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実施決定済 検討中 駆け込み 反動 所得目減り 3 節約志向の強まり の 3 つのメカニズムを通じ 消費に悪影響を 及ぼすと考えられる 駆け込み 反動では 本来 増税後に行われるはずだった消費の一部が増税前に前倒しされ 増 税前後に消費のアップダウンが生じる 消費増税の実施が発表されると 家計には税

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消費増税対策の効果と課題

消費喚起策の経済効果は合計約 1,500 億円

○ 政府は予定通り2019年10月に消費増税を実施すると表明。前回2014年の増税後に生じた消費低迷の 繰り返しを避けるため、政策対応を求める声は多い。 ○ 既に実施決定済の軽減税率、幼児教育無償化、年金生活者支援給付金に加え、政府は増税後の消費 喚起や反動抑制を目的に、ポイント還元、プレミアム付き商品券、住宅購入支援等の対策を検討。 ○ ポイント還元とプレミアム付き商品券の経済効果は合計約1,500億円と試算。ただし、検討中の対 策は何れも時限措置であり、失効後の反動減が内外の景気減速局面と重なるリスクには留意が必要。 10月15日に行われた臨時閣議で、安倍首相は予定通り2019年10月に消費税率を8%から10%へ引き上 げると表明した。加えて、「あらゆる政策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう全力で対応する」、 「引上げ前後の消費を平準化するための十分な支援策を講じる」と、駆け込み消費と反動減を抑制す るための対策を実施する方針を示した。11月26日の未来投資会議、まち・ひと・しごと創生会議、経 済財政諮問会議、規制改革推進会議の合同会議における「経済政策の方向性に関する中間整理」でも、 「消費税率引上げに伴う対応等」として、「前回の3%引上げの経験を活かし、あらゆる施策を総動員 し、経済に影響を及ぼさないよう、全力で対応する」方針が確認されている。 政府は、消費増税による経済への悪影響を和らげるための対策として、軽減税率、幼児教育無償化、 年金生活者支援給付金の実施を既に決定している。加えて、キャッシュレス決済によるポイント還元、 プレミアム付き商品券の販売、住宅購入支援、自動車減税といった対策案1(報道では総額2兆円超) が検討されている。本稿では、こうした様々な対策の効果や課題について、消費増税が消費に影響を 与えるメカニズムとの関連を踏まえて整理したい。

1.なぜ対策が求められるのか~消費増税が

消費に影響を与える 3 つのメカニズム

2019年10月の消費増税に際して、これほど政策対 応の必要性が叫ばれているのは、2014年4月の消費増 税後に予想外の消費低迷が生じたからだ。当時は、 増税前後に大幅な駆け込み消費と反動減が生じたほ か、増税後の2015~2016年にかけ消費の低迷が続い た。こうした消費増税による消費への影響のメカニ 図表 1 消費増税の影響メカニズム (資料)みずほ総合研究所作成 (実質消費支出の水準) (時間) ②所得目減り 税込価格上昇で 実質所得水準が低下 (→逆進性悪化) ③節約志向強まり 体感物価が上昇し 節約志向が強まる 増税前の 消費トレンド 増税後の 消費トレンド 節約志向の強まりを 受けた消費トレンド 実際の 消費推移 駆け 込み 反動 消費増税 ①駆け込み・反動 3 ミシガン大学消費者信頼感指数 4 民間総賃金指数 (資料)ロイター、ミシガン大学 (1966年1~3月期=100) (注)非季節調整値。 40 50 60 70 80 90 100 110 07/8 08/2 08/8 09/2 09/8 10/2 10/8 11/2 11/8 現状指数 期待指数 総合指数 (3カ月前比年率、%) (資料)米国労働省、みずほ総合研究所 (注)季節調整値、名目。時間当たり賃金、週当たり労働時間は民間部門の    全雇用者平均値。 ▲2.0 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10/7 10/10 11/1 11/4 11/7 非農業民間雇用者数 週当たり平均労働時間 時間当たり平均賃金 民間総賃金指数 みずほ総合研究所 調査本部 経済調査部 03-3591-1298

日本経済

2018 年 11 月 30 日

みずほインサイト

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①駆け込み・反動、②所得目減り、③節約志向の強まり、の3つのメカニズムを通じ、消費に悪影響を 及ぼすと考えられる2 ①駆け込み・反動では、本来、増税後に行われるはずだった消費の一部が増税前に前倒しされ、増 税前後に消費のアップダウンが生じる。消費増税の実施が発表されると、家計には税率の低い間にで きるだけ消費してしまおうとするインセンティブが生じるためだ。実際、2014年4月の消費増税時には、 増税直前の2014年1~3月期に実質消費支出が約2.5%押し上げられた一方、4~6月期には逆に同程度の 反動減が生じたとみられる。 ②所得目減りとは、消費増税による税込価格の上昇で家計の実質的な所得水準が低下し、それに合 わせて実質消費支出の水準が下がることである。2019年10月には、消費税率が8%から10%に引き上げ られるため、税抜価格が変わらなければ、増税により税込価格が1.85%(1.10÷1.08-1)上昇する。 加えて、企業が消費増税を価格改定のタイミングととらえ、税抜価格を引き上げれば、税込価格は 1.85%以上上昇し、所得の目減り幅もそれだけ大きくなる。さらに、増税による所得目減りは、消費 性向が高い低所得層ほど影響が大きく、消費税の逆進性が悪化するという問題もはらんでいる。 ③節約志向の強まりは、家計の体感物価上昇率が高まることによって生じる。家計の体感物価に影 響すると考えられるのが、飲食料品等の購入頻度が高い品目だ。こうした身近な品目の価格が大きく 図表 2 実施決定済・検討中の対策一覧 対策 概要 主な効果・メカニズムとの関連 課題 期限 実 施 決 定 済 軽減税率 飲食料品と新聞の消費税率を 8%に据 え置き(規模:約 1 兆円)。 身近な品目の税込価格上昇を抑 え、節約志向の強まりを抑制。 ② ③ 軽減税率対象品目の整理が複雑。小売店は複数 税率に対応するためのシステム投資が必要。高 所得者にも恩恵があり逆進性改善せず。 恒久 幼児教育 無償化 3~5 歳までの全児童と、住民税非課税 世帯の 0~2 歳児を対象に、幼稚園、保 育園、認定こども園の費用を無償化(規 模:約 1.4 兆円)。 子育て世帯の経済的負担の軽 減。 ② 子育て世帯以外の世帯には恩恵及ばず。無償化 により浮いた支出が何に回るかが不透明。保育 施設の需給をさらにひっ迫させるおそれ。 恒久 年金生活者 支援給付金 低所得の年金生活者を対象に最大年 6 万円を給付(規模:約 5,000 億円)。 低年金世帯に対する消費増税の 影響を緩和。 ② 支給開始が 2019 年 12 月となり、増税とタイムラグ が発生。 恒久 検 討 中 キャッシュレス 決済による ポイント還元 中小規模の小売店等でキャッシュレス 決済時に 5%分のポイントを消費者へ還 元(規模:約 4,600 億円)。 増税後の消費を下支え。キャッシ ュレス化促進。 ② ③ 中小店舗の区別やポイント還元のためカード事業 者のシステム改修が必要。クレジットカード利用者 は高所得者が多く、ポイント還元により逆進性を 強めるおそれ。 増税後 9 カ月 プレミアム付き 商品券 低所得者や子育て世帯を対象に、購入 金額に一定額を上乗せして利用できる 商品券を発売(規模:約 700 億円)。 消費意欲に基づく商品券購入が 前提であり、その分は確実に消費 につながる。対象を低所得者等と することで逆進性に配慮。 ② 継続的な消費刺激へと繋げることが重要。2015 年実施時は低所得者ほど購入しない傾向にあっ たとの分析もあり、低所得者が購入しやすいよう 実施手法を検討する必要。 増税後 約半年 マイナンバーカ ード利用ポイント マイナンバーカード取得者を対象に、地 域の商店街等で利用できる「自治体ポ イント」を国の支援で一定期間加算。 増税後の消費を下支え。税・社会 保障インフラとしてのマイナンバー の普及促進。 ② 現状では自治体ポイントの普及が進んでおらず、 自治体ポイントの付与が即効性のある消費喚起 につながるか不透明。 未定 住宅ローン減税 拡充・延長 年間最大控除額を引上げ。税額控除期 間を 10 年間から 11~15 年に延長。 増税後の住宅取得費用を軽減し、 駆け込み・反動を抑制。「裕福なそ の日暮らし」世帯の消費を促進。 ① ② 税控除額の拡充は恩恵が高所得者に限定され、 逆進性が悪化するおそれ。 2021 年末 (現行) すまい給付金 拡充・条件緩和 給付額の上限(最大 50 万円)を引上 げ、収入要件(775 万円以下)を緩和。 低中所得者を中心に増税後の住 宅取得費用を軽減し、駆け込み・ 反動を抑制。 ① ② 収入要件を緩和すれば住宅ローン減税と恩恵が 重複し、低中所得者支援という本来の目的を逸 脱。 2021 年末 (現行) 住宅 エコポイント 住宅の新築・改築時に、断熱性や耐震 性等の度合いに応じポイントを付与。ポ イントは商品券等に交換可能。 増税前後の駆け込み・反動を抑 制。ポイント利用で増税後の消費 を下支え。 ① ② 新築購入の場合、2015 年実施時(30 万ポイント) と同程度では増税分を賄えず、エコポイントのみ で駆け込み・反動を十分に抑制することは困難。 未定 自動車 取得減税 自動車取得税に代えて 2019 年 10 月か ら導入する燃費課税を一定期間凍結。 増税後の自動車取得費用軽減で 駆け込み・反動を抑制。 ① ② 有力な財源を奪われる地方自治体や、自動車税 の恒久的な減税を優先したい自動車業界から、 反発が生じるおそれ。 増税後 約 1 年半 自動車 保有減税 低排気量車を中心に購入初年度の自 動車税を免除。 増税後の自動車保有費用軽減で 駆け込み・反動抑制。 ① ② 増税後 1~2 年 (注)内容は執筆時点の情報に基づく。 (資料)各種報道等より、みずほ総合研究所作成

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上昇すれば、家計は実態以上に物価が上昇したと「体感」する。加えて、体感物価には「上がりやす く、下がりにくい」特徴がある。家計は価格上昇に敏感に反応する一方、値上がりを体験するとその 印象が持続し、その後の値下げに反応しにくくなるためだ。したがって、体感物価が一度上昇すると、 家計のマインド悪化が続き、長期にわたり消費の伸びが鈍化してしまう。前回2014年の消費増税後は、 こうした体感物価の上昇による節約志向の強まりが、消費低迷の主因になったと考えられる。

2.実施決定済の対策~軽減税率による節約志向の強まり抑制に注目

では、こうしたメカニズムを踏まえ、まず政府が実施を決定済の対策について整理してみよう。 既に実施が決まっているのは、軽減税率、幼児教育無償化、年金生活者支援給付金の 3 つである(図 表 2)。それぞれの効果についてみると、軽減税率は税負担の緩和、幼児教育無償化は教育支出の引 き下げ、年金生活者支援給付金は直接給付を通じ、何れも②所得目減りを緩和する効果がある点で共 通している3 これら3つのうち、我々が特に注目しているのは軽減税率である。軽減税率は②所得目減りの緩和だ けでなく、③節約志向の強まりを抑制する効果も持ちうるためだ。上述したように、家計は飲食料品 等の購入頻度が高い身近な品目の価格に敏感である。実際、軽減税率の対象となる食料(除く外食・ 酒類)のCPIと家計の体感物価は連動して推移する傾向がある(相関係数は0.7程度、図表3)。軽 減税率により飲食料品の消費税率が現行の8%で据え置きとなることで、少なくともその分は飲食料品 の税込価格上昇が抑えられ、家計の節約志向の強まりが緩和されよう。 逆進性対策としては軽減税率以外に給付付き税額控除が考えられる4が、後で所得が戻ってくる税還 付方式の場合と比較すると、通時的な負担額は同じであったとしても、軽減税率は消費税支払時点の 負担感が抑制され、消費マインドの冷え込みが抑えられる可能性がある。この点は軽減税率のメリッ トであると考えられる5 もちろん、軽減税率により飲食料品等の消費税率が据え置かれても、その他の品目の税込価格が上 昇することで、体感物価が上昇して節約志向が強まる可能性は否定できない。例えば、2017年後半以 図表 3 食料(除く外食・酒類)CPIと体感物価 図表 4 各国のキャッシュレス決済比率 (注)家計の体感物価は「1 年前に比べ現在の物価は何%程度変 化したと思うか」とのアンケート調査の中央値。 (資料)日本銀行「生活意識に関するアンケート調査」、総務省 (注)日本は 2016 年、他の各国は 2015 年のデータ。 (資料)経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」(2018 年)、 一般社団法人日本クレジット協会「日本のクレジット統 ▲ 3.0 ▲ 2.0 ▲ 1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 1 ~ 3 4 ~ 6 7 ~ 9 10 ~ 12 1 ~ 3 4 ~ 6 7 ~ 9 10 ~ 12 1 ~ 3 4 ~ 6 7 ~ 9 10 ~ 12 1 ~ 3 4 ~ 6 7 ~ 9 10 ~ 12 1 ~ 3 4 ~ 6 7 ~ 9 10 ~ 12 1 ~ 3 4 ~ 6 7 ~ 9 10 ~ 12 1 ~ 3 4 ~ 6 7 ~ 9 10 ~ 12 1 ~ 3 4 ~ 6 7 ~ 9 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 体感物価(中央値) 食料CPI(除く外食・酒類) (前年比、%) 14.9 19.8 38.4 39.1 45 48.6 51 54.9 55.4 60 89.1 0 20 40 60 80 100 ドイツ 日本 インド フランス アメリカ スウェーデン オーストラリア イギリス カナダ 中国 韓国 (比率、%)

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降CPIを押し上げている外食については、軽減税率の適用外だが、単身世帯の増加や女性の就労増 加等を背景として家計の外食利用度は高まっており、外食価格の引上げが消費マインドに影響する可 能性もある(酒井・平良(2018))。さらに、増税を契機として企業が人件費等のコスト増を急速に 価格転嫁することも考えられる。2014年の増税時と比べれば節約志向の強まりは抑制されるとみてい るが、消費の先行きをみるうえで、企業の値上げスタンスの変化等、体感物価の上昇につながりかね ない動きを注視する必要がある点は言うまでもない。

3.検討中の対策案~ポイント還元とプレミアム付き商品券の消費喚起策が注目点

一方、政府が検討中の対策案には、消費喚起を目的とするポイント還元、プレミアム付き商品券、 マイナンバーカード利用ポイント、消費のなかでも特に自動車購入を支援する自動車取得減税、自動 車保有減税、住宅購入・改築を支援する住宅ローン減税、すまい給付金、住宅エコポイントがある。 まず、特に注目が集まるポイント還元とプレミアム付き商品券についてみてみよう。 (1)キャッシュレス決済によるポイント還元 ポイント還元は、増税後に中小規模の小売店等でクレジットカード等のキャッシュレス決済を行う と、消費金額の5%分のポイントが還元される施策である。ポイント還元により消費増税による追加負 担を軽減し、②所得目減りが緩和されると考えられる。また、「中小規模」の定義が曖昧だが、対象 は主に個人商店や、小売・外食等のフランチャイズチェーン店になると思われる。これらの店舗で購 入される物品は、飲食料品や日用品といった消費者の購入頻度が高い品目が中心と想定され、③節約 志向の強まりを抑制する効果も生じうる。加えて、日本は国際的にキャッシュレス決済比率が低く(図 表4)、東京五輪や大阪万博を見据えキャッシュレス化を促進する意図も込められている。 総務省「家計調査(2017年)」の一世帯当たり課税消費支出(年間約245万円)をもとに試算すると、 一世帯当たりのポイント還元額は年間約1万1,200円になる6。消費税率の引上げ(8%→10%)による 追加負担額が一世帯当たり年間約3万3,600円(飲食料品等の軽減税率を考慮した金額)となるため、 ポイント還元により追加負担額の約3分の1が軽減される計算だ。政府はポイント還元を東京五輪まで の9カ月間実施することを検討しており、その場合の一世帯当たりポイント還元額は約8,400円、日本 全体のポイント還元総額は約4,600億円となる。マク ロモデル乗数を用いた試算では、約1,300億円(GD P比で0.02%程度)の経済効果が生じると見込まれ る(図表5)。 ただし、ポイント還元には課題もある。上述した とおり、そもそも日本ではキャッシュレス決済があ まり普及しておらず、2016年時点のキャッシュレス 決済比率(民間最終消費支出に占めるキャッシュレ ス決済額の割合)は20%弱にすぎない7。また、キャ ッシュレス決済の9割を占めるクレジットカードの 利用は、オンラインショッピング(インターネット 図表 5 ポイント還元とプレミアム付き商品券の 経済効果試算(2019 年) (注)執筆時点での情報に基づき試算。過去の平均的な消費性向 に基づく試算であり、幅をもって解釈する必要がある。 (資料)各種報道より、みずほ総合研究所作成 対策案 ポイント還元 プレミアム付き商品券 対象 中小規模の 小売店等における キャッシュレス決済 約1400万世帯 対策規模 ポイント還元総額 約4,600億円 プレミアム総額 約700億円 経済効果 約1,300億円 (GDP比0.02%) 約200億円 (GDP比0.004%)

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通販)、携帯電話利用料金の支払い、スーパーマーケットでの支払いが上位3位となっており8、ポイ ント還元の対象となる店舗と消費者のキャッシュレス決済利用意向がマッチしているか分からない。 また、クレジットカード会社等のキャッシュレス決済事業者にとっては、加盟店の企業規模を仕分 けするためのシステム対応が必要となる。中小店舗側としても、決済事業者への手数料負担が発生す る。経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」(2018年)によれば、小売店側がキャッシュレス決済 を導入しない理由として、「手数料が高い」(回答者の42.1%)が最も多い(図表6)。キャッシュレ ス未対応な店舗の多くは中小企業の実店舗が多いと考えられ、9カ月の時限措置のためにどこまでキャ ッシュレス対応が広がるかは不透明である9 加えて、現状はクレジットカード等のキャッシュレス決済の利用者には高所得者が多いとみられ、 ポイント還元の恩恵が高所得者に集中し、逆進性を強めかねないとの懸念がある。クレジットカード であれば保有するために収入要件や年会費等の制約があり、9カ月間のポイント還元のために新たにカ ードを保有する人が大きく増えるとは考えにくい。消費者の利便性向上や小売業の生産性向上等の観 点からキャッシュレス決済の促進自体は望ましいことだと考えられるが、消費増税に対する経済対策 として位置付けることには時間や費用対効果を考えると課題は多い。 (2)プレミアム付き商品券 プレミアム付き商品券は、低所得者等を対象に、購入金額に一定額を上乗せして利用できる商品券 を地方自治体が販売する施策である。各種報道によると、2万円の購入金額に公費で5,000円のプレミ アムを上乗せし、最大2万5000円分の買い物ができる商品券を検討しているとのことだ。プレミアム分 がそのまま家計の所得に上乗せされるため、②所得目減りを緩和し、増税後の消費を下支えする効果 があると考えられる。また、上述したポイント還元は、クレジットカード等のキャッシュレス決済手 段を利用できない低所得者に恩恵が及びにくいため、プレミアム付き商品券では購入対象者を住民税 非課税世帯と0~2歳児を抱える世帯に制限し、逆進性にも配慮した対策とする模様である。 内閣府10によると、2015年にプレミアム付き商品券が発行された際は、商品券の発行総額が8,087億 円となり、うち99%にあたる7,999億円分が利用された。 アンケート調査に基づく商品券の新規消費喚起額(商 品券使用額のうち「商品券があったから新たに消費」 した額)は2,722億円であり、ここから財政出動した経 費1,538億円を差し引いた1,184億円が、プレミアム付 き商品券による経済効果となる。ただし、この中には、 将来的な消費の前倒し(消費の「先食い」)や、商品 券での新規消費によって代替された潜在的な消費(消 費の「横食い」)が含まれているため、純粋な経済効 果は1,184億円より小さいと考えられる(内閣府)。風 間(2015)では、2015年のプレミアム付き商品券の発 行等による経済効果を640億円程度と試算している。 今回実施が検討されているプレミアム付き商品券は、 図表 6 小売店がキャッシュレス決済を 導入しない理由 (資料)経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」(2018 年) 10 11.4 14.3 14.3 14.3 25 25.7 29.3 32.1 35.7 42.1 0 10 20 30 40 50 カード会社からの紹介による 来客や来訪者の増加が期待できない 決済端末を設置する適切な場所がない 入金までに時間を要する 店舗や施設の伝統や雰囲気にそぐわない 現金の方が信用できる その他 導入費用が高い カード決済を要望する声が少ない 現場スタッフによる対応が困難 導入によるメリットを感じられない 手数料が高い (割合、%)

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対象を低所得者等とすることで逆進性に配慮する方針であり、商品券を購入できる世帯は、0~2歳児 を抱える世帯を合わせても1,400万世帯程度とみられる。一世帯当たりの商品券額が上述の通り2万 5,000円であるため、発行総額は約3,500億円と、前回の半分以下にとどまる計算だ。プレミアム分が 一世帯当たり5,000円(総額約700億円)であることを踏まえ、マクロモデル乗数を用いて試算すると、 経済効果は約200億円(GDP比で0.004%程度)となり、単体の施策としての効果は小さいと考えら れる11(図表5)。 また、プレミアム付き商品券の課題として、2015年に同対策が実施された際に、低所得者ほどプレ ミアム付き商品券を購入しなかったとの研究もある(後藤(2015))。逆進性に配慮するのであれば、 低所得者の購入を促すような実施手法とする必要がある点にも留意が必要であろう。 (3)その他の対策案 その他の対策案には、自動車購入支援策と住宅支援策がある。どちらも、増税後に自動車や住宅の 取得費用等を軽減することで、消費増税による②所得目減りを緩和する効果がある点は、ポイント還 元やプレミアム付き商品券と同様である。 特に、住宅ローン減税については、増税後の住宅購入促進以外に、消費刺激策としての効果も考え られる。宇南山・原(2015)は、流動性制約に直面する「その日暮らし」の家計が15%程度存在し、 そうした家計は定額給付金に対する消費の増加が大きい点、またその大部分が(流動資産は保有しな いが)非流動資産を保有する「裕福なその日暮らし」である点を指摘している。宇南山・原(2015) を踏まえれば、住宅という非流動資産を保有し住宅ローンの返済に追われている家計は限界消費性向 が高いと考えられるため、消費刺激策の観点からも所得目減りを緩和する意義がある。 一方で、ポイント還元やプレミアム付き商品券と異なるのは、自動車購入支援策と住宅支援策が、 増税前後の①駆け込み・反動の抑制に大きな効果をもちうる点だ。例えば、自動車購入支援では、自 動車購入時に賦課される燃費課税(2019年10月から自動車取得税の代わりに導入予定)や、自動車保 有に賦課される自動車税を、消費増税後の一定期間にわたり免除する案が検討されている。これは、 消費増税後の自動車購入にインセンティブを与えることで、消費増税前後の駆け込み購入と反動減が 発生しないようにすることを目的としている。住宅支援策も同様に、消費増税後の住宅購入・改築の インセンティブを増すことで、駆け込み・反動を抑制する目的がある。 なお、マイナンバーカード利用者に対する自治体ポイントの加算については、消費促進や地域活性 化以上に、マイナンバーカードの普及促進という政策目的が大きいとみている。総務省の統計によれ ば、2018年7月時点でマイナンバーカードの交付枚数は約1,467万枚、人口対比で11.5%となっている。 給付付き税額控除の将来的な導入も含め、税制と社会保障の一体改革の推進にはマイナンバーという 制度インフラの普及が必要不可欠であり、そのための布石としての意義はあるのではないかと考えら れる。

4.対策の失効による将来の需要低迷が懸念

本稿では、消費増税が消費に影響を与えるメカニズムを踏まえ、実施決定済の対策と、実施が検討 されている対策案について、それぞれ効果や課題を整理してきた。ここで、改めて対策全体を俯瞰す ると、実施決定済の3つの対策が全て恒久化されている一方、検討中の対策案は何れも時限措置であり、

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失効に伴い将来の需要低迷が発生する点が問題となる。現時点で対策案の内容が明らかになっている ものでは、概ね実施期間が消費増税から半年~2年後に設定されており、失効時には消費や住宅購入の 落ち込みが懸念される。 2019年10月の消費増税から半年~2年後にあたる2020~2021年には、五輪後の設備投資の一時的な調 整が見込まれるほか、海外経済が減速局面に入る可能性がある。そうした循環局面と消費増税の対策 失効が重なれば、外需と内需が一斉に落ち込む事態となりかねない。ただし、失効時期を先送りしよ うと無暗に対策を延長すれば、財政規律を堅持する観点から問題となる。政府にとっては、消費増税 対策の失効に伴う反動減、内外のマクロ経済循環、財政規律の堅持という3つの要素の間で、今後難し いかじ取りを迫られそうだ。 [参考文献] 宇南山卓、原亮太(2015)「日本における「裕福なその日暮らし」と消費刺激策」財務省財務総合政 策研究所ディスカッションペーパーNo.15A-3 風間春香(2015)「プレミアム付商品券の経済効果~商品券等発行による消費押し上げ効果は640億円 ~」みずほ総合研究所『みずほインサイト』6月24日 小寺剛、酒井才介(2018)「DSGE モデルに基づく政府支出・税制に関する政策シミュレーション」財 務省財務総合政策研究所フィナンシャル・レビュー 第134 号 71~90 後藤晶(2015)「プレミアム商品券の経済行動:購入判断に対する社会経済的要因に着目して」行動 経済学 第8巻 86~89 酒井才介(2018)「第1次補正予算の経済効果~復興需要で2019年度GDPを0.2%押し上げ~」みず ほ総合研究所『みずほインサイト』10月18日 酒井才介、平良友祐(2018)「物価の基調に変化の兆しはあるか~外食などサービス価格にコスト転 嫁の動き~」みずほ総合研究所『みずほインサイト』6月1日 服部直樹、酒井才介、越山祐資、宮嶋貴之(2018)「消費増税で消費は再び低迷するか~鍵を握るの は家計の体感物価と節約志向」みずほ総合研究所『みずほインサイト』9月7日

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1 そのほか、酒井(2018)で指摘しているように、国土強靭化として防災・減災のための公共事業が 2018 年度第 2 次 補正予算(財源は税収の上振れ等)で拡充される見込みである。 2 メカニズムの詳細については、服部他(2018)を参照されたい。 3 消費税率の引上げによる増収分を、医療・介護といった社会保障や教育等の支出(防衛等の社会全体が便益を享受す る支出(政府集合消費支出)に対し、これらの支出は家計が直接便益を享受し、政府個別消費支出と言われる)に充て る政策は、経済効果という観点からは正当化され得る。例えば、小寺・酒井(2018)は、細分化された政府支出と税制 を含む DSGE モデルを構築し、ベイズ推定を用いた実証分析により、消費税率引上げによる増収分を医療・介護・教育 等の政府個別消費支出(メリット財)に充てることで短期的に経済に正の効果が得られる点を指摘している。 4 カナダで導入されたように、基礎的生活費の消費税率分を割り出し、その分を所得税額から控除・還付する方式も考 えられる。 5 ただし、これだけをもって軽減税率が給付付き税額控除より望ましいと主張しているわけではない。本稿では立ち入 らないが、給付付き税額控除は軽減税率よりも逆進性を緩和する効果が高いと考えられる。将来の消費税率の更なる引 上げを考えると、給付付き税額控除の導入は引き続き検討すべきであろう。 6 一世帯当たりの年間ポイント還元額の試算方法は次の通りである。まず、家計調査(2017 年)における総世帯ベース の一世帯当たり消費支出(約 292 万円)について、品目別に、課税消費額(約 245 万円)と非課税消費額(約 47 万円) に分類した。次に、課税消費額について、品目別に対応する業種の中小店舗売上高比率(2017 年:中小店舗は資本金 1 億円未満と仮定)を乗じ、中小店舗での課税消費額(約 123 万円)を計算した。そこにキャッシュレス決済比率(2016 年:19.8%)を乗じてポイント還元対象消費額(約 24 万円)を計算した。これは消費税込金額であるので、現行の消 費税率 8%分を除いた後、ポイント還元率(5%)を乗じ、ポイント還元額を求めた。 7 一般社団法人日本クレジット協会「日本のクレジット統計」によれば、2016 年のキャッシュレス決済比率は 19.8% である。うちクレジットカードが 18.0%、デビットカードが 0.1%、E-マネー(プリペイドカード)が 1.7%である。 経済産業省は「キャッシュレス・ビジョン」(2018 年 4 月)のなかで、キャッシュレス決済比率を 2025 年までに 40% へ高める目標を掲げている。 8 JCB「クレジットカードに関する総合調査」(2017 年度)による。 9 政府は、キャッシュレス対応の機器導入に係る初期投資に対しては補助金を支給する方針であるほか、カード会社の 手数料についても 3%台での上限を求めている。手数料の設定について政府が規制をかけることは、カード会社のビジ ネスモデルに歪みを与える可能性がある点には留意が必要であろう。 10 内閣府地方創生推進室「地域消費喚起・生活支援型交付金事業における効果検証に関する報告書」(2017 年 4 月) 11 ただし、マクロモデル乗数を用いた試算では過去の平均的な消費性向を用いるため、商品券を購入した家計は商品券 分を全額消費する一方で他の消費支出を切り詰めるという行動をとると仮定していることになる。 ●当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、取引の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基 づき作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。本資料のご利用に際しては、ご自身の判断にてなされますようお願い申し上げます。 また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。なお、当社は本情報を無償でのみ提供しております。当社からの無償の情報提供をお望みにな らない場合には、配信停止を希望する旨をお知らせ願います。 [共同執筆者] 経済調査部主任エコノミスト 服部 直樹 [email protected] 経済調査部主任エコノミスト 酒井 才介 [email protected] 経済調査部主任エコノミスト 風間 春香 [email protected]

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