〈特集 生涯スポーツと大学体育〉 大学生の健康観と体力
4
0
0
全文
(2) 近 畿 大 学 健 康 ス ポ ー ツ教 育 セ ン ター 紀 要5巻1号(2006・3). 健 康 を身体 面 、 精 神 面 、 社 会 面 の状 態 あ るい は病. は 、 高 校3年 生 の17歳. が 最 も高 い 平 均 値 を示 す. 気 で あ る こ と を否 定 す る な ど、 あ る側 面 の状 態 に. 年 度 が 多 い こ とか ら、学 校 体 育 に お い て体 力 ・運. 視 点 をあ て て健 康 を捉 えて い る こ とが 窺 え る と し. 動 能 力 発 達 教 育 を 受 け ら れ る こ と な どの 理 由 か. ている。. ら17歳. を 青 少 年 期 の 体 力 ・運 動 能 力 発 達 到 達 点. 、 女 子 大 学 生 に対 す る健 康 観. と み な す こ とが で き る 。17歳 の 体 力 ・運 動 能 力. と食 生 活 の 関 連 につ い て ア ンケ ー ト調 査 を行 い. の 経 年 推 移 は 、 ス ポ ー ッ テ ス トが 開 始 さ れ た 昭. (有効 回 答 数507名)、. 和39(1964)年. 辰 巳 ら(1998)は. 1)健. 康 に 関 して興 味 関 心 を持 って い る人 は多. (1978)年. か ら 向 上 傾 向 が 継 続 し、 昭 和58. 頃 を ピー ク と し、 以 降 は継 続 的 な低 下. か っ た が 、 「恋 愛 」「遊 び 」「フ ァ ッ シ ョ ン」. 傾 向 に あ る。 こ の低 下 傾 向 は12歳 か ら17歳 の 男. に 対 す る 興 味 関心 の 方 が 強 か っ た 。 また 、. 女 にお い て も確 認 さ れ て い る。. 健 康 や 栄 養 に関 す る知 識 は、 マ ス コ ミ関 係 4.大. か ら得 て い る もの が 多 か った 。 2)健. 学生の体力. 康 の た め に最 も重 要視 して い るの は 「睡 眠」 で 、 「運 動 」 は疎 か に さ れ て い た。. 3)健. 1)東. 康 に対 して興 味 関 心 の 高 い 人 ほ ど、 栄 養. 京大学. 八 田(2002)は. 、 東 京 大 学 の体 育 実 技 授 業 に お. バ ラ ンス を重 要視 し、 運 動 も よ く行 って い. い て1950年. 代 よ り40年 間 に わ た り実 施 され て き. た 。 また 、 自分 の 食 生 活 に対 す る評価 も高. た 体 力 テス ト(垂 直 跳 び、 反 復 横 跳 び 、腕 立 て伏. かった。. せ 、 踏 み 台 昇 降)の 平 均 値 を分 析 した結 果 、男 子. と報 告 し、 「青 年 期 に は 自分 が 認 識 で き る疾 病 も. で は体 力 テ ス トの す べ て の項 目 につ い て1960年. 少 な く、 健 康 に対 す る 興 味 関 心 が あ る とい っ て. 代 か ら1980年 代 に か け て結 果 が 良 くな って い き、. も、興 味 の対 象 が他 に た くさん あ る た め 、 実 際 は. 1980年 代 後 半 か ら1990年. 疎 か に され て い る の で は な い か と思 わ れ る」 と述 べ て い る。. い る こ と を報 告 して い る。 女 子 に お い て も踏 み台. 代 初 め の 入 学 者 を ピー. ク と し、 そ れ 以 降 の 体 力 テ ス トの結 果 が 低 下 して. 昇 降 を 除 け ば 同様 に1988年 3.青. 少年 の体 力低 下 傾 向. 結 果 は低 下 し、 こ の10年 値 が 男 女 と もに5cm程. わが 国 に お け る 国民 の体 力 ・運動 能 力 に関 す る 統 計 は 、文 部 科 学 省 が承 認統 計 と して 毎 年 実 施 し て い る 「体 力 ・運 動 能 力 調 査 」 で あ る。 こ の体 力 ・運 動 能 力 調 査 は 、 昭和36(1961)年. 度 以 降 体 力 テ ス トの 程度 で垂直跳 びの平均. 度 低 下 して い る と報 告 し. て い る。 2)慶. 鷹義塾大学. 佐 々木(2002)は. 、 慶 鷹 義 塾 大 学 の体 育 実 技 授. に成 立 し. 業 にお い て 測 定 され た垂 直 跳 び、 反 復 横 跳 び 、立. た 「ス ポ ー ツ振 興 法 」 に 基 づ い て 、保 健 体 育 審 議. 位 体 前 屈 、 腕 立 伏 臥 屈 伸 お よ び踏 み 台 昇 降運 動 の. 会 が 答 申 した 「ス ポ ー ツ テ ス ト(昭 和38(1963). 1986年 度 か ら1992年. 年)」 を基 に昭 和39(1964)年. 修 科 目で あ った)の 男 女 別 平 均 値 を分 析 した。 こ. 西 嶋(2002)は. か ら開 始 され た 。. 、 文 部 科 学 省 体 力 ・運 動 能 力. 度 まで の7年 間(当 時 は必. れ ら の値 を19歳 の 全 国 平 均 値 と比 較 す る と、 男. 調 査 報 告 書 に 公 表 さ れ て い る デ ー タ(昭 和39. 女 と も、 立 位 体 前 屈 、 腕 立 伏 臥 屈 伸 、 踏 み 台 昇 降. (1964)年. 間). 運 動 で 全 国 平 均 を下 回 り、 垂 直 跳 びお よ び反 復 横. を用 い て 、青 少 年 の体 力 ・運 動 能 力 の経 年 的低 下. 跳 び で は全 国 平 均 値 と ほぼ 同 様 の 値 で あ っ た。 全. 傾 向 を統 計 的 に確 認 して い る 。 そ れ に よれ ば 、 ス. 般 的 に は7年 問 の 経 年 的 推 移 は ほ ぼ一 定 水 準 で あ. ポ ー ツ テ ス トに よる体 力 ・運 動 能 力調 査 が 実 施 さ. り、 顕 著 な変 化 の 傾 向 はみ られ なか っ た。. れ た34年. か ら平 成9(1997)年. ま で の34年. 間 に お け る12歳 か ら29歳 の 聞 の体 力. ま た 、 慶 慮 義 塾 大 学 に受 験 を経 ず に 入 学 し た. 診 断 テ ス ト合 計 点 お よび 運動 能 力 テ ス ト合 計 点 で. 「推 薦 群 」、 受験 に よ る 「現 役(合 格)群 」 お よ び. 一22一. f.
(3) 大学生の健康観 と体力 「浪 人 群 」 の3群. 生 につ い てみ る と、1年 次 生 の体 力 測 定 値 の 推 移. に分 けて 比 較 した村 山 ら(1992). の報 告 で は 、 ほ とん どの項 目に お い て 、 男 女 と も. は 、 この20年. に 、 「推 薦 」 〉 「現 役 」 〉 「浪 人 」 の 順 で 値 が 高. 下 傾 向 に あ り、 特 に柔 軟 性 お よび持 久 力 にお い て. 間 で 一 貫 して 男 子 、 女 子 と も に低. か っ た こ とか ら、受 験 勉 強 に 時 間 を と られ る こ と. そ の 傾 向 が 顕 著 に表 れ て い る 。 また 、 入 学 後 の 体. に よ りス ポ ー ツ な どの 運 動 に 費 や す 時 間 は 制 限 さ. 力 変 化 にお い て は学 年 の進 行 と と も に さ ら に体 力. れ る もの と考 え られ る が 、 そ の こ とに よる 運 動 不. が 弱 ま る傾 向 に あ り、 こ こ で も持 久 力 の 低 下 は顕. 足 の影 響 が 少 な か らず あ る とい う こ とが 否 定 で き. 著 で あ る。. な い 、 と して い る 。 慶 慮 義 塾 大 学 の女 子 学 生 を対 象 と し、 日常 の 身 体 活 動 レベ ル を調 査 した 結 果(佐. 5.大. 学 生 の健 康 観 と体 カ ー 日中 の 比 較 一. 々 木1997)に. よ る と、運 動 習 慣 を特 別持 た な い 女 子 学 生 の 日常 行 動 に お け る運 動 強 度 は きわ め て低 く、 各 職種 別. 張(1996)は. 、 中 国 お よ び 日本 の 大 学 生 女 子. (い ず れ も一 年 次 在 学 中)合 計468名. に 、健 康 観 、. の 活 動 量 に比 べ て も低 い レベ ル に位 置 づ け られ. 自然 観 、 生 命 観 、 倫 理 観 、 生 活 観 、 人生 観 な どの. る 、 と して い る。. 基 本 的 な思 考 を問 う意 識 調 査 を 質 問紙 に よ り実 施. 植 田 ら(1999)に. よれば 、慶鷹義 塾大 学塾 生. に お い て 、 日 常 的 に 運 動 を して い る 者 の 割 合 は 、1年. 時 にお い て 最 も高 く(男 子65.0%、. 子49.3%)、. 女. 学 年 が あ が る につ れ て そ の割 合 が 低. 下 し、 女 子 で そ の 傾 向 が 著 しい(4年 50.7%、 女 子25.4%)。. 時 で男 子. また 、4年 生 を対 象 に して. 個 人 内 の 動 向 を追 っ て み る と 、1年. 生の 時 に運. した 。 そ れ に よれ ば 、 「現 在 の 体 力 に対 す る 自信 」 に つ い て 、 自信 が あ る と答 え た者 が 中 国 で は61.8% で あ っ た の に対 し、 日本 で は17.2%と. 非 常 に少. な か った 。 反 対 に 自信 が な い とい う者 は 中 国 20.2%、. 日本439%で. あ っ た 。 また 、 「積 極 的 に. 運 動 を して い る」 の 設 問 に対 し、 運 動 を して い る. 動 ・ス ポ ー ツ活 動 を実 施 して い な い者 は そ の 多 く. と答 えた 者 が 、 日本 で は16.3%と. が4年. に 過 ぎず 、 逆 に、 運 動 を して い な い 者 が55.0%に. 間 と も実 施 す る こ とは な い 。 す な わ ち大 学. 中 国 の三 分 の一. に入 っ て一 定 期 間が 過 ぎて か ら開始 す る例 は ほ と. 上 っ た 。 この よ う に 日頃 運 動 を して い な い生 活 を. ん ど ない とい う こ とで あ る。 ま た 、大 学 に入 っ て. お くっ て い る とい う意 識 が 日本 にお け る体 力 の 自. か ら運 動 の 実 施 を止 め た場 合 に再 び 開始 す る者 の. 信 の な さの 一 因 に な って い る と、 張 は考 察 して い. 割 合 も低 い こ と を報 告 して い る。. る 。 日本 で は 、 小 、 中 、 高 、 大 学 と長 ず る に した. 3)筑. 波大学. が っ て 運 動 か ら遠 ざか る傾 向 が あ るが 、 中 国 で は. 筑 波 大 学 で は毎 年1年 対 象 と して 、4、5月. 次 か ら4年 次 の全 学 生 を. の正 課 体 育 時 に形 態 測 定 ・. 運動 習慣 が あ ま り変 わ ら ない た め 、 大 学 生 に な る と 日本 の 方 が 運 動 不 足 にな る とい う報 告(須. 田. 体 力 測 定 を実 施 し、 結 果 を筑 波 大 学 体 育 セ ンタ ー. 1992)も. あ り、 さ ら に、 中 国 の 場 合 、 大 学 の体 育. 発 行 の 「大 学 体 育 研 究 」 に 当該 年 度 にお け る筑 波. 実技 は国 家統一 の カ リキ ュラム で行 われ てい る. 大 学 学 生 体 力 ・運 動 能 力 測 定 値 と して 資料 掲 載 を. が 、 そ の 内 容 は 日本 で 通 常 行 わ れ て い る授 業 よ. 行 う と同 時 に、 筑 波 大 学 学 生 にお け る形 態 ・体 力. り、 か な り体 力 トレー ニ ン グ的 な色 彩 が 濃 い もの. 問 題 に関 して 調 査 研 究 を行 っ て きて い る。 体 力 測. で あ る こ とを 張 は 説 明 して い る。. 定 の項 目は 、 握 力 、 立 位 体 前 屈 、垂 直 跳 び 、サ イ ドス テ ッ プ、50m走. 、 ハ ン ドボ ー ル投 げ 、12分. 定 的 に 回 答 し、 睡 眠 、 便 通 、 食 事 、 運 動 の どの 項. 問 走 で あ る。 松 元(2002)は1980年. 健 康 状 態 に 関 して は 日本 に 比 べ て 中国 の 方 が 肯. 目に お い て も有 意 に 中 国 の 方 が 肯 定 的 で あ っ た 。 か ら1999年. まで の20. 中 国 の女 子 学 生 は規 則 正 しい 生 活 を送 って い る事. 年 間 の デ ー タ を も と に筑 波 大 学 学 生 の 体 力 年 次 推. に よ っ て体 力 に対 す る 自信 が あ るが 、 日本 で は 自. 移 に つ い て 次 の 様 に報 告 して い る。 筑 波 大 学 の 学. 己 の体 力 を否 定 的 に と らえ て い る点 が 問 題 で あ る. 一23一.
(4) 近 畿 大 学 健 康 スポ ー ツ教 育 セ ン タ ー紀 要5巻1号(2006・3). と 、 張(1996)は. 述べ て い る。. 6.文. 鹿 野 政 直(2001)健 674.朝 前上里. 献. 康 感 に み る近 代.朝. 日選 書. 日新 聞 社 直(2003)大. 学 生 の ラ イ フス タ イル に関. す る研 究 一健 康 観 、健 康 行動 に つ い て 一. 北海. 道 教 育 大 学 紀 要(自 然 科 学 編)53(2):73-79 園 田恭 一 ・川 田智 恵 子 編(1995)健 新 しい 健 康 理 論 の展 開 一. 康 観 の転 換 一. 東京大学 出版会. 辰 巳真 紀 、 荒 木 佐 都 美 、大 野 佳 美(1998)女 生 の 健 康 観 と食生 活 につ い て. 子大. 武庫 川女 子 大 紀. 要(自 然 科 学)46:93-99 西 嶋 尚 彦(2002)青. 少 年 の体 力 低 下 傾 向.体 育 の. 科 学52(1):4-14 八 田 秀 雄(2002)大 大学∼. 学 生 の体 力 の年 次 推 移 ∼東 京. 体 育 の 科 学52(1):39-42. 佐 々木 玲 子(2002)大 L`.義塾 大 学 ∼. 学 生 の体 力 の年 次推 移 ∼慶. 体 育 の 科 学52(1):43-47. 佐 々木 玲 子(1997)女. 子 学 生 の 身体 活 動 量 と体 力. 水 準 に 関 す る実 態 調 査. 慶鷹義塾大学体育研究. 所 紀 要36(1):51-58 村 山 光 義 ら(1992)慶 鷹 義 塾 大 学 体 力 標 準 値 につ い て 一必 修 体 育 時 の 継 続 測 定 の 資 料 か ら 一 慶 鷹 義塾 大 学体 育 研 究 所 紀 要32(1):91-102 植 田 史生 ら(1999)慶. 鷹義塾大学塾生の運動実施. に 関 す る 実態 調 査 一体 育 実 技 非 履 修 者 を含 む全 学 生 の調 査 か ら 一. 慶慮義塾大学体育研究所紀. 要37(1):55-69 松本. 剛(2002)大. 大学 ∼ 張. 学生の体力の年次推移∼筑波. 体 育 の科 学52(1):48-51. 勇(1996)女. 子 大 学 生 の健 康 観 形 成 に影 響 を. 与 え る要 因 一 日中 の比 較 検 討 一. 長野県短期大. 学 紀 要5ユ:31-41 須田. 力 ら(1992)中. る一 考 察. 国大 学 生 の 身体 運 動 に 関 す. 体 育 学 研 究36(4):359-360. 一24一.
(5)
関連したドキュメント
高校生 (直営&FC) 大学生 中学生 (直営&FC)..
Results indicated three key findings: seventy percent of university students who had an Instagram account were using the account during the study; the level of life satisfaction
当財団では基本理念である「 “心とからだの健康づくり”~生涯を通じたスポーツ・健康・文化創造
一貫教育ならではの ビッグブラ ザーシステム 。大学生が学生 コーチとして高等部や中学部の
総合支援センター スポーツ科学・健康科学教育プログラム室 ライティングセンター
生活環境別の身体的特徴である身長、体重、体
そこで本解説では,X線CT画像から患者別に骨の有限 要素モデルを作成することが可能な,画像処理と力学解析 の統合ソフトウェアである
[ 特集 ] 金沢大学の新たな教育 02.