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MPC MPC R p N p Z p p N (m, σ 2 ) m σ 2 floor( ), rem(v 1 v 2 ) v 1 v 2 r p e u[k] x[k] Σ x[k] Σ 2 L 0 Σ x[k + 1] = x[k] + u[k floor(l/h)] d[k]. Σ k x

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(1)

MPC

による在庫管理

Inventory Manegement via Model Predictive Control

松井 由信

1

梅田 裕平

1

穴井 宏和

1,2,3

Yoshinobu Matsui

1

Yuhei Umeda

1

Hirokazu Anai

1,2,3

1

株式会社富士通研究所

1

FUJITSULABORATORIES LTD.

2

九州大学マス・フォア・インダストリ研究所

2

Kyushu University IMI

3

国立情報学研究所

3

National Institute of Informatics

Abstract: At a retail store or wholesales, orderers must order their items adequately.For example, there are some situations such that they must order their items so as to reduce their order cost or to equalize the order quantity. In order to handle such problems unitedly, the Model Predictive Control (MPC) framework is effective, because the MPC is an optimal operation method of dynamical systems and the process of stocks can be seen as a dynamical system.In this paper, we propose a MPC framework for the inventory management and show its effectiveness by numerical examples.

1

はじめに

小売店や卸における在庫管理では,在庫は適切に管 理される必要がある.在庫切れは販売機会の損失を起 こし,一方,過分な発注による過剰な在庫は発注コス トや保管コストの増大を招くという問題がある.この 問題に対し,安全在庫量維持方式 [6, 10, 11] では,今 期中に在庫切れを起こさないと期待される最小の発注 量を,現在の在庫量と多めに見積もった需要予測から 求め,毎回このような発注量を発注し続けることによ り,在庫切れを起こさない中で在庫を常にできるだけ 少なく保とうとする. しかし,商品によっては,在庫を常にできるだけ少 なく保つことが必ずしも適切でない場合がある.例え ば、ロット単位でまとめて発注すると割安になる商品 では,端数分の発注量をロットにまとめるように発注 したほうがコストの面では最適である(図 1).図 1 の 2 期先予測発注は,発注コストを下げるために一時的に 在庫量をあえて増やしており,発注コストの観点から は在庫を常に小なく保つことは必ずしも適切ではない. 発注コストの観点から適切な在庫管理を行うために は,長期予測に基づき,在庫切れを起こさない中で,発 注コストの合計を最小化する発注計画を最適化問題 [4] 連絡先:株式会社富士通研究所       神奈川県川崎市中原区小田中 4-1-1        E-mail: m.yoshinobu@jp.fujitsu.com を解くことにより求め,その最適計画によって在庫を 管理することが考えられる.しかし,この最適計画に 従って実際に在庫を管理していく中で,実需要が当初 の需要予測と異なってしまった場合,その時点で当初 の最適計画は最適とは言えなくなってしまう.例えば, 実需要が予測よりも大きく伸びたとき,当然在庫切れ を起こしてしまう.これを避けるためには,実需要か ら発注計画を逐次的に修正する必要がある. 実測から最適化問題を解いて得た最適計画を逐次的 に修正し(動的)システムを運用するという考え方は, システム制御分野における Model Predictive Control (MPC)[14] の概念 [13] に合致する.MPC は化学プラ ントのプロセス制御などのものづくり分野で発展を遂 げてきたが,その枠組みは EMS(Energy Management System) などのソリュ―ション分野にも適用すること ができ,多くの成果が報告されている [5]. MPC の考え方にしたがって在庫管理を行うことで, 様々な評価指標に対する適切な在庫管理が可能となる 可能性がある.例えば,卸の在庫管理では,発注コス トの低減化とともに,商品納品時の作業負担や生産側 の生産量安定化の観点から,発注量の上下変動の回数 と変動幅をできるだけ抑える(発注量の平滑化)こと が望まれる. しかし,従来の MPC では物理モデルにしたがって 確定的な予測を行うことを想定していたのに対し,在

(2)

庫管理における MPC では,需要予測に従う確率的な 予測を行うことになる.これにより,最適計画の立案 に当たって,確率過程に基づく最適化問題を定式化す ることになるが,一般にその取扱いは容易ではない. 本稿では,確率過程に基づく最適化問題の取り扱い が容易になるような予測モデルを仮定することで,在 庫切れを起こさない中で発注コストの低減化や発注量 の平滑化を達成する在庫管理が MPC により可能にな ることを数値例によって示す. 以下の記号を用いる.RpNpZpはそれぞれ p 次 元の実数体,自然数体,整数体を表す.N (m, σ2) は平 均 m,分散 σ2のガウス分布を表す.以下の関数を定 義する.関数 floor(·) は, 引数の小数点以下切捨てを行 う.関数 rem(v1,v2) は引数 v1を引数 v2で割った余り を求める.なお,変数に対する下付き添え字 r,p,e は それぞれその変数が実量,予測量,推定量であること を表わし,· はその確率変数の平均を表す. 図 1: 長期予測の効果の例

2

在庫量変動のモデル化

小売店や卸における在庫量変動を動的システムとし てモデル化する.なお,簡単のため 1 商品のみを扱う. まず,t∈ R を連続時間とする.t を一定の発注機会の 間隔 h∈ R で区切って離散化する.h で区切られた離 散時間を k∈ Z で表す.さらに発注から商品が届くま での時間(リードタイムという)を L∈ R+で定義す る.以上のもと,以下の基本的な変数を定義する. • x[k] ∈ Z+:時刻 t = kh における在庫量 • u[k] ∈ Z+:時刻 t = kh における発注量 • d[k] ∈ Z+:時刻 kh≤ t < (k + 1)h における需要 ここで,L = 0 を仮定すると,在庫量変動を以下のよ うな動的システム Σ として記述することができる. Σ:x[k + 1] = x[k] + u[k]− d[k]. 発注量 u[k] と在庫量 x[k] がそれぞれ Σ の入力と出力 である.この場合,x[k] は Σ の出力であると同時に状 態でもある.図 2 にこれらの変数間の関係を挙げる. なお,本稿では扱わないが L̸= 0 の通常の場合は以 下のようになる. Σ:x[k + 1] = x[k] + u[k− floor(L/h)] − d[k]. Σ の簡単な取扱い例を挙げる.例えば,k 期の実在 庫量 xr[k] と k 期の需要予測 dp[k] からの 1 期先の予 測在庫量 xp[k + 1] が xp[k + 1] = xr[k] + u[k]− dp[k] となる.したがって,予測による k 期中に在庫切れを 起こさないと期待される最小の発注量(安全在庫維持 方式の発注量)は,dp[k] を多めに見積もった需要とし て,xp[k + 1] = xr[k] + u[k]− dp[k]≥ 0 から u[k] = −xr[k] + dp[k] である. 図 2: Σ の各変数の関係

3

Σ

MPC

運用

Σ の MPC 運用について述べる.具体的には,以下 の手順を踏み,毎期ごとに最適計画を立案し直し入力 を逐次修正する. • STEPI Σ の今期の実出力 xr[k] を観測する. • STEPII xr[k] をもとに,Σ に従って長期の予測 を行う.この長期の期間を本稿では H で表す.た だし,予測をすると言ってもこの時点では入力計 画 u[k], . . . , u[k + H− 1](図 3) の各値によって多 岐に渡るさまざまな未来が存在する. • STEPIII STEPII の様々な未来の中から,ある 評価指標に対する最適化問題を解くことによって, 最適計画を求める. • STEPIV STEPIII で決定した最適計画から,現 在の入力 u[k] のみを実際に Σ に印可する. • STEPV k → k + 1 として STEPI に戻る.

(3)

図 3: H 期間の評価 このような手順を踏む理由について述べる.Σ がも し完全に確定的であるならば,このように毎期ごとに 最適計画を立案し直して入力を逐次修正する必要はな い.初めに入力を決定した時点で H 期先までの未来が 完全に達成されるはずである.しかし,Σ は不確かな 需要予測 dp[·] を含む.Σ は動的システムであるので, 未来の x[·] が現在からの任意時刻の dr[·] に依存する. これにより,途中 dp[·] ̸= dr[·] であると x[·] は当初想定 していた挙動から大きく外れてしまう.MPC では毎期 ごとに実出力を観測し,最適計画を立案し直し,入力 を修正することで,できるだけこのようなことが起こ ることを避ける. つぎに,長期予測をする理由であるが,冒頭で述べ たように,今期の最適な入力は長期予測を行ってはじ めて決まるためである. ここで,安全在庫維持方式の発注量の決定法を振り 返ると,これは,H = 1 の MPC で以下の安全在庫問 題 1 によって,最適計画を立案していることに相当す る.解は u[k] =−xr[k] + dp[k] で自明である. 安全在庫問題 1   目的関数:u[k]→ 最小化 制約条件:xp[k + 1] = xr[k] + u[k]− dp[k]≥ 0   状況によって在庫管理の評価指標は様々なものが考 えられるが,本稿では以下のような発注量決定問題 1 を考える. 発注量決定問題 1   目的関数:H 期先までの合計発注コストの最小化 や発注量の平滑化 制約条件:H 期先までの各期中に指定の確率で在 庫切れを起こさない   安全在庫問題との大きな違いは H ̸= 1,すなわち長 期予測をすることである.これにより,上記の発注量決 定問題は確率過程に基づく最適化問題となるため,そ の扱いは容易ではない.本稿では長期予測が比較的扱 いやすいガウス過程となる需要予測モデルを扱う.

4

需要予測

本節では, 本稿で用いる需要予測について述べる.ま ず,需要予測モデルに以下の線形・ガウス型状態空間 モデルを仮定する. Σdp: { ξ[k + 1] = F ξ[k] + Gv[k](状態方程式), dp[k] = Hξ[k] + w[k](観測方程式). Σdpにおいて,ξ[k]∈ R pは観測方程式を d p[k] の回帰 式とみると,その回帰係数である.これは直接には観 測できないベクトル値確率変数であり,Σdpの状態であ る.v[k]∈ Rq,w[k]∈ R は確率的に変動する雑音であ る.F, G, H はそれぞれ適切なサイズの実行列である. 最後に dp[·] は確率変数であることに注意する.Σdpに は以下が仮定されている. • ξ[1] ∼ N (ξ[1], P [1]), k = 1 は初期値の意 • ∀k ∈ N, v[k] ∼ N (0, Q), w[k] ∼ N (0, R) (白色ガウス雑音) • ∀k ∈ N,ξ[1] は v[k], w[k] と独立 以下 P [·] は ξ の(誤差)分散共分散行列を表すものと する. 線形・ガウス型状態空間モデルによって様々な形の 時系列モデルを表現することができ,経済時系列の表 現に必要な,AR モデル・MA モデル・ARMA モデル・ トレンド項・季節調整項・曜日効果項・イベント項な どを一括して表現することができる [9].線形・ガウス 型状態空間モデルによる経済時系列の分析・予測の実 例として [2, 3, 15] が挙げられる. 本稿では以下の手順で長期需要予測を行う. • STEPi いくつかの適切と思われる線形・ガウス 型状態空間モデルを選定し,それぞれについて過 去データから対数尤度を最大化する Q, R,ξ[1], P [1] を数値最適化により求める [15].(k = 1 は STEPiii の初期値の意)

• STEPii AIC(Akaike Information Criteria)[1] に より STEPi で決定した各予測モデルの優劣を評 価し,最も適切だと思われるものを予測モデルと して決定する.必要であれば STEPi のモデルの 選定からやり直す. • STEPiii カルマンフィルタにより,各時刻におい て観測値 dr[k−1] から状態の推定値の平均 ξe[k− 1] と分散 Pe[k− 1] を求める.

(4)

• STEPiv STEPiii の状態の推定値をもとに以下 の定理 1 から需要の長期予測を行う. カルマンフィルタを用いるのは,需要が非定常時系 列となることを想定しているためである.カルマンフィ ルタにより,定常な線形・ガウス型状態空間モデルか ら非定常時系列の予測が可能となる.具体的には,初 期値から以下の STEP を踏むことにより,観測値から 線形・ガウス型状態空間モデルの状態を逐次的に推定 していく [7, 8]. • STEP1ξp[k− 1] = F ξe[k− 2]. ただし,ξe[1] = ξ[1]• STEP2Pp[k− 1] = F Pe[k− 2]FT+ GQGT. ただし,Pe[1] = P [1]• STEP3K[k− 1] = Pp[k− 1]HT(HPp[k− 1]HT+ R)−1• STEP4ξe[k−1] = K[k−1](dr[k−1]−Hξp[k−1])• STEP5Pe[k−1] = Pp[k−1]−K[k −1]HPp[k−1]. 需要の長期予測についてつぎの定理 1 を示す. 定理 1 i = 0, . . . , H− 1 について, dp[k + i]∼ N (µ[k + i], V [k + i]). ただし, µ[k + i] = Hξp[k + i], (1) V [k + i] = HPp[k + i]HT + R. (2) ここで, ξp[k + i] = Fi+1ξe[k− 1], (3) Pp[k + i] = F(i+1)Pe[k− 1]F(i+1)T + ij=1 Fj−1GQGTF(j−1)T. (4) 証明 (1) 式は観測方程式より自明であり,(2) 式は観測 方程式から dp[k + i] は多次元ガウス分布 ξp[k + i] を線 形変換し,さらに独立な確率変数 w[k + i] を足したもの であることによる.(3),(4) 式はそれぞれ,ξp[k + i] = F ξp[k + i−1] と Pp[k + i] = F Pp[k + i−1]FT+ GQGT が成り立つことによる [7].

5

発注量決定問題

本節では, 発注量決定問題 1 の具体的な定式化を行う.

5.1

目的関数

一般の発注コストに対する目的関数 J を k 期の発注 コストを表す関数を fk(u[k]) として, J = k+H−1 i=k fi(u[i]) とする.例えば,曜日ごとに変わる発注コストを表す ために k の値によって周期的に関数を変える. しかし,本稿では簡単のため,k に依存しない以下 の関数 R(·) を扱う.

R(u[k]) := floor(u[k]/lot)× (lot − nr) × pr +rem(u[k], lot)× pr. lot,nr,pr はそれぞれ,ロット単位の個数,ロット単位 で発注することによって割安になる個数,商品 1 個当 たりの発注コストを表す.R(·) は,1 個 pr 円の商品に 対し,lot 個単位で発注すると発注コストが nr 個分割 安になることを表している.これにより,本稿で扱う 発注コストに対する目的関数 Jcは以下になる. Jc = k+H−1 i=k R(u[i]). 発注量平滑化に対する目的関数 Jeを, Je= k+H−1 i=k ∥u[i] − u[i − 1]∥1 とする.ノルムは l2でとるのが一番自然だが,後の最 適化計算の都合から本稿では l1でとる.これらの目的 関数はつぎの制約と異なり,確率要素を含んでいない ことから,確定的に扱っていることに注意する.

5.2

制約条件

まず,本節で用いるガウス分布に対する確率を表す 記号を定義する.ガウス分布の標準偏差の a[k] 倍で規 定される確率を P (a[k]) と定義する. P (a[k]) :=√1 2πσa[k]σ −∞ exp ( −(y− m)2 2 ) dy. a[k] = 2 なら,P (a[k]) = 0.976 である(図 4).

(5)

図 4: P (a[k]) の例 「H 期先までの各期中に指定の確率で在庫切れを起 こさない」という条件を以下の定理 2 で与える. 定理 2 つぎが成り立つとき,確率各 P (a[k]), . . . , P (a[k+ H− 1]) で k 期から k + H − 1 期までの各期中に在庫 切れを起こさない. xr[k] + u[k]− (µ[k] + a[k]V [k])≥ 0, xp[k +1]+u[k +1]−(µ[k+1]+a[k+1]V [k + 1])≥ 0, .. . xp[k + H− 1] + u[k + H − 1] −(µ[k + H − 1] + a[k + H − 1]V [k + H− 1]) ≥ 0. この連立不等式をまとめて xC(a[k], . . . , a[k+H−1]) で表すことにする. 証明 dp[k], . . . , dp[k + H− 1] がそれぞれガウス分布で あるので,xp[k + 1], . . . , xp[k + H] もそれぞれガウス 分布であり,各 u[k], . . . , u[k + H− 1] によってその平 均のみが変わることより明らか(図 5). 図 5: xp[·] の確率過程 ここで, (※) : { k期中P (a[k])で在庫切れを起こさず, かつ k + 1期中にP (a[k + 1])で在庫切れを起こさない. という条件下で,Jcを最小化する発注の仕方を具体的 に考える.このとき,(※) を満たし,かつ Jcを最小化 にする解の組が複数存在する場合がある.このような 例を図 6 に示す.今期に多く発注しても,今期と次期に 同じだけ発注しても,発注コストの合計の最小値は同 じである.しかし,発注 1 の方が毎回の在庫量が少なく なっており,(場合にもよるが)一般的には発注 1 の方 が好ましい.最適化問題を解いたときに,このような 解が導出されるようにするため,本稿では,{P (a[i])}i を R(u[i]) の重みとし,以下の (5) 式のように目的関数 を修正する.これにより,最適化問題を解く際に後期 になるほど発注コストが安くなり,最適化はできるだ け後期に多めに発注することで発注コストを安くしよ うとする. Jcm= k+H−1 i=k R(u[i])× {P (a[i])}i. (5) しかし,このとき恒等的に Jcm ≤ Jcとなってしまい, Jcmを最小化しても Jcを最小化しない可能性がある. そこで,ある大きな定数 M を用いた以下の制約を付加 することで,Jcmを最小化することで,できるだけ Jc を最小化する仕組みを発注量決定問題に取り入れる. jC:Jc≤ Jcm+ M. 図 6: 複数の解が導出される例

5.3

発注量決定問題

5.1,5.2 節から前節の発注量決定問題 1 は具体的に 以下の多目的最適化問題となる. 発注量決定問題 2   目的関数:Jcm,Je→ 最小化 制約条件:xC(a[k], . . . , a[k + H− 1]),jC  

(6)

6

数値例

6.1

実需要と予測

本節では,図 7 の上図で表される 140 期分の実需要 と予測について,発注量決定問題 2 により在庫を MPC 運用し,安全在庫維持方式と比べてその有効性をみる. 予測は 2 次のトレンド項,4 次の季節調整項,3 次の AR 項からなる線形・ガウス型状態空間モデルを用い てカルマンフィルタにより,予測モデルの状態を逐次 修正することにより行った.図 7 の下図は 1 期先予測 の平均をトレンド・季節調整・AR の各成分に分解した ものである.季節調整成分,AR 成分は終始安定して おり,カルマンフィルタにより緩やかに変動するトレ ンド成分を追えていることが分かる.   図 7: 実需要と予測

6.2

発注量決定問題の設定

発注コスト関数 R(·) について lot= 500,nr= 50, pr= 460 とする.発注量に対して, uC:∀k, 0 ≤ u[k] ≤ 10000 の制約を設ける.この制約により,max{Jc},max{Jcm}, max{Je} を計算できる.また,M = max{Jc− Jcm} とする. 発注量決定問題 2 は,Jcm,Jcをバイナリ変数を用 いて表現し [12],さらに目的関数を重みつき線形和にす ることにより,MILP(Mixed Intejar Linear Program-ming) として定式化することができる. 具体的に以下の発注量決定問題 3 を解く.パラメー タ z により,Jcm, Jeのどちらを重視するかを決める. 発注量決定問題 3   与えられたパラメータ z∈ [0, 1] に対し, 目的関数:(1− z) Jcm max{Jcm}+ z Je max{Je} → 最小化

制約条件:xC(a[k], . . . , a[k + H− 1]), uC,jC a[k] =· · · = a[k + H − 1] = 2   また,比較対象の安全在庫問題 2 は具体的に以下である. 安全在庫問題 2   目的関数:u[k]→ 最小化 制約条件:xr[k] + u[k]− (µ[k] + 2V [k])≥ 0   なお,発注量決定問題 3 を解く過程において最適化問 題が解なしとなってしまった場合は,安全在庫問題 2 の発注量を採用するもとする.

6.3

長期予測の効果

発注コストに対する長期予測の効果を検証する.z = 0,H = 1 としたときの各発注量と在庫の様子を図 8 に 示す.発注コストの合計は MPC と安在庫量維持方式 でそれぞれ,283, 125, 400 円と 283, 540, 320 円であっ た.安全在庫量維持方式による発注コストの合計は本 稿での検証中変わることはないので,これ以降の検証 では発注コストについて(MPC による発注コスト計 安全在庫量維持方式による発注コスト計)の差額を発 注コストの評価指標とする.z = 0,H = 1 のときの 差額は−414, 920 円である.MPC では各発注機会にお いて 500 個単位での発注量の丸めが生じる分,多少コ ストが安くなっているが大きな差はない.このときの MPC による発注は,安全在庫量維持方式の発注量を割 安のロット単位で丸めた発注である.つぎに,z = 0, H = 4 としたときの各発注量と在庫の様子を図 9 に示 す.差額は−1, 236, 940 円であったので,冒頭述べた ように発注コストに関して長期予測を行う効果がはっ きりある.また,このとき 140 期分のシミュレーショ ンににかかった時間は Intel (R) Core (TM) i5-2520M CPU 2.5 GHz and 4.0 GByte memory のラップトップ で,MATLAB の MILP ソルバー intlinprog を用いて 計 10.1 秒であった.

(7)

図 8: z = 0,H = 1 のときの発注量と在庫量の推移図 9: z = 0,H = 4 のときの発注量と在庫量の推移

6.4

発注平滑化とのトレードオフ

MPC が発注コストに対して効果があることが示さ れたが,図 9 を見ると発注量は各期において大きく上 下変動している.これにより,商品納品時の作業負担 や生産もとへの生産量安定の観点からは適切な在庫管 理ができているとは言えない.そこでパラメータ z を 変えることで,できるだけ発注量の上下変動を抑える (平滑化する)ことを試みる.まず,平滑化のみを考え たとき,すなわち z = 1,H = 4 としたときの各発注 量と在庫の様子を図 10 に示す.発注量を完全に平滑 化しているが在庫が大きく増えている.さらに差額は +10, 399, 680 円であった.そこで,z = 0.29,H = 4図 10: z = 1,H = 4 のときの発注量と在庫量の推移 とした.このときの各発注量と在庫の様子を図 11 に示 す.発注量はそれなりに平滑化されており,また,差 額も−1, 123, 780 円であったので,発注コスト・平滑 化の両観点からよい在庫管理ができている.また,在 庫量の推移を見てみると MPC では在庫量が一時的に 増え,また安全在庫量の水準まで在庫量を減らすとい う在庫管理をしていることが分かる.これは,逆にい うと MPC は一時的に在庫を増やすことにより発注量 の平滑化を行い,また,全体的に在庫量を減らすこと により発注コストの低減を行っているといえる.この ような在庫管理も MPC の長期予測なくして不可能で ある.

(8)

図 11: z = 0.29,H = 4 のときの発注量と在庫量の 推移

7

まとめ

本稿では,予測モデルを仮定することで在庫を MPC の枠組みで運用し,MPC によって,発注コストの低減 化や発注量の平準化を達成する在庫管理ができること を数値例によって示した. 本稿で示した方法で実際に効果を挙げられるかどう かは,やはり長期予測の精度による.線形・ガウス型 の予測モデルで精度よく予測できる場合は,数値例で 示したような在庫管理を MPC により実現できる可能 性が高いと考えるが,線形・ガウス型の予測モデルの 枠組みでは,長期予測の精度が向上しない場合,より 汎用的な予測モデルによって予測精度の向上を試みる ことが想定される.しかし,需要予測が一般的な確率 過程となる場合は,その扱いは計算量の観点から容易 ではない. 需要予測が一般的な確率過程となる場合の計算量の 少ない定式化の検討および,最適計画における各確率 の設定法の検討が今後の課題である.

謝辞

本稿の執筆にあたり,富士通研究所の大堀耕太郎研 究員に貴重な助言を頂きました.大堀耕太郎研究員に 深く感謝いたします.

参考文献

[1] Akaike, H, “Information theory and an extension of the maximum likelihood principle,” Proceed-ings of the 2nd International Symposium on In-formation,pp. 267–281,1973. [2] 赤池 弘次,北川 源四郎編:時系列解析の実際 I, 朝倉書店, 1994. [3] 赤池 弘次,北川 源四郎編:時系列解析の実際 II, 朝倉書店, 1995. [4] 穴井 宏和:数理最適化の実践ガイド, 講談社,2013. [5] 岩根 秀直, 穴井 宏和, 篠原 昌子, 村上 雅, “ピーク 電力削減のためのノート PC のバッテリー制御,” 計測自動制御学会論文集, vol. 49, no. 2, 2013. [6] 春日井 博:総合在庫管理システムの設計, 日本経 営出版会,1971. [7] 片山 徹:新版応用カルマンフィルタ,朝倉書店, 2000. [8] 片山 徹:非線形カルマンフィルタ,朝倉書店, 2011. [9] 北川 源四郎:時系列解析入門,岩波書店, 2005. [10] 児玉 正憲, 生産・在庫管理システムの基礎, 九州 大学出版会,1996. [11] 淺田 克暢, 岩崎 哲也, 青山 行宏:在庫管理のため の需要予測入門, 東洋経済新報社,2005. [12] 藤江 哲也,整数計画法による定式化入門. オペ レーションズ・リサーチ誌,vol. 57,no. 4,pp. 190– 197,2012.

[13] S. Bose, J.F. Pekny, “A model predictive frame-work for planning and scheduling problems: a case study of consumer goods supply chain,” Computers and Chemical Engineering, vol. 24, pp. 329–335, 2000. [14] J. M. Maciejowski 著,足立・管野訳:モデル予測 制御-制約のもとでの最適制御,東京電機大学出版 局,2005. [15] 山口 類, 土屋 映子, 樋口 知之, 状態空間モデルを 用いた飲食店売上の要因分解, オペレーションズ・ リサーチ誌, vol. 49, no. 5, pp. 316-324, 2004.

図 3: H 期間の評価 このような手順を踏む理由について述べる.Σ がも し完全に確定的であるならば,このように毎期ごとに 最適計画を立案し直して入力を逐次修正する必要はな い.初めに入力を決定した時点で H 期先までの未来が 完全に達成されるはずである.しかし,Σ は不確かな 需要予測 d p [ · ] を含む.Σ は動的システムであるので, 未来の x[ · ] が現在からの任意時刻の d r [ · ] に依存する. これにより,途中 d p [ · ] ̸ = d r [ · ] であると x[

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