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第1章 財務諸表

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Academic year: 2021

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テーマ 1 会計の種類と役割

会計とは、特定の組織による経済活動を貨幣額で記録して計算し、その結果を報告する システムである。

1. 会計の種類

1.1 組織の大別 利益の獲得を目的としている組織を営利組織という。 利益の獲得を目的としていない組織を非営利組織という。 1.2 非営利会計と企業会計 非営利会計の中心目的が財産計算であり、資金の収支を記録し報告することが特徴であ るのに対し、企業会計の中心目的は利益計算と財産計算を特徴とする。 ① 非営利会計 非営利組織が行う会計を非営利会計という。国または地方自治体などの行政機 関(公会計)、学校法人や宗教法人などが用いる。最近では、地方自治体が企業会 計を一部導入している。 ② 企業会計 営利組織は一般に企業と呼ばれ、そこで行われる会計を企業会計という。利益 計算の内容を示す報告書は損益計算書(P/L)と呼ばれ、財産計算の詳細を表す報告 書が貸借対照表(B/S)である。その他、企業活動に伴う現金の出入りを示す報告書 としてキャッシュ・フロー計算書がある。これらをまとめて主要な財務諸表という。 会計を行う組織 非営利組織 営利組織 非営利会計 企業会計 公会計 学校法人会計 宗教法人会計 その他 財務会計 管理会計 制度会計 法規制外の財務会計 意思決定会計 業績管理会計

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損益計算書は企業の一会計期間の経営成績を表し、貸借対照表は期末における企 業の財政状態を示す。また、キャッシュ・フロー計算書は、一会計期間におけるキャ ッシュ・フローの状況を示す。 1.3 財務会計と管理会計 企業会計は、さらに財務会計と管理会計に区分される。 ① 財務会計 財務会計は、株主や債権者など企業外部の利害関係者に報告することを目的に しており、外部報告会計とも呼ばれる。また、法律の規制に準拠して実施される 財務会計を制度会計という。法的規制を超えて行われる財務会計もある。 ② 管理会計 管理会計は、経営管理に役立つ資料を企業内部の経営者に提供することを目的 にしており、内部報告会計とも呼ばれる。管理会計を大別すれば、意思決定会計 と業績管理会計がある。意思決定会計とは、ある投資プロジェクトに対して経営 者が意思決定するための資料提供を目的とした会計である。業績管理会計とは、 生産活動や販売活動などの業績を評価しコントロールするための会計である。

2. 企業会計とディスクロージャー

2.1 ディスクロージャー制度 経営者と投資家の間には情報の非対称性(Information Asymmetry)が存在しているので、 企業は財務諸表などを含む企業情報の開示であるディスクロージャー(disclosure)を行って いる。ディスクロージャーには、強制されたものと自主的に行われるものとがある。これ ら全てのディスクロージャーが、ディスクロージャー制度を形成している。 2.2 金融商品取引法におけるディスクロージャー制度 金融商品取引法は、投資家保護を図るため、有価証券の発行市場と流通市場のそれぞれ について、企業内容開示制度と呼ばれる情報開示の枠組みを設けている。 ① 発行市場における開示制度 有価証券届出書:発行または売出価額が 1 億円以上の有価証券の募集もしくは 売出を行う際に、内閣総理大臣に届出する書類。 目論見書:有価証券届出書の内容を説明したもので、投資家に直接交付。

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② 流通市場における開示制度 有価証券報告書:証券取引所に上場している有価証券の発行会社が、事業年度 終了後 3 ヶ月以内に、内閣総理大臣に提出する書類。 通常、「企業の概況」「事業の状況」「設備の状況」「提出会社の状況」「経理の状 況」「提出会社の株式事務の概要」および「提出会社に係る参考情報」からなる。 四半期報告書:上場会社が、事業年度を 3 ヶ月ごとに区分し、その期間の終了 後 45 日以内に、内閣総理大臣に提出する書類。 臨時報告書:有価証券報告書を提出する会社が、企業内容等に関して重要な事 実が発生し、特に投資家に対して適時開示を要する事項が生じた場合に、 内閣 総理大臣に提出する書類。 ③ 財務諸表の体系 財務諸表は、会計単位の観点から、個別財務諸表と連結財務諸表に分類される。 個別財務諸表とは、個々の企業を単位として作成する財務諸表であり、連結財務 諸表とは、複数の企業で構成される企業集団を 1 つの企業であるかのようにみな して作成する財務諸表である。企業集団を構成する企業間には、一定の支配従属 関係があり、他の会社を支配している会社を親会社といい、親会社によって支配 されている会社を子会社という。親会社が連結財務諸表を作成する。 開示書類に含まれる財務諸表 開示書類 連結財務諸表 個別財務諸表 目論見書 有価証券届出書 有価証券報告書 • 連結貸借対照表 • 連結損益計算書 • 連結キャッシュ・フロー計算書 • 連結株主資本等変動計算書 • 連結附属明細表 • 貸借対照表 • 損益計算書 • キャッシュ・フロー計算書* • 株主資本等変動計算書 • 附属明細表 四半期報告書 • 四半期連結貸借対照表 • 四半期連結損益計算書 • 四半期連結キャッシュ・フロー計算書 • 四半期個別貸借対照表* • 四半期個別損益計算書* • 四半期個別キャッシュ・フロー計算書* *連結財務諸表を作成していない場合に作成 2.3 会社法におけるディスクロージャー制度 すべての株式会社は、会社法の規定に従わなければならない。また、会社法は、株主と 債権者の保護を目的として、計算(会計)に関する規定を定めている。

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① 計算書類の内容 会社法では、財務諸表のことを計算書類と呼ぶ。連結計算書類とは、企業集団 を単位として作成される計算書類のことである。事業年度の末日時点で大会社で あり、金融商品取引法の規定により有価証券報告書を提出しなければならない会 社は、その事業年度の連結計算書類を作成しなければならない。 大会社:会社法上、最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が 5 億円以上であるか、または最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額 の合計額が 200 億円以上の株式会社。 計算書類の内容 計算書類 連結計算書類 • 貸借対照表 • 損益計算書 • 株主資本等変動計算書 • 個別注記表 • 連結貸借対照表 • 連結損益計算書 • 連結株主資本等変動計算書 • 連結個別注記表 計算書類は、その他の開示書類(事業報告や監査報告書)とともに、株主総会開 催日以前に、株主総会召集通知の添付書類として各株主に送付される。 ② 決算公告 株主総会が終了し計算書類が報告または承認された後、遅滞なく決算公告をし なければならない。貸借対照表(大会社は貸借対照表および損益計算書)を公告 する。ただし、金融商品取引法の規定により有価証券報告書を提出する会社は、 決算公告の義務はない。公告の方法には、官報や日刊新聞紙に掲載する方法と電 子公告をする方法とがある。 2.4 証券取引所におけるディスクロージャー制度 金融商品取引法や会社法により開示が制度化されているものではないが、証券取引所の 要請により、1974 年から決算短信によって迅速に決算発表が行われている。 決算短信の特徴 • 情報開示の迅速性(決算短信は最も早い決算情報である) • 次期の業績予想(当期の実績値と共に次期の業績予想も公表される)

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2.5 自主的なディスクロージャー 変化の激しい企業環境に応じて、企業独自の判断に基づき、投資家の意思決定に有用な 情報をタイムリーに開示する必要性がある。 自主的ディスクロージャーの一環として、オンライン・ディスクロージャーやインベス ター・リレーションズ(IR)などが存在している。オンライン・ディスクロージャーとは、イ ンターネットによる企業の財務情報開示であり、法によって義務付けられているものでは なく、企業の自発的行動に委ねられているものである。IR とは、企業が自社株の投資価値 を株主や投資家に訴え、株主を集めるための広報活動である。例えば、IR 活動としては、 証券アナリストを対象に説明会を開催し、財務諸表や新製品情報ならびに将来の展望など を示したうえで、質疑応答を行う。

3. 制度会計

わが国では、会社法を中心とする会社法会計と、金融商品取引法を中心とする金融商品 取引法会計と、法人税を中心とする税務会計がある。このように、法律の規制に準拠して 実施される財務会計を制度会計という。わが国の財務会計が、これら 3 つの法律に制約さ れていることから、日本の制度会計の体系をトライアングル体制と呼ばれることがある。 金融商品取引法会計 税 務 会 計 会 社 法 会 計 6 月 7 月 決 算 日 4 月 監 査 期 間 決 算 短 信 公 表 有 価 証 券 報 告 書 提 出 株 主 総 会 総 会 準 備 期 間 5 月

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① 法人税法と財務会計 法人税とは、法人(株式会社・有限会社・協同組合など)が得た所得に課税さ れる税金のことであり、課税所得の計算などについて規定したのが法人税法であ る。従って、もともと課税所得計算である税務会計と財務会計は、別個の目的に 従って行われ、法人税法が財務会計を規制するという関係は存在しない。 課税所得計算において、株主総会での報告または承認により確定された損益計 算書の当期純利益を基礎にして、それに法人税法で定めた調整項目を加減するこ とにより、課税所得を算定している。これを確定決算主義という。この結果、課 税所得計算を意識した財務会計が行われ、法人税法の規定が財務会計に多大な影 響を及ぼしているのである。 ② 二つの法律と株式会社会計 会社法と金融商品取引法の目的は異なり、それぞれが会計に期待する役割も異 なるが、作成される財務諸表または計算書類の実質的内容に大きな差はない。そ れぞれが期待する役割としては、金融商品取引法では、会計情報の開示を通じ合 理的な証券投資意思決定が行われることである一方、会社法では、経営者・株主・ 債権者などの間に存在する利害対立の調整機能である。 金融商品取引法会計と会社法会計の特質 金融商品取引法会計 会 社 法 会 計 制度の目的 投資家の保護 当事者間の利害調整 債権者の保護 規制の対象 • 1 億円以上の有価証券の募集ま たは売出を行った会社 • 証券取引所に株式を上場して いる会社 全ての会社 会計処理基準 企業会計基準・企業会計原則 会社計算規則 開示基準 財務諸表等規則 財務諸表の体系 • 貸借対照表 • 損益計算書 • キャッシュ・フロー計算書 • 株主資本等変動計算書 • 附属明細表 • 貸借対照表 • 損益計算書 • 株主資本等変動計算書 • 注記表 会計監査 対象となる会社のすべてについ て公認会計士または監査法人に よる監査が行われる。 • すべての株式会社について監 査役の監査が行われる。 • 大会社については、監査役によ る監査のほか公認会計士また は監査法人による監査が行わ れる。

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4. 会計情報の役割

企業会計の目的は、企業の財政状態や経営成績を適切に表現することであり、会計情報 の利用者に対して、それぞれ意思決定を行う上で有益な情報を提供することが重要である。 企業には経営者、投資者、債権者、従業員、取引先、国・地方自治体など、さまざまな ステークホルダー(利害関係者)が存在する。ステークホルダーは、財務諸表などの会計 情報を利用して自らの意思決定を行う。会計情報は、企業の実態を正確に反映して、ステ ークホルダーの判断を誤らせないようにすることが大切である。会計情報が果たす代表的 な役割として、利害調整機能と投資判断情報提供機能がある。 会計情報と主な利用者 4.1 利害調整機能 企業を取り巻くステークホルダー間には、さまざまな利害対立が存在している。会計情 報には、この利害対立を解消する機能があり、この機能を利害調整機能という。 ① 株主と経営者の間の利害対立 株主が自己の資源の管理・運用を経営者に託すのは、経営者が株主の意図を介 した資源の管理・運用を行うことによって、一定の成果を上げることを期待する からである。しかし、外部の株主は、経営者が株主から委託された資源を経営者 自身の利益のためではなく、株主の利益のために、適切に管理・運用しているか どうかは定かではない。そこで、会計情報の公表が必要となり、会計情報は経営 者と株主の間の利害調整機能を果たしているのである。 ② 株主と債権者の間の利害対立 株主は、出資先企業が倒産した場合でも、引き受ける責任の範囲は、自己の出 経営者 従業員 国・地方自治体 取引先 会計情報 債権者 投資者

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資額を上限とした有限責任である。これに対して、債権者は、契約で定められた 利子を受け取る権利を有しているが、経営に参画できないのはもとより、企業倒 産時には元金の回収が不可能になる危険さえ負わされている。もし株主の過大な 配当決議によって多額の現金が社外流出し、企業の存続が危機に陥ることがあれ ば、債権者の権利は著しく侵害されることになる。そこで、債権者を保護するた めに考え出されたのが配当規制である。わが国では、会社法が、株主と債権者の 利害を調整しており、会社が株主に分配できる上限額を分配可能額として定めて いる。 4.2 投資判断情報提供機能 投資家に対して、証券投資の意思決定に役立つ情報を提供して、投資家を保護すること により、証券市場がその機能を円滑に遂行できるようにするという役割を投資判断情報提 供機能という。 ① 投資意思決定 投資家が、株式や社債などの購入に関して行使する判断を投資意思決定という。 投資に関する判断は、投資対象会社の財務内容をもとに行われるので、投資意思 決定に際しては、当該投資対象会社の会計情報が不可欠となる。投資家にとって、 投資判断は、選択肢の中で最も有利な状況の実現を期待させるものでなければな らない。会計情報はそうした投資判断に利用される。 ② ファンダメンタル分析と財務諸表 投資した結果から得られる収益を投資収益(リターン)というが、株式を取得 すれば、配当と株価の値上がり益が期待でき、社債を取得すれば、利息と社債価 格の値上がり益が期待できる。高収益(ハイ・リターン)を得ようとすれば、そ れに応じて高い危険(ハイ・リスク)を引き受けなければならず、逆にハイ・リ スクを回避したければ、それ相当の低収益(ロー・リターン)に甘んじざるを得 ない。ハイリスク・ハイリターンとローリスク・ローリターンという関係がある。 従って、投資家は、目標にするリターンと負担できるリスクを比較考量し、投 資意思決定をしなければならない。このリターンとリスクを投資対象企業の個別 要因から推測しようとするのが、ファンダメンタル分析である。ファンダメンタ ル分析においては、会計情報である財務諸表が重要となる。 投資判断を行うには、企業の収益性、安全性、成長性を財務諸表数値から判断 し、企業間比較と期間比較を行うのである。さらに新製品情報などを加えてファ

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ンダメンタル分析を行えば、各企業の将来業績が推定でき、その比較が可能とな る。そのうえで、投資家は、彼らの望むリターンとリスクが期待できる証券に投 資をするのである。

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【問題 1】 次の( )に適切な語句を入れなさい。 1. 営利組織は一般に企業と呼ばれ、そこで行われる会計を( )という。利益計 算の内容を示す報告書は( )と呼ばれ、財産計算の詳細を表す報告書が ( )である。その他、企業活動に伴う現金の出入りを示す報告書として ( )がある。これらをまとめて主要な( )という。 2. ( )市場における主な開示書類には、有価証券の募集または売出しを行う場 合に内閣総理大臣へ提出する有価証券( )と、投資家に直接交付する目論見 書がある。また、( )市場における主な開示書類には、内閣総理大臣に提出す る有価証券( )、四半期報告書、および臨時報告書がある。 3. 会社法では、財務諸表のことを( )と呼ばれ、株主総会が終了し計算書類が 報告または承認された後、遅滞なく( )をしなければならない。また、証券 取引所の要請により、1974 年から( )よって迅速に決算発表が行われている。 4. 財務諸表は、会計単位の観点から、( )財務諸表と( )財務諸表 に分類される。( )財務諸表とは、複数の企業で構成される企業集団を、1 つ の企業であるかのようにみなして作成する財務諸表である。企業集団において、他の会 社を支配している会社を( )会社といい、親会社によって支配されている会 社を( )会社という。 5. 会 計 情 報 が 果 た す 代 表 的 な 役 割 と し て 、( ) と ( )がある。会社の財務情報は、金融商品取引法と会社法の規制 を受ける。両法は立法趣旨を異にしており、金融商品取引法は、( )保護を目 的としており、会社法は、当事者間の( )や( )保護を目的とし ている。

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【問題 2】 次の文章が正しければ○を、間違っていれば×を記入しなさい。 会社法では、財務諸表のことを計算書類と呼ぶ。 会社法は、キャッシュ・フロー計算書の作成を要求している。 会社法と金融商品取引法では、目的が異なるので、財務諸表を作成するための会計 基準も異なる。 全ての株式会社は、計算書類を公告しなければならない。 決算短信は、適時な情報開示を目的として、金融商品取引法に定められている情報 開示の方法である。 四半期財務諸表は、3 ヶ月の四半期会計期間を対象として、年 4 回作成される。 連結財務諸表は、親会社が作成する。 金融商品取引法では、四半期財務諸表を作成する会社は、四半期個別財務諸表の作 成は求められていない。 会社法には、企業集団を会計単位とした連結財務諸表の考え方はない。 会社法では、四半期財務諸表の作成は求められていない。

参照

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