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高齢社会におけるデザインの橋渡し : デザインと人間工学

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Academic year: 2021

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Japanese Society for the Science of Design

NII-Electronic Library Service Japanese  Sooiety  for  the  Soienoe  of  Design

高 齢 社 会

お け る デ ザ

ン の

橋 渡 し

デ ザイ ンと人 間工

Mediation

 

of

 

Desi

 

n

 

in

 

theAdvanced

 

A

 

e

 

Socie

      上野 義雪       千 葉工業 大 学 はじめに   日本の社 会は、 高 齢 化 社 会に突入 し た といわれて いる が、 その実 態 をみ ると高 齢化で はな く

もは や 高 齢 社 会に突入 している。

 

最 近

「高齢 社

に より交通 渋 滞 が激 増 した」とい うと、 ま さ か と 思 われるか も知 れ ない が、 歩 道 な ど の通路におい て は まさ しくそ の通 りで あ る。 東 京駅 の地 下コ ン コ

な どで は

お年 寄 りを見 か け るこ とが 多 く

お 年寄りが 歩い て いる と

その先を追 い 越し て 行けないの で あ る。 無理 して追い越そうとす る と

お年 寄 りの や 腕、 手 荷 物 など に自分の身 体 を ぶっ けないと 追い越せ な い。

 

電 車の 中でお 年 寄 りの 数 を 数えてびっ

りす るこ とがある

や が て は

シルバ

トをな くして し まうのか

逆 に全席 をシルバ

トにしな け れ ば な らないの か

今後 は

同様な ケ

スが多 く生 じて くるであ ろ う。

 

広 義の意 味で社

環境を高 齢者に対応 させ る場 合、 環 境 整備やデザ イ ン に携わる側の責 務は極めて重 要 にな る。 デザ インに おける 人間工 の意 味

 

人 間工学は

分 野 に よっ て解釈の仕 方が異な る が 概ね

人 間の 能 力と限 界 を 明ら か にし、 物や環 境 を その 能 力 や 限界 内にお さ める

と考え てよい。 簡単 に定 義 する な らば

小原二 郎 氏の 解 釈 する

1

使い勝 手の科 学」である。   人 間工 学は本 来

便 利さを 追 求 することで はな く

使い勝 手の追求が役 割となる。   私の小 学生の頃は

筆 記用 具 は鉛 筆であっ た が

そ の後シヤ

プペ ン シル や ボ

ルペ ンど、 便 利 な 筆 記 用具が 生 ま れ た が、 日頃使っ て いるこれ らの 筆記 用 具は使いやすいかとい う と

ず し も そ うでは な い。 こ の様に筆記 用 で は

、書

き やすさの追求が 重要 に な る。   高 齢 者 社 会において も同様で

まずは安全 性の 確

Ueno

 

Yoshiyuki

Chiba lnstitute of Tech冂elogy

次に使い やすさ の 追求になる。 使い やすさ の追 求で重 要 なこと は

設 計 者が使用者の ニ

ズをいか に捉え るか ということ で

両 者の 問において 物 や 環 境に対す る

え方に ギャ ップが あっ ては な ら ない。 こ の谷 間 を うまく埋めるもの が、 人間工学である。 高 齢 者に関 する資 料

 

数年 前

あ る資格 試 験の 更 新セ ミナ

におい て

高 齢 者をテ

マ に話を す る機

が あっ た,, 仕 事上

高 齢 者に関する資料 を 収 集しておい たの で

これらを 基に資 料 集 をつ く り、 配布 し

k

,,セ ミナ

終了後、 受 講者の感 想 を 聞いたところ

これ 程資 料のあ るこ と を 知 ら ず

これ らの 資 料を参 考に

設計 を す るこ と の し さを痛 感し た ということである

t

;   現 在

高 齢 者 対 応の製 品が多 くみ られるよ うに なっ たが

設 計 者や企 業は

体 何を考え てい るの か

はなは だ疑 問である。   こ れ らの原 因の

つ には

教 育の問題が考え られ る。 教 育とは学 校のみ な らず、 企 業 内の教 育 も含 ま れ る

私が大 学で 担 当 す る 科 目では

通常入手 しに くい資 料を 配布 し

説明を す ることに して い る. 学 生 か ら は

極めて評 判が 悪い。 資 料が

多す ぎる とい うの である。   要する に、 教 育機関 に おいて は

現 在の カ リ キユ ラ ムが社

化に対応で きて い ない こ と と

企業 では

勉強不足である こと が

高齢者に関する資 料 の存 在 を 知 らない原 因 をつ くっ て しま うの で はない か と も考え ら れ る

高 齢 者の特 性   高 齢 社 会におい て、 環境 整 備 を 貝 体 的にす すめ る 上で重 要 なことは

高齢 者の特 性 を総 合 的に

かつ 正 し

理解す るこ とであ る。   例 え ば

建築的に高齢者を 配 慮 する場 合

手摺 り を 用 意し たり

車 椅 子で生活で きる ように室 内のス ペ

スを 広 く してお けば よい という、 矩 絡 的 な 判 断 が成さ れ る 場合が多い

これ は

高齢 者につ いて少

6SPECIAL  ISSUE OF JSSD  Vol

4 No

4 1997 デ ザ イ ン学 研 究 特 纂 号

(2)

Japanese Society for the Science of Design

NII-Electronic Library Service Japanese  Sooiety  for  the  Soienoe  of  Design

ない知識や情 報で配 慮 を して し まうこ とが原 因と考 え られ る

 

高齢 者の特 性には

視 覚

覚、

覚、

覚、

な ど五感の他、 医 学

解剖学、 身 体 特 性や動 作 特性、 心理 特 性な ど多 くが あ り、 これ らを総合 的に理 解し ておく必要がある。   まず 問 題になるのは

高 齢 者 とは何 を 意 味 する か というこ とである

国 連の 定 義で は

65

歳以上 を 指 して い る。 現状で は、 高 齢 者の Il

1健 康 高

者 も多 く存 在して い るため、 年 齢で分 け るのは、 便宜 上で あ り、 こ の物 差し に他の物 差しを 加え てこそ、 物や 環境 整備に対応 させ るこ と がで き る は ず で あ る。 五 感にお け る特 性  人 間 が 日常生 活 を行 う上で

外 部か ら受容す る 刺 激 や 情報のう ち、

8

9

割は、 視 覚 情 報によ り視 覚 す るといわれてお り

視 覚 機 能の低 下 は

牛活 トの不 便 さ を 大 きくする。   高 齢 者の視 覚 特 性は、 視 力の低 下 をは じめ、 近点 距離の増 大、 黄 色 系の識 別 能 力 低 下な ど が あげられ る。 近 点 距離と は

文字な どを

どの 程度近 くで読み とれる か、 そ の距 離 を 意 味 し、 こ の距 離が

33cm

以上 になると老 視 という。 遠

の 物や 近

の物にピン ト を 合わ せ難 くな り、

いと見えない、 明 るす ぎては ま ぶ し さ を 感 じる、色 を 十 分に識別できないな ど

視 覚 情 報の需 要 性に相 反 し

目の衰 えは

か な り大 き いD

 

聴覚で は

大 き な音でないと聞こえ ない

高音 域 が聞 き取 り難 しくな る など があ げ られ、 非 常ベ ルや 車の クラクショ ン

家電製 品の作 動 終了時や

常 時 の シグナル音な ど

生 死に関 わ る 場 合 も あ る。

 

では、 臭いが分か りにく くな るため、 物の焦 げて い る 臭いが分か らず

火 災の犠牲 者になること もある。 食 事は、 味 覚と嗅 覚の 両者に よ り味わいを 知 覚 するので

、美味

し さ が分か りに

くく

な るこ とも あげられる。   味覚と物との関わ りは少ない。痴 呆症 な どの 場合

常識では考え られ ない 物 を口 にする 場合が あ る

こ の対応 として

ロ にし た ら 吐 き出す ような味を

予 め物に付 加さ せることも考 え られ る。  触 覚には

圧点

痛 点

温 点

冷点 な どの皮 膚感覚 が あり

何 れの 感覚機 能 も 低 ドする。 熱い物を 持 っ て も熱い とは感 じず

ツの ili低 温 やけどを し て も感 じな い な ど

触 覚に対 し て具 体 的に 配慮 をさ れて いない場 合が多い のが 実情であ る

寝た き りの 場合、 褥そ う を生 じて も分か ら ないの もこ の

ある。 医 学 的に は、

40

歳以 上 が高齢 者で

これは

内 臓や各 器 官 など

身 体の多 くに つ い て いえる ことで

2G

歳 前 後か ら確 実にこれらの機 能は低 ドして いる。 高

にな る と疾 病率が高

な り

菌に対 す る抵抗 力 も低 下 する。   身 体や動 作 特 性では、 筋 力や発 揮 力の低 ド、 関節 が曲が りに

くく

な る

、動

作のしょ う性低 ド

L

体 の前 傾 姿 勢

、身

長の 小 な ど が あげられ

動作に時 聞を 要し

ぎこち ない動きにな る

物 を掴みに くく な り、 つ まず きやす くなる ため、 安

刔 す 慮が必要 に な る

 心 理的には、 もの 覚え が不 得意

新しい ことに馴 染み難 し い、 判 断に多 くの時 間 を 要するな ど、 視 覚 や操 作に関 係 する物の設 計には

卜分な配慮 が 必要 にな る。特に リモコ ンな どの ように

1

ボ タン多 機 能」 は、 操 作 を 複 雑に し操 作 時 問が長 くな り、 誤操 作 を 生 むことにな る。   最 近の 電 気 製 品の 多 くは、 ボ タンを 押し たり回し て操 作 する方 向か ら

ボタン に軽 く触 れる方 向に変 わ りつ つ ある

タ ッチ式画 面 で切符 を購人する新型 の券 売 機よ りも

従来の ボタン式 券 売 機の方に旅行 者が群が る実 態を 黙認 する わけにはいか ない。 こ の 様 な操 作に関 しては、 「ポピュ レ

ショ ン

ステレオ タ イプ

の応用が重要な 意 味をもつ

ま と め   高 齢 者に対 応 する環 境 や 物の設 計には、 高齢 者の 特 性 を 十 分に明らか にし

高 齢 者の層 を 設 定 するこ とが

手始めの作 業に な る。 しか し

世の中に は高 齢 者以 外に、 幼児や子 供、

障 者

な ど

不 特定多 数の人が使 用 する場 合に は、 これらの人の特 性 を も 考慮 して

総合 的な 立 場か ら設計条 件 を整理 してお く必 要 が あ る

 

普段 か ら高 齢 者につ いて よく観 察 する 習慣 をつ け ること が、 意 外と ヒン トになる。

デザ イン学 研 究特集号  SPECIAL  ISSUEOF  JSSD VoF

4  No

4  19977

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