報 告
在
宅
障害高齢者
の
転 倒
に
影 響
を
及
ぼ
す
身体
及
び
認知
的 要 因
*村
田
伸
1)2)#津
田
彰
3}稲 谷
ふ み
枝
P21田
中 芳 幸
2)要 旨
本 研 究
は,
在 宅 障 害 高齢 者
1
⊥0
名
〔平均 年 齢
83
,
ユ歳.
男性
17
名、
女 性93
名 ) を 対象
に,
転 倒 歴
と注 意
力
及 び身 体 機 能 を評 価
し.
転 倒
に影
響 を 及 ぼす 要
因を検 討 し
た。転 倒 経 験 群
28
名
.
ニ ア ミス 〔転
倒
し そ う に なっ た)体 験群
33
名
,
非粁 験
群49
名
の3
群
問の比較
に おいて,
転 倒 経 験 群
とニ ア ミス体
験 僻のTrail
making test−Part
A
(TMT
−
A
:1 は.
非 経
験 群 よ り 有 意 に 小 さ く,
身 体 機 能
の白 己認 識
の逸 脱
は有 意
に大き
かっ た。
ま
た,
転 倒 経
験 群の最大
歩 幅
.
歩 行 速 度
,
足 把 持 力
,
足関 節
背
屈 角 度
の4
項
凵 は,
ニ ア ミ ス体
験 群 と非 経験 群
より有
意に低 値 を 示 した.
さ ら に、
転 倒 歴
の有 無
を 目的 変
数 と し たロジステ ィッ ク回帰
分 析
ヴ)結 果
,
注 意 の指 標 と
した
TMT −
A
,
足 把 持 力
,
足関
節
背 屈 角 度
の オ ッ ズ 比 が有 意
であっ た/
/
本 結 果 は,
立位 姿 勢 保 持
が不
安定
な在 宅 障 害 高齢 者
で は,
身体 機 能
の低
ド,
とく
に 足把 持 力
や足 部
口∫
動 性 な
どの 足部機
能の低
ドが転 倒
の危 険 因 子であ るこ とのみ な らず
、
注 意 力
の低 ドも転 倒
を引
き起
こす 重大 な 要 因
で あ ること を 明 らか に し た、
、
キー
ワー
ド在 宅 障 害 高 齢
者
,
注 意
,
転 倒
緒
言
高 齢 化
が急 速に進行
してい る今
Hv .
高齢 者
が「
健
や かに老
い る」
に は ど う す れ ば 良い の か が社 会
rl
りな 課 題
と な り2:ト
,
様
々な地 域
で高 齢 者
に対 す
る健
康
増 進 事 業
や介
護 予
防 事 業 が 進 め ら れてい る:1’4).
。な
かで も転
倒
予防対
策
は,
転 倒
によ る外 傷
や骨 折
が高 齢 者
のIl
常
生 活 を 著 しく低 下 さ
せ る た め5揃,
その重 要性
が認 識 さ
れつ つ あ る。
高 齢者
の転 倒 を 未 然
に防 ぐ
た め に は1
転 倒 発
生要 因
の解
明
が急 務
で あ る が, これま
で に,
加 齢
や障 害
によ る身 体
機 能
の低
ドが転
倒 を 引き起
こす 原 閃
であ
ること が 報 告 さ れ てい る7i艶
、
例 え ば.
片 足立ち保 持 能 力
との関
L
* i i/
s’,
下肢 筋 力
との関 連
鯛Ol,
足関
節 可動性
との関 連
11),
足 底*
PilysicaL and Cognitil
,
c Factorsλ5suclatヒd wifh FalLs anLo 「]9しhピ F1〔1erly with Disab山匸y aL Ho川eD 第
・
福 祉 大 学 人 間社 会 福 祉 学 部〔〒 818
−
Ol941副 司県 太宰 Jt・
r市.
fT/ft 3亅.
凵ID−
IO)Shin Mum τa
,
RPT,
MS.
FuI【Lie I[】Htl,
】li、
MA :Faculty〔冫f S〔,cial、Velfare and Ilulnとm S巳rvic巳s
、
1)aiichi “.
elfare LTIIiL・
er’
sity 2〕 久 留 米 大 学人 学院心 理 苧:
研 究 科ShilユMLiratn
、
RPT,
MS、
FumiピIna[ani、
MA.
/’
oshlyukt Tu[iaka,
MA :(;raduate Schooi o「Psy【
・
1ユ〔}Lo9y,
KurumuUllLvel
’
sity3}久 留 斗こ大学 文 学 部 心理 学科
AklrR Tsuda
、
FhD :Deparしme [TL ui P輪y匸・
h匸,k,gy,
Kururnc UIIiversi〔y# E
.
maiL:smurata @dfLL
.
ac、
jP
〔受 付日 2004年7「il2
凵 受珊 冂 IOD5年1月221D の感覚
人力 と
の閾 連
12)1/ll,
な
どであ
る.
、
ま
た,
認 知機
能, とり
わ け注
意 との 関 連 を 示 し た 報 告2,11:ll51・
もあ
るし か し
,
これら
の報 告
は,
転 倒 時
の心 理 酌問
題 や 転 倒の発 生 原 因,
例え ば
,
鬱 状 態
,
他
に気
を取
られ た、
つ ま ずい た,
引
っ か かっ た,
滑
っ た など の注意 力
の低
下 に よ る逸話 的 な指 摘
を してい る に 過 ぎ ない。
先行
研究
で は,
転 倒
と注 意 と の関連
を客 観 的
評価
に基づ き報 告 し たも
の は少
な く, 転倒
が真
に注 意 力
の低
下に よる もの なのか,
ま た その発 生 機序
な ど 明 ら か に さ れ ていな
い こと が多
い。高齢 者
は,
転
倒事
故には 至 ら ない ま でも
,
転 倒
しそ う
に なっ た体 験
〔転 倒
の ニ ア ミス体験
) を有
している場 合
も多
い.
加 齢
に伴 う老 化 現 象
や障 害
,
と く に感 覚 機 能
の 低 ドは,
環境
の変 化
に適切
に対 処
する能 力
に影
響 を
及 ほす
16,, す な わ ち,
自
分自 身
の内 的 環 境 及
び外 的 な環 境
双 方
か らの情 報
を適
切 に解 釈
,
あ
るい は対 処 す
る こと が困 難
にな
る。 こ の感覚 機
能の低 ドが,
注 意力
の低
ドを引
き起
こす 要 因
且7〕 とさ れ
る が,
注 意
の概
念 は その言語 表
現
さ れ る 現象
が多 様 な
た め,
確
疏 さ れ た定 義
は な く,
そ れ ぞ れの研 究 者 が そ れ ぞ れの定 義 を
用い てい る 18−
LIOI,
,
高 齢 者
に お け る 日常
生 活の 中 での注意 と
は,
高 齢 者 自 身
とそれを取 り巻 く環
境 との関 係の中で,
意
識を適 切 な対
象
に集
中し,
必要
に応 じて意 識 を 移 動 さ せ る 過程
と摎 え
ら れ,
本 研究
に おいても注 意 を
こ のよう
に定
義
づ け る。
在
宅障 害 高 齢 者の転 倒に影 響 を 及ぼす 身 体及 び 認知的 要 因 89 表 1 対 象 者の属’
「生 人 数 〔名}年
齢 (歳 冫 通所 回 数 Clul) MMS し点) llO名 (男 性17名,
女性93
名)83
.
1
±5
.
2
2
〔1
−
5
冫 週 23.
1 土 4.
4 要介護
認定
区 分 (人 数〕 要 支援 要 介 護1 要 介 護2 要 介 護3
一
〇74
」
怯 り凵
61
既 存疾 患 〔人 数} 変 形性 関 節 症 脳 血 管 障 害 内科 疾 患 骨 折 後 遺 症 循 環・
器疾 患、
呼 吸 器 疾 患 腎・
泌 尿 器 疾 患 骨 粗 鬆症 関 節リ ウ マ チ その他8185208865
221111
1年
齢とMMS
(Mir
,i
−
Mental
State
Examination
}は 平均±標 準 偏 差,
通 所回 数 は中央 値 〔最 小 値一
最 大 値 ) を示す.
す
なわ ち, 注 意 力の低
下 と は,
意 識
を 必要
に応
じて選択
的 に 移 動 で き ない状態
とす る,
本 研
究 は,
注 意
の選 択 機 能 を視 覚
的 に 評価
す る 検 査 と し て広 く
用 い ら れ てい るTrait
making test−
Part
A
〔TMT
−
A
):JO−
221 を川
い て,
在 宅 障 害 高 齢 者
の注 意 力
を客 観
的に評 価
し,
転 倒
や転 倒
のニ ア ミ ス体
験 との 関 連 性を検 討
した
,
な お,TMT ・
A
は.
注 意 機 能の机 上検
査法
と
し て.
信 頼性
と妥 当性
が 確 認 さ れて い る21,22}。
ま た,
自
分 自身
の内 的 環 境
へ の注 意
とし
て,
最 大
一
歩 幅
2’
1) の自己 予 測
と実 測 値
との差 を身 体 機 能
に対 す
る自
己 認 識の逸 脱
と して表
し た。
これ らの注 意機
能 と,
転 倒 との関 連性
が予想
さ れ る ド肢
筋
力
や片 足
立ち保 持 能
JJ
な ど
の身 体
機
能
と を併
せて評 価 し
.
転 倒
の発 生 要
因を
総合
的 に 検 討 し たの で報 古す
る。方
法
ユ.
対 象
4
ヵ所
の通 所
リハ ビリ テー
シ ョ ン施 設 を利
川 して いる在 宅 障 害 高 齢 者
の内
,
痴
呆の診 断 を受
けてお らず,
平
地歩 行
が自
疏 し ている119
名
を対 象
と した。
しか し,
119
名
の内
,
6
名
はMini
−
M
已ntalState
Examination
〔MMS 戸
5)z6:」
の得 点 が 昔 し く低 かっ た ため に対 象
か ら除外
し,
3
名は視 力 障 害
のた め に視 覚 的評 価
であ
るTMT −A
が 測定
イ・
能 であ
っ た 。 よっ て、
本
研 究の 分 析 対 象 は1
⊥0
名
(男 性
17
名
,
女 性
93
名
) と なっ た。
MMS
の得 点 範 囲
は0
から
30
点
であ
る が.
今
回の対 象 者
llO
名
で は,
最 低
18
点
,
最高
30
点
,
平 均
23
.
]点
であ
っ た。過 去
1
年
間 に お け る転 倒
雁の信 頼性
助を 高
め る た め に,対
象考
の選 択
基準
を,
MMS
20
点 以 ヒと
し た が,
20
点
未
満
のn
名 も過 去
の転 倒 を
よく覚 え
て お り, かつ その記憶
が利 用 者
カル テ や リハ ビ リテー
ショ ン ロ誌
か ら 正確
であ
る こ とが確 認
で き た た め,
対 象 者
に含
めて検 討 し
た。な
お,本 研 究
に おけ
る転 倒
と は,
GibsonL
’
9} の定
義
に従
っ て「
自分
の意 志
か らで は な く,
膝 や 上肢
或い は臀 部
や腰 な
どの身 体 部 分
が床 血
や地 面 な
どの より低
い面
に接 触
した場 合 」と
し た。
た だ し,
臥 床 時
のベ ッドか ら
の転 落 等
に よ る転 倒
は 除外
し た。
対
象
と し た ユIO
名
の属 性
は表
1
に示
してい るが
,
年 齢
は 平均
83
ユ歳であり
,
要 介 護 認 定
は要 介 護
]が 最 も多
く,
次い で要 支 援
が多
か っ た。
既存疾 患
は 変 形性 関節
症 が最
も多 く
,
次
い で 脳 血管 障 害
,
内科
疾患
,
骨 折 後遺 症
(
関
節 拘 縮・
筋力 低
下 な ど〉
,
循 環 器 疾 患
,
呼
吸 器 疾患
な ど多岐
にわ たっ ていた
。歩 行
レベルは,
すべての対象
が平
地 歩 行
は自立
していた がt
杖
を 使 用 してい る高 齢 者
が半
数
以 上の78
名い た。
ま た,
脳
血し管 障 害
な どに より装
具 を 装着
して いる高 齢 者
はいな か
った
、
,
な お,
脳
血管 障 害
にお けるE
下肢
の麻 痺
の程 度
は,
上 肢のBrunnstrom
Stage
W
が15
名
,V
が1
名
、
W
が3 名
.
皿が2
名
であ り
,
F
肢
のBrunnstrom
Stage
は,
Vl
が15
名
,
V
が2
名
,
W
が3
名,
皿 が ユ名
であっ た。
2
.
調
査内容
調
査
は平成
15
年
7
月28
日 か ら 約1
ヶ 月 間 実施
し た。
個 人 情 報
の収 集 とMMS
実 施後
,
1
) 転 倒
歴 とニ ア ミ ス体 験
の 聞 き取 り,
2
)TMT
−
A
施 行
,
3
)最 大
・
歩 幅
の予 測,
4
) 最 大一
歩幅
の実 測
.
お よ び5
)握 力
,
6
) 足 把 持力
,
7
) 足 関 節 背 屈 角 度
,
8
)身 体
の 柔軟
性.9
) 片 足 立ち 保持 時
間,
IO
) 歩 行 速 度 を 測 定 し た。
具体
的 な 測定
f
続
き は 後 述 す る。
1
) 転 倒
歴 とニ ア ミス体
験の聞 き 取 り調査
転 倒 歴 及
びニ ア ミ ス体験
は,
最
近1年
間 の有 無 を面 接
聞
き取
[’
)及び利 用者
カ ル テ に よっ て調 査 し た。
2
)
注 意 ノ」の評価
注 意 力
は,
TMT
−
A
及 び身 休 機 能
の自 己 認 識
の逸 脱
に よっ て評価
しtJ
,
,
TMT
−
A
は,
紙 面E
にラ ン ダムに 配置
さ れ た1
か ら25
ま での数 字 を 小 さ
い方
か ら順
に線
で粘
ぴ,
主に注 意の選 択 機 能 を 評価 す
る(
図
1
)。 こ の テ ス トの評 価 方 法
は様
々であ
る が,
S5
歳
以 上の健 常 高 齢 者
の平均 施 行 時 間
が218
秒
との報 告
∠ω が あ る、
本 研 究
で は,
対 象 者
の ほ とん どが後 期 高 齢
であ
る こ と を考
慮 し,
3
分 間
の間
に正 しく結
べ た数 宇 を
TMT −A
の得 点
とし
た。
’
N
’
.
燃
一一
舘
一
4
倒\
1
’
−
!
− 1で
藁
ジ
噂
殉
『童
ド
)
\
瞳
兜
気
論
−
壷
寒
灘
鱗
図1TraLIMaking
TeSt
・
Part
4身 体 機 能
の自
己 認識
の逸 脱
は.
最 大
一
歩 幅
の予 測 値
と 実 測 値 との差 に よっ て評価
し た。
最大
一
歩 幅
は,
両脚 を
揃 え た状 態 か
ら最 も大 き く片 方
の脚
を踏
み 出 し,
反対
側
の脚を
その横
に揃 え
,
そ
の爪先
か ら踏
み出 し た踵
までの距 離 を測 定
した が,
安 全 性 を考 慮 し
て平行 棒 内
で行
っ た。
まず
,
対
象者
は,
平 行 棒 内
の床 面
に20cm
間 隔
に貼 ら
れ たカラー
テー
プ を砕 認
し,
平
行
棒
に掴 ま
ること
なく跨 ぐ
こと
が でき
る距 離 を
予測 す
る (最 大
歩 幅
の予 測 値 )
,
,
次いで,
IQm
前 方
の1
.
5m
の高
さ に取 り付 け
ら れ た任 意
の点
を 注視
し,
自 分 が予
測 し たカラー
テー
プ の位 置 を確
認 す
る ことな く
,
実 際
に最
大努 力
で の動 作
を 行 う (最 大一
歩 幅の 実 測値
)。
裾
ら れ た予測 値
と実 測 値
の 差(
cm ) を身 体 機 能
の 自 己 認 識の逸 脱
と して評 価
した(
図
2
)。
3
)身体 機 能 評 価
握
力
は, デジ タ ル式握 力 計 (
竹 井 機 器
工業 製 )
を 使 用 し,
測 定 姿 位 は端
坐位
で左 右
のL
肢 を体 側
に華
らし
た状
態
で最
大 握 力 を2
回 測定
し,
その左 右
の最 大 値
の合 計 を
握 力 値
(kg
)
と し た。
足
把 持 力
は,
著 者
ら が自作 し
た足 把 持 力 測 定 器
を用
い て測 定 し た。
被 験者
の左 右
の 足把 持 力 を
2
同測 定 し
,
そ
の最 大 値
の合 計 を足 把 持 力 値 〔
kg
)
と し て採
用 した
。
な お,
この測 定 器
から得 られ
る測 定 値
の再 現 性
は.
こ れま
で に級
内
相 関係
数 O
.
973
という極
めて高
い こ とを確 認
し
てい る291。図
3
に測 定 方 法
を示
し た。
足
関節背 屈 角 度
は.
端
坐位
で膝 関 節
をi‘
分 に 屈曲
した
後
,
自動
運動
によ る背 屈角 度 を測 定
した.
測 定
は 基本
軸 を腓 骨
へ の垂 直 線
,
移 動 軸 を 第
5
中 足 骨
とし
て 3D),
ゴa
b
C
図
2
身体 機 能の 自己 認 識の逸脱 (最大
・
歩幅の予 測 値 と 実1
則値との差 )の計 測 a :平 行 棒 内の床 面に20cm 間隔 でカラー
テー
プ を貼e
,
平 行 棒に 掴 ま る こ と な く,
跨 ぐこと が できる距 離 を予測 しても らう
〔最大
一
歩幅
の予 測,
例 :60cm
).
b
:両脚 をそろえた状 態か らで き る 限り大 き く片 万の脚 を踏 み 出す.
c :反 対 側の脚 を その横にそろえ る.
開始 時の爪 先 の 位 置 か ら踏み出し た踵 まで の距 離を測 定 (最人一
歩幅
の実i
則,
f
列:
38
〔rn〕.
得ら れ た 予測 値 と実 測 値の差 〔c皿♪を 身 体 機 能の自己認識の逸 脱 とし て 評価 した (例:60
−
38=
22・cm ).
在
宅 障 害 高 齢 者の転 倒に影 響 を及ぼす 身 体 及び認 知 的 要 因91
a図
3
足 把 持 力の測 定
方法
a :被 験 者 は坐 位 姿 勢 を と り,
上 肢で台 を掴み 上体
を 固定
する.
検 音は踵 部 をしっ かり と固定し て 測
定
を開始す る.
b
b
:全足指の 指節問関 節が 可能な限 り足指 把 持バー
にか かるように調 節 し.
把 持 バー
を しっ かりと把 持して把 持 力を測 定 する,
ニ オメー
ター
を川
いて左 右 を
測定
し、
その合 計
を 足関節
背 屈 角 度
と し た。
身 体
の柔 軟性
は,
長 座 体 前屈 距 離 を
デ ジタ ル式 長 座 体
前
屈 測定
器 〔竹
井機
器工業 製 ) を 川い て測定 (
cm)
し た。
片
足 立 ち保持 時 間
は,
左 右
につき
2
回
,
デ ジタ ル スト
ッ プウ ォ ッ チを
用いて30
秒
を ヒ限 とし て 測定
し,
その左 右
の最
長 時 間 の 合 計 を 片 足 立 ち 保 持時 聞 (
sec ) と し た。
歩
行
速度
は,
平
地1
ユIn を最 速 歩 行
し ても
らい, 中 間 の5m
を測 定 区 間 と
し て.
そ の所
要 時 間 をス トッ プ ウォ ッチで計 測 し た。
その際,
通常 杖
を使
用 して歩 行
し てい る対 象 者
には,
杖
の使 川 を許 可 した
n測 定
は2
回連 続
し て行
い,
最 速 値 (
m /sec) を評 価
した
。3.
統
計学
的
解析法
転
倒経 験 群
,
ニ ア ミス経 験 群
,
非 経 験 群
の3
群 間
の比
較
につ い て,
男 女
の割 合
の検 定
に はX2
検 定 を
用い,
年
齢
,
MMS
得 点
,
TMT
−A
得 点
,身 体 機 能
の自
Lf認 識の逸 脱
,
最 大
一
歩 幅
,
握 力
.
足把 持 力
,
足 関節背
屈 角 度
,
身
体の柔 軟 性,
片 足 立 ち 保 持 時 間,
歩行
速度
の比較
には一
元 配置 分 散 分析
を用
い た 。 さ らに,
転 倒 歴
の有 無
〔転
倒経
験の有 無
) と関 連 す
る要
因を
調べ る た め,
ロジステ ィ ッ ク 回帰 分 析
を行
っ た、
ロジ ステ ィッ ク回 帰 分 析 は,転倒 経験 有 り と転 倒経 験 無
し(
ニ ア ミス経 験 を含
む 〕 を目 的 変 数 と
し,
説 明変
数 は 性 別,
年 齢
,
MMS
得 点
,
TMT −A
得 点
,
身体 機 能
の自 己認 識
の逸 脱
,
最 大
一
歩 幅
,
握 力
,
足 把 持 力
,
足 関 節背 屈 角 度
,
身 体
の柔 軟 性
,
片
足 立ち保 持 時 問
,
歩 行 速 度 と
し て 分析
し た。
ま た.
各
測 定項 目間
の相 関 を
Pearson
の相
関係 数 を
用い て検 討
し た/
,
な お
,全
ての統 計
解
析
に はStatView
5
.
0
を用
い,
統
計 的
有
意
水準
を5
%未
満
と し た。4
.
イ
侖理 白
勺酉
己慮
対 象 者
に は,
研究
の 趣旨
と内
容
につ いて説 明
し,
理解
を得
た 上で協 力 を求
め たが
.
研 究
へ の参 加 は 自 由意 志
であ
り,
被験 者
にな ら な く
ても不 利益
にな
らな
いことを書
面 と冂 頭で十 分 に 説 明 し た。
ま た,
家 族 に対
して も,
施
設 で使
用 し てい る個
人連 絡
ノー
ト を用
い て事 前
に説 明
し,
1
司意
を得
た後 調 査 を 開始 した
。
な お
,
デー
タはコ ン ピュー
ター
で処 理 し,
研 究の 囗 的 以 外 に は 使 用 し ない こ と 及 び 個 人 情 報の漏洩
に 注 意 し た。
結
果1
.
各 測 定 項 目間
の相
関(
表
2
)
注 意 力 を
評価
し たTMT −A
得 点
と身体
機
能の自
己認 識
の 逸脱
との問
に は,
有 意 な 負
の相 関 が 認
められ た
,、一
方
,
注 意 力
と他
の身体 能 力 を評価 した変 数 間
に は,
自
己認 識
の逸 脱
と最 大
一
歩 幅
との関係
以外
,
有 意
な 相 関 は 認 め ら れな
か っ た。身体 能 力 を
評価
し た最
大・
歩
幅
,
握 力
,
足 把 持 力
,
足
関 節 背 屈角
度,
身体
の柔 軟性
,
片足
立ち保 持 時 間
,
歩 行
速度
は,
身体
の柔 軟 性 を 除 き
,
hl
い に有 意 な正
の相 関 を
示
し た,身体
の柔 軟 性
は,
片足 立 ち保 持 時 間 と
の問
に有
意
な正 の相
関 が 認め ら れ た が,
その 他の 測 定 値 と は 有 意 な相
関 は 認 め ら れ な かっ た。
表2 各 測 定 項 目 間の相関 分 析 [:n
=
llO)TMT
−
A
自己認 識 の 逸 脱 最 大・
歩 幅 握 力 足 把 持 力 背 屈 角 度 長 座 体 前 片足 立 ち 屈i
巨離f
呆子寺日寺問自
己 認 識の逸 脱 最 大一
歩 幅 握 力 足 把 持力 背 屈 角 度 長座体 前 屈距 離 片 足blr/ち保 持 時 間 歩行 速 度一
〇.
53* *0
,
18
−
0
.
42* * 0.
17一
,
10
0
.
05
−
O.
150
.
13
−
0
.
03
−
0
.
lOO
.
09
0.
10−
D
.
⊥9
0
.
03
−
D.
14 * *o
.
34
* 串 O.
57 * *D
.
39
−
O.
07 * *O
,13
* *0
.
62
0.
48* * 〔}.
21* O.
15 * *0
.
43
* 宗0
.
34
冖*
*
0.
4rO.
18 0.
07e
.
53
* *0
、
23
*e
.
51
* *0
.
34
* *039
* *024
*O
.
47
* *Pearson
”
s 〔・
orrctlation coeffiCient,
* * p〈D
.
Ol,
‡ p <0
.
05
、
表
3
転 倒 経 験 群.
ニ ア ミ ス経 験 群,
非 経 験 群の3群比較 全 体 n=
1]0
転 倒 経 験 群:Aニ ア ミ ス経 験群 :
B
非 経験 群 :
G
分 散 比
有 意 差
多重 比較 n
=
28 11=
33 n=
49F
〔2,
IOア:1 年 齢 〔歳 :〕 MMS 裃#.
亡〔 〔∴【
工)TMT
−
A
l
点〕 自己 認識の逸 脱 (cm 冫 最 大一
歩 幅 1:cm } }屋丿丿〔
kg
:1 足 手巴持 ノ丿〔
kg
} 足 関節 背 屈 角 度 〔度) 長 座体前 屈 距 離Ccm
) 片足 立 ち保持 時 間 〔se ω 歩行 速 度 (m.
”sec 〕S3
.
1 ± 5.
223
.
1
=’
t
!1
1
・
a
.
1
±・
d
.
918
.
6± 12.
8 39.
7土 17.
831
.
5
土8
.
93
.
9
±2
.
2
26.
5± 10.
4 23.
7
± {.
89.
.
1± 9.
21,
±0
.
3
84.
1± 5、
523.
1
ゴ:4
.
l
lO
.
2
=3
、
628
.
0 ナ 13.
2
3L8 ± 20.
330
.
O
±8
.
62
.
6
+ i.
920
.
4±9
.
323
.
0± 8.
46.
2± 4.
ア0
.
8
±O
.
3
83.
3± 5、
622
.
8± 4.
812.
7
±5
.
123
.
O
± lL241
.
7±15
.
3
312
±8
.
7
・
12± 2.
・
129、
1
±13
.
3
24.
3±9
.
19,
1± 7.
8i
.
D± O.
382
.
4
±4
.
7
0
.
44
23.
3± 4.
3 0.
06 17,
3
± 5.
1 10.
38 10.
3± 13.
7 11.
0742
.
9
±18
、
1
3
.
48
32
.
5
±9
.
1
0
.
92
4.
5± 2.
2 3.
26 28.
3± 7.
8 3.
2923
,
8
±11
.
2
0
.
04
11
.
6
±10
.
5
3
.
28
1,
0± e.
3 3.
31 ns nS nS nS*
*
* *C
>A
・
B
* * A・
B >C
申 * *B
・C
>A
喉 ns ns *B
・
C
>A
*
* B・
C
>A
*
11S ns *C
>A
*,
BL
B
’
C
>A
* 平 均±標 準 偏 差,一
’
元配 置 分 散 分析 [.
p<D
.
OD
,
多重 比 較検 定:Scheff6
法* * p〈
0
.
Ol
,
’p<OD5.
握 力,
足 把 持 力,
足 関 節 背 屈 角 度,
片足立ち 保持 時 間は 左右のE
肢 ま た はr
肢機
能の測 定 値の合 計 をasす.
2
.
転 倒 及 びニア ミ ス体 験
の有 無
対 象 者
1
ユ0
名
のう
ち,
最 近1
年
間に転 倒
を経 験
した高
齢 者
は28
名 (
25
.
5
% ) で あ り,
転 倒 に 至 ら ないま
でも
転 倒の ニ ア ミ ス体 験
を経
験 し たの は33
名 〔30
.
0
%}で あっ た。
転 倒 お よ びニ ア ミ ス体 験
とも
に経
.
験
しな
かっ た高 齢 者
は49
名
であ り,
全 体
の44
.
5
%であ
っ た。3.
転 倒 経 験 群
,
ニ ア ミ ス体 験 群
.
非 経験
群の3
群
比較
群 別の男
女
の割 合
(転 倒 経 験 群
:男 性
5
名
,
女性
23
名
;ニ ア ミス体 験
詳 :男 性
6
名
,
女 性
27
名
;非 経
験群
:男性
7
名
,
女性
42 名
) に有 意 差
は認
められ な
かっ た (Z2
値
≡
O
.
]9
.
,
p=
〔}.
91
).
転 倒 経 験 群
とニ ア ミ ス体験
群のTMT
−A
得
点 は,
非 経 験 祥 よ り有 意
に低 く
.
身 体 機 能
の自 己 認 識
の逸 脱 は 有 意 に大 きかっ た、
,
最 大一
歩 幅.
歩 行 速 度
,
足把 持 力
,
足関
節 背 屈 角 度
の4
項
凵 は,
転
倒 経 験群
が ニ ア ミ ス体 験
群 と非 経 験 群
より有 意
に低 値
を示
し た。
片 足 立 ち保 持 時
間 に つ いては.
転 倒 経験 群
が非 経 験
群よ り有 意に短 かっ た が.
ニ ア ミス体 験 群 と は有 意 差
は 認 め ら れな か
っ た。年 齢
,
MMS
得 点
,
握 力,
身 体
の 柔軟 性
の4
項 目
につ い て は有
意
差は認
め られ な かっ た (表3
).
、
な お
.
脳 血管 障 害
に よ る筋 力
や関節 可 動 域
に与 え
る影
響
を考
慮 し,
握 力,
足 把 持 力,
足 関 節背
屈角 度
につ い て,
脳
1
血管 障 害 を 有 す
る2
ユ名
と有
しな
い89
名
を 比較
し た.
脳亅血管 障 害 を 有 す
る高 齢 者
の測 定 値
〔握 力
29
.
8kg
±9
.
6
.
足把
持 力
3.
5
±1.
9.
足 関節 背 屈 角 度
25
.
2
±13
.
8
} と脳
血管 障 害
を有
し ない高
齢
者
の 測定 値
(握 丿
丿3
ユ.
9kg
±8.
7
,
足 把 持 力
4
.
O
±2
.
3
,
足関
節 背
屈角
度
26
,
8
土9
.
6
) に統 計
学 的 尉 応
のな
いt
検 定
)有 意 差
は認
め ら れ な かっ た。
4
.
転 倒 に 関 与 す る 因 子の抽 出転 倒 経
験有
り と転
倒経
験 無 し (ニ ア ミ ス経 験を 含
む)
を目的 変 数
と したロ ジス テ ィッ ク 同帰
分析
の結 果を 表
4
に示 した。
12
項
目の説 明
変 数のう
ち,
TMT
・
A
のオ ッズ 比 が0.
78
〔95
%信 頼 区
間e.
66 − O.
92
)
,
足 把 持 力
の オッ ズ 比 が0
.
63
(95
%信 頼 区 間
O
.
46
− 0.
87
)
.
足 関 節 背 屈 角
度の オッズ比 がO
.
69
(95
% 信 頼 区 間O
.
50
− 0,
92
:〕 で有 意
であ
っ た。ま
た、
Wald
検 定
の結 果 も
,
転 倒
の有
無
と有
意
に関 連 す
る要 因
はTMT
−
A
〔p く0
.
Ol
〕.
足把 持 力
(
p 〈0
.
05
),
足 関節 背
iEl角 度
〔p
〈0
.
05
} の3
項
目で あ り,
TMT
−A
の得
点
が低
い ほど
,足 把 持 力
が弱
い ほ ど,
ま た 足関節 背 屈
角
度
が 少 ない ほ ど に転 倒
の危 険 性
のあ
る在 宅 障 害 高 齢 者の 転 倒 に影響 を 及 ぼ す身体及 び認知 的要 因 93
表
4 転 倒の有
無 を凵的 変 数 とし たロ ジス テ ィッ ク 回帰 分析
の結 果 項 目 オッズ 比95
% 信 頼 区 間 性 別 年 齢 MMS 得 点TMT
−
A
自己認識の逸脱 最 大一
歩 幅 握 力 足 把 持 力 足 関 節背屈角度 長座体 前 屈距 離 片 足Lk ち 保持 時 間 歩 行 速 度 0920.
981,
16 串 *0
.
781
.
05
(1.
991.
D20.
63
*o
.
69
* 1,
〔》11.
DOO.
32 0,
16−
5.
22 088−
1,
01
0
.
96
−
1.
33
0
.
66
−
0
.
92
0
.
99
−
1
.
11
(].
95−
1.
(,4 (].
94−
1.
100
.
46
−
0
.
87
0
,
5
{〕一
,
92
0.
S9−
1.
220
.
92−
1.
110
,
02−
5
.
gg
Wald−
tcs〔.
零
*
p<0
,
01
,
*
p<0
,
05
.
ことが 推 察
さ れた
tt考
察
加 齢
に伴 う生 体
の老 化現 象
は,
様
々な 身体 的
及 び精 神
的 変 化 を引 き起
こ し,
障 害
に より
その変 化
は さ ら に増
長 さ れ る。
と くに感 覚の処 理 能 力の低 ドは 高齢 者
に とっ て,
時
と して重 大 な 事故 を招 きか ね な
い。な か
でも高 齢
者
の転 倒
は,
骨 折 を起
こさな
いた め にも
予防す
ること が重 要
であ
る、
,
この よう
な視 点
か ら.
不
注意
な行
動
が転 倒
を引
き起
こす 原 因
と して報 告
さ れてい る が,
客 観 的 評価
に基
づ い た報 告
は,
筆 者
ら が知
る限 り
ほとん ど行
われて いない。
そこで
今
回.
各種身体機 能検
査
と注 意
の客
観
的指 標
であ
るTMT
−
A
お よ び身体 機 能
に対 す
る自己 認 識
の逸 脱 を
評 仙
し,
転 倒
の発
生要 因 を総 合 的
に検 討
し た。
今
同対
象
と
し た在 宅 障 害 高 齢 者
110
名
の身体能力
評
価
で あ る最
大一
歩幅
,
握 力
.
足把 持 力
t 足関 節 背 屈 角 度
,
片 足
、k
ち保 持 時 問
,
歩 行 速 度
は,
身 体
の柔 軟 性 を 除 き
,
圧い に有 意 な 正
の相 関
が認
め ら れた
。 この こと
は,
内 的
整 合 性の 高い こ とを 示 し,
信 頼 性のあ る 身 体 能 力の 測 定 が行
え た と推 察
で き る。
ま た.
片
足 立 ち保 持 時 間
と歩 行
速度
は,
今 回 測 定
し た 全て の身 体 能 力
と有 意 な相 関
を示
し たこ とか ら,
下肢 機 能
を総 合 的
に 反映
し た指 標
とな り得
る 可能 性
が示 唆
さ れ た.
、
一
方
,
身体
の柔軟 性
は,
片
足 ・Z
ち保 持 時
問 及 び歩 行 速 度
との 問には 有 意 な 正の相 関 が 認 め ら れ た が,
その他の測 定 値 と は 有 意 な 相 関 は 認め ら れな
かっ た。諸 橋
訓 は,
老 人
ホー
ムに入 所 中
の高 齢 者
を対 象
と して.
身体
の柔 軟 性
と 下肢 筋 力
や活 動性 な ど
の運 動 能 力 を調 査
し,
柔軟 性
と各
運動 能 力
との問 に 相 関 関係
は無
かっ たと報 告
し てい るt,
今
回の結 果
も諸 橋
の研 究
結
果と
矛盾
し ない結 呆
であっ たL、
本 研 究で の 注 意
力
の 尺度
に は,
TMT
−
A
を用
い た 。TMT
−
A
は,
元 来
Army
individua
]test
battery
〔194,
1
)に
含 ま
れ てい たも
ので,
主
に注 意
の 選 択機 能 を 視 覚 的
に評
価
す
る尺 度
と して広 く用
い られている即 。注 意
に は,
集 中
と選 択
の 二つ の側 面 が あ
る。す な
わち
,
注 意
の維 持
機 能 (
持 続 的 注 意
) と注 意
の選 択 機 能
〔選 択 的注 意
) に 分類
さ れ, さ ら に.
これ らを意
図 的 にコ ン トロー
ル す る注
意の制 御 機 能
が想 定
さ れてい る3z1。注 意
の選 択 機 能
と は,
多 く
の刺 激
の中
か らあ
る刺 激
に焦 点
をあ
て る機 能
であ り
.
こ の機 能
が低
下す
ると行 動
の一
貫性
が容 易
に損
な わ れ ると
さ れ てい る33],
この こと
か ら,
注 意
の選択
機 能
は,
最 も重 要 な注 意
の構 成 要 素
であ り
,
注意
の中 核
を な す も
の と考 え ら
れ る、また
,
転 倒
が意 図 的 な 行動 中
(歩 行 な どの 立 位 動 作 中 )に 発 生 し や すい こと か ら も5)6),
注意
の選 択 機 能
を評 価 す
るTMT
−A
を本研 究
で使 用 す
る評 価 尺 度
と して採 用
し たtt冨田 30 は
,
ヒ ト は環境
の変 化
に対
し て柔 軟
に適 応
し,
バ リエー
ショ ン のあ る多 種 多 様
な動
き がlrf能
で あ る が , そのた め に は身
体 機 能
と環
境 との相
互関 係
の中
で情 報
を探 索
し,
重要 な 情 報
を ピッ ク アッ プしな
が ら活 動 す
る こと
が重 要
で あ る と 述べてい る、
高
齢者
の転
倒 は.
身
体機
能
と環境
か らの情 報 が適
切に認 知 さ れ ない場
合にも 発 生 する こと が考
え ら れる、
、
これ らの ことか ら,
転 倒 発
生要
因
と し て,
環 境 面
へ の注 意 だ
け で なく
,
自身
の身 体 機 能
へ の内方 向 的
な注 意
につ い ても検 討 す
る 必要
が あ ると
思 え た。
そ
こ で本研 究
では,
自分 自 身
の内 的 環境
へ の注 意
につ い て.
最 大
一
歩 幅
の自
己 予 測 と実
測値
との差
を 用い て.
身
体 機 能
に対 す
る自
己認 識
の 逸脱
と して表
し た。し か し,
こ の方 法
は一
般 化 され
た尺 度
ではな く
,
信 頼 性
や妥 当性
につ い て吟 味
さ れ て はい ない、
,
た だ し.
予備 実
験 と し て 同様
の方
法
で 測定
し た健 常
成 人18 名
(男 性
5
名
,
女 性
13 名
,
平 均 年 齢
21
.
3
歳
±2
.
1
)の逸 脱
8
.
7cm
±4
,
5
と非
経 験 群
49
名
の逸 脱
10
.
3cm
±2
,
3
が類 似
して い る こ と,
本 対 象例
110
名
に お け る自
己 認 識の逸 脱
がTMT −A
得
点
と有 意
な相
関 が 認 め ら れ たこと か ら,
あ る程 度
妥
当性
が あ る もの と推 察
し た、
,
転 倒 経 験 群
,
ニ ア ミ ス体 験 群
.
非 経 験 群
の3
群 問
の比
較
にお
い て,
転 倒 経 験 群
とニ ア ミス体 験 群
のTMT −A
得
点
は, 非 経 験 群 より 有 意 に 低 く,身 体 機
能の 自 己 認 識の 逸 脱 は有
意 に 大 き かっ た。一
方
,
身 体 能 力
の指 標
と し た 最 大一
歩幅
,
歩 行
速度
,
足把 持 力
,
足 関 節 背 屈 角 度
の4
項
凵は,
転 倒 経 験 群
が ニ ア ミ ス体 験 群
と非 経 験 群
よ り有
意
に低 値 を
示 し たu これ らの結
果 か ら,
今
回対 象
と し た在 宅 障 害 高 齢 者
の転
倒 は,
身 体 能 力
の低
ドに加
え,
注 意 力 が 低 ドし た 場 合に発 生 しやすい こと が 推察
さ れ た。
注 意
と転 倒
との関連 性
につ い て,
篠
田 ら]’
1]は.
転 倒
に よっ て骨 折
し た78
名
の高 齢 者 を対 象
と した調 査 研 究
か ら、
転 倒
は「
段 差
があ
っ た」
,「
他
に気 を 取
ら れ た」
一
滑
っ た」
な どの周 囲 環
境 に対
す る 注 意力
の低
ドに よ るも
のが多
かっ た と し,
注 意
と転 倒
との関 連
牲
を
指
摘
して い る、
ま
た,市
川 ら 3Sl は在 宅 高 齢 者 を対 象
とし
,
遠 藤
ら1「
°)は 入 院 中の脳卒 中片 麻 痺 患 者 を対 象
とし
た調査 研
究
におい ても
t篠
田 らの結呆
と1・
,i亅様
の報 告 を し てい る。
今
回 は,注 意 力 を
TMT
−
A
を用
い て定
量的
に評 価
し,
ロ ジステ ィッ ク回帰 分 析 な
ど に よっ て,
注 意 力
の低 下
が転
倒
の重 要 な 危 険 因 子 と な るこ とを逸 話
的で はなく
,
実 証
的
に検 証
でき
た、
、高 齢 者
の転 倒 は
,
歩 行 中
にわず
かな障 害 物
につ まず く
な
どの原 因
で転 倒
す ること が多
い とさ れているが,
今
回 の結 果
か らも
,
多 く
の刺
激の中
か ら一
部 の刺 激
に焦 点 を
あて る機 能
,
す
なわち
,
注 意
の選択 機 能
の低
下 が転
倒の危
険 因 子で ある ことが実
証さ れ た、
.
その
他
, ロ ジスティッ ク 回帰 分 析
に よっ て,
転 倒
の危
険因 子
と して抽
出 さ れ たのは,
足把 持 力
の低
下と足 関 節
背 屈 角 度
の制 限
であ
った
。著 者
ら /16 ) は,
足 趾
・
足 底 機
能 を 足把 持 力 と
し て定 量 的
に評 価 し
,
在 宅 障 害 高 齢 者
の 足把
持 力 が 姿 勢の安 定 保 持 に 関 与 す るこ と,
及 び把 持 力
の低
下 が転 倒
の危 険 因子
とな
るこ と を報 告
し た。
ま た,
MeCagni
ら11,は女 性 高齢 者
の足 部 可 動 性
の低 下
が,
転
倒 を 引 き 起こす 要 因 に な ることを報 告
している、今
回の結 果 も
,
これ ら先 行 研 究
を追 認
し た.
今
回の結 果 か
ら,
在 宅 障 害 高 齢者
に おい て は.
身体機
能
の低
下,
とく
に 足把 持 力
や足 部 可動 性 な
どの足 部 機 能
の低
b
’
が転 倒
の危
険 因 子
で あ ること
に加 え
,注 意 力
の低
下も転 倒 を 引 き起
こす
重 大 な要 因
と なっ ている 可能 性
が示
1唆
さ れ た,
これ らの こと か ら,
在 宅 障 害 高 齢 者
の転 倒
予 防
を含
め た健
康
増 進
プログ ラムに は,
足 把 持 力
や足 部
口∫動 性
を高
めるた めの トレー
ニ ング が 必要
であ り
,
注 意
力 を高
め るため の認 知
トレー
ニ ングや環 境
整備
が有
用 で あ る 可能性
が小唆
さ れた
。本 研 究
は,
平
地 歩 行 が 自 立 し ている 高 齢 者 を対 象
と した
た め,
障 害
の程 度
が軽 く
,
典
型 的 な 疾 患の特 徴, 例 えば
,
脳 血 管 障 害
にお け
る片 麻 源
や リ ウマ チ に お け る 著 明 な 関 節 変 形 を 認め な かっ た。
・
方
,
既存 疾 患
は多
岐にわ た り,
疾 患の 重 複 も多
かっ た。
し た がっ て,
転 倒
の危
険性
が高
い と さ れ る 脳 血管 障 害
,
関節
リ ウマ チ,
変 形 性 膝
関節
症 な ど,
疾
患 と転 倒
との関 係につ い て は検
討 で き な かっ たttま
た,
本 研 究
は横 断 的 研 究
であ り
,
過 去
の転 倒
経 験 と 関連 す
る要
因を 明
ら か にし
た が,
転 倒
の予測 要 因
を 明 ら かに し た と は 言い難い、
,
今 後
,
前 方 向 視 的 研 究 法
な ど に より
,
転
倒 要
因の有 無
に よっ て分 類 し
た対 象 者
の転 倒 原 因
をフォ ロー
ア ッ プす
る と とも
に,
注 意 丿
」を 高
めたり
,
足 把 持 力
の強
化 や 足部
可動
性
の拡 大
など
の トレー
ニ ン グ法
の転 倒 予 防効 果
を検
証 す
ること が重 要 と
な る。
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