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(1)

<研究ノート>

ウルグアイ・ラウンドと

ラテン・アメリカ

神奈川大学石井陽

I.はじめに

1986年9月15日から20日まで、ウルグアイの保養地プンタ・デル・エステで開

催されたガット閣僚会議は、開催国にちなみ、第8回の多角的貿易交渉をウルグ

アイ・ラウンドと名付け、交渉の最終期限を1990年末に設定した。しかし、1990

年末に決着せずに1991年に持ち越され、さらに1991年末にも決着せず、1992年に

持ち越されて未決着のまま現在に至っている。このように交渉が難航しているの

は、今回のラウンドの交渉分野が過去7回よりも広く、画期性があるためともい

える。開催地が南半球のウルグアイということからして画期的である。従来は、

第1回がジュネーブ、第2回(アヌシー・ラウンド)がアヌシー(仏)、第3回

(トーキー・ラウンド)がトーキー(英)、第4回、第5回(デイロン・ラウン

ド)、第6回(ケネディー・ラウンド)がいずれもジュネーブ、第7回(東京ラ

ウンド)が東京、というように北半球の先進国の都市で開催されている。ラウン

ドの呼称は、始発となる開催地の地名か、中心人物の固有名詞のいずれかをとっ

てきたが、今回、ウルグアイ・ラウンドと開催国名に結び付けるよう提唱したの

(1) lま、日本代表の倉成外相(当時)であった。

従来のラウンドは、工業製品の関税引き下げに重点を置いてきたが、今回は農

業に重点が置かれ、それも単なる関税引き下げの交渉ではなく、先進国の保護農

政の撤廃という内政面にまで踏み込んでおり、これが交渉のネックになっている。

このように農業が大きく取り上げられたことは、開催国が農業国であることと無

縁ではないようだ。ECのみならず米国も、農業交渉に、関税引き下げのほかに、

-20-

(2)

非関税障壁や国内農業政策まで含めることには反対であったが、オーストラリア、 カナダ、アルゼンチンのようなケアンズ・グループ(南半球を中心とした輸出補 助金に依存しない農産物輸出国、全部で14カ国)がスクラムを組んで交渉項目に 組み入れさせた。 その一方で、先進国側が要求する新分野も交渉項目に組み入れられている。知 的所有椀、サービス貿易、貿易関連投資の3分野である。世界的にソフト化、サ ービス化が進むなかで、この分野で優位に立つ先進各国が自国の利益を守ろうと する動きだが、それは開発途上国側の国益には合わないものが多く、特にサービ ス貿易を組み入れることには、ブラジル、インドが主導する10カ国グループが抵 (2) 抗した。しかし、農政Iこまで踏み込む農業交渉を組み入れさせた反面、先進国、リ の要求項目も受け入れて出発することになったのは、先進国と開発途上国間のギ ブ.アンド・テイクの妥協といえよう。 本稿は、交渉目的にみるウルグアイ・ラウンドの特殊性に始まり、ラテン・ア メリカがこのラウンドに寄せる期待と不安、米・EC間の対立のなかにおける対 応、ガ.ソト哲学の原点との関連の順に考察を加えることを目的とする。問題は、 昨年11月10日の第28回本学会全国大会で口頭発表した当時との間にもすでにこう 着状態なりに変化がでており、uptodateに調整しなければならないが、本稿と してはそれが限度であり、内容的に1992年5月現在で締め切ることとしたい。本 稿が活字になった時点で情勢はまた変わっているであろうが、未決着の問題でも あり、本稿を研究ノートとした次第である。 Ⅱ、交渉目的にみる特殊性 言ル気と上 宣デにの途

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-21-

(3)

祉の改善を達成すること。この諸目 的は、就中、貿易障害の漸進的な撤 廃および世界貿易を律するための国 際的枠組みの改善を通じて達成され 得る。 国の利益となるような世界貿易の一 層の自由化と拡大を実施すること。 それには関税、数量制限、その他の 非関税措置と障壁などの削減と撤廃 による市場への接近の改善が含まれ る。

ガット協定の前文に盛られた究極の目的には、東京宣言のなかの交渉目的のほ

うがより合致している。ガットの前文は、「貿易および経済的努力の分野におけ

る相互関係が、生活水準を高め、完全雇用ならびに高度の且つ着実に増加する実

質所得および有効需要を確保し、世界の資源の完全な利用を発展させ、ならびに

(5)

貨物の生産および交換を拡大する目的をもって導かれるべきであること」と高ら

かにうたっているが、そこには貿易の自由化が諸国民の生活水準を高め、諸国民

をより豊かにし、幸福にするという哲学がある。このガット哲学には、19世紀的

な予定調和の甘さがあるが、高い理念ではある。東京宣言はこのガット哲学を受

けて、「諸国民の生活水準と福祉の改善」を目的に掲げたが、プンタ・デル.エ

ステ宣言の方は、同じ箇所が「すべての国、なかでも開発途上国の利益となるよ

うな世界貿易の一層の自由化と拡大」に変わった。すなわち、「諸国民」という

単位から「すべての国」、特に「開発途上国」という国単位にすり替えられた。

農業交渉を大きく取り入れるにあたり、このすり替えが必要であったのではない

か、と思われる。農業交渉を大きく取り入れると、ある国の農民の生活水準は高

められるであろうが、ある国(例えば、保護農政下の国)の農民は、その生活水

準を落とすことを余儀なくされるであろう。そこで「諸国民」を「国」にすり替

え、もっとも受益度の高いと思われる「開発途上国」の利益を強調したのであろ

う。 、、ラテン・アメリカの期待と焦燥

近年のラテン・アメリカの経済はひどく落ち込んでおり、「失われた80年代」

といわれるが、自助努力の欠如にも問題があるとはいえ、時期的に米国、ECが

保護農政を強化した80年代と重なり合っていることにも注目を要する。ラテン・

アメリカにも温帯産品輸出国と熱帯産品輸出国があり、ウルグアイ・ラウンドへ -22-

(4)

の期待は必ずしも同じではないが、結論的にいって温帯産品国は米・ECの輸出 補助金の撤廃ないし削減に期待し、熱帯産品国は熱帯産品の輸出についてECと のロメ協定の下に特恵措置を享受しているACP諸国(アフリカ、カリプ、太平 洋の途ト国)とのアンバランスを突き崩すことに期待を寄せている。ラテン・ア メリカ20カ国は、熱帯、亜熱帯、温帯の気候帯にまたがり、工業化の進度にも格 差があるので、重点の置き方は国別に一様ではないのだが、大枠において、南北 問題としては南の立場をとり、ガット既加盟国については、プンタ・デ.エステ 憲章に盛られた交渉目的と交渉項目に沿う決着に期待を寄せていることにおいて は一致しているといえよう。主要項目を追ってみよう。 1.米・ECの輸出補助金の撤廃ないし削減 これに大きな期待を寄せているのは、ケアンズ・グループ参加国で、ラテン・ アメリカでは、アルゼンチン、ブラジル、チルコロンピア、ウルグアイの5カ 国である。特にアルゼンチンの期待は大きい。 アルゼンチン外務省の国際経済関係担当次官アリエート・アルド・グアダグニ (AlietoA1doGuadagni)はスペインのABC紙に寄稿した小論のなかで、(1) かつてラテン.アメリカ市場は閉鎖的であったが、ここ3年間で関税切り下げと 数量制限の削減を断行しているので、先進国側も互恵的にこれに応え、特にウル グアイ.ラウンドを通じて開発途上国からの輸出に対しその障壁を撤去すべきで ある。(2)1960年代より先進国側は非関税障壁を高めており、開発途上国から の輸入の3分の一はその影響を被り、年間600億ドルの開発途上国からの輸出減 になっている。現在、先進国側の関税障壁は平均的に低くなっているが、非関税 障壁は高い。そして非関税障壁の引き下げにガットは無力であった。(3)世界 の貿易の'0分の一は、農業貿易である。先進国側は、補助金とその他の保護措置 で農業市場に積極的に介入している。ECは、割高な農産物価格を消費者に課し、 800万人の農民を世界の自由市場から隔離している。日本、斡国も輸入に巨大な

障壁を設けている。スイス、カナダ、米国も保護主義的行動をとっており、農民

に寛大な補助金を供与している。先進国は年間3000億ドルを農業補助に投入して いる。農業貿易が自由化されれば、開発途上国の輸出農産物の価格が20%引き上 げられるので、途上国には年間350億ドルの収入純増をもたらすであろう。(4) 単に途上国の利益になるだけでなく、EC、米国、日本の利益にもなろう。EC では工業における雇用増と生産増をもたらすとともに食費を引き下げ、日本では -23-

(5)

地価と食費を引き下げ、米国では財政赤字の減少と農産物輸出の10%増、約400

や)

億ドル以上のタMlf収入端をもたらすであろう、というような趣旨を主張している。

日本のコメが目H1化されれば地価まで下がるというのは(農地の地価が多少下が

るとしても)、自由貿易の過大評価であるが、およそ他国への認識はお互いにそ

のような浅さがある。アルゼンチンはコメの生産国ではないので、日本のコメを

敵視する必要はないはずだが、どこの国にも市場閉鎖の例外を主張する理由はあ

るので、ひとつでも例外を認めるわけにはいかないということであろう。米国・

ECの輸出補助金付き小麦輸出になると、アルゼンチンの被害はもっと直接的で

ある。かつては第一次産品国は第一次産品の輸出によって得た外貨で先進工業国

より工業製品を輸入するという国際分業のlMi図があったが、いまそれがljlれて、

先進国が保護農政の所産としての農産物の生産過剰に押されて農産物の輸出国と

もなり、しかも内外価格差調整のための輪llI補助金付きでダンピング輸出してく

る強敵と化したのだから、輸出補助金の廃止、廃止が無理ならば大幅な削減を要

求するのは当然である。

ブラジルは、その国土が温帯、亜熱帯、熱帯にまたがっているが、大豆の大口

輸出国として米.ECの輸出補助金の被害を被っているので、輸出補助金を非難

する立場をとっている。輸出補助金といえば、米・ECがその削減幅をめぐって

対立し、農業交渉が暗職に乗り上げている大きな要因であるが、米国の矛府は気

前の良い削減案を掲げておきながら、あいかわらず輸出補助金付き輸出を実施し

て、他国の市場を侵食していることである。

例えば、1991年5月初旬、米国はブラジルに年間70万トンの小麦を補助金付き

で輸出すると申し出た。そして同年6月に米腱務省は、7月1日から8月31日ま

での朔間に穀物輸出3社が申請した12件の対ブラジル小麦輸出約17万4000トンに

対し、トンあたり28ドル15セントの輸出補助金を付けることを決定した。当時の

小麦のトンあたりFOB(本船渡し)価格は、米国でもアルゼンチンでも95ドル

から100ドル見当であった。つまり3分の一が補助金であり、その分、割安にな

るのであるから、アルゼンチンは太刀打ちできない。しかも、アルゼンチンにと ってブラジルは伝統的な小麦の輸出先である。

アルゼンチンのディテラ外相は同年6月にワシントンに赴き、マデイガン米農

務長官と会談し、対ブラジル補助金付き小麦輸出をただちに撤回するよう要請し

たが、ウルグアイ・ラウンドのなかでECが米国の要請している輸出補助金の削

減に応じるまで米国は補助金付き輸出を継続するというのが米側の回答だった。

-24-

(6)

ただウェーバー(自由化義務免除)品目である落花生と砂糖の輸入枠の拡大に応(7) ずろということでお茶を濁した。ブラジル政府Illlの反応だが、本音としては米国 の70万トン輸出補助金付き小麦には魅力があった。インフレ抑制の一助ともなる からである。しかし、同じケアンズ・グループの一員としての立場があり、特に 同年7月初旬ブラジルのマナウスで開催されたケアンズ・グループの会議は先進 工業国の農業保護を強く批判する声明を発表したところであり、ブラジルとして は米国からの輸出申し出は受け入れるが、外国産の補助金付き農産物を輸入する (8) とき(よ、補助金効果を帳消しにする相殺関税を課することで対処した。しかし、 ブラジルの輸入業者は、米国の補助金付き小麦の輸入契約は政府が相殺関税を課 する政令の公布以前に取り結ばれたものであり、遡求適用は憲法が保障する法律(9) 不遡求の原ロ11に反すると抗議した。法律論としては正しい。 同じ頃、米国のイエメン向け補助金付き小麦30万トンの輸出はオーストラリア (10) の伝統的市場を奪うものとして、オーストラリアも米国Iこ抗議している。 米国はケアンズ・グループとスクラムを組んで、IECの輸出補助金付き輸出を 非難しておきながら、自国は決着するまで補助金付き輸出を続けようというのだ から、言行不一致の矛盾がある。決着が遅れれば、その間ずっと被害を受けるの で、ラテン・アメリカの温帯農産物輸出国が焦燥感をつのらせているのは無理も ない。 2.熱帯産品の完全自由化 プンタ・デル・エステ宣言の中で、熱帯産品の関税については精一杯の自由化 (thefullestliberalizationoftradeinLropicalproducts)が目標とされ ている。目標が達成されるとすれば、ロメ協定の特恵措置を実質的に突き崩すこ とになろう。ラテン・アメリカという地域単位でみれば、20カ国のうちロメ協定 に加盟している国は、1989年12月25日に第4次協定に加盟したカリブ海上のドミ ニカ共和国とハイチの2国だけだが、中南米という地域単位でみれば、33カ国の うち15カ国が加盟していることになり、非加盟lIilとのアンバランスは問題である。 ラテン・アメリカとしては無差別の自由化が望ましく、1990年11月20日、EC が、ボリビア、コロンビア、ペルー3国原産のコーヒー、その他の熱帯産品に、 コカの葉の代替作物開発の奨励策として、輸入関税を4%引き下げると発表した(ii> が、中米諸国はガットの無差別の基本原Nilに反すると抗議した。 中米は、ロメ協定の差別にもかかわらず、バナナの対EC輸出では健闘してい -25-

(7)

る。ドイツを除くEC諸国はラテン・アメリカからのバナナ輸入に20%の関税を 課し、数量制限も設けているが、中米の方がカリブ海のI日英植民地諸国よりもコ スト安であり、|日英領のコストが1箱あたり10ドルに対し中米が6ドルという差

がある。ひとつには、中米のバナナ・プランテーションが多国籍企業の経営で、

大規模かつ高度に機械化されている上、低賃金労働を使役しているのに対し、カ

リプ海の|日英領は小農経営であることがコスト差の原因とされている。中米が世

界のバナナ市場の20%を占めているのに対し、カリブ海の|日英領は1%弱である

が、ロメ協定下のACP諸国全体としては40%のシェアを持つ。コスタリカは、

ガットにECはバナナの対外共通関税率を14%とし、その関税収入をカリブ海1日(12)

英領のバブーナ農家の助成Iこあててはどうかという提案をしている。14%なら十分

に引き合うという自信に立っての提案であろう。

本年(1992)3月、今まで例外なしの関税化のドンケル事務局長案を支持して

きたはずのECがバナナの関税化を空欄にして国別リストをガットに提出してい

たことが判明し、日本の農水省はコメ問題に関連し、まさに藁にもすがる思いで

ECと共同で一律関税化の例外措置設定を主張できるかどうかを検討している。

空欄にした理由は、英仏西諸国が|日植民地諸国の小規模バナナ農家を保護するた

(13》

めであるとわが国では報道されている。しかし、 ̄連のスペイン紙の報道カユら得

たところでは、そればかりではなく、大西洋上にあるスペインのカナリア諸島、

ポルトガルのマデーラ島、カリブ海に浮かぶフランスの海外県グアグループ島と

マルティニック島にそれぞれの自国のバナナ農家とその労務者がおり、その保護

も強い動機になっている。カナリア諸島の場合、年間40万トンのバナナを本土と

ヨーロッパに出荷しているが、関税および数量制限が撤廃されると、中米からの

バナナ輸入にコスト的に太刀打ちできず、約8万人の労務者が失業の危機にさら

されるので、島民の代表がスペインのソルペス農相にバナナを国別表から外すよ

う陳情し、農相がこれを受けてECに国別表の例外とすることを認めるよう要請

(14) したという経緯があった。特(こスペインと中米との賃金格差が問題になった。19

86年のEC加盟以降、スペインの賃金と物価一般は急速にECのそれに調整され

てきており、それが中米のそれとの間に大きな開きをつくっている。

日本にとっては蕊をもつかむバナナの関税化例外措置だが、ラテン゛アメリカ

にとってはスペインの裏切りともとれる行為である。スペインはEC加盟にあた って、決してラテン.アメリカを見捨てるわけではなく、ECとラテン゛アメリ カとの橋渡し役を果たすことを度々強調してきた。事実、ドミニカ共和国とハイ -26-

(8)

チを第4次ロメ協定に加盟させるにあたっては仲介の労をとった。1992年は新大 陸到達500年祭の年でもあり、スペインとしてはより橋渡しの実績を挙げたいと ころであろう。しかし、自国の一部分であるカナリア諸島の島民の利益と中米の それを秤にかけたときに、あえて前者をとったのであろう。ひとつには、中米の バナナ農園は多国籍企業(具体的には米国資本)の経営によるものだが、関税切 り下げと数量制限撤廃で利益を受けるのは多国籍企業という意識がスペイン側に あるのであろう。熱帯産品の完全自由化というプンタ・デル・エステ宣言の目標 も現実との間にはかなりの距離がある。上記のコスタリカの提案にみるように、 ラテン・アメリカ側も完全自由化の満願がかなうとは考えていないようだが、こ れからの交渉でどれだけ理想に近づくかというところであろう。 3.衛生と検疫の障壁の撤去 熱帯産品輸出の非関税障壁のひとつとして途上国側は衛生と検疫の隙壁の撤廃 を挙げており、プンタ・デル・エステ宣言のなかにも、この障壁を最小にすると いう-項が挿入されている。 被害意識が最も強いのは米国と境を接するメキシコで、検疫の基準は輸入国の 主観で決まるようなものだという。ちなみに、メキシコのアポガドは、1914年以 来米国への輸入が禁じられている。理由はアポガドに付着する害虫のためという ことになっているが、病虫害ならとっくの昔に解決済みである。真相は、カリフ ォルニア産のアポガドと競合するからであり、メキシコの方に競争力があるので、 カリフォルニアの生産者が強力なロビーを持って防衛しているというのである。 同じことがマンゴ、トマト、柑橘についても発生しているので、米国内の国内市 場の需給状況いかんによって、説明のつかない検疫上の理由によって臨時に輸入 (15) 制限が加えられることがあるという。ちなみに、検疫の厳しい日本Iま、メキシコ のアポガドを輸入している。 このメキシコの言い分が普遍妥当的なものかどうかであるが、科学的に納得の いく共通の基準を設けることは必要であり、それが設定されるためにウルグアイ ・ラウンドはよい機会といえるであろう。 米・メキシコ2国間の問題としては、本年(1992年)中に締結が予想される、 米加墨の北米自由貿易協定(NAFTA)のなかでなんらかの解決を見いだすも のと思われる。 -27-

(9)

4.知的所有権への対応 知的所有権に関する開発途上国一般の主張は、1990年3月15,16日の両日、ニ ューデリーで開催された第三世界知的所有楠会議(laConvenciondePatentes delTercerMundo)の宣言に集約されている。この骨子を紹介する。近年の科学

と技術の史上空前の目覚ましい進歩は、人類の福祉を高める幅広い可能性を開い

たが、その福祉は国際社会の構成国のなかで偏在しており、先進国と開発途上国 の格差はますます深まった。70年代には南北間でこの格差を調整する努力がUN CTADの場で行われ、先進国も討議に加わっていたが、80年代初期の世界的な

景気の低迷とともに先進国側からブレーキがかかり、米国を筆頭とする先進国側

から交渉の場をUNCTADからGATTの場に移した。ガットの場に移ってか

らはすべてが第三世界の必要性に反するものになった。知的所有権と貿易とは直

接の関連をもたない。ガットは知的所有権に関する駆け引きをする場として適当 ではないので、討議の場をUNCTADに戻すことを先進国は承諾すべきである。 科学は人類共通の遺産である。しかし、技術は一部の先進国の独占するものとな り、その使用許諾に対価をとって利潤をあげているが、第三世界の開発に資する よう技術の漸進的な非商業化こそ必要であるしというような趣旨のものである。 ラテン・アメリカからは、ブラジル、コロンビア、キューバ、ベネズエラの代表(16) 者力K参力Uしている。 しかし、そうはいっても、知的所有権を保護しなければ先進技術が入ってこな いので、個々の国は現実的に対応するようになっている。例えば、先進国におけ るバイオテクノロジーの発達は純熱帯的な自然条件でない所でも、熱帯産品の栽

培を可能にしており(フロリダ、カリフォルニアなど)、熱帯産品の特産性が危

うくなりつつある。農業にもバイオなどの先端技術が必要であるが、植物新品種 を含んだ知的所有権が法的に保護されないと技術が移転してこないであろうから、 (17)

その法的な整備が必要であるという認識は、少なくともメキシコにI土あるようだ。

1991年6月27日、メキシコは工業所有権の保護と振興に関する法律(Leyde

FomentoyProtecci6ndelaPropiedadlndustrial)を公布し、特許保護期間 を14年から20年に延長、医薬品の特許を認めるなどの、ウルグアイ・ラウンドで 先進国側が要望している線に大きく歩み寄った工業所有権法の改正を行った。ブ ラジルもほぼ同趣旨の改正法案を政府は国会に提出しているが、国会審議は難航 している。近く採決されるであろうが、1992年3月末現在において下院は689の(18) 修正を付した。プラジノレは、1988年に、市場の閉鎖性、米国の医薬品特許を認め -28-

(10)

ない不公正慣行の国として米包括通商法スーパー301条該当国に指定され、ブラ ジル製の医薬品、パソコン、紙製品の対米輸出に100%の報復関税を課せられた という苦い経験をもっているので、政府としてはメキシコ並みの改正をしたいと ころであろう。ラテン・アメリカ2大国の法改正は、ウルグアイ・ラウンドの知 的所有樋交渉における途上国側の足並みになんらかの影響を与える可能性がある。 5.多国間繊維取り決めの廃止の期待 ラテン・アメリカ諸国の工業化の進度には国別の格差が大きいが、こと繊維で は小国でも一応の水準があり、低賃金を武器に国によっては先進国を上回る競争 力をもっている。それだけに現行の多国間繊維取り決め(MFA=Multi-Fibra Arrangementの略)について、ラテン・アメリカは繊維製品の自由貿易を阻害す るものとしてその撤廃を強く求めてきた。米国はMFAに基づいて二国間協定で 国別に数量制限の協定を結んできたが、中国、香港、韓国、台湾からの繊維輸入 に約50%の枠を設けているのに対し、メキシコが2.6%と明らかにアジア重点に 《19) なっている。 見通しとしては、1993年から10年間で段階的にMFAを撤廃することが繊維交 渉の議長案に明記され、最終的に自由貿易原則に統合していく方法に統合したよ うであるが、ラテン・アメリカの繊維産業にとっては朗報といえよう。 6.サービス貿易への対応 SELA(ラテン・アメリカ経済機構)の会議(1984年キト、1986年ブラジリ ア)ではサービス貿易の明確な定義、その信頼し得る統計的な裏付けがまず必要 という現段階で、これをラウンドの場で交渉するのはまだ時期尚早、という趣旨 (20) の決議がなされており、前述のように、プンタ・デノレ・エステの閣僚会議で、ブ ラジル、アルゼンチン、メキシコなどがインドと組んでサービス貿易の自由化を 交渉項目に含めることに強く反対した事情の背景となるものである。表面的な理 由であろうが、この拒絶反応的な姿勢は現在でも崩れていない。 Ⅳ、むすび ウルグアイ・ラウンド開始時の1986年9月の段階でラテン・アメリカ20カ国の うち、ガット既加盟国は、アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、ドミニ -29-

(11)

力共和国、ハイチ、メキシコ、ニカラグア、ペルー、ウルグアイの10カ国だった。 関税障壁、非関税障壁ともに高い国が多いので、加盟とともに障壁の引き下げを 義務づけられることに鍔曙があったのであろう。どこの国にも加盟のメリットと デメリットを秤にかけてメリットの方が大きければ加盟する。メキシコはプンタ ・デル・エステ会議の2カ月前にかけ込み加盟している。ウルグアイ・ラウンド 開始後は、1990年にボリビア、コスタリカ、ベネズエラが、1991年にグアテマラ が新規加盟し、パナマが加盟申請中である。いずれも開発途上国の国益を配慮し たウルグアイ・ラウンドの決着に期待しての加盟であろう。ウルグアイ・ラウン ドがどう決着するか、今なお不透明な状態であるが、決裂しない限り、開発途上 国にとって現状よりは有利になるのであろう。 しかしラテン・アメリカの場合、国単位で受益すればそれで足りるというもの ではない。例えば、バナナ輸出に際し、輸入国側の関税と数量制限が撤廃ないし 大幅に削減されれば、中米やエクアドルの輸出国とプランテーション経営者(多 くは多国籍企業)の収入は増えるであろう。その収入増が賃金引き上げとなって 労務者にも還元されないと、貧富の格差をより広がることになりかねない。貧富 の格差は、ラテン・アメリカ社会のガンである。 ウルグアイ・ラウンドは、東京宣言にはあったが、プンタ・デル・エステ宣言 で落とした「世界の諸国民の生活水準と福祉の改善を達成すること」という理念 を取り戻さねばならない。それはガット協定の前文からいって、ガット哲学の原 点であるはずである。 【注】 (1)GATTActivitiesl986-AnAnualReviwofTheWorkofTheGATT (Geneva,l987lP、9. (2)C,MichaelAho,詞LaRondaUrguay:GCuAlesserdnlosresultados?” BlancaTorresyPamelaSFalk(coordinadores),LaAdhesi6nde M6xicoA1GATT(ElColegiodeM6xico,1989)P、338 (3)東京宣言の関連箇所の訳文は、東京ラウンド研究会編『東京ラウンドの全 貌』(日本関税協会、昭和55年)P、50.所載による。 (4)プンタ・デル・エステ宣言の訳文は注(1)のGATTActivitiesl986所載 の原文の拙訳。 -30-

(12)

ガット協定前文の訳文は、内田宏、堀太郎『ガヅトー分析と展望一』 (日本関税協会、昭和34年)P、239.所載による。 A1ietoAldoGuadagni,面ArgentinaAnteLaRondaUrguayadelGATT, 『ABC』〈24defebrerodel992)所載。 1991年6月22日付『CLARIN』記事。 1991年6月20日付『LatinAmericanWeeklyReport』、および1991年7月 12日付『サンパウロ新聞』記事。 1991年7月22日付『GazetaMereantil』誌記事。 1991年8月12日付『日本経済新聞』記事。 1991年1月号『ComercioExteriorj誌記事。 1992年2月号『LatinAmericanEconomy&Business』誌記事。 1992年3月18日付『読売新聞』記事および1992年4月10日付『日本経済新 聞』記事。 1992年3月9日付、4月16日付『ELPAlS』紙記事および1992年4月9日付 『ABC』紙記事。 CarlosVideliCarbajal, ̄E11ngresodeM6xicoalGATTyLa Agricultura窟,B1ancaTorresyPamelaSFalk(coordinadores).op、 Cit.,pl6q B、KKeayla(traducci6nespafroladelingl6sporPilarMartinez Negrete).PorunacuerdodelTercerMundosohrelapropiedad intelectual.,ComercioExterior(agostodel99qM6xico). CarlosVidaliCarbajaLibid.、BlancaTorresyPamelaS、Falk (coordinadores).op、Cit.,P、159. 1992年3月30日付『GazetaMercantil』誌記事・ StephenLande,膚PosibilidadesparaAmpliarE11ntercambio ComercialentreEstadosUnidosyM6xico",BlancaTorresyPamela S・Fa1k(cooTdinadores),op・Cit.,p314 FernandodeMateoyFrangoiseCarner,口M6xicoFrenteaLas NegociacionesSobreServiciosenLaRondaUruguay ̄,B1ancaTorres yPamelaS、Falk(coordinadores)opcit.p、384. (5) (6) jj 78 くく jjjJj 9mnm四 くくくくく (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20) -31-

参照

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造船に使用する原材料、半製品で、国内で生産されていないものについては輸入税を免除す

本資料は、宮城県に所在する税関官署で輸出又は輸入された貨物を、品目別・地域(国)別に、数量・金額等を集計して作成したものです。従っ

本資料は、宮城県に所在する税関官署で輸出又は輸入された貨物を、品目別・地域(国)別に、数量・金額等を集計して作成したものです。従っ

本資料は、宮城県に所在する税関官署で輸出又は輸入された貨物を、品目別・地域(国)別に、数量・金額等を集計して作成したものです。従っ

本資料は、宮城県に所在する税関官署で輸出通関又は輸入通関された貨物を、品目別・地域(国)別に、数量・金額等を集計して作成したもので

本資料は、宮城県に所在する税関官署で輸出又は輸入された貨物を、品目別・地域(国)別に、数量・金額等を集計して作成したものです。従っ

本資料は、宮城県に所在する税関官署で輸出通関又は輸入通関された貨物を、品目別・地域(国)別に、数量・金額等を集計して作成したもので

輸入申告に係る貨物の所属区分等を審査し、又は決定するために必要