Association of Wildlife and Human Society
NII-Electronic Library Service
Assoclat 二lon of Idl
ldllfe and Human Soclety
外
来
種
被
害
防
止
行
動
計
画
と
生
態
系
被
害
防
止
外
来
種
リ
ス
ト
と
は
?
草 刈 秀 紀(
WWF
ジ ャ パ ン・
本 誌 編 集 委 員 ) 外 来 生 物 問 題 外 来 生 物 は、
「 海 外 か ら そ の 国 に 持 ち 込 ま れ た 種 」 だ け を 指 す も の で は な い 。 地 理 的 に 、 ま た は 気 候 的 に、
相 互 に 隔 て ら れ た 場 所 で は 、 そ れ ら の 地 域 の 生 き 物 同 士 は 、 同 じ 種 類 で あ っ て も 長 い 年 月 を 経 て 、 そ の 地 域 固 有 の 生 き 方 を し て い る た め、
新 た に 人 為 に よ っ て 導 入 さ れ た 生 き 物 は、
外 来 生 物 と な る 。 例 え ば 同 じ 日 本 国 内 で あ っ て も 、 周 囲 を 海 で 隔 て ら れ た 島 で は 、 独 自 の 生 態 系 が 形 成 さ れ る た め、
そ こ に 国 内 の 他 の 地 域 か ら 新 た な 生 物 が 持 ち 込 ま れ る と 、 そ の 地 域 の 固 有 の 生 き 物 に 対 し て 、 捕 食、
生 息 地 を 奪 い 合 う 競 合 、 駆 逐 な ど が 起 こ り 、 生 息 環 境 の 攪 乱 、 交 雑 に よ る 遺 伝 的 攪 乱、
農 林 水 産 業 へ の 影 響 、 感 染 症 の よ う な 人 へ の 影 響 な ど 、 広 範 な脅
威 が 同 時 に 生 じ て く る 。 遡 る こ と1971
年2
月 、 日 本 で 「 侵 略 の 生 態 学 」 と い う 書 物 が 出 版 さ れ た 。 通 称 「 エ ル ト ン の 侵 略 の 生 態 学 」 と 言 わ れ て い る が 、 原 本 は、
1958
年
に 著 さ れ て い る。
こ の 本 の 日 本 語 版 前 書 き に は 、 次 の よ う な 記 述 が あ る。
「 … な か で も 人 類 の 働 き に よ る 生 物 種 の 移 動 は 、 世 界 の ど の 地 域 に お い て も た い へ ん な も の で、
新 し い 生 物 が 、 そ れ ま で 住 ん で い な か っ た 地 域 へ、
つ ぎ つ ぎ に 。 侵 略 〃 し て 行 っ て い ま す。 こ れ に は、
人 間 が 意 図 し て 持 ち 運 ぶ 場 A 口 も 、 ま た 意 図 し な い に も か か わ ら ず 移 動 さ せ て し ま う 場 合 も あ り ま す が 、 と に か く 最 近 百 年 間 に は、
こ の 動 き が と く に 激 し く な っ て い る の で す 。 こ う し た 結 果、
一
連 の ウ 生 態 的 攪 乱 ” が ま き 起 こ り 野 生 の 動 植 物 問 に 何 千 万 と いう
全 く 新 し い 相 互 関 係 を 生 み 出 す と 同 時 に、
人 間 の 健 康 や 天 然 資 源、
さ ら に は 人 間 環 境 全 体 を も 狂 わ し て い ま す 。 」 「 エ ル ト ン の 侵 略 の 生 態 学」
が 指 摘 す る 点 は、
日 本 や 世 界 が 置 か れ て い る 現 状 そ の も の で あ り、
今 話 題 と な っ て い る 外 来 生 物 に よ る 影 響 は、
約 如 年 前 に 指 摘 さ れ て い た こ と に な る 。 こ の 本 に は、
生 物 の 多 様 性 と い う 記 述 は な か っ た と 思 う が 、 種 の 多 様 性 と 生 態 系 の 多 様 性 が 失 わ れ る こ と を 指 摘 し た バ イ ブ ル に 近 い 書 籍 で あ る 。 外 来 生 物 の 影 響 は 、 生 態 系 の 攪 乱 の み な ら ず、
人 間 の 健 康 や 天 然 資 源、
さ ら に は 人 々 の 生 活 環 境 全 体 を も 狂 わ し て い る 。 地 球 環 境 保 全 の 指 針 「 侵 略 の 生 態 学 」 が 出 版 さ れ て 約20
年 が 経 過 し た1980
年 に、
国 際 自 然 保 護 連 合(
IUCN
)
が 国 連 環 境 計 画(
UNEP
)
の 委 託 に よ り、
世 界 自 然 保 護 基 金(
WWF
)
の 協 力 を 得 て 作 成 し た 地 球 環 境 保 全 と 自 然 保 護 の 指 針 を 示 す 「 世 界 環 境 保 全 戦 略(
以 下、
保 全 戦 略 ご が 世 界 同 時 に 公 表 さ れ た 。 副 題 は 「 持 続 可 能 な 開 発 の た め の 生 物 資 源 の 保 全 」 と な っ て い る 。 人 類 生 存 の た め の 自 然 資 源 の 保 全 と し て 、 「 持 続 可 能 な 開 発 」 の 概 念 を 初 め て 公 表 し た も の と し て も 知 ら れ て い る 。 こ の 保 全 戦 略 に 、 生 態 系 に 深 刻 な 被 害 を 与 え て い る 外 来 種 の 脅 威 に つ い て 複 数 の 指 摘 が さ れ て い る。
行 動 計 画 と 外 来 種 リ ス ト の 背 景1992
年 の 地 球 サ ミ ッ ト に お い て 「 生 物 多 様 性 条 約 」 が 採 択 さ れ 、 同 条 約 の 第8
条(
h
)
に 「 生 態 系、
生 息 地 若 し く は 種 を 脅 か す 外 来 種 の 導 入 を 防 止 し 又 は そ の よう
な 外 来 種 を 制 御 し 若 し く は 撲 滅 す る こ と 」 が 明 記 さ れ た。
WWF
ジ ャ パ ン で は、
1995
年 頃 か ら 、 い ち 早 く 学 識 経 験 者 に よ る「
野 生 生 物 の 保 護3wildlife FQrコm Fall/winte「2016
Association of Wildlife and Human Society
NII-Electronic Library Service
Assoclat 二lon of Idl
ldllfe and Human Soclety
に 係 わ る 法 体 制 検 討 会 」 の 活 動 を 支 援 し
、
外 来 生 物 に 関 す る シ ン ポ ジ ウ ム や 集 会 を 幾 度 も 開 催 し て き た 経 緯 が あ り 外 来 生 物 対 策 に一
定 の 効 果 を 与 え た。
一
方、
国 の 具 体 的 な 取 組 は 、2002
年 の 生 物 多 様 性 条 約 第6
回 締 約 国 会 議 で 「 生 態 系、
生 息 地 及 び 種 を 脅 か す 外 来 種 の 影 響 の 予 防 、 導 入、
影 響 緩 和 の た め の 指 針 原 則 」 が 採 択 さ れ 、15
の 指 針 原 則 が 示 さ れ た こ と を き っ か け に よ り 具 体 的 な 取 組 み が 加 速 し た 。2002
年 に 策 定 さ れ た 「 新・
生 物 多 様 性 国 家 戦 略」
に お い て、
生 物 多 様 性 の 三 つ の 危 機 の う ち の一
つ と し て 外 来 種 の 脅 威 が 位 置 づ け ら れ た。
さ ら に、
2004
年 に 外 来 生 物 法 が 成 立 し、
2005
年 に 施 行 さ れ、
法 律 に 基 づ き 指 定 さ れ た 特 定 外 来 生 物 の 飼 育・
栽 培、
運 搬、
輸 入、
野 外 へ の 放 出、
譲 渡 等 が 規 制 さ れ た 。 法 施 行 に 伴 い、
既 に 被 害 を 及 ぼ し て い る 特 定 外 来 生 物 の 防 除 が 進 展 す る な ど、
日 本 に お い て も 本 格 的 な 外 来 種 対 策 が 始 ま っ た の で あ る 。 ま た、
2013
年 の 同 法 改 正 で は 交 雑 個 体 も 外 来 生 物 法 の 対 象 と な っ た。
2010
年 に 愛 知 県 名 古 屋 市 で 開 催 さ れ た 生 物 多 様 性 条 約 第10
回 締 約 国 会 議 で は、
生 物 多 様 性 保 全 に 係 る 具 体 的 な 行 動 目 標 と し て20
の 個 別 目 標 ( 愛 知 目 標)
が 掲 げ ら れ、
侵 略 的 外 来 種 に 関 し て は、
「2020
年 ま で に、
侵 略 的 外 来 種 と そ の 定 着 経 路 が 特 定 さ れ、
優 先 順 位 付 け ら れ、
優 先 度 の 高 い 種 が 制 御 さ れ 又 は 根 絶 さ れ る。
ま た、
侵 略 的 外 来 種 の 導 入 又 は 定着
を 防 止 す る た め に 定 着 経 路 を 管 理 す る た め の 対 策 が 講 じ ら れ る 」 と さ れ た 。 表 1 策定ま で の経緯 「 外 来 種 被 害 防 止 行 動 計 画 」 と 「 生 態 系 被 害 防 止 外 来 種 リ ス ト 」 は 、2012
年 に 閣 議 決 定 さ れ た 「 生 物 多 様 性 国 家 戦 略2012
〜2020
」 に お い て、
愛 知 目 標 の 達 成 に 向 け た 日 本 の 国 別 目 標 の 主 要 行 動 目 標 の一
つ と し て、
2014
年 ま で に 策 定 す る と 位 置 づ け ら れ た 表 1)
。 「 行 動 計 画 」 と 「 外 来 種 リ ス ト 」 の 概 要 前 記 の よ う な 背 景 に よ り2012
年11
月 よ り 環 境 省 は、
2
つ の 会 議 体 を 設 置 し て 検 討 を 始 め た 。一
つ は 、 「 外 来 種 被 害 防 止 行 動 計 画 策 定 会 議 」(
5
回 開 催)
と も う一
つ は、
「 愛 知 目 標 達 成 の た め の 侵 略 的 外 来 種 リ ス ト 作 成 会 議 」(
6
回 開 催)
で あ る。
2
年 以 上 の 議 論 の 末 に、
2015
年3
月 に 「 行 動 計 画 」 と 「 外 来 種 リ ス ト 」 が 取 り ま と め ら れ 公 表 さ れ た 。 「 外 来 種 被 害 防 止 行 動 計 画 」 で は 、 「8
つ の 基 本 的 な 考 え 方 」 と 「 各 主 体 の 役 割 と 行 動 指 *環境 省 「外来 種 被 吉 防止 行 動 計画 亅パンフレッ ト図 に 加 筆 針 」 を 整 理 し、
「 国 と し て 実 施 す べ き 行 動(
計127
個)
と2020
年 ま で の 行 動 目 標(
8
つ∀
」 を 設 定 す る こ と に な っ た 薗 ↓ 。 「 生 態 系 被 害 防 止 外 来 種 リ ス ト 」 は、
侵 略 性 が 高 く、
日 本 の 生 態 系 や 人 の 生 命・
身 体 、 農 林 水 産 業 に 被 害 を 及 ぼ す 又 は そ の お そ れ の あ る 外 来 種 を 選 定 す る、
外 来 生 物 法 に 基 づ く 規 制 の 対 象 と な る 特 定 外 来 生 物・
未 判 定 外 来 生 物 に 加 え て、
同 法 の 規 制 対 象 以 外 の 外 来 種 も 幅 広 く 選 定 す る、
国 外 由 来 の 外 来 種 だ け で な く、
国 内 由 来 の 外 来 種 も 対象
に す る こ と を 基 本 と さ れ、
最 終 的 に3
つ の カ テ ゴ リ ー(
定 着 を 予 防 す る 外 来 種、総 合 的 に 対 策 が 必 要 な 外 来 種 、
適 切 な 管 理 が 必 要 な 産 業 上 重 要 な 外 来 種
)
で リ ス ト さ れ た の で あ る。
残 さ れ た 課 題 外 来 生 物 に 関 す る 取 り 組 み や 研 究 は、
年 月 を 増 す ご と に 幅 広 く、
奥 深 く な り つ つ あ る。
wildll†e Forum Fall/winter 20164 N工 工
一
Electronlc LlbraryAssociation of Wildlife and Human Society
NII-Electronic Library Service
Associat 二ion of Wi工dlife and Human Society
文 前 rIL