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JAIST Repository: 「第2回全国イノベーション調査」による企業のイノベーション活動に関する考察

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Academic year: 2021

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https://dspace.jaist.ac.jp/ Title 「第2回全国イノベーション調査」による企業のイノベ ーション活動に関する考察 Author(s) 西川, 浩平 Citation 年次学術大会講演要旨集, 25: 633-636 Issue Date 2010-10-09

Type Conference Paper Text version publisher

URL http://hdl.handle.net/10119/9375

Rights

本著作物は研究・技術計画学会の許可のもとに掲載す るものです。This material is posted here with permission of the Japan Society for Science Policy and Research Management.

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2E02

「第2回全国イノベーション調査」による企業の

イノベーション活動に関する考察

西川浩平(科学技術政策研究所) 1. はじめに 欧州を中心とする世界の主要国が少子高齢化等に伴う社会・経済の構造変化に直面するなかで、新産 業の創出、産業競争力の強化、雇用の促進などを通じた経済成長を果たすため、イノベーション政策に 対する関心が高まっている。科学技術政策から科学技術イノベーション政策への転換が世界的な潮流と なるなか、我が国においても国際競争力を維持するためにイノベーションの創出が重要な政策課題の一 つとして位置づけられている。 近年、中国・インドの著しい経済成長や企業活動のグローバル化の進展などを受け、我が国において も「第3期科学技術基本計画(平成 18 年3月閣議決定)」、「新成長戦略(基本方針)~輝きのある日本 へ~」(平成 21 年6月閣議決定)等でイノベーションの創出が重要な政策課題として位置づけられてい る。ただし、科学技術政策から科学技術イノベーション政策への転換を目指す際には、企業のイノベー ション活動に関する基礎的な統計資料の存在は不可欠である。このような状況に対して文部科学省科学 技術政策研究所では、2009 年に企業のイノベーション活動の実態やその生起に影響を及ぼす要因を調査 するため、「第2回全国イノベーション調査」を実施した 本報告では、「第2回全国イノベーション調査」の調査結果を用いて、企業のイノベーション活動の 現状を明らかにすることを目的とする。 2. 「第2回全国イノベーション調査」の詳細 「第2回全国イノベーション調査」の対象母集団は、イノベーション活動の測定・分析を行うための 標準的なガイドラインであるオスロ・マニュアルに従い、従業者数 10 名以上で農林水産業、鉱工業、 建設業、一部サービス業に属する企業である。総務省統計局が実施した「平成 18 年事業所・企業統計 調査」に基づいて該当する企業群を抽出すると、対象となる企業は 331,037 社となった。ただし、本調 査は標本調査として実施することが条件であったことから、企業規模および産業別の層を作成し、各層 の正確性を考慮した標本抽出率を算定した上で調査対象標本を選定した。標本抽出の結果、調査対象と なった企業数は 15,871 社となった。なお層によっては、母集団に属する企業数からの標本抽出率が1、 すなわち悉皆調査となっているものもある。結果として全体の標本抽出率は 4.8%となった また、同調査は平成 21 年7月から9月にかけて郵送法による質問票調査として実施した。なお、回 収方法については回答済みの調査票の郵送のほか、併せて調査のためのウェブサイトを設置し、インタ ーネット経由での回答も可能とした。調査の対象となる期間は、2006 年4月1日から 2008 年3月 31 日 までの3年間である。また、売上高、売上原価、営業利益等の財務関係事項については 2006-2008 年度 の各会計年度となっている。 同調査で質問票を送付した企業数は、上述の通り 15,871 社である。そのうち 5,030 社より調査票が 回収され、全体の回収率は 31.7%となった。ただし、調査票を送付した企業のうち 243 社は宛名先不明 のため調査票を送達できず、40 社からは合併・買収、解散等のため回答できない旨の連絡があった。ま た回収された調査票の中には合併・買収、解散等の事由で回答できない旨を記すものも含まれており、 その数は 451 社となった。この点を考慮した修正送付数および修正した回収企業数は、それぞれ 15,137 社、4,579 社となり、回収率は 30.3%となった。 なお、同調査で用いたイノベーションの定義は次の通りである。企業のイノベーション活動は、「革 新的な製品・サービスまたは業務の改善を目的としたプロセスの開発に必要とされる設計、研究開発、

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プロダクト・イノベーション 新製品あるいは新サービスの市場への投入として定義される。新製品あるいは新サービスには、 機能・性能・設計・原材料・構成要素・用途を新しくしたものだけではなく、既存の技術を組み合 わせたものや既存製品あるいは既存サービスを技術的に高度化したものも含まれる。ただし、製品 あるいはサービスの機能面や使用目的が既存のものと変わらない単なるデザインのみの変更、他社 製品・サービスの単なる販売・提供は含まれない。 プロセス・イノベーション 新プロセスの導入または既存プロセスの改良として定義される。プロセス・イノベーションには、 製品・サービスの製造・生産方法あるいは物流・配送方法の新規導入や改良だけではなく、製造・ 生産あるいは物流・配送をサポートする保守システムやコンピュータ処理などの新規導入や改良も 含まれる。 3. イノベーション実現の状況 本調査に回答した企業のうち 48.1%が、プロダクト・イノベーションもしくはプロセス・イノベーシ ョンのいずれかを実現している。イノベーションの実現割合をプロダクト/プロセス別にみると、31.4% の企業がプロダクト・イノベーションを実現する一方、37.7%の企業がプロセス・イノベーションを実 現している(図表1)。また、企業規模別にみると、プロダクト・プロセスともに規模が大きくなるに つれ、イノベーションを実現した企業の割合が高くなっている。 図表1 イノベーション実現の状況 8.2 9.4 11.9 10.3 10.7 16.3 29.3 21.1 14.2 18.4 17.0 16.6 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 小規模 中規模 大規模 全規模 プロダクト・イノベーションのみ実現 プロダクト・イノベーションおよびプロセス・イノベーションを実現 プロセス・イノベーションのみ実現 33.1 44.0 58.2 48.1 (%) プロダクト・イノベーション(31.4%) プロセス・イノベーション(37.7%) プロダクト・イノベーションを実現した企業に対して、その目的を確認すると、83.5%が「営業利益 の拡大」、66.5%が「市場シェアの拡大」を目的としたと回答している。これら目的の成果を示す図表2 の左側をみると、営業利益、国内市場シェアの拡大を目指した企業の2割程度が5%以上の拡大を達成 している。次にプロセス・イノベーションについて、その目的と成果を示したのが右図である。電力・ 燃料消費量、原材料使用量といった経営資源の削減を目的とした企業は、それぞれ4~6割で、それら 企業のうち3割程度が5%以上の削減を達成している。

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図2 イノベーションの成果 【プロダクト・イノベーション】 【プロセス・イノベーション】 8.3 5.1 5.5 20.6 17.6 17.9 36.1 38.8 38.3 17.4 23.2 24.1 13.8 12.2 11.5 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 人件費の削減 電力・燃料 消費量の削減 原材料使用量 の削減 25%以上の削減 10%以上25%未満の削減 5%以上10%未満の削減 1%以上5%未満の削減 0%以上1%未満の削減 むしろ増加した (%) (%) 5.7 4.9 10.7 9.2 29.9 28.3 37.5 47.3 12.4 7.4 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 営業利益の拡大 国内市場シェア の拡大 25%以上の拡大 10%以上25%未満の拡大 5%以上10%未満の拡大 1%以上5%未満の拡大 0%以上1%未満の拡大 むしろ減少した (%) 4. イノベーションを促す諸要因 将来の人口減少の進展を受け、国内では内需主導型産業を中心に規模の縮小を余儀なくされる市場が 多数出てくると予想される。同調査においては、昨今の金融危機の影響もあり、市場規模が縮小したと 回答した企業が 49.7%を占めていた。対して、市場規模が拡大したと回答した企業は 14.7%に止まって いる。図表3は市場規模の変化とイノベーション実現の関係を集計した結果である。市場規模の拡大に 直面した企業の 64.4%がイノベーションを実現したと回答しているのに対し、縮小に直面した企業でイ ノベーションを実現したのは 52.1%に止まっている。産業別でみても、大多数の産業において、市場規 模の縮小よりも拡大しているときにイノベーションを実現した企業の割合が高くなっている。 図表3 産業別市場規模の変化とイノベーション実現の関係 64.4 66.7 0.0 40.0 77.0 80.5 82.1 52.6 61.8 43.3 56.8 44.1 23.5 60.9 59.1 52.1 36.4 15.0 34.8 64.0 73.2 69.5 20.0 48.6 35.6 42.3 37.8 40.0 48.6 35.6 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 市場規模が拡大した 市場規模が縮小した 農 林 水 産 業 不 動 産 業、 物 品 賃 貸 業 金 融 業、 保 険 業 卸 売 業、 小 売 業 運 輸 業、 郵 便 業 情 報 通 信 業 建 設 業 水 道 業 電 気 ・ ガ ス ・ 熱 供 給 ・ 生 活 関 連 型 製 造 業 加 工 組 立 型 製 造 業 基 礎 素 材 型 製 造 業 砂 利 採 取 業 鉱 業、 採 石 業、 飲 食 サー ビ ス 業 宿 泊 業、 そ の 他 の サー ビ ス 業 全 産 業 イ ノ ベー シ ョ ン を 実 現 し た 企 業 の 割 合( %) しかし、規模が縮小している市場においては、企業間の合併を通じたある程度の再編が不可避となる 産業も多く出てくることが予想される一方で、わが国においては企業合併がなかなか進まない産業も見

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る企業のうち 13.4%が大規模な合併があったと回答しているのに対して、規模が拡大している市場で大 規模な合併があったと回答した企業は 4.6%となっている。次に、市場規模の縮小に直面した企業を対象 に、大規模な合併とイノベーション実現の関係について集計を行った(図表4)。「全産業」では、市場 内で大規模な合併があった企業のうち 54.9%がイノベーションを実現したと回答している。それに対し て、大規模な合併がなかった市場でイノベーションを実現した企業は 48.0%となっている。産業別にみ ると、製造業と第3次産業に属するほぼ全ての産業で、大規模な合併が行われなかった市場よりも行わ れた市場でイノベーションが実現している。 上述の通り、今後、我が国においては、規模の縮小を余儀なくされる市場が内需主導型産業を中心に 多数出てくると予想される。そのため、図表4に示された市場規模の縮小時における大規模合併とイノ ベーション実現の関係は、内需主導型産業におけるイノベーションを刺激していく上での重要な示唆を 含んでいるといえる。 図表4 市場規模縮小時における産業別合併とイノベーションの関係 54.9 33.3 0.0 45.5 66.3 78.0 70.8 25.0 68.6 44.7 48.4 43.8 63.6 43.5 39.1 48.0 36.8 17.6 25.7 59.4 69.8 64.9 17.6 39.5 27.8 37.3 23.5 26.5 51.0 31.1 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 国内市場が縮小しかつ大規模な合併があった 国内市場が縮小しかつ大規模な合併はなかった 農 林 水 産 業 不 動 産 業、 物 品 賃 貸 業 金 融 業、 保 険 業 卸 売 業、 小 売 業 運 輸 業、 郵 便 業 情 報 通 信 業 建 設 業 水 道 業 電 気 ・ ガ ス ・ 熱 供 給 ・ 生 活 関 連 型 製 造 業 加 工 組 立 型 製 造 業 基 礎 素 材 型 製 造 業 砂 利 採 取 業 鉱 業、 採 石 業、 飲 食 サー ビ ス 業 宿 泊 業、 そ の 他 の サー ビ ス 業 全 産 業 イ ノ ベー シ ョ ン を 実 現 し た 企 業 の 割 合( %) 5. おわりに 本報告において、次の3点が明らかとなった。第1に、本調査に回答した企業の半数弱がプロダク ト・イノベーションもしくはプロセス・イノベーションのいずれかを実現しており、その割合は企業規 模とともに上昇している。また、その成果に着目すると、プロダクト・イノベーションについては、営 業利益の拡大を目指した企業の2割程度が5%以上の拡大を達成している。他方、プロセス・イノベー ションについても、人件費の削減を目指した企業の3割程度が5%以上の削減を達成している。第2に、 昨今の金融危機の影響もあり、同調査に回答した企業の半数程度が市場規模の縮小に直面したと回答し ているのに対し、規模の拡大に直面した企業は 14.7%に止まっている。そして、市場規模の縮小よりも 拡大しているときにイノベーションを実現した企業の割合が高くなっている。第3に、我が国において は、規模の縮小を余儀なくされる市場が内需主導型産業を中心に多数出てくると予想されるが、市場が 縮小している状況にあっても、大規模な合併が行われなかった市場よりも行われた市場でイノベーショ ンが実現していることが明らかとなった。

参照

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