あ ら ま し 企業のビジネス基盤を効率良く強化し,新ビジネスに迅速に対応するため,富士通は お客様とともに課題を解決すべく,新ビジネス分野に向けた新クラウドサービスを提供 していく。 本稿では,本特集掲載の記事を紹介しながら,まず企業の本業を継続強化するソ リューションとSIの中核となる三つの基盤ミドルウェア群(Interstage, Symfoware, Systemwalker)に関する話題と技術を取り上げる。つぎに,お客様のビジネス基盤効率 化を実現するプライベートクラウドについて,その統合運用技術への富士通の取組みを, 「パブリッククラウド提供から得る技術と運用ノウハウ」,「社内開発センターでのプライ ベートクラウドの実践」,「プライベートクラウドを実現するミドルウェア」,「クラウド でのミドルウェア利用」の四つの観点から説明する。最後に,新たなビジネス分野に向け た新クラウドサービスへの富士通の今後の取組みについて紹介する。 Abstract
With the aim of improving the efficiency of corporate business platforms and promptly responding to new businesses while pursuing solutions in cooperation with our customers, Fujitsu will continue to provide new Cloud services for new business fields. As an introduction to the other papers appearing in this special issue, this paper overviews topics and technologies concerning (1) solutions for continuously strengthening corporate core businesses and (2) our group of three platform middleware products that are central to system integration: Interstage, Symfoware, and Systemwalker. Turning to private Clouds, which improve the efficiency of our customers business platforms, it then describes Fujitsu s efforts regarding these integrated system management technologies from four viewpoints: (i) technology and operational know-how acquired through the provision of public Clouds, (ii) practical implementation of private Clouds in in-house development centers, (iii) middleware for creating private Clouds, and (iv) middleware utilization in the Cloud. Finally, it describes Fujitsu s efforts from here on towards providing new Cloud-computing services targeting new business fields.
● 佐川千世己
ミドルウェア
(4) クラウドでのミドルウェア利用 プライベートクラウドのための富士通ミドル ウェア製品のポートフォリオを整理したものを 図
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に示す。 また,最後に,新たなビジネス分野に向けた新 クラウドサービスについての富士通の今後の取組 みについて紹介をする。 基盤ミドルウェア ●Interstage
(SOA
ミドルウェア) Javaで構築した企業システムはポータビリティ が優れており,パブリッククラウド環境でも,プ ライベートクラウド環境でもお客様のビジネス基 盤の柔軟性と迅速性を高めることができる。富士 通はお客様にInterstage Application Serverによる 共通のJava実行環境をクラウドにおいても提供し ていく。このJava実行環境については,本特集掲 載の参考文献(1)でも触れるので参照していただ きたい。 ●Symfoware
(情報統合) 本 特 集 掲 載 の 参 考 文 献(2) で は, 拡 大 し 続 け る 企 業 シ ス テ ム 規 模 に 応 え る デ ー タ ベ ー ス Symfoware serverの最新データ管理機能とそれ を支える技術とを紹介する。さらに,この技術を インメモリデータ処理に広げて東京証券取引所様 arrowheadシステムに適用した例を同じく参考文 基盤ミドルウェア ま え が き インターネットの普及により世界はますます小 さくなり,企業を取り巻く環境の変化も激しくな り,将来の方向性も見えづらくなっている。こう した時代には,企業は本業のビジネス基盤を効率 良く強化し,新たなビジネスに対しても迅速に対 応していける柔軟性と俊敏性を身につける必要が ある。 富士通は,こうしたお客様の課題をともに解決 すべく,ソリューション/SIやプラットフォームビ ジネスを支える商品群を強化し,さらに,新たな ビジネス分野に向けた新クラウドサービスを提供 していく(図-1
)。 本稿では,本特集に掲載している記事を紹介し ながら,まず,企業の本業を継続強化するための ソリューション/SIの中核となる三つの基盤ミドル ウェアに関する話題と技術を取り上げる。つぎに, お客様のビジネス基盤の効率化を実現するプライ ベートクラウドについて,その統合運用技術の富 士通の取組みを以下の観点から説明する。 (1) パブリッククラウド提供から得る技術と運用 ノウハウ (2) 社内開発センターでのプライベートクラウド の実践 (3) プライベートクラウドを実現するミドルウェア ま え が き IaaS/PaaS領域 富士通のお客様システム 他社のお客様 システム OViSS FJ-Azure 新クラウド サービス プラットフォーム ビジネス •基盤ミドルウェア •プライベートクラウド • •ヒューマンセントリックな インテリジェント・ソサエティ 他社クラウド Google Salesforce 基幹 システム ハイブリッドクラウド インテグレーション プライベート クラウド ソリューション/SI 図-1 富士通の提供する新クラウドサービス Fig.1-New Cloud services from Fujitsu.献(3)で紹介する。 ●
Systemwalker
(ITIL
運用管理) Systemwalkerは,2009年度のIDC Japanの市場 調査(ネットワーク運用管理部門)で国内売上1位 となった運用管理ミドルウェアである。クラウド においても,Systemwalkerをベースとした製品は 大きな役割を担う。参考文献(4)で以下の製品に ついて触れる。・Systemwalker Centric Manager ・Systemwalker Opereation Manager
・Systemwalker Service Quality Coordinator
パブリッククラウド提供から得る技術と運用ノウハウ
富士通は,企業向けパブリッククラウドであ
パブリッククラウド提供から得る技術と運用ノウハウ IS:Interstage,SW:Systemwalker,SV:ServerView,III:IS Information Integration,PG:PRIMERGY,
IBAR:IS XML Business Activity Recorder,Shunsaku:IS Shunsaku Data Manager,PQ:PRIMEQUEST
ソリューション/SI OSS 自社IP ISV 運用管理 セキュリティ 運用管理 セキュリティ 仮想化 ハードウェア 仮想サーバ IaaS 実行基盤 Webサービス 統合 ビジネスプロセス 統合 仮想リソース管理 OS 情報統合 PaaS Hyper-V KVM (Red Hat)
Red Hat Windows Java実行基盤
IS Application Server NetCOBOLCOBOL データ統合 III,IBAR,Shunsaku マスタデータ管理 データクレンジング IS Information Quality VMware コンテナSolaris Solaris 帳票印刷 IS List Creator 予測分析・最適化 見える化 データマイニング IS Navigator テキストマイニング IS Navigator データ蓄積
IS Information Storage SymfowareRDB BI/BA
プライベートクラウド
データ マイニング
サーバ
PG,PQ,SES ストレージETERNUS ネットワークSR,IPCOM
ビジネスプロセス統合 情報統合 実行基盤 集計・レポート IS Navigator リアルタイムバッチ
IS Job Workload Server INTARFRM/Topjaxフレームワーク ダッシュッボード
IS BPM-Analitics ビジネスプロセス管理
IS Business Process Manager ビジネスルール管理 エンタープライズサービスバス IS Service Integrator アダプタ Ajax IS Interaction Manager マッシュアップ グループウェア TeamWARE Office ポータル/コラボレーション ビジネスコラボレーション 仮想リソース管理 SV Resource Orchestrator SCVMM vCenter 証跡管理 SW Centric Manager PC管理 SW DTシリーズ サーバ操作管理
SW Centric Manager シングルサインオンIS Application Server 統合ID管理 鍵管理 運用自動化 SW Runbook Automation 自動運転 SW Operation Manager 運用 バック アップ 管理 システム運用管理 イベント監視 SW Centric Manager 監視 ネットワーク管理 SW Network Manager 構成管理 構成管理 SW Configuration Manager 変更管理 SW IT Change Manager インシデント・問題管理 SW IT Service Management サービス管理 システム性能 SW Service Quality Coordinator アプリ性能 カタログ管理 SW Catalog Manager ストレージ管理
ETERNUS SF SW Network Manager ネットワーク管理 サーバ管理
SV Suite
集計・レポート
RDB
図-2 プライベートクラウドのためのプロダクトポートフォリオ Fig.2-Product portfolio for private Cloud.
る「オンデマンド仮想システムサービス」(以下, OViSS)(5)をプライベートクラウド向けの商品に 先行して開発した。パブリッククラウドで得た技 術と統合・展開・運用のノウハウは,プライベー トクラウド向けのミドルウェアをはじめとする富 士通の製品・サービスへ波及させていく。この OViSSでの技術蓄積を反映したミドルウェアにつ いて,参考文献(6),(7)で紹介している。 さらに,OViSSは2010年10月の国内商用サービ ス開始を皮切りに,2011年にはこのサービスを世 界5拠点で展開していく。これにより富士通は,ワー ルドワイドでパブリッククラウドとプライベート クラウド間でシームレスに運用できる環境を提供 していく。 社内開発センターでのプライベートクラウドの実践 プライベートクラウドで必要な実践ノウハウを 抽出するため,富士通は社内の沼津ソフトウェア 開発クラウドセンターも活用している。ここで得 られたノウハウを富士通のプライベートクラウド 向けミドルウェア製品とサービスの中に継続的に 反映・提供していく。 ここで言う「実践ノウハウ」は,プライベート クラウドの背景にある企業的ニーズが,現在のビ ジネスとの連続性を求めるところから必要になる。 例えば,お客様は既に使っているICT資産・ソフト ウェアを出発点として,プライベートクラウドへ 移行する場合がほとんどである。一般的に,お客 様は以下のようなステップで移行を進めるであろ う。ばらばらの種類のICT資源(サーバなど)があ る現状から出発して, ・仮想化 ・標準化 ・自動化 である。 ここで必要なノウハウは,お客様の運用に密着 した要件に基づく。例えば,すでに仮想化され集 約済みの業務を,いかに業務サービスに影響させ ないでクラウドに移行させるか,といった要件で ある。移行ステップをスムーズに進めるノウハウ は,パブリッククラウドに新規に業務構築するだ けでは得られない種類のものである。 このようなノウハウはもちろん,目標のプライ 社内開発センターでのプライベートクラウドの実践 ベートクラウドの定常運用を効率化するところま で含めてノウハウを抽出するため,富士通では社 内の沼津ソフトウェア開発クラウドセンターを泥 臭い実践の場として活用している。 このセンターでは,富士通のハードウェア・ソ フトウェア両面の製品ラインアップの開発とテス ト作業のために,850種類もの異なるサーバを保持 している。この点でお客様の歴史ある資産の縮図 であると言える。富士通はセンター自身の運用コ スト低減と製品開発競争力強化のため,このセン ターのクラウド化を2008年度から進めてきた。仮 想化(集約),標準化,自動化という3ステップに沿っ て,このセンターのクラウド化は今も進行中であ る。仮想環境の規模は2010年度のうちに3000 VM に達する。この開発環境構築の自動化に当たって は,以下の富士通ミドルウェアを使っている。 ・ServerView Resource Orchestrator
・Systemwalker Service Catalog Manager
・Systemwalker Software Confi guration Manager ・Systemwalker Runbook Automation
参考文献(8)では,この沼津ソフトウェア開発 クラウドセンターでのソフトウェア開発環境のク ラウド化について説明している。 プライベートクラウドを実現するミドルウェア プライベートクラウドの構築・運用を可能にす るためのミドルウェア製品群を,富士通はすでに 2010年6月より出荷している。本特集では,これら の富士通ミドルウェアについての紹介を以下のよ うに行っている。 まず,参考文献(1)は,主要な三つのミドルウェ アの概説である。富士通のクラウド実現への3段階 の考え方から出発して説明している。 つぎに,仮想化と資源割当てを指揮するミドル ウェア,ServerView Resource Orchestrator(ROR) の説明と,プライベートクラウドの評価と利用が お客様のもとで容易にできるようにしたソリュー ション商品であるクラウドインフラマネージメン トソフトウェア(CIMS)について参考文献(6) で説明する。CIMSはRORをベースにセルフポー タルサイトの構築機能と,ダッシュボードでリソー ス管理を「見える化」する機能とを組み込んだ製 品である。 プライベートクラウドを実現するミドルウェア
・Interstage Interaction Manager ・Interstage Information Integrator ・Interstage Business Process Manager
クラウドでのミドルウェア利用 クラウドで富士通のミドルウェアを利用してい ただくために取り組んでいる内容を2件紹介する。 参考文献(15)は,OViSSにおける,仮想シス テム構築作業支援の取組みである。ミドルウェア のインストール作業効率化を中心に説明している。 また,参考文献(16)では,ITシステムの運用 管理をSaaSとして提供する取組みを紹介する。 今後の取組み 最後に,クラウドコンピューティングの利用が 拡大する中,富士通のクラウドサービスの今後の 取組みについて説明する。 富士通では,豊富なICTリソースを活用可能なク ラウドコンピューティングを利用し,従来型の業 務アプリケーションのデータとヒューマンセント リックな実世界型のアプリケーション(携帯端末, 各種センサなどからのデータを活用したアプリ ケーション)のデータを連携して分析することで, 社会や企業に新しい価値と知識を提供するインテ リジェント・ソサエティの実現を目指している。 このときのソリューションは,従来の企業シス テムのような事前に課題を定義して構築する「課 題/解決型」ではなく,現状を見える化し仮説を立 てながら解決策を模索する「仮説/検証型」が求め られる。また,このようなソリューションでは, 従来の業種別の企業システムとは異なり,多くの クラウドでのミドルウェア利用 今後の取組み 上記のRORが達成するICT資源の見える化と有 効活用の基礎には,仮想化技術がある。そのうち, サーバの仮想化技術(Hyper-V,VMware,Linux KVM)について,参考文献(9),(10),(11)の 記事でそれぞれ説明する。 三つ目は,企業内で使われてきたシステム群を, 管理可能な数のパターンに整理(標準化,型ぎめ) した後,プロビジョニングに使うミドルウェアの 説明である。参考文献(12)でプロビジョニング に必要な運用の負荷を下げるためのミドルウェア Systemwalker Software Configuration Manager を紹介している。
四つ目は,運用の自動化のためのミドルウェア Systemwalker Runbook Automationの 紹 介 で あ る。このミドルウェアは,手作業に頼っていたICT インフラの運用を効率化するためのものである。 ワークフロー化により標準化と自動化を助けてく れる。参考文献(13)において,その現状と今後 の取組みを紹介している。 五つ目は,参考文献(7)でSystemwalker Service Catalog Managerを紹介している。仮想化・標準化 されたシステムを,サービスという単位で管理す ることにより,貸出し・返却の運用負荷を下げる ことに寄与する。 六つ目は,前述のCIMSがプライベートクラウド 内の資源を「見える化」する機能を,参考文献(4) で紹介する。 七つ目は,プライベートクラウドと,パブリッ ククラウドを組み合わせて使うこと,つまり,ハ イブリッドクラウドを可能にする以下のミドル ウェア製品群を参考文献(14)で紹介する。 サービス プラットフォーム 実世界 アプリ ケーション 従来型業務 アプリ ケーション 銀行,小売, 官公庁など データ 連携・分析 新サービス 農業,ライフログ,エネルギーマネジメント,医療など サービス基盤 ミドルウェア ネ ッ ト ワ ー ク 図-3 サービス基盤向けミドルウェアへの取組み Fig.3-Approach to service platform middleware.
(5) 吉田 浩ほか:サービス指向プラットフォーム. FUJITSU,Vol.61,No.3,p.283-290(2010). (6) 松本一志ほか:クラウド環境におけるダイナミック リソース管理技術.FUJITSU,Vol.62,No.1,p.14-20 (2011). (7) 中井隆裕:サービスカタログを利用したプライベー トクラウドの利用.FUJITSU,Vol.62,No.1,p.47-52 (2011). (8) 有村雄二ほか:ソフトウェア開発環境のクラウド化 −沼津ソフトウェア開発クラウドセンターの実践−. FUJITSU,Vol.62,No.1,p.65-72(2011).
(9) 芳賀 豊ほか:Windows Server 2008 R2 Hyper-Vの サーバ仮想化技術.FUJITSU,Vol.62,No.1,p.86-92 (2011). (10) 錦織正明:VMware vSphere 4のサーバ仮想化技術. FUJITSU,Vol.62,No.1,p.93-98(2011). (11) 五島康文:KVMのサーバ仮想化技術.FUJITSU, Vol.62,No.1,p.99-105(2011). (12) 村田 謙ほか:標準化した業務システムのプロビジョ ニング.FUJITSU,Vol.62,No.1,p.35-41(2011). (13) 伊藤裕章:自動化技術によるITインフラの運用効率 化.FUJITSU,Vol.62,No.1,p.42-46(2011). (14) 船 橋 幹 雄 ほ か: ハ イ ブ リ ッ ド ク ラ ウ ド の 実 現. FUJITSU,Vol.62,No.1,p.28-34(2011). (15) 畠山卓久ほか:ミドルウェアのクラウド向けオンデ マンドデリバリサービス.FUJITSU,Vol.62,No.1, p.79-85(2011).
(16) 岩 佐 和 典:IT管 理SaaSへ の 取 組 み.FUJITSU, Vol.62,No.1,p.73-78(2011). 業種・分野を横通しでのデータ利活用が求めら れる。 現在,このような要件に対応するため,多くの分 野の様々なデータを連携・分析でき,サービスを提 供しつつ,新たな課題を検出・対応し進化し続け るクラウドサービスの構築を支えるミドルウェア の提供に向け,研究・開発を進めている(図