免
疫
と
ア
ポ ト
ー
シ
スApoptosis
in
lmmunology
:An
Overview
多
田隈
卓 史
要 約
アポ ト
ー
シス と は細 胞 自 身が保 有 する 自爆 死 機 構の引き金 を引 くことで も た ら さ れる細 胞 死であ り,
生体 内で、
は幅 広 く観 察さ れる現 象で ある.
本 稿で は, 免 疫 系で観 察さ れる アポ トー
シス に関して, (1) T 細 胞・
B 細胞レパー
ト リー
の 形成,
(2 )過剰な免 疫 反応 の抑 制,
(3)キラー
細 胞の傷 害 機 序,
の3点か らアポ トー
シ ス機 構がい かに 関 与してい る のか, 概 説を試みた.
ア ポ トー
シ ス機構の乱れ は自己 免 疫 疾 患やエ イ ズの発 症の起 因と なっ てい る.
キー
ワー
ド アポ トー
シ ス,
免 疫系,
T 細胞・
B 細胞レパー
トリー
の形 成,
Fas−
FasL 系,
細 胞 傷 害 機 序 は じ め にア ポ ト
ー
シス と は,
細 胞自ら が 保有す る 自爆死機 構 を発 動させ るこ とで 誘 導さ れ る細 胞死であ り,
生 体に とっ て は不利・
不 用 に なっ た 細 胞 が 自 ら死 んで い くこ とで 生体の 統一
性を維 持 しようとする機 構と い えようり.
アポ トー
シス は動物,
植 物 を 問 わず広 く 観 察さ れる現 象であ り,
例え ば発生,
分 化の 際,
ミ ッ ト型の手 か ら指が形成 さ れ るの は指 間の細 胞が 死 ぬ こ とによ るの で あ り,
眼の水 晶 体は構 成 する細 胞 が 死ぬ こ とで透明 化 する.
心 臓,
口蓋 は 左右の壁 が 接 触しその部 分が アポ トー
シ ス する こ とで融 合 する (こ れ に失 敗し た の が , 三つ 口)さらに, 神 経 細 胞は 余 計に作 ら れ,
連 絡 網の形 成に成 功 し た もの の みが 生 き残 り, 神 経回路が完 成 する.
ア ポ トー
シ ス は 日 常の 生活 中で も観 察さ れ,
例え ば,
常に外 界の 刺 激 に さ ら され てい る腸 管上皮 細 胞は常に新しい 細 胞が 産生 され,
古い細 胞は ア ポ トー
シス する こ とで便の一
部 と して排 出さ れてい る.
生 体の 統一
性を保つ とい う点で は免 疫 系 も大 きな 役 割 を果た してい るが,
免 疫 系の中で もアポ トー
シ ス機 構が幅広 く応用 され て い る.
本稿で はア ポ トー
シス が免 疫 系で どの ような役 割を 果 た してお り,
そ の機 構はどの程度 解 明 が 進 んで い る か 概 説 を試み た.
アポ
トー
シス と は ア ポ トー
シス に よ る典 型 的 な細 胞死はその 形 態 学 的変 化とDNA
の切 断 で特 徴 付け ら れ る.
細 胞 は 縮 小 し,
核の 濃縮,
染色 体の 凝 縮 が観 察さ れ,
次 第に細 胞 は 断片化 し(
アポ トー
シス小体)
,
小体の細 胞膜は 破裂 す るこ とな く貪
食 細胞 に よ り捕 捉処 理 さ れる.
一
方,
アポ トー
シス の 際エ ン ドヌクレ アー
ゼが活 性 化さ れ る た め,DNA
が 切断さ れる.
こ の 際,
ヒ ス ト ン コ ア に巻 きつ い てい る部分 は 切断さ れ ない の で,
結 果 的には180− 200
塩 基の整 数 倍のDNA
断 片が観 察 さ れ ることにな る.
アポ トー
シ ス は外 的お よ び内 的な多 くの刺激で誘 導 され るが,
その誘 導 経路は大き く2つ に分け ら れる2 〕.
その1つ はミトコ ン ドリ アを介 する系で,
ミ トコ ン ド リ アまで に至 る シ グ ナ ル系は不 明な点が多い が, 恐 らくはBak やBax (後 述 )を介し て ミ トコ ン ドリ ア に 小さ な孔を 開 け, シ ト クロー
ムcの流 出をもた らす.
こ れ にApaf−
1,
caspase9 が結 合 する こ とで大き な複 合 体 を形成 し, caspase9 が活 性 化され , caspase3 を介して , 最 終 的にCAD (caspase
−
activated DNase )に よ りDNA が 切断さ れる3}
.
も う 1つ は ミ トコ ン ド リ アを介 さ ない 系で, Fas抗原やTNF レ セ プ ター
を介し て死の シグ ナルが 入 り,
caspase8 を介 して,
caspase3 につ な が る経 路で ある4〕.
一
方,
アポ トー
シ ス誘 導 を抑 制 する因子 も知ら れ てお り, 代表的 な もの としてBcl−2Bcl−XL
が 上げら れ る5,.
両者とも, ミ トコ ン ド リア に結 合 する ことで,
Bak!Bax
の 機 能と拮 抗 し てい ると予 想 さ れる,
な お, Bcl−
2等は大 きなフ ァ ミリー
を形成しお り, BH ドメ イ 1 桐 生 短 期 大 学 紀 要.
第17号.
2006Kiryu Junior College
NII-Electronic Library Service Kiryu Junior College
ン と呼ば れ る 共 通の 構造 を有してい る
,BH1
とBH2
ドメ イン は チ ャ ンネル の 形成 に働き,
BH1,
BH2 ,BH3
ドメ イン を有す ると(
Bak ,
Bax )
細 胞 死 を促 進 し,BH1 ,
BH2 ,
BH3 ,
BH4
ドメイン を保 有 する と(
Bcl−
21Bcl−XL )
抑制 的に働 く.
さ らに,
BH3
ドメイ ンのみ を有す る 因子も あ り,Bcl−21Bc1
−XL
と拮 抗 する こ とで,
あ るい はBak1Bax
の 機 能を 促 進 するこ とで,
アポ トー
シス誘 導に働 く と予 想 さ れてい る.
免疫
レ パー
トリ
ー
の形成
とア ポ トー
シ
ス1.
胸 腺T
細 胞に お け る アポ トー
シス T 細 胞の レパー
トリー
は胸 腺 内で の遺伝 子の ラン ダ ムな組 合せで形 成さ れる結 果,T
細 胞レパー
ト リー
と し て は不 完全 な もの, 有用 な もの, 自己 反 応性で生 体に有 害な もの の3
者が形 成さ れる.
こ の う ち不 完 全 な レ セ プター
を保 有 するT 細胞は レ セ プター
を介 する 分 化シ グナル を受 取れず, アポ トー
シ ス死し てい く ことになる.一
方, 残っ た細 胞の う ち 自己成分 と強 く反 応 しうるもの はア ポ トー
シス機 構を介して 積 極 的に除か れ てい く (ネガティ ブ選択 ).
T 細胞の 胸 腺 内での 分 化・
成 熟 過 程はCD4 とCD8 の 抗原マー
カー
の発現で表す と,CD4c
’
〕8
° 細胞か らCD4
(+
〕8
〔+
〕 細 胞 を経 て,CD4
〔+〕8
(.
}の ヘ ルパーT
細 胞とCD4
〔.
)8
{“)の キラーT
細 胞へ と分 化 してい く(
図1).
こ のう
ちCD4
〔+
}8c+
)細 胞 の段 階で非 常に アポ トー
シ ス に感 受 性が高い 時期が あるfi).
この ときの アポ トー
シス 誘 導の シ グ ナル はT 細 胞レ セ プ ター
(
TCR
)を介して い るこ と は,
抗CD3
抗体に よる アポ トー
シス の誘 導や7),
さ らに はTCR
の トラン ス ジェ ニ ッ クマ ウ スを用い た解 析か ら 明ら かにさ れてい るがs〕,
一
方ではTCR を介 する シ グ ナ ルはT 細胞の分 化を促 進 するはずであ り (ポ ジテ ィ ブ選 択 ), その分かれ 目が何に基 因 する の か は従 来か ら議 論の 的であっ た.
目下の とこ ろ強い アフ ィニ テ ィ で結 合 する ときアポ トー
シ スへ,
弱い 場 合に は分 化・
成 熟へ とい う考えが有 力である が , それ で は具 体 的に アフ ィニ ティ の差は どんなシグ ナル の相 違と し て観 察さ れ るの であろうか.
胸腺内のT細胞の選 択 に はMAP キ ナー
ゼが 関与 する こ と が示 唆さ れてい る.MAP
キ ナー
ゼ はERK
,JNK
,P38
とい っ た異な る キナー
ゼ か らなるが, 弱い シグ ナル だ と優 先 的に ERK が活性化さ れ ポジティブ 選 択へ , 強い シグ ナル だ とJNK やp38
が活 性 化さ れ, 細 胞は死へ 向か うとい T細 胞 CD3−
CD4−
8一
→ μH VpreB硝
5 −、
プ レB細 胞 ア ボ トー
シ ス機構を利 用し た レ パー
トリー
形 成器
一騁 享
鶻
一 弱・縦\
強い親 和 性↓
ア ポ トー
シス IgM∴
一 一 未熟B細 胞 膜 結合 性 抗原 ア ポ トー
シ ス↓
(+〉/
\
可溶 性 抗 原↓
↓
アネル ギー
CD3high CD4+
8一
/
ヘ ルパー
。髄\
CD3hlghCD4−
8+
キ ラー
T細 胞 図1T 細 胞,
B細 胞の分化・
成 熟とアポ トー
シス T細 胞,
B細 胞 と もあ る 特 定の分 化 段 階で非 常に アポ トー
シ ス感 受 性の高い時期 が あ り,
の 自 己反 応 性 細 胞が除か れ てい く鸞
繭 こ の時 点で多く 桐 生 短 期 大 学 紀 要.
第17号。
2006 2 N工 工一
Eleotronio Libraryう仮説 も提出 さ れてい る が9)
,
い ま だ,
確立 さ れてい ない.
一
方,
最 近 BH3 ドメイン の みを有す るアポ トー
シ ス誘 導性 因 子Bim が胸 腺 内の T細 胞の ア ポ トー
シ ス に 重 要 な役 割を果た してい る こ とが,
報告 さ れてい る1°).
通常はダ イニ ン軽 鎖 と会 合 してい る が,
アポ トー
シ ス 誘 導シグ ナル に よ り,
ミ トコ ン ド リア に移行 しア ポ トー
シス を惹 起す る.Bim
欠 損マ ウス で は,
自 己 反 応 性 T 細 胞の胸 腺 内で の除去が異常にな り,
自己 反 応性T
細 胞 が 末梢リンパ組織に も 出現 する ようにな る 11 〕.
したが っ て,T
細 胞レ セ プター
か らの シグナル が 何 ら か の 機 序 でBim
の移行を も た ら す と予想 さ れて い るが,
その機 序やMAP
キ ナー
ゼ との 関係な ど は不 明の ま まであ る.
さ らに,CD4
(+〕8
〔+) 細 胞の段 階で な ぜ感 受 性が高い か の1
つ の可 能 性 と して,
アポ トー
シス 抑制 遺伝 子であ るBcl−2
遺伝 子の発 現が低下 してい る こ と も考え ら れ る・
s}.
実 際,各
細 胞段階で のBc1−2
の 発現をみ る と,
CD4
〔+}8
〔+} 細 胞で急激に低下 し,
CD4c+
〕8
〔.
やCD4
〔’
〕8
〔+
〕 細 胞 で再び 上昇 するこ と が報 告さ れてい る.
しか し,
Bcl−
2の欠 損マ ウス で も,
Tリン パ球の分 化・
成 熟には異 常な く,
む しろ成 熟 細 胞の寿 命が短 くなっ てい る こ と が明ら か と なっ てい る12 ).
Bcl−
XL はBcl−
2との相 同 遺 伝 子と して同定さ れ,
その発 現は胸腺 細 胞ではBcl−
2と逆 相 関 し て い る が , Bcl−
XL の欠 損マ ウ ス で もCD4
(+
}8
(+
) 細 胞の寿 命が短 くなる こと はあっ て もアポ トー
シ ス の感 受 性を決め て お らず , CD4 〔+
〕8〔+
} 細 胞が他の 細 胞と どこが異なる のか今 後の解 析が待た れる.
2.B
細 胞に おける アポ トー
シスB 細 胞は骨 髄 内で つ くられ て くるが
,
この とき も 未熟B
細胞と呼ば れ る 時期, す な わ ちμ鎖(
lgM )
レ セプター
を発現する が,
δ鎖 (IgD )レセプター
を発 現 してい ない 時 期に ア ポ トー
シス に高い 感 受性 を 示 す(
図1).
ア ポ トー
シス はB細 胞 レセプター
(
BCR)
を介した シ グ ナル によるこ と は,
た とえば抗IgM
抗 体で 架 橋 させ る と ア ポ トー
シス が誘 導さ れる こ と か らもわ か るω.
し か し,B
細 胞の 認 識 す る抗原は可溶 性の もの か ら 膜結合 型 まで多
岐に 亘っ てお り(
一
方,
T
細 胞 はすべ て 膜 結合型抗原 を 認 識 して い るとい え る)
,
抗原の 性質な ど に よっ て,
クロー
ンの除 去 か ら 不 活 化(
ア ネル ギー
)
に至 る まで種々 の パ ター
ンが 存 在す る もの と 思 わ れ,
この こと が末 梢に 自 己 反 応 性B
細 胞が存 在 する大き な 理由になっ てい る.
アポ ト
ー
シス の誘導に 至 る 過 程 はT細 胞 と 同 じ よう
に ミ トコ ン ド リア を介 すると予想 さ れるが,
その機 3 序は 依然不 明であ る.
最近,Bim
欠損マ ウス でBCR
を介 するア ポ トー
シ ス も著 明に減 少 するこ とが示さ れ た14 ).TCR
を介す るアポ トー
シス 誘導シ グ ナル と 同 様にBCR
を介 するシ グ ナル でBim
の 細 胞 骨 格一
か らミ ト コ ン ド リアへ の移行が 起 こるの では と 予 想 さ れ る.
な お,
成熟し たB
細 胞が 生存し続け るには,
抗 原 刺激の ほ かに主 と してT
細 胞 か ら供給さ れる共 刺 激 が 必要であ り,
例えば,B
細胞が抗 体産 生 す る 際,
B
細 胞 上に発現さ れてい るCD40
分子と,
抗原で活性化さ れ るこ とでT
細 胞 表 面に発 現 するCD40
リ ガン ドの結 合が必 要である15).
さ らに,
B 細 胞の場 合,
一
度 抗 体 産生細 胞に なっ た ものが,
もう一
度その レ パー
トリー
を修正するこ と が 可能で あ る,
リン パ 節 内の胚 中心ではB 細胞は 抗 原の刺 激な しで増 殖 しうるが,
こ の と きV
領域の 遺伝 子に突 然 変異が み られ, そ の確 率は非 常に高 く,
1
回の分 裂で1
個の核 酸の変 化が観 察さ れるほ どで,
結 果とし て多 様 性が増 加 する.
こ の よ うな細 胞 分 裂 は胚 中心内の 暗調域 と呼ば れる部 分で おこ り,
次 第 にB 細胞は明調 域 と呼ばれ る部 位へ 移 動し てい くが,
こ のと き濾 胞 状 樹 状 細 胞 (FDC )の網 目の 中を通 過 し て い く.
FDC は抗原抗 体 複 合 物を保 持 し て お り,
こ の保 持 抗 原 と反応 しうる高 親 和 性の B 細 胞は,
FDC か らの シ グナル でBcl−
2の発 現が上昇し,
生存へ と向かい , 反 応性を失っ たB 細 胞は ア ポ ト 」 シス に より除か れ てい ぐ〕.
こ の ように し て, 抗原 へ の結 合 性が より高まっ た (affinity maturation ) 抗 体 産生 が 可 能と なる.
免疫調 節機 構
と
し て のアポ
トー
シス免 疫の行 き過 ぎを 調節す る 機構として, サ プレッ サ
ー
T 細胞,
イ ディ オタイプー
抗イ ディ オ タ イプ ネッ トワー
ク な ど従 来 か ら 数多
くの機構の存在 が 明 ら か にさ れて お り,
最 近で はCD4 〔+
)CD25c+
}の 調節性T細 胞 の 存 在が 注 目 さ れ てい る.
一
方,
ア ポ トー
シス の研 究か らFas−
FasL(
リガン ド)
を中心とし た 機構が,
免 疫の 進 行を行 き過 ぎな い よう調 節 してい るの で は とい うこと が 示唆さ れて い る16 〕.
活性化 し たT
細 胞はFas
抗原の 発 現 が み ら れ る が,
と り わ けIL−2
の存
在下 な どでin
vitroで長 く刺 激 を続け ると発 現 が 顕著に高く な るこ とが 知 ら れて い る.一
方,
活 性 化 し たヘ ル パーT
細 胞 や キラーT
細 胞はFasL
を発 現 するの で,
Fas−FasL
を介した アポ トー
シス に よ りFas
抗 原 を 高 発現し た 細 胞 は 除 か れてい くこ と になる.
桐 生 短 期 大 学 紀 要.
第17号.
2006Kiryu Junior College
NII-Electronic Library Service Kiryu Junior College
同様の こ とはB 細胞で も観 察さ れ , LPS やCD40 抗 原を介 し て持 続 的に刺 激を受 けたB 細 胞は数日 間培 養 する と急 速にFas抗原の 発現が増加し, FasL を 発 現 し てい るT 細胞に より除かれてい く
.
こ の際, 興味 あ る こ とは, 抗 lgM 抗 体な どで抗原 レ セプ ター
を架 橋 する と,
Fas−
FasL に よ る細 胞死 を抑 制しうる ことで 5} , この実 験 事 実は, 抗原 が存 在 する限 り活 性 化 したB
細 胞はT 細胞の助 けを借 りて抗 体 産生 を続 ける ことがで き,
抗原 が消 失してい くと アポ トー
シス 機 構が 働 き 抗体産 生 が 急 速 に終 息に向かう
こ とを示 唆して い る.
この ような事実 を
裏
付 け るもの と して,Fas
あ るい はFasL の 欠損したモ デル マ ウス が知ら れて お り,
こ れ らの マ ウス で は多
クロー
ン性の リンパ球増 加 が 見 ら れ,
リン パ節の腫脹 が 全身に観 察さ れ る.
異
物化細 胞排除機 構
と し て のア ポ トー
シス生体 内で は ウイル ス感 染によ り
,
あ るい は 癌化す る こ とで絶え ず異 物化し た 細胞が存 在す る危険 性 に さ ら さ れてい る.
この ような細 胞を排 除する際にも,
標 的 細 胞自身
が 保有す るアポ トー
シス 機 構を巧み に利用 し て 自殺に追い込 む機 構が存 在してい る.
その一
つ とし てキラーT
細 胞 やNK
細 胞の放 出 す る グランザ イム な ど に よ るア ポ トー
シス の誘 導が あげら れ る17 ).
キラーT
細 胞やNK
細 胞 は 標 的 細 胞 を認識 すると接着し,
細 胞 内の分 泌 顆 粒中に存 在 してい たパー
ホ リン を局 所に 放 出 する.Ca2+
の存
在下 でパー
ホ リ ン は ポ リマー
を 形成 し標 的細 胞 膜上に5 〜20nm
の小 さ な孔を あける が,
こ れ だけで は細 胞 死に至るこ とが少な く,
さ ら に分泌穎粒中に共 存 してい るセ リン プロ テ アー
ゼ で ある グ ラ ンザイム (Gra
> などの導入が 必 要であ り, これ がアポ トー
シ ス を誘 導し得る こ と が明ら かに さ れつ つ ある.Gra
はマ ウ ス で8
種 類 (A〜
H ),
ヒ ト で3 種 類同定さ れ てい る が, GraA は1・
リプシン型セ リン エ ス テ ラー
ゼで,GraB
の方はア スパ ラギン酸を特 異 的に認 識しうる.
この うちGraB は ア ポ トー
シ ス誘 導 に もっ と も重要で は ない か と予 想さ れてお り,
その 機 序とし てcaspase3 を切 断し, 活 性 化 するこ とが予想 さ れてい る.
も う1つ の細 胞接 着を介 する系と してFas−
FasL があ る.
も し標 的細 胞がFas 抗原を発 現してい れ ば,
活性 化したヘ ルパー
T 細胞 あるい は キラー
T 細胞上に発 現 するFasL を介し て細胞死が誘 導さ れ る こ とに な る.
さらに,
可溶 性 因 子で アポ トー
シ ス をもたら しうる もの とし て はTNF α , TNF βがあ げら れ る19}.
TNF レ セ プター
(TNFR )はFas と相同性があ り, TNF と 桐 生 短 期 大 学紀 要,
第17号,
2006
4 FasL で相 同 性がある こ と は たい へ ん興 味 深い.
TNFR には2種 類 あ り, 1つ がp55のTNFR 1型で も う一
つ がp75
の TNFR2 型で ある.
この うちTNFR 1が ア ポ トー
シ ス の誘 導を仲 介しうる もの と考 えら れてい る.
最近,
TRAIL
(TNF −
related apoptosisinducing
ligand
)
も注目 されつ つ ある
.
活 性 化 T 細 胞に発 現 して い るTRAIL
が, TRAIL レ セ プ ター
に結 合し , この レ セ プ ター
を持つ 細 胞に アポ トー
シス を誘 導 する19).
この 誘 導は特に がん細 胞に対して行わ れてい る ようである.
お わ り に 免 疫系で は ア ポ トー
シス の 誘導と回 避機 構が巧み にバ ラン スが とら れ てい るこ とを 述べ て きた.
この 際アポ トー
シス機 構がう
ま く働か ない と 自 己 免疫疾 患が 発 症 し易 く な ると予 想 さ れ る.
そ れは胸 腺や 骨 髄で の 自 己 反応性 クロー
ンの除 去機 能が わ ず か に 低 下 す るこ とで も起こ りうる し,
ま た,
末梢で 活性化 し たT
細胞やB
細 胞 がFasL
を介して排除 さ れ る機 能が 低下 して も 起こ り うる.
さ らに興 味あ るこ と に,
ウ イル ス 感 染の際多
くの アポ トー
シス 阻 止 因子が 産 生 さ れ る.
自らの増 殖 場 所で あ る感 染 細 胞が何とかア ポ トー
シス か ら免 れ る よう
に働い てい る もの と予 想 さ れ る.
多くの自己免 疫 疾患発症の基底に ウ イルス 感 染の存
在が 予 想 さ れてい る こ と も 大変 興味 深い 点 とい え る.
一
方,
アポ トー
シス機 構が 過剰に働 く と,
例 えば,
ウイルス 抗 原を発 現 してい る肝 細 胞が急速 に破 壊 さ れる劇 症 肝 炎な ど が観 察さ れる.
こ の ように アポ トー
シス 機 構の解 明は各 種 免 疫 疾 患の実 態を明ら かにすると ともに,
将 来の治 療 手 段 の 開発に大きく寄 与 する もの と期 待さ れる.
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5
Kiryu Junior College
NII-Electronic Library Service KiryuJunior College
Apoptosis
in Immunology:An
OverviewTbkushi
Tletdakuma
Abstract
Apoptosisisaphysiologicalcell deathand playsimportantroles inthevarious fieldsof immunology, including
(1)
inthefOrmationof T cell and B cell repertoires,
(2)
inthe regulation of hyper-activatedT or B cells byFas-FasL system, and(3)
in
the effector
phases
of killerT cells or NK cells to eliminate the tumor cells or virus-infectecl cells. The distuTbanceofapoptosis mechanismwill
induce
variousimmunological
disorders
such asAIDS
and autoimmunedisease.
Keywords: Apoptosis,Immune system, Repertoire