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対外取引に対する準備保有と購買力平価からの乖離-香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

研究ノート

対 外 取 引 に 対 す る 準 備 保 有 と

購買力平価からのま花離

宮 田 亘 朗

本稿の目的は, ニーハンスの購買力平価からの耳障離に言及したモデルを修正し外貨 保有動機を加味した展開を行うことである。ただし,ここで行う修正は,単に外国資 産の保有函数のみに限定されている。ゆえに,それは充分なものでなく,その意味で 一つの試みであるに過ぎない。なお,以下の各節のうち,修正を行った第II節以外は, ニーハンス・モデ、ルをそのまま使用している。第

I

V

節は結びである。 モデルは次のように設定される。分析対象となる当該閣を小国となし,これに対し 外国を大国としたこ国モテザルを展開する。両国は, ともに完全雇用を維持し趣好と技 術を一定とし ,gの率で成長する資源、と同じ率で成長するフローおよびストックの経 済変量からなるパランスした経済をもつものとする。そして市場は,貿易財と非貿易 財の商品市場と外国永久利付き債に関する外国資産市場さらに自国の貨幣および債券 に関する自国資産市場とから構成される。当該国は,商品の輸出入を行うほか外国の 利付き永久債の保有をも行う。しかしながら,外国は当該国の債券を一切保有しない ものとされる。貨幣の保有に関しては,各国ともにその国内にのみ限定される。 なお,ストックおよびフローの各変動は,一人当たりの量で表示され,時聞によっ て変化しない形で表されている。 ( 1) Niehans,

l

.

Purchasing-Power Parity under Flexible Rates, Issues in lnter

-問

tionalEconomics, ed by P, Oppenheimer, 1978 一一一 Static Deviations from Purchasing-Power Parity, Journal of Monetary Eωnomiω,VoI.7, No..1, Jan1981

(2)

-144- 第58巻 第4号 792 先ず,商品市場について貿易財Zと非貿易財yのご財を想定する。運送費は存在し ない。完全競争の市場を考えるから,生産関係は生産可能曲線

R(x

y

)

=

0

と生産における均衡 ) l (

π

一 一 わ 一 あ 一 一

D U

E

(2) によって表される。ただし ,.Xとタは両財の供給量を,また

z

は相対価格恥/ρyを表 す。さらに,貿易関係は,均衡において

ρ

x

e

p

"x (3) の成立を必要とする。ただし ,

e

は外国為替相場を表し,*印は外国の変数に付される ものとする。 商品市場における需要は,貿易財

z

に関して,

x x

(

π

j?)=hr)

, h ぐ

0

x

ω

(4) を仮定する。すなわち

x

財の需要は,相対価格

π

だけでなく,当該国の対外純受取 実質額

C

/

恥に依存して変化するものとする。なぜ、なら,国際貿易を行うに際し当該国 の取引者は,自国の対外純受取額の増減によって,その輸出入の量を変化させる筈で あるからである。ここに言う対外純受取額

C

は(名目値),次のようにして導出される。 いま,自国は外国の l ド、ルの利付き永久債を

A*

だけ保有するが,外国は自国の債券を 一切保有しないものとする。このような仮定の下で,自国貨幣表示の利子受取額は

e

A

*

となり,その資産価値は

(

e

/i

*

)

A

*

となる。経済は,前述の仮定からしてgの率で 成長しているから,この対外資産保有も gの率で成長していなければならない。そこ で,当該閣の各年の資本輸出額は

g

(

e

/

i

*

)

A

市となる。そして,この場合の各年当たり の自国の利子受取額は,

e

A

*

であり上記と同じ額になる。かくして,当該国がバラン スした均衡成長を保つ場合の各年対外純受取額は, C

=

e

A

*

-

g

(

e

/

i

*

)

A

*

で表されて くる。 非貿易財の需要yは,所得から貿易財への支出を差しヲ/¥,、たもので定義される。そ

(3)

7

9

3

対外取引に対する準備保有と購買力平価からの議離 -145-して, その需給は,自国内において均等とならねばならない。すなわち,.Yタであ る。かくして,貿易財の市場においては,収支制約関係からして, x-.x = (l-g/i*)(A*/

ρ

i

)

(

5

)

が成立つこととなる。すなわち,当該国の輸入超過は,対外資本収支の黒字によって 金融されねばならない。 以上の商品市場を表すそテ、ルにおいて, われわれは, 長期均衡為替相場と購買力平 価との関係を見出すmことができる。物価水準

P

を定義し,

P=

仇 十spy

= ゎ(川~)

(

6

)

とする。 (3)式の関係を考慮すると, この

(

6

)

式から dP deー β P

一二

γ

一子安否

ρ

"xdl[ (7) の関係を得る。小国仮定より外国の価格P*および抗は所与である。そこで

(

7

)

式は, 付)当該国の相対価格

π

が変化しないとき長期為替相場は購買力平価に一致すること, すなわち購買力平価説の妥当することを表し, (吋相対価格が変化するとき,例えば

d

l[

<

0

のときdP/P

>

de/eすなわち貿易財価格の相対的下落によって当該国通貨の過 大評価を導き,d:

π>0

のときdP/Pく de/eすなわち当該国通貨の過小評価を導くこ と,換言すれば購買力平価からの議離が自国の相対価格変化によって引き起こされる ことを示している。 さら Uこ, この荷品市場モデルは,g, i*,民 の 所 与 の 下 でA*が与えられるならば,

π

が決定されるとし、う関係にあることを示している。いま i*

>

gとし .Xn

>

0

およ びXC/Px

<

1

とすれば,(4)式

(

5

)

式から

4ι=

旦 二 室 主

LU

二色血よくO dA* ρ"x (Xn-.Xπ) (8) を得る。ただし, .Xn

>

0は生産函数から, またXC'Px

<

1は通常の所得効果からそれ ぞれ導出されている。この(8)式は,外国資産の保有増(dA*

>

0)が当該国の相対価格 下落 (dl[

<

0)を引き起こすことを示すものである。ニーハンスは,このことを第1図 を用いて次のように言う。二財

x

,.Yの平面上に生産可能曲線と消費無差別曲線を描く (実線〉。さらに,点線の生産可能曲線によって,当該国の生産量にあるA*のときの

(4)

-146- 第58巻 第4号 794 V

E

Z 第1図

z

に関する輸入量υを加え想定上の可能曲線を描く。この想定上の可能曲線は,A*の増 大と共に右方へシフトする。さて,これら各々の可能曲線と消費無差別曲線との接点 を求める(上の(5)式を参照)。それは,

EE

曲線を導く。この

EE

曲線上における接線 の勾配は,上記

π

を与える。そしてこの勾配は,

EE

曲線上を右上方へ移動するにつ れて,より大きな負の値をとる。このことは,上記(8)式が示すことに外ならない。か くして,商品市場モデルは,外部から A*を与えると相対価格が決まるという関係にあ ること tこなる。 II 次に,外国資産市場を考える。前述のように当該国は,外国資産A*を保有すると仮 定される。それは,当該国の民間部門が保有する外国証券

B

*

と中央銀行が保有する外 国証券

S

*

にわけて考える。すなわち,

A

*

=

=

B*+S*

(9) である。このうち民間部門の外国証券に対する需要は, ~D*

x

B

*

(i, y),

m

<

0

B

;

>

0

(10) のように当該国の利子率tと変数 yの函数として規定されるものとする。かくして, 国内利子率tの上昇は, (9)式と(10)式から中央銀行による外国証券の保有

S

*

および変 数 yが一定である限り,当該国の外国資産保有

A

*

の減少を導くことになる

C

d

A

*/

d

i

(5)

-147-対外取引に対する準備保有と購買力平価からの議離 795 ただし小国仮定から抗は所与である〉。 i*p"x

m

<

0

, 変数 yについては,次のような説明を与えることができる。国際間取引が物々交換 そこにその取引を円滑化するための対外準備保有を必要とする。すなわ 通常公的 国際通貨に対する取引需要および予備的需要の存在である。これらは, 機関による保有についてのみ論じられている。しかしながら, でない限り, ち, それは公的機関への為 替集中制の廃止や為替相場の管理フロート制への移行によってほとんどすべての取引 なお不要となるようなものではないであろう。ところ が民間に委ねられたとしても, で,現在考察中のモデノレでは外国貨幣の保有は一切存在しえない。このような場合, 外貨準備の保有に代わって他の何らかのものがその機能を果たすものと考えなければ 必要に応じて外貨に交換しうるような資産に求め その機能は, ならない。すなわち, 対外 それを外国資産の保有の中に見出す。そこで, られるべきである。われわれは, 準備保有の動機は,民間の外国証券需要に反映されてくることになる。 対外準備保有を函数に導入する場合,輸入額や収支変動の態様など種々の変数を考 えることができる。しかし,われわれは,最も単純にGカッセルにしたがし、外貨保有 動機として外貨がその外国で持つ価値すなわちその一般的購買力のみを取り上げるこ yを とにする。すなわち, ) 1 1 (

α>0

r=

δ

!

.

=

=

de

-

α*+βホ

-

4

-

盟 互

/Jrγ

=

ae(α+β/π) 自国の物価水準が外 当該国の民間部門の行動は, この場合, とし, (0)式に導入する。 国と較べて相対的に騰貴するときより多くの外国証券を資産として保有することと解 (2) Kenen, P B. and F.. B Yudin, The Demand for International Reserves, R.E.Stat,

Vol.47, Aug. 1965.

Clark, P s, Optimum International Reserves and the Speed of Adjustment,

!

P

E , Mar../ Apr 1970

Heller, H. R, Optimal International Reserves, E.

1

June 1966

( 3) Fujita, M. and N. Miyata, The Demand for International Currencies and Reserves,

Kobe Economic and BusinιssRev, 24th Annual Report, 1978.. この論文において, われわれは,公的対外準備保有を理論上は民間の保有の反映として把えた。 (4) Cassel, G, The Theoη

0

/

SocialE.ωnomy, 1923, p. 487 一一一,Money and Foreign Exchanges ajter1914, 1925, pp..138-39 拙稿 「カッセノレの購買力平価説j r香川大学経済論叢』第57巻第 3号 月。 昭和59年12

(6)

-148ー 第58巻 第4号 796 〆 〆Sホ=3 , , 〆 , , ,. , 5 宅=2 “ ' , 〆 , , , , , , , 〆 ./ S*=l , , , , , ,. A* 7r 第2図 釈される (B;

>

0)。 さて,上記(日)式は,変数 yを一定とするならば,ニーハンス・モデルと全く同じで ある。すなわち,この(10)式に前掲の商品市場を加えると,利子率tの上昇は, S*が一 定である場合,A*の保有増加を導きそのことから商品市場を通じて決まる相対価格

π

を騰貴させることになる(第2図〉。 しかしながら,このような関係は,われわれのケースすなわち(11)式を考慮する場合 には全く導出されない。このときでも商品市場の関係は(8)式のようにd7r!dA*ぐ Oで ありニーハンスと向じである。ところが, (9)式(10)式(11)式から得るものは,ニーハンス と異なって, げ

=

i*Pi{

B

i

di+B

将尚一手

d7r)} (12) であり(ただし dS*= 0), A*の変化が利子率t以外に為替相場Gと相対価格

z

の変 化に依存することとなり ,dA*の符号を未決定のままに残す。したがって,この(12)式 に(8)式を併せてみても,利子率iと相対価格

π

の聞に確定的関係を容易に見出すこと ができないのである。

I I

I

最後に,残された当該国の資産市場を考察する。当該国の民間部門の自国証券需要 を

(7)

-149-対外取引に対する準備保有と購買力平価からの議離 797 仕掛

B

i

>

0

x

B

W

, のように規定する。上記の外国証券に関する民間部門の需要には, (10)式のようにyを 自国の証券需要や貨幣の需要に大きな影 このyの効果は, 導入した。しかしながら, その効果が商品市場や自国の 個別市場に集中されないものと仮定されるからで 響を与えず,ほとんど無視しうるものとする。それは, れ 々 t 散 分 に は 場 式 市 仰 の ' 幣 て 貨 し び く よ か お︺。 券げる 証 あ 自国貨幣保 自国利子率tのみの函数となる。向様にして, 有は単純に利子率

t

のみの函数とする。 ) 4 1 (

L

i

<

0

M =

ρ

x

L

(i) =

e

ρ

"x

L

(i), 自国証券あるいは外国証券の中央銀行による購入を通じて 当該国の貨幣は, 次に, 供給される。すなわち, ( 15)

+

S7

M

ニーハンスにしたがし、Sおよび5*を不変に残し単に利子率

i

また である。ただし, は為替相場

e

のみが変化する場合には貨幣供給量に何の変化も生じないものとする。 また,中央銀行の得る利子収入は,そのまま民間部門に移転されるものとする。他方, 民間部門と中央銀行に 自国の証券を供給する。そしてその証券は, 当該国の政府は, よって分割して所有される。すなわち, ( 1

6

)

D =

B+S

民間部門における貿易財と非貿易財の聞の需 である。政府が得る証券売却手取金は, 要バランスを一切左右しないものとする。 以上の国内資産市場は,第

3

図によって表すことができる。(13)式と(16)式また(14)式と (15)式からそれぞれ,

( B

e

P

"x

Bi+

下 )di+

Z i :

d

e

=

~dD--=-:-dS

7) (5) これは主に簡単化のため仮定したものであるが,そのほかに対外取引に対し準備を保 有するとする動機からみてそれを外国証券以外の国内証券や園内貨幣で代替する額は, 極めて小さいと考えるからである。かくしてyは,(10)式において一種のパラメータの如く 取り扱われている。

(8)

← 150ー 第58巻 第4号 798 D M L G 第3図 M . 1.~.

e

金 砂

ZLzdt+lJde=7dS+7FdS

(]8) ただし, ( .• ~ . B ¥M . > T B ム 三 (

e

ρZBz+7)z--dLzz>O

を得る。この二式において dD

=

dS

=

dS*

=

0

としたときのdi/deを求める。その 結果は,第

3

図においてBD曲線を右下がりに(上の

1

(

司式から di/deく

0

)

他方L M曲 線を右上がりにく上の(18)式からdi/de

>

0)する。このBD曲線と L M曲線の交点に おいて当該国の利子率と為替相場が決定されてくる。なお, 言うまでもなく

D

,S, S*の変化は, これら各線のシフトによって示される。

I

V

以上のモデ、ルは, 国内資産市場において為替相場 eと自国利子率 zを決定し,次い で外国資産市場と商品市場にもどってそのeとiを与えて外国資産保有A*を決定す る (S*一定のとき〉と共に相対価格

π

並びに一般物価水準

P

を決定するという形で 構成されている。すなわち,為替相場

e

と利子率tとは, 一応他の市場から独立に自 国資産の市場のみで決定しうる。 ところで, ニーハンス・モデノレがわれわれと異なる 点は,上述のように対外準備保有動機に関わる変数yを外国資産市場に導入しない点 にある。もしこのニーハンスにしたがって'1

=0

とするならば,以上のモデルで(11)式 は除去され(10)式のyは消去される。そしてこの場合外国資産市場は, 自国資産の市場 から決定されたeとiを与えて ,A*を商品市場から独立に決定しうることになる。か

(9)

A H V < E d ハ U h ,

e

o

く 一

B

﹀ * T

、、 d d

¥¥↑、

VG

¥ ¥ ¥ 今 、 -図 、 、 ¥ ¥ 5 ¥ 恥 ¥ ¥ 第

G

、 ¥ 、 司 、 町 151ー 対外取引に対する準備保有と購買力平価からのま花離 A沖電i

I

diく0,de>O, dS傘>0 B之ー→ G diく0,de >0,

dS*>O

→ ¥

¥

B

ホ ホ B

j

l

G

J

、!モー-di>0, de<O, dS*くO 799 さ 歩π 第4図 国内資産市場で決定される為替相場

e

と利 ニーハンスの場合そのモデルは, くして, 子率

i

が外国市場において民間の外国資産保有B*とその総保有 A*を決定し (S*を 所与とする〕そのA*を通じて商品市場に影響し相対価格

π

と購買力平価からの議離 dP de P一三

J

を決定するという一方的関係を強調するものとなる。しかしながら,われわ れのモデルではこの関係は,多少異なっている。それは,商品市場で決定される相対 価格

π

や物価水準Pが(6)式と(11)式の yを通じて外国資産市場に跳ね返ることになる からである。 上掲の第4図および第 5図を用いて簡単に表すことがで われわれの上記モデルは, きる。両図の GG曲線は商品市場における

π

とA*の関係を示している。すなわち, それは

(

8

)

式から右下がりに描かれる(dA

*

/

d7f

<

0

)

。他方,両図のB*Bキ曲線は外国資 産市場の

π

とA*の関係を示している。すなわち,それは

e

i

S

'

を一定としたとき の(9)式(10)式(11)式から ( I曲

IA* 盛 ,aeβ O7f

-i*

ρ

x

'

;

-

<

0

両曲線の交点において均衡解が得ら を得て右下がりの線として描かれる。かくして, れる。その解のうち

π

の値の変化をみると,それは外国資産市場の(9)式(IO)式(11)式と商 (20) 品市場の(8)式から導出される次式,

i*Pijmdi島 +B戸手de~+dS*

d7f

=

+i*piB;

(10)

-152 第58巻 第4号 ただし Q =

旦ニ互u

一色二主

!

b

l

ρ

i

(xπ-.fπ) に依存することが判明する。この側式の分母は,

8

0

0

d

A

*

o

A

*

τ

ν

+

i*ρ

"

x

B

i

ーヲ一一一一一一一 (21) 7[2 d7[ O7[ となり,商品市場を表す

GG

曲線の勾配と外国資産市場を表す

B*B*

曲線の勾配の聞 の差として解釈されうるものである。したがって,われわれは,上掲のように第 4図 においてこの分母を負にとり,第5図においてこの分母を正にとって,二つのケース にわけて描いている。これら両図は,

d

i

0

d

e

>

0,

d

S

*

>

0のいずれの場合にも

B*B*

曲線を右上方ヘシフトさせ,逆に

d

i

>

0

d

e

<

0

dS

ホく

O

のいずれの場合に も

B*B*

曲線を左下方へ、ンフトさせることになる。しかしながら,そこに得られる均 衡解は,この両図において全く逆となる。例えば,

d

i

<

0

d

e

>

0

d

S

*

>

0

の場合 のみをみても均衡解

π

は,分母が負のときすなわち第4図では騰貴し (d7[

>

0),分母 が正のときすなわち第5図では下落する (d7[

<

0)。 そこで,われわれは以下ニーハンスとの比較可能性を考慮して彼と同じような結果 を導く第4図に限って考察する。いま, ユーハンスにしたがい,当該国のとる財政政 策を

dS= dS

=0

で あ り 政 府 証 券 供 給 増

dD

>

0

の 場 合 と し , 他 方 為 替 政 策 を

dS

=

dD

= 0であり外国証券の中央銀行購入増

d

S

*

>

0の場合,公開市場政策を

d

S

*

=

=

dD

=

0

であり自国証券の中央銀行購入増

dS

>

0

の場合と定義し,それら 各々の政策が相対価格に与える効果を分析することにする。それは, (7)式で、みたよう に為替相場の購買力平価からの霜離を表すことになるからである。 下表の(1)欄は,上記三つの政策が為替相場と圏内利子率に与える影響を示したものであ る。それらは,圏内資産市場のみから決定され,ゆえにニーハンスと同じ結果となる。と ころが,下表の

(

2

)

欄の相対価格

r

に与える効果は,ニーハンスとわれわれの聞で多少の 差異がある。すなわち,財政政策においてニーハンスのようにd7[

<

0とはならず,外国 (6 ) 外国資産市場を表す

B

*

B

*

曲線をニーハンスによって描くと,それは

A

*

π

の平面 に垂直な線となる。したがって, ニーハンス・モテ、ノレで、は,

d

i

<

0

のときrは総資する (dJ[

>

0)ことになる。

(11)

801 対外取引に対する準備保有と購買力平価からの議離 -153-(1)為替相場と (2) 効 果 利子率の変化 ユーハンスのケース われわれのケース 財政政策 de > 0 d7r> 0 dπ? dS

=

dS*

=

0 di > 0 過小評価 dD > 0 為替政策 de > 0 d7rくO d7rくO dS

=

dD

=

0 diくO 過大評価 過大評価 dS場'>0 d公S*開=市場dD政=策0 ddie > O0 過大評価d7rくO 過大評価d7r

<

0 dS > 0 資 産 市 場 に 与 え る 為 替 相 場 と 利 子 率 の 変 化 の 影 響 立 叫

B

t

di

-B:

de)によっ てd7r

Oのいずれにもなりうることになり,符号を確定することができないのであ る。ただし,為替政策と公開市場政策の両政策に関しては,ニーハンスと同じ結果が 得られる。そしてそれらは,ともに自国通貨の過大評価という形での購買力平価から の話離を導く。 ニーハンスは,中立政策を規定して相対価格を不変に保ちしたがって購買力平価か らの議離を生じない政策と考える。そこで,当該国の園内資産の市場を表す(J司式と(18) 式にdS'

=

di

=

0

を代入して解き,条件式 dD _ M+B/i dS M

2) を得る。そして,民間の総資産に対する政府の証券供給増が貨幣ストックに対する新 し い 貨 幣 供 給 増 に 等 し く な る よ う に 維 持 さ れ る な ら ば 満 た さ れ る と 主 張 す る (dD/(M+B/i)= dS/M)のである。確かにニーハンスの場合,外国資産市場と商品 市場は,利子率の変化d によってのみ影響され,為替相場の変化によっては(それと 物価水準を比較する以外)何の影響もうけない。したがって,彼のモデルでは相対価 格

z

は,dS'

=

di

=

0

が満たされれば,不変となり購買力平価からの議離を引き起こ さないことになる。しかしながら,われわれのモデルにおいては,この場合にもなお 話離を生じる。それは,国内資産市場でdS'

=

di

=

0を保持するに際し,為替相場

e

の変動を生じておりそれによって外国資産市場と商品市場で決定される相対価格の変

(12)

-154ー 58巻 第4 802

d

7r

0を引き起こすことになるからである。したがって,われわれのモデルでの中 立政策は,ニーハンス・モデルよりも困難である。すなわち,そのためには国内資産 市場においてdi

=

0

保持の政策を行うと共に,他方で為替政策を通じて制式にみる ように外国資産市場において i*ρ

;

d

e

=

必 * (23) となし為替相場変動の効果を相殺せねばならないからである。 以上のわれわれのモデルとニーハンス・モデルとの違いは,既述のように対外取引 に対する準備保有の動機を表す変数 yの導入にある。われわれは,この yの導入を外 国資産市場に限って行い,他の市場においてはそれを無視してきた。その意、味で以上 の分析は,不充分なものであり決して満足しうるものではない。特に無視された商品 市場と自国資産市場における yの導入とその詳細な分析は,残された不可欠で最大の 課題である。しかしながら,対外取引に対する準備保有動機を通常のモデルの中に導 入しようとする初歩的試みとしてみるならば,われわれの上記分析もあながち無駄な ものでもないように思われる。通常のように対外準備保有を公的機関のみに関するも のとするならば,その分析は,上記の yを消去し単にエーハンスにおける為替政策で のS*の操作としてのみ把握されてくることになる。しかしながら,対外取引の主体で ある民間部門が一切対外準備の保有動機を持たないとすることは,国際取引を貨幣交 換経済とみる限り,現実から大きく離れたものにする。

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