２２
原
著
／蓋女医 焚 。評
６
５巻
平 鱗 搦〕
乳 房 温 存療 法 の臨 床 病理 学 的検 討
一 残 存 乳房 内 再発 を 申心 と して 一
カ ト ウ加藤
ミ ヤ シ タ宮下
フ ジ イ藤井
カ ワ カ ミ河上
東京 女子 医科 大学
２伺 付 属 第 二 病 院 タ カ オ キ ム ラ孝 男
・ 木 村
ミ ナ ナ カ ニ シ美 奈
・ 中 西
ア キ ホ ヤ マ モ ト昭 芳
・ 山 本
マ キ オ アイ バ 牧 夫１）・ 相 羽 第 二 外 科 学 教 室， 王）同 病 院 病 理 科病院病 理科
ツ ネ ヒ ト ミ ヤ カ ワ リ ユ ウ ヘ イ タ ナ カ シ ン イ チ恒 人 ・ 宮 川
隆 平 ・ 田 中
信 一
ア キ ：コ ム ラ キ ヒ回 シ カ ミ オ タ カ コ明 子 ・ 村 木
博 ・ 神 尾
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カズコ ハ マ ノ キ ヨウ イ ヂ フジ バ ヤ シマ リ コ和 子 ・ 浜 野
恭 一 ・ 藤 林 真 理 子玉
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モト ヒコ 元 彦２） （受 付 平 成 ７ 年 ７ 月３１日） Ｃ１腕 ｉｃｏｐａｔｈ ｏｌｏｇｉｃａ１ Ｓｔα ｄｙ ｏ征 Ｒｒｅａｓｔ Ｃ ｏ篶ｓ６ｒｖａｔｉｖｅ Ｓ㎜ｒｇ ⑥ｒｙ ｏｎ 篶ｏｃａｌ Ｒ ｅｃ㎜ｒｒｅｎ ｃｅ Ｔａｋａｏ Ｋ Ａ ＴＯ，Ｔｓ収ｎ 鮒 ｔｏ ＫＩＭ Ｕ Ｒ Ａ， Ｒ 卿 ｈｅｉ Ｍ ＩＹ Ａ Ｋ Ａ Ｗ Ａ， Ｓｈｉ㎜ｉｃｈｉ Ｔ Ａ Ｎ Ａ Ｋ Ａ， Ｍｉｎａ Ｍ ＩＹ ＡＳ Ｈ ＩＴ Ａ，Ａｋｉｋｏ Ｎ Ａ Ｋ Ａ ＮＸＳ ＨＩ， ＨｉＫ０ｓｈｉ Ｍ Ｕ Ｒ Ａ ＫＩ， Ｔａｋａ：ｋｏ Ｋ Ａ Ｍ ＩＯ，Ａ ｋ 蛆 ｏ 亙 Ｕ 孤Ｉ， Ｋａｚ皿ｋｏ Ｙ Ａ Ｍ Ａ Ｍ Ｏ ＴＯ， Ｋｙｏｉ 軌ｉ Ｈ Ａ Ｍ Ａ Ｎ Ｏ， Ｍ ａｒｉｋｏ Ｅ Ｕ Ｊ 肥 Ａ Ｙ ＡＳ ＨＩ１）， 皿 ａｋｉｏ Ｋ Ａ Ｗ Ａ Ｋ Ａ Ｍ Ｉ１） ａｎｄ Ｍ ｏｔｏｈｉｋｏ Ａ 鵬 Ａ２〕 Ｄｅｐａｒｔ ｍｅｎｔ ｏｆ Ｓｕｒｇｅｒｙ ＩＩ ａｎｄ １〕Ｄｅｐａｒｔ ｍｅｎｔ ｏｆ Ｓｕｒｇｉｃａｌ Ｐａ 畿 ｏ１ｏｇｙ， Ｔ ｏｋｙｏ Ｗ ｏ ㎜ｅΩ’ｓ Ｍ ｅｄｉｃａｌ Ｃｏ１ｌｅｇｅ ２）Ｄ ｅｐａｒｔｍ ㎝ ｔ ｏｆ Ｓｕｒｇ１ｃａｌ Ｐ 誠 ｈｏ１ｏｇｙ，Ｔ ｏｋｙｏ Ｗ ｏ ㎜ｅ河’ｓ Ｍ ｅｄｉｃａｌ Ｃｏ１ｌｅｇｅ Ｄ 痂 ｉ Ｈ ｏｓｐ 舶 １ Ｎ ｉｎｅｔｙ ｏｎｅ ｐａｔｉｅｎｔｓ ｗｉｔｈ ｐｒｉｍ ａｒｙ ｂｒｅａｓｔ ｃａ れｃｅｒ ｗ ｅｒｅ ｔｒｅａｔｅｄ ｗｉｔｈ ｂｒｅａｓｔ ｃｏ ｎｓｅｒｖ ａｔ三ｖｅ ｓ 岨 ｇｅｒｙ ｂｅｔ ｗ ｅｅむ Ｄ ｅｃｅ ｍ ｂｅｒ， 五９８７ ｔｏ Ｊａｎむａ 町 ， １９９５． Ｔ ｈｅ ㎜ ｅａｎ ｆｏ１−ｏ ｗ 珊 ｐ Ｐｅｒｉｏｄ ｗ ａｓ ５２．７ ｍ ｏｎｔｈｓ， ｔｈｅ ｍ ｅａｎ ａｇｅ ｗ ａｓ ４７．６ ｙｅａｒｓ， 狐 ｄ ｔｈｅ ｍ ｅａ篶 ｄｉｓｔａｎｃｅ ｆｒｏ ｍ ａ ｔ以 ㎜ ｏｒ ｔｏ ａ 赫 ｐｐ１ｅ ｗ ａｓ ４．５ ± １．γ ｃ ｍ． Ｓｅｖｅｎｔｙ ｔｈｒｅｅ ｐａｔ量ｅ 就 ｓ ｗ ｅｒｅ ｔｒｅａｔｅｄ ｗｉｔｈ ｗ亘ｄｅ ｅｘ ｃｉｓｉｏｎ ｂ ｙ ａｘｉ１亘ａｒｙ ｄｉｓｓｅｃｔｉｏ烈 （１ｅｖｅ１ ｎ），１６ ｐ ａｔｉｅ ｎｔｓ ｗ ｉｔｈ ｗｉｄｅ ｅｘｃｉｓｉｏｎ ｂｙ ａ ｘｉ１１ａｒｙ ｄｉｓｓｅｃｔｉｏ烈 ａｎ ｄ ｉｒｒａｄ量ａｔｉｏ ｎ，ａｎ ｄ ２ ｐａｔｉｅｎｔｓ ｗｉｔｈ ぬ ｍ ｐｅｃｔｏ ｍ ｙ ｂｙ ａ ｘｉ１１ａｒｙ ｄｉｓｓｅｃｔｉｏれ ａｎｄ ｉｒｒａｄｉａｔｉｏ な． Ｆｉｆｔｙ ｏ ｎｅ ｐａｔｉｅｎｔｓ ｗ ｅｒｅ ｔｒｅａｔｅｄ ｂｙ ｃｈｅ ｍ ｏｔｈｅｒ− ａｐｙ ａ１ｏｎｅ， ２６ ｐ ａｔｉｅｎｔｓ ｂｙ ｃｈｅ ｍ ｏｔｈｅｒａｐｙ ａ 紬 Ｔ ａ ㎜ ｏｘｉｆｅｎ， ａｎｄ ２ ｐ ａｔｉｅｎｔｓ ｂｙ Ｔ ａ ｍ ｏｘｉｆｅ篶 ａｌｏｎｅ， ａｎｄ １２ ｐａｔｉｅｎｔｓ ｂｙ ｎｏ ｎｅ．Ｅｉｇｈｔ ｏｆ ９１ （８．７ ％ ） ｐａｔｉｅｎｔｓ ｈａｖｅ ｄｅｖｅＩｏｐｅｄ ｒｅｃｕｒｒｅｎｃｅ ａれ ｄ ４ ｏｆ ８ ｐａｔｉｅ ｎｔｓ ｈａｄ １ｏｃａ け ｅｃ泌ｒｒｅｎｃｅ． Ｔ ｈｅ １ｏｃａｔｉｏｎｓ ｏｆ １ｏｃａ け ｅｃ砥ｒｒｅ篶ｃｅ ｗ ｅｒｅ ｏｎｅ ｉｐｓ ぬ ｔｅｒａ１ ａｘｉｕａ， ｏｎｅ ｓｋ云ｎ ，ａｎｄ ｔ ｗ ｏ ｏｆ ｉｐｓｉ１ａｔｅｒａ１ ｍ ａ ㎜ ｍ ａｒｙ ｇ１ａ 舶 ．Ｔ ｈｅ ｔ ｗ ｏ １ｏｃａ１ ｒｅｃ 岨 ｒｅ篶ｃｅｓ ｉｎ ｔｈｅ ㎜ ａ ㎜ ｍ ａｒｙ ｇＩａｎｄ ｗｅτｅ ｉｎｄｅｐｅｎ− ｄｅ 斌 ｏｆ ｔｈｅ ｆ１ｒｓｔ ｂｒｅａｓｔ ｃａｎｃｅｒ． Ｗ ｅ ｃｏ ㎜ ｐａｒｅｄ ｔｈｅ ｂｉｏｌｏ ｇｉｃａ１ ｄｉｆｆｅｒｅｎｃｅ ｂｅｔ ｗ ｅｅ 耐 ｈｅ ｐｒｉｍ ａｒｙ ｂｒｅａｓｔ ｃａＲｃｅｒ ａｎｄ ｔｈｅ ｓｅｃｏｎｄ ｂｒｅａｓｔ ｃａｎｃｅｒ 泌ｓｉｎｇ Ｐ Ｃ Ｎ Ａ ａ ｎｄ ｍ 似ｔａ ｎｔ ｐ５３ ｓｔａｉｎ三ｎｇ． Ａ ｓ ａ・ｒｅｓ ω ｔ， ｗ ｅｆｏｕ篶ｄ ｔｈａｔ ｔｈｅ ｓｅｃｏｎ ｄ ｂｒｅａｓｔ ｃａ ｎｃｅｒ ｇｒｅ ｗ ｆａｓｔｅｒ ｔｈａ ｎ ｔｈｅ ｐｒｉ㎜ ａｒｙ ｂｒｅａｓｔ ｃａηｃｅｒ ａ 篶ｄ ｔｈｅ ω ｍ ｏｒ ｗ 楡 ｃｈ ｈａｄ ａ ｈｉｇｈ １ａｂｅｌｉｎｇ 三ｎｄｅｘ ｏｆ ｍ ｕｔａ 雄 ｐ５３ ｄｅＹｅＩｏｐｅｄ ｔｈｅ １ｏｃａ− ｒｅｃ 岨 ｒｅｎｃｅ ｉｎ ａ ｒｅ１ａｔｉｙｅ１ｙ ｓｈｏｒｔ ｔｉ ㎜ ｅ． Ｔ ｈｅｒｅｆｏｒｅ， ｗ ｅ ｓｈｏｕ１ｄ ｆｏ１Ｉｏ ｗ ｓｕｃｈ ａ ｈｉｇｈ ｒ…ｓｋ ｐａｔ量ｅ 就 ㎜ ｏｒｅ ｃａｒｃｆα亘１ｙ ｔｏ ｃｏηｓｉｄｅｒ ｄ亘ｓｔａ 就 ㎜ ｅｔａｓ− ｔａｓｉｓ ｉΩ ｔ汽ｅ ｆｕｔｕｒｅ、 一 Ｅ２２ 一２３ は じ め に 本 邦 に お け る 乳 房 温 存 療 法 は１９８６年 頃 よ り 開 始 さ れ， 現 在 で は 多 く の 施 設 で 行 わ れ る よ う に な っ て き た． そ れ と と も に， 再 発 例 の 報 告 が さ れ る よ う に な り １〕２） ， 再 発 と く に 局 所 再 発 に 対 す る 関 心 が 強 ま っ て き て い る． 乳 房 温 存 療 法 に と っ て 局 所 を Ｃｏ 祓 Ｏ１ す る こ と は， 非 常 に 重 要 な こ と で あ り， 遠 隔 再 発 と ぽ 違 っ た 観 点 よ り 論 じ ら れ ね ば な ら な レ ） ． 今 回 我 々 は， 当 教 室 に お け る 乳 房 温 存 療 法 の 適 応， 摘 出 標 本 の 検 索 の 仕 方 お よ び 予 後， と り わ け 局 所 再 発 例 に つ い て 臨 床 病 理 学 的 検 討 を 加 え， さ ら に 多 中 心 性 に 発 生 し た と 思 わ れ る ２ 症 例 に 対 し， 第 １ 癌 と 第 ２ 癌 の 生 物 学 的 性 状 の 差 異 に つ い て 検 討 を 行 っ た の で 報 告 す る．
対 象 お よ び 方 法
１． 対 象 １９８７年１２月 よ り１９９５年 １ 月 ま で に 乳 房 温 存 療 法 を 行 っ た９１例 を 対 象 と し た． 臨 床 的 適 応 は， 当 初 は 腫 瘍 径 カミ２ｃｍ 以 下， 乳 頭 腫 瘤 間 距 離 は４ｃｍ 以 上 お よ び リ ン パ 節 は， ＮＯ あ る い は Ｎ１ａ の も の で あ っ た カミ， 症 例 数 の 蓄 積 と と も に， 腫 瘍 径 カミ３ｃｍ 以 下， 乳 頭 腫 瘤 間 距 離 は３ｃ㎜ 以 上 と 適 応 を 拡 大 し て き て い る ． さ ら に， 術 後 の 病 理 学 的 検 索 で， リ ン パ 節 転 移 が ｎ１α ま で お よ び ｓ悩ｒｇｉｃａ１ ｍ ａｒ 的 に 癌 の 遺 残 カミな い こ と を 適 応 範 囲 と し， ｎ１β 以 上 は 適 応 外 と し て い る． 術 式 は 原 則 と し て ｗ１ｄｅ ｅＸＣｉＳｉ ㎝ （乳 腺 は ｑｕａｄｒａｎｔｅＣｔｏ ｍ ｙ よ り や や 少 な め に 切 除 し，皮 膚 は 図 の よ う に ＳｕｒｇｉＣａ１ＳＣａｒ を 含 ’ め て 紡 錘 状 に 切 除 す る） と １ｅＶｅＨＩ∼ ＨＩ ま で の 腋 窩 郭 清 （Ａｘ） と し た． ａｄｊ ｗ ａｎｔｔｈｅｒａｐｙ の 内 訳 は 表 １ の ご と く で あ る ． ｃｙｔｏｔｏｘ｛ｃ ｄ ｍ ｇ の み は５１ 例 （Ｄｏｘｉ刊ｕ 鎚 １ｎｅ ： ４７例， Ｔｅｇａｆ 岨 ： ４ 例）， ｃｙｔｏｔｏｘ・ ｉｃ ｄｒｕｇ ＋ Ｔａ ｍｏｘ１ｆ ㎝ は２６ 例 （Ｄｏｘｉ舳 ｒ１ｄｉｎｅ： ２４ 例，Ｔｅｇａ 地ｒ ： ２ 例 ）， Ｔａ ㎜ ｏｘ１ｆｅｎ の み は ２ 例 ， お よ び 補 助 療 法 を 行 わ な が っ た 症 例 は１２例 で あ っ た ． ２ ． 方 法 断 端 の 検 索 方 法 と し て は， 図 の よ う に 先 ず 両 側 の 切 除 断 端 に 平 行 に 約３∼５ｍ ｍ 幅 の 割 面 を い れ， さ ら に， 残 り の 乳 腺 を 腫 瘤 と 乳 頭 を 結 ぶ 腺 に 直 角 敦 頭 側 ８ 膜 一＝ ４２ ３９ ３６ ３３ ３０ ４５ 柳 ４９ ４３ ２７ ２４ ３７４０ ４８ ２１ 閑 ξ６ １８ ３１ 桝 ２８ ４１ １５ ２５ ３８ １３ ２２ ３５ ，９ ３２ １１ ９ １６ ２９ ８ ７ １０ １２ １４ １７ ２０ ２３２６ １ ２ 一■
ｌ１ 図 摘 出 標 本 の 切 り 出 し 図 Ａ，Ｂ １ 側 方 断 端 割 面 表 １ 対 象 症 例（９１例） 腫 瘤 皮 膚 年 齢 （平 均， 歳） 観 察 期 間 （中 央 値， 月） 腫 瘤 径 （平 均， Ｃｍ） 乳 頭 腫 瘤 間 距 離（平 均， Ｃ獅） 術 式（例） Ｗ １ｄｅ ｅ ｘｃｉｓｉｏ蘭 十 腋 窩 郭 清 Ｗｉｄｅ ｅｘｃ１ｓｉ㎝ 十 腋 窩 郭 清 令 放 射 線 ω ｍｐｅＣ辻ｏ獅ｙ＋ 腋 窩 郭 清 十 放 射 線 補 幼 療 法 Ｃｙｔｏｔｏｘｉｃ Ｃｙｔｏｔｏｘｉｃ ＋ Ｔ ａ 脇 ｏ ｘｉｆｅｎ Ｔ ａ ｍ ｏｘｉｆｅｎ Ｎ ｏｎｅ 皇７，６ ５２．７ １ ．６士 Ｏ．７ ４．５土 １．７ ７３ １６ ２ ５玉 ２６ ２ １２ に５ｍ ｍ 幅 で 全 割 し， 切 除 乳 腺 全 体 の 病 理 学 的 検 索 を 行 い， ｍａｐｐｉｎｇ を 行 っ た． さ ら に， 残 存 乳 房 内 再 発 例 （多 中 心 性） に 対 し て， 第 １ 癌 と 第 ２ 癌 の 生 物 学 的 性 状 を 比 較 す る た め に， 以 下 の 方 法 を 加 味 し た． Ｈｅｍ ａｔｏｘｙ１ｉ 鵬 ｅｏｓｉｎ 染 色 に て， 全 割 切 片 を 鏡 検 し， 組 織 型 ， 組 織 学 的 異 型 度 （Ｂ１ｏｏ㎜一 Ｒｉｃｈａｒｄｓ ㎝３））， 核 異 型 度 （ＢＩａｃｋ４）） お よ び リ ン パ 管 侵 襲 を 検 索 し た． 免 疫 組 織 染 色 は ＬＳＡＢ 法 を 使 用 し， 第 Ｗ 咽 子 関 連 抗 原 染 色 （Ｄａｋｏ 杜， ｐｏ１ｙ− ｃ１ｏｎａ１ 抗 体）， ＰＣ Ｎ Ａ 染 色 （Ｎ ｏｖｏｃａｓ 晩 社， 抗 ＰＣ Ｎ Ａ 抗 体）， 変 異 ｐ５３蛋 自 染 色 （Ｎ ｏｖ ㏄ ａｓｔｒａ 社， Ｎ ＣＬ−ｐ５３ 抗 体）， Ｅ Ｒ・ＰｇＲ 染 色 （Ｉ㎜ ｍｕｎｏｔｅｃｈ 社， ｍ ㎝ ｏｃ１ｏｎａ１ 抗 体 ）， ｃ一 励 Ｂ−２ 蛋 自 染 色 （Ｄａｋｏ 社， ｐｏ１ｙＣ１ ㎝ ａ１ 抗 体） を 行 っ た． な お， 血 管 新 生 ・ 血 一 Ｅ２３ 一２４ 管 侵 襲 は 第Ｖ１ｉ咽 子 関 連 抗 原 染 色 に よ り 検 索 し， 結 果 ＰＣＮ Ａ お よ び 変 異 ｐ５３蛋 白 に 関 し て は 腫 瘍 細 胞 １．９１症 例 の 背 景 因 子 （表 １） を ５００ 個 数 え，１ａｂｅ１ｉ囎 ｉｎｄｅｘ （ 以 下 Ｌ．Ｉ．） を 算 出 平 淘 年 齢 は ４７．６ 歳， 観 察 期 間 の 申 央 値 は ５２．７ カ し た． 月， 平 均 腫 瘤 径 は １．６ ± ０．７ｃｍ， 乳 頭 腫 瘤 間 距 離 は ４．５± １．７ｃｍ で あ っ た ． 術 式 は ｗ１ｄｅ ｅｘｃｉｓｉ㎝ 十 腋 表 ２ 再 発 症 例（８例）の 内 訳 窩 郭 清 が７３ 例， ｗｉｄｅ ｅｘｃｉｓｉ㎝ 十 腋 窩 郭 清 十 残 存 乳 房 放 射 腺 照 射 が１６例 お よ び １似ｍｐｅｃｔｏｍｙ＋ 腋 窩 郭 清 十 残 存 乳 房 放 射 線 照 射 が ２ 例 で あ っ た． 全 体 の ８０．２ ％ に ｗｉｄｅ ｅｘｃｉｓｉ㎝ 十 腋 窩 郭 清 が 施 行 さ れ た． ２． 再 発 症 例 ８ 例 の 内 訳 （表 ２） 遠 隔 再 発 は ４ 例， 局 所 再 発 例 は ４ 例 に 認 め ら れ た． そ の う ち 所 属 リ ン パ 節 再 発 が １ 例， 皮 膚 再 発 が 五 例 お よ び 残 存 乳 房 内 再 発カミ２ 例 認 め ら れ た． 表 ３ 局 所 再 発 例 と 非 再 発 例 の 比 較 全 体 の 再 発 率 は８１７％， 局 所 再 発 率 は４．３％ で あ っ た ． ３． 局 所 再 発 例 と 非 再 発 例 の 比 較 （表 ３） 各 種 予 後 因 子 別 に 検 討 す る と， ４９歳 以 下カミ３ 例 で， ５０歳 以 上 の １ 例 に 比 べ や や 多 く， 閉 経 に 関 し て は 再 発 例 は 全 例 閉 経 前 で あ っ た． 乳 頭 腫 瘤 間 距 離 の 平 均 値 は， 再 発 例 で ４．１ ± １．２ ， 非 再 発 例 で 逐．６ ± Ｌ ７ｃｍ で あ り， ま た 平 均 腫 瘤 径 は， 再 発 例 で １，３ ± Ｏ，５， 非 再 発 例 で１．６± Ｏ．７ｃｍ で 差 は 認 め な か っ た． ま た リ ン パ 節 に 関 し て 検 討 す る と， 再 発 ４ 例 は 全 て 珊 で あ っ た． ｅｓｔｍ ｇ ㎝ ｒ ㏄ ｅｐｔｏｒ（ 以 下 ＥＲ） に 関 し て は ＥＲ （十） 例 に 再 発 は 認 め ら れ ず， ４ 例 申 ３ 例 は Ｅ Ｒ （一） 例 で あ っ た． ま た ｐｒｏｇｅｓ・ ｔｅｒｏｎｅｒｅｃｅｐｔｏｒ（以 下 ＰｇＲ） に 関 し て も， ＰｇＲ（十） 例 に 再 発 は 認 め ら れ ず， 迎 例 申 ３ 例 は ＰｇＲ（一） 例 で あ っ た． 組 織 型 で は， ４ 例 中 ２ 例 が 髄 様 癌， 硬 癌 １ 例， お よ び 充 実 腺 管 癌 １ 例 で あ っ た． 髄 様 癌 の 占 め る 比 率 が 高 い よ う に 思 わ れ た．
４
． 残
存 乳 房 内 再 発 ２ 例 の 検 討
１） 症 例 １ ：３５歳， 女 性 第 １ 癌 は 左 Ｃ−ｐｏｒｔ１ ㎝， 乳 頭 腫 瘤 間 距 離 ４．Ｏｃ ｍ， Ｏ．７ｃｍ ｘ ０．５ｃ ｍ 大 の 腫 瘤 で あ り， 外 来 に て 摘 出 術 を 施 行 し た．組 織 型 は 髄 様 癌 で あ っ た．ｌｅＶｅ ｍ ま で の 腋 窩 郭 清 を 伴 う ｗｉｄｅｅｘｉｓｉ㎝ を 施 行 し た． 腋 窩 リ ン パ 節 転 移， 血 管 侵 襲 お よ び リ ン パ 管 侵 襲 は 認 め ず，Ｅ Ｒ，ＰｇＲ と も に 陰 性 で あ り， さ ら に 摘 出 標 本 に 癌 の 遺 残 も 認 め な か っ た た め， 放 射 線 照 射 は 施 行 せ ず，Ｄｏｘｉ伺ｕτｉｄｉｎｅ の 内 服 を 行 っ て い た． 一 Ｅ２４ 一 症 例 数 遠 隔 再 発 局 所 蒋 発 所 属 リ ン パ 節 皮 膚 残 存 乳 房 ４ ４ １ １ ２ 再 発 例 非 再 発 例 全 症 例 遂 ８７ 年 齢（歳） ∼孝９ ３ ５２ ５０∼ １ ３５ 閉 経 前 ４」 ５７ 後 ０ ２４ 不 明 ０ ６ 腫 瘤 径 （Ｃｍ ） １．３ 士 Ｏ．５ １．６ 圭 Ｏ ．７ （ｍｅａｎ 士 ＳＤ） 乳 頭 腫 瘤 閲 距 離 （Ｃ ｍ） 皇．１ 士 １．２ 互．６ 土 １．７ （ｍ ｅａｎ 土 Ｓ Ｄ） リ ン パ 節 ｎ０ ４ ７５ ｎ１α Ｏ １２ ｎ１β Ｏ Ｏ ＥＲ 令 Ｏ ３５ ’’ ３ ３ ０ 不 明 １ ２２ ＰｇＲ 十 ０ ２８ 一 ３ ３３ 不 明 １ ２６ 組 織 型 葬 浸 瀞 性 乳 管 癌 ０ ４ 非 浸 瀞 性 小 葉 癌 ０ １ 浸 瀞 性 乳 管 癌 乳 頭 腺 管 癌 Ｏ ２５ 充 実 腺 管 癌 ユ １５ 硬 癌 １ ２７ 特 殊型 髄 様 癌 ２ ６ 浸 潤 性 小 葉 癌 ０ ３ 粘 液 癌 ０ ４ 管 状 癌 ０ ２２５ 術 後 約 ２ 年 ５ ヵ 月 後 に 左 Ｅ Ａ−ｐｏｒｔｉ㎝ に １．５ｃｍ 大 の 腫 瘤 と 共 に 乳 頭 分 泌 を 認 め た．細 胞 診 で は ｃ１ａｓｓ Ｖ で あ り， 外 来 に て 腫 瘤 摘 出 術 を 行 っ た と こ ろ， 組 織 型 は 第 １ 癌 と 同 様 に 髄 様 癌 で あ っ た．ｓａ１ｖａ塁ｅ ｔｈｅｒａｐｙ と し て は， ｔｏｔａ１ ｍ ａｓｔｅｃｔｏ ｍｙ を 施 行 し た． 最初 の 手 術 標 本 の 全 割 標 本 に 癌 遺 残 は な く， 第 ２ 癌 に ｄ ㏄ ｔａｌ ｃａｒｄ ｎｏ㎜ ａ ｉｎ ｓ 地 の 部 分 も 認 め た た め， 多 中 心 性 に 発 生 し た も の と 考 え た． ２） 症 例 ２ ：３９歳， 女 性 第 １ 癌 ほ 左 Ｃ−ｐｏｒｔｉ㎝ ， 乳 頭 腫 瘤 間 距 離 ６．Ｏｃ㎜， ２．Ｏｃ㎜ ｘ １，５ｃｍ 大 の 腫 瘤 で， 外 来 に て 摘 出 術 を 施 行 し た．組 織 型 は 症 例 １ と 同 様， 髄 様 癌 で あ っ た． １ｅｖｅ１ＩＩ ま で の 腋 窩 郭 清 を 伴 う ｗｉｄｅ ｅｘｉｓｉ㎝ を 施 行 し 花． 腋 窩 リ ン パ 節 転 移， 血 管 侵 襲， リ ン パ 管 侵 襲 は な く，Ｅ Ｒ，ＰｇＲ と も に 陰 性 で あ っ た． 放 射 線 照 射 は 施 行 世 ず， Ｄｏｘｉ舳ｒｉｄ施ｅ の 内 服 を 行 っ て い た カ§， 術 後 約 １ 年 ６ ヵ 月 後 に 左 Ｅ Ｇ ｐｏｒｔｉｏ古 に １．８ｃｍ 大 の 腫 瘤 と 共 に 乳 頭 分 泌 を 認 め た． 細 胞 診 で は ｃ１ａｓｓ ｍ ｂ で あ り， 外 来 に て 腫 瘤 摘 出 術 を 行 っ た． 組 織 型 は 第 １ 癌 と 同 様 に 髄 様 癌 で あ っ た た め， ｓａ１ｖａｇｅ ｔｈｅｒａｐｙ と し て ， ｔｏｔａＩ ㎜ ａｓｔｅｃｔｏ ㎜ ｙ を 施 行 し た． 最 初 の 手 術 標 本 の 全 割 標 本 に 癌 遺 残 は な く， 第 ２ 癌 に ｄ ㏄ｔａ１ ｃａｒｃｉｎｏｍ ａ ｉれ ｓｉ触 の 部 分 も あ っ た た め， 症 例 １ と 同 様， 多 申 心 性 に 発 生 し た も の と 考 完 た． 症 例 １ と 症 例 ２ は 組 織 型 等 の 病 理 学 的 因 子 は 類 似 し て い 花 が， 再 発 ま で の 期 間 に 差 を 認 め た． 即 ち， 前 者 の 再 発 期 間 が ２ 年 ５ カ 月 で あ っ た の に 対 し， 後 者 は １ 年 ６ ヵ 月 と 短 か っ た ．
５
． 残 存 乳 房 内 再 発 ２ 例 の 生 物 学 的 性 状 の 比 較
検 討 （表 逐）
症 例 １ で は， 第 １ 癌， 第 ２ 癌 と も に 髄 様 癌 で， リ ン パ 球 浸 潤 は 多 か っ た カミ， 血 管 侵 襲， リ ン パ 管 侵 襲 は 認 め な か っ た． さ ら に 変 異 ｐ５３ 蛋 白， ｃ一 励 Ｂ−２蛋 自，ＥＲ，ＰｇＲ の 各々 の 染 色 性 に も 差 は 認 め ず， ま た 組 織 学 的 異 型 度， 核 異 型 度 も 同 様 で あ り， 血 管 新 生 に 関 し て も， ほ と ん ど 同 じ 程 度 で あ っ た ．唯 一 差 を 認 め た 点 は ＰＣ Ｎ Ａ の Ｌ．Ｉ． で， 第 １ 癌 の Ｌ．Ｉ。は，２ Ｌ ３ ％ 停 対 し 第 ２ 癌 で は８０．３ ％ と 非 常 に 高 値 を 示 し た． 症 例 ２ に 関 し て も 同 様 で あ り， 他 の 予 後 因 子 に 関 し て は 差 は 認 め な か っ た も の の， 第 １ 癌 の Ｌ．Ｉ． は７．３％ に 対 し て， 第 ２ 癌 で は ４０．０ ％ と 高 か っ た． ま だ， 変 異 ｐ５３ 蛋 白 染 色 で は， 症 例 １ で は 第 １ 癌， 第 ２ 癌 と も に 染 色 さ れ な かっ た が， 症 例 ２ で は と も に 強 陽 性 と なっ たカ§， 第 １ 癌， 第 ２ 癌 の 間 に 差 は 認 め な か っ 花 ． し か し， 同 じ 髄 様 癌 で も 染 色 性 に 関 し て の 差 淡 認 め ら れ， 再 発 期 間 の 短 か っ た 症 例 ２ は 変 異 ｐ５３蛋 白 染 色 が 強 陽 性 で あ つ 淀．考
察
乳 房 温 存 療 法 に お い て， 最 も重 要 な 問 題 点 ば 局 所 再 発 で あ り， 温 存 療 法 の 普 及 と と も に， 本 邦 で も 再 発 例 の 報 告 カミ な さ れ る よ う に な っ て き た１）２）．こ れ を Ｃｏ 鮒 Ｏ１ す る た め に は， 乳 房 温 存 療 法 の 手 術 適 応 基 準 の 設 定 を 明 確 に し， 癌 の 局 所 に お け る 生 物 学 的 性 状 ・ 広 カミり を 知 り， 十 分 な 摘 出 標 本 の 検 索 カミ必 要 で あ る． 秋 山 ら５）は， 照 射を 行 わ な い 乳 房 温 存 療 法 に 関 し て は 全 割 切 片 を 作 製 し， 癌 の 進 展 状 況 を 正 確 に 把 握 し， 局 所 の 安 全 性 を 確 認 し て い る． 我 々 の 施設 で は， 乳 房 温 存 療 法 を 開 始 し た 当 初 は， 病 理 学 的 な 裏 付 け が 必 ず し も 十 分 で な が っ た た め に， 放 射 線 照 射 を 併 用 し て き た カ§， 最 近 で は 全 割 切 片 を 作 製 し， 側 方 ・ 乳 頭 側 断 端 に 癌 の 認 め ら れ な い 症 例 に 対 し て は， 照 射 を 併 用 し 表 ４ 第 １ 癌 と 第 ２ 癌 の 生 物 学 的 性 状 の 比 較 症 例 １ 症 例 ２ 第 玉 癌 第 ２ 癌 第 １ 癌 第 ２ 癌 組 織 型 髄 様 癌 髄 様 癌 髄 様 癌 髄 様 癌 リ ン パ 球 浸 潤 多 多 多 多 ＰＣ Ｎ Ａ （Ｌ．韮．） ２１，３ ８０．３ ７，３ ４０ ．０ ｐ５３ （Ｌ．互、） ９７，８ ９８ ．９ ｃ一召ブ５ ８−２ ＥＲ 晦 Ｒ ｌｙ Ｈ．Ｇ． ＩＩＩ ＩＩＩ ＩＩＩ 正ＩＩ Ｎ．Ｇ． ＩＩＩ ＩＩＩ ＩＩＩ ＩＩＩ 血管 新 生 ４９．８／ｒｎ ｍ２ 如．２／醐 測２ 互６．１／ｍ ㎜２ ４０．０／㎜ 獅２ Ｌ ，Ｉ．： 励 ｅ１ｉｎｇ ｉｎｄｅｘ，ｉｙ ： リ ンパ 管 侵 襲， ｖ ： 血 管 侵 襲， 豚．Ｇ．： ｈｉｓｔｏｌｏ ｇｉｃａｌ ｇｒａｄｅ，Ｎ．Ｇ．： ｎ ㏄ ｉｅａｒ ｇｒａｄｅ． 一 Ｅ２５ 一２６ て い な い． 秋 山 ら の よ う な 方 法 で 全 割 切 片 を 作 製 す る と， か な り の 時 問 を 要 す る た め， 我 々 は 図 の よ う に， 全 割 し た 後， 先 ず 両 側 の 切 除 断 端 の 切 片 （４ ∼ ５ ブ ロ ッ ク） を ５ 日 以 内 に 作 製， 鏡 検 し， 断 端 の 検 索 を 行 っ て い る． も し 断 端 に 癌 カ 螺 め ら れ る と き は， 癌 の 局 所 散 布 の 可 能 性 が あ り， 将 来 局 所 再 発 の 原 因 に も な る の で， 遅 く と も １ 週 間 以 内 に， 追 加 切 除 な い し は ｔＯ 捌 ｍ ａＳｔ㏄ ｔｏ ｍ ｙ を 行 う こ と に し て い る． 今 回 デ ー タ は 示 し て い な い カ§， い ま ま で 側 方 断 端 の 追 加 切 除 を 行 っ た 症 例 は ６ 例 （６．６％） で あ るカ§， 今 の と こ ろ い ず れ も 局 所 再 発 は 起 こ し て い な い． な お， 腫 瘤 と 乳 頭 を 結 ぶ 腺 に 直 角 に５㎜ ｍ 幅 で 全 割 し 花 切 片 の 病 理 学 的 検 索 は， 後 に 十 分 時 間 を が げ て 行 い， 癌 の 進 展 を 詳 細 に 記 し て レ） る． 諸 外 国 で は， 局 所 再 発 に つ い て の 多 く の 報 告 洲 な さ れ て い る カミ， 局 所 再 発 の は っ き り と し た 定 義 は 未 だ な さ れ て い な い ．Ｖ ｅｒｏｎｅｓｉ ら６） は， ｓｕｒｇｉｃａ− ｓｃａｒ よ り ２ｃ ㎜ 以 内 の も の は １㏄ ａ１ ｒｅ ㎝ 耐ｅ ㏄ ｅ と し， ２ｃ ｍ 以 上 離 れ た 乳 房 内 の も の は， ｓｅｃｏｎｄ ｐｒｉ・ ｍａｒｙ ＣａｒＣｉαＯ ㎜ａ と お お ま が に 定 義 し て い る に す ぎ ず， 一 方，Ｈａ 雌ｉｓ 帥 は， ｐｒ１ｍａｒｙ ω ｍ ｏｒ の あ っ た 所 に 発 生 し た 再 発 を ｔ ωｅ ｒｅ ㎝ ｒｒ ㎝ Ｃｅ， ｐｒｉ㎜ａｒｙ ｔｕｍ ｏｒ の 近 傍 で， ｂｏｏｓｔ 照 射 を 行 っ た 所 に 発 生 し だ 再 発 を ㎜ａｒｇｉむａ１ ｍｉｓｓ， お よ び ｐｒｉｍ ａｒｙ ω ｍ ｏｒ と 関 係 の な い 所 に 発 生 し だ 再 発 を ｅｌｓｅｗｈｅｒｅ ｉｎ ｔｈｅ ｂｒｅａｓｔ と し て， ３ 種 類 に 分 類 し て い る． 今 回 我 夜 の 経 験 し た 局 所 再 発 ４ 例 に つ い て， 再 発 形 式 に つ い て 検 討 を 加 え て い き だ い． １ 例 は ｓｕｒｇ１ｃａｌｓｃａｒ に 発 生 し た 皮 膚 再 発 で あ り， 他 の １ 例 は 郭 溝 が 不 十 分 で あ っ た た め に 発 生 し た 鎖 骨 下 リ ン パ 節 再 発 で あ っ た． こ れ ら２ 例 は 手 術 に 伴 う 再 発 と 思 わ れ， 郭 清 に 細 心 の 注 意 を 払 完 ば 防 ぐ こ と カ§可 能 な 症 例 で あ っ た． 残 り の ２ 例 に 関 し て 検 討 す る と， ２ 例 と も 最 初 の 全 割 標 本 に 癌 遺 残 は な く， 第 １ 癌 の 組 織 型 は 第 ２ 癌 と 同 じ で あ っ だ が， 第 ２ 癌 に ｄ ㏄ ｔａ１ ｃａｒｃｉ忽ｏ ㎜ ａ ｉｎ ｓｉｔリ の 部 分 も 認 め た た め， 第 ２ 癌 は 第 １ 癌 と は 別 に 発 生 し だ も の 即 ち 多 中 心 性 に 発 生 し た も の と 考 え た． さ ら に， 今 回 我 々 は こ の ２ 例 の， 第 五 癌 と 第 ２ 癌 の 生 物 学 的 性 状 を 比 較 検 討 す る た め に， ＰＣ Ｎ Ａ ， 変 異 Ｐ５３ 蛋 白， ｃ・ 励 Ｂ・２蛋 白， Ｅ Ｒ， ＰｇＲ， 組 織 学 的 異 型 度， 核 異 型 度， 血 管 新 生 お よ び 血 管 侵 襲 の 各 々 の 因 子 に つ い て 検 討 し て み 淀 と こ ろ， ＰＣＮ Ａ に の み 差 が 認 め ら れ た も の の， 他 の 因 子 に 関 し て は 差 は 見 ら れ な か っ た．ＰＣＮＡ 染 色 よ り み た 生 物 学 的 性 状 の 差 は， 第 ２ 癌 カミ第 １ 癌 と 異 なっ た 性 状 を 有 し， 腫 瘍 の 細 胞 増 殖 能カミ充 進 して い る こ と を 意 味 し，さ ら に 遠 隔 再 発 に 対 し て ｒｉＳｋ カ§ よ り 高 く な っ て い る こ と を 示 唆 し て い る よ う に 思 わ れ た． 実 際 Ｃｈａｕｖｅｔ ら８）も 乳 房 内 再 発 を 来 し た 症 例 は， 将 来 遠 隔 再 発 を き た す 率 が 高 く， 乳 房 内 再 発 も ｓｙｓｔｅ ｍｉｃ ｓｐｒｅａｄ の 一 兆 候 と み な す べ き で あ る と 述 べ て い る． ま た Ｆ 熾 ｅｒ ら９）は， 局 所 再 発 は 遠 隔 再 発 の 原 因 で は な い が， ｒｉｓｋ ｆａｃｔｏｒ の ｍａｒｋｅｒ と し て 重 要 で あ る と 述 べ て い る． こ の こ と は 我 々 の 報 告 と 合 致 し て い る よ う に 思 わ れ た． き ら に，同 じ 髄 様 癌 で も， 変 異 ｐ５３蛋 自 染 色 陽 性 症 例 は， 再 発 ま で の 期 間 が １ 年 ６ ヵ 月 で， 陰 性 例 の ２ 年 ５ ヵ 月 に 比 べ 短 く， 細 胞 増 殖 能 の 高 さ が 示 唆 さ れ た ． ｓａ１ｖ ａｇｅ ｏｐｅｒａｔｉｏ恋 に つ い て ， Ｋ びｒｚ ら五０） は ９３ ％ の 症 例 に Ｓａ亘Ｖａｇｅ ｍ ａＳｔｅＣｔｏ ㎜ｙ が 可 能 で あ っ た と 述 べ て い る カ§， Ｂａｒｒ ら１１）は 進 行 癌 で は 再 発 時 に 手 術 カミで き な い 症 例 も 多 が っ た と 報 告 し て い る． 我 々 の 症 例 は， ４ 例 と も 早 期 の 乳 癌 で あ っ た た め か ， と も に ＳａｌＶａｇｅ ㎜ ａＳｔｅＣｔｏ ㎜ ｙ カ§ 可 能 で あ っ た． 以 上 よ り， 局 所 再 発 を 来 し た 症 例 は 遠 隔 再 発 に 対 し て ｈｉ釦 ｒｉｓｋ の 可 能 性 カミあ り， そ の 検 索 方 法 と し て， ＰＣＮ Ａ お よ び 変 異 ｐ５３蛋 自 染 色 は 有 用 な 方 法 で あ り， そ れ ら の Ｌ．Ｉ． の 高 い 症 例 に 関 し て は， 厳 重 な ｆｏ１１ｏｗ カミ 必 要 と 思 わ れ た．
結
語
１． 乳 房 温 存 症 例９１例 申， 局 所 再 発 は ４ 仮 （４．３兆） で， そ の 内 残 存 乳 房 内 再 発 は ２ 例 で あっ た ． ２． 残 存 乳 房 内 再 発 は， ２ 例 と も 多 中 心 性 に 発 生 し た も の と 考 乏 ら れ た． ３． 残 存 乳 房 内 再 発 の ２ 例 は 多 中 心 性 に 発 生 し た も の で あ り， 第 １ 癌 と 第 ２ 癌 の ＰＣＮ Ａ 染 色 よ り み た 生 物 学 的 性 状 を 比 較 す る と， ２ 例 と も 第 ２ 癌 の 方カミ第 １ 癌 に 比 べ 細 胞 増 殖 能 カ が 高 か っ た． 一 Ｅ２６ 一２７ ４． 残 存 乳 房 内 再 発 ２ 例 中， 変 異 ｐ５３蛋 白 の １ａｂｅ１ｉ聰 ｉｎｄｅｘ カ 塙 い も の は， 細 胞 増 殖 能 カ 淡 高 く， 再 発 期 問 も 短 か い 花 め， 将 来 遠 隔 再 発 を 来 す 可 能 性カミあ る の で， 厳 重 なｆｏ１１ｏｗ カ§必 要 と 思 わ れ た ． 本 論 文 の 要 旨 は 第 ３ 回 日 本 乳 癌 学 会 総 会 （１９９５年 ６ 月 ３０ 日 ∼ ７ 月 １ 日， 大 阪） に お い て 発 表 し た． 文 献 １） 池 田 正， 和 田 徳 昭， 榎 本 耕 治 ほ か ： 乳 房 温 存 療 法 後 局 所 再 発 の 概 念 に つ い て． 乳 癌 の 臨 ９：５３６ −５４３． １９９４ ２） 中 村 泰 也 ： 乳 房 温 存 術 の 局 所 再 発 症 例 の 検 討． 乳 癌 の 臨 ９１ ５４４−５５５６． １９９０ ３） 秋 山 太， 坂 本 吾 偉， 難 波 清 ほ か ： 照 射 を 行 わ な い 乳 房 温 存 術 に 対 す る 病 理 学 的 保 障． 乳癌 の 臨 ５ ： ９５−１０２， 王９９０ ４） Ｂｌｏｏ ｍ Ｈ ＩＪ ，Ｒｉｃｈａ 制ｓｏｎ Ｗ Ｗ ： Ｈｉｓ言ｏｌｏｇｉｃａｌ ｇｒａｄｉ河ｇ ａｎｄ ｐｒｏ ｇｎ ｏｓｉｓ． Ｂｒ Ｊ Ｃａ ｎｃｅｒ １１ ： ３５９− ３７７． １９５７ ５） Ｂ１ａ 眺 Ｍ Ｍ ，Ｒｉｃｈ 淑 ｄｓｏｍ Ｗ Ｗ， ０ｐ１ｅｒ Ｓ Ｒ ： Ｓｔｒ帳ｃ辻ｕｒａｌ ｒｅｐｒｅｓｅ ｎｔａｔｉｏｎｓ ｏｆ ｔｕ ㎝ ｏｒ−ｈ ｏｓｔ ｒｅ１ａ− ｔｉｏ ｎｓｈｉｐ ｉｎ ｍ ａ 獅 幻αａｒｙ ｃ 服 ｃｉη ｏ ｍ ａ．Ｂｉｏ亘ｏ９三ｃ ａｎ ｄ 陳 ｏ ｇｎ ｏｓｔｉｃ ｓｉｇｎ流 ｃａ ｎｃｅ． Ａ ｍ Ｊ Ｃｌｉｎｉｃ Ｐ ａｔｈｏ１ ２６ ： ２５０−２６５ ．１９５６ ６） Ｖ 研 ｏｍｅｓｉ Ｕ，Ｌ 耐 洲 Ａ，Ｖ ａｃｃｈｉｏ Ｍ Ｄ ｅｔ ａｌ： Ｒａｄｉｏ辻ｈ ｅｒａ ｐｙ ａｆｔｅｒ ｂｒｅａｓｔ−ｐｒｅｓｅｒｖｉｎｇ ｓ 雌 ｇ ｅｒｙ ｉｎ ｗ ｏ ㎜ ｅ 臓 ｗ 批 ｈ ｌｏｃａ互ｉｚｅｄ ｃａｎｃｅｒ ｏｆ ｔｈｅ ｂｒｅａｓｔ． Ｎ Ｅｎｇ１ Ｊ Ｍ ｅｄ ３２８ ：１５８９−１５９１． １９９３ ７） 亙 ａｒｒｉｓ Ｊ Ｒ， Ｃｏ羽ｏｌｌｙ１ Ｊ Ｌ， Ｓｃｈｎｉ悦 ＳＪ ｅｔ ａ１： Ｔ ｈｅ び 駝 ｏｆ ｐａｔｈｏ１ｏｇ量ｃ ｆｅａｔｕｒｅｓ ｉｎ ｓｅ１ｅｃｔｉｎｇ ｔｈｅ ｅｘｔｅｎｔ ｏｆ ｓ峻ｒｇｉｃａ至 ｒｅｓｅｃｔｉｏ 口 ｎｅｃ ｅｓｓａ ｒｙ ｆｏｒ ｂｒｅ ａｓｔ ｃａｎｃｅｒ ｐ ａをｉｅｎｔｓ ｔｒｅａｔｅｄ ｂｙ ｐｒｉ ｍ ａｒｙ ｒａ ｄ五・ ａｔ言ｏｎ ｔｈ ｅｒａ ｐｙ． Ａ Ｒｎ Ｓｕｒｇ ２０１ ： １６４−１６９． １９８５ ８） Ｃｈ 舳 ｗ 冊，Ｒ ｅｙ ｍ ㎜ｄ・Ｂ ㎝ ｇ ㎜ 岨 Ａ， Ｃａ１ａ量ｓ Ｇ ｅｔ ａ１ ： Ｐｒｏｇｎ ｏｓｔｉｃ ｓｉｇｎｉｎｃａｎ ｃｅ ｏｆ ｂｒｅａｓｔ ｃｏｎｓｅｒ・ ｖａ 滋 ｖｅ 赦 ｅａｔ 蜘 ｅｎｔ ｉｎ ｎ ｏｄｅ−ｎｅｇ ａ ｄ ｖｅ ｅ ａｒｌｙ ｂｒｅ ａｓｔ ｃ ａｎｃｅｒ．Ｉｎｔ Ｊ Ｒ ａ ｄ三ａｔ Ｏ ｎｃ ｏ１ 副 ｏｌ Ｐ ｈｙｓ １９ ： １１２５− １１３０． １９９０ ９） 亙ｉｓｈ ｅｒ 遍 ， Ａ ｎ δｅｒｓｏ 双 Ｓ， Ｆヨｓｈ ｅｒ Ｅ Ｒ ６ｔ ａ１ ： Ｓｉｇ ｎ脆 ｃａＲｃｅ ｏ 〔 ｐｓｉｌａｔｅｒａｌ ｂｒｅ ａｓｔ ｔ⑰ ｍ ｏｕｒ ｒｅｃ− ｃ 皿ｒｅｎｃｅ ａｆｔｅｒ 王ｕ 獅 ｐｅｃｔｏ竈Ωｙ． Ｌ ａ ｎｃｅｔ ３３８ ： ３２７− ３３１ ．１９８９ １０） Ｋ㎜ｒｚ Ｊ Ｍ， Ｓｐｉ愉１ｉｅｒ Ｊ，Ａ ｍ ３１ｒヨｃ Ｒ ｅｔ 訓 ： Ｔｈｅ ｐｒＯ ｇａ ｏｓｔｉＣ Ｓｉｇ ηｉｉｃａｎ ｃｅ ｏｆ 三ａｔｅ 亘Ｏｃ ａ− ｒｅＣｕｒｒｅｎｃｅ ａｆｔｅ「 ｂ「ｅａｓｔ−ｃｏ ｎｓｅ「ｖ言皿 ９ ｔｈｅｒａｐ ｙ． Ｉｎｔ Ｊ Ｒ ａｄｉａｔ Ｏ ｎｃ◎三 Ｂｉｏｉ Ｐｈｙｓ １８ …８７−９３， 王９９０ １１） 丑 肌 こ ＬＣ，Ｂ ｍ 枇 Ａ Ｍ，Ｇｏｏｄ㎜ ａｎ Ａ Ｇ ｅｔ ａ１： Ｕ ｎｃｏ ｎｔｒｏ玉１ｅ 引 ｏｃａ け ｅｃ ｕｒｒｅ ｎｃｅ ａｆｔｅｒ ｔｒｅａｔ ｍ ｅ 耐 ｏｆ ｂｒｅａｓｔ ｃａ ｎｃｅｒ ｗｉｔｈ 趾 ｅ ａｓｔ ｃ ｏｎｓｅｒｖ ａｔｉｏｎ． Ｃａｎｃｅｒ ６４ ： １２０３−１２０７． １９８９ 一 亙２７ 一
