Frontier Management Industrial Research
産 業 調 査 通信
流通業界 松 岡 真 宏 『エンゲル係数が上昇する日本』 情報通信業界 合 田 泰 政 『終焉を迎えつつあるMVNOの役割』 テクノロジー関連業界 栗 山 史 『東芝経営危機:聞こえない株主の声』 ヘルスケア業界 小 林 創 『アルツハイマーという難敵』 電子デバイス・材料業界 村 田 朋 博 『仕組みつくり』 メディア・エンターテインメント業界 福田 聡一郎 『中国開発スマホゲームの浸透』 機械業界 水 野 英 之 『中国の建設機械事業での明暗』 紙・パルプ・ガラス業界 石 橋 克 彦 『スマート道路』 ASEAN担当 毛 利 剛 実 『マレーシア・プロトン社の行方』 産業調査コラム p.5 今月のトピックス p.2 自動車関連業界 加 藤 摩 周 『一息ついた国内自動車市場 ~軽自動車はどうあるべきか』
目次
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今月のトピックス
自動車業界:
加藤 摩周 Mashu Kato シニア・アナリスト 16年度に入り5月から8月まで国内自動車販売(登録車+軽 自動車)は年率500万台割れが続き、年度での総販売台数500 万台割れが業界内でも現実味を帯びていたが、9月以後年率 500万台超えが定着し一息ついた形である。 16年4月~17年1月累計の販売台数は登録車が前年比+5.8% と堅調の一方で軽自動車は▲6.4%、結果として総販売台数は 同+1.3%と「登高軽低」の図式は変わらないが、軽自動車市 場も夏場までの2ケタ減の低迷から1ケタ減まで減少幅が縮小し ている。結果として4月から1月の累計年率調整値でみて総販売 台数は504万台とどうやら2年連続の「全需500万台割れ」は 避けられそうである。ただし軽自動車市場の減衰は避けられそ うもなく4月~1月の累計年率調整値でみても170万台弱と14 年3月期の226万台、15年3月期の217万台レベルには遠く及ば ない。これは軽自動車税の引上げといった一時的要因だけでは なく、需要地域が主に地方部であり、現在高齢化、過疎化、人 口減少といったネガティブな要因に直撃されている地域である ことと無縁では無かろう。 今後の軽自動車は開発を含めてどうあるべきか、真剣に問い 直す時期であろう。筆者は産業調査通信9月号で「機能を落と さずにコンパクトにまとめる。という技術は難しく、これをグ ローバルに展開できれば明るい道が開ける、と考える。」と述 べた。© 2017 Frontier Management Inc. 3
㈱埼玉銀行(現、㈱りそな銀行)、モルガンスタン レー、㈱ニッセイ基礎研究所、日興アセットマネジメ ント㈱、ソシエテ ジェネラル アセット マネジメント ㈱(現、アムンディ・ジャパン㈱)を経て、2015年に フロンティア・マネジメント㈱に入社。 モルガンスタンレーでは、トレーディング部、市場情 報部、調査部(自動車業界担当)を担当し、その後も ファンダメンタル分析を主体に自動車業界の完成車、 部品、タイヤメーカー、鉄鋼を担当。 1991年に日本証券アナリスト検定会員資格を取得。経 済産業省の外郭団体 日本自動車工業会の下部組織であ る日本自動車研究所(通称JARI)のITS産業動向研究 会 研究会長を務める(現任)。
『一息ついた国内自動車市場 ~軽自動車はどうあるべきか』(1/2)
情報は日本自動車販売協会連合会『新車販売台数』全国軽自動車協会連合会『軽四輪車新車販売確報』より入手 4 開発の視点をプラットフォーム、パワートレインの段階から見直し、グローバルに通用する「Aセグメントカー」と 位置付ける時期に差しかかっていると筆者は考える。既に軽自動車税の引上げ等で優遇制度は徐々に取り除かれる方 向にあるが、この際「グローバルA」への早急な転換を促す軽自動車取得に対する優遇制度を全廃し、自動車関係諸税 の軽重は燃費や安全性といった国際競争力確保に帰する制度に変更すべき時期にある、と考えられる。
自動車業界: 『一息ついた国内自動車市場 ~軽自動車はどうあるべきか』(2/2)
-50% -25% 0% 25% 50% 75% 100% 0 20 40 60 80 100 120 2001 年 1月 2002 年 1月 2003 年 1月 2004 年 1月 2005 年 1月 2006 年 1月 2007 年 1月 2008 年 1月 2009 年 1月 2010 年 1月 2011 年 1月 2012 年 1月 2013 年 1月 2014 年 1月 2015 年 1月 2016 年 1月 2017 年 1月 (万台) 万 新車販売総台数(左軸) 乗用車(左軸) 貨物車・バス(左軸) 軽乗用車(左軸) 軽貨物車(左軸) 新車販売総台数(前年比、右軸)5
産業調査コラム
流通業界:『エンゲル係数が上昇する日本』
野村総合研究所、バークレイズ証券会社、UBS証券会 社、㈱産業再生機構を経て、2007年にフロンティア・ マネジメント㈱設立。 10年以上にわたり流通業界を中心に証券アナリストと して活動。㈱産業再生機構においては、地方百貨店で ある津松菱やうすい百貨店の事業再生に関与し、カネ ボウおよびダイエーの案件では、取締役として事業再 生に関与。 1999年に国内外の複数のアナリストランキングにおい て、小売部門でトップランキングを獲得。 松岡 真宏 Masahiro Matsuoka 代表取締役 主な著書 『小売業の最適戦略』(㈱日本経済新聞社 1998年) 『百貨店が復活する日』(㈱日経BP社 2000年) 『問屋と商社が復活する日』(㈱日経BP社 2001年) 『逆説の日本企業論』(㈱ダイヤモンド社 2003年) 『私的整理計画策定の実務』共著(㈱商事法務 2011年) 『流通業の「常識」を疑え!』共著(㈱日本経済新聞出版社 2012年) 『ジャッジメントイノベーション』共著(㈱ダイヤモンド社 2013年) 『時間資本主義の到来』(㈱草思社 2014年) 『「時間消費」で勝つ!』共著(㈱日本経済新聞出版社 2015年) 日本のエンゲル係数が上昇している。エンゲル係数とは、家 計の消費支出に占める食料・飲料の比率であり、19世紀半ばに ドイツの統計学者エンゲル氏が発表して以来、各国で使用され てきた経緯がある。 一般的に、生活水準が上昇するに従って、エンゲル係数は下 落する。我が国のエンゲル係数は、1960年代初頭には40%近 くあったが、その後一貫して低下を辿り、1990年代半ば以降 は23%前後での横ばいとなっていた。しかし、2014年以降は 上昇傾向を示しており、2016年は29年ぶりに26%前後という 高水準となることが見込まれている。 エンゲル係数の低下が生活水準の上昇とパラレルなのであれ ば、ここ数年のエンゲル係数の上昇は、日本の生活水準の低下 を表しているのであろうか。一部メディアでは、エンゲル係数 上昇の要因を「食品価格の上昇に加え、外食や調理済み食品の 利用増、食べることを楽しむ食のレジャー化などが要因」と分 析しているが、それだけではなかろう。 実は、エンゲル係数は、世帯主の年齢によって大きく異なる。 世帯主が30歳未満の家計のエンゲル係数が20%前後なのに対 し、70歳以上の家計では28%前後となっている。しかも、こ こ数年、世帯主の年齢が高い世帯ほど、エンゲル係数が上昇し ている。どうやらエンゲル係数の上昇は、日本の生活水準が下 がったのではなく、少子高齢化の影響が大きいのではないかと 考えられる。高齢化とは、エンゲル係数と生活水準の関連が希 薄となる社会のことなのかもしれない。 6情報通信業界:『終焉を迎えつつあるMVNOの役割』
全日本空輸㈱、メリルリンチ証券会社(現、メリルリ ンチ日本証券㈱)を経て、2009年にフロンティア・マ ネジメント㈱に入社。 BTによる日本テレコム㈱への出資やルノーによる日産 自動車㈱への出資等、M&Aアドバイザリー経験多数。 調査部では10年弱の株式アナリスト経験を有し、通信 及びインターネットセクターを担当。電機、電子機器 部品製造、情報通信業等のコンサルティングを担当。 2003年から2008年にかけて米国「Institutional Investor」誌、日経金融新聞「アナリスト人気ランキ ング」の両調査において通信部門で上位にランキング。 また、2007年には総務省モバイルビジネス研究会構成 員を務める。2010年には㈱ウィルコム事業管財人代理 を務める。 合田 泰政 Yasumasa Goda 常務執行役員 MVNOは2013年頃から市場が立ち上がり始め、昨年9月末で SIMカード型で762万と市場でも一定の地位を占めるに至って いる。通信事業は20年以上前に料金規制が撤廃されていること から、総務省が直接値下げを実現する手段はない。このため、 総務省は競争促進にむけて、SIMロック解除やMVNOの促進を 執拗にドコモをはじめとするMNO(携帯電話インフラを保有 するモバイル通信事業者)に働きかけ、漸く手にした目に見え る成果である。 しかしそうした状況も明らかに変化が見られ始めている。 MNO自らが格安SIM市場でのシェア拡大を目指してきている。 KDDIグループ傘下のUQ Mobileは昨年秋以降急速に新規加入 獲得数を伸ばしてきている。これを可能にしているのが、一つ にはauとのつながりを生かしたiPhoneのセット販売。もう一 つは、すさまじい量の広告出稿である。これにはキャリアとし ての端末在庫もなく、体力に劣るMVNOには太刀打ちできる術 がない。市場が立ち上がらなければ何もする必要がないが、無 視できない存在にまで育ってきてしまえば、大手キャリアは持 てるものをすべて出して防戦に出てくるだけである。既に寡占 化が進展し、巨大産業となってしまったモバイル通信業界での 競争促進の難しさがここにある。確かに料金高止まりに風穴を 開けることはできたが、市場立ち上がりから僅か3年余りで MVNOは競争政策上の役割を終えつつあるように見える。テクノロジー関連業界:『東芝経営危機:聞こえない株主の声』
栗山 史 Hitoshi Kuriyama 産業調査部長 東芝は、3月30日にメモリ事業の分割承認を得るため臨時株 主総会を開催すると発表した。ちなみに2年前の9月にも不適正 会計問題と決算訂正等で臨時株主総会を開催している。メモリ 事業の譲渡およびその影響は、決算上来年度に持ち越され、原 子力関連の損失により17/3期末の債務超過で2部への降格はほ ぼ確実。不祥事や経営危機の状態から上場廃止もあり得る。 企業には、ステークホルダーの期待や要求に対し相応に対応 する必要がある。制度上、ステークホルダー中で最も権限が強 いのは株主であるが、経営問題等が発生した場合に最もリスク にさらされるのは企業の所有者としての株主。上場廃止になれ ば売却がかなり難しくなり、倒産すれば価値はゼロになる。 実際の足元の状況は不明だが、当社の株式は30%強外国人が 保有。個人投資家35-40%、金融機関が30%前後を保有してい る。株主は既に株価の下落によって大きな損失を被っているが、 15年以降の株主総会で大きな波乱が起こったり、議案が通らな かったりした報道はない。基本物言わぬ機関投資家+物言えぬ 個人投資家となっている印象だ。立場の弱い、声の小さな従業 員や個人投資家は、今後も人員削減や株価下落・上場廃止等で 厳しい現実に直面していく。 損失は今回の米国原子力関係だけで終わらない可能性は大手 電機メーカーのリストラや各種報道を見ると高い。株主は保有 を選べる立場だが、特にプロとしての機関投資家は声を大きく、 プライドを持って経営に対しての意見を言うべきではないか。 あるいは社外を含む現取締役・監査役や執行役の経営責任を追 及すべきではないか。本質的ガバナンス改革が必要であろう。 8 大和証券㈱、ゴールドマン・サックス証券会社、メリ ルリンチ日本証券㈱、アライアンス・バーンスタイン ㈱等を経て、2012年にフロンティア・マネジメント㈱ に入社。 22年間、一貫してテクノロジー関係のアナリスト業務 に従事。家電業界、総合電機、電子部品、精密機器、 ゲーム業界等、国内テクノロジー関連企業をほぼ網羅。 その他、医薬品・小売り・繊維・サービス等の生活関 連産業、電子素材等を含む川上のテクノロジー関連業 界、汎用化学等へも調査対象を拡大。 1994年以降、日経金融新聞「アナリスト人気ランキン グ」や米国「Institutional Investor」誌等のアナリス トランキングでは、ほぼトップ3の座を継続。ヘルスケア業界:『アルツハイマーという難敵』
小林 創 Hajime Kobayashi マネージング・ディレクター アルツハイマー性痴呆は、寿命伸長と、心疾患等他の疾病の 治療が進化する中、地球的に人類にとってますます深刻な課題 となっており、しかも難敵で居続けている。Alzheimer’s Disease Internationalによると、2016年の世界のアルツハイ マー性痴呆罹患者は4,400万人、診断されているのはその1/4 で、年間治療費は6,050億ドル(世界GDPの約1%)と推定さ れている。 この莫大な潜在市場を医薬品メーカーが狙わない筈はなく、 各社はアルツハイマー性痴呆症治療薬の開発にここ数十年躍起 になり巨額の投資をしている。2002~2012年だけでも候補物 質の数は244もあったということだが、未だに治療薬の開発に 成功した例はない。最近の最も有名な失敗は米Eli Lillyの Solanezumabで、昨年11月末にフェーズⅢの目標を達成でき ないと発表、同社の株価はその日10.5%下落した。Lillyだけで なく、PfizerもJ&Jも武田も然り。そもそも作用機序仮説が正 しくないという意見も出ているが未解明で、正確に診断するバ イオマーカーも存在しない。 しかし最も問題なのは医薬品メーカーの開発の在り方で、候 補物質の可能性を信じるあまり、開発中止の意思決定(埋没費 用であるのに)ができない。フェーズⅡであまり芳しい結果が 出ていなくても、患者セグメントを絞り統計的処理を駆使して 統計的に有意な有効性・安全性を「証明」しようとする姿勢が 他社の過去の失敗から学べていない。ぜひ今回こそLillyから教 訓を得て、この難敵に業界としてぜひ取り組んで欲しい。或い は経頭蓋磁気刺激デバイス等に治療の主役の座を明け渡すか。© 2017 Frontier Management Inc. 9
鹿島建設㈱、㈱ボストンコンサルティンググループ、 ブーズ・アンド・カンパニー㈱、GE横河メディカルシ ステム㈱(現、GEヘルスケア・ジャパン㈱)を経て、 2012年にフロンティア・マネジメント㈱に入社。 国内及び欧米の大手消費財・産業財関連企業・ヘルス ケア企業に対し、成長・新規事業戦略策定、買収後統 合、業務改革、長期ビジョン策定等のプロジェクトマ ネジメントを担当。また、医薬品・医療機器・電力・ 石油・化学・ハイテク・食品・アパレル・化粧品等業 界の日本企業及び外資系企業に対し、中長期事業戦略 策定、組織能力向上、ビジネスデュー・ディリジェン ス、事業統合戦略策定、事業再生戦略策定・実行支援 等の数多くのプロジェクトをリード。
電子デバイス・材料業界:『仕組みつくり』
大和証券㈱、㈱大和総研、モルガン・スタンレー証券 会社を経て、2009年にフロンティア・マネジメント㈱ 入社。 大和証券㈱、㈱大和総研では、通信機器、半導体、半 導体製造装置、ソフトウエア産業の調査を担当、モル ガン・スタンレー証券会社では、電子部品の調査を開 始、産業アナリストとして17年の経験を有する。 2001年に日経アナリストランキングで1位になるなど、 各種ランキングで上位に名を連ねる。 村田 朋博 Tomohiro Murata マネージング・ディレクター 主な著書 『電子部品だけがなぜ強い』(日本経済新聞出版社 2011年) 『経営危機には給料を増やす!』(日本経済新聞出版社 2013年) 『電子部品 営業利益率20%のビジネスモデル』(日本経済新聞出版社 2016年) トランプ大統領は、雇用の増加を最大目標として、国境税の 導入の検討の他、企業に直接的に海外に工場を建てるな、国内 に建てろ、と「直接的に」指導している。雇用の増加は素晴ら しいこととして、ただ、その目的を達成するための方法につい て、経営の観点からも学ぶべきことがあるように思われる。 すなわち、直接的な方法ではなく、「自然とそうなる」仕組 みのほうが、手段としてはレベルが高いのではないか。 私が以前働いてきた会社で、人事部による会議が開催された。 後進を育てましょう、という目的であったが、人事部の人から のまとめの発言――「では、皆様、自分の部署に戻ったら、後 進の教育をよろしくお願いします」に驚かされた。後進の教育 が重要なことなど明らかで、そのために会議を開いて「お願い します」ではなく、後進の教育が活性化されるような仕組みを 考えることが人事部の仕事である。 企業経営においても、たとえば顧客満足度を上げるというの は当然のことで、社員を集めて「顧客満足度をあげろ!」と指 導をすることも一つの手段ではある。しかしながら、より理想 なのは、自然とそれが実現されるための仕組みつくりではない かと思われる。 ある著名経営者が、「社員は寝ていてもよい。それでも儲か るような仕組みをつくるのが俺の仕事」と私に語ったことを思 い出した。 10メディア・エンターテインメント業界 ~ 『中国開発スマホゲームの浸透』
福田 聡一郎 Soichiro Fukuda シニア・アナリスト 「聖闘士星矢」など日本IPを活用したゲームが中国では人気 となっており、日本のゲーム性をほぼ踏襲した「Fate」などの 成功例も出てきているが、直近では、中国開発のスマホゲーム が、日本でも人気となるケースが出てきている。 2月23日現在、iOSのトップセールスランキングで、中国 OURPALM/テンセントが開発した「King of Fighters」が16位、 miHoYo社が開発した「崩壊3rd」が23位にランクインするな ど、中国開発タイトルが上位にランクインしその存在感は確実 に上昇している。また、2月23日から、中国のスマホゲーム売 上でも1位、2を争う網易(NetEase)社開発の、日本の平安時 代をモチーフとした「陰陽師」が配信されており、中国開発タ イトルは、日本スマホゲーム市場で更に存在感を強めることが 想定される(既に2月27日付iOSランキングで25位)。 美麗なアニメ調グラフィックを特長とする「崩壊3rd」や中 国での圧倒的な実績を背景とした「陰陽師」などの“新しい風” が起爆剤となり、グラフィックやゲーム性での革新を促すとと もに、中国ゲーム会社の日本進出が加速することが予想され、 成長鈍化が明確となってきた日本スマホゲーム市場を再活性化 させることに期待したい。 加えて、中国開発タイトルを日本でアニメ化しメディアミッ クス展開を行うといった、新たなグローバルIP開発のスキーム が生まれることにも期待したい。© 2017 Frontier Management Inc. 11
三井信託銀行㈱(現、三井住友信託銀行㈱)、興銀証 券㈱(現、みずほ証券㈱)、日興ソロモン・スミス バーニー証券会社(現、シティグループ証券)、マイ クロソフト㈱(現、日本マイクロソフト㈱)、日興シ ティグループ証券㈱(現、シティグループ証券)、 フィールズ㈱を経て、2016年にフロンティア・マネジ メント㈱に入社。 1998年から2016年までの18年間、アナリスト業務お よび事業会社にて、一貫してエンターテインメント業 界に携わる。セルサイド・アナリストとしては、エン ターテインメント業界の他、メディア業界、インター ネット業界、ITサービス業界のリサーチも担当。 2003年から2005年に在籍したマイクロソフト㈱では、 同社のゲーム機Xbox360の日本ローンチ戦略、および オンラインサービス「Xbox Live」のマーケティング 戦略を担当。2014年から2016年に在籍したフィール ズ㈱では、IR、およびゲーム系子会社管理を担当。
機械業界 ~ 『中国の建設機械事業での明暗』
水野 英之 Hideyuki Mizuno シニア・アナリスト 中国の油圧ショベルの販売台数(外資系のみ)は、 2010年 度の11.1万台をピークに、2015年度には1.9万台にまで落ち 込んだが、 中国でのインフラ投資の再開などを背景に、 2016 年夏以降、前年比プラス基調に転じている。17/3期初には、 コマツ、日立建機ともに同台数は前年比マイナスと予想してい たが、期中に増額修正した。また、コマツが公表している中国 の油圧ショベルの稼働時間も、昨年3月以降は前年比プラスで 推移するなど、明るいニュースとして取り上げられている。 こうした環境にもかかわらず、神戸製鋼所は、17/3期3Q決 算時に、中国の建設機械事業(子会社のコベルコ建機)を主因 に、下方修正を発表し、当期利益が2期連続で赤字に転落する 見通しとなった。同社は、建設機械事業における貸倒引当金と して、16/3期に146億円を計上したが、その後も債権回収で難 航しており、17/3期にも343億円を計上することを3Q決算時 に公表した。これは、同事業の売上の約11%に相当する額とな る。同社の中国事業は、営業、経理・財務を中国パートナー主 導で行っていたが、代理店への与信管理や債権管理が十分では なく、多額の貸倒引当金計上を余儀なくされた。同社では、中 国パートナーとの合弁を解消することを決断し、同社主導で中 国事業の再建にあたるようだ。 上述のコベルコ建機の事例は、合弁会社に対する監査機能が 十分でなかったように見える。16/3期では前述の貸倒引当金 は最大限見積もったとしていたが、その2倍以上の金額が17/3 期に計上されている。本件は、合弁会社を含めたコーポレー ト・ガバナンスを強化する必要性を再認識させられる事例であ ろう。 12 日興証券株式会社(現、SMBC日興証券株式会社)に 入社し、同年、日興リサーチセンターに出向。INGベ アリング証券会社(現、マッコーリーキャピタル証券 会社、メリルリンチ日本証券を経て、2016年フロン ティア・マネジメント㈱に入社。 1987年から2016年までの29年間、セルサイドアナリ ストの経験を有する。1992年からは日興リサーチセン ター、INGベアリング証券会社(現、マッコーリー キャピタル証券会社)、メリルリンチ日本証券にて、 機械業界を約24年間にわたって担当した。紙・パルプ・ガラス業界 ~ 『スマート道路』
石橋 克彦 Katsuhiko Ishibashi シニア・ディレクター 将来的に自動運転の普及により自動車が大きく変化していく 中で、インフラである道路はどのように変化していくのだろう か。既に海外では道路自体に様々な機能を持たせる取り組みが なされている。 比較的早期に実現する可能性が高いのが発電機能である。慢 性的な渋滞がある都市部の道路では自動車の影になり、有効な 日照時間を確保できない問題があるだろうが、渋滞の少ない郊 外の道路であれば、道路をソーラーパネルに置き換えればかな り大きな発電能力を確保できる。既にフランスでは建設大手の Bouyguesの子会社が、ノルマンディー地方の郊外で 「Wattway」と称して1kmにわたりソーラーパネルを道路に 敷き詰め、実証研究を行っている。 発電機能となれば次は給電機能であろう。道路から走行中の 電気自動車への非接触給電が実用化されれば、自動車に搭載す るバッテリーを大幅に軽量化することが可能になり、省エネの 観点からもメリットは大きいだろう。こちらも英国で既に実証 実験が行われている。 通信機能も、V2I(路車間)通信において、信号機や標識な どに設置された路側機ではなく、自動車の下にある道路から 様々な情報(路面状態、道路形状、交通規制、障害物などの情 報)を近距離通信する形になるであろう。日本の道路会社や素 材メーカーもこういった「スマートな道路」の研究に取り組む 必要があるだろう。© 2017 Frontier Management Inc. 13
㈱大和総研、ドイツ証券㈱を経て、2013年にフロン ティア・マネジメント㈱に入社。 電材業界、自動車部品業界、食品業界などの産業分析、 企業財務分析、企業価値分析に従事。また、ガラス土 石業界、紙パルプ業界、非鉄業界などの産業分析や企 業財務分析等を担当。 2012年のInstitutional Investors誌の人気アナリスト ランキングでは第1位を獲得。