冗長構成ネットワークにおける外部プログラムを用いた動的ルーティング手法
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(2) Vol. 42. No. 12. 2811. 冗長構成ネットワークにおける外部プログラムを用いた動的ルーティング手法. 迂回することが可能となる.. Network O. ところが,現在普及している市販ルータでは,ある. Network N L1. L2 I1. インタフェースに直接接続されているネットワークへ. I2. R1. R2. のパケット送出にはつねにそのインタフェースが用い Backbone B1. られ,上記のようなプ ロトコルを用いても動的ルー ティングは行われない.そのため,たとえばあるルー タにおいて支線ネットワークとの接続に低速のインタ. Fig. 1. R0. Backbone B1. 図 1 対象ネットワーク構成 Target network configuration.. フェースが用いられている場合,このルータからこの 支線ネットワークへのパケット送出には,ほかにさら. 情報が広報されており,支線ネットワーク N に接続. に高速の通信経路が存在してもこのインタフェースが. されている機器はこの経路情報に基づき動的に通信経. 用いられることになる.これは,耐故障性は高まるも. 路を選択するものとする.. のの通信速度の低下を招くことになり,好ましくない.. このようなネットワーク構成は複数の基幹ネットワー. そこで,本稿では上記のような冗長構成ネットワー. クを有する組織ではよく見受けられる.たとえば,基. クにおいて,外部プログラムを用いた動的ルーティン. 幹ネットワーク B1 ,B2 としてそれぞれ FDDI とギ. グ手法を提案する.本手法では,インタフェースのアッ. ガビットイーサネットが敷設されており,前者にすべ. プ・ダウンなど従来の動的ルーティング手法では制御. ての支線ネットワークが 10 Mbps で接続され,また. の対象とならなかったインタフェースの設定を変更す. 後者に一部の支線ネットワークが 100 Mbps で接続さ. ることにより,通常時には優先すべき通信経路を選択. れているような場合がこれに該当する.. しながら,障害時には直接接続されたインタフェース を用いて障害箇所を迂回し,耐故障性を高めることが 可能となる. 以下,2 章では対象となるネットワーク構成とその. 2.2 従来の障害対処手法とその問題点 図 1 のような冗長構成ネットワークに関しては,耐 故障性を高めるためにこれまでに多くの障害対処手法 が提案されてきた.. 問題点を明らかにし,3 章では本手法の原理と動作手. ルータの冗長化はその手法の 1 つで,この動作を制. 順を示す.4 章では筆者らが所属する岡山大学におけ. 御するためのプロトコルとして HSRP( Hot Stanby. る運用例を紹介する.最後に 5 章でまとめと今後の課. 4) Router Protocol ) ,VRRP( Virtual Router Re-. 題を述べる.. 2. ネット ワークの冗長化 2.1 対象ネット ワーク構成 本稿では,図 1 のように支線ネットワーク N が 2 つのルータ R1 ,R2 によりそれぞれ基幹ネットワーク. B1 ,B2 に接続されている構成を対象とする☆ .この. 5) dundancy Protocol ) などが提案されている.しか し,この手法は複数のルータにおいて各インタフェー. スが同じネットワークに接続されている構成のみを対 象としており,図 1 のように 2 つのルータ R1 ,R2 が 異なる基幹ネットワークに接続されているような構成 では適用できない. また,レイヤ 3 レベルでの経路の冗長化は障害対処. 構成において,支線ネットワーク N とルータ R1 お. 手法として最も多く用いられており,ほとんどのルー. よび R2 との接続に用いられるインタフェースをそれ. タではこれを行うために RIP,OSPF などの動的ルー. ぞれ I1 ,I2 ,また,これらのインタフェースに接続さ. ティングプロコトルを利用できる.ところが,現在普. れているリンクをそれぞれ L1 ,L2 と記し,L2 が L1. 及している市販ルータでは,あるインタフェースに直. より優先されるものとする.また,ルータ R1 には別. 接接続されているネットワークへのパケット送出には. のネットワーク O が接続されており,ネットワーク. つねにそのインタフェースが用いられ,動的ルーティ. N –O 間で通信が行われるものとする☆☆ .支線ネット. ングが行われない.このため,たとえば図 1 において. ワーク N 内では RIP などのプロトコルを用いて経路. ネットワーク N –O 間で通信を行う場合,ルータ R1 から支線ネットワーク N へのパケット送出には,ルー. ☆. ☆☆. 支線ネットワークが 3 つ以上の基幹ネットワークに接続されて いる構成についても本手法は適用可能であるが,簡単化のため 本稿では扱わない. ネットワーク O は他のネットワークに接続されていても構わな いが,その場合ネットワーク N –O 間の通信は通常時はルータ R1 経由で行われるものとする.. タ R2 経由の方が高速であってもつねにリンク L1 が 用いられることになる. さらに,ネットワークの構成やネットワーク機器の 機能によっては,リンク L1 に障害が発生した場合, このリンク経由ではパケットが支線ネットワーク N.
(3) 2812. Dec. 2001. 情報処理学会論文誌. に到達できないにもかかわらず,他の経路に迂回され. Network O. ないことがある.たとえば,リンク L1 においてケー ブルが外れるなどの障害が発生してもインタフェース. I1 が無効(ダウン )状態にならないようなルータ☆が R1 として用いられた場合,実際にリンク L1 に障害. Network N L1. Routing Program. L2 I1. I2. R1 Backbone B1. R2 R0. Backbone B2. が発生しても,支線ネットワーク N に関する経路情 報は他のネットワークに広報され,支線ネットワーク. N へのパケットは他の経路に迂回されない.また,た とえばリンク L1 が VLAN などの技術を用いて仮想 的に構成されていると,この仮想リンクの途中で障害. Network P. Network Q. 図 2 ルーティングプログラムを導入した場合のネットワーク構成 Fig. 2 Network configuration with a routing program.. が発生しても必ずしもルータ R1 でこれを検出できる. ログラムにより直接制御するため,従来の動的ルーティ. とは限らず,検出できない場合には上記の例と同様に. ング手法とは異なり直接接続されているインタフェー. 支線ネットワーク N へのパケットは他の経路に迂回. スを経由しない経路を優先することも可能である.ま. されないことになる.. た,市販ルータが有する標準的な機能を利用して制御. レイヤ 2 レベルでの経路の冗長化も障害対処手法の. 1 つで,たとえば図 1 ではルータ R1 –R2 間を VLAN. するため,広範囲のネットワークに適用可能であると いう特徴も有する.. など の技術を用いて基幹ネットワーク B1 ,B2 経由. ルーティングプ ログラムを導入し た場合のネット. で仮想的なリンクを設定することにより実現すること. ワーク構成を図 2 に示す.この図において,ルーティ. ができる.この場合,IEEE 802.1d spanning tree 6). ングプログラムはルータ R1 に直接接続された計算機. などのアルゴ リズムを用いて冗長リンクのうち実際に. 上で動作しているが,想定しているような障害が発生. 用いるリンクが選択される.しかし,このアルゴ リズ. してもルータ R1 を制御できる場所であればどこで動. ムではルータのインタフェースの MAC アドレスを基. 作してもかまわない.. にリンク選択が行われるため,必ずしもリンク L2 が. この図に示す環境において,障害はルータ R0 ∼R2 ,. 優先されるとは限らない.また,たとえリンク L2 を. ,あ リンク L1 ,L2(あるいはインタフェース I1 ,I2 ). 優先するようなアルゴ リズムがルータ R1 ,R2 に実. るいは基幹ネットワーク B1 ,B2 のいずれか 1 カ所. 装されていたとしても,基幹ネットワークに用いられ. で発生する場合を想定する.すなわち,同時に 2 カ所. ている機器が VLAN 機能をサポートしていない場合. 以上で障害が発生する場合は稀であると考え,本稿で. には R1 –R2 間に仮想的なリンクを設定することがで. は考慮しない.また,支線ネットワーク N における. きない.. リンク L1 ,L2 以外の個所での障害発生についてもレ. 以上のように,従来の障害対処手法には,直接接続 されているインタフェースがつねに優先して選択され たり,適用できるネットワーク構成やネットワーク機 器に強い制限があったりするなどの点で問題がある.. 3. 外部プログラムによる動的ルーティング 前章で述べた問題点を考慮した障害対策手法として, 本章では外部プログラムを用いた動的ルーティング手. イヤ 2 レベルでの冗長化で解決すべき問題であると考 え,本稿では考慮しない. 以下では,図 2 において L2 を優先する状況を例に とり,本手法の原理と動作を示す.なお,本手法では リンク L1 ,L2 の障害を考慮するかど うかによりルー タに必要な機能や動的ルーティングの動作が異なるた め,それぞれの場合に分けて述べる.. 3.1 リンクの障害を考慮しない場合. 法を提案する.この外部プログラムは各ルータの状態. まず,リンク L1 ,L2 の障害を考慮しない場合につ. を定期的に調べ,その結果通常の通信経路に障害が発. いて考える.この場合,考慮の対象となるのは,ルータ. 生したと判断した場合には代替経路に迂回するように. あるいは基幹ネットワークの障害のみである.ルーティ. 各ルータを制御する役割を果たす.以下では,このプ. ングプログラムはルータ R1 においてインタフェース. ログラムをルーティングプログラムと呼ぶ. 本手法はルータのインタフェースをルーティングプ. I1 を適宜有効(アップ ) ・無効(ダウン )状態に変更 することにより動的ルーティングを実現する. 以下に,本手法の具体的な動作手順を示す.. ☆. 少なくとも岡山大学で用いられている FDDI ルータがこれに該 当する.. 障害が発生し ていない通常時では,ネットワーク. N –O 間の通信がリンク L1 を経由せずリンク L2 を.
(4) Vol. 42. No. 12. 冗長構成ネットワークにおける外部プログラムを用いた動的ルーティング手法. 2813. 経由するようにしておく必要がある.そのために,本. 更する.ここで,ルーティングプログラムがどのよう. 手法では初期状態としてルータ R1 においてインタ. に障害復旧を検出するかが問題となる.これについて. フェース I1 を通常時は無効状態にしておく.この状. もいくつかの方法が考えられるが,たとえば SNMP. 態ではルータ R1 はリンク L1 を利用することができ. を用いてルータ R2 に支線ネットワーク N や O ,デ. ず,基幹ネットワークを通じて広報された経路情報に. フォルトネットワークなど の経路情報を問い合わせ,. 基づきルータ R2 経由で通信を行うことになる.また,. これにルータ R2 が正し く応答し ,かつ問合せ結果. 支線ネットワーク N と O 以外のネットワークとの. が正常であれば障害から復旧したと判断することがで. 間の通信についても同様に広報された経路情報に基づ. きる.. きルータ R2 経由で行われることになる.. 以上をまとめると,本手法では次のような手順で動. 基幹ネットワークやルータに障害が生じ,支線ネッ トワーク N への通信がルータ R2 経由では行えなく. 的にルーティングを行うことになる.. (1). 初期状態として,インタフェース I1 を無効状. なった場合,ルーティングプログラムはまずこれを検. 態に,インタフェース I2 を有効状態に設定す. 出する必要がある.この障害の検出についてはいくつ. る.また,ルータ R1 ,R2 から必要な経路情報. 7). かの方法が考えられるが,たとえば SNMP を用い. を適切な重みを付けて各ネットワークに広報す. てルータ R1 におけるネットワーク N の経路情報の. るように設定する.. 有無やルータ R2 の反応の有無などを調べることによ. (2). ルーティングプログラムは定期的にルータ R1 ,. り検出することが可能である.あるいは,ルータの機. R2 に状態を問い合わせ,支線ネットワーク N. 種によってはルーティングプログラムが telnet によ. との通信に障害が発生していないかど うかを調. りルータ R1 を直接制御し ,ルータ R1 上で ICMP. echo や telnet を用いてルータ R2 への到達可能性を. 査する.障害を検出した場合には,次に進む.. (3). インタフェース I1 を有効状態に変更して支線. 調べることも可能である.. ネットワーク N との通信を行えるようにし,経. 障害を検出すると,ルーティングプログラムはルー タ R1 においてインタフェース I1 を有効状態に変 更し,支線ネットワーク N の経路情報を基幹ネット. ルーティングプログラムは,障害を検出すると. 路情報を広報するようにする.. (4). ルーティングプログラムは,定期的にルータ R1 ,. ワークに広報する.これにより,ネットワーク N –O. R2 に状態を問い合わせ,障害が復旧している. 間の通信がリンク L1 経由で行われることになる.ま. かど うかを調査する.障害復旧を検出した場合. た,O 以外のネットワークと支線ネットワーク N と の通信については,広報された経路情報に基づきルー タ R1 あるいは R2 経由☆ で行われることになる.な. には,次に進む.. (5). ルーティングプログラムは,インタフェース I1 を無効状態に変更し,( 2 ) に進む.. お,ルータ R1 から支線ネットワーク N の経路情報. 3.2 リンクの障害を考慮した場合. を他のネットワークに広報するとき,および他のネッ. 次に,リンク L1 ,L2 の障害を考慮する場合につい. トワークの経路情報を支線ネットワーク N に広報す る場合には,RIP におけるメトリック値などを調整し,. て考える. この場合,基本的な動作はリンクの障害を考慮しな. 他のルータが支線ネットワーク N の経路情報をルー. い場合と同様でよいが,障害発生・復旧の検出は前節. タ R2 からも受け取ったときにルータ R2 を優先する. の手順をそのまま適用することはできない.たとえば. ようにすることが望ましい.また,ルータ R1 ,R2 か. 障害発生の検出については,リンク L2 に障害が発生. ら視線ネットワーク N へはデフォルトネットワーク. した場合でもルータ R2 が支線ネットワーク N の経. の経路情報だけでなく他のネットワークの経路情報に. 路情報を広報し続けるため,前節で述べたようなルー. ついても広報し,たとえばルータ R0 に障害が生じた. タ R1 におけるネットワーク N の経路情報の有無や. 場合でもネットワーク N とネットワーク P ,Q との. ルータ R2 の反応の有無の確認だけでは障害発生を検. 間で通信できるようにする.. 出できない.また,障害検出時の動作についても,単. 障害から復旧すると,ルーティングプログラムはこ. にルータ R1 のインタフェース I1 を有効状態にする. れを検出して再び インタフェース I1 を無効状態に変. だけなく,ルータ R2 が支線ネットワーク N との通. たとえばルータ R0 が故障した場合,基幹ネットワーク B2 に 接続されている支線ネットワークから N への通信はルータ R2 経由で行われる.. このとき,前節における初期状態と同様に単にインタ. ☆. 信にリンク L2 を使わないように設定する必要がある. フェース I2 を無効状態に設定する方法が考えられる.
(5) 2814. 情報処理学会論文誌. Network O. ばルータ R1 ではこれを無視するように設定する必. Network N(A.B.C.0/24) L1. Routing Program. 要がある.これを怠ると,ルータ R2 から支線ネット. L2 I1=A.B.C.253(/30) R1. Backbone B1. I2=A.B.C.254(/24) R2. R0. Dec. 2001. Backbone B2. ワーク N 経由で広報された経路情報は,ルータ R1 で はすべて/30 のサブネットマスクを持つ別のサブネッ トに関するものと見なされ基幹ネットワークや他の支 線ネットワークに広報される.これにより,これらの. 図 3 リンクの障害を考慮する場合のネットワーク構成 Fig. 3 Network configuration for link failure recovery function.. サブネットに属するアドレスに宛てたパケットは,ま ずルータ R1 で受け取られて支線ネットワーク N 経 由でルータ R2 に送られ,またルータ R2 ではこれを. が,この方法ではリンク L2 が障害から復旧したこと. 幹線ネットワーク経由でルータ R1 に送り返すため,. を検出することが困難である.. ルータ R1 ,R2 間で循環してしまう結果を招くこと. そこで,本手法ではインタフェース I2 を有効状態 のままで支線ネットワーク N との通信に用いられな いようにするため,ルータ R1 ,R2 においてインタ フェース I1 ,I2 のサブネットマスクを適宜変更する.. になる. 障害の検出では,ルータ R2 に障害が発生した場合 ,基幹ネットワーク(たとえばルータ R0 )に (障害 1 ) ,およびリンク L2 に障 障害が発生した場合(障害 2 ). このとき,サブネットマスクを変更したインタフェー. 害が発生した場合(障害 3 )のそれぞれの場合について. スは支線ネットワーク N に対して経路情報を広報す. これを検出できる必要がある.このうち,障害 1 につ. るためのみに用い,これを利用して障害発生・復旧の. いては前節と同様にルータ R1 における A.B.C.0/24. 検出を行う.. の経路情報の有無で検出可能である.障害 2 について. 以下では,図 3 の環境を例にとって本手法の具体的. は,RIP のように A.B.C.0/24 の経路情報を支線ネッ. な手順を示す.図 3 では,支線ネットワークのアドレ. トワーク N 自身に広報しないプロトコルを用いる場. スとして A.B.C.0/24 が用いられているものとする.. 合にはルータ R1 における A.B.C.0/24 の経路情報の. このとき,インタフェース I1 にアドレス A.B.C.253. 有無で検出可能であり,そうでない場合にはルータ R1. を,またインタフェース I2 にアドレス A.B.C.254 を. における A.B.C.0/24 の経路情報のうち中継先がルー. 割り当てる.また,アドレ ス A.B.C.252 は使用禁止. タ R2 のアドレ ス A.B.C.254 であるかど うかで検出. とする.なお,ルータの機能によってはこの割当てに. 可能である.また,障害 3 については,インタフェー. 必ずしも従わなくてもよい場合があるが,これについ. ス I1 で受信するパケットがあるにもかかわらず,イ. ては後述する.. ンタフェース I2 で受信するパケットがなくなったか. 初期状態では,ルータ R1 が支線ネットワーク N と. ど うかで検出可能である.. の通信にリンク L1 を用いないようにしなければなら. 障害検出時の動作についても障害の発生個所により. ない.そこで,ルータ R1 ではインタフェース I1 のサ. 異なる.障害 1∼3 のいずれの場合についてもインタ. ブネットマスクを/30 に設定する.この設定では,イ. フェース I1 のサブネットマスクを/24 に変更するが,. ンタフェース I1 経由で通信できるのは A.B.C.252∼. 障害 2,3 ではさらにインタフェース I2 のサブネッ. A.B.C.255 の範囲に限られ,このうち A.B.C.252 は. トマスクを/30 に変更する.このとき,必要であれば. 使用禁止であり,また A.B.C.255 は支線ネットワー. ルータ R2 ではルータ R1 から支線ネットワーク N. ク N の同報アドレスであるため,支線ネットワーク. 経由で広報される経路情報を無視するように設定する.. N 内にある一般のホストとの通信にはインタフェース. 障害復旧の検出については,たとえば SNMP を用. I1 が用いられることはない.また,この状態でルー. いてルータ R2 に A.B.C.0/24 の中継先ならびにイン. タ R1 は自身が持つ経路情報を低優先度で支線ネット. タフェース I2 の受信パケット数を問い合わせ,これ. ワーク N に広報する.逆に,ルータ R2 から広報され. にルータ R2 が正しく応答し,A.B.C.0/24 の中継先. る経路情報はルータ R1 では低優先度のものとして扱. が基幹ネットワークのルータ( たとえばルータ R0 ). う.なお,サブネットマスクの変更による影響を避け. であり,インタフェース I2 の受信パケット数が前回. るため,支線ネットワーク N での経路情報の広報に. の結果より増加していれば障害から復旧したと判断す. 1). は RIP1 のような可変長サブネットマスク( VLSM:. Variable Length Subnet Mask )を考慮しないプロト コルを用いないようにするか,用いたとしてもたとえ. ることができる. 以上をまとめると,本手法では次のような手順で動 的にルーティングを行うことになる..
(6) Vol. 42. (1). No. 12. 初期状態として,支線ネットワークに接続され るインタフェースのサブネットマスクを,イン タフェース I1 については /30 に,インタフェー. to other campuses / SINET ATM-SW. physical link. ATM-SW. logical link. ス I2 については /24 に設定する.また,ルー. ATM-HUB. タ R1 ,R2 から必要な経路情報を適切な重み. subnet(150.46.XX.0/24) FDDI x 3. する.. FDDI-R. FDDI-R. ルーティングプログラムは定期的にルータ R1 ,. R2 に状態を問い合わせ,支線ネットワーク N との通信に障害が発生していないかど うかを調. host. ATM-R. を付けて各ネットワークに広報するように設定. (2). 2815. 冗長構成ネットワークにおける外部プログラムを用いた動的ルーティング手法. Fig. 4. 図 4 津島キャンパスにおける OUnet の構成 Network structure of OUnet in Tsushima Campus.. 査する.障害を検出した場合には,どのような 種類の障害であるかを確認して次に進む.. (3). (4). (5). 実装方法と運用結果について述べる.. ルーティングプログラムは,障害を検出すると. まず,OUnet の構成を示す.岡山大学には 9 学部. インタフェース I1 のサブネットマスクを /24. を擁する津島キャンパスと 2 学部を擁する鹿田キャン. に変更して支線ネットワーク N との通信を行. パスの 2 つの主要なキャンパスがあり,ど ちらのキャ. えるようにし,またルータ R2 自身に障害が発. ンパスにおいても FDDI,ATM の 2 種類の基幹ネッ. 生している場合以外はインタフェース I2 のサ. トワークと,これらに接続されている支線ネットワー. ブネットマスクを/30 に変更する.. クから構成されている.このうち FDDI ネットワー. ルーティングプログラムは,定期的にルータ R1 ,. クは研究系,図書系,事務系の 3 系統のループが敷設. R2 に状態を問い合わせ,障害が復旧している. されており,多くの建物にはルータが設置され,支線. かど うかを調査する.障害復旧を検出した場合. ネットワークとして 10Base5 が接続されている.一方,. には,次に進む.. ATM ネットワークについては主要な建物にのみ ATM. ルーティングプログラムは,インタフェース I1. 交換機( NEC ATOMIS-7 ならびに ATOMIS-5 )と. のサブネットマスクを/30 に,インタフェース. ATM ハブ( NEC ES10e C5000 )が設置されており,. I2 のサブネットマスクを /24 に変更し,( 2 ) に. 導入当初はマルチメディア端末など一部の計算機が接. 進む.. 続されていただけであったが,平成 11 年 3 月に FDDI. なお,ルーティングプログラムの動作場所について. の支線ネットワークの大半が接続された.2 種類の基. は,想定している障害が発生した場合でもルータ R1 ,. 幹ネットワークの相互接続は各キャンパスに 1 台設置. R2 をともに制御できる場所が望ましいが,ルータ R1. されている ATM ルータ( NEC IP45/650 SSP )が. からルータ R2 へは基幹ネットワーク経由,支線ネッ. 担当している.このルータはさらに上記の支線ネット. トワーク経由の両方の経路に障害が発生しない限り. ワークを LANE( LAN Emulation )方式で接続して. 通信可能であるため,ルータ R1 が制御可能であれ. いるほか,キャンパス間接続や対外ネットワークとの. ば事実上十分であると思われる.また,インタフェー. 接続も担当している.津島キャンパスにおける OUnet. ス I1 ,I2 に割り当てるアドレスについては必ずしも. の構成を図 4 に示す.. A.B.C.253,A.B.C.254 に限られるものではなく,た. この図のような構成では,多くの支線ネットワーク. とえばそれぞれに A.B.C.1,A.B.C.2 を割り当てても. が論理的には直接 ATM ルータに接続されているため,. かまわない.ただし,この場合は A.B.C.0 と A.B.C.3. 従来の動的ルーティングでは ATM ルータを経由して. が使用禁止となるとともに,インタフェースのサブネッ. 支線ネットワークへ向かう通信が ATM ネットワーク. トマスクを/30 に変更する場合にはあわせて同報アド. に集中することになる.そこで前章で述べた手法によ. レ スを A.B.C.255 に設定する必要があることに注意. り FDDI ネットワークを優先するようなルーティング. する.. プログラムを実装した.支線ネットワークにおけるルー. 4. ルーティングプログラムの実装と運用. ティングプロコトルには支線ネットワークで用いられ ている機器の関係から RIP1 を用いた.なお,FDDI. 我々は岡山大学の学内ネットワーク OUnet を対象. ルータはインタフェースの設定変更に再起動を必要と. として,前章で述べた手法に基づいたルーティングプ. する,あるいは可変長サブネットマスクをサポートし. ログラムを実装し,運用を行っている.本章ではこの. ていないなどの理由により,実装したルーティングプ.
(7) 2816. 情報処理学会論文誌. ログラムではリンクの故障は考慮していない.. Dec. 2001. 述べる.平成 11 年 6 月にルーティングプログラムを導. ルーティングプログラムはシェルスクリプトで記述. 入してから平成 13 年 4 月までの間に約 40 件の FDDI. されており,60 本の支線ネットワークについて順に障. ルータ障害が発生した.このうちの多くは休日や夜間. 害が発生していないかど うか調査するようになってい. に発生しており,ルーティングプログラムが基幹ネッ. る.障害発生・復旧の検出は SNMP を用いて MIB-. トワークの可用性の向上に大きく貢献しているといえ. II 8)に規定されるいくつかの状態を問い合わせること により行った.すなわち,各 FDDI ルータの状態を. る.基幹ネットワークの切替えに要する時間は,障害. SNMP を用いて問い合わせ,問合せに対して応答し. はルーティングプログラムがすべての支線ネットワー. 発生時で約 3 分,障害復旧時で約 1 分であるが,これ. ない状態あるいは以下の条件を 1 つでも満たしていな. クの状態調査に約 1 分を要するためであり,たとえば. い状態が 3 回連続すれば障害が発生していると判断し. 複数の計算機上でルーティングプログラムを動作させ. た.また,障害発生中に問合せに対して応答を返し ,. て複数の支線ネットワークを並行して調査するように. かつ応答が以下の条件をすべて満たす状態が 1 度でも. すれば短縮を図ることが可能であると思われる.なお,. あれば,その時点で障害から復旧したと判断した.. 岡山大学のネットワーク環境では 1 つの ATM ルー. (1). 支線ネットワークのインタフェースに対応する. タに多くの支線ネットワークが集中的に接続されてい. ifOperStatus が up(1) である.. るため,支線ネットワーク数が増加すると,たとえば. (2). 支線ネットワークの ipRouteType が direct(3). ATM ルータの FDDI インタフェースに障害が発生し. である.. た場合にすべての支線ネットワークを ATM での接. (3). 支線ネットワークの ipRouteNextHop が FDDI. 続に切り替えるためにかなりの時間を要するなど ,ス. ルータ自身を指している.. ケーラビリティの面で若干の問題がある.しかし,こ. (4). デフォルトネットワークの ipRouteNextHop が. れはネットワークの構成上の問題であり,ルーティン. FDDI を経由するものになっている. 障害発生・復旧を検出すると,ルーティングプログラ. グプログラム自身は各支線ネットワークに関する経路. ムは expect 9)を用いて ATM ルータの当該支線ネット. とが可能で,本方式は原理的にはさらに大規模なネッ. ワークに対応する LANE インタフェースを有効状態あ. トワークにも適用可能である.. 制御を独立して行えるため分散配置して動作させるこ. るいは無効状態に設定するようにした.これは ATM. リンクの障害を考慮したルーティングプログラムに. ルータでは LANE インタフェースの制御を SNMP を. ついては,上記の理由により実際の運用は行っていな. 用いて行うことができなかったためである.また,ルー. いが,FDDI ルータの設定を変更せず,ATM ルータ. ティングプログラムには障害発生・復旧の検出時に管. のサブネットマスクの変更のみを行う方法については. 理者に電子メールで通知する機能も組み込んだ.. 動作試験を行っている.その結果,FDDI ルータと支. ルーティングプログラムの設定では,各ルータの属. 線ネットワークとを接続するリンクに障害が発生する. する基幹ネットワーク,各ルータに接続されている支線. と,ATM ルータを経由しない通信は障害個所を迂回. ネットワーク,各支線ネットワークに対応する LANE. できないが,学外との通信など ATM ルータを経由す. インタフェースなど ,対象となるネットワークの構造. る通信は利用する基幹ネットワークが FDDI ネット. をネットワーク管理者が把握しておく必要がある.し. ワークから ATM ネットワークに切り替わり障害個所. かし,これは本プログラムとは無関係にネットワーク. を迂回することが確認された.また,障害から復旧す. 管理者が当然把握しておくべき内容であり,管理の負. ると,すべての通信が FDDI ルータ経由で行われるこ. 担とはならないと考えられる.また,岡山大学のネッ. とも確認された.なお,その際,今回使用した ATM. トワーク環境では各支線ネットワークに対する FDDI. ルータでは標準で proxy arp 機能10)が有効になるよ. ルータのインタフェースアドレ スや ATM ルータの. うに設定されているが,支線ネットワークが接続され. LANE インタフェースの名前およびアドレ スを一定 の規則に従って割り当てているため,1 つの支線ネッ トワークの制御に必要な情報はサブネットアドレス,. ている LANE インタフェースに関してはこれを無効 にする必要があった.これはこの機能を無効にしない. 対応する FDDI ルータ名,FDDI ルータが属する幹線. いるホストへの MAC アドレス問合せに対して ATM. ネットワークの 3 つ組だけであり,新しい支線ネット. ルータが応答を返すためである.. ワークの追加も容易である. 次に,ルーティングプログラムの運用結果について. と FDDI ルータから支線ネットワークに接続されて.
(8) Vol. 42. No. 12. 冗長構成ネットワークにおける外部プログラムを用いた動的ルーティング手法. 5. ま と め 本稿では支線ネットワークを複数の基幹ネットワー クに接続した冗長構成ネットワークにおいて,インタ フェースの有効・無効状態やサブネットマスクなど , 従来の動的ルーティング手法では制御の対象とならな かったインタフェースの設定を外部プログラムを用い て変更する動的ルーティング手法を提案した.これに より,通常時には優先すべき通信経路を選択しながら,. 2817. IETF (1991). 9) Libes, Don: Exploring Expect, O’Reilly & Associates, Inc. (1994). 10) Braden, R. and Postel, J.: Requirements for Internet Gateways, RFC1009, IETF (1987). 11) 山井成良,大隅淑弘,宮下卓也,岡本卓爾:岡 山大学における基幹ネットワークの構成と運用, 情報処理学会分散システム/ インターネット運用 技術研究会研究報告,2000-DSM-19-6, pp.31–36 (2000).. 障害時には直接接続されたインタフェースを用いて障. (平成 13 年 5 月 8 日受付). 害箇所を迂回し,耐故障性を高めることが可能となっ. (平成 13 年 10 月 16 日採録). た.また,外部プログラムを実装して岡山大学の学内 ネットワーク上で運用することによりその有効性を確 認した.. 山井 成良( 正会員) 昭和 59 年大阪大学工学部電子工. 今後の課題としては,リンクの障害を考慮したルー. 学科卒業.昭和 61 年同大学大学院. ティングプログラムを実際のネットワーク上で運用し,. 博士前期課程修了.昭和 63 年同大. その有効性を検証することがあげられる.. 学院基礎工学研究科(物理系専攻情. 参 考 文 献 1) Hedrick, C.: Routing Information Protocol, RFC1058, IETF (1988). 2) Malkin, G.: RIP Version 2, RFC2453, IETF (1998). 3) Moy, J.: OSPF Version 2, RFC2328, IETF (1990). 4) Li, T., Cole, B., Morton, P. and Li, D.: Cisco Hot Standby Router Protocol (HSRP), RFC2281, IETF (1998). 5) Knight, S., Weaver, D., Whipple, D., Hinden, R., Mitzel, D., Hunt, P., Higginson, P., Shand, M. and Lindem, A.: Virtual Router Redundancy Protocol, RFC2338, IETF (1998). 6) IEEE: Media Access Control (MAC) Bridges, ISO/IEC 15802-3:1993 ANSI/IEEE Std 802.1D (1993). 7) Case, J., Fedor, M., Schoffstall, M. and Davin, J.: A Simple Network Management Protocol (SNMP), RFC1157, IETF (1990). 8) McCloghrie, K. and Rose, M.: Management Information Base for Network Management of TCP/IP-based Internets: MIB-II, RFC1213,. 報工学分野)博士後期課程退学.同 年奈良工業高等専門学校情報工学科助手.同講師,大 阪大学情報処理教育センター助手,同大学大型計算機 センター講師を経て,現在岡山大学総合情報処理セン ター助教授.分散システム,マルチメディアシステム, マルチメディアネットワークの研究に従事.IEEE,電 子情報通信学会各会員.博士( 工学) . 宮下 卓也 平成 3 年岡山大学工学部電気電子 工学科卒業.平成 5 年同大学大学院 工学研究科(電気電子工学専攻)修 了.平成 8 年同大学院自然科学研究 科(知能開発科学専攻)修了.平成. 9 年東京農工大学ベンチャービジネスラボラトリー博 士研究員.平成 10 年岡山大学総合情報処理センター 助手.主にディジタル機器からの放射電磁雑音の計算 機シミュレーションの研究に従事.情報処理教育,マ ルチメディア,高速ネットワーク等に興味を持つ.博 士(工学) .IEEE,電子情報通信学会,エレクトロニ クス実装学会各会員..
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図
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