香川大学生の水環境認識と
地域の水利用
新 見
治 1.は じめに 著者らは、1981年以来主として一・般教育課程で地理学の講義を受講する大学 生を対象として,水環境に関する意識調査を継続的に実施している。そして, 全国5大学の学生の水環境認識に見られる特徴とその地域性については,既に 若干の考察を加えた(新見はか,1982,1985;安原はか,1983)。 この短報の目的ほ,前報で課題とした水環境認識の地域性の微視的な把握を 香川大学生を対象に試みることであり,この調査結果と既存資料に基づいて水 利用の地域的特性を考察することである。しかしながら,この調査で得られた サンプル数には限りがあり43市町レベルでの分析は不可能で,今回の考察は小 豆郡を除く香川県下5市6郡単位に留めざるを得なかった(第1図参照)。 1981年から1984年の4年間に調査対象となった香川大学一・般教育地理学受講 者(香川県立保育専門学院人文地理受講生を含む)は622名で,出身地別には 香川県出身者が351名(56%),他部道府県出身者が271名(44%)であった。 今回分析の対象としたのは,このうちの香川県出身者351名である。なお,全 調査対象者の地理・地学の学習経験をみれば,高校での履修経験は地理82%, 地学24%,大学人試科目としての学習経験は地理34%,地学13%である。 実施したアンケート調査の項目は,①調査対象者の性格,⑧地理・地学の学 習状況,⑨出身地の水環境についての認識,④水文環境に対する知識,(むその 他である。治
第1図 香川県の行政区分と香川用水の受水状況
図中の横線部分が香川用水を受水する市町を表す。
T:高松市 M:丸亀市 S:坂出市 Z:善通寺市 K:観音寺市
0:大川郡 Ki:木田郡 Sh:小豆郡 Ka:香川郡 A:綾歌郡
N:仲多度郡 Mi:三豊郡 2.香川県出身の香川大学生の水環境認識 前章郎こおいては,香川県出身の大学生が持つ香川県の水環境イメージが,全 国的にみて「水資源に恵まれず,渇水など水利用障害が多発し,水汚染が進み 水道水の味も劣るが,水災害発生の少ない地域」として認識されていることを 指摘した。ここでは,香川県出身の香川大学生の水環境認識から,県内におけ る地域的特性を抹ってみたい。 (1)出身地の水事情についての認識 香川県の年降水量は約1,200mmで,我が国の平均降水量1,800血mの2/3とか なり少ないといえる。これを受けて香川県出身の大学生は水資源評価指数で
017と,47都道府県中沖縄に次いで2番目に低い評価を下している。なお,水
資源評価指数とは,認識された出身地の水資源状態に「恵まれている」十1・0 から「恵まれていない」−1.0の評点を与え,得られた回答者の平均値である○ 後掲の第2表に示すとおり,香川県出身の香川大学生は,市部で0−09と,郡 部の036に比べかなり低い水資源評価をしている。特に,高松市では0“02と小さな値である。なお,著者は高松市近郊の町で住民の水資源評価に関するアン ケート調査を実施したことがあるが,その結果は地下水利用の活発な木田郡三
木町(1981年7月)で039,綾歌郡綾南町(1982年7月)で044,やや地下水
の利用が不活発な綾歌郡国分寺町(1983年7月)で−001であった。 1983・1984年の調査ではこうした評価を下した理由を尋ねたが,これほは 興味ある特徴が認められた。即ち,全国5大学の学生全体では,「自分自身の 体験」を挙げるものが60%を占め,以下「何となく」20%,「新聞・テレビな どマスコミ情報」10%,「学校教育」6%,「父母・お年寄りから」4%と続 き,20%の学生が間接的情報を挙げるに過きない。ところが,香川県出身者の 場合,「自分自身の体験」は39%とかなり少なく,「学校教育」・「マスコミ 情報」・「父母・年寄り」といった間接情報が39%にも達し,なかでも「学校 教育」は20%にも上った。 なお,香川県の平均年降水畳を尋ねたところ,1982年には正答であるn,000 −1,500m皿」は27%,「知らない」は33%,1983・1984年には正答の「1,おOmmJ 17%,「知らない」との回答は,5大学の60−70%に比べれば低く,正答率も1983・1984年の熊本大学生の場合の133%(島野,1985)とはぼ同じ値であ
った。さらに,日本の降水量について香川大学生は他大学生に比べ少なめに評 価する傾向を持ち,我が国の降水量がイ也国に比べて少ないと考えるものさえ8 %に達した。因みに,他大学では0−3%程度であった(1981年調査)。 (2)水利用障害の経験 回答者の水利用障害の経験については,次の5つの項目に閲し,第2図に整 理した。即ち,それらは,〔①渇水時の給水制限,⑧厳冬期の水道管破裂,⑨ 地下水の汚染や枯渇,④その他,(a特にない〕であり,水利用障害の経験総数 を有効回答者数で除した値を「水利用障害指数I」とした。 香川県についてのこの指数は113と沖縄に次ぐが,市部(118)で郡部(087) より大きく,特に丸亀市を除く4市,木田郡では大きな億であった。具体的な 障害内容は以下の通りである。 「渇水時の給水制限」の経験は38%と全国的には沖縄,福岡,長崎,広島と 並んで大きい値であるが,県内では高松市の60%,坂出市の46%をはじめとし新 見 治 52
固 国 固 ① 園 Sl
T ● ● ● ● ○ 1.19
M ● ●
● ○ 0.93
S き…∴≦三テこ≡き1 ● ● ⑳ ○ 1.36
Z ● ○
● ○ 1..15
K ● ● ● 二弐 ○ 1.25
0 ● ⑳ ● ● ○ 0.82
Ki ● ⑳ ⑳ ⑳ ○ 1.33
Kd
● ● ● ○ 0.56
A ● ● ● ●
N● ● ● ○ 0.67
Mi ● ● ● ● ○ 0.89
・0.10 00.25●0..50⑳1.00
第2図 水利用障害経験と水利用僚害指数 ①渇水時の給水制限 ④厳冬期の水道管の破裂 ④地下水の汚染や枯渇 ④その他 ㊥特にない SI;水利用障害指数Ⅰ 市部名T−Mi:第1図の注を参照て,市部(50%)で郡部(15%)よりかなり大きい値となる。すなわち,渇水
被害は県下全域で発生している訳ではなく,市部に偏っていると指摘できる。
「厳冬期の水道管破裂」の経験率は「温和」とされる香川県でも38%にも達するが,これは1981年冬の厳しい冷込みを反映したものであった。この水利用
障害には顕著な地域的差異は認められなかった。「地下水枯渇・汚染」は8%,
「その他」は23%であるが,これにも明瞭な地域的特徴は見られなかった。ま た,水利用障害「特になし」への回答は,水利用障害指数Ⅰとは逆に,市部で 22%と郡部の33%に比べてやや小さな値である。 (3)水災害の危険性 我が国の豪雨は西日本で多く多発し,これが洪水や山崩れによる災害を引き起こしている。香川県では1974年7月の七夕豪雨,1976年9月の台風17号と,
東部を中心に土石流災害を経験したとはいうものの,比較的災害の少ない地域
として認識されている。即ち,出身地が〔河川の氾濫,高潮,山崩れ・崖崩れ〕
といった水災害に襲われる危険性を,それぞれについて「ほとんどない」(評
点00),「いくらかある」(05),「かなり大きい」(1・0)の選択肢から回答
してもらった結果によっても,顕著な水災害経験は認められなかった。各項目
の平均評点の平均とした「水災害指数」の値は008と小さく,また具体的な水
災害経験にも,明瞭な地域的特徴は見られなかった(後掲第2表)。
(4)水域の汚染近年の工業化・都市化の波のなかで,巨大都市を中心に水環境の破壊が進ん
でいる。香川県も約540人/kぱの高い人口密度,身近に多くの水域が存在する
① 国 国 団 ⑤ ⑥ ⑦ Ol
T ● ● ● ● ●
○ 1.54
M ● ● ● ●
● ○ 1.6〈
S ● ● ● ● ●
○ l.50
Z ●
● ●● ○ 1.15
K ● ● ● ●
● 1い560 ● ● ● ● ●
● ○ 1..ム0
Ki ● ● ●
●1.67
ぬ ●
● ○ 0“56A ● ● ● ●
● ○ 1‖65N ●
● ● ○ a78怖 ● ● ● ● ●
○ 1一.16
・0・10 0a25 ●0.50 ●1.00
第3図 水域の汚染と水汚染指数 ①河川 ④湖沼 ⑨海域 ④農業用水路 ㊥地下水 ㊥その他 ⑦特にない Ol:水汚染指数 市郡名T−Mi:第1図の注を参照新 見 治 54 こともあって,水の汚染は強く認識されている。調査では,〔①河川,②湖沼, ⑨海域,④農業用水路,⑤地下水,⑥その他,⑦特にない〕の選択肢から該当 するものを全てを回答してもらった。また,認識する水域汚染の回答総数を有 効回答で除して得られる借を「水汚染指数」と呼び,これらの結果を第3図に 示した。 水汚染指数は内陸の一部を除けば全県的に大きく,市部(153)で郡部(1小32) よりやや大きい傾向を持つ。河川や海域の汚染の認識は高く県下全域に及び, 湖沼(溜池など)・農業用水路でもその割合は低いものの広く汚染が認められ ている。 (5)水道水の味 水域の汚染の進行は,それを水源とする水道水の味の劣化を引き起している。 香川県の水道水の味は大阪・京都などに次いで劣ると評価されているが,県内 における地域的特徴はどうであろうか。 出身地の水道水の味覚についての回答に,「おいしい」+10,「どちらとも いえない」00,「まずい」−1“0の評点を与え,この平均値を「味覚指数」とし た。県全体でのこの指数は018であるが,市部では012と郡部の028より低い 評価が与えられている。特に,高松市では007,坂出市でも0,08とかなり低 い評価であった(後掲の第2表参照)。 3い 水利用システムの広域化と水環境認識 前章では,香川県出身の香川大学生の水環境認識の特徴を,全国的な視野か ら,また県内における地域性に注目しながら述べた。こうした水環境認識の特 徴は香川県の置かれている水事情を反映していると考えられるので,まず県下 の生活に係わる水利用システムの広域化の現状を明らかにしたのちに,水環境 認識についてその構造的把握を試みたい。 (1)生活用水利用システムの広域化 香川県では,1973年に香川用水事業が完成し,「四国三郎」吉野川の水を流 域変更(Interbasin water transfer)により,農業,都市,そして工業にお いて利用することになった。すなわち,所謂「広域利水」の推進により,水需
給問題の広域的解決が試みられた。前掲の第1図には,香川用水事業の実施に 伴いその水道水源の全部または一・部を,水道用水供給事業である香川県水道か ら受水している5市16呵を示した。この他,長尾・志度の2町も給水対象事業 となっているが,現在のところ受水はしていない。 このように香川県では生酒用水源に占める地域外水資源の地位が大きくなっ ているが,果たして地域水資源の役割はどうなっているのであろうか。既存の 統計資料である『水道統計昭和57年度』とアンケ・−ト調査結果から,その状況 を推定してみたい。 第1衰 水道事業における水源の状況・ 香川大学生の家庭の生嗜用水源の状況 水 道 事 業 家 庭 取畑土簡水耶水巣窟受水(d) 蚤独漂)併用(b)聾訊 T 高松市 38,651 32% 6% 37% 63% 61% 31% 8% M 丸亀市 10,991 53% 25% 78% 22% 96% 4% 0% S 坂出市 9,270 25% 0% 25% 75% 71% 29% 0% Z 善通寺市 4,181 58% 15% 73%27% 77%23% 0% K 観音寺市 5,722 0% 57% 57% 43% 63% 31% 6% 0 大川郡 10,560 49% 51%100% 0% 75% 20% 5% Sh 小豆郡 4,436 66% 1% 67% 33% Ki木田郡 3,771 0% 8% 8% 92% 44% 44% 11% Ka 香川郡 3,412 7% 0% 8% 92% 22% 56% 22% A 綾歌郡 6,503 22% 41% 63% 37% 諮% 48% 17% N 仲多度郡 5,565 12% 48% 60% 40% 75% 13% 13% Mi三豊郡 10,亜4 5% 54% 59% 41% 63% 37% 0% 資料:『水道統計 昭和57年度版』・アンケート調査結果 取水盛の単位は103が/年である。
第1表には,県下の水道事業における水源構成を,またアンケート調査によ
る学生の家庭の生活用水源の状況を市部別に示した。
一・般に,ある地域の生活用水利用システムはその水源に着目するならば,第
4図のように表すことができる。この地域における生活用水の使用量(水供給
量,水需要量に相当)を100とする時,これは地下水(GW)などの自己水源
(SS)と水道水(MS)から構成される。一L方,水道水源は地域内水資源(SW
+GW)と地域外水資源(WT)から構成される。また,水道水源の構成は受水
治 56 家庭での水源構成 一且エ l▲l▲l d e f の水源構成 水道事業で 第4図 生活用水利用システムとその水源構成(模式図) WT:地域外導水 SW:地域内地表水 GW:地域内地下水 MS:上水道水源 SS:家庭自己水源(地下水) a:水道単独利用家庭(%)b;水道・自己水源併用(%)c:自己水源単独利用(%) d:水道水源に占める地域外水資源(%) e:同地域内地表水(%) f:同地域内地下水(%) WT=(a+b/2)*d/1CX) SW=(a+b/2)*e/100 GW−SS=(a十b/2)*l/100 SS=C十b/2 MS=WT+SW+(CW−SS) a+b+C=100 d+e十f=100 (d%),自己地表水源(e%),自己地下水源(f%)であり,さらに家庭での 利用水源は「水道水単独」(a%),「水道水と地下水の併用」(b%),「地 下水など自己水源単独」(C%)である。ただし「併用」では水道水50%,地下 水50%として推定した。 第5図には,こうして推定された香川県市郡別の生活用水源の構成状況を示 した。これらによれば,県下の5市6郡は次の5つのタイプに区分される。 ① 地域外からの導水がなく,水源の全てを地域内水資源に依存する地域‖‥ …大川 ㊤ 地域内地下水を主水源,地域外水資源を従とする地域……観音寺,綾歌, 仲多度,三豊 ⑧ 地域内地表水を主水源とし,地域外水資源を従とする地域……丸亀,善 通寺 ④ 地域外水資源への依存が大で,地域内地表水を従とする地域……・高松, 坂出 (多 地域外水資源への依存が大で,地域内地下水を従とする地域‥…・木田, 香川
巨三  ̄一室章 」=.」 +
第5図 市郡別の生活用水利用システムの水源構成 記号の説明:第4図の注を参照 (2)水環境認識の構造的把握 第2表にほ,市部別に水環境認識に係わる諸指数と水源状況に関する指標を 掲げた。有効回答数の少ない地域もあり,詳細に渡る考察はできないが,ここ では大学生の水環境認識が地域の水事情をどのように反映しているかを,水資 源評価,水道水の味覚を中心に検討してみたい。 第2表(b)には各指数間の相関係数を示したが,水環境認識に係わる①から⑥ の指数間の相関関係について全国レベルでの結果と比較しながらその特徴を眺 めてみたい。 全国レベルでみるとき,相関係数の絶対値が050を上回るのは,障害指数Ⅰ, 1問の0牒5を除けば,水資源評価指数と障害指数Ⅱの−085,水資源評価指数と 水道水の味覚指数の050,汚染指数と味覚指数の一054であった。 しかし,今回の香川県での結果では,①水資源評価指数は,②水利用障害指 数Ⅰと−054,⑨渇水時給水制限(はぼ水利用障害指数1に相当)と−070の 負の相関を示すはかは,香川県の独自の水事情が反映されてやや異なった状況 となっている。すなわち,①水汚染指数は⑧水利用障害指数fと075,⑨渇水事 新 見 治 第2表 市郡別の水環境認識に関する諸指数と水源状況 (a)諸指数の平均値 王 8 5 5 6 0 4 00 0 0 5 6 1 2 2 1 4 2 5 1 6 5 0 5 7 1 8 0 1 8 4 2155 445 404292338乃56関653337 7 8 5 3 7 0 8 8 3 0 9 3 7 2 7 5 0 6 6 5 1 7 4 8 1 1 4 3 0 3 2 0 0 ∩∠ ︵U 2 3 2 3 0 ウ︺ 4 5 0 0 0 ∩︶ 0 0 0 0 0 ∩︶ 0 4 4 0 5 6 0 7 6 5 8 6 5 ︵b 5 1 亡U 4 6 5 ︵b 7︰1⊥ 一l一l一1 1⊥ 1⊥ 1▲ 1⊥ 0 1山 0 1⊥ 朋〇20000〇8月1117080000 0 0 0 ∩︶ 0 0 0 0 ∩︶ ∩︶ 0 0 2 6 3 8 9 1 0 8 0 1 6 3 4 2 31−1 0 1J n︶ 1 0 0 0 0 0 ∩︶ 0 0 0 0 ∩︶ 9 3 6 5 5 2 3 6 0 7 9 1 9 3 1 り︺ 8 3 5 0 6 8 1山 0 1⊥一1 1⊥ 0 1⊥ 0 1⊥ 0 ∩︶ 2 2 2 0 1 6 3 7 8 1 8 ∩︶ 3 2一l一⊥ 2 4 6 5 4 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 松亀出寺寺川田川歌度豊 多 適者 高丸坂善観大木香綾仲三
→MS2KOKiKaANMi
(b)諸指数間の相関行列 (∋ ④ ⑦ ⑥ ⑨ ④ ④ ㊥ ㊥①④⑨④⑤⑥⑦⑥⑨⑲
1.00 −.54 1−00 一一 一 2 7 1 0 5 0 1 0 4 6 0 0 一 ︼ ︼ 一 1 35 75630300 ー...﹁ 1 4805体00 . 一一L O 8 0 7 6 0 − 1 2 2 3 1 6 7 0 3 2 0 5 1 3 0 .64 −.12 −.20 −.27 −.40 −.25 .68 −37 −.30 .04 −.25 .75 −.63 .69 100 −.21 1.00 2 4 5 1 2 9 4 6 4 0 0 3 1 4 1 2 5 4 3 0 一一一一− 一 l ①水資源評価指数 ⑧水利用障害指数Ⅰ⑨渇水時給水制限 ④水災害指数 ㊥水汚染指数 ⑥水道水味覚指数 ①水道自己水源率 ⑥家庭自己水源率 ⑨水道水源地下水率 ⑲水道浄水方法(消毒・緩速ろ過法) 資料:アンケート調査結果・F水道統計昭和57年度j 時給水制限と063の正の相関を示すが,これは水汚染の進んだ市部で水利用障 害が多発することに対応している。また,④水災害指数と⑤水汚染指数の−060 の値は,市部で汚染が進み災害が少ないこと,郡部で汚染は少ないが山崩れな どの発生があることを示すものであろう。 さらに,全国レベルでは−054の負の相関を示した,⑤水汚染指数と⑥水道「=一070 0 − 5 0 水資源評価指数 A ● Ki ● ●M ●0 ●S ●Mi
●Z OK
0 501%)100
渇水時給水制限経験 第6図 水資源評価指数と渇水時給水制限体験率との関係 市郡名T−Mi:第1図の注を参照 (a)水資源評価指数 (b)渇水時の給水制限体験率 自己水源利用家庭 50(%) 1(刀 0 50(%) 100 0 水道事業自己水源率 ・nOl●nlO ●025●0・50 ・1% 0−0%025%050% 第7図 水資源自給率と水資源評価・渇水被害発生との関係 市郡名T−Mi:第1図の注を参照 水の味覚指数⑥が負の相関でなく0ノ05と独立の関係にあるのは,水汚染の進ん だ市部を中心に香川用水の導入が進行しているためと考えられる。 ①水資源評価指数と⑨渇水時の給水制限の体験率の負の相関関係を第6図に 示したが,その相関数は−070であった。しかし,地域によっては高めの,あ るいは低めの水資源評価をしている。この点を水利用システムの自己完結性t新 見 治 ∝l その地域における水資源の自給率−と水資源評価,渇水被害の発生との関係 (簡7図)によって検討してみたい。この図の(a),(b)は,共にその横軸に⑦水 道水源に占める自己水源の割合を,縦軸に⑧家庭での自己水源の利用率をとっ たもので,図の右上ほど水源の自給率が高く(他地域への水源依存度が低く), 左下はど他地域への依存度が高いことを意味している。第2表に示すように, ⑦水道自己水源率と⑧家庭自己水源率は相関係数−063の負の相関関係にある。 なお,(a),(b)には,それぞれ,①水資源評価指数,㊥渇水時の給水制限体験率を 円の面積で表した。 最初に指摘できる特徴は,この2つの自己水源は水利用システムの安定化の ために相補的関係にあるということである。即ち,地域内水資源,あるいは地 域外水資源のどちらかのみに依存する場合(右上か左下の領域)は.,水源地域 での渇水発生により渇水被害を体験することになる。しかし,地域内外の水資 源を併用する場合(負の傾さの直線に沿う領域)には,相互に補完し合い,一・ 方で発生する渇水には対応しうる。1974年の香川用水の通水によって県下の水 不足は解消すると考えられたが,その後も渇水発生の潜在的危険性を保持し続 けていること,しかし香川用水からの受水量制限を再三受けながらも大きな渇 水被害が発生していないのは,この水源の相補関係に依るものであろう。 一・般的に,現在の水資源開発は10年に1回生起するような基準渇水に基づい て計画されているので,たとえ地域外に巨大な水資源施設を建設しても渇水被 害の危険性は軽減しないことになる。水利用システムの大規模化,広域化,さ らに地域水資源の放棄によって,渇水被害の広域化さえ起こりうる訳である。 第2章(5)では,香川県の水道水の味がこの地域の出身学生に低く評価され,
特に高松や坂出などの市部ではより低く評価される傾向のあることを指摘した。
小島(1985)はその著書『おいしい水の探求』において,水道水の味はその 水源と浄水方法に大きく規定されることを指摘している。第3表には小島によ る大まかな味覚の基準を示したが,これを参考に県下の水道水の味について検 討してみたい。 「香川の水道水はまずい」と香川県出身学生は評価しているが,水道水源か ら見る限りは地下水や汚染の少ない上流の河川水が多く,それゆえ1級水以上のものが主で,2級水以下のものは少ないと思われる。やや厳しい水の昧に対 する評価のように思われるが,2・3級のおいしくない水を飲む機会を持つこ とがなかったと考えるなら,これは無理のないことなのかもしれない。 この節において,⑥水道水の味覚指数と⑨水汚染指数とには負の相関が認め られないことを指摘したが,笥8図によればこの2つの指数にほ,香川郡を例 外とすれば,負の相関関係が認められる。また,この指数⑥は水道水源に占め る水質的に優れた地下水の割合⑨と正の相関を示している(第2表によれば, 相関係数で075)。 また,浄水方法についてみれば,消毒のみで給水される水量が県全体で9%, 緩速ろ過法12%,急速ろ過法74%,特殊処理・その他5%となっている。ちな
みに全国平均は,それぞれ20%,6%,70%,4%である。水源の水質が良く,
消毒のみや緩速ろ過法で給水できるはど,「おいしい水」となる。しかし,策 2表に見る限り,香川県下の水道事業に関しては,⑥味覚指数と⑩水道浄水方 法(消毒・緩速ろ過法)の相関係数は029と小さな正の億であった。さらに, 第9図には①水道水の味覚指数を⑨水道水源に占める地下水の割合と⑲浄水方 法(消毒のみ・緩速ろ過法)を軸とするグラフ上に表現してみた。多少の例外 はあるが,既に指摘したように,この2つの変数⑨,⑩の値の大きいはど⑥水 道水の味覚指数は高くなる傾向が認められる。 前報では,大学生の持つ出身地の水環境イメージを探るため,「水資源評価 指数」,「水道水の味覚指数」,「水災害指数」の3つを指標として,47都道 第3表 水道水の味と水源・浄水方法 水道水の昧 水 源 浄水方法 直送方法(塩素消毒のみ実施) 緩速ろ過法(自然の浄化力) 急速ろ過法(薬品投入による浄化) 特級水 湧水・良質の地下水 1級水(上)汚染のない上流の河川水・ 湖沼水,伏流水 1級水(下)同上の良質の原水 2級水 汚染された下流河川の水, 緩速ろ過法 富栄養化した湖沼水 3級水 同上の汚染した原水 急速ろ過法 資料:小島貞男(1985);rおいしい水の探求」,58−60.新 見 治 62 【b) (q) 「=0…05 「=075 ●怖 050・ ●N i .z.
S、T
●ZOM ●A●0 Kq 501%) 1∞ 水道水源地下水率 0.00 100 200 0 水汚染指数 第8図 水道水の味覚指数と水汚染指数・水道水源との関係 市部名T−Mi:第1図の注を参照 水道水味覚指数 ●10 ●25●、班 「=03ん●N
●0 − ] ・A●怖両●軋Tr_[
水道浄水方法︵消毒・緩速ろ過法︶ 0 弧㈲ 10 0 ・・● 0 !追(%1 100 水道水源地下水率 第9図 水道水の味覚指数と水道水源・浄水方法との関係 市郡名T−Mi:第1図の注を参照 府県の類型化を試みた。ここでは,前掲の第2表に掲げた①から⑲までの10の 指数を変数として,香川県下の5市6郡の水環境・水利用状況を,クラスター 分析(ウォード法)により区分した。その結果は,おおよそ次のようであった。 Ia…‥・ ①高松市,⑨坂出市 Ib…用… ⑦木田郡 Ⅱa…… ②丸亀市,⑥大川郡地……・・ ④善通寺市,⑪三豊郡 刀c・・‥刷 ㊥観音寺市,⑨綾歌郡 正d…川川 ⑲仲多度郡 Ⅲ … … (む香川郡 ここで第2表を参考にするならば,‡は地域外水資源である香川用水への依 存が大きく,量的・質的な水利用障害が大きい地域(fa:水資源評価・水道の 味覚評価が低い,Ib:同やや良い評価),Ⅱは地域内水資源を主水源とし,量 的・質的な水利用障害の少ない地域(Ⅱa:水利用障害やや大さい,Ⅱb:水汚染 少ない,Ⅱc:水汚染大きい,岨:水利用障害特に少ない),皿は地域外水資源 である香川用水に依存するが,水利用障害の少ない地域として特徴づけること ができるであろう。 4−.おわり に 香川県内における水環境認識の地域性について詳細な考察を行うには,今回 の調査対象者数は限られたものであった。しかし,香川県出身大学生の水環境 認識と水利用を取巻く諸状況との関連はある程度把握できたように思われる。 この−・連の調査によって得られた結果を講義に教材としてフィードバックす ることにより,また身近な自然環境との接触の機会の提供を通して,学習者の 水環境観・自然環境観の形成の一助となることができれば幸いと考えている。 この譜査の実施にあたり御協力いただいた本学教育学部の稲田道彦助教授,また画答 いただいた受講生の方々に対し,ここに記して深謝の意を表します。 文 献 ・ 資 料 厚生省(19鋸):『水道統計 昭和57年度』日本水道協会,1181p. 小島貞男(1985):『おいしい水の探究』日本放送協会,207pい 島野安雄(1985):水又環境に対する熊本大学生の意識について.熊本大学教養部紀 要自然科学編第20号,103−118 新見 治・鈴木裕一‥・塚田公彦・肥田 登・島野安雄(1982):水環境についての大 学生の意識−・予察的調査の結果から−・.香川大学−・般教育研究第21号,2卜45 新見 治・鈴木裕一・・島野安雄・肥田 登・塚田公彦(1985):大学生の水環境認識
4 新 見 治
の地域性と水環境教育.香川大学一・般教育研究第訝号,1−40
安原正也・新見 治・鈴木裕一‥島野安雄(1983):自然環境,特に水文環境に対す る大学生の意識について.新地理,30(4),32−39