1
論 文】 日本 建 築 学 会 構 造 系 論 文報 告集 第 454 号・
1993年12月Journal of Sしruct
,
Constr,
Engng,
AIJ,
No.
454,
Dec.
、
1993地 震
時
の
室 内変 容
に
伴
う
人 的 被 害
危
険
度
評
価
に
関
す
る
研
究
そ の
1
居住
空間
危険
度マ イ クロ ゾー
ニ ングの提案
一
STUDY
ON
THE
EVALUATION
OF
SEISMIC
CASUALTY
RISK
POTENT
工AL
IN
DWELLINGS
Part
l
Indoor
−
zoning map ondwelling
space safety岡 田
成
幸
*Shigeyuki
OKAI
)A
This research provides the method of
“
indoor・
zoning”
of adwelling
by
which the probabilitypotentia至of suffering injuries or
death
due
to an earthquake canbe
evaluated、
As
a case studyseveral apartment
buildingS
damaged
in
theMiyagi−
ken・
oki earthquake of 1978 was estimated.
From
this analysis it is shown 止 at thelevel
of piobability potential of sufferinginjuries
differs
from
one space to another evenin
the same room and the spatial distribution of its potentiality canbe
visually und6rstood.
Such a method as proposedhere
should give us availableinformation
on
floor
planning』
and
furnishings
arrangement planningin
order to maintain indQor security agaihst earthquake.
KeyWOizlS
:seismicdisaster
,
caszealty,
earthqZtakedamage
assessment,
microxoning,
indOor−
sPacesafety
,
furnitUre
地 震 災 害
,
人 的 被 害,
地 震 被 害 評 価,
マ イクロゾー
ニ ング,
室 内空 間安全性,
家具1.
は じ め に 地震 時の人的被害軽減の重要性に鑑み, 死 傷 者 発 生 予 測 式が 国内・
外 を問わずこれまでに数 多 く提 案 されて い る。
なか で もKawasumii
}の 研究はよく知ら れ て お り,
死者数D ,
全 壊家屋数H
の間に以 下の関 係 式Dr10
疊
2×H .
L・
s……・
………一 ・
…一
・
・
・
・
…
(1) を提 案して い る。
多く の 研 究は こ れ に準 拠 し た もの と なっ て い る。
これか ら分か る と おrl t 死者 発生の主 た る 説 明変 数と して住 家 倒 壊 数 (ま た は率 )を採用 す る場 合 が多い。
す な わ ち,
地 震 時の家 屋 破 壊 発 生が大 前 提であ り, その付随的な結 果と して人 的 被 害の発 生を扱っ て い る。
確かに世 界 的に み ると,
1900年 代に発 生し た地 震 に伴 う 死 者の 75% 近 く が建 物 倒 壊が直接 的 原因で あ るz ,。 しか し,
と くにわ が国に おい て は,
家屋 が無傷でも家 具 転 倒な どに より室 内が散 乱す ること に起因 す る負傷 者 が極め て多い事 実を見逃 す わ けに はいか ない。
1993年 釧 路 沖 地 震で は電 灯 器 具 落 下に よ る 死 亡事 故も発 生し て い る。
1968.
年 十 勝 沖地震 以 降の構造耐震規 定の改 訂は 構 造 物の変形 能 確 保に重点が お か れ る よ うにな り,
地 震 時に瞬 時に破 壊す る脆性的 建 物 (す なわ ち,
地 震 時の家 屋 外へ の避難脱 出に猶予時 間の ない危 険な建 物 )の建 設 は減る方 向にあ り,
家屋倒 壊に よ る人 的 被 害の発 生 低 減 に向け改善の 途にあ る とい えよ う。一
方,
家 具は地 震 時 に は剛体 として挙 動し,
その転 倒は瞬 時の出 来 事で あ る。
家 具 転 倒 を含む2次 部 材 破 壊に伴 う人 的 被 害の その抑 制 手法 も積 極 的に考 究し て い く 必要が ある。 その重要 性に鑑み,
地震 時の家 具 転 倒に関す る研 究は 増え て きてい る。
家具 (剛 体)の転倒条 件を考察し た も の とし て Ishiyarna3〕,
振 動 台 を 使っ た家 具の転 倒 実 験 を 行っ た もの と し て田 代・
坪 田4 },
野口51ら がある。
地 震 後の転 倒の実 態を調 査し たもの と して 1978年 宮 城 県 沖 地震の高 層 集 合 住 宅にお け る建築 学 会 東 北 支 部6〕,
1987 年千 葉 県 東 方 沖 地 震の 高 層集合 住 宅にお ける岡田7) の調 査が あ る。 ま た志 賀ほ か 8}”
11) は その一
連の研 究で,
高 層 集 合 住宅 に お け る 地震 時の家 具 転 倒の予 測に関 する研 究 を,
初道・
鈴 木121は家 具 転 倒に伴う 室内 散 乱の計 量 法に っ い て提案して いる。 しか し,
住 居 内の死 傷 者 予 測は 「家 具の問題」の議 論のみでは不 十 分であ る。
その環 境 下に 人間がい てな ん ら かの行動の 結 果と して死傷 者が発 生 す * 北 海 道 大 学 工 学 部 建 築 工 学 科 助 教 授・
工博 Assoc.
Prof.
Dept,
of Architecture,
Faculty ef Engineering,
Hok.
kaido Univ
.
,
Dr.
Eng.
NII-Electronic Library Service る ので あ り
,
「人間の問題」を外し た アプロー
チで は真 の対策へ の接近は難しい。
筆者は,
地震時の室内変容に 伴 う 死 傷 者 発 生 を 単 純に家 具 転 倒 問 題の みに帰 着 さ せ る のでは な く,
人 間行 動と の絡み で議論す る。 ここ で留意 すべ きこ とは,
住 居とは居 間・
台 所・
寝 室な ど機 能・
広 さの全く異な る空間の集 合であり,
ま たそこに起居 して いる人 間の災 害 回 避 能 力 も個々 に異なる ことである。
し た がっ て,
場 所ご と・
人ご と・
時 間ご とに地 震 時の人 的 被 害 発 生の危 険 度は当 然異な る。
そ の違いを積 極 的に評 価し てい くこと が, 人 的 被 害 軽 減へ の 直接 的ア プロー
チ とな る。
そのた めに は,
既存の被 害 統 計 資料に もとつ い た従 来のマ クロ プロセ ス的 死 傷 者 発 生 予測式で は,
この 種の問題に は もはや無 力である。 住 居 空 間個 別の評 価法 を 開 発する必 要がある。 筆 者は,
予 測さ れ る室内の危険 度をマ イクロゾー
ネー
シ ョ ン の手法で評 価することを本 稿で提案す る。
2.
潜 在 危 険 度の 時 代 変 遷と地域間 隔差 わ が国で室 内の危 険 性を論じ る重要性につ い てその時 代 変 遷を概 観す ること で も う少し触れ て お き たい。
日本 の室 内 住 環 境は地 震 防 災の観 点か ら は安 全 側・
危 険 側の ど ち らの方 向へ 向か っ て い る の であ ろ う か。 こ れ は わ が 国の住 環 境 問題・
住 環 境 政 策と密 接な関 係に あ り,
マ ク ロ的 問 題 認 識と して理解してお くべ きこと で あ ろ う。
家 具 転 倒に よる人 的 被 害 発生の危険 性 を,
一
住家の延 べ床 面 積に対 する保 有 大 型 家 具の転倒面積比と して以下 の と お りに表 現 する。
(2
)式は家具転倒に伴う危 険 度 をマ クロ レベル で概 観す る もので あ り,
地震動入力は考 慮して いない。 ま た,
人間の存否を無 視して お り空 間 自 体がもつ 危 険度とい う意味で (マ クロ的 》潜在危険度と 称す る。 マ クロ的 潜在危 険度=
Σ大 型 家具転 倒 面 積 / 室 内 延 l べ 床 面 積 (ノ:家 具の種 類 )………・
……・
〔2
) 計 数 方 法は家 具に関す る渡 辺・
江口13)の研 究を参 考にす る。
す な わ ち,一
住 宅 当 た り延べ床 面 積を総理府 統 計 局 の住 宅 統計調 査報告14} よ り, 大 型 家 具の一
世 帯 当た り所 有数量に関して は同じ く全 国 消 費 実 態 調 査 報 告一
耐 久 消 費 財 編151よ り調べ た。
大 型 家 具は,
和 ダンス,
整理ダン ス, 洋 服 ダン ス,
鏡 台,
食 器 棚,
本 棚,
冷 蔵 庫,
洗 濯機,
白黒テレビ,
カ ラー
テレビ と し,
そ れ らの平 均的家具ス ケー
ル を建 築 設 計 資 料 集 成1“〕より定め た 。 た だ し,
家具 の大き さは時 代 と と もに変 化 する の で,
渡 辺・
江口13)に な らい , 1978年 以 前と以 降で値を変えて い る。 転 倒 面 積はそ れ ぞ れの家 具の 高さと幅の積で与えられ る。
危 険 度の 時 代 変 遷 をまず 見て み る。 潜 在 危 険 度を 1964年か ら1989年まで につ い て全 国お よび県単位で求 め,
図一
1に示す。 図には大都市圏 を抱え る代 表 として 東 京 都と大 阪府を,
都市圏 を含む県と し て愛 知 県・
福 岡一
40
一
0、
a5 2 2 0 臥 潜 在 危 険 度 51
5 1
」
O O ロ ロ(
転 倒 面 積 比)
難欝
\
L’
〉” rh−
;
gEiiElg−1Xs
−
s−
l
ge4ts _ク
/ 島根県 0 1964 1959一
軒 、 一 福岡 県 愛知 県 1914 年 197919S4 図一
1 住 宅のマ クロ 的 潜 在 危 険 度の時 代 変 遷一
1989;
1
}籍
25鰐
m210 5 05071
■
延べ床 面 積隊
!」
π一
霤一
一
・
図一
2〔a) 1964 69 74 79 84 89 年 全 国 平 均にみ る 室内 延べ床面 積・
家具 転 倒面積の増 加傾 向 35 30 面 Z5 積 増 20 分 15m2 1e 5 0一
5一
10 1964 69 74 79 84 89 年 図一
2(b)地 域 別にみ る 「安 全 空間」「危険空 間」の増加傾 向 県,
都市圏を含ま ない県と し て秋田県・
島 根 県 を示して あ る。一
般 的に,
危 険 度は1969
年 まで急 上 昇し,
その 後は微増傾 向を たどっ て い る。
図一
2(a)は全 国 平 均に つ い て延べ 床面積と家具転 倒面 積を1964
年 を 基 準にそ れ ぞ れ示 し た もの であ る。
わが 国は 1958年 頃か らの高 度 経 済 成 長 期に核 家 族 化が進み,
大 規模団 地・
マ ン ショ ン の建設を促 しだ71。
生 活 意 識の変 革が住 宅 規 模 拡 大に 作用し住環境は改 善 が 進む一
方で, 生 活ス タ イル の変 化 が耐 久 消 費 財 (大 型 家 具 〉の導入 を活 発 化さ せ住 宅の地 震 時 危 険性 も押し上 げて い た とい え る。 同 図をみる と,
N工 工一
Eleotronio Library】980年 頃まで は 1世 帯 当た りの家 具 暈の増 加が住 宅規 模 増 加を 」:回っ て いた が
,
耐 久 消 費 財に はある量 以 上に は増え ない漸近値が ある の で,
1979年 頃に住 宅 面 積の 増 加が家 具 量の増 加によ うや く追いつ いたといえ る。 し か し,
これ以 後わ が国の住 宅は安 全 化の方 向へ 向けて歩 み始め たといえる の であろ うか。
同 図 (b>は地 域 別に み たもの であり, そ の差は顕著 であ る。 地 方 (秋 田 県・
島根 県 )は室 内面 積の増 加が急 で,
い わ ゆる 「安全空 間 」が増 加し て い る と い え る の に 対し,
大 都 市圏 (東 京 都・
大 阪 府 )で は室 内 面 積は微 増 の状況に あ り, 安全 空 間の飛 躍的拡大は期 待しに くい。
しか も 図一
1に示さ れてい る よ うに大都市圏は地 方に比 較し約2倍 危 険 度が高い (全 室の約 25% が転 倒 面 積と な る)ことに注 目す る必 要 が ある。
室 内 面積を広げ るこ と が無 理 な らば、
室 内の どこが 安 全で危険なの か を判断 する室 内マ イクロ ゾー
ニ ングの重 要性が クロー
ズ アップ され てくる。
3.
住 居 空 間危険度マ イ クロ ゾー
ニ ングの方法 3.
1 死 傷 者 発 生 基 幹モデル地 震 時の室
内
にお け る家 具の転 倒・
散 乱に よ る人 的 被 害 発 生の概 念モデル とし て,
当 面 図一
3の関 係 を想 定す る。 地 震 動は建 物を揺り動かす。 その床 応 答 振 動の大き さ は 入 力地震動の強 さの み な らず,
建物の構 造 種 別・
階 数の影 響 を受け る。
床振 動 が 大 き く な る と2次 部 材 破 壊・
落下等の室 内被 害, 家具転 倒・
散乱は避け得ない。 家 具の転 倒はそのプロポー
ショ ンや転 倒 防 止 措 置の有 無 等に よっ て制 御さ れ て い る。
そ のよ うな状況 下にあっ て,
居 住 者が転 倒 家 具に よっ て負 傷する か否か は, 転 倒 散 乱 の激しさに加えて個 人の災 害 回避 行 動 能 力 が 関 与す る。 転 倒 散 乱の激し さ は,
居 室 面 積・
所 有 家具数・
家具 配置 計 画 等が影 響する であろうし, 行 動 能 力は性 別・
年齢・
病 気 等の個 人の属 性の他に地 震 発 生 時 間や直 前の行動 (役 割.
)等がか か わ りあっ て U)る に違いない]S)。
さ らに,
実 際に けが をす る かど うか は地震 発 生 時に室 内の ど こ に 特 性 地 震 被災アス ペ クト 地 震 動 家 具 建 物 応 答特 性.
階 数 被 害関 数 V ([} フ呼 の揺 れ 種 類・
被 害 程 度 転 倒 図一
3 室 内にお け る人 的 被 害 発 生 概 念モ デル い た か とい う偶 然性も 無視す ること は で き ない。 この よ うに極めて多くの要 因が複 雑に か か わ っ た結果 と して死 傷 者が 発生す る。
その因 果 関係の複雑 さの故に,
同一
家 屋内といえども負傷危 険性は空 間的に か な り不 均質に分 布してい る もの と 思 わ れ る。
こ の モ デル に従い,
室 内の 人 的 被 害 発 生 危険 度に関す る空 間的不均質性を確率 的に表現す ること を試み る。 あ る住 居 空 間A
の 中の 場 所x にhお け る け が発 生 危 険度をD
‘(x)(こ こ に,1
は人 的 被 害レベ ル を指し,
‘= 1を 軽 傷,
1=
2を重 傷と する)と すると, 住居空間A
の危険度はD,{A)
一
砂
蹠・
・
一 …・
(3) とな る。 住 居 空 間 A は連 続 空 間で あるが,
空 間 状 態の 把 握を容 易にする た めに住 居 空 間A を n 分 割し,
単 位 空 間に区 画す ると,
り
nD
に(A
)≒Dr=
ΣD
‘(Xi)・
…………・
…・
…・
・
……
(4
) t‘
t こ こ に Xt は区画番号とな る。
図一
3の モデル に従 L),
住 居 内の 単 位 区 画 Xt におけるある一・
人の 人 間の けが発 生 危 険 度D
,(x‘)を以 下の よ う に記 載する。 D,(Xi)= ・Prob
[BelXi
]Σi
V
ゴ(1
)S
」(Xt) J(1
− H
(1,
time ;age,
sex,
morbidity,
role ))}
・
・
、・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
…
rr・
…』
・
・
…
r…
r・
(5> こ こ に,Prob
[ ]1
以 下,
パ ラ メー
タを 省 略し た簡 略 記 載[ ]と する)は算 定 対 象とな る人 間が地 震 時に単 位 空 間 Xt に存 在する確 率 (所 在 確 率 ) を表し,
室 内の 家 具 配 置 計 画・
動 線・
時 間・
人問 属 性 等が関与す る確率 分 布 と して与 え る。
V
,(∬)は家具の 転 倒散乱確率で,
家具j
が散 乱 状 態S
」(Xi)に な る確率,
す な わ ち想 起さ れ る床振 動 (震 度1
) に対 す る一
種の被 害関数 (VulnerabilityFunction
)と して与え ら れ る。Sj
(x,)は家具 ノが散 乱す ること に よ り区 画Xi に その 家具が倒 れて く るか ど うかを示す 関数である。
数 値 的に は 1 (そ の区 画が散 乱する)また は 0 (散 乱し な い)の み を と る単 位ス テッ プ 関 数であ る。 な お,
j
は家 具の種 類を意 味し,
算 定 時に、
はその家 具の転 倒散乱に よ る 人的 被害 レベ ル1
を 考 慮 する。
た とえば 同一
家具で も家具 そ の もの の転 倒は重 傷 を惹 起する であろ う し,
家 具の 内容 物のみ が落 下して くる場 合は軽 傷に と ど ま るであ ろう。 す な わ ち,
ノは1
の関 数であ り,
正確にはj
(1
)と な る が,
簡 略 表 現 」と す る。H
は人 間の災害回避行動 能 力で床振 動の関数で あ る。
これに,
年齢・
性 別・
病気の有無・
家庭内で の役割 (地 震の最 中の行 動に影 響す る)お よ び時 間によ る補正関 数 を考慮す る。 ∬ は室内の床の揺れの強さで あり,
家屋へ の地震動入 力 (震度 )に建物応答特性・
階 数等を考慮し求め られ る。一 41 一
NII-Electronic Library Service こ こでは気 象 庁 震 度 階 相 当 値で表 現 する。 以 後の 解析で は震 度は, 小 数 点 以 下を四捨五 入 す る と気象庁震度相当 とな る有 効 数 字 2桁で表す。 両者を区別す る た め気 象庁 震 度はロ
ー
マ 数 字 記 載とする。 震 度は元 来地面の揺れ の 強 さの指 標であり,
こ こ では床の揺れ を相当値で表すの で床 応 答 震 度と仮に称すこ とにする。
こ の よ うに床 応 答 を震度で表すこ と によ り家 具 転 倒・
人 間 行 動を同一
尺 度 で議 論す ることがで きる。 こ の よ うに定 義し た場 合,一
人の人 間の人的 被 害 発 生 危 険 度D,(Xi}の定 義 域は,
地 震 時にその人 が居た単 位 空 間 Xt へ 倒れて い く と思わ れ る対 象家具が m 個の場合 0 ≦D
、(コcD≦ m と な る。
た と えば,
あ る場 所 x、に転 倒す ると思わ れ る家具が 2つ ある場 合は,
0≦D‘(エ」≦2であ る。
数 値が大きい ほど人 的 被 害 発 生 危 険 度は高く なる。
対 象 家 具が1つ の場 合D,(Xt)の値は確 率と同等の意 味 を もつ。
D‘(Xl)は人 的 被 害 レベル 1 (軽 傷・
重 傷 )ごと に 算 定されるが,
関 連 する転 倒 散 乱 事 象が複 数か か わっ て くると予 想 され る場 合, 定 義 式 よりD
、〔Xt)は 1以 上 とな る。
こ の場合,
複 数の事 象が発生する可能 性が高い こと を示し ており,
値が大き く な れ ば被 害レベ ルが 上 がる(軽 傷は重 傷へ,
重傷は死へ )と考え れ ば良い 。 その閾 値の 議 論は後 述す る。
3.
2 パ ラメー
タの定 義 (5
)式のD
,〔x,)は以 下の ように書き換え ら れ る。
D」(xi)
=
Prob [Belxi
]Pot [コc』Hmn [.
]・
…・
(6)こ こ に
,
Pot [コc凸=
Σ V,(1)Sy
(Xi)……’
…”………’
(7)j
Hmn [ ]
=
1− H
(1,
time ; age,
sex,
mobidity,
role )
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
…
『
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
…
(8
)Pot
[x‘]、に は人は関与し ない。 区 画 Xt に もの が倒れて くる か どうか とい う空 間 自体が持つ 危 険 度,
すな わち潜 在 危 険 度であ る。 従 来,
家 具 転 倒にか か わ る室 内被 害 問 題は人 間 を考 察の外にお くこと が多く,
い わばこ こ で い うPot [ ]と 同 等の議 論に終 始して い たとい え よう。
け が発 生が実 際に顕 在 化す る か ど う か はこれに人 間行 動 を 100 50 被 害 率 % o 図一
4〔の 100 50 被 害 率 %→
気 象 庁 震 度 家 具上の置 物の落 下 確 率 VJ(Dl
文 献19)による)厂
o 一
ゼ
気 象 庁 震 度 図一4
(b) 家 具の転 倒 確 率VJ
(1)(文 献19)に よる ) 考慮 す る (5 ) (6)式の モデ ル に よっ て はじ めて扱い 得る。
Pot
[ ]を構 成 する家 具の転 倒 確 率V
,(D
は家 具に関 する被 害 関 数で ある。 岡田・
鏡 味 19 〕 は 57 種の 被 災 対 象 につ い て東 京 都の震 度 階 解 説 表を定 量 化す るこ とに より 求 めてお り,V
,〈1
)は そ れ を用い る (図一4
)。 そ の関 数 型は以 下の正規 分 布 関 数で与え ら れ る。V・(・〉
一
詰
。ズ
exp [一
(・一
・〃 (・・2)]・dlt
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
…
一
一
・
・
・
・
・
・
・
・
・
…
(9
) 1。は家 具 ゴが転 倒す る平 均 震 度, σ はその ば らつ き (標 準 偏差)で あ る。
詳し くは文 献 を参 照され たいc.
家 具の 転 倒 a謂・
日 置物 落 下wH
翁
鯉1
。・π ,2,
,・ (W/2)2・(闘/2)2,
日富
(Hl十H2)/2 内 容 物 散 乱 a=(田+2r)・
眠/4+πr2/2 家 具 転 倒 及 び内容物 散 乱 e=[・(・2・舳
(一・pm
)}]/・ H=
Hl/2 図一
5 家具 転 倒 散 乱 状 態 算 定式 (文 献12}に補 筆)一 42 一
割 合 % 100 O l 且 3 4 5
、
6 7 気象 庁 震 度 図一
6 人 間の災 害回避 行 動能 力 Hmn [ 」 (文ma
19}よ り) 1.
0 5 0.
0 行 動 能 力 補 正 愼 D1 5 0 行 動 能 力 補 正 値 0 10 20 30 40 50 60 年 齢 図一
7 人 間 属性に よ る災 害回避行動 能 力補正関 数 0 3 6 9 12 15 18 21 時 間 図一
8 時間に よ る災害回避行動 能 力 補 正 閧 数 家 具 散 乱 状 態S
丿(Xi).
の算 定 方 法は初 道・
鈴木1z} を参考 に図一
5と し た6 散 乱の パ ター
ンを ユ) 直 方 体の家 具が 倒れ る場 合,
2 )家 具の上の置物が落 下す る場合,3
>家 具の内 容 物だ け が散 乱 する場 合,
4) 家具 が倒れ内 容 物 も散 乱す る場 合に 4分 類し,
人 的 被 害に影 響する転 倒・
散 乱 面 積が示 さ れてい る。
実 際の 散 乱面 積は よ り広い と 思 われ る が, け がに 直結す ること を考えて いるの で初 道・
鈴 木が与えた散 乱 域よ りも狭い範 囲を与え ている。
(8)式の Hmn [ ]は人間に か か わ る項である
。
人間の災 害 回避行 動 能 力H [1
,
time ;age,
sex , morbidity,
role ]は健常な成 人 男 子につ い て求め ら れて い る19 ]。 図一
6には被害回 避がで き ない累 積 確 率 (Hmn [ ])が震 度の関 数 と して示 さ れて い るtg )。
関数 型 は家 具 転 倒の場 合と同様,
正規分布関 数であ る。 災害回 避 能 力は性 別・
年 齢 等の人間 属 性に よっ て異な る。
それを補 正 する関 数・
と し て図一
7を用意する 。 これ は直 井・
宇 野 ωに よる 日 常 災 害にお け る年 齢 構 成 別 負傷 者 頻 度か ら求めた もので ある。
図で は 日常災害に よ る年 齢 別死傷 率を,
65歳 以 上を基準に し逆数表示してあ る。 す な わ ち,
日常 時の 死 0.
9 被 0.
8 害 0.
7 晃 0.
6 生 D,
5蔑
1
:l
0.
2 O.
1 1 0.
9 0.
8 受 O・
7 傷 O.
6 可 O.
5 能 o.
4 性 o.
3 0.
2 0.
1 0 受 傷 (軽 傷 〕の可能 性 受 傷 (重 傷 )の可能 性 0 ! 234567 気 象 庁 震 度 図一
9一
人の人 間の受傷可能性 (文献19>より)O.
8
0,
6 負難
・,
4 24 時 % O.
204
.
5 5 5.
5 気象庁震度 図一
10 震度と負 傷 率の関 係 〔文 献18) より) 傷 率の低い年 代ほど 災 害 回避行動 能 力は高い と し た。 地 震 時における女 性の負 傷 率が男 性よ りも 高いの は よ く見 ら れ る現 象であrp 18},
こ れ は地 震 時の女 性に課せ られ た 役割 (弱 者の保 護 等 )の 多さに よ る’
ものなのかもし れな い。
ま た 図一8
は地震発 生時間に よ る行 動 能力低 下を模 式 化した もの であるが,
日本 人 平 均の起 床 時 間:1)か ら導 いた もの である。
熟 睡 時の行 動 能 力 を0, 昼間の行動能 力を1
と して与え た。 (6
) 式か ら所在閧 数Prob
[ ]を除いた もの は,一
人の人が 区画Xi に居た と し た と きの家 具 転 倒に よる そ の人の けが 発 生 危 険 度で あ る。 これ を図示す る と図一
9 の よ うに な る19)。
す な わ ち,
家具が転倒す る確率 V
,(1
)(家 具の被 害 関 数)にその人の災 害 回 避 能 力 関 数 (Hmn [.
]) を掛け合わ せ るこ.
とに より評 価で きる (同 図 下 段 }。 図一10
は震度と負 傷率 (人口 に対す る負 傷 者 発 生 率 )の 関係をい くつ かの 地 震.
につ いて調べた もの である1% 図一
9は一
人の人 聞のけ が 発生 危 険度で あ り,
図一
10は対一 43 一
NII-Electronic Library Service 受 偈 可 能 性 震 度 図
一
11 床応 答震度と受 傷 (無 傷,
軽 傷,
重 傷 )可 能 性 D[(Xt ) の関 係 象と な る人 間母 集 団に対するけが の顕 在 化 度 (発生 率 ) で あ るの で, 数 値 的に同一
の もの とする に は,
図一
9に さらに人 間 母 集 団の特 性 (た と えばProb
[ ]の偶然性 等 )も考慮しな くて はならないが,
内 容 的には ほ ぼ 同一
の もの と理 解で きよ う。 両 者を比 較す る と震 度に対す る 負 傷 確 率の上昇 傾 向は極めて よ く似て いる。
図一10
よ り負 傷は震 度y
の 中 程 度 (震 度4.
9
)く らい か ら始ま り震 度 とともに増 加 するのが分か る’
。 こ の 関係よ り,
図一
9で等 震 度に ほ ぼ対応 す る受傷可 能性0.
8
を け が 発生 の 閾 値 と 当 面 してお く。
同 図によれば成 人男 子健 常 者の 軽 傷の 発生は震 度 5,
1 (V
中程 度 )か ら, 重 傷は震 度 6.
2 (W
中程 度 )か ら とな る。 以上述べ てきたDl
(Xi)=Pot
[ ]Hmn
[ ]………・
・
…………
(10) は, (5
) (6
)式か ら か な り偶 然 性の高いProb
[ ]を 切り離 した もの で あり,
この値を仮の けが発 生 危 険 度 (Prob
[]も考 慮し た (5) (6)式の D‘(x,)と区 別す る た めに受 傷 可 能 性 と称 する)と み なすこともで き る。 すなわ ち,そ の空 間に対 する そ の人の もつ 危 険 度であり,
こ れを 単 位 区画ごと に評 価する ことに よ り,
重 傷また は 軽 傷の受傷 可 能 性 を個 人 属 性 をパ ラメー
タ と する震 度の 関 数と して求める ことがで き る。 これは また図一
1ユ に 示すよう な床 応 答 震 度一
受 傷 可 能 性の相 関図 とし て表す こと がで き る。 受 傷の可 能 性は同 図に示さ れ る よ うに,
重傷と軽傷の和事 象 (OR
事象 )と し て計算す る。
最 後に,
地 震 時 の 所 在 に 関 す る 確 率 関 数 Prob [Be
「x、]であ る が,
これ は社会習慣・
個 人の生 活ス タ イ ル に加え て極めて偶 然 性に左 右され る部 分が多く,
一
概 に決 め 難い側 面がある。
場合に応じ て判 断する必要があ る (後述す る算定例において一
例 を示 す )。
単位 区 画ごとの危 険 度の ち がい に着 目する の が室 内の 人 的 被 害 発 生に関するマイクロゾー
ニ ングで あるが,
区 画 値を以 下の よ う に合 計す ることに より,
全 居 室 空 間 A (室内ご と あ るい は住 戸ごと)の危 険 度 特 性 値に指 標 化 す ることが でき,
様々 な条 件に お け る居 室の比 較 考 察 が可 能と な る (下式は 〔4 )式 と同 等であ る)。
の
n Dt;
Σ{Prob [ ]Pot
[ ]Hmn
[ ]}………
(ユ1> t’
t一 44 一
書
+ + }・
…
.
.
.
・
・
?
・
.
・
……
・
・
喉
寝墾
i
+ レ9
十 蜘 十 ± 下 誌 丁土.
:
E … } +臨
比
+i
+ i+ … 十 十 十.
・
十 十 十 十 十 十 十 十 台 所 十 十 パ昌 コニー
70c冂1 図
一
12 鶴ヶ谷 団 地の住 戸 平 面 図4.
室 内危険度ゾー
ニ ングの算 定 例 4.
1 鶴ヶ谷 団地の概 要 筆 者 らは宮 城 県 沖 地 震 (1978年6
月12EI午俊5
時,
M7 .
4 )の 直 後に,
仙 台 市 北 東 部の丘 陵 地 帯にある鶴ヶ 谷 団 地 (5階 建て公 団ア パー
ト)で面接に よ る 「地 震 時 の人間行動調査」を行っ て い る22}。 この資料 を も とに こ こ に提 案の室 内の人 的 被 害 危 険 度評価を試み る。 図一
12は住 戸の平 面 図で あ る。
日本 住 宅公 団 が 供給 してい る もの で,一
戸 当た り の専 有 面 積はベ ランダを含 め41.
6m2
で,2
居室 (6
畳と 4,
5畳 )に食 堂 と 台 所が一
室と な っ たい わ ゆ る 2DK の住 戸 プラ ン で ある。
1978 年現在の 日本の平均 居 室面積 (80.
28m2 )の約 半 分で あ り狭いN)。 利用形態は, 食堂と6
畳の部屋との境 を取り 去り 1室の居 間と して利用し,
4,
5畳の部 屋 を寝 室と し ているのが一
般 的で あっ た。
震 度 調査に よれ ば.
,
地 震時 この アパー
トの床 応答震 度は 1階で 5.
3 (震 度V
の中程 度 相 当),
5階で 5.
8 (震 度 班の低 相 当 )の揺れ であっ た。
地 震の 発 生 時 間 を 午 後 5時 と し,
健 常な 30歳 代 主婦 につ い ての人的被 害発生 危 険度を算 定す る。 図一
13 家 具配置 例 (住戸 [A]の場 合 ) N工 工一
Eleotronio Library図
一14
全 家 具の転 倒 散 乱 状 況 (住 戸 [A]の場 合) ・.
・…C
日
コ
0.
00.
00.
0 0.
0 0、
0 0.
0 0.
0 0.
0 0.
00.
0 〔}.
00.
00.
00 β 0.
050.
0 °・
°口
0.
0 0、
00.
0 o.
o・
°500・
PO
,
00.
00.
0[]
O.
00.
0 〔c) 床 応筝
震度5・
4の場合 0.
440.
44.
0・
00,
0 0.
730.
00.
00.
0 ・.
・ ・.
bC 羽
O.
d
:
:
:
]
0.
00.
00、
00.
0感
口
口
口
0,
0 0.
0 0■
0 0.
OD.
00.
00.
OO.
00.
O O.
446.
00.
OQ・
PO
.
0 〔〕,
0 0.
OO.
O O.
00.
0 (a ) 床応 答 震 度4.
8の場 合 (d) 床応 答 震度 5.
8の場合 ・1
噺 ・皺’
… の場 合… 床 応 ・鰤
・
2の・合 図一
15 受傷可能性D{〔Xt)のゾー
ニ ングマ ップ (住戸.
[A]の場 合〉一 45 −
NII-Electronic Library Service 4
.
2 室 内 危険度ゾー
ニ ング 図一
13に評 価 例と して取 り上 げた住 戸 [A]の家具配 置を示す。 この世 帯は地 震 発 生 時,
30歳 代の 主 婦 と5
歳以 下の子供 2 名の家族 構成で,
所 有し て い る大 型 家具 は洋 服 ダンス,
整 理 ダン ス,
食 器 棚, 冷 蔵 庫, 洗 濯機, 仏壇,
鏡 台,
テレビ各 1,
本 棚 3で こ の 団地 内におい て は所 有家具が 比較的 多い例で あ る。
し か し,
当 時の全国 平 均で は和 ダン ス (1.
3),
洋 服ダン ス (1.
5),
整 理 ダン ス (2.
0
), 鏡 台 (1.
1
}, 食器棚 (1.
9
),
本 棚 (1.
5),
冷 蔵 庫 (1.
1), 洗 濯 機 (1.
1),
テレ ビ (1.
7 )と なっ て お り (括 弧 内は平均 所有数畳5 り, 決して 多い 方で は ない。 住 宅 床 面 積による制 限の ため, む し ろ必 要最低限 の もの し か持ち込んで いない とい うべ き かもし れ ない。
これ ら の家 具が 全部 倒れ,
内 容 物が散 乱し たと仮 定し た場 合の 状況が図一
14に示さ れて い る。 家 具の大き さが これ か ら推察で き よ う。 室 内 を70cm の 単 位 区 画に分 割し, その 区 画ごとに (10)式 より算 定し た受 傷 可 能 性 が 図一
15中の数 値で ある。
床 応 答 震 度は 4.
8か ら6,
2 (人 間の災 害 回 避 能 力 O とな る震 度 )で計 算し ている。
同 図で は先の考察よ りDi
(xD=
O.
8 を けが発 生 顕 在 化の 閾 値 とし,
コ ンター
を 引い てあ る。 震 度が大き く な るに伴い危 険 空 間が広がっ て い くの が よ く 分 かる。
30代の 主婦に とり,
この住 戸 で は震 度4.
8程 度で す でに居 間に危 険 空 間が発 生してい る のが 分か る。
まt
図よ り,
危 険 度に相当の空 間 的 偏り が ある こ と が分か る。
風 呂・
トイレ が地震時に安 全な空 間を保 持して い るの に対 し,
生 活の中心 とな る居 間・
寝 室が危 険であ る。 さらに,
外 界へ の唯一
の脱 出口である 玄関も散乱が激 しい こと が分か る。
この住 戸は宮 城 県 沖地震の時は床 応 答 震 度は 5.
8相 当 の揺れで あっ た。 こ の 図か ら,
宮 城 県 沖 地 震では居 間と し て使 用 し て い る空 間が特に危 険で あっ た こ とが 分か る。
事 実, こ の地 震の時, こ の住戸の主婦は居 間の本棚・ ロ
・ 玄 関ホ
ー
昆 台 所 玄 関 ロ ロ ロ 外 図一
16 住 戸 〔A]の避難 脱 出 経 路 〔■ :確 保,
[コ:寸断 ) の前に い て,
その転 倒に よ り け が を してい る。
この住 戸の場合問題な の は,
就寝中で行動回避能力 が0
と な る寝室に家 具が多く配 置さ れてい ることである。 加え て重 傷に結びつ く重 量 家 具 も寝 室に配 置さ れ て い る。
災 害 回 避の でき ない状 況 下で の危 険 度が高い のは極 めて問題であ る。 脱 出 路の観点か ら見て みよ う (図一
16 )。
こ の 団地の 平 面 計 画か ら脱 出 路は寝 室→ 玄 関ホー
ル→ 玄 関一
+外と寝 室→
居 間→
台 所→
玄 関ホー
ル→
玄 関→
外の2
本のルー
ト が ある。
し か し こ の住 戸で は寝室→
玄関ホー
ル の ルー
ト は家 具により平 常 時 より閉 鎖さ れてい る。 ま たも う一
つ のルー
トも生 活場 が避 難経路と なっ て お り家具散 乱で3
箇 所が寸 断され てい る。
住み慣れた家であっ て もこ の よ うな状況 は, 夜間停 電 時に お い て は特に問 題と な ろ う。
家 具 配 置 計 画を見 直 す必 要 性が高い と言え よ う。 図一17
は同 室の区画ご と に み た床応答 震度と受 傷可 能 性の 関 係である。
図中に プロ ッ ト した点は 1区 画ごと の危 険 度Dl
〔コ匚∂であ り,
同一
住 戸で も場 所によ る 危険 度 のばらつ き具 合が見て取れ る。
す な わ ち,
震度が小さ く て も居 場 所によっ て は け が を す る可 能 性が0
と は言い切 れ ない場 合が あ る し,
他 方,
震 度が大き くて も幸 運に も け が を し ない場 合も あ ること が極めて よ く分か る。 そ の ばらつ き具 合は震 度が大き くな ればな る ほ ど顕 著に な る。
こ の こと を同 図 中, 網のか かっ ている部 分に着 目し 4 3 2 受 傷 可 能 性 1 0 4 4.
5 5 5.
5 6 床 店 答 霞 度 (気 象 庁 震 度 階 〕 点 :区画ご との受 傷 可 能 性 Di幅 ) 実線 ;宮 城県沖地震の時の住戸[Aユの け が発 生 危 険 度D, 点線 :居 間で食事 中を 想定し た時の住 戸 [A] 6.
5 の け が発 生 危険度」)犀 図一
17 床 応 答 震 度と受 傷 可 能 性の関係 〔住 戸 [A]の場 合 }一 46 一
N工 工一
Eleotronio Libraryて説 明し て みよ う
。
これは 1個以下の 家 具が転倒 対 象 と な る区 画に相 当す る。 震 度が大き く な る と家 具の転 倒確 率は高くな る。
そ し て震 度 6.
2を越える と災害回避 能力 は 0で かつ 転 倒 率は 100% と な る た め , 家 具が倒れて くる区 画は危 険 度が 1に,
家 具が倒れて こ な い区 画は危 険 度0を 保 持する。
すな わ ち,
居 住 区 画は震 度が大き く なる につ れ絶 対 的に危 険か, 安 全か の いずれ かと なる、
。 同 様に, 震 度の増 加に伴い危 険 度2に収 斂 して いる区画 は転 倒 家 具が 2個の場 合,
危 険 度3に収 斂し て いく区画 は転 倒 家 具が 3個の場 合と理 解でき る。そ の結 果と して,
震度増 加に伴い危 険 度の ば らっ き が大き く なっ てい く。 こめこと は震 度増加に伴い居 住 空 間は全体 的に危 険 空 間 へ と変 貌して いく が一
方で安 全な空間も保持 され てい る こと を示し て お り, こ の安全 空 間 を積 極 的に広 げ確保し て いくこと が計 画の観 点か ら極めて重 要 な 災 害 対策の ア フロー
チである ことを示唆してい る。 図一
IB 宮城 県 沖 地 震の時の主 婦の所 在 確 率Prob [ ユ [%] ・.
・・.
・(:1
1A 12 け 1s が 発 生 es 危 険 e6 度 臼A 4.
3 住 戸の危 険 度特性 値 図一17
を住戸の危険度 特性値に指標 化 する ために は,
地 震 時の所 在 す な わ ち (11)式中の Prob [BelXi ]の考 慮が必 要であ る。 こ の アパー
トに住む主 婦 達の地 震 直前 の分 布が調べ ら れ てい る21切 で,
これを もとに こ の時 間 の 主婦の所 在に関す る確 率 密 度 分 布 Prob [ ](%)を 求め,
図一
ユ8
に示す。 こ の 時 間,
団 地 内の主 婦は確 率 的に み て住居内の どこにい る か を示し たもの である。
宮 城県沖地 震 発生は午 後5
時前後で あっ た た め主 婦の 多く は台 所で食 事の準備を してい た よ うであ る。 (11)式に おいてこ の確 率 密 度 分 布 を考 慮 し, 全 区 画の危 険度の総 和 をとっ た の が 図一
17に お ける実 線で あ る。
こ れ がこ の住 居に住む主 婦の午 後 5 時に お け る・
け が発生危険 度D
,で あ る。 こ こ.
に地震 が襲来し た と す る とt け が発 生 顕 在 化の 閾 値 を 0.
8
と す る な ら ば,
同 図中、
実線が0.
8を 越え る震度5.5
(震度W
の下 限)以 上で床が揺れ た場合 に け が が発 生す る状態に あっ た といえ る。
す でに述べ た と お り,
こ の住居は 震 度.
5.
8
で揺れ,
主 婦は負傷している。
こ の団地 は,
住 居 プランか ら台 所は居 間の片隅に位 置 し て お り,
食 器 棚 等の不 安 定な家 具は台 所から離れて配 置さ れている場合が多い 。 そ の結果,
台 所の流し台の前 は 比較的安全 な 空 間 と なっ て い る (図一
15)。 図一
17に おいて, 受傷可能性を示す各点の ばらつ き に比べ,
実 線 が 比 較 的 低い (安 全 )値 を示して いるの はこ の た めであ る。
主 婦の多くがこ の団 地で は比 較 的 安 全な流し台の前 に居たと きに地 震が発 生し たのが幸い し たといえ る。
た O.
O0.
00.
0 0.
00.
0 整 理 至 ン ス 0.
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0 O・
00・
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・
44國
0.
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O.
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0,
0 0。
0 0,
0 図一
19 家 具 配 置別例と その受傷可 能性Dl(Xi) (住 戸 [B]の 場 合,
床応 答 震 度5.
8> 日264AtA12 け 11 が 発 EB 生 危 臼 β 険 度 臼A 日2 4S 50 55 6A 6S 臼 4』 45 5B 55 5』 6五 床 応答震度 図一
20 住 戸の けが発生 危 険 度D,の比 較 (tt’
城 県 沖 地 震 を想 定 し た場 合 }一
47
一
NII-Electronic Library Service だ し こ れ は
一
般に言え るこ とでは な く,
わが 国の場 合,
台所は狭く危 険 空 間と な る可能性が高いZ3)。
こ の住 宅の 場 合, 地 震が食 事 中に発 生し た と仮定す る と状 況は か な り悪 く な る。 この家で最も危 険な居 間に居るときに地 震 が 襲 来し た と して (ll )式よ り危険度を算 定し たの が 図一
17の点 線であ る 。 危 険度は前 者の2− 3
倍 程 度に高ま る。
2本の線の 違いは地 震の発 生 時 間 帯に よ り危 険 度が 大き く異な るこ と を示し た もの で も ある。
こ の世 帯の場 合,
け が 回避の た めの なんら かの対 策 を とる必 要があ ろ う。
家 具 転 倒か ら身 を守る た め の事 前 対 策と して 「家 具 の壁面へ の固定」が推 奨されてい る が4L24 〕,
これですべ て が解 決 するとは思わ れ ない。 その有効性がい わ れ てい る にもか か わ らず,
実施率は極め て低い (東京 消防庁の 調査25 )で は実 施 率は東京 都 23.
8%,
釧 路 市10.
9% で ある)。
その理 由と して,
固定は技 術 的に かなり錐しい。 家 具に傷をつ け ること もあり,
心 理 的に実 施し た く な い。
防 止 措 置は日常 生活に不 便 ある い は な じま ない細 工 となっ て しまうこと が ある。 配置場 所に固 定す べ き 有 効な構 造 体が ない。 間仕切 り壁に固 定した な ら ば,
壁 ごと倒れ て くる こ と も 考 え ら れか えっ て危な い。 家具は 壁に固 定 して お け ば良いと断 言できる ほ ど事柄 は 単 純 で は ない。
図一
19 は同 じ団 地 内の別 住 居[B 〕で ある。
家 族 構 成 は夫 (30代 )妻 (20代)子 供 (5歳 以 下3名 )で あ る。
同様の家 族 構 成に も か か わ らず 前 世 帯に比べ所 有 家 具が 少な く,
し たがっ て安 全 空 間が保 存さ れて いる の が 分 か る (震 度5.
8
の 場合 )。
図一
20は宮 城 県沖地 震を想 定し 前 世帯と比較し た床応 答 震 度一
けが発 生 危 険 度の相関図 であ る が,
世 帯 [B
]の場 合,
気 象庁震度W
を越え てもけ が発生 危険度は O.
8 を越え な い極めて安全性の高い住 居 とい うこと ができ る。
ただし, 寝 室の中 央に危険ゾー
ン が存 在 する な ど問 題が ないわ けで は な い。前 世 帯 [
A
]の場 合,
所有 家具の数は全 国 平均では決し て多い方では な く,む し ろ必 要 最 低 限に近い とい えよ う。
しか し ながら,
地 震 安 全 性の観点か ら は住居面 積に比し 適 正 量を越えて いる とい わざるを得ない。
後 者の例にみ られ る よ うに生 活ス タ イル を見 直し,
適 正家 具の選 択・
家具配置 計 画・
動 線・
転 倒 防 止 策の施行等の総 合的かつ き め細か な防 災 対 策が重 要 視さ れ るべ き で あ る。
わ が家の防災 を考え る 場 合, まずどこが危 険な場 所で あるの か を把 握す るこ と が大 切で ある。
本 方法に よ る ゾー
ニ ング に よ り危 険箇 所 を具 体 的に ラ ンキング す るこ と ができ る。
ま た,
各室に少な く とも 1箇 所は何も転倒 して こない安 全 空 間を確保して お くべ きであ ろ う。 そ し て そ の場所を各人 が 認 識し て おくべ きであろう。 本方法 はその安 全 空 間を見つ けだすの に役 立 と う。
ところで,
こ の シ ミュ レー
シ ョ ンモ デ ル は地震 動 強さ を震 度で表現す ることによ り家 具 転 倒・
人 間 行 動を統一
一
48
一
的に扱い得た結果に よ る。
本 方 法は震 度 利 用の有 用 性を 示す も ので も あ る。
5.
お わ り に地震 国であ り な が ら狭い住 宅に住まわ ざるを得ないわ が国に あっ て, 室 内に おける人 的 被 害 予 測は極め て重要 な問 題で あ る
。
本 論 文は関 連 研 究の出発 点を与え ること を 目的に,
室 内の け が発生危険度をミクロ的に シ ミュ レー
ショ ン し て評 価す る方法 を 提案し た。
防 災は現状 認 識が その第一
歩であ る。 本方 法は地 震 時の わ が家の危 険 空 間・
安全 空間 を視 覚 的に しっ か りと 把 握できる点で有 効 と考え る。
本 論ではけが の発 生 を 家 具 転 倒の み に押し つ け た が, 1993年 釧 路 沖 地 震で は寒 冷 地に お け る冬 季 発 生の地 震とい うこともあり熱 傷 も多く み ら れ た。 日本 の場 合,
火 事の問 題 も避けて通るわ けに は い か な い。
こ れ らの問 題 も基 本 的には本 論で展 開 した震 度 利 用による 被 害 関 数 を用い た方 法で議 論で きよ う。 また,
本モ デル で は室 内 散 乱お よび 人間 行 動に閧し て時 間 関 係を考 慮 し ない 静 的 扱い をし ている。
これらは本 来,
動 的に扱うも の であり,
それにより受 傷・
災 害 回 避がより実 態に近い 形で シ ミュ レー
シ ョ ン で きる であ ろ う。 引き続き行っ て い く予 定であ る。
本 研 究 遂 行に当た り,
当 研 究 室の鏡 味 洋 史 教 授,
村 上 ひ と み助 手, 坂 井 忍 助 手に は多く の議 論 を頂 戴した。
記 して感 謝い た し ます。 本 研 究は平 成2年 度 文 部 省 科 学 研 究 費 奨 励 研 究 (A
)「地震 時の人的被 害 発 生 危 険 性に閧 す る居 住空間マ イク ロゾー
ニ ン グの提 案 」(課 題 番 号 :02855144,
代表者:岡田成幸 )の補助を受け たこ と を付 記 する。
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