社会系教
科教
育学会
『社会
系教科教育学研究』第13
号 2001
(pp.21-28)
社会的合意形成をめざす社会科授業
一
小単
元
「脳
死
・臓器
移植
法
と
人権
」を事例
に
−
A Social Studies Lesson for Building Social Consensus :
A Case
of
“Brain Death/Law of Organ Transplant and Human Rights
”
吉
村
功
太郎
(岐
阜
工
業
高
等
専
門
学
校
)
1。は
じめ
に
わ
が
国の
社会
科は
,社
会
認識
形成
と市
民的
資質
育成
を課
題
と
して
きた
。
しか
し,社
会
認識
や
市
民
的資
質の
内
実
とその
形成
・育
成
原理
に
つ
いて
,今
も
っ
て統
一
した
見解
が
出
され
て
い
るわ
け
では
な
い
。
本
小
論の
目的は
,様
々な社
会
科教
育
論の
比
較
・検
討の
中か
ら
,社
会
認識
及び
市
民的資
質の
内
実
と形
成
・育成原理に
ついて一定の考
え方
を提
示
し,
匚
人権
」
をテー
マ
に
した
授
業の
形
で具体
的に
示す
こ
とで
ある
。
多様
な社
会
科教
育
論
を
「 ̄
社
会認
識
を通
じて市
民
的
資
質
を育
成す
る
」
とい
う定
義に
即
して分
類
した
研
究が
ある1
)
。
ここでは
,社会
認識
形成
と市
民的
資
質
育成
との
関係
で社
会科
を大き
く二
つに
区分
さ
れ
,
一方
を市
民的資
質
育成
を切
り離
して知
的側
面
と
一
しての社
方
を社会
認
会
識
認識
形成
形
と関係
成
を課
付
題
け
とす
られ
る社
た
会
市
科
民
,も
的資
う
質
育
成
を担
う社
会科
とに分
け
られ
て
い
る
。
前
者の
社
会
科
では社
会
を認識
の
対象
と
して捉
え
て
お
り
,
どの
よ
うに社
会
を認識
させ
るの
か
が
課
題
となる
。常
識
的な
知
識
習得
に
よる社
会
認識
形
成
を
め
ざす
社会
科
や
,科
学
的な
知識
習得
に
よ
る社
会
認
識
形成
をめ
ざす
社
会
科
な
どが
あげ
られ
る
。社
会
諸
科
学に
基
づ
く社
会
科は
,社
会
に
関す
る
質の
高
い
知
識
を科
学
的に
習得
させ
,客観
的な社
会
認識
形
成
を
保
障
して
いる
点
で
評価
され
る
。
しか
しその
一
方
で
,
社
会
を認識の
対象
と
してのみ
捉
える
ことに
よ
り
,
社
会
制度
や
社会
問
題
に対す
る
判
断や
決
定
とい
う子
どもの
社
会
的
活動が
,社会
科
か
ら欠
落す
る
ことに
なる
とい
う批
判が
ある
。子
どもは
社
会
事象
を捉
え
る
会
こ
に
おいて
とは
可
どの
能
にな
よ
うに
っ
ても
判
断
,
し行
自
らその
動す
るか
一
員で
は
子
あ
る社
ども
ー
に
一任され
ることとなる。
それ
に対
し
,社会科は市民的資質の育成に主眼
をおくべ
きであ
り
,子どもに
よる社会的判断や決
定を可能にす
る資質育成にまで踏み
込もうとす
る
のが後者の
区分である
。例
えば
,26
年版指導要領
に代表され
る社会科
,意思決定の授
業やディベー
トの授業な
ど
,多くの授業実践例が
このタイ
プの
社会科であろう
。これ
らの授
業では
,多くの
場合
社会問題が扱われ
,子
どもに
問題分析や解決策へ
の判断
・決定等の具体的な活動を議論
を通
じて行
わせることで
,社会的判断と行動を可能にす
る資
質の育成
をめ
ざす構造
とな
っている
。
しか
し
,これ
らの授
業論に対
しても様々な問題
点がある
。 26
年版指導要領社会科は
,子
どもが
問
題
を自らの切実な問題と
してとらえ
,主体的な認
識と判断を保障
し
,自主的自立的な資質形成を可
能とする点で評価され
る
。
しか
し,子どもの認識
や判断は子どもの
主観的世界において行われるた
め
,社会的な
レベルの
ものとは
ならない。この型
の授
業は
,子
どもに内在する問題
を探求す
る過程
と
して編成
され
るため
,認識や判断は子
どもに
とっ
て内在的なもの
となるが
,その認識や判断は社会
的な広が
りを持たず
,子どもの狭い世界にとどま
るも
の
となって
しま
う。
意思決定の授業は
,社
会的論争
問題
を課題と
し,
認識に基づく判断や行動の構造である意思決定過
程を子
どもに具体的にた
どらせることで
,社会的
な観
点を取
り入れ
た合理的判断
を可能とする点て
評価できる
。しか
し,社会的な諸条件
を考慮に入
れ
てはいるか
,意思決定の最終的判断は各個
人に
任され
の
とはならない。また
てお
り
,判断結果は社会的な承認を得たも
,社会的条件
を考慮す
る場
21−
合の構造が不
明確であり
,社会的価値
を無批判的
に取
り入れ
て意思決定
を行
うとすれ
ば
,その判断
は個人の価値観に立脚
した
主体
的判断とは言えな
い
。この型の授
業は
,社会的論争問題に対
して構
造的に判断す
る意思決定過程と
して編成
され
るた
め
,社会認識や社会に
ついての
判断
を保障
してい
る
。だが
,個
人的判断を社会的判断に集約す
る過
程が不明確であるため
,子どもの認識や判断は
自
らの価値観との関連が不明確なもの
とな
り
,個
人
の
主観にとどまった
り
,逆に子
ども
自身か
ら遊離
した外在
的なものとなるおそれ
がある
。
ディベ
ー
トの授
業は
,社会
的論争問題を課題と
し
,立論や反論活動を組み入れ
た議論の構造
を社
会的議論と
して子
どもにたどらせ
,社会的判断の
形成
を意
図
している点で評価
できる
。
しか
し,デ
ィ
ベ
ニ
トの構造に基づく議論を行
うため
,論争問題
に対する判断は二項対立とな
り
,多様な判断の
可
能性
を閉
ざすおそれが
ある
。また,議論の
当事者
の意見調整による判断ではな
く
,議論の優
劣を基
準とする第
三者による決定
を正当化の根拠とする
判断は
,一種の社会的判断とは言い得ても,民主
的な過程を経た判断とは言
えない
。この型の授業
は
,社会的論争問題について,ディベー
ト構造に
基づ
く議論という社会的過程に
おいて判断と決定
を行っている
点で評価できる
。
しか
し,立論まで
の認識や判断の過程は不明確であ
り
,また,最終
決定が第三者の判断による非民主的なもの
となる
ところに問題がある。
以上のように
,社会的問題について社会的判断
や決定を可能
とす
る資質の育成を目指す社会科に
も
,様
々な問題点が
ある。では
,民主主義社会
を
担
う主権者と
しての市
民的資質育成
を課題とする
社会科は
,どうあるべきなの
だろうか
。
2
。育
成
をめ
ざす市
民的
資質
と育成
原理
民主
主義社
会
を担
う市
民
と
しての
資
質
とは
,社
会の
構
成員
で
あ
り社
会の
形成
者
と
しての
資
質に
他
な
らな
い
。社
会
構
成
員
と
して
,社
会の
あ
り方
を
主
体
的か
っ自立
的に
反省
し,
自
己と他
者が
共
に存
在
す
る社
会
的過
程
に
お
いて
,
よ
り良き社
会
を形成
す
る
能
力と態
度が
資
質
と
して重
要
とな
る
。
自
ら構
成
員で
あ
る社
会の
あ
り方
を主体
的
・自立
的に
反省
す
ることは
,他者
という存在
を前に
して,自らの判
断や価値観を主体的自立的に反省することが不可
欠である
。さらには,各
目の判断について相互批
判と相互調整を間主観的な議論という方法
を用
い
て行い
,議論の過程か
ら相互承認可能な社会的判
断を合意
と
して形成
していくことが必要である
。
いわば
,社会的問題を,民主的な社会的
プロセス
において
,個々の子どもが社会的か
つ自己内在
的
に批判
し
,合意
を形成
していく過程
を子どもに保
障する
ことが重要
となる
。この
ような合意形成過
程こそが民主主義社会形成の原理であ
り
,この
よ
うな原理に則った学習に
よる社会形成能
力の育成
が
課題
とされ
るべきである
。
以上の
ような学習過程
を授業として編成するた
めには
,3つの
条件
を組み込む必要かおる。一つ
は
,社会的論争問題
を課題とすることである。社
会の
あ
り方に
ついて子
どもが考察
し得る課題
と
し
ては
,自己及び他者にとって広
く共通の問題
を課
題とする必要がある
。自己を含めた
多くの
人々に
とって共通する問題
をいかに解決すべ
きかを追求
することこそ,社会のお
り方
を問うことになるか
らである
。
第二の条件は
,社会問題に対する子どもの
自己
内在的な判断である
。社会問題を自己とは関係の
ない客観的世界における問題と
してとらえたので
は
,社会形成者と
しての
主体的判断とは
いえな
い。
社会問題
を自己のもの
として内在的にとらえ
,自
らの価値観に基
づく判断を行ってこそ
,社会を形
成
している主体
として社会について判断を行って
いるといえる。
第三の条件は
,民主的な条件
を備
えた社会的過
程における批判
・調整
を経た社会的判断である。
自己と他者が
同等な立場で議論
を行
い
,個々の子
どもが構築
した
主張やその根拠となっている各
自
の価値観の批判
・調整
を行う。批判と調整は,一
方の押
しつけや強制でな
く
,主体
的で合理的な形
(自由と平等を保障)にできるだけ近い状態で行
われ
ることが
必要であ
り
,議論の参加者による相
互承認が可能な価値観に根拠
づけられた判断が
形
成され
る
。間主観的な議論の
中か
ら相互承認可能
な判断を合意と
して形成
していく過程が
,民主的
な条件を備
えた社会的過程であり,その
ような過
― 22
―
程
を経
た
合意
こそ
,批
判
と調
整の
中か
ら形
成
され
た
社会
的
判
断
とい
える
。
以上
,3
つの
条件
をも
とに
,授
業過
程
と
して編
成
したもの
が
,厂
社会
的
合意
形
成
をめ
ざす社
会科
授
業」
であ
り
,6つの
段階
で構
成す
る2
)
。以下
,
具体
的
な授
業指導
案
に即
して説
明す
る
。
3。小単
元
「脳
死
・臓
器移
植
法
と人権
」
授
業指導
案
第
1段
階は
,問題
の
提
示で
ある
。価
値
観の
対立
を含み
,個
々の
子
ども
に
関わ
りの
あ
る社
会
的論
争
問
題
を取
り上げ
る
。取
り上
げた
内容が複
雑
で子
ど
も
に
問題
と
して
と
ら
えられ
に
くい場
合は
,
関連す
る
事例
な
どを提
示
して
,問
題
点
をと
ら
えられ
やす
い
よ
うに
工
夫す
る
。今
回の厂
人権
」
とい
うテー
マ
に基
づい
て取
り上げた匚
脳
死
」は
,基
本
的人
権の
権
利
主体
で
ある
人間の
死
を法
律
的
に定
義す
る
とい
う問題
を含
む
もの
で
あ
り
,子
ども
を含め
た
全
ての
人
々
とっ
て関わ
りの
ある
もの
である
。
しか
し,脳
死の
問題
を権
利主体
とい
う視
点か
ら
とら
え
させ
る
こ
とには
困
難が
予
想
され
るた
め
,人
間
と犬の
誘
拐
事
件
やハム
ラ
ビ法典
の
事例
分
析
を行わ
せ
,人間
が
権
利
主体
で
あ
る
と
い
う
こ
と
を理解
させ
る
。そ
して
,
脳
死
を人の
死
と
して認め
る
ことが
,権
利主体
の
範
囲
を変更す
る
ことに
つなが
る
と
い
う問題
性
を理解
させ
,脳
死
と臓器
移
植法
とい
う社
会
問題
を提
示す
る
。
第
2段階
は
,問題の
把握
で
ある
。
こ
こでは
,論
争
問題
に
関
して様
々
な情
報
を豊
富に
含ん
だ
具体
的
事例
を取
り上
げる
。教
師か
らの
資料
提
示や
,子
ど
もに
よ
る調査
活動
な
ど
を通
じて
,事例
に
つい
ての
事
実
関係
を子
ども
に
把握
させ
る
。具
体
的には
,臓
器
移植
法の
資
料
を提
示
し
,脳
死
を認め
る
ことが
死
の
定
義に
変
更
をもた
ら
し
,権
利
主体
で
ある
人間の
規
定
にも
実
質上の
変更
をも
た
ら
して
いる
こと
を認
識
させ
る
。更
に
,事例
分析の
過
程
で脳
死
に
関す
る
事
実
関係
に
つ
いて互
いに質
問
を出
させ
,実際
に
調
査
活
動
をさせ
る
。
第
3段階
は
,問題の
分
析
で
ある
。
論争
問題
をめ
ぐる様
々
な主
張
を分析
し
,それ
ぞれ
の
意
見
を価
値
判
断の
構造
と
して捉
え
,社会
に
おける
論
争状
況の
全体
構
造
を明
らか
にす
る
。その
ため
に
,論争
問題
−
の事実的側面と価値的側
面を意識
させ
つつ
,問題
をめ
ぐる対立
点を分析する
。まず
,事実判断を明
確にするために
,問題をめ
ぐる事象とそれ
を言語
化
した言明との整合性を相互検証す
る
。その過程
で
,事実関係に関する疑問点は,資料調査な
どで
解決
しておく
。次に,事実の背後に含まれる価値
観の認識
を行う
。主張を正当化す
る根拠となって
いる価値観
を資料か
ら読み取る
。そ
して,事実と
価値観
とを
トゥ
ール
ミン
図式
を利用
して図式化
し,
価値判断の構造
を明示する
。構造化の過程では
,
事実に基づ
く主張が価値に
よって正
当化され
てい
るのか
という
,事実判断と価値判断との論理
的整
合性を検証
し
,価値判断の構造その
もの
を吟味す
る
。具体的には,脳死をめ
ぐる様々な主張に関す
る資料
をも
とに
,前段
階で行
った分析結果
を
トゥー
ル
ミン図式を利用
して図式化する
。この時,主張
の根拠となるWや
Bの部分が資料か
ら読み取るこ
とが困難なものも
あるが
,不確定なものの場合は
予測である
ことを明示
して図式化する
。そ
して,
図式化
したもの
をもとにな
った資料と共に提
示
し
,
資料からその
ような図式化が可能か
どうかという
点を含めて,価値判断の構造の妥
当性を互いに検
証する。
第4段階は
,解決策の考察である。前段階の分
析で明らかに
した論争構造
をふま
え
,子
どもが
自
らの意見を構築
し
,個々の価値判断構造の妥
当性
を相互に検証する段階である
。ここでは,まずこ
れ
までに蓄積
された資料や情報
をもとに各自が解
決策
を構築
し
,
トゥー
ルミン図式化
したもの
を仮
説と
して提示す
る
。そ
して,価値判断の構造と
し
ての妥
当性
を相互に検証
し
,各
自の
主張内容
を互
いに認識する
ことで
,主張の事実関係
を理解する
。
次に
,互
いに主張の批判を行
い,意見の修正や調
整
を試み
る
。具体的には
,脳死に関す
る様々な資
料
を基に
して
,各自が解決策
を構築
し,
トゥール
ミン図式を利用
る
(別掲工
・2参照)
して価値
。次に,5∼6名のグルー
判断の構造と
して明示す
プを作
り
,各
自の解決策が,価値判断の構造
とし
て妥
当なものかどうか
を互いに検証する
。その過
程に
おいて
,他者の批判で納得のいくところは
,
批判
と修正の
内容
をメモの形で図式に追記
し
,修
正過程が明
示でき
るように
してお
く
(別掲
3参照
)
。
23−
また
,主張内容に
ついての
疑問点については相互
に質問
し
,互いの
主張の事実関係について理解を
深め
ておく
。次に,価値判断構造
を持
つ主張とし
て整えられた各
自の解決策
をグル
ー
プに提示
し,
互いに質問及び批判を行う
。なぜその価値によっ
てその
主張が根拠付
けられ
るのか
といった質問や
,
なぜその価値を他の価値よ
りも優
先す
るのかとい
う指摘な
どが
,脳死をめ
ぐる事例
をもとに批判と
して行われ
る
。そ
して,他者の批判によ
り自らの
主張
を修
正す
るときは
,他者の批判及び修正の
内
容を図式に追記する
。部分的に修正する場合は
,
R
(留保条件)を図式に付与する形で,主張その
もの
を組み替
えるようであれば
,図式そのもの
を
更新する
。この
時,主張の変遷
を認識可能にする
ために
,図式への記入の順序を明示
した
り,書き
換
える前の
図式
を残
した
りしてお
く
(別掲
4参照
)
。
この
ように
して相互批判と相互調整を行
うの
であ
るが
,実際の授
業に
おいて,脳死に関する一致
し
た解決策は子どもの間では現れ
ないであろう
。そ
こで
,現実に統
一した社会的合意が得られ
ている
とは言い難い状況かおることを認識
させ
,脳死と
いう論争問題の背後には
,容易に解決できない価
値観の
対立が存在す
ることを改めて認識させ
る
。
第
5段階は
,類似する論争
問題の検証である。
取
り上げた問題と類似する価値観の対立を含み
,
なおかつ現在の
時点である程度の結論が出ている
複数の論争
問題を取
り上げる
。類似
問題の分析を
行い
,どの
ような価値観の対立状況が存在
し,ど
のように価値の
整序が行われ
,どの
ような解決策
に結び
ついているのか
を明らかにす
る
。そ
して
,
事実関係の違
いか
ら優
先され
る価値観やそれに基
づく解決策が異なって
くる
ことをとらえさせる
こ
とで
,多様
な価値観
を保障
しつつ,問題の社会的
解決
を図っていることを認識
させ
る
。具体
的には
,
アメ
リカでの脳死をめ
ぐる事例
を取
り上げる
。ア
メリカでは
,プロジ
ェク
トチームにおいて論争点
を絞
り込む作業を行った事を認識させ
る
。まず
,
医学や道徳
,宗教などにおける臓器移植
とからむ
論争
点を排除
し
,純粋に死の基準とは何か
という
点を議論するという合意
を形成
した
ことを認識さ
せる
。そ
して,議論の結果
,匚
全脳死」を
「 ̄
心臓
死」と並んで死の基準と
して認め得るが,国と
し
ー
て統
一基準は作成
しないという答申を出
した
こと
を
示す
。つま
り,アメリカは死の基準
を一元的に
決めるという
「 ̄
実質的合意
」ではなく,対立する
価値観に基づく
二重の定義を共存
させて
多元化す
るという
匚
形式的合意」
を選択
したことを認識
さ
せ
る
。価値観対立の解消による問題の解決
(実質
的合意)をめ
ざしたのでは
なく
,価値観の対立か
ら生
じる社会的な対立状況を解消する
(形式的合
意)という社会
的合意
を形成
したケ
ース
であり,
多様な価値観の存在
を前提と
した決定であること
を理解
させる
。
第
6段階は
,解決策の評価である。前段階で明
らかに
な
った
多様
な事例
をふま
え,授
業課題
となっ
ている論争問題の
対立状況に最もふさわ
しい解決
策
を選択する
。まず
,個
々の解決策が現実に実施
可能であるか
どうか
を検証
し,不可能
であると考
えられ
るもの
は
と
りあえず
除外す
る
。次に
,
トゥー
ル
ミン図式化
した解決策の価値判断構造の妥当性
を
,第4段階で行った方法で検証する。そ
して,
当の問題の場合
,どの
ような価値観に基
づく解決
策を優
先することが妥
当かどうか
を議論
し
,批判
と調整の過程の
中で解決策の評価を行う
。具体
的
には
,5∼6名のグルー
プに再度分かれ
,
トゥー
ル
ミン図式化
した各
自の解決策
を提示す
る
。まず
,
主張とその根拠となる価値観
との論理的整合性や
価値判断の構造
を検証する
。そ
して,それぞれの
解決策
を相互批判
し
,各自が納得できた
点は修正
を加
えていく
。この時も,部分的修正の場合は留
保条件
(R)
を活
用
して図式に示す
(別掲
5参照
)
。
全面的に修正する場合は
,図式そのもの
を組み
替
える
。各グルー
プである程度の検討が行われ
た後,
グル
ー
プからクラス全体へ解決策の提
示を行
う。
グル
ー
プで行
ったの
と同様に相互批判と修正を行
い
,まとめる。そ
して,合意に至った点と至らな
か
った点を確認
し
,あわせて
,議論
を深めるため
に不足
して
いた
知識や明らかに
しなければならな
い問題
点な
どを提示する。
24−
「 授業 指 導 案 厂脳 死 ・ 臓 器 移 植 法と 人 権」 】 小 単 元 の 目 標 臓 器 移 植 法 は 、 心 停 止 に 重点 を お い た 死 の規 定 に一 部 に せ よ 変 更 を 認 め る も の で あ り社 会全 体 に大 き な 議 論 を 引 き 起 こ し て い る。 現 代 の 法 化 社 会 に お い て は、 死 の基 準 は人 権 を 認 め る範 囲 を 規 定 す る もの で も あ り、 生 体 と死 体 の境 界 線 の 設 定 が 、 人 権 保 障 と い う点 に も 大 き な 影 響 を 及 ぼ し う る。 そ の よ う な意 味で 、 死 の基 準 と は 、 権 利 主 体 で あ る 全 て の 市民 が避 けて は通 れ な い 社 会 的 問 題 で あ り 、 し か も、 こ れ ま で の 法 律 そ の 他 の 社 会 的合 意 を基 準 と し て 援 用 し 得 な い もの で あ る。 こ の よ うな 問 題 に対 して は、 社 会 を 形 成 す る 市 民 に よ る 議 論 を 通 じ て の 社 会 的 合意 を 形 成 す る 過 程 を経 るこ と が 重 要 で あ る。 教 師 の 側 か ら の 発問 ・ 指 示 学 習 活 動 ・ 資 料 予 想 さ れ る 解 答 ( 理 解さ せ たい 知 識 )
1
回
の
Mミ
・ 誘拐 事 件 は な ぜ重 罪 な の か 。 こ れ ま で 学 習 し た人 権 とい う 観 点 か ら 考察 し な さ いO ・ ペ ット 誘 拐 は な ぜ罪 が 軽 い のかO ・ ハ ム ラ ビ 法 典 で は 、 自 分 の子 ど もが 殺 さ れ た場 合、 罰 と し て 犯 人 の 子 ど もが 殺 さ れ る こ と と な っ て い る が、 な ぜ だ と 考 え ら れ る か。 ・ 現 在 の 日 本 で 同 様 の事 件 が 起 き た場 合 は 犯人 が 殺 人 罪 に 問 わ れ る が 、 ハ ム ラ ビ法 典 の 場 合 と 比 較 し て ど こ が 異 な るかO ・ 人 権 保 障 は、 憲 法 や 法 律 によ る 保 障 を 意 図 す る の が 現 代 社 会 の シ ス テ ムだ が 、 近 年 の 科 学 技 術 の 発 達 に よ っ て 人 間 の定 義 そ の も のが 揺 さ ぶ ら れ て い る 。 ど の よ う な 例 が考 え ら れ る かO ・ こ れ ら の う ち、 近 年 あ る 法 律 の 制 定 と か ら ん で 現 在 大 き な 議 論 と な って い る もの は ど れか 。 考 察 す るo 【 資 料 1 : 営 利 誘 拐 殺 人 】 考 察 す る 。 【 資 料 2 : ペ ッ ト の犬 を 誘 拐 】 考 察 する 。 【 資 料 3: ハ ム ラ ビ 法典 】 考 察 す る。 ・ 誘 拐 と は 身 体 の 自 由 を 侵 害 し 、 ま た 殺 人 の 場 合 は生 命 そ の も のを 奪 う と い う重 大 な 人 権 侵 害 で あ るか ら 。 ・ ペ ット は人 間 で は な い の で人 権 保 障 の対 象 外 だ か らo (人 間を 誘拐 し て 身 代 金 を 要求 し たら 「 営 利 誘 拐 罪」 に 問 われ る が 、 飼 い犬 な どを 誘 拐 し て も 厂窃盗 罪 」 にし か な ら な い) ・ 子 ど も は 大人 と 同 様 の 人 格 を 認 め ら れて い な いo ( 他 人 の 所 有 物 を 壊 し たら 、 自 分 の所 有 物 も壊 さ れ る とい う ケ ー ス と 同 様 で、 子ど も は人 格 主 体 と し て認 め られ て い な か っ た) ・ 子 ど もも 人 格を 持 つ 一 人 の 権利 主 体 と し て認 め ら れ て い る。 ( 人 権 と は 人 の権 利 で あ り 、 人 権 の主 体 は人 間 で あ る ) ・ クロ ー ン人 間 ・ 妊 娠 中 絶 ・ 胎 児 の 遺 伝子 操 作 ( 出 生 前) 等 ・ 脳 死 ・ 尊 厳死 ( 死 に関 し て ) 等 ・ 脳 死 と 臓 器 移 植 法贔
回
箆
・ 脳 死 と 臓 器 移植 と は ど の よ う な 関 連 性 が あ る のだ ろ う か 。 ・ 臓 器 移 植 法 に よ る死 の 定 義 の 実 質 的 な 変 更 は、 人 権 上 ど の よ う な 問 題点 を 含 ん で い る か。 ・ 脳 死 を 人 の 死 と す る こ と に は 賛 否 両 論 が あ り 、 臓 器 移 植 法 が 成 立 し て 実 際 に 脳 死 判 定 が 行 わ れ てい る 現 在 も、 議 論 が 続 い て い るo そ れぞ れ、 ど のよ う な 意 見 な のだ ろ う か 。 ・ 臓 器 移 植 法 に つ い て 調 べ、 脳 死 を 人 の死 と す る 事 に つ い て 、 今 の 時 点 で の自 分 の意 見を 理 由を 含 め て ま と めよ う。 疑 問 点 は メ モ し てお こ うo O 脳 死 に 関 す る 事 実 関 係 につ い て わ か ら な い点 を 出 し て み よ う。 〔予 測 さ れ る質 問 〕 ・ 脳死 と は ど のよ う な 状 態 を い う のか 。 ・ 脳 幹 機 能 の不 可 逆 的 停 止 と は ど の よ う な 状 態 を うの か 。 ・ 脳 死 を 認 め てい な い 段 階 で の死 の 基準 は何 かo ・ 現 在 で は 法律 的 に は 脳 死を 人 の 死 と し て 認 め ら れて い る の か 。 ・ 脳 死 状 態 と植 物人 間 状 態 と は 一 緒 な の か 、 そ れ と も ち が う の か 。 違 う の な ら、 何 か ど う 違 う のか 。 等 資 料 な ど に よ り 判 断 し 答 え る 。 考 察 し 発 表 す る 考 察 し 発 表 す る 考 察 し まと め る 【 資 料 4】 臓 器 移 植 法 そ の 他 の 脳 死 関 辿 資 料 調 べ る ・ 臓 器 に よ っ て は、 心 停 止 か ら 時 間 が 経 過 し て い な い 人 間 か ら 摘 出 す る 必 要 が あ る。 よ っ て 、 臓 器 移 植 を 可 能 に す る た め に は 脳 死 を 人 の 死 と し て法 律 的 に も 認 め る必 要 性 が あ るO ・生 体 は 人 間 で あ る が 、 死 体 と 認 定 さ れ れ ば そ れ は人 間 で はな く物 と し て 扱 わ れ、 人 権 保 障 の対 象 外 とな るO ・ 脳 死 を 人 の 死 と す る こ と に 賛 成 ( 人 間 は人 格 的 存 在 で あ り 、 人 格 を つ か さ ど る脳 機 能 が 破 壊 さ れ た ら、 人 間 と は い え な い) 等 ・ 脳 死 を 人 の 死 と す る こ と に 反 対 ( 心 臓 が 勁 き続 け、 体 を 構 成 して い る 細 胞 が生 き続 け て い る の で あ る か ら生 命 体 で あ る 等) ・ 脳幹 を 含 む 全 脳髄 の 機能 の 不可 逆 的 な 機 能 停 止 状 態 ( 臓 器 の 移 植 に 関 する 法 律 ) ・ 大 脳 や小 脳 、 脳 幹 を 含 め た全 脳 死 状 態 ・ 脳 幹 は呼 吸 な ど生 命 維 持機 能 を つ か さ ど り、 不 可 逆 的 停 止 に よ っ て、 自然 状 態 で は 呼 吸 停 止 か ら心 停 止 に 至 る こ と にな る。 ・心 臓死 を 中 心 と す る三 徴 候説 心 臓 停 止 ・ 呼 吸 停止 ・ 瞳 孔 拡 散 ・一 律 的 に は 決 め ら れ て い な い が 、 当 人 が 選 択 し て 臓 器 提 供 意 思 表 示 カ ー ド によ って 意 思 確 認 し、 家 族 の同 意 を 必 要 と す るO ・ 脳 死 状 態 と は 呼 吸 や 心 臓 な ど を つ か さ ど る 「 脳 幹 機 能 」 の不 可 逆 的 停 止 で あ り 、 植 物 人 間 状 態 と は 思 考 中 枢 で あ る 「 大 脳 機 能 」 が 破 壊 さ れ て い る状 態 を い う 。 等晶
習
律
○ そ れ ぞ れ の 立 場 を ト ゥ ール ミ ン図 式 を 利 用 し て ま と めて みよ うo ・ 脳死 を 人 の死 と す る こ と に賛 成 す る 側 の 理 由 は何 か 。 ・ 脳 死 を人 の死 とす る 事 に 反対 す る側 の理 由 は 何 か。 資 料 か ら 読 み 取 っ た 情 報 を も と に 、 既 習 の知 識 を 利 用 し て考 察 す る 。 必 要 に 応 じ て 脳 死 に 関 す る 資 料 を 配 布 す る。 【 資 料 5: 脳 死 を 巡 る 種 々 の資 料 】 ・ 脳 死 と は 完 全 に 脳 の機 能 が 回 復 しな い とい う こと で あ り 、 人 間 と し て の 意 思 行動 が 不 可 能 だ か ら 人 の死 とし て 考 え て よ いo ・ 脳 は精 神 活 動 の中 枢 で あ り 、 脳死 状 態 に な れ ば人 格 が失 わ れ ア イ デ ン ティ テ ィ が 保 た れ なく な る の で あ るか らo ・ 脳 幹 機 能 が 停 止 す れば 自 律 的 呼 吸 や心 臓 機 能 の維 持 が 困 難 と な り、 自 然 状 態 で あ れ ば い ず れ呼 吸 停 止 と 心 停 止 に至 る こ と に な り、 今 ま で の死 の 定 義 に反 し ない 状 態 に 至 る 結果 と な るか ら。 ・ 法 律 で は 脳 死 を人 の死 とす る か と い う点 に 個人 の 選択 を 認 め て お り、 自 ら の命 に 関 す る 自 己決 定 は尊 重 さ れ る べ き だか ら。 等 ・ 脳 の 機能 が 不可 逆 的 に 停 止 し た と し て も 、 心 臓 は 動 き 呼 吸 を 続 け 、 組 織 細 胞 は 新 陳 代 謝を 続 け て い る 。 脳 の 機 能 が 停 止 し て い る か ら と い っ て、 人 の 死 と す る わ け に はい か な い 。 ・ 脳 死 を人 の 死 と し て 認 め る こ と の 目 的 が 、 臓 器 移 植 を 合 法 化 す る こ と に あり 、 倫 理 的 に お か しい ので 反 対 で あ る 。 ・ 脳 死 判 定 の 手 順 が 複 雑 で あ り 、 そ の 手 順 によ って 脳 幹 を 含 む 脳 髄 機 能 の 不 加 逆 的 停 止 状 態 に な って い る のか ど うか が 判 定 可 能 で あ る と い う 科学 的証 明 が な さ れ て い な い か ら。 ・ 脳 死 を 人 の 死 と す る か ど うか とい う点 で 社 会的 合 意 は 成 立 し てお ら ず 、 人 間 と い う存 在 を 社 会 的 に規 定 す る自 分 の命 を 、 自 己決 定 だ け で 左 右 す る の はお か し い 。 -25 −
4
ミ
ヨ
{
○ こ れ ま で の内 容 を ふ まえ 、 脳死 を 人 の 死 と す る こ と の 是 非 に 対 す る 意 見 を 改 めて 作 り 、 提示 し た 表 を 参 考 に論 理 的 に図 式 に 構 成 し て みよ う 。 ○ こ れ以 後 5∼ 6名 の グ ル ープ に分 か れ な さ いO ・ 各 自 が 作 っ た 図 式 を 提 示 し 、 論理 的 にお か し い と こ ろ を 互 い に 検 証 し 、 他 者 の指 摘 で 納 得 の い く と こ ろ は 修正 し よ う。 修 正 は 、 ど のよ う な指 摘 を 受 け、 ど のよ う に修 正 し た かを、 メ モを 書 き加 え な さ い 。 複 数 の場 合 は 番 号を つ け 、 修 正 を し た順 番が わ か る よ う にす る 。 【 論 理 構 成 の 相 互批 判 と相 互 調 整 】 【 価 値 判 断 の 正 当性 の吟 味 】 ○ そ れ ぞ れ の 意 見を 図 式 を 提 示 し て 発 表 しよ うO ・ そ れ ぞ れ の 意 見 に対 し て 自 分 な り の質 問 や 意 見 を 構 築 し よ う 。 ・ 互 い の意 見を 図式 を 提示 し な が ら 議 論 を し な さ いO そ の 中 で 、 他者 の批 判を 納 得 し て 受 け 入 れ 、 自 分 の 意 見 を 修 正 する 場 合 は、 批 判 と 修 正 内 容 を 後 か ら書 き 加 え た こ とが わか る よ う に 図式 に 明 示 し な さ い 。 ま た 、 条 件 付 きで 相 手 の 批判 を 受 け 入 れ る 場 合 は 、 留 保 条 件を う まく 活 用 し て 図式 化 し な さ い 。 【 価 値 観 の相 互 批 判 と 相 互 調 整】 ・ 一 致 し た結 論が で ま し た が。 ・ な ぜ 結論 が で な い の か 、 原 因を 探 って みよ うO O 大 に よ っ て 考 え 方 が 違 う とい う こ と は、 図式 で い え ば ど こが 違 う のかO ・ 図式 の 下 に 位 置 し て い る 論拠 と な っ て い る も の は 、 ど のよ う に違 って い る か。 ○ 個々 の意 見 の 論 理 構 成 自体 に問 題 は な い か。 ○ そ れ ぞ れ が 論 理 構 成 に 問 題 の な い 合 理 的判 断 で あ る に も か か わ ら ず、 こ の よ うに 意 見 の一 致 が 見 ら れ な い場 合、 こ の 脳 死 と 死 の 定 義 と い う問 題 は ど の よ う に扱 え ば よ い の だ ろ うかO ・ 現在 の 臓 器 移 植 法 で は ど のよ う にし て い る の だ ろ う か 。 ・ 脳死 を 人 の死 と定 義 す る 社 会 的 合 意 は形 成 さ れ て い ると い え る だ ろ うか 。 考 察 し 、 意 見 構 築 を す るo 【 表 1 :ト ゥ ー ル ミ ン 図式 】 グ ル ー プ に 分 か れ るO 作 っ た 図 式 を 互 い に 検 証 し、 納 得 が い っ た と こ ろ は 修 正 する 。 発 表 す る 。 考 察 し、 ま と め る 。 図 式 を 使 用 し て 議 論 を す るO 考 察 し、 発 表す る 。 考 察 し 答え るO 考察 し答 え る 。 検 証 し答 え るO 考 察 し 答 え る 。 調 べ る 。 考 察 し 答 え る 。 〔子 ど もが 作 成 す る 図式 の例 → 別 掲 1 、 別掲 2〕 〔子 ど もが 修正 して い っ た図式 の 例 → 別掲 3〕 省 略 〔 子 ど もが 作 成 す る 図式 の 例→ 別 掲 1 、 別 掲 3〕 〔子 ど もが 修 正 し て い っ た 図式 の例 → 別 掲 4〕 ・ で な いo ・ 脳 死 判 定 基 準 や 法律 論 な ど 、 事 実 関 係 で 不明 な 点 が 多 す ぎ る。 ・ 大 に よ っ て 考え 方 が 違 うか ら 一 致 す る わ けな い 。 等 ・ 一 番 下 に 位 置 す る 根本 的 な 論 拠 が 異 な っ てい る 。 ・ あ る 大 は「 医 学 的 な 見解」 を も と に し、 あ る大 は「 法 律 的 な 見 解」 を もと に し てい る 。 ・ そ れ ぞ れ 根 拠 にし て い る 分 野 が 異 な って い る 。 ・ 論 理 楫 成 は 問題 な い 。 ・ 互 い に 条 件を 付 け て 譲 歩 し あ う しか な い 。 ・ 意 見 が一 致 しな く て もよ い の で はな い かo ( 死 の 定 義 に 関 し て 社 会 的 合 意 が 必 要 な の か と い う論 争 点 が 浮 か び 上 が っ て く る) ・ 死 の 定 義 を 基 本 的 に は 心 臓 死 に し て い る が 、 ド ナ ーカ ード によ る意 思 表 示 と 家 族 の 同 意 と に よ っ て 脳 死 を 人 の 死 と 選 択 す る こ と も可 能 な も の と して い る 。 等 ・ いえ ない 。 5 類 似 す る 論 争 問 題 の 検 証 ○ 日本 よ り 早 く 臓 器 移 植 が 合 法 化 さ れ て い る ア メ リ カ で は ど の よ う に扱 わ れて い る だ ろ うか 。 ・ アメ リ カ で は ど のよ う な 問 題 状 況 であ っ たか 。 ・ 混 乱 し た状 況 の中 で、 ア メ リ カ で は ど のよ う に 議 論 を 進 め て い た のか 。 ・ ど の よ う に 問題 を 整 理 し た の か。 ・ 問 題点 を 整 理 し 、 ど う 議 論を 展 開し た の かo ・ 論点 と し た も の は何 か。 ○ ア メ リ カ で は こ の 答 申 を 受 け て ど のよ う に 問 題 解 決 が 行 われ て い る か。 ○ 日本 で は ど の よ う にな って い る か 。 ○ 結 論 は 日米 で 同 じ よ う に 思 え る が 、 異 な って い る点 は何 で あ ろ う かo 資 料 を 分 析 し 、 答 え る 。 【 資 料 6: アメ リ カ で の 臓 器 移 植 関 連 の 議 論 の 進 め 方 の 例 】 既 習 の 知 識 の 中 か ら 該 当 す る も のを 選 び 出 さ せ る。 ・ 日 本 と 同 じ よ う に、 多 く の 観点 か ら 問 題 が 出 さ れ 、 ま と ま り か っ か な い 状 況 で あ っ た。 ・一 部 の州 で 脳 死 を 人 の 死 と 認 め る 立 法 措 置 が 進 み、 社 会 的 混 乱 が 広が り だ し て い た。 ・医 者 、 法 律 家 や宗 教家 、 哲 学 者 な ど か ら な る プ ロ ジェ ク ト チ ー ムを 作 り 、 問 題 を 整 理 す る と ころ か ら 始 め た。 ・問 題 を 以 下 の三 つ に区 分 し たo ① 脳 死 者 は 法 的 に 死 ん で い る と 裁 定 さ れる べ き か( 法 ) ② 脳死 患 者 は、 死を 宣 告 さ れ 、 か つ そ の よ う に 扱 われ る べ き か ( 道 徳) ③ 脳死 患 者 は死 ん で い る か ( 事 実) ③ぺ 医 学 的 に 死 ん で い るか 。 ③-2哲 学 的 に死 ん で い る と考 え ら れ る か ・ 論 点 と す る も の と しな い もの とを 区 別 す る こと か ら 始 め た ・ 脳 死 を 哲 学 的 に死 と認 める か ど う かを 中 心 課 題 と し た ( ③-2 ) ・ 道 徳 や 医 学 的な 論 争 点 を 排 除 し 、 哲 学 的 議 論( 死 の定 義 は ど の よ う に 扱 え ば よ い のか ) に絞 り 、 死 の定 義 は公 共 政 策 の 問 題 と 捉え 、 匚全 脳 死 」 状 態を 人 の死 と 認 め う る と い う結 論 へ 至 る 。 ・ ① の 法 的 に ど う内 容 を 整 備 す れ ばよ い か を 議 論 し た 。 ・ 死 の 基 準 に焦 点 を 絞 り 、 臓器 移 植 と か らむ 医 学 的道 徳 的倫 理 的 論 争 点 を 排 除 し 、 純 粋 に哲 学 的 に 問 題 解 決 の視 点 を 提 示 し、 全 脳死 を 死 の 基 準 と 社 会 的に 認 め う る と い う結 論 に達 し たO ・ た だ し、 今 ま で の心 臓死 の定 義 も否定 せ ず 、死 の基 準 の多 元 化 を チ ー ム の 結 論 と し て答 申 し たO O 死 の 基 準 を 多 元 化 し た 州 と 、 未 だ に心 臓 死 に限 定 し てい る州 が 存 在 す る。 ア メ リ カ全 体 で の 統一 基準 を 作 ら な い 選 択を し た。 ○ ア メ リ カ と 同 じ よ う に 厂心 臓 死 」 と 「 脳 死 」 とい う基 準 で 死 の定 義 を二 元 化 し た。 * ア メ リ カ で は 「 死 の 定 義 」 に 関 す る 実 質 的 な 合 意 は作 ら れな か っ た が、「 死 の定 義 」 を 多 元 化 す る と い う 社 会的 合 意 ( 実 質 的 な 合 意 で は な く、 対 立 す る 価 値 観 を 共 存 さ せ る と い う 形 式 的 合 意 ) を 形 成 し て い る。 日本 で はこ の点 の 議 論が 欠 け て い る 。26 −
6
万
万
○ こ れ以 後 5∼ 6名 の グル ープ に 分か れな さ い 。 ・ 各 自 が 作 っ た 図式 を 提 示 し 、 論 理 的 に お か し い と こ ろ を 互 い に検 証し 、 他 者 の 指 摘 で 納 得 で き る と ころ は修 正 し よ う。 そ の 時、 ど の よ う な 指 摘 を 受 け 、 ど のよ う に 修 正 し た の かを メ モを 書 き 加 え な さ い 。 複 数 の 場 合 は、 修正 を し た 順 番 が わ か る よ う 番 号 を つ け る こ と。 【 論 理 栂 成 の 相 互批 判 と 相 互 調 整 】 【 価 値 判 断 の正 当 性 の吟 味 】 ○ それ ぞ れ の 意 見を 図 式 を 提 示 し て 発表 しよ うO ・ そ れぞ れ の 意 見 に対 し て 自 分 な り の 質 問 や 意 見 を 構 築 し よ うO ・ 互 い の意 見を 図式 を 提 示 し 議 論 を し な さ いo 他 者 の 批 判 を 納 得 し て受 け 入 れ 、 自 分 の 意 見 を 修 正 す る場 合 は、 批 判 と 修正 内 容 を 後 か ら 書 き 加 え た こ とが わ か る よ う に 図式 に 明示 し な さ い 。 ま た 、 条 件 付 き で 批 判 を 受 け 入 れ る場 合 は 、 留 保 条 件 を 活 用 し 図 式 化 し な さ い 。 【 価 値 観 の 相 互 批 判 と相 互 調 整 】 ○ 合意 で き た点 及 び 合 意 で き な か っ た 点 、 ま た 議論 を 深 める た め に 明 ら か に し な け れ ば な ら な い 問 題 点 な ど を 提 示 し よ う。 グ ル ープ に 分 か れ る 。 作 っ た 図 式 を 互 い に 検 証 し 、 納 得 が い っ た と こ ろ は 修 正 す るo 発 表 す る 。 考 察 し 、 ま と め る。 図 式 を 使 用 し て 議 論 を す る 。 〔子 ど もが 修 正 し て い っ た 図式 の 例 → 略 〕 〔 子 ど もが 作 成 す る 図式 の 例 →別 掲 5〕 〔 子 ど もが 修 正 し て い っ た 図式 の例 → 別 掲 5〕 【 主な参 考 文 献】 NHKr脳 死」 プロジェクト『 脳 死移 植』日 本 放 送 出 版 協 会,1992. 大 谷 実『いのちの 法 律 学 』筑 摩 書 房,1985. 加 藤 尚 武・ 加 茂 直 樹 編『 生 命 倫 理 学を学 ぶ人 のために』世 界 思 想 社,1998. 黒 須 三 恵『 臓 器 移 植 法を考 える』信 山 社, 1994. 中 山 研 一『 脳 死・ 臓 器 移 植と法』成 文 堂, 1989. 唄 孝 一『 生 命 維 持 治 療の 法 理と倫 理 』有 斐 閣,1990。 深 田 愛 子『 今 問い 直す 脳 死と臓 器 移 植 』彖信 堂, 1998. 水 野 肇r 脳 死と臓 器 移 植 』紀 伊 国 屋 書 店,1991. 【 別 掲1: 脳 死を人 の死 として承 認 する側 の論 理 構 造 】 D (data/結 論 を支える根 拠となる事 実) C (conclusionソ結論) 脳 死 状 態 になれば、自 分で自 分 のことを 考えたIJ判 断した りすることができない w warrant/ 脳 死 を 人 の 死 とす るべき であ る D →Cの理 由 付け) 自 分 のことを判 断 したりする 脳 の 機 能 が 失 わ れ てt ることは、 人 格 が 失 わ れ てk 哂 の 励 ヽら B backing/ Wの根拠 付け) 不 謡 二 【 別 掲2: 脳 死 を人の 死として認 めない 両の論 理 柵 造: 検 証 前 】 D(dat aノ結 論を 支える根 拠となる事 実) C (conclusion/ 結 諭) 脳 の 機 能 が 停 止 してい たとしても、 人 工 呼 吸 罰 こよって 心 臓 は 助 き、 呼 吸 は 続 き、 細 胞 の 新 陳 代 謝 は 進 ん で1 哂 W warrant/ 脳 死 を 人 の 死 とす る べき でな い D − C の 理 由 付 け ) 栄 疊を消 化し、体 細 胞 の新 陳 代 謝を続け、 呼 吸や心 抬が 続いて1哂と言うことは、 生 命 維 持 機 能が 伽い てk哂と言うことだから B backing/ W の根 拠 付け) 生 命 維 持 機 能が 働い忿 哂と言うことは、 死んでい ないと言うことだから。 【 別 掲3: 脳 死を 人の 死として認 めない 側の論 理 構 造: 検 証 複】D(data/ 結;laを支 える根 拠となる事 実) C (conclusion/結諭)
脳 の 機 能 が 伴 止 して いた とし ても、 人 工 呼 吸 器1 こよっ て 心 臓 は 動 き、 呼 吸 は 続 き、 細 胞 の 新 陳 代 謝 は 進 ん でt 哂 W warrant/ 脳 死 を 人 の 死 とするべ き で ない D − Cの理 由 付け) 栄 養を消 化し、体 細 胞の 析 陳 代謝 を続け、呼 吸 や心 拍 が続いて1哂と言うご は、生 命 維持 機 能 が働いてい ると言うことだから B backing/ W の 根 拠 付 け ) 生 命 維 持 機 能 が 伽 いて い ると言 うことは、 死 んで1 霞 いと 言 うことだ から。 -