教 授 ),
建 設 省建築研究 所 第2
研 究 部 友 沢 史 紀 室長 (現 東 京 大 学 教 授 〉お よ び 住宅 都 市 整 備公団 住 宅 都 市研 究 試 験 所 福士勲 専 門 役の御指導を頂い た。 また
,
大 阪 大 学の鈴 木 計 夫 教授に は,
本 研 究 をま とめ るに際し 貴重な御 助 言をい ただいた。
こ こ に記 して感 謝の意を表一
66
一
し ま す。 参考文献 1)和 泉 意 登 志,
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森 永 繁 :中 性 化およ び鉄 筋 腐 食 速 度にも とつ く鉄 筋コ ン クリー
一
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同解説,
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国 }:技 術 研 究セ ンター
編 ;建 築物の耐 久性 向.
ヒ技 術シリー
ズ 建築 構造編1 鉄 筋 コ ン クリー
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5鉄 筋コ ンク リー
ト工事,
昭和61年9月 N工 工一
Eleotronio LibrarySYNOPSIS
UDC:691.32I69.059.22I624.012.45
A
RELIABILITY
DESIGN
METHOD
OF
COVER
THICKNESS
FOR
REINFORCEMENT
IN
CONCRETE
STRUCTURES
'
-On
case of reinforcement corrosion cqusedby
concreteby [TOSH] IZUMI, Chief Research Engifieer, HIDEO
KASAMI, ResearchManager, and FUMIO OSHIDA,
search Engineer of Takenaka Technical Research
atory, Members ofA,I.J.
'
A
calculating method of thecover thickness forreinforcement requiredfor
providingdurability
toreinforced concrete structures was studiedbased
on theconceptgf
thereliability- engineering.'
-
.
The mAin Tesults are summarized as
foliows.
D
The corrosion probabilityof Teinforcement(P),
caused by carbnation, iscalculated using the averagevalue
(C,)
and coefficient of variation(v)
og the carbonationdepth
of cQncrete, and th'eaverage value(D)
and standarddeviation
(a)
of cover thicknessfor
reinforcernent.This
is
due
to the testresults thatthe scatte[ of thecarbonation
depth
of conc[ete and the cover thicknessfor
ieinforcement isapproximatedby
the normaldistribu-tion.
'
''
'
2}
Using
thiscorrosion probabilityof reinforcement, afailure
condition of areinforced concrete structure canb'e
quantitativelydefined.
3)
The
design
thickness of the concrete cover(D,)
requiredfor
providingdurability
canbe
determined
withthe expectecl service
life
{T),
the environmental condition(a>,
thefinishing
material(t9L
the water-cement ratio of concrete(x),
the cDefficient of variation of the carbonationdepth
Df concrete(v),
the standarddeviatiDn
ef thecoyer thickness
for
reinforcement(a)
and the allowable probabilityof ieinforcement corrosibn(Ph)
at thefalure
condition of a reinforced concrete structure.4)