がん患者を抱える家族の体験に関する心理臨床学的研究:ナラティブ・アプローチを用いて
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(2) 月であった。. 中にうまいこと整理して入れておくことが,A さんにとっての受容であった。. 表1 研究協力者のプロフィール ^さん(遺族). 性別. Bさんの事例では,「夫へのがん宣告から死去. Bさん(遺族〕. 男. 女. 40代前半・製造. 50代前半・福祉サービス. 長男. 長女.次男,次女. 患者の続柄. 妻. 夫. 患者の年齢. 30代後半(逝去時). 患者の現在. 年齢・職業 同居家族. までの物語」とr夫の死去から現在までの物語」. という2つのまとまりが見出された。 夫へのがんの宣告とその宣告方法にショック. 50代前半(逝去時). を受けたが,仕事を続けながら治療を受けるこ. 2007年12月逝去. 2009年1月逝去. とを望んだ夫を支え続けた。治療の情報を求め. 面接回数. 5回. 2回. て遠方の病院にも行った。夫の病気は誰にも話. 面接場所. キリスト教会の1室. 病院のラウンジ11回) @筆者の自宅(1回). その他. 患者会の発起人. さないでいたが,1年後には共有できる場を求 めて患者会を起ち上げた。夫の姿がない今,た とえ寝たきりであってもここにいてくれたらと. 分析方法 竹家(2008)の方法を参考に,全体. も思った。夫の病気を話さなかったことが,以. を見ながら,語りの流れを構造的に見るシーク. 前からの知人に対する負い目になり,関係をう. ェンス分析を行った。r鍵になる言葉」を見出し,. まく築くことができずにいる。Bさんは夫とも. 物語の「筋」とともに,評価や態度の語りにも. に以前の自分を喪ってしまっていた。. 注目し,経験の意味づけを分析した上で,. 本研究では,語りを切片化することなくシー. 遺族のライフスドーリを再構成し,解釈した。. クェンスとして分析したことで,協力者の体験 をより具体的に個別的に理解することができた。. 結果と考察. その際,意味のつながったまとまりとして区分. Aさんの事例では,「妻の臨終までの物語」,. することを心がけたので,体験の中での個々の. 「妻の葬儀から1周忌までの物語」,「現在から. ナラティヴの意味が捉えやすくなったと思われ. 未来への物語」という3つのまとまりが見出さ. る。また,筆者自身が妻をがんで喪った経験を. れた。Aさんには,妻に対するがん宣告に続い. 持つ当事者であることは,筆者と協力者の関係. て,長男が重病で入院した。すべてのサポート. において大きな蔵味があったと考えている。そ. を引き受けてくれた姉は,Aさんにとって最も. の関係の上で展開する語り手と筆者との相互作. 頼りになる存在であった。妻の死後,Aさんは. 用により,ナラティヴが生成され体験が意味づ. 長男とともにAさんの実家に身を寄せ,生活を. けられたと言えるからである。. だ。両親や姉夫婦に対する感謝の思いとは対照. 的に,妻の父との確執に苦しんだ。姉はAさん の考え方に大きな影響を与え,確執を助長する. 引用文献 佐伯俊成(2004).がん患者と家族に対する心理社会的 介入 日本心身医学雑誌,44,495・501、. ような存在でもあった。現在のAさんにとって. 竹家一美(2008).ある女性のライフストーリーとその. は,子どもとの生活を送れなかった妻の無念さ. 解釈一r不妊」という十字架を背負って一 京都 大学大学院教育学研究科紀要,54,152−165.. を振り返る方が辛いことである。妻の死は忘れ たいと同時に忘れることはない辛い思い出であ. 主任指導教員 冨永良喜. るが,それとともに楽しかった思い出をr心の一. 指導教員 辻河昌登. 一83一.
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