Takatsugu AOKI
青 木 孝 次 目 次 1.はじめに 2.レンタル市場および業界の概観 3.効率性の検証(商品レンタル実績と顧客利用実績の集計) 4.まとめ1.はじめに
1-1.はじめに
近藤産興株式会社(以下「近藤産興」と表記)は,名古屋市南区に本社を置く,総合 ㆑ンタル・サービス事業を中心にビジネスを展開する企業(未上場)である。恐らく 中京圏以外の地域では,さほど知られていないのではないだろうか。しかし,その一 方中京圏の法人・個人の消費者にとっては,小学生でさえもその名を知らないものは いないほど,世代を問わず知名度が高い企業であると言っても過言ではないであろ う。この地域における高い知名度の理由のひとつは,約 30年に亘り中京地区におい て,「何でも貸します4 4 4 4 4 4 4」というキーメッセージとともに,「貸します娘4 4 4 4 4」なるキャラク ターによるコミカルな映像をオンエアし続けている,TVのスポットCMの絶対的総 量(GRP1))によるものだと思われる。 そのCM総量×映像表現のインパクトにThe Balanced Management of a Business Brand Concept and the Efficiency
: A Case of “KONDO SANKO CO.LTD”
事業ブランドコンセプトと効率性の天秤経営
よって「近藤産興」が地域消費者の脳裡に強く刷り込まれていることは想像に難くな い。もうひとつの理由は,徹底した地元密着の経営方針であろう。営業活動,顧客 ネットワーク(営業は静岡,三重,岐阜を含めた東海エリアまで)は勿論,本社,3つ ある工場(うち一ヵ所産廃処理プラント),6つある機材センター全てが名古屋近隣, または愛知県に置かれている。 近藤産興は,1947年 11月に個人営業「近藤塗装店」として創業された。現在も代 表として経営にあたっている創業者・近藤成章社長 14歳の時であった。その後 1964 年9月改組,会社設立を経て,1967年5月に現在の「近藤産興株式会社」に社名変更 された。その間 1959年の伊勢湾台風襲来後の被災地での救援活動を通じて実感した, 建築資材等の「貸出ニーズ」に着眼したことから,現在の主力事業である㆑ンタル事 業に経営の舵取りをしていくこととなる。2014年 12月期決算における年商は,56億 4,200万円,営業利益4億 4,300万円,純利益3億 1,700万円,社員数 210名の企業に 成長している。
1-2.創業者の特性と事業ブランドコンセプト
本稿執筆に先立つ2016年1月下旬,筆者は近藤産興・近藤成章社長(取材時 81歳) に面会し,沿革をはじめ,幼少期の頃の考え,起業時点や事業拡大時点,どのような 環境下で,どのようにこれまで決断を下してきたのか,現在に至る経営の理念や方針 等についても事細かく膝を突き合わせてインタビューさせていただいた。 図1.「近藤産興」営業用名刺の一部を抜粋 近藤産興は1964年の会社設立時から一貫して,TVCMで使用されているキーメッ セージ「何でも貸します」というフ㆑ーズを掲げ続けている。その一貫性から,「近藤 産興」=「何でも貸します」というブランド連想を起こさせるくらいに消費者や顧客の頭に刷り込まれている。その徹底ぶりは,図1にあげたように,社長をはじめ社員 の営業用名刺全てに朱色で印刷されている。また本社社屋の壁面にも大きな朱色文 字で書かれるとともに,社屋沿道にも看板が多数設置されており,往来の人々に長年 印象付けてきた。とりわけ,一部の「何でも貸します」の文字が逆さま4 4 4になっている ところが大変奇抜で,最初に見た人は驚き,そしてふっと笑みを浮かべ,強く記憶す る。このある意味常識外の突拍子もない発想について近藤社長に伺うと,昔から「と にかく他の人と同じことをするのが嫌い」と平然とおっしゃるのである。そもそも社 名の『産興』も,『興産』ではありふれているので,「逆さま4 4 4にした」とこれまた平然と 言い切る。また近藤社長は大変な意地っ張りで,「何でも貸す」と言った以上何でも 揃える,という。1988年「ぎふ中部未来博」への協賛を行うとともに,「スペースシャ トル・㆑プリカ」を出展する際には,NASAから設計図を取り寄せ,海外で製作。製 作・運搬費用は数億円に上ったとのことである(費用回収はできず,さらにイベント 後の保管費用がかさむことから解体することになり,経営に大きな負担となったと のことである)。 この「何でも貸します」は,謂わば,近藤産興の「事業ブランドコンセプト」と言え るものであり,顧客の頭に強烈なイメージを植え付ける。さらに近藤社長は「顧客に 真に役立つ会社」を目指すとも語っており,このことは顧客の課題解決のためのパー トナーとして存在し続けることで価値を生むという宣言でもあろう。しかし,その 一方経営全体の観点からは,「何でも貸します」という価値の実現は,そのために「何 でも揃える」「無い物は調達する(作る)」という非効率性(非収益性)を同時にもた らす,「ト㆑ードオフ」状態を生む。
1-3.本稿の目的
本稿では,「何でも貸します」という価値の実現と経営の非効率性との狭間(はざ ま)で,どのように収益をあげてきたのか,市場や業界構造,事業方針,経営者の特性, 近藤産興・本社電算課からお借りした販売データ等を分析・俯瞰等を交え,その経営 実態を明らかにしたいと考える。2.レンタル市場および業界の概観
2-1.「レンタル」事業の定義
㆑ンタル事業は,経済学的分類(財の分類)からは,有形財(または有体財形ある商 品の所有権が販売先に移転する)ではなく,無形財の一種である「利用権」の販売と なる。さらに有形財を一定期間利用者が使用する権利を販売することになる「有形 財利用権」の提供であり,ホテル業,㆑ンタカービジネス,DVD㆑ンタル業などをは じめ,他の有形財利用権を顧客に販売する事業と定義される(図2)。近藤産興にお いては,この有形財利用権の販売と併せて,あるいは有形財利用を促進する目的か ら「サービス」提供も行っている。具体的には催事・イベント用道具一式を貸出す際 の運搬をはじめ,イベント会場の設営や撤収作業,場合によっては,イベントにおい て着ぐるみの人員や太鼓の叩き手を社員自らが行うことなどもあるという。また, ㆑ンタル品を売却することもあり,こちらは有形財の販売ということから「卸売・小 売業」も営んでいるということになろう。㆑ンタル事業の大きな3つの柱として,① 建設機械・資材㆑ンタル,②商品㆑ンタル,③介護用品(ケア)㆑ンタル事業に区分け している。加えて,さらに関連する2つの事業として,イベントに関連するサービス 全般を行う,④イベント事業,建設機材㆑ンタル事業から派生する産業廃棄物の運搬・ 廃棄を行う,⑤産業廃棄物処理事業,と計5つの事業を行っている。㆑ンタル事業が 全体の62%(2014年決算資料)となっている。 図2.財の分類 山本(2007)に筆者加筆修正混同されやすいビジネスとして「リース」業がある。㆑ンタルもリースもいずれも 有形財の所有権は顧客に移転はせず,それぞれ㆑ンタル元企業,リース元企業に所有 権は残る。㆑ンタル事業は,ひとつの有形商品を比較的短期の利用と複数回(または 複数顧客)に貸し出すことで,結果として有形商品の新品購入価格をペイし,且つ 保管・管理に係る費用や人件費,営業利益その他を生産することを前提とするビジ ネスであり,㆑ンタル価格と共に貸出の「稼働率」が重要な経営指標になってくる。 見方によっては「シェアリング」にも近いモデルであろうか。また短期貸出のため, 商品の貸出期間外の保管・管理責任は㆑ンタル事業者側にある。一方,リース事業 は,商品の所有権をリース事業者に残したまま,リース先に長期間貸し出すことで新 品購入価格をペイし,顧客管理に係る費用やその他人件費,営業利益等を生産するこ とを前提とするビジネスであり,リース価格の設定と共に金利等が重要な経営指標 になる点において,「金融業」側面の比重が高いと言えよう。また商品の保管・管理 責任はリース先顧客側にある。㆑ンタルもリースも,顧客側(特に法人顧客)にとって は資産の固定化から逃れ,且つ経営の効率化を図れる点において,いずれもメリット があるが,特に㆑ンタルは「必要な時だけ」使用することができ,㆑ンタル事業者が 保管・管理・メンテナンスを担うことで,それらコスト負担,手間負担がなく,自由 度が高いというメリットが期待できると言えよう。ちなみに会計処理上のメリット としては,㆑ンタル,リースいずれの利用権料も顧客側の法人税法上損金処理が可能 である。
2-2.レンタル業界構造と有力企業市場・業界の概観
前項に示した㆑ンタル事業定義から市場や業界を画定する。㆑ンタル事業は,㆑ン タルする商材・サービスの種類によって大まかに分類されていると思われる。近藤 産興の主力事業である建設資材等の㆑ンタル,関連の修繕・工事等を市場とするとす れば,図3に示したような大小,広域・地域含め約 2,000社,約 8,000億円市場とい うデータがある。最大手は,株式会社アクティオ(東京・中央区未上場)である。こ れに続くのが,株式会社カナモト(札幌市中央区),西尾㆑ントオール株式会社(大阪 市中央区),さらには三菱商事グループの株式会社㆑ンタルのニッケン(東京・千代 田区 未上場)といった大手企業である。これら広域に事業展開している4社を中心 に,中堅規模の事業者,さらに地場のみで展開している事業者が存在し,近藤産興は, 東海エリアで営業していることや事業規模等から,中堅事業者というよりは,むしろ 地場の事業者の大手処といったポジションではないだろうか。近藤社長は,「東海ブ ロックから拡大しない」と明言しており,地場産業としての発展,徹底した地元還元 意識を持たれていると思われる。また,建設機械・資材㆑ンタル事業の他の事業,商品㆑ンタル,介護用品(ケア)㆑ンタル,イベント等を展開している点において,事業 ごとには競合していないわけではないが,会社全体としてはユニークな存在であり, 建設機械・資材㆑ンタル市場に含まれつつ,他の㆑ンタル市場に跨って事業をしてい ると捉えられる。この点について,近藤社長は「競合らしい競合はいない」と言われ ると同時に,「競争による価格勝負は一切やらない」とも明言している。とすれば,地 場の長年にわたる強固なブランドと,顧客ネットワークを保有し,ある意味市場ニッ チな存在として,他の事業者とは一線を画していると思われる。また前述の建設機 械・資材㆑ンタル広域大手4社をはじめ,多くの同業者に対しては,競争側面という よりは,商品を㆑ンタルするコンプリメンター(補完事業者)としての側面も併せ持 つ。「何でも揃っている」とは限らない他の事業者も近藤産興を頼る場合もあり,こ れらを含めて「競合らしい競合はいない」と近藤社長が言われたのだと解釈できる。 図3.(建機・資材)レンタル市場
2-3.現在までの事業概況
■レンタル商材への投資 現在,近藤産興では,3万種類 100万点の㆑ンタル商品アイテムを揃えている。イ ベントに使用するスプーン1本から船舶(8隻保有),ジェット機に至るまで,あま りにも幅広い品揃えである。個人商店から,現在まで,顧客の要望に応えた結果, 出所: 株式会社カナモト2011年企業説明会資料に筆者加筆修正。 (数値は経済産業省 特定サービス実態調査,各社有価証券報告書・HP等から算出)広域大手 27%
・アクティオ(未上場) ・カナモト(東証1部,札証) ・西尾レントオール(大証1部) ・レンタルのニッケン(未上場)広域大手 27%
・アクティオ(未上場) ・カナモト(東証1部,札証) ・西尾レントオール(大証1部) ・レンタルのニッケン(未上場)中堅業者 24%
・コマツレンタル(未上場) ・レック(未上場) ・太陽建機レンタル(未上場) ・共成レンテム(東証2部) ・サコス(JQ) ・ニッパンレンタル(JQ) ・ほくとう(未上場)など中堅業者 24%
・コマツレンタル(未上場) ・レック(未上場) ・太陽建機レンタル(未上場) ・共成レンテム(東証2部) ・サコス(JQ) ・ニッパンレンタル(JQ) ・ほくとう(未上場)など地場業者 49%
・近藤産興 など地場業者 49%
・近藤産興 など 広域大手を含め 約50社 レンタル業界シェア (全国約2,000社,約8,000億市場)少しずつ増えたとのことだ。つまり急拡大はせず,できるだけ利用ニーズのある,稼 働率が期待できる品揃えに配慮している。「何でも貸します」のメッセージ,先のス ペースシャトルの㆑プリカ製作という大胆な決定の裏では,一方でできるだけ無茶 な投資はしない堅実的な姿勢も垣間見える。 ■顧客 取引顧客の実態についてであるが,コミカルなTVCMから一般の消費者対象の取 引割合(B2C)のボリュームがある程度高いと想像していたが,実際には,概ね法人 顧客:一般消費者= 92:8ないしは93:7と圧倒的に法人取引(B2B)が主流であった。 さらに地域の大手企業,有力企業との長年の取引関係,信頼関係が醸成され,確固と した顧客ネットワークが形成されている。 ■協力企業との関係 商材の仕入れ,修理・修繕,工事等,協力企業は長年にわたる取引関係にある。さ らに取引においては原則,一貫して全て現金支払いをしており,その点においても同 業他社に比して近藤産興との絆は強固となりうるであろう。法人顧客から近藤産興 への支払いは,大手企業の割合が多いこともあって,ほとんど手形支払いであり,実 質的にはこの点も非収益性部分となっていると考えられる。 ■組織・社員との関係 近藤社長は,多くの権限と責任を現場に委譲する姿勢を貫いている。また社長自 らも社長室にいることは皆無であり,日常的に会社内を巡回し,常に意見を自由に言 える,風通しの良い組織を実現している。驚いたことに結構重要な意思決定に係る 案件も,会議を開かず立ち話㆑ベルで話し合って決めるそうだ。そうすることで,ト ラブル等が拡大する前にスピーディに解決することや,ブラックボックスがないこ とから情報の流れが良く,忌憚のない関係が築けているとのことである。仕事の大 変さに比して社員の離職率が低いと言ったことは,その証左ではないだろうか。 ■社会・地域との関係 近藤産興は,地場に密着し,様々な金銭的,物質的貢献を果たしてきた。前述した 「ぎふ中部未来博」での協賛をはじめ,「愛・地球博」においては,社内にプロジェク トチームを設け,地域貢献している。中部国際空港開港時には,支援企業として多額 の出資をし,また社会事業団等への寄付なども積極的に行っている。また取扱商品 の再生利用も推進しており,会社をあげて使えるものは直して使う姿勢である。加 えて,産業廃棄物処理事業に携わっていることからも,地域環境への配慮は大きいも のがある。
3.効率性の検証(商品レンタル実績と顧客利用実績の集計)
3-1.事業効率性
近藤産興は,「何でも貸します」という事業ブランドコンセプトに対し,3万種類 100万点にも及ぶ㆑ンタル商品アイテムを揃え,顧客にとっての価値を提供してい る。また一旦商品の品揃えをすれば良い,というわけではなく,消耗品,経年劣化す るもの,流行やト㆑ンドによって価値を損なうものなど,資産価値の減衰が事業の前 提となる。さらに買い替えなければならないものも決して少なくない。例えば,「着 物」などの衣類は,値が張るにも関わらず,人気の傾向も変化するため頻繁に買い替 えていると言う。つまり「何でも貸します」の価値実現には,その背後に膨大な非効 率があるということに他ならない。この点に関して,近藤社長の了解を得た上で,近 藤産興・本社電算課からお借りした販売データ等(約 500社の顧客㆑ンタルデータお よび約 6,000点の商品アイテム㆑ンタルデータ)を集計し,検証を行う。 図4.近藤産興 顧客別売上集計 A 取引額分布表 (2015 年 11 月-12 月 商品レンタル,イベント,ケア事業) Amount of business: ¥ Number of Customers (筆者作成)図5.近藤産興 顧客別売上集計 B 取引額累積表 (2015 年 11 月-12 月 商品レンタル,イベント,ケア事業)
3-2.集計結果
■顧客別売上集計 図4は,顧客別売上集計・取引額分布の結果表である。全体のグラフは,所謂「べ き分布」に則っている。すなわち,一部の高額取引顧客によって全体の売上があがり, その他多くの少額取引顧客がロングテール状に存在している。さらに図5では,顧 客の取引額の累積額を表している。概ね取引額上位 20%の顧客で,全体売り上げの 87.5%を占めている結果であった。 ■商品別売上集計 次に商品別のデータを見てみる。図6は,商品別売上集計・取扱い額分布の結果表 である。こちらも顧客データと同様に「べき分布」に則っている。すなわち,一部の 取扱い商品が際立って収益に貢献している反面,その他多くの商品は取扱い額が少 なく,ロングテール状に伸びている。すなわち非効率性を表す。さらに図7におい ては,商品取扱額の累積額を表している。概ね分析対象となった全体の商品アイテ ムのうちの10%の商品によって全体の84%程度の扱い額に貢献している結果となっ た。今回は,取扱いのある商品約 6,000点(取扱い金額が0円の商品数 285点を含む) Amount of business: ¥ Number of Customers (筆者作成)の集計である。これは在庫のある取扱い商品全体の1%にも満たない。逆に言えば, 実際には,この期間全く取扱われない在庫品目が 99 %以上存在しているということ である。尚,今回の集計データの対象期間は一か月間である。年間を通じてのデー タ,季節変動要因(別途「商品別月別稼働率集計」もお借りしており,参照している) は考えられるとしても,顧客別,商品別とも全体の傾向に大きな変化はないと思わ れる。 図6.近藤産興 商品別売上集計 A 取扱い額分布表 (2015 年 11 月-12 月 商品レンタル,イベント,ケア事業) これらの結果を受け,通常の経営者であれば,事業収益への非効率部分の対策に着 手するかもしれない。顧客を優良顧客に絞り,経営資源をそこに集中することを戦 略的に実行するかもしれない。あるいは,集計グラフのロングテール部分の,売上に 貢献しない㆑ンタル稼働率の低い商品アイテムを大幅カットすることで,事業ラン ニングコストの圧縮や事業の軽量化を図ることは,経営管理の定石かもしれない。 しかし,近藤産興では,このデータ集計結果は,ある程度織り込み済みなのであろう。 それにも関わらず,事業運営方針を変えようとはしない。それは,事業ブランドコン セプトである「何でも貸します」の哲学が,経営のより重要な上位概念であるからに 他ならない。 Rental items Amount of business: ¥ (筆者作成)
図7.近藤産興 商品別売上集計 B 取扱い額累積表 (2015 年 11 月-12 月 商品レンタル,イベント,ケア事業)
4.まとめ
前述の「市場・業界の概観」「事業概況」において,4C(顧客,市場競合,自社内, 協力企業)に加えて,S(社会および地域)について触れた。図8はそれらを簡潔にま とめたものである。近藤産興は,市場ニッチなポジションと簡単には築けない,知名 度と顧客,協力企業との関係を作り上げてきた。また,「何でも貸します」の言葉ど おり,実に多くの㆑ンタル商材を保有するに至った。これらは全て結果として,模倣 困難な経営体質を作り上げ,全く同じようなビジネスの新規参入者が,仮に現れたと しても,到底キャッチアップすることは不可能であるとさえ思える。また現在の市 場において事業ごとの競争相手はいても,むしろ協調相手としての関係として対峙 してきており,利ザヤを敢えて削るような血みどろのビジネスから,意識的に回避し ているのである。それら独特の市場ポジションと経営方針は,自由闊達で風通しの 良い社風によって,益々他社との違いが明確になるかのようにも感じられる。事業 ブランドコンセプト「何でも貸します」を経営の念頭に置き(強くわかりやすいブラ ンドコンセプトは,ある意味プロモーションコストを償却してくれる効果も見込め Accumulated amount Rental items (筆者作成)ると思われる),その価値を実現するために,非効率なことを承知の上で,膨大な品 揃えと管理をする。非効率部分をとにかく排除しがちな経営者が大勢いる中で,近 藤産興社長は,確固とした考えのもと,顧客価値と非効率(非収益性)を天秤にかけ, バランスをとりながら,また顧客やパートナー企業,社員,さらに社会や地域にも十 分配慮しながら,全体の調和を長年にわたり築き上げてきた。環境全体を俯瞰して 見渡せる,さりとて「何でも貸します」の文字を逆さまにするなど,お金をかけずに 宣伝するアイディアマンでもあり,森を見ながら木もしっかり見ている稀有な経営 者なのかもしれない。 図8.近藤産興を取り巻く4C+S の整理 最後に,本稿執筆にあたり,近藤産興株式会社代表取締役社長・近藤成章様,取締 役総務部長・木下昌彦様,総務部次長・芝川征夫様にはご多忙の折,長時間の取材時 間をとっていただいた。感謝申し上げるとともに,会社の益々のご清栄をお祈り申 し上げたい。 (筆者作成) , , , ,
注
1) Gross Rating Pointの略であり,テ㆑ビ放送の延べ視聴率。視聴率(Reach %)×放送回数 (Frequency)によって算出され,主に放送・広告業界において広告料金等に反映されるビ ジネス指標。