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(2) . . ½. 目的. この資料では微分幾何学の基礎となる,ベクトル,テンソル,微分形式の定義について説明す る .特に,基底と成分の関係,微小座標と外微分の概念,微分形式計算,一般座標系,反変と共 変の意味,計量テンソルを理解してほしい.また,微分形式のポテンシャル関数への応用につい ても紹介する.. ¾ . ¿ 次元直交座標系におけるベクトル解析 ベクトルの定義. 空間の 点を結ぶ矢印をベクトルという.ベクトルは方向と大きさ(長さ)を持っている.ベク トルと別のベクトルに移す線形写像を 階のテンソルという.通常,ベクトルは小文字ゴシック 体,たとえば, など, 階テンソルは大文字,たとえば, と書く.このように,ベクトルとテ ンソルは,空間の座標系とは無関係に定義できる.. . 直交座標系. 次元実ユークリッド空間( 次元実ベクトル空間) で,原点 を固定し,この原点から伸び る つの互いに直交する長さ のベクトルを とする. に沿った座標軸を,各々 とする.これが 次元実ユークリッド空間に大域的な直交座標系を定義し,物体の運動 に対して,静止しているので,特に,静止座標系ともいう.ベクトル を直交座標系の基 底ベクトルという.この直交座標系に対して,原点を始点として点 までを結んだベクトル を 位置ベクトルという.各基底ベクトルの延長線上にベクトル を直交射影した点の原点からの長 さを,各々 とする .このとき,点 の直交座標は であるという.ベクトル. 対象とする空間は 次元ユークリッド空間であり,この空間内の曲線や曲面を取り扱う.このため,大域的な意味 での静止座標系が存在するので,多様体などの概念については,直接触れない. 一般のベクトル空間の定義は,解析力学の基礎(講義資料:福祉ロボット工学)を参照すること 本資料では,座標軸の添え字は上付きにし,その座標軸での目盛の値を下付きであらわすことにする.. .
(3) . . . . . . . は,つぎのように書ける.これを基底表現ということにする . . . . . . . . . をベクトル の成分という.ベクトル を縦ベクトルとして次式のように表したものを,. ベクトル の成分表現という.. . . . . . . これから,基底ベクトルの成分表現は,次式のようになることがわかる.. . . . . . . . . . この座標系とは別の基底ベクトル をもつ座標系を用いてもベクトル を表すことがで きる.たとえば,つぎのように書ける.. . . 成分表現は,つぎのようになる.. . . . . . . . . 同様に,この場合も基底ベクトルの成分表現は,次式のようになることがわかる.. . . . . . . . . . したがって, のように,同じベクトルでも成分表現は異なることになる. . 同じ添え字があるときは,その添え字に対して和をとる.これを の規約という.. . . . .
(4) . ベクトルの積. ベクトルの積として,内積,外積,テンソル積を定義する.まず, つの記号を定義する.. のデルタÆ Æ . . . Æ. . 交代記号. . .
(5) . Æ . . の中に同じ数があるとき が の偶置換のとき が の奇置換のとき. たとえば,具体的な交代記号は,つぎのようになる.. .
(6)
(7) . つのベクトルの成分表現を次式のようにおく.. . ベクトル. . . . . .
(8) . と の内積,外積,テンソル積は,つぎのように成分表現で定義される.. 内積
(9).
(10)
(11). Æ. . . . . .
(12) Æ. 基底ベクトルに対する内積は,次式のようになる.. Æ. 外積
(13). .
(14)
(15) . . . . .
(16) . .
(17)
(18)
(19)
(20)
(21)
(22). . 以後,上付き添え字,下付き添え字どちらも同じものとして用いる. 内積がゼロとなるベクトル同士は直交するが,これらの基本的な内容については,別資料:解析力学の基礎(福祉 ロボット工学講義資料)を参照のこと 外積で生成されるベクトルは つのベクトルのつくる平面に垂直な方向で,大きさは つのベクトルの作る平行四 辺形の面積である,これらの基本的な内容については,別資料:解析力学の基礎(福祉ロボット工学講義資料)を参照 のこと . .
(23) 基底ベクトルに対する外積は,次式のようになる.. テンソル積
(24). したがって,基底ベクトル . . . . . . . .
(25)
(26).
(27)
(28)
(29)
(30)
(31)
(32)
(33) . . のテンソル積は,次式のようになる.. . . . . . . . . . . . . . . . . また,次式が成立することもわかる.. . テンソルの定義 簡単のため 階のテンソルのみについて述べる. 階テンソルは,次式のように,ベクトル 別のベクトル に写像する線形作用素 のことである.. ここで,. . は線形作用素であるので,次式が成り立つ.. . . . ただし, はスカラー定数とする. テンソルの成分表現を求めるために,ベクトル. . . の成分表現を,つぎのようにおく.
(34)
(35)
(36) . . . を.
(37) これに対してテンソル.
(38)
(39) . の成分を. .
(40) . . . とおくと,つぎのように書くことができる.. . . . . . . . . . . . . これは, 階テンソルを成分表現すると行列となることがわかる.テンソルは座標に依存しない写 像を表しているが,行列は座標系により,その成分が変わることに注意しよう.また,各要素ご とに 規約を用いて記述すると,つぎのようになる..
(41) . . . . . 成分表現の記法定義. ベクトルやテンソルの座標系に依存しない表記を とし,ベクトルの座標系に依存した列ベ クトル表現とテンソルの行列表現を各々簡単に , を書き,列ベクトルの 番目の要素を あるいは ,行列の 行 列の要素を あるいは と書く.基底ベクトル とテ ンソルの成分の関係は,テンソル積を基底にとった基底表現を用いて,次式のように基底表現で 書くことができる.. . . . これは成分表現では,次式のようになる.. . . . . . . . . . . . . . テンソルの積 をテンソル により写像させると,次式のようになる.. . を. と. .
(42)
(43) . . . . . のテンソル積という.これを成分表現すると,次式のようになる. . . . .
(44) . . . . . . . . . . . . . . . . 各要素ごとに 規約を用いて記述すると,つぎのようになる..
(45) . . これから,テンソルの積の各成分ごとに 規約による表現は,つぎのようになる.. . . . 上式は添え字 に対する和をとっており,行列の積計算に一致しているが,他の添え字で和をとっ たテンソルの積も,他に とおりあるが,これ以上述べない..
(46) . 双対基底と双対空間. 参考のため,双対空間の概念について,簡単にまとめる.線形汎関数とは,ベクトルを実数スカ ラーに写像する線形関数である.つまり,線形汎関数を , 次元ベクトルを とすると, はスカラー値であり, をベクトル, を実数スカラーとすると,次式が成り立つ.. さらに線形汎関数には,和とスカラー積が定義されている.つまり, つの線形汎関数 クトル に対して,和 ,スカラー積 は,次のように定義される.. とベ. つぎの線形汎関数が存在する.. Æ ベクトル. の基底表現を . とすると,次式が成立する.. Æ. . 上式から,線形汎関数 は,ベクトルの各座標軸成分を取り出す操作を表していることがわか る.基底ベクトルに対する任意の線形汎関数 は,. は次式のようにかけることがわかる. このとき,線形汎関数は, を基底とする 次元実ベクトル空間を形作ることがわ とかけることから,. かる.このような空間を双対ベクトル空間といい,その基底を双対基底という.したがって,双 対基底は座標軸の基底と考えてよいことがわかる. さらに,線形汎関数は,ベクトルの成分表現を用いると, 次元横ベクトルで,次式のように書 くことができる.. . . . . また,内積を用いると,次式のようになる.. この双対基底は,実は斜交座標系の場合の反変基底 に関係する.. 節参照..
(47) . 反変テンソルと共変テンソル. 次元実ユークリッド空間の基底 とその双対空間の基底 を使って,テ ンソル積をつくることにより,いろいろなテンソル積が定義できる.たとえば,つぎのようなも のがある.. . . . . . を基底とするテンソルを反変テンソル, を基底とするテンソルを共変テンソル を基底とするテンソルを混合テンソルという.また,これらは 階のテンソルであるが,つぎの ように 階のテンソルの基底も定義できる.. . . . . . . . グラスマン積 ウェッジ積,交代積
(48). 基底ベクトルのグラスマン積 て,つぎのように定義される.. . . . . . . . . は,テンソル積 . . を用い. . . . . . 具体的には,グラスマン積は次のような性質をもつことが,定義よりわかる.. . . . . グラスマン積は行列式と密接な関係があり,次式が成立する.. . . . ここで,上式の は行列式を表している.. . . .
(49) また,グラスマン積と外積は密接な関係がある. 写像を.
(50)
(51)
(52) と定義すると,これが次式のように外積に一致する.. . 基底変換. 新しい基底ベクトルを . とし,これを基底ベクトル で表したものを次式とする. . 逆に,基底ベクトル . . を, で表したものを次式とする. . . は互 これはベクトルをベクトルに写像する線形変換であり,これを基底変換という. と いに逆行列の関係にあり,次式が成立する.. . . Æ Æ. ベクトルの成分変換. 新しい基底ベクトルを . とし,これを基底ベクトル で表したものを次式とする. . ベクトル. . . . . を各基底ベクトルで表したものを次式とする.. に を代入することにより,ベクトル 表される.. . の各基底ベクトルによる要素との関係は,次式で. . . これを成分表現すると,次式のようになる.. . .
(53) ただし,次式のようにおいている.. . . . . . . . . . . . . . . 双対基底変換. 基底変換. に対応する双対基底変換を. . . とおくと,双対基底変換は次式のように与えられる.. . . . . これは,つぎのようにして導出できる.. である. は線形汎関数であるので,基底に対して,次式が成立するはずである.. Æ Æ そこで,つぎのような変形が可能であることからわかる.. Æ . Æ. テンソルの座標変換. 種類の基底ベクトルによるテンソル積を用いたテンソルの表現を次式のようにおくことがで きる.. . . . . . . . ここで,基底ベクトルは,. . . . であることから, は次式のように変形できる. . . これより,次式のように. . . と. . . . . の関係が求められる. . . . . .
(54) . 直線と平面のパラメータ表現. 次元空間の直線は,パラメータ を用いて,次式のように表現できる.. .
(55)
(56) . . . . . . . .
(57) . 図示すると,つぎのようになる.ここで, を長さ にとると,この直線の基底ベクトルとみな. . . . . すことができる.同様に, 次元空間の平面は,パラメータ きる.. . を用いて,次式のように表現で.
(58)
(59) . . . . . . . . . .
(60) . . . . ただし, は 次独立,つまり,次式が成立しなければ,平面にならない.. ベクトル を長さ にとると,この平面の基底ベクトルとみなすことができる.. . 直線と平面の陰関数表現. 直線あるいは平面上の点を表す座標成分を とすると,これがある直線や平面は,この 座標成分の代数方程式の解としても表すことができる.これを陰関数表現という. 平面の場合:次式を満たす . ただし,. . は平面をなす.. . . . 直線の場合:次式を満たす . ただし,. . .
(61)
(62)
(63) . とする.. は直線をなす..
(64)
(65)
(66)
(67) . とする.. .
(68) . 曲面と曲線の陰関数表現. 曲線あるいは曲面上の点を表す座標成分を とすると,これがある曲線や曲面は,この 座標成分の非線形代数方程式の解としても表すことができる.これを陰関数表現という. 曲線の場合:次式を満たす . ただし,. . . . . . . 曲面の場合:次式を満たす . ただし,. は曲線をなす.. . . . . とする.. は曲面をなす.. . とする.. ここで,曲面と曲線の両方ででてくる 条件は,曲線や曲面を 次近似したときの解が 次元 か 次元かの条件になっている.. . 曲面と曲線のパラメータ表現と接線,接平面の表現. 曲線あるいは曲面上の点を表す座標成分を とすると,これがある曲線や曲面は,直線 と平面と同様にパラメータを用いて表すことができる. 曲線の場合:次式を満たす は曲線をなす.ただし, は任意のパラメータであり, の値により,曲線における点の位置を区別できる.. . . . . 曲線の接線のパラメータ表現:曲線の接線は次図を参考に,位置ベクトル における点にお ける接線のパラメータ表現は,接線の位置ベクトルを とすると,次式のようになる.. . . ただし, が接線の位置を表すパラメータで,. .
(69) が接線の方向のベクトルである.. 曲面の場合:次式を満たす は曲面をなす.ただし, あり, の値により,曲面における点の位置を区別できる.. . . . . . . . は任意のパラメータで.
(70)
(71). . . . スカラー場,ベクトル場,テンソル場. 次元空間内のある領域 の点 に関して,スカラー値関数 が定義されているとき, この をスカラー場という.また,領域 の点 に関して,ベクトル値関数. . . . が定義されているとき,この をベクトル場という.つまり,スカラー場は領域の各点 に対してある つの量(たとえば高さなど)が与えられており,ベクトル場は領域の各点に対し てある1つのベクトル量(たとえば風(方向と大きさをもつ)など)が与えられていることにな る.さらに,領域の各点に対してある1つのテンソル量が与えられているとき,テンソル場とい う.通常のスカラー場,ベクトル場,テンソル場は無限回連続微分可能 級という とし,滑 らかなスカラー場,ベクトル場,テンソル場と呼ぶ.. . 微小ベクトルと微小座標系の簡単な説明. ここでは, 次元直交座標系における微小ベクトルの意味を考えてみよう.まず,図のような .
(72) 変数関数 における微係数と微分の関係を直感的に説明する.微係数 は の. . . . 傾きを表す. を が において 増加したときの の接線方向の からの増加分と すると,次式が成り立つ.ただし, とする. . .
(73) このことから, を のまわりの微小座標系とみなすと,この座標系は, を . の回りで直線近似したものになっていることがわかる.. . 座標軸変換. 次元ユークリッド空間上のある点を座標軸の成分を用いて, と書いたとする.この 点に対するスカラー関数を とする.座標軸 の変換(非線形でよい) を次 式のように定義する..
(74) . .
(75) . . さらに,この変換は,つぎのように逆変換 . . . . をもつとする.. . . このような変換を座標軸変換と呼ぶことにする.スカラー関数 を 見た場合の関数表現を と書くことにすると,次式が成立する.. . . の関数と. . ただし,ここで登場した関数は,すべて 級(無限回連続微分可能)とする.. . 全微分と微小座標系. の全微分 は,次式のように定義される. へ移っ これは,つぎのような意味を持っている.点が から たときの関数 の増分 は, !"# 展開から次式のように書ける. の高次項 の変わりに微少量 を用い,高次項をすべてゼロとみなしたものが,全微分にな ここで, ることがわかる.同様に,点が から へ移ったときの関数 の増分 において, を に置換え,高次項を無視することにより,全微分 が次式のように求められる.. . .
(76) と は同じものを表していることから,全微分が等しくなる,つまり, となるための座標軸の微少量 と の関係を求めてみよう.
(77) . . . . . . . . したがって,. . . . とおくと, となることがわかる.そこで,微少量に直すために,. . . . . と置換えると,微少量に対して,. . . . . が成り立つとき,全微分は等しくなる,つまり,. . . となることがわかる.上式から,全微分が座標変換によらず,特定の形をしていることを意味し ていることがわかる. そこで,新しく微少量 を基底とした座標系と を基底とした座標系を 導入する.これらを微小座標系 という.どちらの座標系も点 あるいは に おける局所的な微小座標系であり,点が動くと座標系も動くので,局所動座標系と呼ぶことにす る. が基底変換を表していることになる.微小座標系内のベクトル は あるは を用いて,次式のように基底表現できる.. . . この式に基底変換式 を代入すると,次式のようになる. . は座標軸の微小量であるので,これまで述べてきた基底ベクトルではなく,双対基底である.基底ベクトルは 接空間の基底 になるが,これについては後述する.. .
(78) したがって,次式の成分変換式が得られる.. . . 微分形式の定義. 次微分形式は,通常の関数,たとえば, のことである.. 次微分形式とは前述の微小座標系の任意のベクトルのことである.つまり, 次微分形式 は に対しては,次式で与えられる.. ただし, . は . . 級である.また,. . に対しては,次式のようになる.. . . 次微分形式. は, に対してはグラスマン積 を基 底とする任意のベクトルであり,. また,. . . . . に対しては,次式のようになる.. . . . . .
(79) 次微分形式 ! の基底は つで, ,あるいは, であり,次式 のように与えれられる.. ! . . . . また, より,次式が容易に得られる.. . .
(80)
(81)
(82) .
(83)
(84)
(85) .
(86)
(87)
(88) . . . . . 外微分の定義と性質. 外微分 は 次微分形式を 次微分形式に写像する微分作用素であり,次のように定義さ れる.. 次微分形式 の外微分 は,次式のように定義される. . .
(89) 次微分形式 . . の外微分. . は,次式のように定義される. . . これは,つぎのように変形できる.. 次微分形式 の外微分 は,次式のように . . . . . . . . . . . 定義される.. . . . . これは,つぎのように変形できる.. . . . . .
(90) 次微分形式 の外微分 は,次式のように定義される. . . このように定義された外微分は,つぎのような性質をもつ. スカラー. に対して,次式が成り立つ. . . が 次微分形式のとき,次式が成り立つ. . . これは,つぎのようにして導出できる.. . が 次微分形式 . のとき,次式が成立する.. . . . 簡単のため, ともに 次微分形式,つまり,. . . のときにのみ,上式を導出する.. . . . . より,次式が成立する.. . . .
(91) 任意の微分形式. に対して,次式が成り立つ. . . これは,各々の微分形式に対して,上式が成り立つことを確かめればよい.たとえば, 次 微分形式 に対しては,次式のようになる.. . . . . . . . . . . . . . . 次微分形式 のとき,次式のようになる. . . . . . . . . 外微分の座標変換に対する不変性. 関数 を 座標軸で表したときの関数値を , 座標軸で表した ときの関数値を とすると,各座標で 次の外微分は同じ形の式になり,座標変換に 依存しない.これを座標変換に対する不変性という.つまり,次式が成り立つ.. . . つぎの 式が成立する.. これより,つぎのようにして証明できる.. また, 次微分形式. のとき,次式が成立する.. これは,. であることに注意し,さらに前述したつぎの計算則を用いると導出できる.. . .
(92) が 次微分形式のとき,次式が成立する. . . が 次微分形式, が 次微分形式のとき,次式が成立する. . . が 次微分形式のとき,次式が成立する. . . さらに, より,基底変換と成分変換は次式のようになっていることに注意する.. ここで, は, 書きなおすことができる.. 上式を変数 . . . . . . . . に対する外微分とみなすことができる. は次式のように,. . について,外微分すると,次式のようになる. . ここで,上式の右辺は,つぎのように変形できる.. ここで,. であることから, についての外微分 は, ことから,次式のようになる.. についての外微分とみなしてよい. これから,次式が成立し, 次微分形式の外微分の座標変換に対する不変性がわかる.. . .
(93) . 微分形式を用いた計算. 座標変換が微分形式により簡単に計算できることを示す例題を つ挙げる. 次元直交座標 から極座標 " # への変換の場合
(94) 座標変換式はつぎのようになる.. " # " $# # " # " # を " # について,外微分することにより, 次微分形式 を求めると,次式の ようになる.. " # $# #" " ## " # " " # # #" " $# ##. . . これより, 次微分形式 は,次式のようになる.. . " $# #" # " ## " "" #. 次元直交座標 から曲線座標 次式のようになる.. . . . への変換の場合
(95) . . . . と微分形式. ここでは,ベクトルの成分表示を用いた簡便な微分形式表現と %& &' # との関係について説 明する.. と 次微分形式 次微分形式. をベクトルの内積を用いて,次のように書くことにする. . . . スカラー場 の %& は次式で定義される.. . . .
(96)
(97)
(98). . . . .
(99) スカラー場 の外微分は,次式のように %& を用いて書くことができる.. . 次微分形式と面積ベクトル つの 次微分形式. . . . . . . . . に対するグラスマン積は次式のようになる.. . . . ここで, と の外積は,次式のようになる.. . . . . . . . また, を次式のように定義し,面積ベクトルという.. . . . . . これらの式から, は外積を用いて,次式のように書くことができる.. . . . また,一般の 次微分形式は面積ベクトルを用いて,次式のように書ける.. . .
(100)
(101) 次微分形式と体積素 次微分形式. . において,$ を次式で定義し,体積素と呼ぶ.. $. . このとき, 次微分形式は次式のようになる.. $ . .
(102) . 微分形式のグラスマン積計算. 次微分形式 と 次微分形式 のグラスマン積は 次微分形式になり,次 式のように表せ,内積が導出できることがわかる.. また, 次微分形式. $. . . . のグラスマン積から行列式が導出できる.. . . . 微分形式の外微分と. . . . $. . . . 次微分形式の外微分は %& を用いて,次式のように書けることは前述した.. . は次式である.. ここで,. . . . . 次微分形式 の外微分は,次式のようになる.. . . . . これは,つぎのように導出できる.. . . . . . は次式で定義されることからわかる.. ここで,. 次微分形式. . . . . . . . . . . . の外微分は,次式のようになる.. &' $ これは,つぎのように導出できる.. . . . . .
(103) より,次式が導出できる.. . . . . . . ここで,&' は次式で定義されることからわかる.. 外微分の外微分はゼロになる,つまり, から,ベクトル解析における &' . つの公式が導. 出できる.. . これは, 次微分形式 に対して,次式のような変形ができることからわかる.. . . &' これは, 次微分形式 に対して,次式のような変形ができることからわかる.. . &'$. . 線積分と微分形式. . 線積分の定義. 点 に対するスカラー場 を 次元内のなめらかな曲線 で積分するのが, スカラー場の線積分である.曲線 はパラメータ を使って,次式のように表されているとする.. . . これは,次式のように書いてもよい.. . . 線積分は曲線 を折れ線近似した式, . % . . . . . . . の極限により定義される.ただし, が折れ線近似したきざみの点を表している.% は 番目の きざみ点から次の刻み点までの折れ線の長さを表している.したがって,曲線 に沿っての の線積分 % は次式のように定義される.. . . . % . . . . . . . . . . . . . . .
(104) ここで,% は曲線 に沿った微小量で,線素と呼ばれ,次式で定義されるものである.. % . . . . . . . . . . . 点 に対するベクトル場 を 次元内の曲線 の方向に沿って積分するのが,ベクトル場 の線積分である.ベクトル場 を次式のようにおく.. . . 上の点 における接線ベクトルは,次式のようになる.. . . .
(105).
(106).
(107). また,微小量ベクトルを次式で定義する.. . . . . の接線方向成分は,
(108) で表されることから,曲線 に沿っての の線積分. . は次式のように定義される.. . . . . . . . . . . . . . . . . . 線積分の微分形式表現. を 次元ユークリッド内の曲線とするとき,つぎの 次微分形式を考える. これは,前項の記号を用いると,つぎのようにも書ける.. 次微分形式の 上の線積分を,次式で定義する.. . . . . . . . . ただし,右辺が通常の線積分を意味する.. . . . . .
(109)
(110). 面積ベクトルと面積分. ベクトル積 の大きさ は, と はつくる平行四辺形の面積になることは良く知ら れている .これは,行列式や内積を用いると,つぎのように表すことができる.. . ここで,記号 &. . .
(111)
(112) . . . . .
(113)
(114) . . . . . . . . .
(115)
(116) . . . . . . . を次式のように定義し,グラミアンと呼ぶ. & . . . . . . また, 次元空間内の曲面 ' は,次式のようにパラメータ . . . . . . を用いて表すことができる.. 曲面 ' の点 における接平面の微小ベクトル は,次式のように表すことができる. . .. ここで, が接平面の基底ベクトルであり, が座標軸成分を表していると解釈でき . る.上の接平面のベクトル同士のベクトル積を面積ベクトルといい,次式で定義する.. 外積の性質から,面積ベクトル は ' の図のように接平面に垂直外向きになる.面積ベクトル . . を成分表示すると,次式のようになる.. . . .
(117)
(118)
(119)
(120)
(121)
(122). . ただし,つぎのように記号を定義している.. . . . . . . . . . 福祉ロボット工学の講義資料 解析力学の基礎を参照すること 次章の自然基底を参照のこと.. . .
(123) . . . . . . 微分形式を用いて定義した面積ベクトルとここで定義した面積ベクトルの関係について述べる.微 分形式による面積ベクトルは,次式で定義されていた.. . . . . . ( の外微分は次式のようになる.. . これから,次式のようにグラスマン積が計算できる.. . . . . . . . . これにより,微分形式の場合のグラスマン積記号 を省略したものが,ここで定義してある面積 ベクトルになっている.. . 面積分の微分形式表現. スカラー場 を曲面 ' される.. ' . . . .
(124) 上での面積分は,次式のように定義. . & . . .
(125) ここで,上式右辺の. & . . . . 式が成り立つ.' を面積要素という.. ' . . &. . . . の曲面 ' 上の積分は,次式のように定義される.. 次微分形式. . は面積ベクトル の大きさに成っている.つまり,次. . . . . . . . . . . これから面積分は, の曲面 ' の法線方向成分の面積分になっていることがわかる.. 次元空間の曲線の法線方向の成分の積分 次元のベクトル場 . . に対して,次式を定義する.. . . . . . . . . 曲線 に対して,次式の積分を定義する.. . . . . . . . . . . ここで,つぎのベクトルを定義する. . . . . . . . . . . . . . このとき,次式が成立する.. $# # . . . . . . . . . . ただし,# は と の法線方向とのなす角である.したがって,次式のようになる.. . . . . . $# # . . . $# #% . . . .
(126) . . ストークスの定理 一般形. ( 次元空間の領域 $. とその境界 $ があるとき,( 次微分形式 に対し, は ( 次微 分形式になり,次式が成立する.. . . . . . . . 境界と被積分要素である微分形式を強調するために,上式をつぎのように書くことがある.. ) $ *) $ * これは,解析的演算 が幾何的対応 $ $ に対応し,一種の双対性を暗示していること. を意味する .微分形式による直接の証明は与えず,各次元において,この定理の特殊形を示す にとどめる..
(127) 次元の面と境界曲線におけるストークスの定理 これは,特にグリーンの定理と呼ばれており,' を 次元内の面,' をその境界曲線とすると, 次式のようになる.. . . . . . . . . .
(128) 次元の面と境界曲線におけるストークスの定理 これも,グリーンの定理と呼ばれるが,この場合には,. . . # . '. . . . . . . . #. '. となるので,次式の見慣れたグリーン公式になる .. . . . . . .
(129) 次元の空間領域と境界曲面におけるストークスの定理 これは,特にガウスの定理と呼ばれており,$ を 次元内の空間領域,' をその境界曲面とす ると,次式のようになる.. . . . &'. $. . . . . . . 解析学と幾何学の融合を意味し,ド・ラームのカレント理論へと発展した. ベクトル解析の入門書にはこの証明が良く出ているので参考にすること.. . . .
(130) 次元の場合のガウスの定理 次元ベクトル場 の場合,&' とすると,次式が成立する.. . . &'. となるので,' を 次元平面領域,' . . ' . . . . . これは,次式が成立することからわかる.. . . &' ' . . . . . . . 微分形式の引き戻し パラメータ . をもつ 次元曲面 を考える.写像 を次式のように考える.
(131) の領域を ,その境界を とし, によって,それに対応する の領域を ' ,そ とする.関数や境界は 級とする. の境界を . 引き戻しは各微分形式に対して,つぎのように定義される. 関数の引き戻し
(132) ' 上の関数 の. による引き戻し は,次式で定義される. . . . 次微分形式の引き戻し
(133). のとき,次式のように定義される. . . . . . 次微分形式の引き戻し
(134). 次微分形式の場合も 次微分形式と同様に定義される.たとえば, のとき, つぎのようになる.. . . . . このとき, 次および 次微分形式に対して次式が成立する .. . . . これは,つぎのようにして証明できる. 次微分形式では, は 成立する.. 次微分形式になり, 変数であることから,
(135) であることから自明な意味で. .
(136) Æ . 次微分形式 のとき,次式のように変形できることからわかる. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 次微分形式 のとき,次式のように変形できることからわかる.. . . . . . . . . . . . . . ストークスの定理は,引き戻しを使うと,つぎのようになる.
(137). .
(138).
(139). . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
(140). . 完全積分可能性とフロベニウスの定理.
(141) . 完全積分性とポテンシャル関数の存在. 次微分形式. において, . . が与えられたとき, となる が存在するとき,つまり,. . . . . は完全積分可能であるといい, をポテンシャル関数という. の解は, 一定値 で与え られる..
(142) . 微分方程式系とハミルトン系. 関数 + +
(143) + ( ( に対して,つぎの特殊な微分方程式を考える.+ をハミルトン関数,この微分方程式をハミルトン系という.. ( . . + , ( + , . .
(144) この式を満足する ( ( を,この微分方程式の解という.このとき,+ の外微分は次式のようになる.. + ( + + ( . . . また, ( の外微分は次式のようになる.. これらから次式が成立する.. + . . + ( + ( ( . . . . + + + + ( (. . これより,各解は次式を満たすことがわかる.. +
(145) 一定 . . 電磁気学におけるガウスの法則と の意味. 次元空間の原点に点電荷が つのある場合の電位(クーロンポテンシャル) は比例定数を規 格化して とすると,空間の点 における電位は次式のようになる.. " . . . ただし," は原点からの距離であり,次式で与えられる.. " 電位はスカラー場である.また,電界(電場) は次式のように書くことができ,これはベクト ル場である.. . " " " " . これを変形すると,次式のようになる.. . . . . . . . . . . . . . . . . . . ". 簡単のため,領域 $ として球を考えると,境界曲面 $ は球面になり,これを ' とおく.球面 外向きの法線単位ベクトルを とすると,面積ベクトル ' となるので,ストークスの 定理より,次式が成り立つ.. . . &' $ . . . ' . . . '.
(146) ここで,球面であるので, . であるので, . . . となることから,次式が成り立つ.. . ' . . " ". . ". . . ' -" ". . -. さらに,一般の曲面 ' とその内部にある球面 ' を考え,両方とも内部に原点 を含むとし,' と ' の球面で囲まれる領域を $ とおくと,$ の境界曲面は ' と ' からなる.さらに,単位法線ベ クトルを,それぞれの曲面の外側方向(原点を含む方が内側)で, と定義されているとする. このとき, は領域の内側を向いていることに注意して,ストークスの定理を領域 $ に適用する. '. . . と,次式のようになる.. . &' $ . '. $. . . ' . . . . '. 一方,. . . . ". . . . . " . . . に注意すると," のときに,&' を計算すると,次式のようになる.. . &' &'. . . . 領域 $ は原点 を含まないので,結局,次式が成り立つ. . &' $ . ' . したがって,最終的に次式が成り立つ. . . . . ' -. したがって,"./ の体積分は領域内の電荷の湧き出し量を表していることがわかる.. .
(147) . 電磁気学におけるストークスの法則と の意味. 次元の面と境界曲線におけるストークスの定理から,# の意味を考えてみよう.図のように 領域を 次元長方形内部,境界 をそのまわりとする( の方向は反時計回りとする).長方形 面積を ' とし,ベクトル は,紙面の裏側から表側を方向とする単位法線ベクトル, を電場と する.ストークスの定理の極限をとることにより,# は次式のように書ける.. ") ' . . . . . . この式は,つぎのようにして導出できる.*+ および ,- 上の の 成分の平均値は,各々,つ. . . . . . . . ぎのように近似できる.. 0. 0 0 0 線積分は長方形方向に上式を積分することに等しい.したがって,*+ の方向の線積分と ,- 方向 の線積分は,各々,つぎのように近似できる.. 0. . 0. . . 0. . . 0. . . . 同様に,+, および -* 上の の 成分の平均値は,各々,つぎのように近似できる.. 0. 0 0 0 0 . . 0. . したがって,+, の方向の線積分と -* 方向の線積分は,各々,つぎのように近似できる. . 0. . . . 0. . したがって, の回りの線積分の合計は,次式のようになる.. . .
(148). 0. 0 . . . 0. 0 . . . '. したがって,# は境界上の ベクトルの渦の強さを表していることがわかる.. .
(149) . ポテンシャル関数. つぎの 階スカラー微分方程式を考える.. 1 . . 上式において,1 は座標 の関数であり,これをポテンシャル関数という.状態変数を, . とすると,上式の状態方程式は,つぎのようになる.. . . 1 . 平衡点は微分方程式の解は動かない点であり,次式を満足する状態 . . . . である.. . したがって,次式の解であることがわかる.. 1 . . . . . これから,平衡点における の値で,ポテンシャル関数は極値をとることがわかる.状態変数は 時間 であるので,微小時間 に対する微分は,次式のようになる.. 1 . . . . 上式から,次式が成立することがわかる.. 1 . 1 1 ここで,もしも,次式が成立するような関数 が存在すると仮定する. 1 これは,次式が成り立つような関数 が存在するすることを仮定することになる. 1 . . . . . これを完全積分可能性という.実際に,上式の解が存在し,次式のようになる.. 1 . .
(150) 式より, より,次式が成り立つことになる.. 1 . . ただし, は任意の積分定数である.これが微分方程式の解の状態空間(この場合は相空間 に一 致) における表現であり,これを軌道という.したがって,状態空間の幾何的関係を表す には, 次の微分形式による計算が便利であることがわかる.たとえば,ポテンシャル関数 1 を. 1 . . . . とすると,微分方程式は,. . であり,解は同心円. . . . になり,時間的に見ると円を時計回りする.. . 平衡点. . 接空間と双対接空間(余接空間). / / 項で述べた接空間について,もう一度記載する. 次元空間内の曲面 ' は,次式のように パラメータ を用いて表すことができる.. . . . . . 相空間とは, を横軸に,その時間微分値 を縦軸にした 次元空間である.. .
(151) 曲面 ' の点 における接平面の微小ベクトル は,次式のように表すことができる.. . が接平面の基底ベクトルであり, が座標軸成分を表していると解釈できる. ここで, このことから,' 上の接空間 % 0$2 ' と双対接空間 余接空間 $#% 0$2 ' . . . の基底を,各々,つぎのように定義する.. 2 ' の基底(反変基底という)
(152) 2 ' の基底(共変基底という)
(153) . . さらに,反変基底と共変基底の演算則(内積や汎関数と思えばよい)を,次式のように定義する. . . 接空間のベクトル は,次式のように書ける.. Æ. . . . . . /. さらに,双対接空間のベクトル は, 次微分形式であり,次式のように書ける.. 特に, は,接空間の 座標方向成分を取り出す作用素になっている.. . / . /. この意味から, のように,接空間の座標成分と を同一視できるわけである.. . リー微分とリーブラケット. 加筆予定. . リーマン計量. 加筆予定. 参考文献 高橋邦弘:弾性力学の基礎,コロナ社 / 志賀浩二:ベクトル解析 講,朝倉書店 / 栗田 稔:微分形式とその応用,現代数学社 / 長野 正:曲面の数学,培風館 / . .
(154) 1/ フリューゲェ(後藤 学訳) :テンソル解析と連続体力学,ブレイン図書出版 / 岩堀長慶:ベクトル解析,裳華房 / 竹内外史:数学から物理学へ,日本評論社 / 砂田利一:曲面の幾何,岩波書店 / 深谷賢治:解析力学と微分形式,岩波書店 / 倉田令二郎:数学と物理学との交流,森北出版 / 2/3/4!% & */4$5"&
(155). # ,"$6"6 -#' 768/ 9$/ /. :微分形式の理論およびその物理科学への応用,岩波書店 / :/ フランダース(岩堀長慶訳). 小沢哲也:曲線・曲面と接続の幾何,培風館 / 剣持勝衛:曲面論講義,培風館 / 加須栄篤:リーマン幾何学,培風館 / ;/1/; ダーリング 時田 節訳:微分形式と接続,ピアソン / 有馬哲,浅枝陽:ベクトル解析と電磁場< 電磁気学と相対論のためのベクトル解析,東京図 書 / 松 尾 孝 美:解 析 力 学 の 基 礎 ,
(156) /. .
(157)
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