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香川県産カンアオイ属2種の地下茎の生長様式-香川大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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香川県産カンアオイ属2睡の地下茎の生長様式

久 米

〒761−05 高松市東植田町字寺峰1210−3 香川県東部林業事務所

GrowingStyle on the SubterTanean Stem of Two Heter・OtrIOPa Species

in KagaWa Prefecture

OsamuI(uME,Kagat用Pre斤c[tLalEbSterJ!FoTYStr)・WfiaT11210−3, 乃rαm£彫,ガなαSゐよばとα−Cゐ076仁05,血pの そこで筆者は,香川県産カンアオイ属2種, ナンカイアオイ且花α花ゐα由花8i8(F.Maekawa) F.MaekawaとミヤコアオイHa叩eT・a(F. Maekawa)F。Maekawaに.ついて,生育地の 傾斜と地下茎の伸長方向の関係,及び地下茎の 生長様式を調査し,若干の解析を試みた。 本稿を草するに当り,香川大学教育学部渡辺 直教授には,粗稿の校閲を始め貴重な御意見を 賜わった。ここに厚く御礼申し上げる。 方 法 調査場所の選定に当ってほ,ナンカイアオイ とミヤコアオイの各産地が偏らない様注意し, は じ め に カンアオイ属放とeroとropαの分散速度ほ,そ の分布と地史を関連づけた研究から,1万年に 05∼85kmと言われている(前川,1972;清, 1972;日哺,1978)。しかしながら,具体的な 分散機構に関する研究は,種子の分散について 多少検討されているにすぎず(前川,1953;日 浦,1978;藤澤,1983),茎の生長に伴う分布 拡大機構についてほ,種を特定した詳細な研究 がほとんど見られない。また,茎の年伸長急に ついても,05cm(前川,1977)とも1cm(日 浦,1978)とも言われているが,種を特定した ものでほない。 表1掘り取り調査場所と調査個体数… 和 名 産 地

標高m 調査年月日償腎哀掘取数

白鳥町東山常政 白鳥町福栄鵜峠 ナソカイアオイ 高瀬町ニノ宮大水上神社 山本町財田西前山下 観音寺市粟井町藤ノ谷菩提山 50 1986.1。15 11 380 19861219 10 60 1986211 10 60 1986 211 12 120 1986 211 11 計 54 内海町瞼岨山星ケ城山 池田町中山蜂子鳴穂 高松市中山町板香寺 国分寺町国分西奥 満濃町炭所西塩田奥 琴平町川西愛宕山 780 19864.17 10 720 1986.45 12 340 19871.17 10 150 1986.3.16 8 0 0 1 1 1 1 ミヤコアオイ 190 1986 125 12 17 140 1986 39 10 12 計 54 68

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が1年間に形成されたものと見なして(前川, 1977;日滞,1978),年毎にこれを記録し,こ の1節の長さを05mm単位で計測した。 カンアオイ属の生長様式は,花を着けなけれ ば嘩条であり,当年の茎の]最上に次年度の芽が 形成される(前川,1978;日清,1978)。これ に対し事故等で頂芽部が傷つくと,鱗片薬の最 上位あるいほその下位から腋芽を出す。これら 性質の異なる節を区別するため,次の様に区分 して測定した。 N型:PとS,あるいはAについて1年間の ものが完全にそろっている節。当年の 基部から当年の菓腋の次年基部までを 当年の伸長畳とした。 C型:PとS,あるいほAが1年間完全にそ ろっているが,次年の主茎がSから側 壁している節。当年の伸長畳は,当年 基部から次年の基部が着くSまでとし た。 L塾:節の一部が失われてPあるいほSが欠 損し,次年の主茎がSから側生してい る節。当年伸長畳はC塑と同様とした。 調査個体の最も古い節について,これが完全 な時は研究対象とした。しかし腐朽等で一部欠 失している節は,地下茎の年齢の算定にほ算入 各産地の群落から10個体以上が得られる様,無 作為に個体抽出を行った。抽出した個体ほ注意 深く掘り取り,切断して前後関係の不明となっ た個体ほ除外し,別個体を追加抽出した(表1)。 生育地点の徴地形と地下茎の伸長方向の測定 ほ,クリノメ・一夕・−で10単位に測定した。微地 形は掘り取り個体を中心に.直径1mの円を想定 し,この円の最急勾配を傾斜角と傾斜面方位と した。地下茎の伸長方向は,掘り取り前に頂芽 の位償を竹串で確定し,順次土を除いて−地下茎 を露出させ,最古の茎端と頂芽の方向を測定し た。分枝しているものほ,各分枝方向の平均値 をもって伸長方向とした。 傾斜面に対し,どの方向に地下茎が伸長して いるかを現わす尺度として,傾斜方位と地下茎 の伸長方位の内角の差を求め,偏倍角とした。 さらに傾斜面を領域区分し,重力方向沿いを示 す偏倍角0∼45◇を領域Ⅰとし,斜面斜め下部 方向を示す偏倍角46∼900を領域Ⅷ,斜面上部 方向を示す偏倍角91∼1800を領域Ⅶとした(囲 1)。 掘り取った個体ほ,ビニ1・・・・・ル袋に集めて持ち 帰り,各年の葉条の復元と伸長畳の測定を行っ

た。菓条の復元は,地下茎に残された鱗片菓

(S),普通菓(P),花(A)の脱落痕の1細 900 −−>水平方向 水平方向キー 00 J. 傾斜方向 図1“地下茎の伸長方向による傾斜面の領域区分.

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この様に,緩斜面で地下茎が斜面上部方向に 伸長する例が見られたので,地下茎の伸長方向 の偏倍角と傾斜角の関係について検討した(囲 2)。囲から明らかな様に,偏倍角と傾斜角の 間にほ,密接な関係は認められない。ただ,傾 斜角200以下の緩斜面でほ,偏倍角のばらつき したが,地下茎の長さからは除外し,その次年 の節からを研究対象とした。 分枝している個体は,最古の節から調査当年 の節に接続する系統をもって主茎とし,それよ り分枝するものを分枝茎とした。地下茎の長さ ほ,主茎か分枝茎かに関係なく,その個体の最 長となる長さとした。 実生個体ほ,発芽時の子葉の葉柄痕が対生し ており,最古の節にこれが残る車により区別で きた。実生個体は,傾斜と地下茎の伸長方向に 関する解析にほ使用したが,地下茎の伸長畳と 年齢の研究からは除外した。 結 果 傾斜方向と地下茎の伸長方向の関係について. 地下茎の伸長方向がどの領域に.含まれるかを表 2に示した。各領域に占める割合は,ナンカイ アオイもミヤコアオイも額似した傾向である。 即ち,領域lが83∼85%を占め,これに領域Ⅵ を加えると92∼949乙と,圧倒的多数の地下茎が 斜面下部方向に伸長していた。領域Ⅲに属する 3例のうち,ナンカイアオイの1例とミヤコア オイの1例ほ,それぞれ偏倍角950,980と斜面 横方向に伸長していた。残りのミヤコアオイ1 例ほ,偏倍角1350と斜面の上方に向って伸長し ていたが,これほ傾斜角140の緩斜面であった。 また衰2に.おいてその他としたものは,一度斜 面上部方向に伸長しながら,途中で下部方向に 反転しているもので,両種とも2例ずつ見られ た。このうちナンカイアオイの1例でほ(偏倍 角2550),傾斜角20とほぼ平担地であった。残 り3例でほ,いずれも生育地が斜面上方からす べり落ちた形跡があり,物理的に伸長方向が撹 乱されたものと思われた。 什.〃a〃ねJeJIざ/ざ ● ● ● ● ● ● ● ● ● t ● ● ●● _ !‡● ●● ● 40 500 10 20 30 〃.∂軋Pera ●● ●● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 50 ̄ 10 20 30 40 図2傾斜角と地下茎の偏倍角の関係. 横軸は傾斜角,縦軸は偏倍角を示す. 表2,地下茎の伸長方向と傾斜面領域の関係.. Ⅰ Ⅷ Ⅶ その他 計 ナンカイアオイ

46(85%) 5(9%) 1(2%) 2(4%) 54

ミヤコアオイ

45(83%) 5(9%) 2(4%) 2(4%) 54

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が大きくなる傾向が認められる。 調査当年を含めた地下茎の年齢構成を図3に 示した。地下茎の年齢ほ,ナンカイアオイが7 ∼28年(平均ほ8年)の範囲であり,ミヤコア オイが5∼30年(平均13.6年)の範囲であった。 平均年齢の差について検定すると,両種の間に有 意な差が認められた(有意水準5%,以下同じ)。 図4は,地下茎の長さについて両種を比較し たものである。ナ∵/カイアオイでほ,335∼2270

cmの範囲(平均944cm)であり,ミヤコアオイ

でほ,240∼28。65cmの範囲(平均9.23cm)で

あった。平均値の差についてほ,両種の間に・有 意差ほ認められなかった。 地下茎の節長について,毎年の両種の節長を % 比較検討したのが表3である。地下茎に見られ 3。 るN,C,Lの三つの節型を胎合した全体の年 間節長についてほ,両種の分散の比が有意とな り,節毎の変動が大きい車が示された。そこで Cochranの方法により平均値の差の検定を行う と,両種の間に有意な差が認められた。一・方, 正常型のN型の節だけを対象に節長を検討する と,両種の間に.ほ有意な差が認められなかった。 この三つの節型,N・C・L型の割合につい て見ると,N型の割合ほミヤコアオイの方が大 きく,逆にL型の割合ほナツカイアオイの方が 大きかった(表4)。 30 cm 10 20 囲4カンアオイ属の地下茎長の構成. [コ:ナンカイアオイ,一:ミヤコアオイ. 表3地下茎の節型と節長の比較. 節全体(N+C+L) N 塾 節 和 名 月 花 冗 S_笈 花 ズ S星 ナンカイアオイ 933 0.68 252.11

690 010∼515 0・80 206・20

ミヤコアオイ 835 075 319,98

680 015∼745 0・84 271・50

表4地下茎の節型区分割合. L 型 和 名 N 型 C 型 討 ナンカイアオイ 690(740%) 103(110%) 140(15.0%) 933 ミヤコアオイ 680(814%) 82(9.8%) 73(8・8%) 835

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実生個体ほ,ナンカイアオイで56調査個体中 2個体(3。6%),ミヤコアオイで68個体中3 個体(4.4%)と少数であり,両種とも実生個 体以外のものが圧倒的に多かった。実生個体の 最大年齢ほ,ナンカイアオイで10年,ミヤコア オイで11年が確認された。 考 察 香川県産カンアオイ属2種の地下茎について, 正常型であるN型節の最大節長ほ,ナンカイア オイで515cm,ミヤコアオイで7.45cmが観察さ れた。これは,日浦(1978)がミヤコアオイで 報告した様忙,斜面上方からの土砂等の崩落に よる埋没で,節問が伸長したものと思われた。 このことから,両種の茎の生長畳は,すでに見 た様に基本的にほ通常08cm程度であるが,先 端部の埋没等の事故に対し,常に3∼11cm程の 生長をするヒメカンアオイガ.ねゐα0去(F.M∂−

ekawa)F.Maekawaと(日浦,1978)同程度

の生長が可能な潜在能力を持っている事がうか がえ.る。 地下茎の平均年齢は,ナンカイアオイの方が ミヤコアオイより長かったが,茎長及びN型の 節長には差が認められなかった。−・方N型節に 異常型とも言え.るC型とL塾を加えた節全体の 比較でほ,ナンカイアオイがミヤコアオイより も短く,両種の間では異常型節の在り方が異な っている事がうかがえた。以上の関係を総合す ると,ナンカイアオイはミヤコアオ■イに比べ, 毎年正常に伸びるN型の節長に差は無いが.N 型節の−・部が欠けた異常型のC型及びL型節の 割合が多く,節全体の平均節長ほ短いものの, 地下茎の平均年齢が長いため,結果的に地下茎 の長さに差が見られないのでほないかと思われ る。また,異常型節の割合が多いと言う事は, 頂芽部が傷つき易いか分枝し易いと言う事であ る。これがナ∵/カイアオ・イの種としての特性で あるのか,立地上の要因によるのかは明らかで ない。 地下茎の伸長方向と地形の関係について,今 回の調査結果から,緩斜面での稀な例外がある ものの,はとんどの場合,両種とも斜面下方に 向って伸長して行く事が明らかになった。この 事から,地下茎の伸長力だけでは,谷底平地や 台地状部の平担地や緩斜面以外,斜面上方への 分散は否定的と思われる。またこの様な地下茎 の分散機構から,香川県産カンアオイ属2種の 生育地が斜面下部や谷部に多い事も(久米,1986) 理解できる。 一Lカ,カソアオ・イ属の分散方法として,地下 茎の伸長や分枝以外に,種子による分散が考え られでいる(前川,1953;日浦,1978;藤澤, 1983)。しかし今回の調査結果では,実生個体 は両種とも約4%しか確認出来なかった。今回 調査対象としたカソアオイ属2種の繁殖様式に おいて,種子による繁殖が主体であるならば, この割合ほ少なすぎる様に思える。同じウマノ スズクサ科Aristolochiaceae のフタノミアオイ Aぶαr捉m Cα弘∼eぶCe花8Maxim..の様に.(高須, 1984),個体群への種子による個体補充は,相 当低い割合でしか起きていない事が推察される。 摘 要 1.香川県産カンアオイ属2種の地下茎につ いて−,伸長方向の調査と掘り取り調査を行った。

2け ナンカイアオイもミヤコアオイも,生育

地の傾斜面に.対し,はとんどの地下茎が斜面下 部方向に伸長していた。

3地下茎の平均年齢はナンカイアオイがミ

ヤコアオイよりも長かったが,地下茎長につい ては両種の間に有意な差は認められなかった。 地下茎の平均節長ほ両種とも,正常型のN型節 で08cmほどであり,有意な差ほ認められなか った。 4実生個体ほ両種とも,調査個体数に対し 4%と極少数であった。 文 献 藤澤正平.1983 ギフチョウとカソアオイ.ギ フチョウ研究会,長野. 日浦 勇.1978蝶のきた道一.蒼樹書房,東京 久米 修.1986。香川県におけるカンアオイ属 助亡eroわ℃pα2種の生育環境=香川生物(14) :1−7.

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版部,東京. 清 邦彦.1972南部フオ・ッサ・マグナ西経に おけるカンアオイ属助eroとr・qpαの分布2.. 植物と自然6(7):18−23. 高須英樹.1984フタパアオイの生活史.植物 の生活史と進化2,林床植物の個体群統計学 :133−156,培風館り 前川文夫.1953植物における変異と地史の関 連について.民主主義科学者協会生物部会 (編),生物の変異性:35−47,岩波書店. .1972.カンアオイ頼の覚書1.植物 と自然6(4):7−12. 1977..日本の植物区系.玉川大学出 版部,東京. −− .1978日本固有の植物.玉川大学出

参照

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