第74巻 第 3号 2001年12月 71-91
デザイン・インと原価企画の
国際移転再考
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年と
1
9
9
7
年の比較を中心に一
井 上 信
し は じ め に
わが国企業の海外進出は積極的に展開され,アジア,北米,欧州、│を始め,近 年は中国へと,そのグローパル化を加速進展している。わが国企業のグローパ ル化に伴い,多国籍企業はテクノロジーの海外移転だけでなく,経営管理職能 や会計管理職能の国際移転を行ってきている。これまでのわが国企業の成長, 発展を支えてきた非常に重要な経営管理手法としては,JIT
,TQC
,デザイン・ インを始めとする日本的経営手法(Ja
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management t
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が注目 を集めてきている。また会計管理の面でこれまで最も注目を集めているのは, コスト・マネジメントにおける原価企画(
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あるいはt
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management)
,原価改善(
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などである。そこにこれまでのわが 国製造企業の成功の秘訣(
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)
があるのでないかということ が,わが国企業の管理会計,とりわけ原価企画の研究に関心が持たれてきた大 きな理由である。 わが国の代表的な多国籍企業において,デザイン・インと原価企画がどのよ うに展開されてきているのか,また両者の関係はどのようになっているか。同 時にデザイン・インと原価企画の国際移転についても,その動向と問題点を明 らかにすることはグローパル管理会計の研究にとり,重要な課題の一つである。 以上のことを踏まえて1
9
9
2
年に,日本の多国籍企業の親企業サイドへの実態調 査に基づいて rオーバーラップ型研究開発と原価企画」の実態とその特徴を明-72ー 香川大学経済論叢 456 らかにしたのが前稿である。 本稿では,前稿における問題意識とそこで展開された趣旨とその内容をその まま受け継ぎ,日本経済のバブルが崩壊した 1997年という,その後 5年を経過 した時点において,どのような展開と変容が生じているのか。再度わが国多国 籍企業への郵送調査をもとに,時系列的な動向とタイプ別の特徴と課題をフォ ローアップすることが本稿の主旨である。
I
I
.
調査方法と回答企業の概要
この節では,1992年と 1997年の 2度の調査の方法と回収率などの概要,及び 回答企業の規模などについて述べる。 2-1 調査方法と調査期間 1992年の調査については,井上(1992),同 (1993)にあるとおり,調査対象 企業は387社で,回答率は 53リ1%である。また 1997年調査も,別稿にその詳細 はゆずるが,調査の方法,調査対象企業の選択は, 1992年と同様に行い,でき るだけ両調査の統一性・整合性が保てるようにした。その結果, 1997年の調査 対象企業は511社であり,有効回答企業は 237社であった。従って今回の回答 (2) 率は47.54%と,前回調査の回答率 531%と比べると, 556%減少している。 (1) 井上 (1993),井上 (1994)を参照のこと。 (2 ) 調査対象(製造)企業のリストアップの基準は,以下のとおりである。母集団の決定は, 東洋経済新報社編『鳴海外進出企業総覧(会社別編).1東洋経済新報社, 1997年,にリス トアップされている企業であり,同時に日本の証券取引所に上場されているすべての製 造企業を対象にした。その結果,母集団の数は 511社である。 「管理会計の国際移転に関する調査票」は,わが国多国籍企業 511社の本社海外企画部, 海外事業部など海外事業を担当している部門(部署)宛に郵送し,上記部門がない場合に は,本社経理部宛に調査票を郵送した。 なお東洋経済新報社編 1'98海外進出企業総覧(会社別編).1東洋経済新報社, 1997,の リストアップの基準は,次のとおりである。「出資比率 20%以上の現地法人を 2社以上も つ日本企業を対象とする。」となっており, 1992年調査の場合に比べて,現地法人数が 1 社少なくなり,多国籍企業の掲載基準が幾分緩和されている。そのことが調査対象企業が 387社から 511社へと,この 5年間に約 38%噌加していることの大きな理由である。上記 の母集団の相違が 2回の調査(1992年と 1997年の両調査)の母集団の数とその調査の 内容にも些かの影響を与えていると思考される。457 デザイン・インと原価企画の国際移転再考 -73-2-2 回答企業の概要 この節では,研究開発型(R&D型)と製造販売型に分けて,研究開発のロー カル化,資本金,売上高,従業員数の推移,それ以外の指標(輸出比率,海外 生産比率,海外子会社数,海外調達比率)などの指標により,回答企業の概要 。) と特徴を考察する。 1) ローカ/レ化と経営規模 まず最初に,
1
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2
年と1
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9
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年の回答企業の概要を,研究開発機能のローカル 化のレベルにより分類し考察する。 表2
-
1
によると,この5
年間に,わが国多国籍企業の研究開発活動のローカ ル化は進展しているようには見受けられない。むしろローカノレ化は幾分減速傾 向にあるといえる。すなわち研究開発のローカル化 (R&D型日系企業の割合 で示す)は,回答企業数の比率では,1
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2
年の4
7
.
.
6
9
%
から4
5
.
.
9
6
%
へと2%
近 く研究開発型企業が減少している。そのことは,逆に製造販売型の企業がそれ だけ増加していることを示している。ただ注(2)でも述べたように,母集団の構 成が前回と今回で幾分異なってきていることをも配慮する必要はある。 表2-1 研究開発のローカル化(国際移転)の動向 1992 1997 研究開発型 93 (47 69%) 108 (45 96%) 製造販売型 102 (52 31%) 127 (54 04%) N一
mm
* )表中の数字は,会社数(括弧内はその構成比)を示している。 回答企業の経営規模の概要は,表2-2に示すとおりである。 まず最初に,資本金規模は,1
9
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2
年の約3
8
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億円(1社平均)から1
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7
年に ( 3 ) 多国籍企業を,ここでは前稿との比較の継続性を保つために,研究開発型 (R&D型) と製造販売型に分類して分析する。研究開発型とは「海外子会社に商品企画,研究開発, 設計機能のうち,少なくともいずれか一つの機能(あるいは別会社)がすでにある日本企 業」のことをいう。それらの企業は,現地へのローカル化のレベルがより進んで、いる企業 と考えた。また製造販売型とは,逆に r上述(製品企画,研究開発,設計機能)の何れ の部門(会社)も海外に持っていない日本企業」のことをいう。従って製造販売型は海外 子会社への意志決定,経営業務のローカル化があまり進んでいない企業として分類した。-74-資本金(百万円) 売上高(百万円) 従業員数(人) 全工場数(工場数) 国内工場数(工場) 輸出比率(%) 海外生産比率(%) 海外調達比率(%) 香川大学経済論叢 表2-2 経営規模の概要 1992 平均値 標 準 偏 差 N 38,669 57,875 203 440,483 893,258 202 7,269 12,281 200 6 56 5..51 196 17 85 16 64 195 12 04 13 07 168 *) (-)は調査項目がないことを示す。 458 1997 平均値 標 準 偏 差 N 35.034 68,367 163 343.523 762.284 235 6.035 10.377 235 14 53 15.52 223 6 85 6 98 224 19 09 17 80 214 16 12 15.22 165 14 38 17..91 142 は
3
5
0
億円(1社平均)へと,この5
年間に約3
5
億円(1社平均)減少してい る。より詳細には,R&D
型企業の資本金は5
年間に幾分(1社平均で約1
0
億円弱)多くなっているが,製造販売型の企業では,この5年間に資本金規模 が小さく(1社平均で約6
7
億円)なっている。両タイプ聞の資本金規模の相違 は,R&D
型企業と製造販売型企業では,1
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年にはR&D
型が製造販売型の 約14
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倍であったが,1
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年にはそれが1
.
.
8
4
倍へと,両者の資本金規模の格 差がより拡大している。 売上高規模については,1
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2
年には1
社平均で約4
,4
0
5
億円であったが,5
年後には約3
,4
3
5
億円(
1
9
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年)へと,この5
年間に約1
,0
0
0
億円近く減少して いる。その内訳は,R&D
型と製造販売型を比較してみると,1
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年には,そ の売上高の比率(R&D
型の年間売上高/製造販売型の年間売上高)は,R&
D
型が製造販売型の約2
.
.
3
7
倍であった。1
9
9
7
年には,その比率が2
.
.
4
8
倍へと, 両者の売上高規模の格差が幾分大きくなっている。ただいずれのタイプでも, 売上高の絶対額は,R&D
型では約21%
,製造販売型では約25%
(約1/4)
減少している。 従業員数も,1
9
9
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年には7
,2
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人(1社平均)であったが5
年後には6
,0
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人へと,この5
年間に1
社平均で約1
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人減少している。その内訳は,R&
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型の従業員数は製造販売型の2
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倍(19
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年)であったが,1
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7
年にはそ459 デザイン・インと原価企画の国際移転再考 75-れが2..44倍へと,幾分格差が大きくなっている。ただ、いず、れのタイプでも,従 業員の
1
柾平均の絶対数は,大きく減少していることが窺える。 以上経営規模の指標のうち,資本金,売上高,従業員の推移(1社平均)に 限ってみてみると,1992年調査に比べ1997年調査の経営規模は,いずれのケー スでも小さくなっており,これは調査対象企業,証券取引所への上場基準やバ ブルの崩壊と日本経済の停滞など,様々な要因が複合した結果と思われるが, そのことが多国籍企業の場合にもほぽ同様に当てはまることが推測できる。 表2-3 資本金,売上高,従業員の推移 資本金 売上高 従業員数R&D型 製造販売型 R&D型 製造販売型 R&D型 製造販売型
1992 45,643 31,960 641,667 270,816 10,145 4,729 1997 46,521 25,264 507,372 204,188 8,860 3,632 ネ)各項目の単位は次のとおりである。資本金,売上高は1社平均の数値(単位:百万円), 従業員数(単位:人)を示す。 n=195(1992), n =235(1997)。
2
)
経営規模以外の指標 上記以外の日本の多国籍企業の経営指標(輸出比率,海外生産比率,海外子 会社数,海外調達比率)を,表2-4により検討してみる。 まず輸出比率は,この5
年間に,研究開発型と製造販売型のいずれのタイプ ともに増加している。R&D型では20.3%から 22..13%へと,この5年間に 2 % 近く増大している。また製造販売型では156%から 16.46%へと,この5年間 にOリ86%増加しているにすぎない。 R&D型の輸出比率の増加比率が高いこと が理解できる。 次に海外生産比率は, R&D型では15..5%(1992年)から 20..8%(1997年) へと, 5.81%も増加しており,製造販売型では8..5%から 12..40%へと,ここで も3.90%増加している。いずれの場合にもその増加傾向は著しし製造活動, ものづくりの現地化(ローカル化)は著ししとりわけR&D型の多国籍企業 における現地生産の増加傾向が顕著であることが窺える。 第3に海外子会社数は, R&D型では21社から 25社へと,この5年間に日-76 香川大学経済論叢 460 本 の 多 国 籍 企 業 1社 平 均 で 4社(約 20%)増 加 し て い る が , 製 造 販 売 型 で は 11 社から 10社 へ と 逆 にl社減少している。 最後に海外調達比率は, 1997年調査の数字しかないが, R&D型 で 17..47%, 製 造 販 売 型 で 1205%と,やはり R&D型の場合,アメリカ,シンガポール,オ ラ ン ダ な ど に 国 際 調 達 セ ン タ ー
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を 設 立 し , そ こ を 中 心 に グ ロ ー パ ル な 調 達 が よ り 広 範 に 行 わ れ て い る 企 業 が 多 い こ (4) とが理解できる。 表2-4 経営規模以外の指標の推移 cl社平均) 輸出比率 海外生産比率 海外子会社数 海外調達比率 R&D型製造販売型 R&D型製造販売型 R&D型製造販売型 R&D型製造販売型1992 20 3% 156% 15 5% 8.5% 21社 11社 1997 22 13% 16 46% 20 81% 12 40% 25社 1C社 174% 12 05% * 1)
n
= 195(1992),輸出比率:n
=214(1997),海外生産比率:n
=165(1997),海外子 会社数:n =231(1997),海外調達比率:n = 142 (1997)。なお表中の(ー)は, 1992年 度の調査では,調査項目がなかったことを示している。 * 2) なお調査票では,輸出比率=輸出額/賀社の売上高 X100,海外生産比率=海外子会 社の生産額/連結ベースの寅社の生産額x100,海外調達比率=海外よりの材料調達額/ 賀社の材料費合計額x
100と定義している。3
)
そ の 他 の 指 標 製 造 企 業 に お け る 生 産 方 式 は , 組 立 生 産 , 機 械 的 進 行 生 産 , 化 学 的 進 行 生 産 とその他の4
つ に 分 け る こ と が で き る 。 わ が 国 多 国 籍 企 業 の 業 種 別 ( 生 産 方 式 別 ) の 特 徴 を , 表 2-5により,その構成と 5年 間 の ト レ ン ド と そ の 特 徴 を 考 察 する。 1997年 の 業 種 構 成 は , 組 立 生 産 が 48..08%と半数近くを占め,機械的進 行 生 産 は 18..50%と 2割 弱 で あ る 。 化 学 的 進 行 生 産 は 8..51%で あ り , そ の 他 の (4 ) なお工場数については, 1997年の調査しかないが,工場数の R&D型と製造販売型の間 の数字は,次のとおりである。全工場数は (R&D型:18.44工場,製造販売型:1118工 場),園内工場数は (R&D型:8..28工場,製造販売型:5..59工場),海外工場数は (R& D型:10 16工場,製造販売型:5 59工場)になっている。 R&D型の企業の方が,国内, 国外のいずれの場合にも,工場数は多くなっているが,とりわげ海外工場数が2倍以上に なっていることは,製造墓地の国際移転が著しく展開していることを示している。461 デザイン・インと原価企画の国際移転再考 -77ー 生産方式が
2
5
れ11%
と1/4
を占めている。5
年前の1
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9
2
年と比較すると,組立生産は幾分減少しているが,ほぽ半数近 くを占めている。機械的進行生産は,この 5年聞に 6 %以上増加しており,そ の増加傾向が著しい。逆に化学的進行生産は,この5
年聞に14%
以上減少して おり,その減少幅は注目に値する。また上記3つに分類できない生産方式の企 業も約8%
増加しており,産業構造の変化には著しいものがみられる。 表2-5 生産方式別の構成 生産方式 1992 1997 組立生産 77社(48“73%) 113社(48.08%) 機械的進行生産 19 (12 03 ) 43 (18.50 ) 化学的進行生産 35 (22 15 ) 20 ( 8..51 ) その他 27 (17 09 ) 59 (25..11 ) ぷ仁』ヨさロ斗l 158宇土 235社(10000 ) 以上日本の多国籍企業の業種構成は,組立生産が中心であり,とりわけ電気 機械器具製造と輸送用機械器具製造業(自動車及び同部品製造企業)が中心に なっているのがその特徴である。I
I
I
.
デザイン・インの動向
親会社と部品メーカー(承認図メーカー,貸与図メーカーなど)と平行的に研 究開発(基本設計,詳細設計)を進めてゆくデザイン・イン(ラグビー型研究開 発ともいう)は,計画段階で品質とコストの同時的な作り込み活動を行う原価企 画の前提になり,その重要な基盤を提供するものである。そこで本節では,広 義の研究開発(製品企画,狭義の研究開発,基本設計と応用(詳細)設計を含 む),日本の多国籍企業と圏内協力メーカー,海外の日系メーカーおよび現地の (5) 協力メーカーとの間でデザイン・インがどの程度進展しているか比較考察する。 (5 ) なお郵送調査の調査票では,デザイン・インとは「組立メーカーが研究開発・設計段階 から協力メーカーと共同で製品の開発・設計をする,いわゆるオーバーラップ製(ラグ ビー型)の研究・開発・設計活動」と定義して,回答を依頼した。-78ー 香川大学経済論議‘ 462 3-1 デザイン・インの動向 デザ、イン・インの全体的な概要は,表3-1にみられるとおりである。デザイ ン・インの実施状況は, 1992年と 1997年のいずれの時点でも,製造企業全体の スコアは,ほとんど
2
点台(現地アジア・メーカーとの場合を除いて)に散ら ばっている。全体的には, 1992年と 1997年のいずれの場合払平均値はせいぜ いのところ「ある程度採用している(3
点)Jレベル以下にあることが窺える。 1992年と 1997年を比較すると, 1992年のケースが,国内協力メーカー,海外 の日系メーカー及び海外の現地企業とのいずれの場合も(日系メーカー(北米 と欧州、[)を除いて),デザイン・インの「実施レベノレ」が高くなっている。すな わちデザイン・インは,この5
年聞に,その実施レベルが進展しているという よりは,むしろ成熟あるいは幾分後退していることは注目に値する。 また具体的に,デザイン・インを 1997年時点でより詳細にみてみると,最も (6) デザイン・インの実施レベルが高いのは,国内協力メーカー(承認図メーカー) との聞であり,その数字は2..66点と,相対的には最も広く行われていることが 表3-1 デザイン・インの現状:全体的な概要 相手先 1992年 1997年 平均値 標準偏差 N 平均値 標準偏差 N (圏内協力メーカー) 1)承認図メーカー 2 85 1. 27 133 2 66 1 29 163 2)貸与図メーカー 2 55 1 14 132 2 46 2 46 162 (海外:日系メーカー) 3)日系メーカー:北米 2 28 1.18 100 2 29 1 20 115 4)日系メーカー:欧州、│ 2..01 1 24 71 2..11 1.11 82 5)日系メーカー:アジア 2 17 1 17 102 2.05 1 08 130 (海外・現地メーカー) 6)現地メーカー:北米 2.34 1 15 101 2 18 1 15 123 7)現地メーカー:欧州 2.08 1 14 77 2 02 1 04 86 8)現地メーカー:アジア 1 99 1. 00 104 1 93 1 00 136 * )表中の得点は全然採用していない」→l点 あ る 程 度 採 用 し て い る 」 →3点 全 面的に採用している」→5点,として回答企業の総得点を合計し,回答企業数で割って, 1社平均の得点を算出した。463 デザイン・インと原価企画の国際移転再考 -79ー 理解できる。 (1992年時点では承認図メーカーとの聞のデザイン・インのスコア は2..85点である。) (7) 次に高いスコアは,圏内協力メーカー(貸与図メーカー)との間で,その採 用比率は246点、となっている(1992年時点では,スコアは255点と,この5 年聞に幾分減少している)。しかしいずれにしろ,国内メーカー(セットメー カー)との聞のデザイン・インのレベルは,海外日系メーカーとの間,海外現 地メーカーとの聞と比べると,そのスコアが高くなっていることは, 1992年, 1997年のいずれの時点とも同様で、ある。 3番目に高いのは,海外の日系企業(北米)との間であり, 2..29点となって いる。また海外の現地メーカー(北米)との間も 2..18点と,そのスコアは欧州、1, アジアなどの海外の現地メーカーとの聞と比べると,より高くなっている。こ のように海外では,アメリカに進出した日系メーカー,現地アメリカのメーカー との間では,デザイン・インのレベノレはより進展していることが理解できる。 それに続くのが,海外の日系メーカー(欧州、1)(211点)との聞であり,現地メー カー(欧州)との聞でも 2..02点、と,アメリカに次いでそのスコアが高くなって いる。最もデザイン・インのレベノレが低いのは,日系メーカー(アジア)との 間であり,そのスコアは
2
05点である。また現地アジア・メーカーとの間では, 1..93点である。そのことは, 1997年時点では,デザイン・インのレベルが最も 進展していない地域と理解できる。 この5
年間のデザイン・インのレベノレの変化は,国内協力メーカーとの聞で は,承認、図,貸与図の何れの場合にも,減少している。海外日系メーカーでは, 北米はほぼ同じレベルにあり,欧州、旧系メーカーでは増加しているが,逆に日 系:アジアでは減少している。海外現地メーカーとの聞では,北米,欧州、1,ア (6 ) ここでいう「承認図メーカー」とは,浅沼潟里氏の定義した概念であり r部品メーカー 自身が問題の部品を開発した場合,完成車メーカーはその図面と部品を提出させ検討し, 承認を与えることを,部品発注の前提条件としている場合,このようなメーカーのこと」 をいう。浅沼寓里(1984)p..46を参照した。 (7) またここで、いう「貸与図メーカー」とは部品の生産に当たって完成車メーカーが部 品の設計を行い,部品メーカーに図面を貸与し,その図面に従って製造を行わせる場合, このような部品メーカーのこと」をいう。浅沼寓里(1984)p. 46を参照した。80 香川大学経済論叢 464 ジアのいずれの地域でも,この
5
年間にデザイン・インのレベルは幾分減少し ている。 以上のことより,デザイン・インの実施は,圏内協力メーカーとの聞で最も 進んでおり,ついで日系メーカー,そして現地メーカーという順になっている。 また地域的には,海外では圏内協力メーカーの次に,日系メーカー(北米)が より進んでいる。それ以外の地域では,日系メーカーとの間では,時期により, 欧州、!とアジアが入れ替っており,現地メーカーとの間では,デザイン・インの 実施レベルは,日系メーカー,海外メーカーのいずれとの間でも,アメリカが 最も高く,欧州が 2番目で,アジアが最も低くなっていることが理解できた。 3-2 ローカル化とデザイン・イン 次に研究開発活動のローカル化のレベル,すなわち研究開発機能がどの程度 海外子会社に移転されているかにより,デザイン・インの実施程度が異なるの でないかと推測される。すなわち研究開発機能のローカル化のレベルが高い「研 究開発型」企業の場合には,研究開発機能のローカル化がより進展しており, (ローカル化の低い「製造販売型」企業の場合よりも),デザイン・インのレベ ルがより高くなっているのでないかと推測される。それを調べてみたのが,表 3-2である。以下より詳細に,また同時に,研究開発型と製造販売型それぞれに, この5
年間のトレンドの中でどのような結果になっているかを確認したい。 まず最初に,このことを 1992年時点で検討してみる。表 3-2で明らかなよう に,いずれの場合にも,研究開発型の企業が製造販売型企業の場合よりもその スコアが高くなっている。そのことは,日本国内の協力メーカー(承認図メー カー,貸与図メーカー)との間,及び日系企業(北米)の聞で顕著である。次 に1997年時点でもそのことは同様であり,国内協力メーカー(承認図,貸与図), 日系メーカー(北米),現地メーカー(北米)などでその傾向が顕著にみられる。 1997年時点でも,スコアは減少しているが,傾向的にはほぽ同様であるといえ る。 次にローカル化とデザイン・イン(研究開発型と製造販売型の聞で)のこの465 デザイン・インと原価企闘の国際移転再考 -81-表3-2 ローカノレ化とデザイン・インの進展 デザイン・イン 1992年 1997年 研 究 開 発 型 製 造 販 売 型 研 究 開 発 型 製 造 販 売 型 (国内協力メーカー) 1)承認図メーカー 3 23 2.52 2 91 2..41 2)貸与図メーカー 2 78 2 30 2 63 2 28 (海外:日系メーカー) 3)日系:北米 2 43 2.09 2..56 1 96 4)日系:欧州 2 25 1 76 2 25 1 91 5)日系:アジア 2 26 1 98 2.20 189 (海外:現地メーカー) 6)現地:北米 2..41 2..24 2..30 2 04 7)現地:欧州 2..21 1..97 2..06 1..97 8)現地:アジア 2 09 1 85 2 03 1.83 水)表中の得点の説明は,表3-1に同じである。(1社当たりの平均値を示している。)
5
年間の動向は,どうなっているのか。まず研究開発型では,圏内協力メーカー (承認図メーカー,貸与図メーカーとも),日系メーカー(アジア),海外現地 メーカー(北米,欧州、[,アジア)のいずれでも,デザイン・インのレベルは下 がっている。また日系欧州、│メーカーでは,同じ数字である。逆に日系北米メー カーでは,デザ、イン・インのレベルは増大していることがわかる。 また製造販売型の場合には,圏内協力メーカー(承認図メーカー,貸与図メー カーとも),日系メーカー(北米,アジア),現地メーカー(北米,アジア)で は,デザイン・インのレベルが下がっており,現地メーカー(欧州)では,そ のスコアは同じである。 以上のことは,日本の協力メーカーを始め大部分のケースで,デザイン・イ ンのレベルは低下傾向にある中で,研究開発型の日系:北米メーカー,日系: 欧州、μ
ーカー,製造販売型の現地メーカーとの問では,日本経済の減速傾向に も関わらず,デザイン・インは進展しており,そのことは注目に値する。 3-3 業種とデザイン・イン 第3
に,日本の多国籍企業のデザイン・インの進展レベルは,業種によりど-82ー 香川大学経済論議 466 のような相違がみられるか。組立生産,機械的進行生産,化学的進行生産に分 類して,
1
9
9
2
年と1
9
9
7
年の実態と動向を検討する。 まず1
9
9
2
年時点のデザイン・インのレベノレは,表3-3のとおりである。組立 生産においては,承認図メーカーで最も高く (323点),貸与図メーカー(284), 海外現地メーカー(北米)(2 56),日系メーカー(北米)(253),現地メーカー (北米) (2..56) という,国内部品メーカーや日系メーカー(北米),現地メー カー(北米)との聞でデザイン・インのレベルが高いことが理解できる。 機械的進行生産では,組立生産と比較すると,相対的にはスコアはかなり低 くなっている。組立生産の中では,現地メーカー(欧州、[),国内承認図メーカー, 貸与図メーカー,現地メーカー(北米),日系メーカー(欧州)などで,比較的 高い数字になっている。ただ現地メーカーとの間,とりわけ現地(欧州)の数 字が高いのは,面接調査などで具体的にフォローアップ調査をする必要がある。 なお化学的進行生産では,デザイン・インのレベ/レはいずれのケースでも最も 低くなっており,その進展は今後の課題と思われる。 次に1
9
9
7
年時点での,業種別のデザイン・インのレベルを,表3
-
4
により検 討する。5
年前の1
9
9
2
年のスコアと比較すると,1
9
9
7
年のスコアは全体的に低 表3-3 業種とデザイン・インの動向(平均値:1992) 相手先 組立生産 機械的進行化学的進行製造業全体 (圏内協力メーカー) 1)承認図メーカー 3 25 2 50 2.15 2.86 2)貸与図メーカー 2心84 2 42 2 11 2“55 (海外:日系メーカー) 3)日系:北米 2..53 2 10 1.96 2 28 4)日系:欧州 2 29 2 40 L53 2 01 5)日系:アジア 2.26 2 10 2 05 2 14 (海外:現地メーカー) 6)現地:北米 2 56 2 42 2 04 2 34n
現地:欧州 2.26 2 67 1 69 2 08 8)現地:アジア 2 12 2.17 1 70 1 99 * )表中の得点の説明は,表3-1に同じである。467 デザイン・インと原価企画の国際移転再考 83-表3-4業種とデザイン・インの動向(平均値:1997) 1997年 相手先 組立生産 機 械 的 進 行 化 学 的 進 行 全体 (園内協力メーカー) 1)承認図メーカー 2 96 2 15 2 13 2.69 2)貸与図メーカ 272 1 92 1 96 2 48 (海外:日系メーカー) 3)日系:北米 2 51 1 78 1.82 2 29 4)日系:欧州 2 38 1 60 1 57 2 12 5)日系:アジア 2“16 1 90 1 77 2..07 (海外:現地メーカー) 6)現地:北米 2 35 1 78 1 88 2..19 7)現地:欧州 2 28 1 60 1 47 2 03 8)現地:アジア 1 99 1 80 1 72 1 95 ホ)表中の得点の説明は,表3-1に同じである。 くなっている。同時に産業間の比較をしてみると,国内協力メーカー,日系メー カー(北米,欧州,アジア)と海外現地メーカー(北米,欧州、1,アジア)のい ずれにおいても,デザイン・インは組立生産中心に導入されていることが明ら かになった。また同時に,機械的進行生産におけるデザイン・インは,この5 年聞に著しく後退していることも明白になった。同時に,化学的進行生産では, デザイン・インのレベノレは最も低かったが,この
5
年間にも幾分低くなってい る。 以上のことより,デザイン・インのレベルは,1
9
9
2
年から1
9
9
7
年の5
年間に 進展しているというよりは,むしろ後退の局面にあるといえる。ただ傾向とし ては,組立生産を中心に,また国内協力メーカーを中心に,地域的には,海外 では北米(日系,現地),欧州(日系)でのデザイン・インのレベルが高いこと が理解できた。I
V
.
原価企画の動向と海外移転
近年とりわけ製品のリードタイム(製造,流通を始めとする製品のライフサ イクル)の短縮化は,企業の緊要の課題であり,それはスピードの経済の進展84~ 香川大学経済論議 468 により,ワールドワイドに展開されている。とりわけ製品リードタイムの短縮 化は, VTR,パソコン,携帯電話,半導体などを始めとする製品において顕著 である。このような市場経済の厳しい要求に対して,どのように対応するかと いうことは,わが国企業が要求されている現代世界のスピードの経済を乗り切 るためきわめて重要な課題になっている。 ここでは,前節でのデザイン・インの動向とその進展の考察を踏まえて r日 本的」管理会計の中心をなすといわれている「計画段階での品質と原価の同時 的な作り込み活動」である原価企画の動向とその海外移転について,日本の親 会柾,承認図メーカー,貸与図メーカーと海外子会社のケースに分類して,そ の特質を検討する。 4-1 日本の親会社 ここでは最初に,日本の多国籍企業(親会社)における原価企画の実態を検 討する。まず表4-1により,この5年間の原価企画の実施状況の変化をみてみ る。「積極的に実施している」のは, 1992年には47..40%を占めていたが, 1997 年時点では44.39%と,約3 %減少している。逆に「ある程度実施している」企 業は,この5年間に37.50% (1992)から 3901% (1997)へと,幾分増加して いる。「計画中」の企業も,この
5
年間に幾分増加しているが,同時に「実施の 予定なし」の企業も少し増えている。 項 目 表4-1 日本の親会社の原価企画 1992年 1)積極的に実施している のある程度実施している 3)計画中である 4)実施の予定はない *) n=
192 (1992).n=
223 (1997)。
91 (4740%) 72(37 50 ) 6 ( 3..13 ) 2301 98 ) 1997年 99 (4439%) 87 (39 01 ) 9 (4.04 ) 28 (1256 ) 以上のことはJ
原価企画を導入している企業J(表中の1)及び2)のトータル) は, 1992年には84..90%を占めており, 1997年では83..40%と,この5年聞に469 デザイン・インと原価企商の国際移転再考 85-ほとんど変化がみられない(数字の上では幾分減少傾向にある)。その意味では, 原価企画による計画段階のコスト・マネジメントは,日本の親企業レベルでは 現時点では導入を計画した企業はすでにほとんど導入しており,広く普及し, 充分に成熟した計画段階のコスト・マネジメントのコンセプトであり,また重 要な手法になっていることがうかがえる。 次に1997年時点でのわが国多国籍企業(親会社)の原価企画の導入状況を, R&D型と製造販売型にタイプ分けして,より詳細に内容を検討してみる。日 本の親会社では,原価企画を「積極的に実施している」のは, R&D型で53.92% を占め,製造販売型では36“36%と, R&D型の原価企画導入の積極性が窺え る。また「ある程度実施している」のは, R&D型で36..27%,製造販売型で 4L32%である。両者を合わせると, R&D型では90“19%とほとんどの企業が 原価企画を活用しており,製造販売型では77.68%と,約13%低くなっている。 日本の親企業レベルでは, R&D型で90%を超えており,また製造販売型でも 78%近くになっており,原価企画導入の実態,積極性が窺える内容である。 表4-2 日本の親会社の原価企画:1997 項 目 R&D型 製造販売型 全 体 1)積極的に実施している 55 (53 92%) 44 (3636%) 99 (44 39%) 2)ある程度実施している 37 (36 27 ) 50 (41 32 ) 87 (3901 ) 3)計画中である 3 (2..91 ) 6 (4.96 ) 9 ( 4 04 ) 4)実施の予定はない 7 (6..86 ) 21 (17 56 ) 28(12 56 ) ホ) n =223。 4-2 日本の部品メーカー(承認図メーカー) 次に日本の親会社(セット・メーカー)との協力関係が最も強い部品メーカー である「承認図メーカー」での原価企画を,表4-3,表4-4により検討する。 承認図メーカーの原価企画は,日本の親会社レベルの場合と比較すると,1992 年時点、では積極的に導入している企業は29.33%(親会社の数字は4740%)で あり, 1997年には25..73%(同4473%)と,親会社と比べて,それぞれ18..03% 0992年), 19..73% 0997年)低くなっており,親会社の導入レベルと承認図
-86- 香川大学経済論叢 470 メーカーの原価企画の実施レベルには大きな差異がみられる。 承認図メーカーにおける原価企画は r積極的に実施している」のは, 1992年 時点で2933%,1997年には25..73%と,この5年間に 4%近く減少している。 それに対して rある程度実施している」企業は, 1992年には42..67%を占めて いたが, 1997年には4561%へと,更に3%近く増加している。ただ「積極的」十 「ある程度」では,原価企画の導入は, 1992年には72“00%であり, 1997年に は7L34%と,その数字はほぽ横這い状態にあるといえる。 表4-3 日本の部品メーカー(承認図)の原価企商 項 目 1)積極的に実施している 2)ある程度実施している 3)計闘中である 4) 実施の予定はない *) n
=
150 (1992), n=
171(1998)。
1992年 44 (29 33%) 64 (42 67 ) 2 ( 1 33 ) 40 (26 67 ) 1997年 44 (2573%) 78 (4561 ) 5 ( 2 92 ) 44(25 73 ) 次に 1997年の,承認図メーカーにおける原価企画の実践レベ/レを,表4-4に より, R&D型と製造販売型に分けて検討してみる。 R&D型と製造販売型の 聞における原価企画の実践レベルは r積極的に実施している」のは, R&D型 で32..10%,製造販売型で20..00%と, R&D型の場合が12.10%高く, R&D タイプの企業がより積極的に原価企画を実践していることが理解できる。また 「ある程度実施している」企業も, R&D型で53..09%を占め,製造販売型で 38“89%となっている。この場合も, R&D型のケースが14%以上多くの企業が 表4-4 日本の部品メーカー(承認図)の原価企画 (1997) 項 目 1)積極的に実施している 2)ある程度実施している 3)計画中である 4)実施の予定はない *) n=
1710 R&D型 26 (32 10%) 43 (53.09 ) 4 ( 4 94 ) 8 ( 9 88 ) 製造販売型 18 (20..00%) 35 (3889 ) 1 ( 1 11 ) 36 (40 00 ) 全体 44 (2573%) 78 (4561 ) 5 ( 2 92 ) 44 (2573 )471 デザイン・インと原価企画の国際移転再考 87 原価企画を実践していることが理解できる。以上
2
つを合わせると,園内の承 認図メーカーでは,R&D
型は8
5
.
.
1
9
%
,製造販売型は7L14%
となり,それぞ れ85%(R&D
型),71%
(製造販売型)以上の企業は何らかの形態で原価企画 を実践していることが理解できる。R&D
型と製造販売型の原価企画の導入レ ベルの差異は14%
を超えている。また製造販売型における r実施計画がない」 企業も40%
を占めており,注目に値する。4
-
3
日本の部品メーカー(貸与図メーカー) 貸与図メーカーの場合,1
9
9
2
年と1
9
9
7
年の原価企画の実施状況は,表4
-
5
の とおりである。全体的な動向は1
9
9
2
年と1
9
9
7
年共に,承認図メーカーの場合 とほぼ同様の傾向にあるといえる。すなわち1
9
9
2
年には r積極的に実施」し ているのは2
9
.
.
6
6
%
であり,1
9
9
7
年には2
4
リ10%
と,この5
年聞に5%
以上減少 傾向にある。逆に「ある程度実施している」は,4
3
.
.
4
5
%
(
1
9
9
2
年)から5361%
(19
9
7
年)へと,10%
以上増加している。また両者を合わせると,1
9
9
2
年には, 実施しているのは7311%
を占め,1
9
9
7
年には7
7
.
.
7
1
%
と,原価企画の実施は 「積極的実施」十「ある程度実施」を合せると,幾分増加傾向にある。これは一 部は「積極的に実施」からの移動もみられるが,同時に実施していなかった企 業が「ある程度実施する」ようになった結果でもあるといえる。 表4
-
5
日本の部品メーカー(貸与図)の原価企画 項 目 1)積極的に実施している のある程度実施している 3)計画中である 4)実施の予定はない *) n=
1
4
5
(
1
9
9
2
),
n=
1
6
6
(
1
9
9
7
)。
1
9
9
2
年4
3
(
2
9
.
6
6
%
)
6
3
(
4
3
4
5
)
2(1.3
8
)
3
7
(
2
5
5
2
)
1
9
9
7
年4
0
(
2
4
1
0
%
)
8
9
(
5
3
6
1
)
4 ( 2..41 )3
3
(
1
9
8
8
)
それでは次に,貸与図メーカーの原価企画の実施状況(19
9
7
年)を,R&D
型と製造販売型に分けて表4
-
6
により,詳細を検討する。まず「積極的に実施 している」のは,ここでもR&D
型では2593%
と多く,製造販売型の22.35%
88 香川大学経済論議 表4-6 日本の部品メーカー(貸与図)の原価企画 (1997) 項 目 1)積極的に実施している 2)ある程度実施している 3) 計画中である 4)実施の予定はない *) n =166
。
R&D型 21 (25..93%) 50 (61 73 ) 3 ( 3 70 ) 7 (8..64 ) 製造販売型 19 (2235%) 39 (45.88 ) 1 ( 1 18 ) 26 (3059 ) 全 体 40 (2410%) 89 (5361 ) 4 ( 2 41 ) 33(19 88 ) 472 を3,58%上回っている。また「ある程度実施している」企業も, R&D型 で 61.73%を占め,製造販売型では45,,88%と,貸与図メーカーの多くがこのレベ ノレにあることが窺える。両者を合わせると,原価企画を実施している企業は, R&D型で87.,66%を占め, 90%近くの企業がある程度以上は原価企画を実施 していることが理解できた。また製造販売型企業でも,その(,積極的+ある程 度J)の合計は68引23%と 7割近い企業が原価企画を実施していることも理解 できる。 4-4 海外子会社の原価企画 最後に日本企業で行われている原価企画が,日系企業すなわち海外子会社に どの程度国際移転され実践されているか,その概要を検討する。まず1992年と 1997年における実態とこの5年間の動向を,表4-7により検討する。 日系企業,すなわち日本企業の海外子会社における原価企画の実践は, 1992 年時点では,積極的に実施している」のは10.,67%であり,ある程度実施して 項 目 表4-7 海外子会社の原価企画 1992年 1)積極的に実施している 2)ある程度実施している 3)計画中である 4)実施の予定はない *) n =178(1992), n =214(1997)。 19(10 67%) 99 (5562 ) 24 (1348 ) 36 (20.33 ) 1997年 39 (18 22%) 107 (50,00 ) 18 ( 8..41 ) 50 (23..36 )473 デザイン・インと原価企画の国際移転再考古 89 いる」企業が55ゅ62%となっている。両者を合わせると,原価企画を実施してい る企業は,全体の66..29%を占めていることがわかる。また計画中の企業も 13..48%あり,-実施予定なし」という企業は20..33%である。 それに対して1997年には,-積極的に実施している」のは18..22%を占め,-あ る程度実施」の企業は50.00%になっている。「積極的+ある程度」の両者を合 わせると,原価企画を実施している企業は,全体の68..22%と, 7割近い企業が 原価企画を実施している。全体としては幾分増加傾向にあることがうかがえる。 また同時に「計画中」の企業も減少し,-実施予定なし」という企業も 23“36% に達し,原価企画を実践している企業とそうでない企業に二極分解する傾向が みられる。 1992年と 1997年を比較すると,この5年聞に原価企画を積極的に実施して いる企業が7.55%も増加しており,海外子会社でも原価管理(コスト・プラニ ング)のツールとして,-伺らかの形で」積極的に原価企画を行う方向にあるこ とが理解できる。同時に原価企画の導入を計画していた企業でも,導入を検討 した結果,その実施の必要性や困難性など様々な理由から,原価企画を実施し ないと決断した企業も 3%程度増加して 23ド36%に達していることが理解でき る。 次に1997年時点、における海外子会社の原価企画の実態をR & D型と製造販 売型に分けて,表4-8により,その詳細を検討する。海外子会社においても, R&D型は,原価企画を「積極的に実施」している企業が2L43%を占め,製造 販売型の15..52%に比べて,原価企画導入の積極性が窺える。また「ある程度実 施」している企業も, R&D型で62..24%を占め,製造販売型の39..00%と比較 して,その数字の大きさが理解できる。「積極的」と「ある程度」を合わせると, R&D型で83.62%を占め,製造販売型では54.52%と,その差異は29..10%に 達している。ここでもR&D型企業での原価企画実施の積極性が窺える。この ことは,日本の親会社,国内協力メーカー(承認図メーカー,貸与図メーカー) では,大部分の企業が原価企画を実施していたことはすでに述べたが,海外子 会社でも, R&Dタイプの海外子会社への原価企画の国際移転はすでにかなり
-90- 香川大学経済論叢 474 進展していることが理解できる。ただしその内訳は,それでも「ある程度実施 している」レベルの日系企業が多いことも注目する必要がある。このことは, 海外子会社においても,原価企画はすでに「ある程度」までその必要性が認識 され,そのため国際移転され,デザイン・インの進展と共に,コスト・プラニ ングのための主要なツーノレとして導入されていることが理解できた。 同時に「実施の予定はない」という企業も,製造販売型で33..62%と,現時点 では原価企画の導入は,量的な面ではほぽ飽和状態になってきており,今後は 質的な発展が図られることと思われる。ただ現時点では製造販売型の企業では, 海外子会社でもグローパノレな部品調達などの業務は重要になってきているが, 製造工程でのコスト・コントロールを中心にした原価管理がコスト・マネジメ ントの中心であり,計画段階の原価企画については,現時点では日本の親会社 が中心にグローパルに対応していることも窺い知ることができた。 表4-8 海外子会社の原価企画(1997) 項 目 R&D型 製造販売型 全 体 1)積極的に実施している 21 (21 43%) 18(15 52%) 39(18 22%) 2)ある程度実施している 61 (6224 ) 46 (39 00 ) 107 (5000 ) 3)計画中である 5 (510 ) 13 (11 21 ) 18 (8.41 ) 4)実施の予定はない 11 (11 22 ) 39 (33 62 ) 50 (23 36 ) *) n=214
。
v
.
結びにかえて
本稿においては,1
9
9
2
年と1
9
9
7
年に実施した「わが国多国籍企業の管理会計 の国際移転」に関する郵送調査をもとに,デザイン・インと原価企画の実態と その国際移転について検討してきた。その結果,この5
年間にデザイン・イン の実施レベルの変化を,全体的なトレンド,ローカル化と業種との関係でその 特徴を明らかにした。また原価企画については,日本の親企業,日本の部品メー カー(承認図メーカー,貸与図メーカー)及び海外子会社における特徴を明ら かにした。475 デザイン・インと原価企画の国際移転再考 -91ー しかし何れの場合にも,統計的な調査にもとづいているため,その概要は明 らかにすることができたが,内在的な考察にもとづく幾つかの理念型(タイプ) を析出するには至っていない。小生自身の米国,欧州,アジアなどへのケース・ スタディによると,業種,規模,出資形態,操業開始年,地域性などにより, 幾つかの特徴あるケースが見つかるように思われる。 日本の多国籍企業及び海外子会社への面接調査によるケース・スタディによ り,多国籍企業のタイプ,例えば業種別,戦略形態別,ローカル化別などに企 業をタイプ分けし,デザイン・イン及び原価企画の国際移転の特徴を析出し, 幾つかの理念型 (IdealTypes)を作りだし,モデル化する作業は今後に残され た課題である。 (本稿は,平成 12年度 平成 15年度科学研究費補助金(基盤研究