京都市庁舎施設マネジメント計画推進のための
庁舎施設の長寿命化に係る構造躯体の調査・評価方針
1
目次
1 目的と定義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 2 鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造における 残存使用年数の目安の算定方法・・・・・・・・・・・3 (1)新耐震基準の施設・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 (2)旧耐震基準の施設・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 ア 過去の耐震診断結果を活用した判断・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 (ア)残存耐用年数の目安の算定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 (イ)目標使用年数の設定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 (ウ)残存使用年数の目安の算定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 イ 新たに実施する構造躯体調査結果を活用した判断・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 (ア)残存耐用年数の目安の算定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 (イ)目標使用年数の設定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 (ウ)残存使用年数の目安の算定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 3 鉄骨造における残存使用年数の目安の算定方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 (1)新耐震基準の施設・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 (2)旧耐震基準の施設・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 ア 目標使用年数及び残存耐用年数の目安の設定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 イ 残存使用年数の目安の算定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 4 その他の構造における残存使用年数の目安の算定方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 5 長寿命化の適否の判定と改修方針の分類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 参考1 鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造の改修方針判断フロー・・・・・9 (建築年次による判定)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 (過去の耐震診断結果)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 (構造躯体調査による判定)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 (残存使用年数の目安による分類)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 参考2 鉄骨造の改修方針判断フロー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 (建築年次による判定)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 (腐食・環境等の調査による判定)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 (残存使用年数の目安による分類)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・132 1 目的と定義 本方針は「京都市庁舎施設マネジメント計画」に基づき,庁舎施設を「長寿命化改修方針」又は 「改築(建替え)方針」に分類するため,施設の構造躯体の調査,評価及び分類の方法を定めるも のである。 「長寿命化改修方針」又は「改築(建替え)方針」の分類においては,施設の構造躯体の調査及び 評価によって設定又は算定する目標使用年数,耐用年数の目安,経過年数及び残存耐用年数の目安 を基に,残存使用年数の目安を算定・判定していくこととする。 以下に各指標の定義を示す。 目 標 使 用 年 数: しゅん工から改築(建替え)までの使用期間の目標とする年数の こと。構造躯体の評価により設定する。 耐用年数の目安(※1): 材料劣化に伴う構造耐力低下に繋がる可能性が高くなるまでの年 限の目安のこと なお,耐用年数の目安は中性化深さの測定が屋外側,屋内側又は 不明な場合のそれぞれの中性化深さ平均値から算定した年数のうち, 最も短い年数を施設全体の残存耐用年数の目安とする。 また,その数値が 120 年以上の場合は,現実的な年数とするため 「120 年以上」(※2)と表現する。 経 過 年 数: 施設の完成(しゅん工)から現在までの年数のこと 残 存 耐 用 年 数 の 目 安: 耐用年数の目安から経過年数を差し引いた年限の目安のこと 建物外観の目視又は躯体から採取した供試体による調査に基づき, 構造耐力低下に繋がる鉄筋又は鉄骨の腐食の可能性が高くなるまで の年限を予想して示したものであり,実際の構造耐力低下ではない。 残 存 使 用 年 数 の 目 安: 目標使用年数から経過年数を差し引いた年数と残存耐用年数の目 安のうち,短い方の年数による改築(建替え)までの年限の目安の こと 目標使用年数(80 年・60 年・40 年) 耐用年数の目安(目標使用年数より長い場合) 現 在 残存耐用年数の目安 経過年数 施 設 の 完 成 ( し ゅ ん 工 ) 耐用年数の目安(目標使用年数より短い場合) 現 在 残存耐用年数の目安 経過年数 残存使用年数の目安 残存使用年数の目安 (目標使用年数から経過年数を差し引いた年数) (耐用年数の目安から経過年数を差し引いた年数 =残存耐用年数の目安=残存使用年数の目安)
3 ※1 以下の中性化予測式により調査時点の材令(t)での中性化深さ(C)を測定するこ とで中性化速度係数(A)を算出し,その係数(A)によって所定深さ(鉄筋かぶり厚 さ)に達するまでの耐用年数(t)を推定する。 なお,試験位置(躯体の外側,内側又は不明)ごとに中性化深さ(mm)による耐用 年数の目安を算定し,最も短い年数を当該施設の耐用年数の目安とする。 中性化予測式 C=A・√t C:コンクリートの平均中性化深さ(mm) t:材令(年) A:コンクリートの材料および調合,並びに環境条件により決定する 中性化速度係数(mm/年) ※2 耐用年数の目安の上限については,「建築物の耐久計画に関する考え方」(日本 建築学会)による学校官庁の鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造(高品質) の目標耐用年数の範囲となる 80~120 年を基に,「120 年以上」とする。 建築物全体の望ましい目標耐用年数の級(出典:建築物の耐久計画に関する考え方(日本建築学会) 鉄筋コンクリート造 鉄骨鉄筋コンクリート造 鉄骨造 ブロック 造 れんが造 木造 高品質 普通の 品質 重量鉄骨 軽量鉄骨 高品質 普通の 品質 学校・官庁 Y100 以上 Y60 以上 Y100 以上 Y60 以上 Y40 以上 Y60 以上 Y60 以上 目標耐用年数の級(出典:建築物の耐久計画に関する考え方(日本建築学会) 級 代表値 範囲 下限値 Y100 100 年 80~120 年 80 年 Y60 60 年 50~80 年 50 年 Y40 40 年 30~50 年 30 年 2 鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造における残存使用年数の目安の算定方法 (1)新耐震基準の施設 新耐震基準の施設(昭和 56 年 6 月以後に建築された施設)については,「京都市庁舎施設マネ ジメント計画」に基づき目標使用年数を 80 年とし,80 年から経過年数を差し引いた年数を残存 使用年数の目安とする。 (考え方) 1981 年(昭和 56 年)6 月以降の新耐震設計基準を適用した施設については,一定 の耐震性能を持ち,使用材料の仕様等から見ても十分な物理的耐久性を備えていると 考えられる。また,現在でも想定される耐用年数の過半を残しているため長寿命化の 効果も期待できる。このため施設の各部位・設備の改修周期に基づく計画的な保全の 実施を前提に,目標使用年数を 80 年とした。 (2)旧耐震基準の施設 旧耐震基準の施設(昭和 56 年 5 月以前に建築された施設)については,残存使用年数の目安を 以下のとおり判断する。 「鉄筋コンクリート造建築物の劣化診断技術指針・同解説」日本建築学会 より
4 ア 過去の耐震診断結果を活用した判断 過去の耐震診断結果のデータがあり,かつ十分に活用できる場合は,原則として,過去の データにより算定した耐用年数の目安に基づき,目標使用年数及び経過年数を踏まえて,残 存使用年数の目安を算定する。 (ア)残存耐用年数の目安の算定 過去の耐震診断における中性化深さ試験により算定した耐用年数の目安から経過年数を 差し引いた年数を残存耐用年数の目安とする。 (イ)目標使用年数の設定 残存耐用年数の目安が 20 年以上の施設は目標使用年数を 80 年とし,残存耐用年数の目安 が 20 年未満の施設は目標使用年数を 60 年とする。ただし,残存耐用年数の目安が 20 年以 上の施設でも,圧縮強度が設計基準強度(※3)未満の場合は,目標使用年数を 60 年(※ 4)とする。 (ウ)残存使用年数の目安の算定 目標使用年数が 80 年の施設は,80 年から経過年数を差し引いた年数と残存耐用年数の目 安とを比較し,短い方の年数を残存使用年数の目安とする。また,目標使用年数が 60 年の 施設は,60 年から経過年数を差し引いた年数と残存耐用年数の目安とを比較し,短い方の年 数を残存使用年数の目安とする。 ※3 設計基準強度が不明な場合は,下表のしゅん工年度に応じて推定した設計基準強度と する。 (「既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準同解説」参考) ※4 圧縮強度が設計基準強度未満の施設は,※2による建築物全体の望ましい目標耐用年 数の級が,普通の品質の場合のY60 以上に該当すると判断し,Y60 の目標耐用年数の代 表値となる 60 年を当該施設の目標使用年数とする。 (考え方) 1981 年(昭和 56 年)5 月以前の旧耐震基準の施設は,既に 40 年近く経過してお り,相応の劣化が進捗している可能性がある。また,阪神淡路大震災を契機に耐震 診断を実施した施設も多いことから,過去の耐震診断結果を活用し,残存使用年数 の目安を算定していくこととした。 残存使用年数の目安は,耐用年数の目安,経過年数,残存耐用年数の目安及び目 標使用年数により算定するが,コンクリートの圧縮強度が設計基準強度未満の施設 は,長寿命化には適さないと考えられるため,目標使用年数を 60 年とした。 また,過去の耐震診断結果のデータが少ない施設,データが古い施設は,構造躯 体調査により試験データを取得することとした。 なお,耐用年数の目安の上限とした「120 年以上」は「建築物の耐久計画に関する 考え方」(日本建築学会)の「官庁」における「目標耐用年数」の範囲を参考とした。 竣工年度 推定設計基準強度 N/mm2 昭和 28 年以前 Fc=13.5 昭和 29~33 年 Fc=15.0 昭和 34~44 年 Fc=18.0 昭和 45 年以後 Fc=21.0
5 イ 新たに実施する構造躯体調査結果を活用した判断 ・ 過去の耐震診断結果によるデータが少ない施設(中性化深さ試験のデータ数が2以下, 圧縮強度試験のデータ数が2以下),データが古い施設(平成 30 年時点で 20 年以上経過), 又は経年指標が 0.9 未満若しくは指標データが無い施設は,平成 30 年~31 年で新たに実 施する構造躯体調査の結果を活用し,残存耐用年数の目安を算定する。そのうえで,目標 使用年数及び経過年数を踏まえて,残存使用年数の目安を算定する。 ・ 構造躯体調査の実施方法は以下のとおりとする 鉄筋腐食度判定(※5) 1箇所/1施設(※6)(※7) かぶり厚さ測定 中性化深さ試験 3箇所/1施設(※6)(※7)(※8) 圧縮強度試験 3箇所/1施設,中性化深さ試験で採取する供試体を利用(※8) 外観目視調査 ひび割れ,仕上げ材の浮き,コンクリートの剥落,鉄筋錆汁等鉄 筋の腐食兆候,アルカリシリカ反応等(いずれも目視) (ア)残存耐用年数の目安の算定 過去の中性化深さ試験と構造躯体調査による中性化深さ試験から算定した耐用年数の目 安のうち,短い方の年数から経過年数を差し引いた年数を残存耐用年数の目安とする。 (イ)目標使用年数の設定 ・ 残存耐用年数の目安が 20 年以上の施設は目標使用年数を 80 年とし,残存耐用年数の 目安が 20 年未満の施設は目標使用年数を 60 年とする。 ・ 残存耐用年数の目安が 20 年以上で,圧縮強度(過去の圧縮強度試験結果と構造躯体調 査による圧縮強度試験結果とのうち低い強度)が設計基準強度未満の施設は,目標使用 年数を 60 年とする。 ・ 残存耐用年数の目安が 20 年以上で,鉄筋腐食のグレード(※5)がⅢ若しくはⅣ又は 外観目視調査において明確な劣化事象(鉄筋の腐食,錆汁,コンクリートの剥落等)が 確認できる施設は,目標使用年数を 60 年とする。 ・ 外観目視調査において特殊な劣化事象(凍害,塩害,アルカリシリカ反応等)が疑わ れる場合は,目標使用年数を個別に検討する。 (ウ)残存使用年数の目安の算定 目標使用年数から経過年数を差し引いた年数と残存耐用年数の目安とを比較し,短い方の 年数を残存使用年数の目安とする。 ※5 鉄筋の腐食度判定は下表による。 鉄筋腐食のグレード(建設大臣官房技術調査室監修) グレード 鉄 筋 の 状 態 Ⅰ 黒皮の状態,またはさびは生じているが全体的に薄い緻密なさびであ り,コンクリート面にさびが付着していることはない。 Ⅱ 部分的に浮きさびがあるが,小面積の斑点状である。 Ⅲ 断面欠損は目視観察では認められないが,鉄筋の全周または全長にわ たって浮きさびが生じている。 Ⅳ 断面欠損を生じている。 ※6 調査における供試体の採取場所は,施設の一般的な場所(施設の用途の代表的場所) での採取を基本とし,一般的でない場所(用途が施設の用途を代表しない場所又は湿 度,通過空気量等の差異が大きい場所)からの採取は避ける。 ※7 一つの施設で複数の設計基準強度のコンクリートが用いられている場合は,設計基
6 準強度ごとに供試体を指定箇所採取する。 ※8 調査における供試体の採取場所は,複数階の施設の場合は最上階,中間階,最下階 とする等,網羅性に留意する。 (考え方) 鉄筋腐食のグレードがⅢ若しくはⅣ又は外観目視調査において明確な劣化事象(鉄 筋の腐食,錆汁,コンクリートの剥落等)が確認できる施設は,既に鉄筋の腐食が 進行しており,長寿命化に適さないと考えられるため,目標使用年数を 60 年とした。 3 鉄骨造における残存使用年数の目安の算定方法 (1)新耐震基準の施設 新耐震基準の施設については,目標使用年数を 80 年とし,80 年から経過年数を差し引いた年 数を残存使用年数の目安とする。ただし,塗装の塗替え等,適切な維持保全が実施されることを 前提とする。 (考え方) 1981 年(昭和 56 年)6 月以降の新耐震設計基準を適用した鉄骨造の施設につい ては,鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造の施設と同様に,耐震性能, 使用材料の仕様等から十分な物理的耐久性を備えていると考えられるため,目標使 用年数を 80 年とした。ただし,雨がかり等,水に濡れて腐食しやすい環境にある施 設において,塗装の塗替え等による構造体の被覆について適切に維持保全されてい ない場合は,腐食が進行し,構造耐力上の問題が生じるおそれがあることから,適 切な維持保全の前提条件を付記した。 (2)旧耐震基準の施設 ア 目標使用年数及び残存耐用年数の目安の設定 (ア)旧耐震基準の施設は腐食・環境等の調査を実施し,目標使用年数及び残存耐用年数の目安 を算定する。 鉄骨造の腐食・環境等の調査 腐食状況,環境及び鉄骨種別 年数 A:雨がかり等腐食しやすい環境にないもの(※9) 目標使用年数 80 年 B:雨がかり等腐食しやすい環境にあるもの 重量鉄骨 目標使用年数 60 年 軽量鉄骨 目標使用年数 40 年 C:主要部材(柱・はり)で既に腐食(錆び)が 進んでいるもの(※10) 残存耐用年数の目安 20 年 ※9 外装材等で囲われていて鉄骨が目視できない場合はAとする。 ※10 錆びの程度は「鉄骨造建築物の耐久性向上技術」((財)国土開発技術研究センター) における「さびの発生状況」に定めるデグリーで「DR2」以上とする。 (イ)腐食・環境等調査により,施設が以下に該当する場合は,目標使用年数を個別に検討する。 a 柱脚部のコンクリートに著しいき裂がある。 b 建築物の傾斜又は変形がある。 c 柱,はりに変形がある。 d 柱,はり,筋かい又はアンカーボルトに著しい損傷,さび等の腐食がある。
7 イ 残存使用年数の目安の算定 残存使用年数の目安は,上表の腐食・環境等調査(腐食状況,環境及び鉄骨種別)による目 標使用年数から経過年数を差し引いた年数とする。ただし,主要部材(柱・はり)で既に腐食 (錆び)が進んでいるものは目標使用年数から経過年数を差し引いた年数と残存耐用年数の目 安(20 年)とを比較し,短い方の年数を残存使用年数の目安とする。(P.14 ※12 参照) (考え方) 鉄骨造施設における耐用年数の目安については,表面塗装の劣化とその劣化に伴 う鋼材の腐食(錆び)による減厚に影響され,鉄骨のおかれた環境に大きく依存す ると考えられる。 旧耐震基準の施設は,既に 40 年近く経過年数しており,これまでの保全状況も十 分と言えないことから,雨がかり等の環境にあるものは目標使用年数を 60 年とし て,安全側の判断とした。また,重量鉄骨と軽量鉄骨では,鋼材の厚みに差があり, 軽量鉄骨はより環境の悪影響を受けやすいことから,目標使用年数を更に減じて 40 年とした。 また,主要部材に既に一定のレベルの腐食(錆び)が発生している施設について は,鋼材の減厚も進行し,長寿命化に適さないと考えられるため,残存耐用年数の 目安を 20 年とし,長寿命化改修の対象から外した。 4 その他の構造における残存使用年数の目安の算定方法 補強コンクリートブロック造,ブロック造,れんが造,木造その他の構造の施設については,原 則として目標使用年数を 60 年とし,60 年から経過年数を差し引いた年数を残存使用年数の目安と する。 (1)補強コンクリートブロック造で以下に該当する場合は,目標使用年数は個別に検討する。 ア 鉄筋の錆びが流れ出ている亀裂その他の著しい損傷又は変形がある。 イ 建物の傾斜又は明らかな不同沈下による変形がある。 (2)れんが造で以下に該当する場合は,目標使用年数は個別に検討する。 ア れんが,石その他の組積材料間の目地及びほかの材料との取り合い部における著しい亀裂又 は移動を伴う緩みがある。 イ 建物の傾斜又は明らかな不同沈下による変形がある。 (3)木造で以下に該当する場合は,目標使用年数は個別に検討する。 ア 土台の内部に及ぶ腐朽がある。 イ 柱,はり等に傾斜を生じさせる木部の不朽,緊結金物のさびその他の腐食がある。 (考え方) 補強コンクリートブロック造,ブロック造,れんが造又は木造の施設は,日本建 築学会「建築物の耐久計画に関する考え方」により,目標耐用年数 50 年~80 年(代 表値 60 年)とされている。また,小規模の施設が多く,改築(建替え)費用が財政 へ及ぼす影響も限定的なことから,目標使用年数を一律で 60 年とした。 5 長寿命化の適否の判定と改修方針の分類 各施設の改修方針は,2及び3により算定した残存使用年数の目安から,下表により長寿命化の 適否を判定し,「長寿命化改修方針」又は「改築(建替え)方針」に分類する(P.14 ※13 参照)。
8 残存使用年数の目安による改修方針の判定表 残存使用年数の目安 長寿命化の適否 改修方針 20 年以上 長寿命化に適する 長 寿 命 化 改 修 方 針 20 年未満 長寿命化に適さない 改築(建替え)方針 ・ 「長寿命化改修方針」に分類した施設は,原則として,経過年数 40 年目に性能向上を含めた 「長寿命化改修」を実施し,目標使用年数達成を目指す。また,「改築(建替え)方針」に分類 された施設は,原状回復のための改修は行うが,長寿命化改修は実施しない。 (考え方) 残存使用年数の目安が 20 年未満の施設とは,鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コ ンクリート造の施設においては,旧耐震基準かつコンクリートの圧縮強度が設計基 準強度未満,残存耐用年数の目安が 20 年未満又は鉄筋の腐食が進行しているもので ある。また,鉄骨造の施設においては,旧耐震基準かつ鉄骨が腐食しやすい環境に あるもの又は既に腐食しているものである。その他の施設では,旧耐震基準の全て のものである。 これらは,いずれも長寿命化には適さないと考えられるため,「長寿命化改修方針」 から外し,「改築(建替え)方針」とした。
9 参考1 鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造の改修方針判断フロー ・ 鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造において,「長寿命化改修方針」又は「改築 (建替え)方針」に分類するための判断フローは以下のとおりとする。 なお,対象は2階建て以上又は 200 ㎡以上の施設のみとする。 ・ 判断フローにおいては,以下の各番号の順番(①~⑫及び -1 ~ -3)を優先に分類する。
10 (建築年次による判定) ① 施設を新耐震基準(昭和 56 年 5 月以前に建築された施設)と旧耐震基準(昭和 56 年 6 月 以後に建築された施設)に分類する。 ①-1 新耐震基準の施設は施設の目標使用年数を 80 年とし,残存使用年数の目安を算定し ていく。 ①-2 旧耐震基準の施設は,過去の耐震診断結果により残存使用年数の目安を算定してい く。 (過去の耐震診断結果) ② 過去の耐震診断結果のデータにより,コンクリート躯体の中性化の進行度を確認し,残存 耐用年数の目安(中性化深さ試験により推定した耐用年数の目安から経過年数を差し引いた 年数)により分類する。 ②-1 中性化深さ測定の有効データ数が2以下の施設は,コンクリート躯体の圧縮強度を確 認する。 ②-2 残存耐用年数の目安が 20 年以上の施設は,コンクリート躯体の圧縮強度を確認す る。 ②-3 残存耐用年数の目安が 20 年未満の施設は,目標使用年数を 60 年とし,残存使用年数 の目安を算定していく。 ③ 中性化深さによる残存耐用年数の目安が 20 年以上の施設は,コンクリート躯体の圧縮強 度により分類する。 ③-1 圧縮強度の有効データ数が2以下の施設は,新たに構造躯体調査を実施する。 ③-2 圧縮強度が設計基準強度(不明な場合はしゅん工年度による推定設計基準強度)以上 の施設は,経年指標を確認する。 ③-3 圧縮強度が設計基準強度(不明な場合はしゅん工年度による推定設計基準強度)未満 の施設は,目標使用年数を 60 年とし,残存使用年数の目安を算定していく。 ④ 中性化深さ測定の有効データ数が2以下の施設は,コンクリート躯体の圧縮強度により分 類する。 ④-1 圧縮強度の有効データ数が2以下の施設は,新たに構造躯体調査を実施する。 ④-2 圧縮強度が設計基準強度(不明な場合はしゅん工年度による推定設計基準強度)以上 の施設は,新たに構造躯体調査を実施する。 ④-3 圧縮強度が設計基準強度(不明な場合はしゅん工年度による推定設計基準強度)未満 の施設は,目標使用年数を 60 年とし,残存使用年数の目安を算定していく。 ⑤ 圧縮強度が設計基準強度以上の施設は経年指標により分類する。 ⑤-1 経年指標 T 値のデータがない施設は,新たに構造躯体調査を実施する。 ⑤-2 経年指標 T 値が 0.9 以上の施設は,耐震診断の診断時期を確認する。 ⑤-3 経年指標 T 値が 0.9 未満の施設は,新たに構造躯体調査を実施する。 ⑥ 耐震診断時期から平成 30 年までの経過年数により分類する。 ⑥-1 診断時期からの経過年数が 20 年以上の施設は,新たに構造躯体調査を実施する。 ⑥-2 診断時期からの経過年数が 20 年未満の施設は,目標使用年数を 80 年とし,残存使用 年数の目安を算定していく。
11 (構造躯体調査による判定) ⑦ 新たに実施する構造躯体調査によりコンクリート躯体の中性化の進行度を確認し,残存耐 用年数の目安(中性化深さ試験により推定した耐用年数の目安から経過年数を差し引いた年 数)により分類する。 なお,耐用年数の目安については,過去の耐震診断結果と構造躯体調査を比較し,短い方 の年数を採用する。 ⑦-1 残存耐用年数の目安が 20 年未満の施設は,目標使用年数を 60 年とし,残存使用年数 の目安を算定していく。 ⑦-2 残存耐用年数の目安が 20 年以上の施設は,コンクリート躯体の圧縮強度を確認す る。 ⑧ 残存耐用年数の目安が 20 年以上の施設は,コンクリート躯体の圧縮強度により分類す る。 なお,圧縮強度については,過去の耐震診断結果と構造躯体調査を比較し,低い方のデー タを採用する。 ⑧-1 圧縮強度が設計基準強度(不明な場合はしゅん工年度による推定設計基準強度)未満 の施設は,目標使用年数を 60 年とし,残存使用年数の目安を算定していく。 ⑧-2 圧縮強度が設計基準強度(不明な場合はしゅん工年度による推定設計基準強度)以上 の施設は,コンクリート躯体の鉄筋腐食のグレード及び外観目視調査結果を確認する。 ⑨ 圧縮強度が設計基準強度(不明な場合はしゅん工年度による推定設計基準強度)以上の施 設は,コンクリート躯体の鉄筋腐食のグレード及び外観目視調査により分類する。 ⑨-1 鉄筋腐食のグレードがⅢ若しくはⅣの施設又は外観目視調査で明確な劣化事象(鉄筋 の腐食,錆汁,コンクリートの剥落等)が確認できる施設は,目標使用年数を 60 年と し,残存使用年数の目安を算定していく。 ⑨-2 鉄筋腐食のグレードがⅠ又はⅡかつ外観目視調査で明確な劣化事象(鉄筋の腐食,錆 汁,コンクリートの剥落等)が確認できない施設は,目標使用年数を 80 年とし,残存 使用年数の目安を算定していく。 (残存使用年数の目安による分類) ⑩ 新耐震基準の施設は,目標使用年数 80 年から経過年数を差し引いた年数を残存使用年数 の目安として分類する。 ⑩-1 残存使用年数の目安が 20 年未満の施設は,「改築(建替え)方針」とする。 ⑩-2 残存使用年数の目安が 20 年以上の施設は,「長寿命化改修方針」とする。 ⑪ 旧耐震基準の施設のうち目標使用年数 80 年の施設は,80 年から経過年数を差し引いた年 数と残存耐用年数の目安とを比較し,短い方の年数を残存使用年数の目安として分類する。 ⑪-1 残存使用年数の目安が 20 年未満の施設は,「改築(建替え)方針」とする。 ⑪-2 残存使用年数の目安が 20 年以上の施設は,「長寿命化改修方針」とする。 ⑫ 旧耐震基準の施設のうち目標使用年数 60 年の施設は,60 年から経過年数を差し引いた年 数と残存耐用年数の目安とを比較し,短い方の年数を残存使用年数の目安として分類する。 ⑫-1 旧耐震基準の施設は,平成 32 年(「庁舎施設改修計画」の策定年度)には全てが経過 年数 40 年以上となり,残存使用年数の目安は 20 年未満となる。したがって,全てが 「改築(建替え)方針」となる。
12 参考2 鉄骨造の改修方針判断フロー ・ 鉄骨造において,「長寿命化改修方針」又は「改築(建替え)方針」に分類するための判断フ ローは以下のとおりとする。 なお,対象は2階建て以上又は 200 ㎡以上の施設のみとする。 (建築年次による判定) ① 施設を新耐震基準(昭和 56 年 5 月以前に建築された施設)と旧耐震基準(昭和 56 年 6 月 以後に建築された施設)に分類する。 ①-1 新耐震基準の施設は,塗装の塗替え等適切な維持保全が実施されることを前提に目標 使用年数を 80 年とし,残存使用年数の目安を算定していく。 ①-2 旧耐震基準の施設は,鉄骨造の腐食・環境等調査を実施する。
13 (腐食・環境等の調査による判定) ② 旧耐震基準の施設は,主要部材(柱・はり)の環境調査により分類する。 ②-1 鉄骨の主要部材が,雨がかり等腐食しやすい環境にない施設は,主要部材(柱・は り)の腐食(発錆)調査を実施する。 ②-2 鉄骨の主要部材が,雨がかり等腐食しやすい環境にある施設は,主要部材(柱・は り)の鉄骨種別を確認する。 ③ 鉄骨の主要部材が,雨がかり等腐食しやすい環境にある施設は,主要部材(柱・はり)の 鉄骨種別により分類する。 ③-1 主要部材が重量鉄骨の施設は,目標使用年数を 60 年とし,残存使用年数の目安を算 定していく。 ③-2 主要部材が軽量鉄骨の施設は,目標使用年数を 40 年とし,残存使用年数の目安を算 定していく。 ④ 鉄骨の主要部材が,雨がかり等腐食しやすい環境にない施設は,主要部材(柱・はり)の 腐食(発錆)調査により分類する。 ④-1 (主要部材(柱・はり)で既に腐食(錆び。P.6 ※10 参照)が進んでいる施設は, 目標使用年数 80 年かつ残存耐用年数の目安を 20 年とし,残存使用年数の目安を算定し ていく。 ④-2 主要な部材で腐食が進んでいない施設は,目標使用年数を 80 年とし,残存使用年数 の目安を算定していく。 (残存使用年数の目安による分類) ⑤ 目標使用年数 80 年の施設は,80 年から経過年数を差し引いた年数を残存使用年数の目安 として分類する。 ⑤-1 残存使用年数の目安が 20 年未満の施設は,「改築(建替え)方針」とする。 ⑤-2 残存使用年数の目安が 20 年以上の施設は,「長寿命化改修方針」とする。 ⑥ 目標使用年数 80 年かつ残存耐用年数の目安 20 年の施設は,80 年から経過年数を差し引 いた年数と残存耐用年数の目安の 20 年とを比較し,短い方の年数を残存使用年数の目安と する。 ⑥-1 残存耐用年数の目安が 20 年の施設は,全てが残存使用年数の目安は 20 年未満である ため,「改築(建替え)方針」となる。 ⑦ 目標使用年数 60 年の施設は,60 年から経過年数を差し引いた年数を残存使用年数の目安 とする。 ⑦-1 旧耐震基準の施設は,平成 32 年(「庁舎施設改修計画」の策定年度)には全てが経過 年数 40 年以上となり,残存使用年数の目安は 20 年未満となる。したがって,全てが 「改築(建替え)方針」となる。 ⑧ 目標使用年数 40 年の施設は,40 年から経過年数を差し引いた年数を残存使用年数の目安 とする。 ⑧-1 旧耐震基準の施設は,平成 32 年(「庁舎施設改修計画」の策定年度)には全てが経過 年数 40 年以上となり,残存使用年数の目安は 20 年未満となる。したがって,全てが 「改築(建替え)方針」となる。
14 ※11 コンクリート躯体の劣化について 一般的な環境下においてコンク リート躯体の劣化に最も影響を及 ぼすのがコンクリートの中性化で あり,中性化深さ試験によってそ の進行度合を確認することができ る。コンクリート強度は一般的に 通常使用する期間内では構造安全 性を損なうような強度低下は考え られないが,まれに設計基準強度 を下回る調査結果が見られる。これを確認する方法として圧縮強度試験がある。上記以外の劣化現象に ついては,目視調査及び必要に応じて各種詳細調査を行うことにより確認する。 コンクリート躯体は,建設時の初期品質確保と適切な保全によっては 80 年以上の使用も期待できる が,構造躯体の調査・評価の対象である新耐震設計以前の建物(s56.5 以前)については,建設年代等 により初期品質にバラツキがあると考える必要があること,必ずしも適切に保全が行なわれてきたわけ ではないと推察されることから,80 年よりも短い寿命の建物もある可能性がある。 ※12 鉄骨造躯体の劣化について 「鉄骨造建築物の物理的な耐用性は,鋼材の腐食に支配される」 「鋼材の腐食が進行する最終段階はさびによる断面欠損である」 (「鉄骨造建築物の耐久性構造技術」(財)国土開発技術研究センター)より 鉄骨は一般的には塗装により保護されているが,塗膜は紫外線やその他の外部要因により劣化 する。そのため,外部環境にさらされているかどうか(外装材があるかどうか)の条件が,鉄骨 の錆びやすさ(=鉄骨の断面欠損)に大きく影響することになる。 また,鉄骨には軽量鉄骨と重量鉄骨があり,重量鉄骨は表面が若干さびても断面欠損はわずか であるため塗装等の補修を行えば構造強度への影響はないが,軽量鉄骨では影響がでてくる。 ※13 建築物の寿命と長寿命化改修について 建物は要求される所定の機能を満たすように建設されるが,その後,経年により建物性能が劣化する ことにより当初の要求を満たせなくなることや,要求される機能が変化するために結果として建物性能 が要求を満たせなくなることがある。(法令適合性は「既存不適格」として現状維持も認められている が,安全・安心面で現行基準の建物と比べ劣後していることに変わりない。) 「長寿命化改修」は,上記に対応するため,劣化した機能の回復や性能向上を行い「施設の長寿命 化」を図るものであるが,一旦劣化した構造躯体の劣化については改修による機能回復が困難※であ り,多くの場合,構造躯体の物理的寿命=建物の寿命となる。既に構造躯体の劣化が進んでいて今後長 期の使用が期待できない建物(残存耐用年数の少ない建物)については,構造躯体以外の部位を「長寿 命化改修」しても意味がない。そこで,「京都市庁舎施設マネジメント計画」を効率的に進めるため, 各建物を「長寿命化改修方針」と「改築(建替)方針」にあらかじめ区分するものである。 ※ 「学校施設の長寿命化改修の手引き」では中性化したコンクリートの「再アルカリ化工法」や腐食 した鉄筋の「断面修復工法」が紹介されているが,大きなコストと工期がかかるため,特別なケース での採用に限られると考える。 なお,いまだ劣化途上にあるものについては,劣化の進展を防ぐ予防保全が有効であり,今回具体 的に検討する改修計画にも反映する。