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富 山大学保健管理 セ ンターの 自己点検 ・評価 について

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富 山大学保健管理 セ ンターの 自己点検 ・評価 について

中 村 剛,西 村優紀美

Tsuyoshi Nakamura, Yukimi Nishimura :

Reviewing the Activities of the Department of Health Services, Toyama University

は じめ に

大学評価 は,平 成 8年 度秋 か ら,部 局単位 で は な く大学 全体 を総合 的 に評価 す る総 合評価制 に移 行 した。 まず大 学 が点 検項 目を挙 げ, 自己点 検 を 行 い,そ れ を財団法 人大学基準協会 (以下,協 会) が審査 し,総 合判定 を行 うとい うので あ る。協会 の大学評価 には,「相互評価」 (大学人が ボ ランテ ィ アで同僚 を評価 す る仕組 み)と ,「カロ盟判定審査」

(協会 の維 持 会 員 校 に新 た に な るた め の審査 )の 二 種類 が あ る。 この二種 類 と もに四段 階 に評価 さ れ,総 合的評価 は,A.達 成 度 が高 い B。 推 進 の努 力 が見 え る C.不 合格 の三 段 階 に評 価 され る。 そ して,必 要 に応 じて問題点 の指摘,勧 告, 助 言 が行 われ,大 学 は三年後 に改善 の報告 を義務 づ け られて い る。

と ころで,現 実 に行 われて い る大学 内部 の 自己 点 検 0評 価 とは,い った い何 なので あ ろ うか。 つ ぎつ ぎと公表 され る大学,学 部等 の 自己点検 ・評 価 報 告書 に接 す るた び に,同 じ疑 間が頭 を もたげ る。 大部 分が判 で捺 した よ うに,「 人 員 は不 足, 設 備 は不十 分 で あ るが,そ の割 に現 員 の教育研究 活動 は活 発 で,組 織 はよ く機能 して い る」 とい う

「無難 な」 報 告 に終始 して い るか らで あ る。 その 背景 には,大 まか にい って,次 のよ うな事情 が あ

る と思 われ る。

①点検 ・評価の委員会を学科, 学 部単位に編成 すれば, た ちまち相身互いの 「偽紳士的」な空気

が支配 的 にな る。他 人 の ことには口を差 し挟 まな いかわ りに,暗 黙裏 にその反対 も保 障 され るわ け で, これで は点検 ・評価 にな らない。 この推測 が 偏 見 で も独 断 で もな い ことは, た とえ ば教 員 A が 学 生 B に 行 った 「い じめ」 の事 例 に適 切 に対 応 す

るよ うに と,保 健管理 セ ンター (以下,セ ンター) が協力 を要請 した ときの当該学科,学 部教員 た ち のへ っぴ り腰 を 目.の当 た りにすれば,誰 もが認 め ざ るを え な いで あ ろ う。

② また, た とえ改善 す べ き点 が洗 い出 され た と して も,報 告書 を公表 す る際 には自己防衛 の本能 が はた ら く。 「改善 すべ き点 」 とは,少 な くと も 現 時点 にお いて人 に知 られ た くな いよ うな, 何 ら か の機能不全 が あ る とい うことで あ る。 そ して, 他 者 に知 られ る と不利 にな るよ うな事実 を発表 し

た くないの はむ しろ自然 な感情 であ ろ う。

③ こ うい った欠陥 を補 うため に, 外 部 評価 が推 奨 され て い る。 しか し, 現 状 は ど うか。 学外 の委 員 はいわ ゆ るお客 さん扱 いで あ って, 彼 らがで き る ことは,書 類審査 と質疑応答 によ る表面 的,儀 礼 的 で通 リー 遍 の評 価 にす ぎな い。 この ことは, 一 方で外部評価報告書 を公表 しなが ら,他 方で入 試 ミスを隠蔽 し得 た ことか らも明 らかで あ る。

冒頭 に記 した 「協 会 の大学評価」 は, ほ ん らい, 大学 の総 合 的 な体質 0 機 能 向上 を期 した画期 的 な 試 み と して高 く評価 され るべ き もので あ ろ う。 し か し上述 の事情 を考慮 すれ ば,実 際 に評価 を受 け

著者所 属 :富 山大学保健管理 セ ンター,The Department of Health Services,Toyama University

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る側 に立 った とき,当 該大学 が外面 を取 り繕 い, 専守 防衛 の姿 勢 を とるで あ ろ うこと も容 易 に推 測 で きる。

④ 他方,現 職 教 員 に と って み る と,点 検 ・評 価 に力 を注 ぎ,「 立 派 な」 報 告 書 を作成 して も,い わ ゆ る 「業績」 にな らない ことは誰 もが承知 して い る。 しか も時間 とエ ネルギーを使 って真 っ正 直 に これ を行 い,tヽ くつかの反省点 を摘 出 した とこ ろで,か え って同僚 の恨 み を買 いかね ない。 それ こそ骨折 れ損 の くたびれ もうけであ る

と ころで, 日常 の相談 0診 療業務 にお いて,セ ンターの窓 口には じつ に様 々な相談が寄 せ られ る。

それ らを通 して,入 学者選抜 方法 か ら教育 ・研究 指 導 の あ り方 とい った各学 部 が点 検 ・評 価 の対 象 とすべ き多 くの事柄 が 見えて くるので あ る。 大学 や学部学 科 の側 に,そ れ らを冷静 かつ理性 的 に直 視 し,問 題 の改善 に資す る とい う真摯 な姿 勢 が期 待 で きれ ば,セ ンターの点 検 0評 価 は単 に 1部 局 の それ に終 わ らず,部 局 の枠 を越 えて大学 全体 に と って もきわ めて有効 で効率 の よい もの とな るで あ ろ う。 しか しなが ら上述 の よ うに,大 学 の精神 構 造 に まだ まだ それ を受 け入 れ るほ どの余裕 が感

じられ な いの は残念 な ことで あ る。

さて,セ ンター 自体 の点検 ・評価 の実際 は ど う で あ ろ うか。 ここで も幾 多の困難 な事態 が立 ち現 れ て くるが,そ の詳細 につ いて は,Ⅷ 章 に譲 るこ とにす る。

点 検 ・評 価 報 告

I 保 健管理 セ ンターの在 り方及 び 目標 に関す る こと

1 目 標,使 命 及 び 2 研 究理 念

富 山大学 保 健管理 セ ンター規 則 の第 1条 に は,「 富 山大学 保 健管理 セ ンター に関 し,必 要 な事 項 を定 め る。」 と され て お り,同 規 則 第 2条 に,保 健管 理 セ ンターは,次 の業務 を 行 うこと と記 され て い る。

(1)保 健管 理 の実施 につ いての企 画,立 案 に

関 す る こと。

( 2 ) 健 康診断 の実施 及 びその事 後措 置 に関 す る こと。

( 3 ) 健 康相談 及 び救 急 処 置 に関 す る こと。

( 4 ) 精 神衛生 その他就学 上 の相談 に関 す る こ と。

( 5 ) 学 内 の環境 衛生 及 び伝染病 の予防 につ い て の指導援助 に関す る こと。

( 6 ) 保 健管理 の充実 向上 の ための調査研究 に 関 す る こ と。

( 7 ) そ の他 健康 の保持 増進 に必 要 な専 門 的業 務 に関 す る こと。

以上 の ことか ら, セ ンターの 目標 ・使命及 び理念 は, 富 山大学 の学生 ・職 員 の身体的 ・ 精神 的健康 の保持 ・増進 を図 る ことを通 じて, 大 学 が担 う社 会的使命 と しての教育並 びに研 究 の機能 を十 分 に発揮 させ, 促 進 させ る こと にあ る,   と考 え られ る。

な お, セ ンターの設 置 の趣 旨 は, 「 大学 の 保 健 管理 に関 す る専 門 的業務 を一 体 的 に行 う 厚 生補 導 の ための施 設 と して設 置 し, 学 生 の 心 身 の健康 を図 ることを 目的 とす る。」 ( 昭和 4 1 年 5 月 2 0 日  文 部 省大学学 術局) と されて い る。 この 見解 を明文化 した 「国立学 校設 置 法施 行規 則」 によ る と, 第 2 9 条の 3 に 「次 に 掲 げ る国立 大学 に, 学 生 の保 健管理 に関 す る 専 門 的業 務 を行 う厚 生 補 導 の た めの施 設 と し て, 保 健管 理 セ ンターを置 く。」 と して, 北 海道 大学 以下, 8 4 大 学 ( 富山大学 を含 む) と

2 大 学院大学 が列記 されて い る。

これ ら8 6 施設 の ほか に, 保 健管理 セ ンター の機能 に加 えて, 業 務 内容 に 「研究 と教育」

が加味 され, 保 健管理 の対象が 「職 員及 び学 生 」 に拡 大 され た特 異 な組織 が 3 大 学 ( 名古 屋大学, 九 州大学, 大 阪 大学 ) に 設 置 されて い る。

す なわ ち, 「 国立 学 校 設 置 法施 行規 則」 第 2 0 条の 5 の 3 ( 名 古屋大学総 合保健体育科学 セ ンター及 びその長 ) に は, 「名古 屋大学 に, 保 健及 び体育 に関 す る教育研究 を行 うとと も

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富山大学保健管理セ ンターの自己点検 ・評価 について

に,職 員及 び学 生 の保健管理及 び体育指導 に 関 す る専 門 的業務 を行 うた めの施 設 と して, 総 合保 健 体 育科 学 セ ンターを置 く。」 とあ る。

また,「 国立 学 校 設 置法 施 行規 則」 第20条 の 5の 5(九 州大学 健康科学 セ ンター及 びそ の長 )に は,「 九 州 大学 に,健 康科 学 に関 す る研究並 びに保健 及 び体育 に関す る教育 を行 うとと もに,職 員及 び学生 の保健管理 及 び体 育指 導 に関 す る専 門 的業務 を行 うための施設 と して,健 康科学 セ ンターを置 く。」 とあ る。

さ らに同第20条の 5の 6(大 阪大学 健康体 育部 及 び健 康 体育 部長 )に は,「大 阪大学 に, 健康 科学 及 び体 育科学 に関 す る教 育 研究 を行 うとと もに,職 員及 び学 生 の保健管理並 びに 体 育指 導 に関 す る専 門 的業務 を行 うため の組 織 と して,健 康体 育部 を置 く。」 とあ る。

前記 の86施設 は 「学 生 の保 健管 理 の ための 厚生 補 導 の施 設」 で あ り, これ に対 して後三 者 は 「研究 教 育施 設 で あ り,か つ職 員 の保 健 管 理 も行 う施 設 (組織 )」 で あ る。 したが っ て, この両群 は性格 ・機能 と もに大 き く違 っ て い る。

富 山大学 保 健管理 セ ンター は,前 記 の86施 設 (「学 生 の保 健 管 理 の た め の厚 生 補 導 の施 設」)に 属 す る。

と ころが,上 にみた よ うに,富 山大学 保健 管理 セ ンター規 則 の第 1条 には 「本学 に学生 及 び職 員 の保健管理 に関 す る専門 的業務 を一 体 的 に行 うため,保 健管 理 セ ンターを置 く。」

とあ るので,「 国立学 校 設 置法施 行規 則」 と

「富 山大学 保 健管 理 セ ンター規 則」 とは,内 容 に 2つ の点 で明 らか な違 いがみ られ る。 つ ま り,① 本学 の場 合,セ ンターが保健管理 を 行 う対 象 は,「学生」 だ けで はな く,「学 生及 び教職 員」 とされて い る こと,② 「国立学校 設 置法施 行規 則」 で は施設 の性 格 が 「厚生補 導 の施 設」 と明記 され て い るが,本 学 の規 則 で はいか な る性 質 の施設 であ るかが明記 され て いない こと,で あ る。

この違 いは,お そ らくセ ンター規 則制定 に

あた って,先 行 す る他大学 の規 則 を引用 した ため に生 じた もの と思 われ る。

参 考 の た め に先 行 の他 大学 の規 則 を縦 覧 し て み る と,保 健管理 の対 象 を 「学生」 に限 っ て い る もの と,「 学 生 及 び教 職 員」 に まで拡 大 して い る もの とが混 在 す る。 前者 の例 は, 医学 部 の あ る大学 で は金 沢 大学 ,東 北 大学 , 鳥取 大 学 な ど,医 学 部 の な い大学 で は静 岡大 学,東 京学芸大学,宮 城教育大学 な どで あ る。

後 者 の例 と して は,医 学 部 の あ る大学 で は, 東 京 大学 ,山 口大 学 ,二 重 大学 ,千 葉 大学 な

ど,医 学部 のな い大学 で は佐賀大学,埼 玉大 学 ,茨 城 大学 な どが あ る。

前 者 の例 と して は,金 沢大 学 の セ ンター規 程 第 1条 に 「セ ンター は金沢 大学学 生 の保 健 管理 に関 す る業務 を行 うことを 目的 とす る」, 後 者 の例 と して は,静 岡大学 保 健管理 規 則第 8条 に 「セ ンターは本学学 生及 び職 員 の保健 管理 に関 す る専 門 的業務 を一 体 的 に行 うこと を 目的 とす る」 と書 かれて い る。

次 にセ ンターの施設 と して の位置づ けをみ る と, <厚 生補導施設 で あ る >と 明記 した規 則 は調 査 の範 囲 内 で は見 当 た らな い。 その原 因 と して は,保 健 管理 セ ンターが学 生運動 が 激 しか った時期 に設 置 され た とい うことが あ る。実際 にK大 学 では<厚 生補導施設である>

セ ンター設 置 に学生 が猛 反対 した とい うい き さつ が あ る。 したが って各大学 で は 「厚生補 導施 設 」 とい う表現 を意 図 的 に規 則 か ら外 し

た可能性 が あ る。

そ う した経 緯 を た ど る と, <セ ンター は (小 さいが学 部 並 み の)独 立 機 関 で あ る >と はい うものの,実 際 は<厚 生補導施設である>

とい う本来 の制 度 的 な仕組 みが潜在 して いる ので あ る。

この問題 はセ ンター職員 (特に教員)に とっ て重要 な課題 で あ るに もかかわ らず, これ ま で真 剣 に議論 されて こなか った。 その理 由 は

「常 勤 教 員 2名 とい う小 さな組 織 で あ る こと と,セ ンターの意思 を評議 会等 の大学 の中枢

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的 な意思 決定機 関 に直接訴 え る手段 が なか っ た」 か らで あ る。 その ため に,セ ンターの教 員 は厚生 補 導施 設 の職 員 と して の処遇 を受 け なが ら (た とえ ば,② に記載 したよ うに,大 学 と して の重 要 な意 思 決定 をす る場面 に参加

して いな い。 その他,厚 生補導施設職 員 な ら で はの煩 瑣 な雑務 が多 い),そ の一方 で 「大 学 中枢 の決 定事 項 」 につ いて は 「学部 の教 員 並 み の義務 が課 され るの は当然」 (た とえば, 教 養部 廃 上 に伴 う教 養 教 育科 目担 当 の義務)

とい うよ うに,矛 盾 した多数 の思 い込 み (学 部 所 属 の教 員 は, こ の よ うな他 部 局 の問題 に 煩 わ され るの を好 まず,セ ンター教 員 も自分 た ち と同 じ権利 ・義務 を もって い る もの と思 い込 んで い る)に 支配 されて きた。 しか もそ の ことを反論 す る公式 の場 が ない, と い う不 利 な立場 に置 かれ て い る。 したが って,セ ン

ター新設 の時点 にお いて,お そ ら く先行 す る 他大 学 の規 則 を参 考 に して形 式 的 に定 め られ た,現 行 の セ ンター規 則 は,実 際 に運 用 して み る と不都 合 な ところが多 い。 取 りあえず, A「 セ ンターの教 員 は厚生補導施設 の職 員」

なのか, B「 学部教 員 と同 じ権利 ・義務 を有 す る職 員」 なのか,は っき りさせ る必要 が あ る。 これ まで は, C「 学部教員 と同 じ義務 は 有 す るが,権 利 は もた な い厚生 補 導施 設 の職 員」 と して遇 され て きた。

しか し,「 大学 開放」 の社 会 的要 請 は確実 かつ現実 的 に,セ ンターに も及 んで い る。

社 会 か らの具体 的 な要 請 の うち,特 に 「直 近 の県 0市 町村教育委 員会 な ど,教 育関係機 関 か らの要 請 に限 って」 みて も,そ れ らを具 体 的 に列記 す れ ば以 下 の通 りで あ る。

・ス クール ・カウ ンセ ラーの派遣

・現職教 員の研究生 (内地留学生)の 受 け 入 れ

・地域教育活動 の支援

・自閉症児,ADHD児 , LD児 ,精 神遅 滞 児,情 緒 障害 児 な どの ケ ア と教 育 活動 支援

実 例 を挙 げ る と, 「 平 成 1 4 年 4 月 1 日 か ら 女性 現職 教 員 ( 高校, 中 学各 1人 )が カ ウ ン セ リング及 びその周辺科学 の研究 のため,セ ンターの N助 教授 の指導 をお願 い したい」 と い う県教委 か らの依頼 は,同 年 2月 7日 のセ ンター運営委 員会 によ って了承 され た。 つ ま り, 当 運営委員会 にお いて は,上 記 の 「厚生 補 導」 云 々の字 句が少 な くと も教育 ・研究 に 関 して セ ンター教員 の業務 を制 限 す る もので はな い, と解釈 され たので あ る。 む しろ,今 後 は, 時 代 の趨 勢 に合 わせて学 内規 則 の改正 を促 して ゆ く必要 が あ るで あ ろ う。

3   将 来構想

セ ンターで は,所 期 の 目標 を達成 す るため に,(1)定 期及 び臨時 の健康診断,(2)身 体 的 ・精 神 的健 康相談 及 び指導, ( 3 ) 環 境 衛生 及 び伝染病等 の予 防 につ いての指導, 援 助 を 行 って きた。 しか し, よ り積極 的 な健康維持 に は個人個人 の 「健康 の 自己管理」 が もっと も重要 で あ る。 この 「健康 の 自己管理」 を行 うに は, 健 康 や疾患 につ いて の正確 な知 識 を 有 す る ことが不 可 欠 で あ る。 そ の ため に は健 康教 育 が是 非 と も必要 で あ り,   これ を行 うこ とで セ ンターの理念 ・目標 を更 に一歩前進 さ せ る ことがで きる。

この ため に,現 在 は健康管理 の施設 と して 位置づ け られて いるセ ンターを, 将 来 は研究 ・ 教 育 の施設 と し, 全 学 の健康 管理 と健 康教 育 を一 体化 した専 門的業務 を行 う施 設 と して整 備 す る こ とな どの検討 が必 要 で あ ろ う。 この ことは,前 項 で述 べ たよ うに,社 会 の要請 に 添 う道 で もあ る。

4   沿  革 (省略 ;既 に 「学園の臨床研究 No.1」

に掲載 した [1])

本 学 の学 生 及 び職 員 の保健管理 に関 す る こと 1   入 学者選抜時 の健康状況 の審 査

2   入 学者選抜時 の健康診 断判定基準

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富山大学保健管理 セ ンターの自己点検 ・評価 について

(この 2項 目は,一 括 して検討 す る方 が,能 率 的 で あ る)。

毎年 ,「文部 省高等 教 育 局長 通知 」 の形 式 で, 入学者選抜実施要項 が通知 され るが, この う ち 「健康診 断」 はほぼ下記 のよ うな内容 にな っ て い る。

①  入 学 志 願者 の健 康 状 況 の把 握 は,調 査書 の 「健 康 の状 況 」 の欄 の記 載 に よ る もの (現役 と前 年 度 高 校 卒 業者 の場 合), これ以 外 の年 度 の高 等 学 校 卒 業者 及 び大学 入学 資 格検 定 合格者 等 ,調 査書 を提 出す る ことが で きな い者 につ いて は調 査書 の 「健康 の状 況」 の欄 の記載事項 につ いて医師 の作成 し た診 断書 を提 出 させ,そ れ によ って行 う。

②  入 学 者選 抜 に際 して健 康診 断 に よ り不合 格 の判 定 を行 うにつ いて は,疾 病 な ど心 身 の異常 のため志 望学部 ・学科等 の教育 の 目 的 に即 した履 修 に耐 え な い こ と,又 は伝 染 病 な とによ り集 団生 活 に適 さな い ことが, 入学 後 の保 健指導等 を考慮 して もなお明 白 な場 合 に限定 す る ことが望 ま しい。

本 学 の場 合 ,「 入学 者 選 抜 時 の健 康 状 況 の審査」,「入学者選抜 時 の健康診 断判定基 準」 は,上 記 の局 長通 知 に準 拠 したか た ち で施 行 されて い るが,実 際 に は,毎 年 ,入 学 試 験 実 施委 員会健 康診 断専 門委 員 会 (学 生部主導)で 審議 ・承認 され た 「富 山大学 入 学 者 選 抜 健 康診 断実 施 要 項 」 (以下 ,健 診実施要項)に 基 づ いて行 われ る。

健 診 実 施 要 項 に よ る と,「 入 学者 選抜 時 の健康状況 の審査」 は副学長 の依頼 によ り セ ンターが 行 い,審 査 は,「 富 山大 学 入学 者 選 抜 健 康診 断判 定 基準 」 に基 づ き行 う,

ことにな って い る。 この 「健康診 断判定基 準 」 の決 定 は,事 実 上 ,学 部 の専権事項 と されて い る。 また,近 年,入 学者選抜方法 が複雑 にな り,そ れ に連 れて 「入学者選抜 時 の健 康状 況 の審 査」 の回数 が急増 して い る。 そ の上 ,「 健 康 状 況 の審 査」 の期 間 ま で も各学部 が ほ しい ままに決 め る ことが あ

り,セ ンターが その しわ よせ を受 け る こと が少 な くない。

したが って,以 下 の理 由か ら, こ の審 査 業務 は各学 部 か学 生 部 入試 課 が行 な うべ き で あ る と思 う。④ 「判 定基準 の決定権」 が 学 部 に あ る こと (セ ンターには無 い)⑤ 審 査業務 をセ ンターが担 当す る とい うの は, 入試 関係 の仕事 を専 門 に行 うための組織 で あ る入試課 が未 だ存在 しな い時代 に暫定 的 に と り決 め られ た ものであ る こと,◎ 審査 に は専 門的知識 を必 要 と しない (通常 の文 字 と数 字 が読 めれ ば よい)こ と,で あ る。

したが って, これ らの事項 に関す る自己 点 検 も,学 生 部 や各学部 で行 うのが適 当 と 考 え る。

なお,身 体 に障害 (学校教 育法施 行 令第 22条の 3に 定 め る身体障害 の程度)の あ る 入学志願者 は,受 験 及 び修学 の際 に特別 な 配 慮 を必 要 とす る ことが あ るので,出 願 に 先立 ち,本 学学生部 と協議 をす ることにな っ て い る。 それ を受 けて,入 学試験実施委 員 会健康診 断専 門委 員会 (各学部 か ら 1名 , セ ンター医師 1名 の 6名 で構 成)が 当該志 願 者 に対 す る受 験 時 の特 別 な配 慮 等 につ い て 検 討 して,具 体 的 な回 答 を行 って い る (し たが って, こ の事 項 は学 生 部 が主 体 的 に 自己点検 0評 価 を行 うもの と考 え る)。

本 学 の場 合,「 入学 者 選 抜 時 の健 康状 況 の審査」,「入学者選抜 時 の健康診断判 定基 準」 は上 述 の通 りで あ るが,現 在 の富 山大 学 入学 者 選抜 健 康診 断判 定基 準 が制 定 され る まで には,相 当 な時間が必要 で あ った。

す なわ ち,昭 和54年度 まで入学者選抜 に 適用 されて いた健康診断判定基準 で は 「C」

判定 (不合格 )に 該 当 す る と して;列 挙 さ れ た疾 患 ・障害 が 「ハ ンセ ン氏 病 」 「トラ コー マ」 「性 病」 な ど時代 錯 誤 の感 じを免 れ なか った。 そ こで,セ ンターの働 きか け に よ って,昭 和55年11月 7日 に 「判 定基準 に関す る専門委 員会」 が発足 し,判 定基準

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の根 本 的再 検討 を開始 した。 当時 の問題点 と して は,「 募集 要 項 」 と 「内規」 との間 に書 かれ た判定基準 が違 うこと,判 定 を行 う校 医 によ って A, B, Cの 判 定 に個 人差 が生 じる恐 れが あ る こと等 に関 して一 般 的 な審議 が お こなわれ た。 さ らに,学 部学 科 に よ って は 「色覚異常」 につ いて の偏 見が 根 強 く, 改 善 を求 め るセ ンター との間 に激 しいや りと りが交 わ され たが,そ の後 の社 会情勢 の変化 はセ ンターの主張 を後押 しす るか た ち とな り,判 定基準 は大 幅 に緩 和 さ れ る こ とに な ったので あ る。

3   健 康診 断 の方法 と状況

本学 にお け る健康診 断実 施計 画 は, 例 年下 記 の通 りで あ る。

①   企   画

健 康診 断 の実施 にあた って は, 医 学部 の な い本学 は,他 の機 関 か ら医師 と看護婦 の 派遣 をお願 い しな けれ ば な らな いの で, 企 画 に はお のず か ら制 限 が あ る。 現在 の とこ

ろは富 山医薬大学 の協 力 を得 て,な ん とか 凌 いで い る とい うと ころで あ る。

②   実 施 状 況

学 生 数 ( 主と して, 大 学 院生 の) 増 加 に 伴 い, 院 生 の健 康診 断 日を増 や して対 応 じ て い る。 さ らに, こ こ数年来,結 核 の流行 が再 び問題 視 され るよ うにな り,セ ンター で も胸部 X線 検 査 の受診 を PRし て きた。

その効 果 が あ って,胸 部 X線 検 査 の受 診率 が 向上 した。 そ こで12年度以 降, この検査 に要す る経 費 を各学 部 に負担 して もらうこ とにな った。 しか し,後 述 の よ うに運営 費 削減 が 健康診 断 の実 施 を著 しく困難 に しつ つ あ る。

③   未 受 診 の理 由

健 康診 断 の実施 日程 につ いて は, 各 学 部 等 で教 授 会及 び掲 示板, セ ンターの ホー ム ペ ー ジ等 によ り周知す るとと もに,検 診 当 日は一 部 体講等 によ り受診 の便宜 を図 って

い る。卒 業年次 の学 生 につ いて は就職,進 学 の た め,及 び新 入生 の受診 率 は高 いが, その他 の学生 は受診率 が低 く,健 康診 断 の 重要性 に対す る自覚が足 りない と思 われ る。

④  問 題 点

受 診 率 の低 さは,「 健康 管理 に対 す る意 識」 の低調 さによ る もの とみ られ る。 この 傾 向 は他大学 にお いて も同様 で あ る。受 診 率 向上対策 と して,検 診時期及 び 日程 の見 直 し,a.周 知 方 法 の改善,b.未 受 診者 の 健 康診 断 書 発 行 停止 の明確 化 ,c.受 診 し や す い環 境 整 備 ,d.学 部 教 員 の協 力等 に つ いて検 討 を要 す る。 d.に つ いて は後 述 す る。

なお,健 康診 断 に伴 うセ ンターのサ ー ビ ス と して は,た とえ ば就職試験,大 学 院受 験 等 に当 た って発行 す る 「健康診 断書」 が あ る。 健康診断書 は,毎 年約二千 を 自動証 明書 発行機 を含 め窓 口で発 行 して い るが, 学 生 個 々人 の診 断結 果 を デ ー タ ・ベ ー ス化 す るため に多大 な労力が必要 とな って いる。

⑤  職 員 の健康診 断

本学 にお いて はセ ンター設 置以前 か ら, 職 員 の定 期 健康診 断 ・健康管理 は人事課 任 用係 の所掌 で あ ったが, これ はセ ンター設 置後 も,そ の まま継 承 され,今 日にいた っ て い る。 なお,先 年 の当委 員会 で,委 員 の 一 人か ら 「職 員の健康診断 も,守 秘 の必要 上 ,セ ンターが行 な って欲 しい」 とい う意 見が 出 され た。 そ こで, この ことを人事課 に照 会 した と ころ,「 健康 診 断 の結 果 を人 事 院 に報告 す る義務 が本学 の人事課 にあ る。

それ で事務 を能率 的 に行 うための便法 で あ る (人事課 で健康診 断 を直接実施 し,そ の 報 告事 務 も同 じ人事 課 が行 って る, と い う 意 味)」 (人事課述)と い う説 明が あ った。

したが って, こ の点 に関 す る自己点検評 価 は,今 後,人 事 課 を含む事 務 局 と,当 委 員会 との間 で意 見交 換 を しなが ら平 行 して 進 め るほ うが よ い,と 考 え る。

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富 山大学 保健管理 セ ンターの 自己点検 ・評 価 につ いて

4   心 身 の健康 と保健 に関す る相談 及 び指導 セ ンターにお け る心 身 の健康 と保健 に関す る相談及び指導 は,精 神科医師,カ ウンセラー, 看護 婦 , そ れ に非 常 勤 医 師 に よ って行 われ て い る。受診希望者 はいつ で も申 し込 む ことが で きるが,時 間 の調整 がつ か な い ときは改 め て受診 日時を打 ち合わせ る,と い う方法を とっ て い る。 他大学 で は,受 診 時間 を厳 しく限定

して い る と ころが少 な くな いが,そ の点,本 学 セ ンター は学生 へ の サ ー ビスが よ り行 き届

いて いる といえ るだ ろ う。

なお,大 学 院生 の相談 件数 が ここ数年,増 加 傾 向 にあ る。

5   健 康 と保健 に関す る相談体制

①   身 体 的疾 患 ・外傷等 に関す る相談 は,常 勤 医 師 ( 1 名 ) 及 び非常 勤 医 師 (5名 ), 看護婦 ( 常勤 2 名 ) に よ って行われている。

セ ンターには,人 員 0設 備 ・器材 ・薬品等 の面 で制約 が あ るので,能 力 を超 え る症 例 につ いて は適宜,専 門 の医院 や病 院 に紹 介 す る こ とで任務 を全 う して い る (しば しば 病 歴 , 所 見等 の詳細 な紹 介状 を添 え る)。

②   就 学 上 の問題 や神経症 を初 め とす る種 々 の相談 は,精 神 医学 的,臨 床心理学 的 な立 場 か らの アプ ローチを行 って い る。 ただ, 問題 を もちなが ら誰 に も相談 をせず に, 長 期 留年 , 退 学 を して ゆ く学生 が常 に相 当数 存 在 す る ことは, な お ざ りにで きな い問題 で あ る。

各学 部 にお いて もこの ことを等閑視 して きたわ けで はな い。 従来,学 生 の履修相談 を初 め と して,学 生生活 全般 に及ぶ助言 ・ 指 導教官 は制度 的 には早 くか ら設 け られて

い た。 教 養部在籍期間 にあ って は,教 養部 教 官 に加 え て, 各 学 部 か ら選 出 され た教 養

部助言教官とが,適宜対応するものとされ

ていたのがそれであ り, 専 門課程で は, 卒

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学 科 ・教 科 等 で選 出 ・指 定 され た教 官 が助 言 教 官 とな り, 学 生 の指 導 ・助 言 に当 た っ て いた。

旧教養部 の廃止 に伴 い, 補 導協議 会か ら 旧教養部 時代 の助言教官制 度 に代 わ る新 し い制度 を設 けるよ うに要請 が な され,各 学 部 が これ を受 けて新 しい助 言 教官 制 度 を設 け る ことにな った。 助言教官 ・指導教官制 度 は きわ めて重要 で あ り, 大 きな成 果 が期 待 され る と ころで あ る。

一 方,セ ンターで は,精 神医学的 ・臨床 心 理学 的立場 か ら, 学 生 の相談 に応 じて き たが, これ はあ くまで も個別 の学生 とカ ウ ンセ ラー (あるいは医師)と の 2者 の治療 関 係, あ るいは個 別 の学生 ・指導教官 とカ ウ ンセ ラー (あるいは医師)と の 3者 の治 療 関係 とい った もの で あ る。 したが って,

セ ンターを訪 れ ない学 生 の動 向 を把握 し, 適切 な援助を行 うとい うことは不可能 といっ て よ く,そ れ らの学生 の うちで各学部 の助 言教官 0 指 導教官制 度 を利 用 しな い もの に つ いて は,大 学 と して手 の打 ちよ うが な い とい うのが現状 で あ る。 そ う した学 生 を救 済 す る こ とは きわ めて困難 で あ るが,各 学 部 の教職 員, セ ンター職員が連携 して,各 々 が もって い る知識 や情報 を有意義 に活 用 す る こ とが で きれ ば,不 適応学生 を一 人 で も 多 く救済 で きるので はないか と考え られ る。

平 成 6 年 度 に設 け られ た F 富山大学学 生相 談 の在 り方検討委 員会」 で は この よ うな問 題 を話 し合 い, 「 富 山大学 学 生 相 談 連 絡 会 議」 が設 け られ たが,   これ を発展的 に解 消 して,「 富 山大学 学 生 相談 室 」 の設 置 に向 けて検討 が始 め られ た。

6   休 ・退学,留 年 の状況 と対応

この事項 は,不 適応学生 の問題 に関連 して, 広 い意 味 で はセ ンターの業務 に関係 が あ る,

とい え よ う。 しか し, セ ンター は相談 に訪 れ た学 生 を通 じて, そ う した学生 の ご く一部 の

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情 報 を得 て い るだ けで あ る。 したが って, こ の事項 を 自己点検 ・評価 の対象 にす るの は, 第一 義 的 には各学部 及 び学生部 で あ ろ う。 セ

ンターは 5に 記 した 「富 山大学学生相談室」

等 を介 して各学部 との連携 を深 め,全 学 的 な 視野 の もとで この問題 に対応 すべ き もの と考 え られ る。

セ ンター と して は,現 在, この問題 を業務 とい うよ り も,む しろ調査 ・研究 の対 象 と受 け とめて い るので, 6の 項 目は次 の Ⅲ (研究 の項 目)で 取 り扱 うのが適 当か と思 われ る。

しか し,体 ・退学学生 の増加 は,セ ンターの 相 談 業 務 を質量 と もに圧迫 して い る こと も事 実 で あ る。

昭和 5 3 年に東京近辺 の大学 の保健管理 セ ン ター勤務 の精神科 医 を中心 にカ ウ ンセ ラーな どが集 ま って 「大学 精神衛生研究集 会」 を結 成 した。 この会 で は昭和 5 4 年度 か ら体学 ・退 学 ・死 亡 ・留 年 の学 生 につ いて調 査 を継 続 し て お り,本 学 もこれ に参加 して い る。 その調 査 結果 の関係 分 を要 約 す る と, a ) , b ) の 通 り で あ る。

a ) 9 0 年 代 に入 って,休 学 す る学 生数 が きわ めて多 くな って い るが, これ は全国的 な傾 向 で もあ る。 全 国 の国立 大学 の体 ・退 学 率 も9 0 年代 にな る と高 くな って い る。 これ は 当初 , 円 高 を反 映 して外 国留 学 が激 増 した た め,つ ま り精神 的 に は健康 な体学 が増 え た とみ られ て い た。 しか し,そ の後留学 の 動 機 が必 ず しも健 康 な向上心 に基 づ くもの で はな い, と も言 われ て い る。 大学 と して

も一 考 を要 す る問題 で あろ う。

b ) 留 年 につ いて は,特 に次 の 2点 を指摘 し て お きたい。① 入学 者選抜 方法 の多様化 に つれて,学 生 の基礎学力 にば らつ きが生 じ, 単 位取 得 に不安 を もつ学生 が い る。②教 養 部 廃 止 に伴 う 4 年 一 貫教 育 の ため に, 従 来 は専 門移 行時 に把握 で きた 「教 養留年」 が 事 実 上 な くな った。 それだ け学 生 の単位取 得状況が分か り難 くな り, 学 部教員の助言 0

指 導 の重要性 が一層高 ま った といえ る。

研 究活動等 に関す る こと 1 研 究活動 及 び 2 研 究体制

セ ンターの研究施設,設 備 は貧弱であ り, 教 員 も 2名 で,か つ専門分野 が違 ってお りこ の状態 は現在 の機構,人 員数が変わ らぬ限 り, 長 く続 く可能性 が大 きい。 セ ンターにお いて 基 礎 的実験 等 を行 な うには,施 設面,被 験者 (ま た は動 物 )の 手 配 ,入 手 な どが きわ めて 困難 で あ る。 また,臨 床研究面 で は,入 院施 設 が な いの で症 例研究 が非能率 的 で あ る。 こ

う した点 を改善,補 正 して研究活動 を活発 に 行 な うに は,医 学部等 との交流,提 携 が必要 で あ る。

なお,セ ンター教 員 の論文 は従来 それぞれ が所属 す る学 会誌等 に投稿 して いたので あ る が,平 成 12年度 に はセ ンター紀 要 「学 園 の臨 床 研 究 」 No.1,同 13年度 に は 同No.2を 刊 行 した。

教 員組織 に関す る こと

1   教 員 の採 用, 昇 任 の選考基準 と方法 本学 の採 用, 昇 任 の選 考基準 に則 って行 な われ, セ ンター と して独 自の方 法 はな い。

セ ンターの教 員 は学生相談 に携 わ る とい う 特 殊性 が あ るため, 選 考 に際 して人格 面 を重 視 す べ きで あ る こ とはい うまで もな い。 しか し, 選 考委 員 の多数 が 各学部選 出の教 員 で 占 め られ るの はやむを得 な い と して も, そ の結 果 と して学部 の業績 本位 の考 え方 が その まま 選考過程 に もち こまれ ないよ うにす る必要 が あ る。

なお, 北 海道大学 保健管理 セ ンター自己点 検 ・評 価報 告書 ( 1 9 9 5 ) は, 上 記 の点 を批判 し て以下 のよ うに述 べて いる : 「簡単 にいえば, 保 健 管理 セ ンター本来 の業務 に真 剣 に携 われ ば携 わ るほ ど, 「業 績」 が 0 に 近 づ くとい う 現実 的矛盾 が あ る ( 本間所長 1 9 9 5 ) [ 2 ] 。

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富山大学保健管理セ ンターの自己点検 ・評価 について

2 教 員 の採 用計画 と配 置状況

教 員 2名 とい う枠 内で, この問題 を論 じる ことは実益 に乏 しいであ ろ う。

3 非 常勤講 師 の採 用計画 と配 置状況

現状 で は, この項 目はセ ンターの 自己点検 に不 向 きで あ る。 ただ,将 来 にお いて相談業 務 を多角 的 に展開 す るとすれ ば,常 勤教 員 が カバ ーで きな い分野 を非常勤講 師 に委 ね るこ とは考 え に入 れ る必要 が あ ろ う6

職 員組 織 に関す る こと

1 職 員 の採用計画 と配置状況    (略 ) 2 職 員 の研修方針 と状況      (略 )

管理 運 営 ・財政 に関す る こと

1 保 健管理 セ ンター運 営委員会 の機能 と構成 本 学 保健 管理 セ ンター規 則 によ ると, 第 5条  セ ンターに関 す る基本 的事項 を審議 す るため,保 健管理 セ ンター運 営委 員会 (以 下 「運 営委員会」 とい う)を 置 く。

第 7条  運 営委 員会 は,次 の各号 に掲 げ る委 員 を もって組織 す る。

(1)所 長

(2)セ ンターの専任 の教員

(3)各 学部 か ら選 出 され た教授  各 2人 (4)学 生 部長

2 前 項第 3号 の委 員 の任期 は 2年 とす る。

ただ し,再 任 を妨 げない。

2 所 長 の選 出方 法

昭和 50年に セ ンターが新設 され た とき,初 代 所 長 に選 出 され た教 養 部 教 授 有 沢 一 男 氏 (保健 体 育 )は 以 後 7年 の長期 にわ た って所 長 (併任 )を 務 め られ た。 これ は,セ ンター の基礎 固 めの必要 か らで あ った。 以後,教 養 部 と各学部 か ら所長 が推薦 され, 2年 ごとに 学 部 もち まわ りの形式 で交代 す る とい う,い わ ゆ る ローテ ー シ ョン方式 を試行 して きたが, 平成 7年 度 で全 5学 部 を一巡 した ことになる。

そ こで平成 8年 度 か らセ ンター教授 が所長 を 勤 め る ことにな ったが,   この所 長 選 出方 法 を どの よ うに した らよいのか,今 後 の検討課題 で あ る。

3   管 理運 営体制 と意志決定

セ ンターの専任 の教 員 (特に医師)が 所長 の場 合,運 営委 員会委 員長 と して司会 を担 当 す る ことにな る。 しか し, 医 師 はセ ンター業 務 の計 画, 執 行 な どす べ て にわ た って担 当す るため,委 員会 の質疑 すべ て に回答 を求 め ら れ る ことが多 い。 したが って司会者 と回答者 の双方 の役割 を同時 に行 うとい う不都合 が生 じる。 この場 合,司 会者 を所長 が指名 で きる よ うな配慮 が必要 で あ る。

4   事 務機構組織 と業務 の運営及 び研 究体制 の 連 携

セ ンターは,制 度上,学 内 の厚生補導施設 とい う 「事務組織等」 に所属 して い る。

その ため に,学 内的 に も 「セ ンター教 員 や 組織 ・機構」 に対 す る理解 が不十分 で あ る。

本 学 保 健 管理 セ ンター旧規 則, 第 1 5 条によ れ ば,「 セ ンターの庶 務 は,当 分 の間,学 生 部 厚生 課 にお いて処 理 す る」 とあ る (現在 の セ ンター規 則 の11条は,「 セ ンターの庶務 は, 学 生 部 厚 生 課 にお いて処理 す る。」)。 本学 セ ンターは昭和50年に設置 されたのであ るか ら, 第 1 5 条の い う 「当分 の間」 は優 に20年を越 え て い る。 セ ンターの庶務 は,セ ンター所属 の 事 務職 員 によ って行 われ る ことが望 ま しい。

文部 省 の見解 で は, そ う した問題 は学 内で 自 主 的 に解決 すべ き問題 で あ る, とい う。

過 去 2 0 有余年 の間 の経 験 か ら,「 セ ンター の庶務 を学生部厚生課 が処理 す る」 ため に生 じた不都合 の うちで,目 立 った ものを挙 げる。

①   セ ンターの庶務 は, 厚 生課の 「保健係」, 最近 で は主 と して 「専門職員 ( 保健) 」が 担当 しているのだが, 彼 らは, 第 一義的に は学生部長 ・厚生課長の もとに配属 された

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職 員 で あ る。 したが って, 彼 らが セ ンター の事務を とるときも,こ うした上司の指示 ・ 意 向 を反映 す る ことにな る。 学生部長 や厚 生課長 は通常 2 〜 3 年 ごとに交代す るうえ, 保 健 管理 に関 す る知 識 ・関心 0 熱 意 も千差 万 別 で あ る。 セ ンターに対す る理 解 もまた 同様 で あ る。

②   「 セ ンターの庶 務 を学 生 部 厚 生 課 が 処 理 す る」 とはいえ,実 際 これ まで にセ ンター の庶務 を担 当 したの は,常 に事 務職 員 1名 で あ った。 その ため,そ の職 員 に問題 が あ る と,た だ ちにセ ンターの仕事 に重大 な支 障 が生 ず る。

5   予 算編成 と執行配分方針 (略)

6   歳 入歳 出の決算 ( 略)

7   概 算要 求事項 の選択 ,決 定方法

①  文 部科学省 は, エ イズ, 結 核対策 などの 重要性 を強調す るが, 一 方で保健管理 セ ン

ターの運営費は, 平 成1 1 , 1 2 年度の両年度 で合わせて約1 0 0 万円ほど減額 されている。

②  セ ンターが設置 された昭和5 0 年度 とその 2 5 年後の平成1 2 年度を比べてみ ると, 学 部 在学学生数の増員, 更 に大学院学生 と留学 生の増加 などのため健康管理 を要す る対象 学生数 はほぼ倍増 した。

③   こ の間, 教 員 2 名 はその まま, 看 護婦 は 削減 されている。

このよ うに, 上 記①, ② , ③ の 3 点 だけ を とってみて も, 健 康管理 に関す る当該省 庁の考え方 は到底理解で きない ものがある。

また, 学 内の認識 も薄 く, あ まつ さえ, 教 員による学生への 「アカデ ミック ・ハ ラス メント」は増加の傾向がある。 この ことは, セ ンター教員に, 本 来の業務の範囲を越え た, 専 門領域外の過大な精神身体的負担を か ける結果 にな っている。

Ⅶ  施 設設備 に関す る こと

1   保 健管理 セ ンターの設 置位 置 と環境 大学 正門 の近 くの管理棟一 階 にあ り, 場 所 的 に は分 か りやす く利 用 に便利 で あ る。

2   診 療 室 と診療設備  及 び 3 検 査 ・衛生 と 関連 設備

この問題 を, ス タ ッフの人数,専 門 との関 連 を抜 きに して は考察 で きない。 したが って 1 ,   2 と もに満足 で きる もので はな いが,現 状 で は改善 の余地 は多 くない。

4   相 談 室

相 談 室 A ,   B が あ り, 来 談者 に対 して は, それぞれが専 門 に応 じた対応,治 療 を行 な っ て い る。 施設 は老朽化 して いて,冷 暖房,水 道設 備 な どに故 障が 目立 つ。

5   健 康教育関連施設

レク ・セ ラ ピー室 を設 けてお り,身 体 的 ト レーニ ング用品,囲 碁将棋 な どの遊具,健 康 教 育 用 の ビデ オな どが常 備 され て い る。 これ は全国的 に も希 少 な設 備 であ って,学 生 の人 気が高 く, 他 大学 か らも関心 を集 めて い る。

6   そ の他

X 線 撮影室 と同 フ ィルム現像室 (暗室)を 合わせ て, か な りの スペ ースが現 在 デ ッ ド ・ スペ ー スにな って い る。 この場所 を活 用すべ きで あ り, 毎 年営繕要求 を提 出 して きたが, 弱 小部 局 の ため, 学 内で の要 求 順位 が低 くこ の ままで は実現 で きそ うにない。

Ⅷ  自 己点検 ・評価体制 に関す る こと 1   自 己点検 ・評価 の項 目と方法 と体制

a ) 自 己点検 ・評 価 の項 目

自己点 検 ・評 価 の項 目は, 学 部 向 けの項 目を単 純 に準 用 した もので あ り, セ ンター に と って は不都 合かつ不要 の ものが少 な く な い。 この よ うに,「 自己点 検 を しな けれ

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富山大学保健管理 セ ンターの自己点検 ・評価について

ば な らな いか ら」 とい うので,漫 然 と項 目 を並 べ られて も,実 益 の あ る点検 にはな ら な いか も しれ な い。 しか し, これ は自己点 検 に限 った ことで はな い。 教 員 と して,た

とえ ば種 々の ア ンケー トヘ の回答,各 種委 員会 へ の委 員推 薦,学 内外 向 けの大学 の広 報 に関 す る執筆 な どの要 請 を受 け る ことが あ る。 しか し, どれ を と って も学部 とは性 格 が異 な るセ ンターの特殊性 は考慮 されず, ただ,漫 然 と同 じ内容,同 じ質 問,同 じ任 務 を要 請 され る ことが 多 い。 これ らは こと の本質,目 的 を考慮 せず に行 われ る事務処 理 を内容 の吟味 な しに承認 す る評議 会,各 種 委 員会 な どのせ いで あ る。 逐一 とが め る ほ どの ことで はな いか も しれ ないが,期 日 を設定 した無 目的で煩瑣 な雑用を強 い られ, 本来 の業 務 に差 し支 え る こと も しば しばで あ る。 こう した問題 こそ真 っ先 に改善 すべ きで あ ろ う。

b)自 己点検 の体制

上記 a)の 項 目」 とは うってか わ って,

「体制」 はユ ニ ー クで あ る。 自己点 検 ・評 価委 員 会 はセ ンター教 員 2名 ,各 学部 の運 営委 員会委 員 2名 の うちの 1名 に加 え て, 学 生 部 長 と厚生 課 長 の,合 計 9名 によ って 構 成 され る。委 員長 はセ ンター所長 が務 め る。

ユ ニ ー クとい うの は,委 員の圧倒的 多数 が セ ン ターか ら見れ ば外部 か らの参加 であ る ことであ る。 しか も運営委 員会を通 じて, セ ンターの現状 をか な りの程 度把握 で きる 立場 にあ り,た とえば 「検診 の時期 を変更 で きないか」 と自分 の属す る部 局 に好都 合 な要求 をす る こと も可能 な,要 す るに利害 関係 な しとはいえない外部 の第三者 である。

したが って,各 学部 が導 入 して い る外部評 価 のための委 員 よ りも,通 リー遍 で はな く, 問題 に よ って はか な り厳 しい評 価 うけ る可 能性 もあ る。 この ことは,セ ンターに と っ て は厳 しい とはいえ, 自 己点検 ・評価 の体

制 と して は,他 の部 局 よ り も優 れ て い る部 分 もあ るで あ ろ う。 ただ, こ う した委 員 た ちに と って セ ンターの業務 内容 は,な じみ の ない事柄 で あ るので,セ ンター教 員 と同 一 水準 で各事項 の点検 に参加す るとい うの は無理 で あ る。 したが って, まず セ ンター 教 員 が問題点 を取 り出 し,そ れ を解 説 的 に 文書 に ま とめて各委 員 に提示 す るとい う, 面 倒 な手 続 きが必 要 にな る。 これが 上記 の

「利点」 を減殺 す る 「欠点」 で あ る。 また, セ ンター教 員 にその分 の よ けいな負担 がか か るので あ り, 自 己点検 が本務 を圧迫 す る よ うな事 態 にな りかね ない。 そ うなれば本 末転 倒 で あ る。

2 評 価 と公表の在 り方 及 び 3 評 価 のフ ィー ドバ ックの しくみ と改善

セ ンターの運営 費が少 ない こと,教 員 の診 療 ・相談 0雑 務 (自己点 検 を含 む)な どの業 務 が増 えて い る ことは前述 した とお りで あ る。

この うえ,公 表 のための費用 と時間 を費や し, その効 果 が はた して どの程度期待 で きるか, 問題 が 多 い。 Ⅶ ‑6に も記 したよ うに,実 現 困難 な ことを表面 を糊 塗 して記 述 す る ことに どれ ほ ど意義が あ るのだ ろ うか。

3 そ の他

セ ンターの 自己点検委 員会 は,委 員が学 内 の教 員 で構 成 されて い るとはいえ,一 種 の外 部評 価 に近 い もの と考 え る。 したが って,他 学 部 ,事 務 局 の それ に比 して,厳 しい点 検評 価 が期 待 で きる。 しか し,一 方 で は学 部選 出 の委員 に レクチ ャーす る必要上,予 めセ ンター 教 員が草案 を作成 しな けれ ばな らない。 この ことは,Ⅷ の 2, 3に 記 した ことともあいまっ て,セ ンターの 自己点検評価 の在 り方 につ い て再考 を促 す もので あ る。

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Ⅸ  そ の他委員会が必要 と認める事項

◎  セ ンターの広報活動

現在, 広 報誌 「ほけかん」 を年 4 回 発行 し ている。 これは学生の自由な投稿を求めてい て, 学 生の評判 はよい。教職員の中に も次号 を心待 ちに しているとい う意見が寄せ られて い る。

学 内出版物 ( 「学園 ニ ュース」「学報」 な ど) に も執筆 を求 め られ る ことが多 く, これが広 報 の役割 を果 た して い る。

ホ ー ムペ ー ジは,現 在,全 学 の広報委 員会 と歩 み を と もに してお り,近 い将来,内 容 を 充実 させ る予定 で る。

む しろ,問 題 はセ ンターに関す る学部等 の 教職 員 の知 識 不 足 で あ る。 た とえば, 職 員 の 健康診 断 が セ ンターの仕事 だ と思 い込 み, い

きな り苦情 を寄 せて きた り,上 水道 の管理 の 苦 情 を寄 せ て きた り,   とい った ことが少 な く な い。 そ う した誤解 によ る,苦 情 をな くす よ う学部選 出の セ ンター運営委 員 の活動 に期待 したい もので あ る。

X   提   言

以上 の 自己点検 の結 果 を, 実 のあ る もの にす るため に以下 の提言 を行 いたい。

セ ンターの置 かれて い る状況 は, 学 生数 が増 加 す る一方 , ス タ ッフ数 は据 え置 か れ た ま まで あ る。 それ に加 え, 近 年 セ ンターの運営 費が減 額 され, 健 康診 断 す ら満 足 に行 え な くな るほ ど

で あ った。 これ は胸部 X線 検査費用 を学部 に負 担 して も らうことで, 一 時的 に凌 ぐことがで き た。 しか し一方 で は,昨 今 の大学 を取 り巻 く状 況 か ら, 将 来 に向 けて セ ンターの健康診 断 を含 む総合的 な保健管理 や カ ウ ンセ リング等 の機能 の充実 が い っそ う求 め られ るよ うにな るで あろ う。心身 の健康 が護 られ な ければ,勉 学 ・研究 の意 欲 は瓦解喪 失 し,「 本学 の教 育 と研 究 の理 念 ・目標」 ( 平成 5 年 2 月 1 2 日評 議 会 了承 )に

うた う高邁 な理念 ・目標 は空念 仏 に終 わ って し ま うで あ ろ う。 したが って セ ンターの組織 ・機 能 の充実 は社 会 の要請 で あ り, そ れが ひいて は 大学全体 の利益 に直結 して い るので あ る。 今後 は大学構成 員が その ことを理解 し,物 心両面 か らセ ンターの活動 を支援 で きる体制 を構 築 しな けれ ば な らな い。

この点 検評価報告 を通 じて,セ ンターの業務 の重要 さに関 す る認識 が深 ま り,セ ンターの充 実 が大学 それ 自体 の利益 で あ る ことに大学構成 員 の多 くが気 づ くことを期待 したい。

文    献

[ 1 ] 中 村剛, 西 村優紀美, 山 端憲子, 角 間純子 : 富 山大学保健管理セ ンターの歩みと現状. 学 園の臨 床研究 N o . 1 : 1 ‑ 6 , 2 0 0 0 .

[ 2 ] 本 間行彦 : は じめに、 北海道大学保健管理セ ンター自己点検評価委員会 (編):北 海道大学保 健管理 セ ンター自己点検 ・評価報告書 ( 緒言) , 1995.

参照

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