Title
[総説]産官学連携と大学の役割
Author(s)
照屋, 輝一
Citation
南方資源利用技術研究会誌 = Journal of the society tropical
resources technologists, 21(1): 1-7
Issue Date
2005-10-01
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/14208
産官学連携 と大学の役割
照
屋 輝
一
事琉球大学地域共 同研究セ ンター
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TERUYACenteT・forCooperativeResearch,UniversityoftheRyuhyus
Keywords:産官学連携 ,TLO,TechnologyLicensingOrganization,知的財産権
1.はじめに
琉球大学は平成16年 4月 1日をもって国立大学法 人 となった。法人化 の背景には、大学の有す る有形、 無形の研究 リソース (人材、知的財産、技術 ・ノウ ハウ、情報、施設 ・設備な ど) を我が国経済の再生、 活性化 に生か さねば な らな い時代 の要請があ り、従 来 の 「教育」 と 「研究」 に加 え 「社会責献」 を第三 の柱 とす るところを大 きな特徴 とし、産官学連携 を 強力に推進す る ことにな って いる。 以下に地域共同研究セ ンター、 「沖縄TLO(仮称)」 構想、知的財産本部 を中心 に産官学連携 と大学 の役 割 につ いて紹介す る。2.
琉球大学地域共同研究セ ンター
(1)共 同研究セ ンターの概要 琉球大学地域共 同研究セ ンター (以下 「共 同研究 セ ンター」 と略す。) は、 民間等外部 の機 関 との共 同研究推進等 によ り、琉球大学 にお ける教育研究 の 進展 を図る とともに、地域社会 にお ける技術 開発及 *沖縄県西原町千原1番地 び技術教育 の振興 に資す る ことを目的 に平成7年4 月に設置 された学 内共 同教育研究施設である。 図 1に示す よ うに、 床面積1
,
1
3
0
m2の3
階建 で、 実験室5
室、特殊機器室4
室、 ク リンルーム1
室、 情報処理室1室、研修室1室、セ ンター長等教官室 3室、事務室 1室の16室か ら構成 されている。 実験室 の一つで ある大型実験室 には県 内唯一 の大 型 自動制御 二元載荷試験装置が設置 され、特殊機器 室3
室 にはX
線光電子分光装置(
ⅩPS
)
、走査プロー ブ顕微 鏡(
AFM)
、 顕微FT-I
R
分光 光 度 計置、 X線 回折装置等が設置 されて いる。研修室は客員教 授 の講義や講演 をは じめ、各種 の研修、セ ミナー、 会議な どに活用 されている。 (2) 共同研究セ ンターの役割 共 同研 究セ ンターは、大学 と地域産業界 との橋渡 し役であ り、産官学連携 の拠点た るべ き ことを役割 として いる。法人化 に伴 う大学 の第三 の柱 となった 「社会貢献」 のための産 官学連携 の推進役 として位 置づけ られ るもので ある。 具体的 には、産業界へ の大学 のシーズの発信、産自動制御二元載荷試験装置 研 修 室 南方資源利用技術研究会誌 床面穣一1,130m'、 3階建て、16圭 クリーンルーム、 5tクレーン付き大型実験室等 電気室 特殊機器室XPSAFM 教官室専 任
W
C
クリーン・ルーム クラス 1.000 分光分析室 顕微FT-IR UV-VIS分光分析装置 ミクロトーム、等 研修室 50人程度の講演会 ・会 謙等 に利用 大型実験室 自動制御二元 載荷試験装置 図 1 琉球大学地域共 同研究セ ンター 業界か らのニー ズ の収集、 シーズ とニーズ をマ ッチ ング させた共 同 ・委託研究 の斡旋 ・仲介や提案公募 型産官学共 同研究 の フォー メイ シ ョンとブ ラッシュ ア ップや 申請支援な どがあ り、セ ンター専任教員 と 文部科学省派遣 の産官学連携 コーディネーターな ど を中心 にそ の任 にあたって いる。 (3) 共 同研究セ ンターの機能強化の必要性 共 同研究セ ンターの活動 によ り得 られた産業界 の ニーズ と教員 の保有す る研究成果や技術 ・ノウハ ウ な どとを結合 させ て技術移転や共 同 ・受託研究 の実 現 を迅速に展開するためには 「学内コーデ ィネーター」 の設置 による学 内連携体制 を構築す る必要がある。 即ち、健康 ・バイオ、 医療 ・福祉、環境、化学 ・. 材料、環境 ・エネルギ ー、土木 ・建築、 エ レク トロ ニ クス・I
T
、 海洋 ・水産 、 農 ・林 産、 経済 、 文 化 な どの専 門分野 を学 内全体 に横 断的 に設定 し、共 同 研究セ ンターが得た企業ニーズへ対応可能な教員 を 迅速 に斡旋す る学 内コーデ ィネー ター をセ ンター長 が推薦 し、学長が任命す る制度 であ り、その設置 を 進 めて いる ところである。 そ の設置 によ り、共 同研究セ ンターが発信す る講 演会、 シンポ ジウム、 フォー ラムな どの催事 の企画 推進や提案公募型産官学共 同研究事業 のフォー メイ シ ョンな どへ の協 力体制 も得 られ、産官学連携 のよ り一層の活性化が期待できる。3.
「
沖縄
TLO
(
仮称
)
」設立構想 について
我が国の経済成長 は頂点 に達 し、欧米 の科学技術 のキ ャッチ ア ップか らフロン トランナーの時代へ と 推移 し、産業経済発展 の鍵 として大学等 にお ける知 的資源 の活用が クローズ ア ップ されてきた。即ち、 大学等 にお ける研究成果 を発掘 し、実用化できる発 明 を特許 にして、産業界 に移転 して有効活用 を図 り、新たな市場分野の創出及び産業技術の向上に資する とともに、その対価 (実施料収入等) を次の新たな 研究成果 を生み出すための研究資金 として大学や研 究者に還元 しようとする機関である。 換言すれば、図2に示すような、<大学の知的創 造サイクル :研究成果の出願 ・権利化 ・保護-〉産業 界への技術移転による活用⇒実施料等の大学 ・研究 者への還元⇒新たな技術の創出>を強力に円滑の回 転せ しめていくものである。 このような観点か ら、大学等か ら産業界への技術 移転 を円滑 に行 う 「技 術 移転 機 関 (Technology LicensingOrganization)」 (以下 「TLO」 という。) の整備を促進するため、平成10年5月に 「大学等 に おける技術 に関する研究成果の民間事業者への移転 の促進に関す る法律」 (以下 「大学等技術移転促進 法」 という。)が制定 され同年8月施行 され、平成 17年4月現在37のTLOが設立、承認 され、活動 し ている。 琉球大学でも平成
1
2
年9
月、 「琉球大学技術移転 機関 (TLO)設置検討委員会」 が設置 され検討が 進められ、琉球大学単独でな く、県内の他の大学 ・ 研究機関 を含 めた"オール沖縄型TLO"としての設 置が望 まれるとして、平成14年11月、沖縄県や沖縄 総合事務局な ど外部委員を加えた委員会 に改編 され 鋭意検討が行われ、平成15年11月最終報告が行われ た。 その概要は下記のとお りである。 <設立趣 旨> 大学 には貴重な研究成果が数多 く創出され、その 社会責献 と大学の活性化のために知的財産権化を円 滑に活発 に実現する必要性は大きい。特 に、沖縄の 産業技術資源は低位 に有 り、大学等の研究成果 を産 業化 してその高度化 を図ることが必要 とされている。 <特 徴> 沖縄で展開される研究か らは、亜熱帯沖縄の独特 の資源環境 を強調できる成果の創出を期待す ること ができ、2
1
世紀の産業発展のための科学技術創生の 場 として、県内はもとよ り、県外、海外をも視野に いれた特徴的TLO活動を展開す る。 <事業内容> 琉球大学以外 の大学や研究機関 も包含 した"オー ル沖縄"型 とし、 "技術移転事業"のみではな く、沖 図2 大学の知的創造サイクル縄 の産業現状を踏 まえて、地域産業の発展 に多様 に 寄与す るために強 力な"リエゾ ン事業"や "コンサル テ ィング事業"な どを行 う。 <設立 ・出資 ・組織体制> 琉球大学教員を主体 に出資 して、株式会社 として 設立する。 技術移転、 リエゾ ン、 コンサルテ ィング事業 を展 開できる組織体制 を構築す る。 <運営財源の確保及び健全経営方策> 事業の健全経営 を目指 して会費収入、国か らの補 助金、県等か らの助成金及び事業収入 (ライセ ンス 料/共同研究 ・受託研究 ・技術指導等仲介 ・斡旋料 /提案公募型産学官共同研究等の管理費/調査研究 受託収入等) による財源確保 を図る。 (本構想全文は琉球大学ホームペ- ジ :
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に掲載) 南方資源利用技術研究会誌4.
琉球大学知的財産本部 と知的財産権戦
略について
(1) 知的財産本部 法人化 に伴 い、琉球大学教官等 の創出す る知的財 産権 を原則大学帰属 とす る方針か ら、 「知的財産本 部」が平成1
6
年4
月1
日設置された。図3
に示すよ うに、知的財産審査部門、知的財産推進部門、産学 官連携推進部門の三部門か らな り、知的財産の創出、 発掘、権利化、管理、活用の促進等 を所管す ること となってお り、学内的には共同研究セ ンター との、 学外的 には 「沖縄TLO
(仮称)」 との連携 を重視 した もの となっている。 役割分担 として、基本的 に知的財産本部は、知財 (特許等) の出願維持 と保護 を、共 同研究セ ンター が共 同 ・受託研究な どの導入 による知財の創出を促 進 し、TLO
は特許 の ライセ ンス (実施許諾) を担 兼務 ・本部のf理・王宮 ・本部の事暮計ii ・本部の人事 ・その他本bIこ耶すること琉
球
大
学
知
的
財
産
本
部
(7t皮) *h 地AE共同研究センター長 ■CE■A 知的射産⊃-ディネークー 非★P)事務補佐A 知 的 財 産 審 査 部 ∩ ・知 的 財 産 の 内 容 評 価 ・特 許 * の 出 井 ・知 的 財 産 の 契 約 書 発 明 雷 董 壬 ■ 会 産 学 官 連 携 推 進 & E シ ー ズ と ニ ー ズ の 総 合 胡 亜 知 的 財 産 の 事 兼 化 推 進 利 益 相 反 、 暮 務 相 反 へ の 対 応 利 益 相 反 ・ 土 務 相 反 秩 肘 幸 ■ 金 兼務 ・知的財産の創出.取得・管理・活用の基本方針 ・t務発明事に対する報tL、重賞・表杉 ・研究成果の技術移転等による対価の配分 ・発明に係る特許を受ける権利の沖Jtの基本方針 ・*兼発明事規程書にngすること ・利益相反・t携相反にBBする基本方針 ・その他知的財産に関すること地
域
共
同
研
究
セ
ンタ
ー
研
究
推
進
体
(
学
部・
研
究科、研究センター、プロジェクト)
図3 琉球大学知的財産本部うことになる。 (2)知的財産権戦略 大学や研究機関における知的財産権 の創出を視野 に入れた研究開発の進め方や提案公募型事業でその 創出を戦略的に実現 していく具体的な研究開発プロ ジェク トを提案する調査研究 を通 じて、知的財産権 を深 く理解 しその戦略的な創出システムを確立する 目的で、特許庁が公募す る"大学 における知的財産 権研究プロジェク ト"に 「沖縄 における健康食品産 業振興のための知的財産権戦略の構築 に関する調査 研究」 として応募 した。全国
3
1
の国立大学の応募の 中か ら東大、京大、東北大など静々たる大型大学 と ともに採択された。 以下にその概要を紹介す る。 <事業内容> 既存の知的財産権 (開放特許な ど)の調査 (検索 等) を行い、沖縄地域の健康食品産業技術高度化の ために有効 と評価できる技術 の活用 を提案す る"既 存の知的財産権活用のための調査研究"と、健康食 晶の基盤 となる優良品種の育出研究 による 「育成者 権」、優良製品化 の技術や製品付加価値、市場力強 化 に繋がる 「特許権 ・実用新案権」、沖縄独特 の伝 統文化や亜熱帯の特徴的な自然環境を背景とするパ ッ ケージやデザイ ン等の 「意匠権」や 「商標権」な ど の知的財産権 を創出す るための研究展開の効果的な 進め方 を提示 し、かつ大学 を中軸に戦略的に強力な 知的財産権 を創出す るための具体的な研究開発プロ ジェク トを提案す る"健康食品産業高度化 に資する 知的財産権の戦略的創出のための調査研究"を行い、 「沖縄 ブラン ド」確立のための"沖縄知財戦略"を提 案 した。 <研究実施方法> 調査方針の検討、調査結果の評価等総合調整を行 う 「総合委員会」のもとに 「知的財産権活用委員会」 及び 「育成者権創出委員会」、 「特許 ・実用新案権創 出委員会」、 「意匠 ・商標権創出委員会」のを設置 し、 沖縄地域での知的財産権創出のための技術 ・ノウハ ウの導入のために県外か らの専門家招碑による各種 の知的財産権 に関 して深 く掘 り下げた学習 を行い、 同時にそれぞれの知的財産権 においての多様な蓄積 を有す る地域 を調査 し、その成果 を報告書や成果報 告シンポジウムを開催 し普及 につ とめ、琉球大学は もとよ り沖縄地域における知的財産権の創出及び活 用 に資するものとなるようっ とめた。二
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熱水抽 出(放じ)、有機溶媒抽 也(エ
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J-A,などつ、ニ酸化炎 素超臨界抽 出/常圧 .真空 . 直火加熱、水叢気加熱/ 日干し、陰干し、温鼻乾燥、 熱量乾燥 、凍結乾燥、マイ 図4 健康食品の開発過程<調査事業の実施体制> 琉球大学 (16名)、沖縄県立芸術大学 (1名)、沖 縄県
(
4
名)、県工業技術セ ンター等公設試験研究 機関 (8名)、知的所有権セ ンター (3名)、 (社) 発明協会沖縄県支部 (1名)、 (財)産業振興公社 (2名)沖縄県健康産業協議会及び参加企業 (7名) の計4
2
名の産官学連携 による体制で実施 した。 本調査研究では、各委員会 を数多 く開催 し、意見 を交換 し、情報を寄せあい、議論を重ねるとともに、 技術 ・ノウハウ導入のための講演会 ・セ ミナ ー ・シ ンポジウムの開催、先進調査の実施な どを活発 に展 開 した。特 に、外部講師を招碑 しての講演会 ・セ ミ ナー ・シンポジウムでは、調査研究 メンバーのみで な く、学内の他の教員はもとよ り、産業界や産業団 南方資源利用技術研究会誌 体、県の産業行政の担 当部署並びに試験研究機関の 参加 も得て実施 した。即ち、調査研究のプロセスを 通 じて、大学はもとよ り地域 における知的財産権 に 関する意識の高揚、知見 ・ノウハウの普及につとめ、 同時に産官学連携の強い秤 を醸成 した ことが特筆さ れる。 調査研究の成果は、産官学共同研究 による知的財 産権創出を中軸 とする健康食品産業の高度化の指針 を1
3
9
頁 に亘る 「研究成果報告書」 としてまとめ ら れ、平成1
7
年3
月成果報告シンポジウムを開催 した。 同報告書 に示 した健康食品の開発過程 を図4
に、 開発 における産官学連携のあ りかたを図 5- 6に再 掲 した。 図5 健康食品関連特許権創出のための産官学連携図6 健康食品関連特許権創出のための産官学連携 による研究戦略 一沖縄県産素材の有効成分の特定、効能