2月豆知識 『建築基準法に規定される「道路」について』
1.はじめに 今回の豆知識では、「道路」について取り上げたいと思います。一概に「道路」といっても様々な ものがあります。通常よく知られている道路の分類としては、市町村道、都道府県道、一般国道な どの道路法に規定される道路があります。その他、所有者・管理者により分類される公道、私道と いった分類や建物を建てる際に重要となる建築基準法に規定される道路などがあります。不動産の 鑑定評価においては、対象不動産(土地)が接する道路の種類によってその価値が大きく異なるた め、道路に関する調査は非常に重要です。そこで鑑定評価において特に重要となる建築基準法に規 定される「道路」についてまとめるとともに、大阪市、京都市、大津市におけるそれぞれの地域特 有の「建築基準法に規定される道路」を紹介します。さらに、建築基準法における道路に関連する 条項についても簡単にまとめて記載します。 2.建築基準法に規定される「道路」について 一般に建物を建築する場合、その敷地が建築基準法に規定される「道路」に2m 以上接している必 要があります。この条件を満たさない敷地では、原則建物を建築することができません。従って、 敷地が接している道路が建築基準法に規定されている道路であるか否かは不動産の価値に大きく 影響します。 さて、建築基準法においては42 条において「道路」が規定されています。 建築基準法42 条では、第 1 項に 1 号~5 号(いわゆる 1 号道路~5 号道路)の 5 種類が規定され、 第2 項ではいわゆる 2 項道路が、さらに 2 項道路の特例的位置づけの第 3 項に基づく道路の合計 7 種類の道路が規定されています。以下に建築基準法に規定される各道路等の内容について記載しま す。 (1) 42 条 1 項に基づく道路 建築基準法42 条 1 項では「道路」を次に示す 1 号~5 号の 5 種類のいづれかの道路に該当し、か つ幅員4m以上のものとする旨規定されています。それぞれの道路の内容は次の通りです。 1 号道路 1 号道路は道路法による道路と規定されています。1 号道路は、道路の維持管理なども行政が行う ため、建築物を建てる際には最も安定性の高い道路といえます。 2 号道路 2 号道路は、都市計画法、土地区画整理法等に基づく道路と規定されています。一般市街地の開発 行為などで宅地造成に付随して築造される道路がその一例です。2 号道路は築造後、道路管理者に 引き継がれた後は1 号道路に該当します。したがって、2 号道路は道路を築造し、公共団体が管理 する1 号道路に引き継がれない場合、または引き継ぐまでの間、私道のまま建築基準法上の道路と するための規定と解釈することができます。 3 号道路 3 号道路は建築基準法の適用および都市計画区域に指定される以前(以下、基準時という)から存 在し、現存する道路と規定されています。3 号道路となるための要件は、①基準時に幅員が4m以上確保されていたこと②基準時に現実の道路としての形態があり、道として機能していたこと③① に加え、一般交通の用に供されていたことの3 点であり、その道に建築物が建ち並んでいたかどう かについては要件ではありません。幅員4m以上の公道は通常42 条 1 項 1 号道路に該当するため、 3 号道路は基本的には私道を規定したものと考えられます。尚、3 号道路とみなされると私道であ っても一般交通の用に供することを義務付けられるため、むやみに廃止・変更することが制限され ます。 4 号道路 4 号道路は都市計画において定められた計画道路かつ 2 年以内に事業執行予定で特定行政庁が指定 した道路と規定されています。本道路は、工事前、または工事中で、道路形態が整っていない、い わば実態のない道路について特定行政庁が指定することにより道路とみなすものです。4 号道路に 指定されると、計画道路でも接道条件を満たす道路になります。従って計画道路内の敷地部分は道 路として建築敷地から除かれ、そのため4 号道路が指定されることで突然違法建築(既存不適格建 築物)となる可能性があります。その反面、容積率の算定では計画道路を前面道路として算定でき るため、有利に働く場合もあります。 5 号道路 5 号道路は土地を建築物の敷地として利用するため、政令に定める基準に適合する道を築造しよう とする者が特定行政庁からその位置の指定を受けた道路と規定されています。(いわゆる位置指定 道路)一般的には、開発許可が不要な比較的小規模の土地で行われる道路の築造の場合に指定され ます。5 号道路の要件は、①特定行政庁の指定を受けること、②基準に適合する道であること、③ 関係権利者の承諾を得ることの3 点です。尚、5 号道路(位置指定道路)の詳細については、豆知 識Vol.9 「位置指定道路について」を参照下さい。 (2) 42 条 2 項道路 42 条 2 項においては、建築基準法第三章が適用されるに至った際、現に建物が建ち並んでいる幅 員4m未満の道で、特定行政庁が指定した道路をいい、この道路を建築基準法上の道路とみなし、 その道路中心線から水平距離2m の線をその道路の境界線とみなす旨規定されています。 本道路が規定された根拠は、建築基準法が適用になる以前の旧市街地建築物法の時代に4m未満の 道路が多数あり、これらの道路の救済措置として規定されたようです。2 項道路の指定を受けた道 路に接する土地においては、道路中心線から水平距離2m後退した位置で建築を行うことになりま す。 (3) 42 条 3 項道路 42 条 3 項では、土地の状況によりやむを得ない場合においては、42 条 2 項の規定に関わらず、道 路中心線からの水平距離を2m未満1.35m 以上で指定することができる旨規定されています。尚、 3 項道路の指定にあたっては建築審査会の同意が必要になります。 また、3 項道路は、以前は 3 項の規定が創設された際に指定の対象とされていた傾斜地や漁村など における指定がほとんどでしたが、国土交通省がH16 年に 42 条 3 項に関する運用通知を示し、「地 域の歴史的文化を継承し路地や細街路の美しいたたずまいの保全・再生を図る場合や密集市街地内 の老朽化した木造建築物の建替えの促進を図る場合について、特定行政庁がその指定を考慮するこ とは差し支えない」として、市街地の路地や細街路にも3 項道路の適用が検討されるようになりま
した。 (4) 43 条 1 項ただし書の規定に基づく許可について 建築基準法上の道路ではありませんが、建築基準法43 条第 1 項ただし書の規定に基づく許可によ り敷地が42 条の道路に接しない場合(細街路または通路にのみに接面する場合)であっても一定 の要件を満たすことにより建築物の建築が可能となる場合があります。 建築基準法43 条 1 項では、建築物は建築基準法上の道路に 2m以上接しなければならない旨が規 定されており、そのただし書において「その敷地の周辺に広い空地を有する建築物その他の国土交 通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障が ないと認めて建築審査会の同意を得て許可したものについてはこの限りはない。」と規定されてい ます。 上記国土交通省令で定める基準は、建築基準法施行規則第10 条の2に規定されています。これに よると、①その敷地の周囲に公園、緑地、広場等広い空地を有すること。②その敷地が農道その他 これに類する公共の用に供する道(幅員4m以上のものに限る)に 2m 以上接すること。③その敷 地がその建築物の用途、規模、位置及び構造に応じ、避難及び通行の安全等の目的を達するために 十分な幅員を有する通路であって、道路に通ずるものに有効に接すること。のいずれかに該当する 場合には、42 条に規定する道路に接しない場合でも建築物の建築が可能となります。 3.大阪市、京都市、大津市における各地域特有の道路について 建築基準法では、交通上、安全上、防火上及び衛生上の観点から、道路について42 条 1 項におい て全国一律の規定を設けていますが、地域の歴史や特徴に応じた道路が42 条の範囲内で指定され る場合があります。また、上述した通り42 条に規定される道路には接しないが、43 条 1 項ただし 書により敷地周辺の状況及び建築物の条件により個別に建築が許可される場合があります。 以下に大阪市、京都市、大津市における各地域特有の道路及び接道に関する許可基準について紹介 します。 (1)大阪市 大阪市では建築線道路という現在の建築基準法における位置指定道路に該当する道路があります。 これは旧市街地建築物法により幅員9 尺(2.7m)以上の建築線が指定されているもので、路線毎 の指定又は地域により一括指定されるものがあります。 この市街地建築物法第7 条但書の規定によって指定された建築線で、その間の距離が 4m以上の道 路については建築基準法附則5 項道路といわれ、大阪市内では各地で指定されています。 そのなかで最も有名な建築線道路が「船場建築線」による道路です。 船場建築線が指定されている船場地区は、幅員約6m 及び 8m の道路を中心に古くから市街地 が形成された地区であるため、現在の建築基準法をそのままあてはめた場合には、現在建って いる規模よりも小規模な建築物となることがあります。 船場建築線は、このような船場地区のまちの歴史と建築の需要を踏まえ、旧市街地建築物法第 7 条ただし書にもとづき、昭和 14 年 4 月に大阪府告示 404 号によって道路中心から 5m又は 6mの建築線(幅員 10m 又は 12mの道路とみなされる)が指定されました。現在の指定状況は下 記大阪市のホームページにて確認することができます。 尚、船場建築線の詳細については、豆知識Vol.28「船場建築線について」及び 大阪市ホームページ:http://www.city.osaka.lg.jp/toshikeikaku/page/0000012072.html を参照下
さい。 (2)京都市 京都市は、昔ながらの町並みが多く残る都市であり、細街路と言われる細い道路が多く存します。 そのため、道路幅員を4m 以上確保するための施策が講じられる一方で、東山区祇園町南側地区に おいて42 条 3 項に基づく幅員 2.7mの道路が指定されています。これは、以前から京都市内の伝 統的建築物の建ち並ぶ細街路では、2 項道路を拡幅すると、風情のある町並みが壊されてしまうこ とが問題となっていました。そんな中、平成15 年の建築基準法改正時に創設された 43 条の2「そ の敷地が4 メートル未満の道路にのみ接する建築物に対する制限の付加」、並びに上記 42 条 3 項 道路の説明欄に記載した平成16 年の国土交通省運用通知を受けて、平成 16 年から 3 項道路指定 の検討が行なわれ、「京都市歴史的細街路にのみ接する建築物の制限に関する条例」による建築物 の構造の制限を加えた上で、平成18 年 3 月に幅員 2.7mの道路 9 路線が 3 項道路として指定され ました。(指定路線は下図参照) URL:http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0368pdf/ks0368028.pdf また、建築基準法43 条 1 項ただし書の規定に基づく許可基準を設けることにより、一定の要件を 満たす敷地について、細街路または通路にのみ接する場合においても建築物の建替えが可能とされ ています。京都市においては、幅員 1.8m以上 4m未満の通路についても基準時もしくは適用時※ に建築物が存していたことを要件として2 階建以下(地階無)の専用住宅又は基準時の建築物と同 じ用途の建築物の建築が可能となるような許可基準が設けられています。但し、改築時には42 条 2 項道路の場合と同様に対象地の前面道路中心から 2m の範囲には建築することはできません。 ※基準時とは、建築基準法施行時又は都市計画区域の指定時(地域により異なる)を指します。 適用時とは、建築基準法の改正により43 条 1 項但書において特定行政庁の許可が必要となった時 (平成11 年 5 月 1 日)を指します。 (3)大津市 大津市においては、1.8m 未満の道を 42 条 2 項道路として指定した通称 6 項道路が市内の3地域 に指定されています。6 項道路は、建築基準法 42 条 6 項において「特定行政庁は第 2 項の規定に より 1.8m 未満の道を指定する場合においてはあらかじめ建築審査会の同意を得なければならな い。」と規定されるものです。通称6 項道路と言われていますが、建築基準法上は(42 条 6 項の指 定を受けた)2 項道路として扱われています。大津市において 6 項道路が指定されている地域とし ては、下図に示す長等3 丁目地先、本堅田 2 丁目地先、瀬田一丁目地先の地域です。
長等 3 丁目地先
瀬田一丁目地先 本堅田 2 丁目地先
4.建築基準法における道路に関連する条項について 建築基準法における道路に関連する条項としては、主に容積率、建ぺい率、高さ等の制限に関する 規定があります。以下にその内容を示します。 (1)52 条 2 項 容積率の道路幅員に基づく制限 建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合(以下「容積率」という。)は52 条 1 項の規定により用 途地域毎に定められている値から都市計画にて決定されることになっていますが、52 条 1 項に定 めるもののほか、前面道路の幅員が12 メートル未満である建築物の容積率は、当該前面道路の幅 員に、用途地域に応じて 4/10 もしくは 6/10 を乗じたもの以下でなければなりません。例を挙 げますと、都市計画にて容積率200%まで許容されている第一種住居地域に存する敷地を想定した 場合、前面道路が4mの場合には 4m×4/10=16/10 すなわち容積率 160%までしか建物が建てら れないことになります。 (2) 52 条 9 項 特定道路に接続する道路に接する敷地の道路幅員緩和 建築物の敷地が、幅員15 メートル以上の道路(以下「特定道路」という。)に接続する幅員6メー トル以上 12 メートル未満の前面道路のうち、当該特定道路からの延長が 70 メートル以内の部分 において接道する敷地においては、容積率の制限につき緩和規定があります。52 条2項~7項(道 路幅員に基づく容積率の制限等)の規定の適用にあたり、前面道路の幅員に建築基準法施行令135 条の17 に規定される「容積率の制限について前面道路の幅員に加算される数値」を加算すること ができます。以下にその算定式及びイメージ図を示します。 施行令135 条の 17 に規定される算定式 Wa=(12-Wr)×(70-L)÷70 Wa:対象地前面道路幅員に加算する数値 Wr:前面道路の幅員(m) L:特定道路からその建築敷地が接する前面道路部分の直近の端までの延長(m)
(3) 53 条 3 項 角地等による建ぺい率の緩和 53 条 3 項は、①建ぺい率の限度が 10 分の 8 とされている地域外で、かつ、防火地域内にある耐火 建築物もしくは②街区の角にある敷地又はこれに準ずる敷地で特定行政庁が指定するものの内に ある建築物の場合には、53 条 1 項各号に定める建ぺい率(3/10~7/10)の数値に1/10 を加え たものとし、上記①、②の両方に該当する建築物においては53 条 1 項各号に定める建ぺい率に 2 /10 を加えたものを当該建築物の建ぺい率とする旨の規定です。 当該建ぺい率の緩和規定のうち、「角地又はこれに準ずる敷地」については、接道条件や道路幅員 が関連しており、特定行政庁毎に基準が異なるため、下表に大阪市、京都市、大津市それぞれにお ける基準を比較して示します。 角地の場合 大阪市 京都市 大津市 角度(内角) 150 度以下 135 度以下 120 度未満 各幅員 一方が10m 以上又は、いず れも4m以上かつ 2m 以上の 隅切がある場合 5.5m 以上 - 6m以上 合計幅員 /敷地面積 -/- 合計幅員 14m 以上 敷地面積 200 ㎡以下 -/- 対周長割合 1/3 以上 1/4 以上 1/3 以上 ニ方路の場合 大阪市 京都市 大津市 道路間距離 35m 以下 20m 以下 - 各幅員 4m 以上 4m以上 6m以上 合計幅員 /敷地面積 -/- -/敷地面積500 ㎡以下 -/- 対周長割合 1/4 以上 1/4 以上 1/3 以上 (4) 56 条 1 項 1 号 建築物高さの道路斜線制限 前面道路の反対側の境界線からの水平距離が基準容積率の限度の区分に応じて定められた距離(L) 以下の範囲内においては、当該部分から前面道路の反対側の境界までの水平距離に 1.25 又は 1.5 を乗じた数値を前面道路幅員に伴う高さ制限として規定されています。概要図を以下に示します。 L は基準容積率に応じて 定められる距離。L 以上 の距離にある建築物の部 分については道路斜線制 限は適用されない。
5.まとめ 今回は不動産の価値を大きく左右する建築基準法に規定される「道路」についてまとめました。 不動産の鑑定評価にあたっては、その土地に建物が建築できるかどうか、建築できるとしてもどの ような制約があるかによって鑑定評価額が変わります。 従って当該「道路」について、どのような特徴があるかを正確に理解するとともに、今回紹介した ような地域の歴史や特徴に応じて指定される「道路」等が不動産の経済価値にどのような影響を与 えるかを十分に分析して不動産の鑑定評価を行なうことが重要になります。 (参考文献) ・大阪市ホームページ ・京都市ホームページ(京都市情報館) ・大津市ホームページ ・京都市祗園町南側地区資料(京都市計画局建築指導部指導課) ・建築法規ハンドブック(編著:建築規定運用研究会) ・京都を中心とした歴史都市の総合的魅力向上調査に係る歴史都市の美しい細街路の維持・保全の ための調査研究報告書/国土交通省住宅局、京都市・大津市・宇治市三都市協議会 ・密集市街地の整備と都市防災/国土交通調査室 八木 寿明 ・建築知識200705 ・確認申請書作成の手引き(附・参考資料)/平成15 年 大阪市住宅局建築指導部