• 検索結果がありません。

用語「選択反応モニタリング(selected reaction monitoring: SRM)」,「多重反応モニタリング(multiple reaction monitoring: MRM)」,「連続反応モニタリング(consecutive reaction monitoring: CRM)」について

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "用語「選択反応モニタリング(selected reaction monitoring: SRM)」,「多重反応モニタリング(multiple reaction monitoring: MRM)」,「連続反応モニタリング(consecutive reaction monitoring: CRM)」について"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

吉野健一

― ―30

用語「選択反応モニタリング(

selected reaction monitoring: SRM

)」,

「多重反応モニタリング(

multiple reaction monitoring: MRM

)」,

「連続反応モニタリング(

consecutive reaction monitoring: CRM

)」

について

Selected Reaction Monitoring

SRM

,

Multiple Reaction Monitoring

MRM

,

and Consecutive Reaction Monitoring

CRM

吉野健一

1, 2, 3

Ken-ichi Yoshino

1, 2, 3

1神戸大学バイオシグナル総合研究センター Biosignal Research Center, Kobe University

2神戸大学大学院医学研究科質量分析総合センター The Integrated Center for Mass Spectrometry, Graduate School of Medicine, Kobe University

3一般社団法人日本質量分析学会用語委員長 Chair of the Nomenclature Committee, MSSJ

(Received December 10, 2020; Accepted December 17, 2020)

1. は じ め に

2020年3月11日,一般社団法人日本質量分析学会「マ

ススペクトロメトリー関係用語集」第4版1)が発行され

た.2009年6月10日に発行された第3版2)は,国際純正・

応 用 化 学 連 合(International Union of Pure and Applied Chemistry: IUPAC)の質量分析関連用語標準定義プロジェ クトチームが公表していたDefinitions of terms relating to mass spectrometry(IUPAC recommendations 2008) の 内

容に準拠して改定が行われた.最終版としてPure Appl.

Chem.誌に発表されたDefinitions of terms relating to mass spectrometry(IUPAC recommendations 2013)3)において一

部の用語の定義に変更が加えられたことから,マススペク

トロメトリー関係用語集第4版の編纂作業において修正を

行った.

用語「multiple reaction monitoring(MRM):多重反応 モニタリング」は,技法としてはすでに提唱されていた SRMの定義に包括される技法であったが(Fig. 1),商業的 な差別化を目的として,ある装置メーカーから提唱された 用語であったことなどの理由でIUPAC recommendations 2008において非推奨用語として扱われていた.これに準 拠して,マススペクトロメトリー関係用語集第3版では同 様の扱いが執られたが,IUPAC recommendations 2013で は通常の見出し語として加えられた.この変更に伴い,マ ススペクトロメトリー関係用語集第4版において「

multi-ple reaction monitoring(MRM):多重反応モニタリング」 を見出し語として収録した.

本稿では,MRM, およびその関連用語である「selected

reaction monitoring(SRM):選択反応モニタリング」お よび「consecutive reaction monitoring(CRM):連続反応 モニタリング」について解説する.

J. Mass Spectrom. Soc. Jpn. Vol. 69, No. 2, 2021

連絡先:[email protected]

Fig. 1. A Venn diagram of the relationship among three terms, selected reaction monitoring (SRM), multiple reaction monitoring(MRM),and consecutive reaction monitor-ing (CRM).

(2)

用語「選択反応モニタリング」,「多重反応モニタリング」,「連続反応モニタリング」について

― ―31 2. 選択反応モニタリング

selected reaction monitoring(SRM)

MRMの解説の前に,MRMを含む技法の総称である

「selected reaction monitoring(SRM):選択反応モニタリ ング」を解説する.

マススペクトロメトリー関係用語集第4版では「selected

reaction monitoring(SRM):選択反応モニタリング」の 語義を下記のとおり改定した.

selected reaction monitoring(SRM)

選択反応モニタリング:タンデム質量分析もしくは多段階 質量分析(MSn)において,質量分析部の走査等に よってプロダクトイオンスペクトルを取得する代わり に,特定のm/z値のプリカーサーイオンを解離させて 生じる特定のm/z値のプロダクトイオンの信号量のみ を連続的に検出するように質量分析計を動作させる技 法.液体クロマトグラフィータンデム質量分析やガス クロマトグラフィータンデム質量分析などで用いられ る.クロマトグラフィーにおいて対象化合物と同程度 の保持時間を有し,かつ対象化合物のプリカーサーイ オンと同じm/z値を与える爽雑物が存在していても, 対象化合物から爽雑物からは生じないm/z値のプロダ クトイオンを選択することができれば夾雑物の影響を 排除できるので,選択イオンモニタリングに比べて選 択性が向上する. 注1:選択するプリカーサーイオンとプロダクト イオンのm/z値の組み合わせは一組とは限 らない.複数の組み合わせを選択する選択 反応モニタリングを特に多重反応モニタリ ン グ(multiple reaction monitoring: MRM) と呼ぶ.

注2:多段階質量分析を利用する場合,特に連続

反 応 モ ニ タ リ ン グ(consecutive reaction monitoring: CRM)と呼ぶ.

選 択 反 応 モ ニ タ リ ン グ(selected reaction monitoring:

SRM)は,装置の質量分析部において走査(スキャン) を行わずに特定のm/z値のイオンを連続的に透過させるよ う動作させるタンデム質量分析,もしくは多段階質量分析 の総称である3)∼6)Table 1に三連四重極質量分析計(タ ンデム四重極質量分析計)を用いたタンデム質量分析にお ける5種類の分析技法を示した.三連四重極質量分析計 (タンデム四重極質量分析計)を使用する場合,SRMで は,Q1と呼ばれている前段のリニア四重極分析部とQ3と 呼ばれている後段のリニア四重極分析部のいずれにおいて も走査を行わない.走査が必要なスペクトルを取得する代 わりに,特定のm/z値のイオンを連続的に透過させるよう 前後のリニア四重極分析部を設定することによって,特定 のm/z値のプリカーサーイオンが解離して生成する特定の m/z値のプロダクトイオンの信号のみを連続的に検出する ように質量分析計を動作させる分析法である. 用語SRMは,通過させるプリカーサーイオンとプロダ クトイオンのm/z値の組み合わせを一組に限定して定義さ れているわけではない(上記注1).タンデム質量分析も しくは多段階質量分析において,走査を行わず,特定の m/z値のイオンのみが透過型の質量分析部を通過できるよ う質量分析計を動作させる技法の総称として定義されてい る.これに対して,タンデム質量分析もしくは多段階質量 分析を行わず,一段階の質量分析において走査せずに特定 のm/z値のイオンのみが透過型の質量分析部を通過できる

よう質量分析計を動作させる技法には「selected ion

moni-toring (SIM):選択イオンモニタリング」の用語が与えら れている1),3),6),7)

Table 1. Five techniques of mass spectrometry/mass spectrometry (MS/MS) by using triple quadrupole mass spectrometer. MS/MS

Technique Name Quadrupole m/z Analyzer (Q1) Collision Quadrupole (Q2) Quadrupole m/z Analyzer (Q3) (MS/MS Spectrum)Result Product Ion Scan m/z Selection

m/z Isolation) Low Energy CID m/z Scan Product Ion Spectrum (1st Generation Product Ion Spectrum) Precursor Ion Scan m/z Scan Low Energy CID m/z Selection

m/z Isolation) Precursor Ion Spectrum

Constant Neutral Mass

Loss Scan (m/z Scan m/z: x) Low Energy CID (m/z: x−α)m/z Scan Constant Neutral Mass Loss Spectrum Constant Neutral Mass

Gain Scan (m/z Scan m/z: x) Low Energy CID (m/z: x+α)m/z Scan Constant Neutral Mass Gain Spectrum Selected Reaction

Monitoring(SRM) (m/z Selection m/z Isolation) Low Energy CID (m/z Selection m/z Isolation) No Spectrum

collision quadrupole(四重極衝突室,四重極衝突セル)はRF-only quadrupole(RFオンリー四重極)ともいう.一般にQ2と称されるが, 四重極以外の多重極が使用される場合もある.その場合,triple quadrupole mass spectrometer(三連四重極質量分析計,トリプル四重極 質量分析計)の用語は正確な装置の仕様を表していないことからtandem quadrupole mass spectrometer(タンデム四重極質量分析計)と 表現されることがある.総称である「MS/MSスペクトル」は,プロダクトイオンスペクトルの意味で用いられることが多いが,プリ カーサーイオンスペクトルやコンスタントニュートラルマスロススペクトルもMS/MSスペクトルの1種である.CID: collision-induced dissociation

(3)

吉野健一

― ―32 3. 多重反応モニタリング

multiple reaction monitoring(MRM)

マススペクトロメトリー関係用語集第4版に収録された

「multiple reaction monitoring(MRM):多重反応モニタリ ング」の語義は下記のとおりである.

multiple reaction monitoring(MRM)

多重反応モニタリング:複数のプリカーサーイオンとプロ ダクトイオンの組み合わせを選択して複数のプロダク トイオンの信号量を検出する選択反応モニタリング (selected reaction monitoring).選択反応モニタリン

グ(selected reaction monitoring)参照.#)

MSRは,SRMの一つの技法として複数チャンネルを高

速に切り替える分析法を表す用語である8Fig. 2).SRM

はselected reaction monitoringの略語であるが,MRMの最 初のM, multipleの対語としてSをsingleの頭文字と誤解 し,SRMをsingle reaction monitoringの略語とする文献も

多い.SRMとMRMの関係は,前後の質量分析部を透過さ せるイオンのm/z値の組み合わせ(チャンネル)の単数, 複数の違いではない.SRMは質量分析部において走査を 行わずに特定のm/z値のイオンを連続的に透過させるよう 動作させるタンデム質量分析もしくは多段階質量分析の総 称である.チャンネルが一組の場合にMRMを用いること はできないが,チャンネルが複数組の場合でもSRMを用 いることは誤りではない. 4. 連続反応モニタリング consecutive reaction monitoring(CRM)

マススペクトロメトリー関係用語集第4版には,連続反

応モニタリング(consecutive reaction monitoring: CRM) について下記の語義が記されている.

consecutive reaction monitoring(CRM)

連続反応モニタリング3:n≧3のMSnにより,特定の連続 した多段階のフラグメンテーションや多段階の2分子 反応によって生成したプロダクトイオンを計測するこ と.MSn参照. 透過型の質量分析部である磁場セクター型,静電セク ター型の質量分析部やリニア四重極分析部をつなぎ合わせ て3段以上の空間型多段階質量分析(MSn in space)を行 うことが可能である.この装置を用いて特定のプリカー サーイオンを解離させて生じる特定の二次プロダクトイオ ンや三次プロダクトイオン等の信号量のみを連続的に検出 するよう質量分析計を動作させることもできる(Fig. 3). この技法も,SRMの1種であるが,選択性をさらに高める ために段数を増やした分析法であり,特に連続反応モニタ リング(consecutive reaction monitoring: CRM)と呼ばれ Fig. 2.  A schematic drawing of multiple reaction monitoring (MRM).

MRMでは,質量分析部での走査は行わないが,AとBの状態を極めて短い時間の周期で繰り返しながら測定を行う.透過さ せるm/z値の組み合わせは二組に限らない.設定可能な組み合わせの数は機種に依存する.

# 「マススペクトロメトリー関係用語集」第4版p. 62に記載さ れたmultiple reaction monitoringにおいて,下記の校正漏れ (脱字)があった.お詫びとともに訂正する.

誤) プリカーサーイオンとプロダクトイオンの組み合わを 選択

正) プリカーサーイオンとプロダクトイオンの組み合わせ を選択

(4)

用語「選択反応モニタリング」,「多重反応モニタリング」,「連続反応モニタリング」について

― ―33

Fig. 3. A schematic drawing of consecutive reaction monitoring (CRM) as one of technique of selected reaction monitoring (SRM). CRMのすべてがSRMのカテゴリーに入る技法ではない. ている1),3),9),10) CRMは連続した複数の反応(プリカーサーイオン→一 次プロダクトイオン,一次プロダクトイオン→二次プロダ クトイオン)をモニターしているのに対し,MRMはプリ カーサーイオン→プロダクトイオンという,同じレベルの パラレルな複数の反応をモニターしている. MRMとCRMがモニターしている「複数の反応」の種 類が異なることから,区別がつきにくいという点もMRM が非推奨用語として扱われていた理由の一つである11) MRMはすべてSRMのカテゴリーに入る技法であるが, CRMと呼ばれる技法のすべてがSRMのカテゴリーに入る わけではない(Fig. 1). CRMの語義では,質量分析部の走査の有無に関しての 制限はなく,事実上「多段階質量分析」と同義である.現 在,多段階質量分析はイオントラップ型の質量分析部を用 いる時間型多段階質量分析(MSn in time)が主に利用さ れ,空間型多段階質量分析(MSn in space)が行われるこ とはまれである.このためSRMのカテゴリーに入るCRM が用語として使用される機会も少なくなっている.これに 対 し エ レ ク ト ロ ス プ レ ー イ オ ン 化 の 帯 電 残 滓 モ デ ル (charged residue model)の略語としてCRMが利用される

機会のほうが圧倒的に多い. 文 献 1) 一般社団法人日本質量分析学会用語委員会,“マススペク トロメトリー関係用語集”,吉野健一編,日本質量分析学 会,国際文献社,東京(2020). 2) 日本質量分析学会用語委員会,“マススペクトロメトリー 関係用語集”,内藤康秀,吉野健一編,日本質量分析学会, 国際文献印刷社,東京(2009).

3) K. K. Murray, R. K. Boyd, M. N. Eberlin, G. J. Langley, L. Li, and Y. Naito, Pure Appl. Chem., 85, 1515 (2013); DOI:10.1351/PAC-REC-06-04-06.

4) E. de Hoffmann, J. Mass Spectrom., 31, 129 (1996); DOI:10.1002/(SICI)1096-9888(199602)31:2<129::AID-JMS305>3.0.CO;2-T

5) https://kermitmurray.com/msterms/index.php/Selected_reac tion_monitoring

6) 吉野健一,J. Mass Spectrom. Soc. Jpn., 66, 107 (2018). 7) https://kermitmurray.com/msterms/index.php/Selected_ion_

monitoring

8) https://kermitmurray.com/msterms/index.php/Multiple_reac tion_monitoring

9) K. B. Tomer, C. R. Guenat, and L. J. Deterding, Anal. Chem.,

60, 2232 (1988). DOI: 10.1021/ac00171a014.

10) https://kermitmurray.com/msterms/index.php/Consecutive_ reaction_monitoring

11) D. Sparkman, “Mass Spectrometry, Desk Reference, 2nd Edi-tion,” Global View Publishing, Pittsburgh (2006), p. 33.

Key words: selected reaction monitoring, multiple reaction

Table 1. Five techniques of mass spectrometry/mass spectrometry  (MS/MS)  by using triple quadrupole mass spectrometer.
Fig. 3. A schematic drawing of consecutive reaction monitoring  (CRM)  as one of technique of selected reaction monitoring  (SRM)

参照

関連したドキュメント

Operation is subject to the ing two conditions: (1) This device may not cause harmful interference, ) this device must accept any interference received, including interference ay

7   European Consortium of Earthquake Shaking Tables, Innovative Seismic Design Concepts f or New and Existing Structures; ”Seismic Actions”, Report No.. Newmark, &#34;Current Trend

     ー コネクテッド・ドライブ・サービス      ー Apple CarPlay プレパレーション * 2 BMW サービス・インクルーシブ・プラス(

So far, most spectral and analytic properties mirror of M Z 0 those of periodic Schr¨odinger operators, but there are two important differences: (i) M 0 is not bounded from below

新製品「G-SCAN Z」、 「G-SCAN Z Tab」を追加して新たにスタート 新製品「G-SCAN Z」、 「G-SCAN Z

To do so, we overcome the technical difficulties to global loop equations for the spectral x(z) = z + 1/z and y(z) = ln z from the local loop equations satisfied by the ω g,n ,

A H¨ older regularity result for signed solutions was obtained first by DiBenedetto in [3] for degenerate (p &gt; 2) p-laplacian type equations and then by Chen and DiBenedetto in

Key words and phrases: Analytic functions, Univalent, Functions with positive real part, Convex functions, Convolution, In- tegral operator.. 2000 Mathematics