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蛍光X線スペクトルLα/Lβ強度比に対する化学結合効果の影響

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(1)

蛍光

X 線スペクトル Lα /Lβ 強度比に対する化学結合効果の影響

塩井亮介,山本 孝,河合 潤

Chemical Effects on Lα /Lβ Ratios of X-Ray Fluorescence Spectra

Ryosuke SHIOI, Takashi YAMAMOTO and Jun KAWAI

Advances in X-Ray Chemical Analysis, Japan, 40 (2009) ISSN 0911-7806

(2)
(3)

X線分析の進歩 40 127 Adv. X-Ray. Chem. Anal., Japan 40, pp.127-135 (2009)

京都大学大学院工学研究科材料工学専攻 京都市左京区吉田本町 〒606-8501 †現在:大同特殊鋼株式会社 愛知県名古屋市大同町 2-30 〒 457-8545

蛍光 X 線スペクトル L

α /Lβ 強度比に対する化学結合効果の影響

塩井亮介

,山本 孝,河合 潤

Chemical Effects on L

α/Lβ Ratios of X-Ray Fluorescence Spectra

Ryosuke SHIOI

, Takashi YAMAMOTO and Jun KAWAI

Department of Materials Science and Engineering, Kyoto University

Sakyo-ku, Kyoto 606-8501, Japan

Present address: Daido Steel Co., Ltd. Minami-ku, Nagoya 457-8545, Japan

(Received 12 March 2008, Revised 30 September 2008, Accepted 30 September 2008)

   XRF spectra of Bi compounds were measured by EDX and WDX (single/double-crystal) to

evaluate chemical effects on Lα/Lβ ratios. Alteration of Lα/Lβ ratios among Bi compounds was 5% at a maximum and influence of chemical effects were smaller than that of physical effects, for instance, sample shape or resolution of measurement devices.

[Key words] X-ray fluorescence, Chemical effect, Intensity ratio, Resolution

 エネルギー分散型(EDX),一結晶波長分散型(一結晶 WDX),二結晶波長分散型(二結晶 WDX)の分解能 の違う 3 種類の蛍光 X 線分析装置を用いて,Bi 化合物の蛍光 X 線スペクトルを測定し,Lα/ Lβ強度比に対する 化学結合効果の影響を調べた.  Lα/Lβ強度比は化合物によって最大でも 5% 程度であり,化学結合効果よりも試料形状や測定装置の分解能 などの物理的要因の影響の方が大きかった. [キーワード]蛍光 X 線,強度比,化学結合効果,分解能

1. 緒 言

 蛍光 X 線分析においてピークが重なった場 合,重なりのないピークとの相対強度を用いて ピーク分離を行う.しかし,ピークの相対強度 は様々な要因で変化し1-3),正確な定量分析を行 うためには,その変化要因を知ることが重要で ある.  蛍光 X 線分析には通常 K 線,L 線が利用され る.それぞれ,K 殻,L 殻にできた空孔に外殻の 電子が遷移することで発生する.軽元素(Al4,5)

K6))や 3d 遷移元素(Mn,Fe1),Ni7),Cu2,8))な

どではこれらの線の発生に化学結合に関わる最 外殻付近の電子の遷移が関係しており,酸化数 や配位数などの化学結合効果が蛍光X線ピーク のエネルギー,線幅,概形,強度比などに影響

(4)

128 X線分析の進歩 40 蛍光 X 線スペクトル Lα/Lβ 強度比に対する化学結合効果の影響 を及ぼすことが報告されており,それによって 化学状態分析をすることもできる.一方,重元 素においては K 線,L 線の発生に関わる電子は 相対的に外殻から遠い電子であるため化学結合 の影響は小さい.しかし,Coster-Kronig 収率の 変化による80Hgや83Biの L 線の強度比の化合物 による変化9)や, 63Euの Lγ4線のケミカルシフ ト10)の報告例もある.  本研究では Bi 及びその他の重元素について, Lα線とLβ線を測定し,重元素における蛍光X線 の強度比等への化学結合効果の影響を評価する ことを目的とした.

2. 実 験

2.1 エネルギー分散型蛍光 X 線分析装置              ((((EDX)( ))))  EDX は島津製作所製の EDX-800 を使用した. X線管のターゲットは Rh,検出器は Si(Li) SSD (検出面積:10 mm2 )である.線材はマイラー 膜(厚さ:6 µm)を下に敷いて,線材以外の試 料は内径 25 mmの粉体・液体試料分析用セルに 入れてマイラー膜を通して下方からX線を照射 した.管電圧は 40 kV,管電流は自動設定で,半 導体検出器の不感時間が 25% 前後になるように した.測定時間は 600 s で 1 つの試料につき 3 回 ずつ測定した. 2.2 一結晶波長分散型蛍光X線分析装置(((((一結    晶 WDX)))))  一結晶 W D X での測定には島津製作所製の XRF-1700を用いた.測定試料は EDX での測定

にも使った粉末の Bi,BiC6H5O7,BiNaO3,Bi2O3 で,Al 製試料成型リングに入れてプレスしてペ レット状にし,ステンレス製のホルダーに固定 して測定した.Bi はバインダーとしてパラフィ ンと混合して約 400 kgf/cm2で10分間,そのほか の試料はバインダーを使わずに約25 t/cm2で5分 間プレスして成型した.Bi,BiNaO3,Bi2O3につ いては粉末 X 線回折法によって状態が変化して いないことを確かめた.  Bi の Lα 線,Lβ 線,Lγ4線をそれぞれ Table 1 の条件で測定した.X 線管のターゲットは Rh, 分光結晶は LiF(200)(2d = 4.0273 (Å))を用 い,3 種類あるスリット(高分解能,標準,高 感度)から,もっとも分解能の高い高分解能ス リットを使用した.検出器はシンチレーション 計数管を使い,数え落としの補正のため,300 kcps以上の計数率を測定した点については管

Table 1     Conditions and samples of measurements by single-crystal WDX.

Measured range (2θ) Measurement time Voltage/current

of X-ray tube Measured sample

Lα 31.800°-34.300° Lβ 25.400°-29.600° 0.5 s / 0.002° 40 kV/50 mA Bi (2 iterations) BiNaO3 (2 iterations) Bi2O3 BiC6H5O7 0.5 s / 0.002° Bi BiNaO3 Bi2O3 Lγ4 21.500°-22.100° 2 s / 0.002° 40 kV/95 mA Bi BiNaO3

(5)

X線分析の進歩 40 129 電流を 1/10 にし,計数率を落として測り直す 設定にした. 2.3 二結晶波長分散型蛍光X線分析装置((((二結(    晶 WDX)))))  二結晶 WDX はリガク製の高分解能型 蛍光 X 線分析装置を使った.X線管のターゲットはW, 分光結晶は Si(220)(2d = 3.84032 (Å)),検出器 は比例計数管で,一結晶 WDX で測定した Bi と BiNaO3のペレットをステンレス製のホルダーに 取り付けて Bi の Lα1線,Lβ1線をそれぞれ 3 回 ずつ測定した.X 線管の管電圧を 30 kV,管電流 を20 mAにして,ゴニオメーターの角度を0.001° 刻みで走査させ,40 s/step で計数した.ゴニオ メーターの角度表示と実際の角度のずれは,Bi Lα1線のエネルギー(10.839 keV 11))で補正し た.ピークの位置はピークの9/10強度の中間点 とした. 2.4 強度の解析方法  測定で得られたXRFスペクトルは強度を求め るために Savitzky-Golay 法12) による 5 点スムー ジングをEDXで測定したスペクトルについては 10回,その他のスペクトルについては 200 回施 したのち,解析ソフト PeakFit Version 4.12 (SeaSolve Software Inc. 製)でフィッティング・

ピーク分離を行った.  EDX で測定したスペクトルのスムージング を 10 回にしたのは測定チャネル数が少なく, スムージングを多数回行うことによってピーク の 形 状 の 変 化 が 大 き く な っ た か ら で あ る (Fig.1).  フィッティング・ピーク分離は Gauss 関数と Lorentz関数で行ったところ,EDX と一結晶 WDXのスペクトルについてはGauss関数,二結 晶WDXのスペクトルについてはLorentz関数が よく合った.   蛍 光 X 線 の ピ ー ク 形 状 は 自 然 幅γ を持つ Lorentz関数で表されるが,実際に観測されるス ペクトルは Gauss 関数で表される分解能などの 影響によって Lorentz 関数 2 1 1 ( / )+ x γ と Gauss 関数の畳込みである Voigt 関数となる.二結晶 WDXに比べて分解能の低い一結晶WDXやEDX では Gauss 関数の影響が大きくなったと考えら れる.

3. 結果と考察

3.1     EDX による重元素の Lααααα 線と Lβββββ 線の測定  まず,EDX で Bi 及び Bi 化合物を測定した. スペクトルを Fig.2 に示す.Bi では強度比の大 きな変化は見られなかった.Lα線とLβ線の強 度 比 を そ れ ぞ れ の 化 合 物 に つ い て 求 め る と Fig.3のようになった.もっとも Lβ/Lα の値が 小さかった粒状の金属 Bi に対して最大で 4.73 %の変化(Bi(NO3)3)が見られたが,同じ金属 Biでも粒状のものと粉末のもので 3.12% の変 化があり,試料の形状の影響が大きいものと思 4.0 4.2 4.4 4.6 4.8 5.0 5.2 In te n s it y [ a rb itra ry u n it s ]

X-ray energy [keV]

raw data

smoothed (10 iterations) smoothed (200 iterations)

CsF

Fig.1 Change of a shape of an XRF spectrum measured

(6)

130 X線分析の進歩 40 蛍光 X 線スペクトル Lα/Lβ 強度比に対する化学結合効果の影響 われる.  次に原子番号 55(Cs)から 79(Au)までの元 素を含む種々の化合物を同じ条件で測定し,Lα 線と Lβ 線の強度比を求めた(Fig.4,Fig.5).  Fig.6は測定した原子番号の範囲のLα線とLβ 線付近の蛍光 X 線ピークのエネルギーである. エネルギーは Lβ1線のエネルギーを基準として いる.Lα 線と Lη 線のエネルギーが交差するよ うに変化しており,EDXで測定したスペクトル Bi BiC6H5 O7 (BiO)2 CO3 BiOClBiNaO3 Bi2(S O4)3Bi2O3 BiC l3 Bi(NO 3 )3 1.10 1.12 1.14 1.16 1.18 1.20 powder In ten s ity ra tio L E /L D drops

Fig.3 Alteration of intensity ratio Lβ/Lα of Bi

compounds. 4.0 4.2 4.4 4.6 4.8 5.0 5.2 Cs LE1 Cs LE2 Cs LD In te n s it y ( a rb it ra ry u n it s )

X-ray energy [keV]

(a)

8.0 8.5 9.0 9.5 10.0 10.5

W LE1

W LE2

W LD

X-ray energy [keV]

(b)

9 10 11 12

Au LK

Au LE

Au LD

X-ray energy [keV]

(c)

Fig.4 XRF spectra measured by EDX (a) CsF (b) Na2WO4 (c) Au.

Fig.2  Results of measurements of Bi Lγ4.

10 11 12 13 14 Bi LK Bi LE Bi LD In tensi ty ( a rb it ra ry u n it s )

X-ray energy [keV]

(a)

10 11 12 13 14

X-ray energy [keV]

(b)

10 11 12 13 14

X-ray energy [keV]

(7)

X線分析の進歩 40 131 では55Csから74WまではLα線とLη線が重なり, 79AuではLη線が単独で確認できた(Fig.4).Lβ5 (L3-O4,5)線は 5d 軌道(O4,5)殻の電子の遷移に よって発生するため,原子番号が大きくなるほ 55 60 65 70 75 1.05 1.10 1.15 1.20 Bi BiC6H5 O7 (BiO)2 CO3 BiOClBiNaO3 Bi2(S O4)3Bi2O3BiC l3 Bi(NO 3)3 metal fluoride oxide nitride carbonate others

Atomic number

In

te

n

s

it

y

ratio

L

E

/L

D powder drops

Fig.5 Alteration of intensity ratio Lβ/Lα of heavy elements (Z = 55-79) and Bi compounds.

ど強度が強くなると考えられる.しかし,どの 元素でも Lβ/Lαの値は Biとほぼ同じ値をとり, これらの影響は小さいと思われる.また,Bi に 比べて化合物によって強度比が大きく変化する -2 -1 0 1 Ce Ba La Cs Pr Nd Pm Eu Sm Gd Tb Dy Ho Er Tm Yb Lu Hf Ta Re W Os Ir Pt Au Hg Tl Pb Bi 83 82 81 80 79 78 77 73 76 75 74 72 71 70 69 68 67 66 65 64 63 62 61 60 59 57 55 56 58 D1 K E6 E4 E2 E3E7E5 E10E9 D2 Energy / keV (ELE1=0)

(8)

132 X線分析の進歩 40 蛍光 X 線スペクトル Lα/Lβ 強度比に対する化学結合効果の影響 元素はなかった.  金属試料の強度比が他の化合物の値に比べ て小さくなる傾向が見られたが,金属試料以 外の化合物試料が全て粉末試料であるのに対 し金属試料はすべて板片や線材などのバルク 試料であり,粉末状とバルク状の金属 Bi にお ける結果から試料形状の影響によるものと考 えられる.

Fig.7 XRF spectra of Bi compounds measured by single-crystal WDX.

3.2 一結晶 WDX による Bi の測定 3.2.1    Bi Lααααα 線と Lβββββ 線の測定

 一結晶 WDX では Bi の酸化数の異なる金属 Bi (0 価),BiC6H5O7,Bi2O3(+3 価),BiNaO3(+5

価)の Lα 線,Lβ 線を測定した.試料はすべて 粉末状のものを使用した.一結晶 WDX で Bi を 測定したスペクトルを Fig.7 に示す.  Lα1線,Lα2線,Lβ1,2線,Lβ3線,Lβ4線,Lβ5 線,Lβ6線にピーク分離してそれぞれのピーク 10.5 11.0 12.5 13.0 13.5 0 100 200 300 400 LE5 LE3 LE4 LE6 LE1,2 LD2 LD1 Intens ity [ kcps ]

X-ray energy [keV]

Bi (1st) 10.5 11.0 12.5 13.0 13.5 0 100 200 300 400 500 Intens ity [k cps ]

X-ray energy [keV]

BiC6H5O7 10.5 11.0 12.5 13.0 13.5 0 100 200 300 400 500 Intens ity [k c p s ]

X-ray energy [keV]

BiNaO3 (1st) 10.5 11.0 12.5 13.0 13.5 0 100 200 300 400 In tensi ty [ k cps]

X-ray energy [keV]

Bi (2nd) 10.5 11.0 12.5 13.0 13.5 0 100 200 300 400 500 Intensi ty [kcps]

X-ray energy [keV]

Bi2O3 10.5 11.0 12.5 13.0 13.5 0 100 200 300 400 500 Intens ity [k c p s ]

X-ray energy [keV]

BiNaO3 (2nd) 10.5 11.0 12.5 13.0 13.5 0 100 200 300 400 LE5 LE3 LE4 LE6 LE1,2 LD2 LD1 Intens ity [ kcps ]

X-ray energy [keV]

Bi (1st) 10.5 11.0 12.5 13.0 13.5 0 100 200 300 400 500 Intens ity [k cps ]

X-ray energy [keV]

BiC6H5O7 10.5 11.0 12.5 13.0 13.5 0 100 200 300 400 500 Intens ity [k c p s ]

X-ray energy [keV]

BiNaO3 (1st) 10.5 11.0 12.5 13.0 13.5 0 100 200 300 400 In tensi ty [ k cps]

X-ray energy [keV]

Bi (2nd) 10.5 11.0 12.5 13.0 13.5 0 100 200 300 400 500 Intensi ty [kcps]

X-ray energy [keV]

Bi2O3 10.5 11.0 12.5 13.0 13.5 0 100 200 300 400 500 Intens ity [k c p s ]

X-ray energy [keV]

BiNaO3 (2nd)

(9)

X線分析の進歩 40 133 の Lα1線ピークに対する相対強度を求めた結果 を Fig.8 に示す.金属 Bi の Lβ1,2線の相対強度が 他の化合物より大きい値となったが,その変化 は 2.03% とわずかな値となった.+3 価と +5 価 の Bi ではほとんど変化しなかった. 3.2.2     Bi Lγ γ γ γ γ 4 線の測定  ランタノイド元素である Eu の +2 価と +3 価 の化合物によってLγ4 線に約5 eVのケミカルシ フトがあることが Hayashiらによって報告され ている1 0).そこで,一結晶 WDX で単体 B i, Bi2O3,BiNaO3の Bi の Lγ4 線を測定した.その スペクトルを Fig.9 に示す.また,フィッティン グによって求めたピーク位置と半値幅をTable 2 に示す.  Bi においてはピーク位置や半値幅に化合物

Fig.8 Alteration of relative intensity to Lα1 peak of Bi

compounds. Bi BiC6H5 O7 Bi 2O3 BiNaO3 0.00 0.05 0.10 1.65 1.70 1.75 1.80 LE6 LE5 LE4 LD2 LE3 LE1,2 Bi(+5) Bi(+3) R e la ti v e i n te n s it y to L D1 Bi(0) Energy FWHM Bi 1st iteration 2nd iteration 16.281 keV 16.281 keV 0.144 keV 0.143 keV Bi2O3 16.281 keV 0.144 keV

BiNaO3 2nd iteration 1st iteration 16.280 keV 16.280 keV 0.144 keV 0.143 keV

16.1 16.2 16.3 16.4 16.5 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 Int ensi ty ( n o rm a lized)

X-ray energy [keV] Bi Bi2O3 BiNaO

3

Fig.9 XRF spectra of Bi Lγ4 measured by

single-crystal WDX. による変化は認められなかった.ケミカルシ フトはEuに特有のものであるか,一結晶WDX の分解能では測定できない程度であると考え られる. 3.3 二結晶 WDX による Bi の測定  二結晶WDXではBi Lα1線と一結晶WDXでは 単独のピークとして測定できなかった Lβ1線を 金属 Bi と,BiNaO3について測定した.  ピーク分離の必要がないのでフィッティング によってバックグラウンドのみを求めて差し引 き,ピーク位置,半値幅,強度を求めた.ピー ク位置は最大強度の9/10 強度の2点の中間点と し,強度はピーク位置から±半値幅の範囲の面 積強度とした.その結果を Table 3 に示す.ま た,Fig.10 に金属 Bi と,BiNaO3のスペクトル

(10)

134 X線分析の進歩 40 蛍光 X 線スペクトル Lα/Lβ 強度比に対する化学結合効果の影響 を示す.  基準にした金属 Bi の Lα1線にも,角度からエ ネルギーに換算する過程でわずかなばらつきが 生じたが,無視できる程度だった.金属 Bi と BiNaO3のピーク位置や,Lα1線に対する Lβ1線 の相対強度にも変化は見られなかった.  最も変化が大きかったのはLβ1線の半値幅で, 金属BiのLβ1線の線幅がBiNaO3のものに比べて 広くなった.XPS スペクトルや XRF スペクトル では,金属のピークに電子の集団励起の影響に よって Doniach-Šunjic´ line shape と呼ばれるピー クの低エネルギー側の広がりが生じることがあ る13)が,Lα 1線に線幅の変化が見られないこと と , 3 回 の 測 定 の 線 幅 に ば ら つ き が 大 き い (Fig.11)ことから,測定誤差の可能性もある.

4. 結 言

 重元素の Lα 線と Lβ 線に化学結合効果が及ぼ す 影 響 を 調 べ る た め に , エ ネ ル ギ ー 分 散 型 (EDX),一結晶波長分散型(一結晶 WDX)及び 二結晶波長分散型(二結晶 WDX)の蛍光 X 線分 析装置で83Bi及び他の重元素の化合物のLα線と Lβ線を測定し,強度比等の変化を評価すること 13.01 13.02 13.03 13.04 13.05 In te nsit y (no rma lized )

X-ray energy [keV] Bi BiNaO3

Fig.11 Comparison of Lβ1 line width of Bi and BiNaO3

(respectively 3 iterations). 10.82 10.84 10.86 13.00 13.02 13.04 13.06 0 100 200 300 LE1 Int en si ty [ c ou nts / 4 0 s]

X-ray energy [keV]

raw data smoothed fitted (LD1: R2=0.9981, LE1: R2=0.9912) back ground LD1 (a) 10.82 10.84 10.86 13.00 13.02 13.04 13.06 0 100 200 300 LE1 In ten sity [co un ts / 40 s]

X-ray energy [keV]

raw data smoothed fitted (LD1: R2 =0.9981, LE1: R2 =0.9912) back ground LD1 (b) 10.82 10.84 10.86 13.00 13.02 13.04 13.06 0 100 200 300 LE1 Int en si ty [ c ou nts / 4 0 s]

X-ray energy [keV]

raw data smoothed fitted (LD1: R2=0.9981, LE1: R2=0.9912) back ground LD1 (a) 10.82 10.84 10.86 13.00 13.02 13.04 13.06 0 100 200 300 LE1 In ten sity [co un ts / 40 s]

X-ray energy [keV]

raw data smoothed fitted (LD1: R2 =0.9981, LE1: R2 =0.9912) back ground LD1 (b)

Fig.10 XRF spectra measured by double-crystal WDX

(a) Bi, (b) BiNaO3.

Sample Energy FWHM Relative intensity to Lα1

Bi Lα1 Lβ1 10.8393 ± 0.0000 keV 13.0284 ± 0.0005 keV 0.0093 ± 0.0005 keV 0.0105 ± 0.0003 keV 1 0.444 ± 0.041 BiNaO3 LLα1 β1 10.8392 ± 0.0000 keV 13.0287 ± 0.0002 keV 0.0091 ± 0.0003 keV 0.0093 ± 0.0007 keV 1 0.434 ± 0.031

(11)

X線分析の進歩 40 135 で,重元素においては L 線への化学結合効果の 影響は小さく,試料形状や測定装置の分解能の 影響が大きいことがわかった.定量分析の際に はこれらの物理的要因を考慮することが重要で あると考えられる. 謝 辞  実験を行うにあたりご協力いただいた京都大 学工学研究科の高岡昌輝氏と塩田憲司氏に,こ の場を借りて厚く御礼を申し上げます. 参考文献

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参照

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