栄 養 学 雑 誌Vol. 62 No. 6 311∼321(2004)
総
説
食後 高脂 血症 と動脈硬化
田
中
明
関東学院大学人間環境学部健康栄養学科
Review
of Postprandial
Hyperlipidemia
and Atherosclerosis
Akira Tanaka
Department of Health and Nutrition, College of Human and Environmental Studies,
Kanto-gakuin University
Development in 1993 of the remnant like particle (RLP) method for conveniently measuring the serum
rem-nant lipoprotein level prompted many studies onthe atherogenic significance and metabolism of remnant lipoproteins.
A novel apolipoprotein B48 receptor incorporating remnant lipoproteins into macrophages in the arterial wall was
dis-covered, and the genetic structure of the receptor was clarified. The expression of apolipoprotein B100 was
recog-nized in the human small intestine, suggesting that dietary very-low-density lipoproteins (VLDL) might be
synthe-sized in the human small intestine and converted into VLDL remnants and low-density lipoproteins (LDL).
It is recognized that the atherosclerotic risk of postprandial hyperlipidemia is derived from an increase in
rem-nant lipoproteins and that measuring the serum RLP level in the postprandial state is more sensitive and necessary
for evaluating the atherosclerotic risk, because serum RLP maintains a high level all day in patients with diabetes
mellitus or coronary heart disease. The relationship between postprandial hyperlipidemia and insulin resistance was
clarified.
Jpn. J. Nutr. Diet., 62 (6) 311•`321 (2004)
Key words : postprandial hyperlipidemia, remnant lipoprotein, RLP, atherosclerosis, apoB48 receptor
緒 言 1979年 のZilversmitの 報 告1)以 来,食 後 高 脂 血 症 は動 脈 硬 化 の 危 険 因 子 と して 注 目さ れ て い る｡本 稿 で は,食 後 高 脂 血 症 の 動 脈 硬 化 リ ス ク の成 因 と して トリグ リセ リ ド(TG)リ ッチ リポ 蛋 白,特 に,レ ム ナ ン トリ ポ蛋 白 (レ ム ナ ン ト)の 増 加 に 注 目 し,動 脈 硬 化 性 疾 患 との 関 係 を検 討 した｡ レ ム ナ ン ト リ ポ 蛋 白 とRLP レム ナ ン トは カ イ ロ ミク ロ ン レム ナ ン トお よびVLDL レ ム ナ ン トの2種 類 存 在 す る(図1)｡小 腸 で 食事 由 来 の 脂 質 を原 料 と して生 成 され る カイ ロ ミク ロ ン は,血 中 に 分 泌 され た 後,そ の 豊 富 に 含 有 す るTGが 血 管 内 皮 表 面 に存 在 す る リボ蛋 白 リパ ー ゼ に よ り水 解 され,小 粒 子 化 ,して カ イ ロ ミク ロ ン レム ナ ン トに な る｡カ イ ロ ミク ロ ン レム ナ ン トは,肝 の レム ナ ン ト受 容 体 に速 や か に取 り込 ま れ る｡一 方,肝 で 合 成 され た 脂 質 を原 料 と して肝 で生 成 さ れ るVLDLは,血 中 に 分 泌 さ れ た 後,カ イ ロ ミク ロ ン と 同様 に,豊 富 に含 有 す るTGが リボ 蛋 白 リパ ー ゼ に よ り水 解 され,小 粒 子 化 してVLDLレ ム ナ ン トに な る｡VLDLレ ム ナ ン トは 肝 の レ ム ナ ン ト受 容 体 に取 り込 まれ る か,肝 性TGリ パ ー ゼ に よ りさ ら にTGが 水 解 さ れ て コ レス テ ロ ー ル リ ッチ に な りLDLに 変 換 され る｡ レム ナ ン トは｢残 り物｣と い う意 味 で あ り,カ イ ロ ミ ク ロ ン お よ びVLDLが 代 謝 され た｢残 り物｣の リ ボ 蛋 白 とい うこ とに な る｡カ イ ロ ミク ロ ン,VLDLお よび レ ム ナ ン トのTG含 有 量 は そ れ ぞ れ,85%,55%,25% で,こ れ らの リ ボ 蛋 白 はTGを 豊 富 に含 む こ とか らTG リ ッチ リポ蛋 白 と呼 ば れ る｡レ ム ナ ン トは 非 常 に代 謝 が 速 い こ とが特 徴 で,健 常 者 の場 合,早 朝 空 腹 時 の 血 中 に は ほ とん ど含 まれ な い｡ レ ム ナ ン トは,変 性LDLと 同様 に,動 脈 壁 の マ ク ロ フ ァー ジに 容 易 に取 り込 まれ,マ ク ロ フ ァー ジの 泡 沫 化 を促 進 し,動 脈 硬 化 巣 を形 成 す る こ とが指 摘 され て お り, キ ー ワ ー ド:食 後 高 脂 血 症,レ ム ナ ン ト リ ポ 蛋 白,レ ム ナ ン ト様 リ ボ 蛋 白,動 脈 硬 化,ア ポB48受 容 体 (連 絡 先:田 中 明 〒236-8501横 浜 市 金 沢 区 六 浦 東1-50-1関 東 学 院 大 学 人 間 環 境 学 部 健 康 栄 養 学 科 電 話045-786-7832
栄 養 学 雑 誌 図1レ ム ナ ン トリ ポ 蛋 白 とRLP RLPは カ イ ロ ミ ク ロ ン レ ムナ ン トお よ びVLDLレ ム ナ ン トを反 映 す る｡ 図2レ ム ナ ン ト リ ポ 蛋 白 の 動 脈 壁 に お け る 代 謝 と 動 脈 硬 化 レ ムナ ン ト リポ蛋 白 は,変 性LDLと 同様 に,容 易 に 動 脈 壁 マ ク ロ フ ァー ジ に取 り込 まれ,マ ク ロ フ ァー ジの 泡 沫 化 を促 進 し,動 脈 硬 化 巣 を形 成 す る｡ 高 レ ム ナ ン ト血 症 は 以 前 か ら 動 脈 硬 化 の 危 険 因 子 と し て 知 ら れ て い た2)(図2)｡し か し,こ れ ま で,血 中 レ ム ナ ン トを 簡 便 に 測 定 す る 方 法 が な か っ た た め 臨 床 的 に は 馴 染 み の 薄 い 存 在 で あ っ た が,我 々 は,1993年 に,血 中 レ ム ナ ン ト値 を 簡 便 に 測 定 で き る レ ム ナ ン ト様 リ ボ 蛋 白 (Remnant like particles:RLP)法 を 開 発 し,現 在 で は 臨 床 レベ ル で も 大 量 の 検 体 を 簡 便 に 測 定 で き る よ う に な っ た3,4)｡血 中 レ ム ナ ン ト値 は,RLP法 に よ りRLPコ レ ス テ ロ ー ル(RLP-C)ま た はRLPト リ グ リ セ リ ド (RLP-TG)値 と し て 測 定 さ れ る5)｡RLP法 が 開 発 さ れ た 結 果,国 内 外 で レ ム ナ ン トに 関 す る 研 究 が 盛 ん に な り, 多 く の 成 果 が 報 告 さ れ,現 在 で は,高 レ ム ナ ン ト血 症 は 動 脈 硬 化 の 危 険 因 子 と し て,臨 床 的 に 注 目 さ れ る よ う に な っ た｡ レ ム ナ ン ト リ ポ 蛋 白 と 動 脈 硬 化 RLP法 が 開 発 さ れ て か ら,レ ム ナ ン トの 動 脈 硬 化 惹 起 メ カ ニ ズ ム に つ い て の研 究 が 盛 ん に な っ た(図3)｡ す な わ ち,変 性LDLと 同 様 に,RLP(レ ム ナ ン ト)も マ ク ロ フ ァー ジ に容 易 に取 り込 まれ る こ とが 確 認 され, マ ク ロ フ ァー ジの 泡 沫 化 を促 進 し,動 脈 硬 化 病 変 を形 成 す る こ とが 示 唆 され た6)｡ま た,RLP(レ ム ナ ン ト)が 増 加 す る と,血 小 板 凝 集 能 が 充 進 して 血 管 内 血 栓 を形 成 す る こ とが示 され た｡ Saniabadiら は7),心 筋 梗 塞 で 突 然 死 した患 者 の 血 液 か ら採 取 し たRLP(レ ム ナ ン ト)を 用 い て 血 小 板 凝 集
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図3高RLP(レ ム ナ ン ト)血 症 の 動 脈 硬 化 促 進 メ カ ニ ズ ム
高RLP(レ ム ナ ン ト)血 症 で は,① マ クロ フ ァー ジへ の 取 り込 み が亢 進 す る,② 血 小 板 凝 集 能 が 尤 進 す る,③ PAI-1活 性 が亢 進 す る,④ 血 管 内皮 機 能 が 障 害 され る,⑤ 平 滑 筋 細 胞 の 増 殖 が亢 進 す る,⑥ 単 球 の 内皮 へ の 接 着 を亢 進 す る｡
PAT-1 : plasminogen activator inhibitor-1
能 を 検 討 し た と こ ろ,RLP(レ ム ナ ン ト)の 量 を 増 加 さ せ る ほ ど,凝 集 は亢 進 す る こ と を 示 し た｡プ ラ ス ミ ノー ゲ ン は 活 性 化 さ れ て プ ラ ス ミ ン に な り,プ ラ ス ミ ン は 血 栓 中 の フ ィ ブ リ ン を 溶 解 す る(血 栓 溶 解)が,RLP(レ ム ナ ン ト)が 増 加 す る と,プ ラ ス ミ ノ ー ゲ ン か ら プ ラ ス ミ ン へ の 生 成 を 抑 制 す るPAI-1(plasminogen activa-tor inhibiactiva-tor-1)が 増 加 し,血 栓 溶 解(線 溶 能)を 抑 制 す る こ と が 示 さ れ た｡ Sakataら は8),冠 動 脈 疾 患58例 に お い てRLP-C値 と PAI-1値 の 強 い 正 相 関 を 認 め,RLP(レ ム ナ ン ト)増 加 はPAI-1活 性 を亢 進 す る こ と に よ り,線 溶 能 の 障 害 を 生 じ血 栓 形 成 を 促 進 す る こ と を 指 摘 し て い る｡さ ら に, Kugiyamaら は9),RLP(レ ム ナ ン ト)が 増 加 す る と, ヒ トの 冠 状 動 脈 の 内 皮 細 胞 依 存 性 の 血 管 弛 緩 反 応 が 障 害 さ れ る こ と を 示 し て い る｡ 血 流 中 の 単 球 は 血 管 内 皮 細 胞 に ま ず 接 着 し,内 皮 細 胞 間 の 間 隙 か ら血 管 壁 に 潜 り込 ん だ 後 に マ ク ロ フ ァ ー ジ に 変 換 さ れ る(図3)｡我 々 は,RLP(レ ム ナ ン ト)の 増 加 に よ り,U937単 球 の 血 管 内 皮 細 胞(ヒ ト膀 帯 血 管 内 皮 細 胞)へ の 接 着 が 亢 進 す る こ と を 確 認 し,イ ン テ グ リ ン を 介 す る シ グ ナ ル 伝 達 を 明 ら か に し た10)｡ま た,コ レ ス テ ロ ー ル 合 成 を 阻 害 す る 抗 高 脂 血 症 剤HMG-CoA還 元 酵 素 阻 害 剤(ス タ チ ン)は,RLP(レ ム ナ ン ト)増 加 に よ るU937単 球 の 血 管 内 皮 細 胞 へ の 接 着亢 進 を 抑 制 す る こ と を 示 し た10)｡こ の よ う に,ス タ チ ン が 血 清 脂 質 を 下 げ る の と は 別 の メ カ ニ ズ ム に よ り抗 動 脈 硬 化 作 用 を 示 す こ と を,ス タ チ ン のPleiotropic effectと い う｡ 血 管 内 皮 の マ ク ロ フ ァ ー ジ は 流 血 中 の 単 球 由 来 の も の 以 外 に,血 管 壁 中 膜 の 平 滑 筋 由 来 の も の が あ る(図3)｡ 我 々 は,RLP(レ ム ナ ン ト)の 増 加 に よ り血 管 壁 平 滑 筋 細 胞 の 増 殖 が 亢 進 す る こ と を 確 認 し た｡ブ タ の 冠 動 脈 壁 の 平 滑 筋 細 胞 にRLP(レ ム ナ ン ト)を 様 々 な 濃 度 で 添 加 す る と,濃 度 依 存 性 に 平 滑 筋 細 胞 増 殖 の亢 進 を 認 め た11)｡ ま た,平 滑 筋 細 胞 増 殖 はRLP(レ ム ナ ン ト)の 酸 化 変 性 の 有 無 で 差 を 認 め な か っ た11)｡さ ら に,最 近,我 々 は, RLP(レ ム ナ ン ト)刺 激 に よ る 平 滑 筋 細 胞 増 殖 の亢進 は epidermal growthfactor(EGF)受 容 体 の 活 性 化 を 介 す る こ と を 示 し,そ の シ グ ナ ル 伝 達 を 明 ら か に し た12)｡ 臨 床 検 討 で も,高RLP(レ ム ナ ン ト)血 症 が 動 脈 硬 化 性 疾 患 の 危 険 因 子 と な る こ と が 示 さ れ て い る｡米 国 の FraminghamHeartStudyで は13),2,821例 を 対 象 に し た 冠 動 脈 硬 化 危 険 因 子 の 多 変 量 解 析 の 結 果,女 性 に お い てRLP-C値 の 増 加 が 冠 動 脈 疾 患 の 危 険 因 子 と し て 有 意 に 選 択 さ れ た｡ま た,Kugiyamaら は14),冠 動 脈 疾 患 135例 を 約3年 間 経 過 観 察 し た 結 果,RLP(レ ム ナ ン ト) の 高 値 群(RLP-C5.1mg/dl以 上)は 低 値 群(RLP-C3.3mg/dl以 下)に 比 し,冠 動 脈 イ ベ ン トの 発 生 率 が 高 , い こ と を 報 告 し て い る｡こ の 他 に も 高RLP(レ ム ナ ン ト)血 症 が 動 脈 硬 化 の 危 険 因 子 と な る こ と を 示 す 多 く の 報 告 が あ り15,16),そ の 結 果,2000年 に は,米 国 のU.S. Food and Drug Administration(FDA)に よ り高RLP
(レ ム ナ ン ト)血 症 は 冠 動 脈 疾 患 の 危 険 因 子 と し て 認 め ら れ た｡
食 後 高 脂 血 症 の本 体
図4健 常 例 に お け るOFTTク リ ー ム 負 荷 に よ る 脂 質 変 動 *p<0 .05,**p<0.01,***p<0.001:負 荷 前 値 に 対 し て 有 意 あ る17)｡総 コ レス テ ロー ル(TC)お よ びHDLコ レス テ ロ ー ル(HDL-C)は 脂 肪 負 荷 前 後 で ほ とん ど変 動 を示 さな い が,TG,RLP-Cお よびRLP-TG値 は負 荷 後 に 著 明 な増 加 が 認 め られ,脂 肪 負 荷 後 の 高 脂 血 症 の指 標 と して 有 用 で あ る こ とが 示 され た｡高TG血 症 はTGリ ッ チ リポ 蛋 白で あ る カ イ ロ ミク ロ ン,VLDLお よ び両 者 の 中 間 代 謝 産 物 で あ る レム ナ ン トの 増 加 に よ り生 じる が, 動 脈 硬 化 の リス ク と して は レム ナ ン トが もっ と も重 要 で あ る こ とか ら2),脂 肪 負 荷 試 験 あ るい は食 後 高 脂 血 症 の 指 標 と して は レム ナ ン トが も っ と も有 用 で あ る｡す な わ ち,食 後 高 脂 血 症 の 本 体 はTGリ ッチ リポ 蛋 白,特 に, レム ナ ン トで あ る と考 え られ る｡ 食後 の レム ナ ン ト増 加 の 原 因 と して は,レ ム ナ ン トの 異 化 代 謝 に 関 わ る リ ボ蛋 白 リパ ー ゼ 活 性 お よ び 肝性TG リパ ー ゼ活 性 の低 下 お よび 肝 に レ ムナ ン トを取 り込 む レ ム ナ ン ト受 容体 活性 の 低 下 が 考 え られ る｡イ ンス リ ン抵 抗 性 の 状 態 で は,リ ボ 蛋 白 リパ 壁 ゼ,肝 性TGリ パ ー ゼ お よび レム ナ ン ト受 容 体 活 性 の 低 下 が 認 め られ る｡ま た, レム ナ ン ト高 値 例 に ア ポE2の 頻 度 が 高 い こ とが 示 さ れ て お り4),肝 の レム ナ ン ト受 容 体 へ の 結 合･取 り込 み 障 害 が 考 え られ る｡レ ム ナ ン トに含 まれ る アポEに はE2, E3,E4の3種 類 が あ り,遺 伝 的 に 規 定 さ れ て い る｡E3 は 自然 型 で あ る が,E2を 含 有 す る レ ム ナ ン トは レ ム ナ ン ト受 容 体 へ の 結 合 能 が 著 し く低 い｡ 食 後 高 脂 血 症 の 意 義 図5は,健 常 例 お よび 冠 動 脈 疾 患 例 の脂 肪 負 荷 試 験:に お け るRLP-C値 の 変 動 を示 した 結 果 で あ る18)｡健 常 例 は負 荷 に よ り軽 度 の 増 加 を認 め た が,負 荷 前 後 と もに カ ッ トオ フ値(RLP-Cの 空 腹 時 カ ッ トオ フ値 は7.5mg/dl) 以 下 に と ど ま った｡一 方,冠 動 脈 疾 患 例 は全 例 著 明 な上 昇 を認 め,負 荷 前 に は カ ッ トオ フ値 以 下 で あ る が,負 荷 後 に は 著 明 に増 加 す る例 を多 数 認 め た｡こ の よ うな症 例 は,空 腹 時 の み の 測 定 で は動 脈 硬 化 リス ク を見 逃 して し ま う危 険 が あ り,食 後 の 測 定 が よ り感 度 が 高 く,重 要 で あ る こ とが わ か る｡ 図6は,健 常21例 と2型 糖 尿 病28例 のRLP-C値 の 日 内 変 動 を示 した 結 果 で あ る19)｡朝,昼,夕 食 前 と各 食 後 2時 間 お よ び23時 のRLP-C値 が 測 定 され て い る｡健 常 例 で は 変動 が 少 な く,カ ッ トオ フ値 を超 え る時 間 は わず か で あ る が,糖 尿 病 例 で は,朝 食 前 の み 低 値 とな り,他 の 時 間 は1日 中 高 値 を持 続 して い る｡こ の 結 果 か ら も, 糖 尿 病 例 で は1日 の 大 部 分 で 高RLP(レ ム ナ ン ト)血 症 を 認 め,鋭 敏 に冠 動 脈 リス ク を評 価 す る た め に は空 腹 時 の み の測 定 で は 不 十 分 で あ り,食 後 のRLP-C値 を測 定, 評 価 す る 必 要 が あ る こ とが 確 認 され た｡ 一 般 に,現 代 人 は1日3回 の 食 事 以 外 に も頻 回 に 間食 を摂 取 して お り,1日 の う ち の 大 部 分 が 食 後 の 状 態 に あ る と考 え られ る｡図4の 結 果 で,脂 肪 負 荷 後8時 間 た っ て もRLP値 は負 荷 前 値 に戻 ら な い こ と か ら,真 に 空 腹 状 態 に あ る の は,1日24時 間 の うち 朝 食 前 の2∼3時 間 に す ぎな い と考 え られ る｡こ の 結 果 か ら も,よ り感 度 の 高 い 動 脈 硬 化 リス ク を評 価 す る に は,1日 の 大 部 分 を 占 め る 食 後 の 測 定 が 必 要 で あ る17)｡ 食 後 高 脂 血 症 の 評 価 食 後 高脂 血 症 を評 価 す る に は脂 肪 負 荷 試 験 が 有 用 で あ る が,研 究 者 に よ り負 荷 脂 肪 の 種 類･量,測 定 脂 質,測 定 時 間 な どが 異 な る た め,結 果 の 比 較 が 困 難 で あ っ た｡ 食 後 高脂 血 症 の 評価 法 を確 立 す るた め に は,こ れ らの要
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図5冠 動 脈 疾 患 お よ び 健 常 例 に お け る 脂 肪 負 荷 に よ るRLPコ レ ス テ ロ ー ル 変 動 の 比 較 CAD:冠 動 脈 疾 患,カ ッ トオ フ値:7.5mg/dl
図62型 糖 尿 病 例 お よ び 健 常 例 に お け るRLPコ レ ス テ ロ ー ル 値 の 日 内 変 動 の 比 較 BB:朝 食 前,AB:朝 食 後,BL:昼 食 前,AL:昼 食 後,BD:夕 食 前,AD:夕 食 後,23h:23時
因 を統 一 す る 必 要 が あ る と考 え,我 々 はOFTTク リー ム(表1,上 毛 食 品 工 業 ㈱,群 馬)と い う負 荷 脂 肪 を用 い て,統 一 した脂 肪 負 荷 試 験 を確 立 す る た め に基 礎 デ ー タ を集 め て い る17)｡ 図4に 示 し た脂 肪 負 荷 試 験 はOFTTク リー ム が 使 用 さ れ て い る｡検 討 の 結 果,負 荷 脂 肪 の 量 が 多 くな る ほ ど, RLP-C値 の ピー ク時 間 が 遅 くな り,ピ ー ク値 が 高 くな る こ とが 示 さ れ た17)｡体 表 面 積(m2)あ た り負 荷 脂 肪 量30gで は ピー ク 時 間 が4時 間 後,17gで は2時 間 後 で あ っ た｡負 荷 脂 肪 の量 が多 くな る と,下 痢 な どの 消 化 器 系 の 障 害 が 出 現 す る こ とが あ るが,体 表 面 積(m2)あ た り脂 肪 量17g以 下 で は 障 害 の 出 現 を認 め なか っ た｡ ヒ トが 日常 摂 取 し て い る の は脂 肪 の み で は な い の で, 脂 肪 負 荷 試 験 に よる 食 後 高 脂 血 症 の 評 価 は不 自然 で あ る と の考 え もあ る｡そ の よ うな 考 え か ら,ヒ トが 日常 摂 取 して い る食 事 内容 を含 ん だ テ ス トミー ル の 開 発 が 検 討 さ れ て い る｡糖 尿 病 に お け る 経 ロ ブ ドウ糖 負 荷 試 験 につ い て も,ブ ドウ糖 の み を摂 取 して 血糖 値 を評 価 す るの で あ り,同 様 の 問題 を含 ん で い る｡ま た,最 近,食 後 高 血 糖 も動 脈 硬 化 の リ ス ク と な る こ とが 指 摘 され る よ う に な り20),食 後 高 脂 血 症 と食 後 高 血 糖 を 同 時 に 評 価 で ぎ る よ うな テ ス トミー ル が糖 尿 病 学 会 で 試 作 され,検 討 され て い る｡ 負 荷 試 験 そ の もの が 日常 臨 床 の 中 で は 時 間 的 に困 難 で あ る との考 え もあ る｡し た が っ て,負 荷 試験 を す る に し て も,で きる だ け簡 便 な もの が 望 ま しい｡例 えば,自 宅
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表10FTTク リ ー ム の 構 成 で テ ス ト ミー ル を摂 取 して来 院 して も らい,一 定 の 時 間 に,一 度 の み の 脂 質 測 定 で 評 価 す る方 法 もあ る｡ 糖 尿 病 の場 合,随 時血 糖 が200mg/dl以 上 で あ れ ば糖 尿 病 と診 断 す る との 基 準 が あ るが,同 様 に,負 荷 試験 は せ ず,随 時 の 採 血 に よ る脂 質 値 で評 価 す る こ と も考 え ら れ る｡こ の 場 合,随 時 の 脂 質 値 で動 脈 硬 化 性 疾 患 リス ク を 評価 で きる か,動 脈 硬 化 性 疾 患 リス クが 増 加 す る脂 質 基 準 値 が存 在 す るか,が 問 題 で あ り,信 頼 で きる多 数例 で の検 討 が 必 要 と な る｡ 動 脈 硬 化 リ ス ク と し て の 食 後 高 脂 血 症 食後 高脂 血 症 が 冠 動 脈 疾 患 の リス ク とな る こ とを示 し た報 告 は 多 数 あ るが,そ の 一 部 を以 下 に示 す｡ 我 々 は,冠 状 動 脈 造 影 に よ っ て冠 状 動 脈 の有 意狭 窄 が あ っ た33例 と,な か っ た24例 で,年 齢,BMI,空 腹 時 のTC,TG,HDL-C,RLP-C,RLP-TG,LDL-C値 を マ ッチ させ てOFTTク リー ム(脂 肪 量 と して 体 表 面 積(m2)あ た り30g)を 使 用 して 脂 肪 負 荷 試 験 を行 っ た21) (図7)｡RLP-Cお よ びRLP-TG値 はOFTTク リ ー ム負 荷 前 に は両 群 で 差 が な か っ た が,負 荷 後2時 間 お よび4 時 間 後 に 有 意 差 を 認 め た｡こ の 結 果 は,食 後 の 高RLP (レ ム ナ ン ト)血 症 が 冠 動 脈 疾 患 の リ ス ク に な る こ と を 示 す｡ Patschら は22),冠 動 脈 疾 患61例 と冠 状 動 脈 造 影 に よ り異 常 を 認 め な い 対 照40例 にお い て,脂 肪 負 荷 試 験 を 行 い(体 表 面 積(m2)あ た り65.2gの 脂 肪 を 負 荷),負 荷 前,負 荷 後2,4,6,8時 間 に採 血 し,TG値 の変 化 を 両 群 で比 較 した｡そ の 結 果,冠 動 脈 疾 患 例 の脂 肪 負 荷 後 ピー クTG値 お よ び8時 間 ま で の 脂 肪 負 荷TG変 化 曲 線 下面 積 は対 照 例 よ りも有 意 高 値 を認 め た｡ま た,脂 肪 負 荷 後6時 間 お よび8時 間TG値 は,冠 動 脈 疾 患 の 有 無 を 68%の 正確 度 で 予 測 で きる と報 告 して い る｡ そ の 他 に も,非 空 腹 時TG値 が 冠 動 脈 疾 患 と強 い 関係 に あ る こ と を示 したStampferら23),Isoら24)の 報 告 が あ る｡Stampferら は,非 空 腹 時TG値 が100mg/d1増 加 す る と,心 筋 梗 塞 リス ク は40%増 加 す る と報 告 して い る｡ Isoら は,非 空 腹 時TG値 が89mg/d1増 加 す る と,冠 動 脈 疾 患 リス ク は26%増 加 す る と報 告 して い る｡ 図7冠 動 脈 疾 患 お よび 対 照 にお け るOFTTク リ ー ム 負 荷 後 のRLPコ レ ス テ ロー ル お よ びRLPト リグ リ セ リ ド変 動 の 比 較 :冠 状 動 脈 造 影 に よ っ て 冠 状 動 脈 の 有 意 狭 窄 が あ っ た 33例 :冠 状 動 脈 造 影 に よ っ て 冠 状 動 脈 の 有 意 狭 窄 の な か っ た24例 年 齢,BMI,空 腹 時 のTC(総 コ レ ス テ ロ ー ル),TG (ト リ グ リ セ リ ド),HDL-C,RLP-C,RLP-TG,LDL-C値 を マ ッ チ さ せ てOFTTク リ ー ム(脂 肪 量 と し て 体 表 面 積(m2)あ た り30g)を 使 用 し て 脂 肪 負 荷 試 験 を 行 っ た｡ 食 後 高 脂 血 症 の 診 断 基 準 現 在,食 後 高脂 血 症 を診 断 す る統一 され た 基 準 は な い｡ RLP値 あ る い はTG値 が 用 い られ る わ け で あ る が,こ れ ら脂 質 値 は,様 々 な要 因 に よ り変 動 を受 け やす く,変 動 幅 が 大 きい こ とが 基 準 値 を決 め る 障害 に な っ て い る｡し か し決 定 的 な問 題 は,基 準 値 を決 め る エ ビデ ンス とな る デ ー タが 少 な い こ と で あ る｡こ こで は,非 空 腹 時TG値 と冠 動 脈 疾 患 リス ク と の 関 係 を 検 討 し た報 告 を 紹 介 す る｡ 12,866例 の 男 性 を対 象 と した 一 次 予 防 無 作 為 臨床 試験 で あ るThe Multiple Risk Factor Intervention Trial(MRFIT)の サ ブ 解 析 で,非 空 腹 時TG値 と冠 動 脈 疾 患
と の 関 係 が 検 討 さ れ て い る25)｡対 象 を 非 空 腹 時TG値
200mg/dl以 上1,724例 と200mg/dl未 満1,085例 に分 け
て,25年 間経 過 観 察 に よ る冠 動 脈 疾 患 死 亡 率 お よび8年
Vol. 62 No. 6 図8非 空 腹 時 ト リ グ リ セ リ ド値 と冠 動 脈 疾 患 死 亡 率25) 非 空 腹 時 トリグ リセ リ ド200mg/dl以 上 例 と200mg/dl未 満 例 に お け る25年 間 経 過 観 察 に よ る冠 動 脈 疾 患 死 亡 率 の 比 較｡10年 後 か ら有 意 差 を認 め た｡ 図9非 空 腹 時 トリグ リセ リ ド値 と冠 動 脈疾 患発 症 リス ク 非空腹時 トリグ リセ リ ド値 と冠動脈疾患発症 リスクは直 線的な比例関係 を認めた｡ 比 較 し,い ず れ も200mg/dl以 上 例 は200mg/dl未 満 例 よ り も 有 意 に 高 率 で あ っ た と 報 告 し て い る(図8)｡ベ ー ス ラ イ ン の 非 空 腹 時 平 均TG値 は200mg/dl以 上 例 376mg/dl,200mg/dl未 満 例139mg/dl,LDL-C値 は そ れ ぞ れ,160mg/dl,158mg/dlで あ っ た｡こ の 結 果 か ら, 少 な く と も 非 空 腹 時TG値200mg/dl以 上 と 未 満 と で 冠 動 脈 疾 患 リ ス ク が 異 な る こ と が わ か る｡ Isoら は24),11,068例(男 性4,452,女 性6,616例)を 対 象 に 平 均15.5年 間 経 過 観 察 し て,非 空 腹 時TG値 と 冠 動 脈 疾 患 発 症 リ ス ク と の 関 係 を 報 告 し て い る｡対 象 を 非 空 腹 時TG値 に よ っ て,1群(83.3mg/dl未 満),2群(83.3 ∼114 .9mg/dl),3群(114.9∼164.9mg/dl),4群 (164.9mg/dl以 上)に 分 け,各 群 の 冠 動 脈 疾 患 発 症 の 相 対 リ ス ク を 検 討 し た 結 果,1群 の 相 対 リ ス ク を1.0と す る と,2群1.67,3群2.00,4群2.86とTG値 の 上 昇 に 従 っ て 相 対 リ ス ク は 増 加 し た(図9)｡こ の よ う に,非 空 317 腹 時TG値 と冠 動 脈 疾 患 発 症 リ ス ク は 直 線 的 な比 例 関係 を認 め,空 腹 時TG基 準 値 で あ る150mg/dlよ り も低 値 の83.3mg/dlで も,こ の 値 以 上 例 と未 満 例 とで リス ク に 差 を認 め て い る｡す な わ ち,食 後 高 脂 血 症 の冠 動 脈 疾 患 リス クは,低 けれ ば低 い ほ ど減 少 す る と考 え られ る｡ イ ン ス リ ン 抵 抗 性 と 食 後 高 脂 血 症 イ ンス リ ン抵 抗 性 あ るい は内 臓 型 肥 満 を背 景 に して 高 TG血 症,低HDL-C血 症,耐 糖 能 異 常,高 血 圧 な ど の 動 脈 硬 化 リス クが 重積 し,こ れ ら因 子 が 関 連 しあ っ て動 脈 硬 化 を発 症 す る病 態 が 報 告 さ れ て お り,Reavenら の シ ン ドロ ー ムX,死 の 四 重 奏,イ ンス リ ン抵 抗 性 症 候 群, 内臓 脂 肪 症 候 群,危 険 因子 重積 症 候 群,最 近 で は メ タ ボ リ ック症 候 群 な ど と呼 ば れ て い る｡こ の 病 態 は1つ の 疾 患 単 位 で あ り,動 脈 硬 化 の 高 リス ク状 態 と考 え ら れ る｡ 我 々 は,Reavenら との 共 同研 究 で イ ンス リ ン抵 抗 性 と 食 後 高 脂 血 症 との 強 い 関連 性 を報 告 して い る26)｡ 我'々はOFTTク リー ム を用 い た脂 肪 負 荷 試 験 に よ り, イ ンス リ ン抵 抗 性(高 イ ンス リ ン血 症)の あ る2型 糖 尿 病 で は,脂 肪 負 荷 後 のRLP-Cお よびRLP-TGが 高 値 で あ る こ と を示 した26)｡す な わ ち,'759ブ ドウ糖 負 荷 試 験 に よ り新 た に2型 糖 尿 病 と診 断 さ れ た66例 の うち,負 荷 後120分 の イ ンス リ ン値 が80μU/ml以 上 で,負 荷 前, 負 荷 後30,60,90,120,180分 の6回 の イ ンス リ ン値 の 和(ΣRI)が300μU/m1l上 の15例 を高 イ ンス リ ン血 症(す な わ ち イ ンス リ ン抵 抗 性)糖 尿 病 群,負 荷 後120 分 の イ ンス リ ン値 が80μU/ml未 満,ΣRI値 が250μ U/ml未 満 で,年 齢,性,BMIを マ ッチ した15例 を正 常 イ ンス リ ン血 症 糖 尿 病 群 と し,両 群 お よび 健 常 群10例 に お い て 脂 肪 負 荷 試 験 を 行 っ た｡脂 肪 負 荷 試 験 は, OFTTク リー ム を脂 肪 量 と し て体 表 面 積(m2)あ た り 17g負 荷 し,負 荷 前,負 荷 後2お よ び4時 間 にRLP-C, RLP-TGな どの 脂 質 を測 定 し た｡脂 肪 負 荷 に よ りTC, HDL-C,血 糖 値,イ ン ス リ ン値 は ほ とん ど変 動 を認 め な か っ た が,TG,RLP-Cお よびRLP-TG値 は著 明 な 増 加 を認 め た(図10)｡糖 尿 病2群 は4時 間後 に ピ ー ク と な っ た が,健 常 群 は2時 間 後 に ピ ー ク と な り4時 間 後 に は低 下 を認 め た｡ま た,脂 肪 負 荷 前 値 か ら負荷 後2お よ び4時 間値 の 増 加 量 の和 は,高 イ ンス リ ン血 症(イ ン ス リ ン抵 抗 性)糖 尿 病 群 が正 常 イ ンス リ ン血症 糖 尿 病 群 よ り も有 意 高 値 を認 め た｡ Reavenら は,糖 尿 病 の み で な く,健 常 例 で もイ ンス リ ン抵 抗 性 の あ る 群 は食 後 のRLP-Cが 高 値 とな る こ と を示 して い る27)｡ こ の よ うに,イ ンス リ ン抵 抗 性 の状 態 で は 食 後 高 脂 血 症 を認 め,動 脈 硬 化 進 展 の リス ク とな る こ とが 示 され て い る｡
栄 養 学 雑 誌 図10高 イ ン ス リ ン 血 症2型 糖 尿 病(H-DM),正 常 イ ン ス リ ン 血 症2型 糖 尿 病(N-DM)お よ び 健 常 例 (CTL)に お け る 脂 肪 負 荷 前 後 の ト リ グ リ セ リ ド,RLPコ レ ス テ ロ ー ル お よ びRLPト リ グ リ セ リ ドの 変 動 図11腸 管 に お け る ア ポB100合 成 と代 謝 腸 管 由来 のVLDL,VLDLレ ム ナ ン ト,LDLが 示 唆 さ れ た｡ 図12動 脈 壁 マ ク ロ フ ァ ー ジ の 受 容 体 酸 化LDLを 取 り込 む ス カ ベ ン ジ ャ ー 受 容 体 と は 異 な る レム ナ ン トを取 り込 む ア ポB48受 容 体 が 発 見 さ れ た｡ 食 後 高 脂 血 症 に 関 連 し た 新 知 見 1.小 腸 で の ア ポB100発 現 ア ポBは,小 腸 で 合 成 さ れ る カ イ ロ ミ ク ロ ンの 構 成 成 分 とな る ア ポB48と,肝 で合 成 されVLDLの 構 成 成 分 と な る ア ポB100の2種 類 が 存 在 す る｡我 々 は,ア ポB48 の み で な くア ポB100も 小 腸 で 合 成 さ れ る こ とを確 認 し た28)｡こ の 結 果 は,食 事 由 来 の脂 肪 を原 料 と し小 腸 で合 成 され るVLDLの 存 在,さ ら に 動 脈 硬 化 の リ ス ク で あ るLDLに 代 謝 さ れ る 可 能 性 を示 唆 し,食 後 高 脂 血 症 の 意 義 の増 す こ とが 考 え られ る(図11)｡ 2.ア ポB48受 容 体 の発 見 レム ナ ン トを含 むTGリ ッチ リポ 蛋 白 を取 り込 むマ ク ロ フ ァー ジ上 の アポB48受 容体 が 発 見 され,ク ロ ー ニ ン グ され た29)(図12)｡こ の 受 容 体 は ア ポEで は な く,ア ポB48を 認 識 して 結 合 す る,ア セ チ ルLDLは 結 合 しな い こ と か ら,ス カベ ン ジ ャー 受 容 体,LDL受 容 体 と は 異 な る新 しい 受 容 体 で あ る こ とが示 され た｡ア ポB48受 容 体 遺 伝 子 は3つ の イ ン トロ ン と4つ の エ ク ソ ンか らな り,16番 染 色 体 短 腕 に 存 在 し,cDNAは3744bpか ら, 蛋 白 は1,188個 の ア ミ ノ酸 か ら な る こ とが 明 らか に な っ た30)｡我 々 は,ア ポB48受 容 体 の抗 体 を 用 い た 免 疫 組 織 染 色 に よ り,動 脈 硬 化 巣 で の存 在 を確 認 した29)｡こ の結 果 は,食 後 に増 加 す る レ ム ナ ン トは ア ポB48受 容 体 を介 して動 脈 壁 の マ ク ロ フ ァー ジ に取 り込 まれ,泡 沫 化 を促 進 し,動 脈 硬化 巣 を形 成 す る可 能 性 を示 唆 す る｡ 3.食 後 高 脂 血症 の 治療 に つ い ての 新 知 見 フ ィブ ラー ト系 の 抗 高 脂 血 症 剤 で あ るベ ザ フ ィ ブ ラ ー トは,脂 肪 負 荷 後 のRLP(レ ム ナ ン ト)増 加 を抑 制 す る こ とが 確 認 され た31)｡ベ ザ フ ィブ ラ ー ト(16例),プ ラ バ ス タチ ン(17例),食 事 療 法 の み(13例)に よ り3 ヶ月 間 の 治 療 を行 い,そ の 前 後 で 脂 肪 負 荷 試 験 を実 施 し て,脂 質 の 変 化 を比 較 し た｡脂 肪 負 荷 試 験 はOFTTク リー ム を2009(脂 肪 量 と して669)負 荷 し,負 荷 前,負 荷 後2お よ び4時 間 に採 血 し,脂 質 を測 定 した｡そ の 結 果,ベ ザ フ ィ ブ ラ ー ト投 与 に よ りTG,RLP-C,RLP-TGは 負 荷 前 後 と もに 有 意 低 下 を 認 め,特 に 負 荷 後 の低 下 が 著 明 で あ っ た(図13)｡ま た,プ ラバ ス タチ ン投 与 に よ りLDL-Cは 負荷 前 後 と もに 有 意 低 下 を 認 め た｡こ
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図13食 後 高 脂 血 症 に 及 ぼ す べ ザ フ ィ ブ ラ ー トの 影 響
上 段 はRLPコ レ ス テ ロ ー ル の 変 動,下 段 はRLPト リ グ リ セ リ ドの 変 動 を 示 す｡い ず れ も,脂 肪 負 荷 前 か ら の 増 加 値 を 示 す｡
*p<0
.05,**p<0.01
Mean±SD:Wilcoxon signed rank test
れ らの結 果 か ら,ベ ザ フ ィブ ラー トは脂 肪 負 荷 後 の レ ム ナ ン ト増 加 を抑 制 す る こ とが確 認 され た｡ ま た,フ ィブ ラ ー ト系 の抗 高 脂 血 症 剤,糖 尿 病 治 療 薬 で あ る イ ンス リ ン抵 抗 性 改 善剤(チ ア ゾ リジ ン誘 導体)32) お よ び ス タチ ン系 の抗 高 脂 血 症 剤 は,ア ポB48受 容 体 の 発 現 を抑 制 す る こ とが 明 らか に され た(未 発 表)｡こ の 結 果 は,レ ム ナ ン トを は じめ とす るTGリ ッチ リポ 蛋 白 の マ ク ロ フ ァー ジへ の取 り込 み が,こ れ ら薬 剤 に よ り抑 制 され る 機 序 に よ り動 脈 硬 化 が 抑 制 さ れ る可 能 性 を示 す｡ ま と め 1993年 に,血 中 レ ム ナ ン トリポ 蛋 白 を簡 便 に測 定 で きる レム ナ ン ト様 リボ蛋 白(RLP)法 が 開発 され て か ら, レム ナ ン トリポ蛋 白 の動 脈硬 化 にお け る意 義 お よ び代 謝 に 関す る研 究 が促 進 され,以 下 の よ う な多 くの 研 究 成 果 が もた らさ れ た｡す な わ ち,レ ム ナ ン 下リ ボ蛋 白 を動 脈 壁 の マ ク ロ フ ァー ジ に取 り込 む ア ポB48受 容 体 が 発 見 さ れ,そ の遺 伝 子 構 造 が 明 らか に され た｡ま た,ヒ トの小 腸 で ア ポB100の 発 現 が確 認 さ れ,食 事 由 来 のVLDLが ヒ トの 小 腸 で 合 成 さ れ,さ ら にVLDLレ ム ナ ン ト, LDLと 変化 す る 可 能性 が 示 唆 され た｡ 食 後 高 脂 血 症 の動 脈 硬 化 リス ク は,レ ム ナ ン トリポ 蛋 白 の増 加 に よ る こ とが確 認 され た｡ま た,糖 尿 病 や 冠 動 脈 疾 患 例 で は1日 中,レ ム ナ ン トリポ 蛋 白 は高 値 を持 続 す る こ とか ら,動 脈 硬 化 リス ク を 評価 す る た め に は 食 後 状 態 で の レム ナ ン トリポ蛋 白測 定 が 必 要 で あ り,よ り感 度 の高 い こ とが確 認 され た｡さ らに,食 後 高 脂 血 症 と イ ンス リ ン抵 抗 性 との 関係 も明 らか に され た｡
文
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