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(1)

5 0 0‑ ‑

分配可能利益算定機能と歴史的原価主義

榊 原 英 夫

は じ め に

会計理論は,様々な観点から分類されるであろうけれども,その結論が会計 実務において現に行なわれている会計方法を肯定するものであるか,否定す るものであるかといった観点から次のようなこつのタイプに大別できると考え られる。一つは,会計実務において現に行なわれている会計方法を,何らか の論理に基づいて擁護し,それを準拠すべき会計方法として提起する理論であ る。もう一つは,それを何らかの論理に基づいて批判し,会計実務において準 拠すべき別の会計方法を提起する理論である

O

前者の理論は,①現行会計実務の根底に内在すると考えられる基礎的概念 くたとえば,継続企業概念,スチュワードシップ概念,客観性概念〉あるいは

①現行会計実務が現に果たしていると考えられる基本的会計機能(たとえば,

利害調整機能,分配可能利益算定機能〉のいずれかに基礎を置いている。後者 の理論は,一般に,あるべき会計目的を設定し,その目的から演鐸される会計 方法を準拠すべき会計方法として提起する。本論文の目的は,前者の理論のう ち分配可能利益算定機能に基づいて現行会計実務の中核である歴史的原価主義 を擁護する議論を検討することである。

分配可能利益算定機能に基づく歴史的原価主義擁護論 実現主義の定義は論者により異なっているけれども,実現主義とは,財また は用役を引き渡し,現金ないし現金等価物を受け取ったときに収益を認識する

(2)

‑501‑

考 え 方 で あ る と 一 般 に 解 釈 さ れ て い る 。 こ の よ う に 実 現 主 義 に よ る 収 益 な い し 利 益 は , 現 金 な い し 現 金 等 価 物 に 裏 付 け ら れ て い る 。 し た が っ て , 実 現 主 義 に 基 づ く 利 益 は 分 配 可 能 な 利 益 を 表 わ す と の 観 点 か ら , 突 現 主 義 を し た が っ て そ れと表裏一体の関係にある歴史的原価主義を擁護する論者がし、る。かかる主張 は , 以 下 に 示 す 各 論 者 の 見 解 に み ら れ る 。 た と え ば ,

F

・スウェル・プレイ

( 1 )   実現主義は,本来,収益の認識についての原則を示すものであるが,利益の認識を 示すものとして用いられる場合がある。藤田教授(( 9) ,  13‑14 頁〉は,この点につ いて次のように説明している。

I

収益の認識と利益の認識とは明らかに異なるもので あるにもかかわらず,実現原則が, I r 会 計 5 原則』にみられるように,利益の認識な いしは末実現利益の排除を示すものとしてしばしば用いられることには,理由がない わけではない。すなわち,収益発生に先行して,対応関係をもっ費用が発生している とし寸前後関係がきわめて自然に予定されるからである。このように収益に先行して 費用が発生しているとしづ関係にもとづいて,通常の企業活動においては,収益の認 識時点の確定が基礎となって対応する費用が限定把握されることになる。いわば収益 の認識が行なわれないかぎり,それに対応する費用は把握し得ないことになる。ここ に収益認識基準たる実現原則が,しばしば利益認識基準ないし未実現利益の排除の原 則として理解される原因があると思われる。 J

実現主義による収益認識時点においては,収益の金額が確定していると同時にそれ に対応する費用も確定しているのが普通である。別言すれば,実現主義の下では,収 益に対応する費用が確定するまで,収益は認識されない。したがって,実現主義は収 益の認識と同時に利益の認識を示すものとして用いられる場合があると考えられる。

ジョン・ B ・キャニング(( 5) ,  p .   1 0 3 ) は,収益実現の条件のーっとして「そのサ イクノレで、発生しまたは発生するであろう費用が,

高度に正{i

在に見積られうること。」

を挙げている。

( 2 )   この他にも多くの論者によって,実現主義・歴史的原価主義の分配可能利益算定機

能にたし、する有用性が指摘されている。たとえば,木村重義教授((l 2 , J 38‑39 頁 〉

は次のように述べている。

I

もし'昌利経営の財務会計が,経営外の利害関係者のため

に有用な経営状況報告を第一義的な目的とすると見るならば,現行の会計方法を理解

することはできないので,その第一目的を分配可能利益の算定にあると解することが

もっとも適切であると見るのである。この目的観によってはじめて原価主義,実現主

義および保守主義と呼ばれている諸原理が成立し,存在してし、ることが理解できるの

である。」また,津曲教授 ( ( 2 4

)

4 6 頁) は,投資家が財務報告に対して要求するも

っとも基本的な課題として,

I

①彼らが経活者の管理のもとにおいた拠出貨幣資本の

願末が会計の全プロセスにおいて追跡可能であること。②彼らに対する分配可能利益

が確定されること」を挙げ,

I

取得原価主義は,実現主義とともに,かかる目的に応

える期間損益計算のための計算基準たりえた。」と述べている。

(3)

UUFhd 

( [  4  J

, 

p .   2 0 3 )

は「会計士にとって,利益はその分配に関する問題によって 大きな拘束を受けている。その結果,会計士は現金または現金等価物による実 現を強調している。」と述べている

O

また,

p

・タッガート

( [ 2 2 J

, 

p .   7 2 6 )  

は次のように述べている。

「会計上の利益は,処分可能な剰余であり,一期間内に処分可能なものであ

O

利益を商品の形態で支払うことができるなら,関連する問題はほとんどな いであろう。そして,我々は商品価値の上昇分を評価に含めるかもしれない。

他方,利益とその処分のために用いられるであろう現金との関連が我々の見解 を支配する

O

実際の販売から生じない利益は,利益計算から除去されるであろ う。その理由はそれが現実の利益ではない点にあるのではなしそれが分配の ために分離されえない点にある。かくして,我々は再評価基準の使用を拒み,

原価評価に固執することにより,そのような利益を次期の計算まで、持ち越す。」

また,分配可能利益算定機能にたいする役立ちといった観点からの実現主 義・歴史的原価主義の論拠は,未実現利益を認識する時価主義に反対する論拠 としても主張される。たとえば, レイモンド・

P

・マープル

( [ 1 4 J

p .   5 9 )  

は,次のように述べている。

「貸借対照表における時価の使用によって,ペーパー・プロフィトが報告さ れることになるとの事実に加えて,時価を使用する実務は,それが潜在的将来 利益の認識を表わすが故に,反対される。それは税金あるいは配当金の支払 いおよび機械設備の取得に利用できなし、。非貨幣性資本

(committedc a p i t a l )  

が流体資本(l

i q u i dc a p i t a l )

に転換するまで,資本の増加は有効ではない。つ

まり,利益は実現しない。」

以上述べた諸見解から,分配可能利益算定機能にたいする役立ちを論拠とす る実現主義・歴史的原価主義擁護論は,次のように要約できると考えられる。

①  企業会計上の利益は,分配可能な利益でなくてはならない。

② 

実現主義の下では,分配可能な形態の資産を受領した時点、で,収益は認 識される。また,実現主義は,未実現利益を排除する資産評価基準つまり

(4)

歴史的原価主義を必然的に導く原則でもある。

① 

したがって,実現主義・歴史的原価主義に基づく利益は,分配可能な利 益 を 表 わ す に 適 し て い る O そ れ 故 , 実 現 主 義 ・ 歴 史 的 原 価 主 義 は 適 切 な 基 準である O

この擁護論は多くの批判点をかかえているが,それについては次節で検討す ることとしここではこの擁護論を補足する意味で、次の三つの点を明示してお く。第一の点は,実現主義の定義または実現の要件ないしテストについて,会 計 文 献 上 多 種 多 様 な 見 解 が 提 起 さ れ て き て い る ぷ , 伝 統 的 な 実 現 概 念 の 下 で は

「分配可能な形態での資産の受領」が実現の要件ないしテストとされている点 である。たとえば,ウィリアム・ A ・ベイトンとアナリアス・ C ・リトルトン

( [ 1 6 J ,  p .   4 9 (

訳)

8 4 頁〉は次のように述べている。

「通説的は見解にしたがえば,収益は現金の受領や,受取債権その他の新し い 流 動 資 産 で 立 証 さ れ た と き に 初 め て 実 現 さ れ る こ と に な る 。 こ の 場 合 は 二 つ ( 3 )   分配可能は形態の資産の受領を実現の要件ないしテストとすることに反対する主張 もある。たとえば

3

シ・シャン・ユー ( ( 2 8 ] , p .   3 0 2 )は「伝統的な利益決定が『流 動性』概念に関連するのは,主として,実現主義が採用されているからである。利益 測定についてのこの流動性からの説明は,余りに限定されすぎている。」と述べてい る。また,ジョージ J ・ストーパス ( ( 2 0

)

p .   2 1 )は,次のように述べている。「古 い(実現〉概念は,資産の増加変化が現金または現金に直ちに転換できうる資産(我 々が短期的貨幣資産として現在考えているもの〉といった形態または負債の減少とい った形態で実現されないかぎり,いかなるそのような変化も勘定に認識しないといっ た点で,その概念の広範な利用には問題がある。」

分配可能な資産の受領を実現の要件とする伝統的な実現概念、から完全に離脱した,

新しい実現概念の代表的な例として我々は次に示すアメリカ会計学会1 9 5 7 年会計基準

( (  1    , J p .   5 3 8  

(訳)

1 3 2 頁〉における実現概念を挙げることができる。

1

実現の本質

的な意味は,資産または負債における変動が,会計記録上での認識計上を正当化する

に足るだけの確定性と客観性とを備えるに至ったと¥,、うことである。このような実現

の認識は,独立の当事者聞の交換取引が行われたこと,これまでに確立された取引上

の実践慣行にかなっていること,あるいは,その履行が実質的に確実視されるような

契約諸条件を基礎として行われることとなろう。

l

(5)

A

a

n U  

の テ ス ト が 暗 黙 裡 に 考 え ら れ て い る 。 す な わ ち , 第 一 に 法 的 な 販 売 ま た は 同 様 な 過 程 に よ る 転 換 , そ し て , 第 二 に 流 動 資 産 の 取 得 に よ る 確 定 ( v a l i d a t i o n ) で ある。」

また,エリック・ L ・コーラー ( [ 1 3 J , p .   3 9 6 ) は ,

I

実現する ( r e a l i z e ) J を「現金または受取債権(販売を通じて),あるいは用役(使用を通じて〉に変 わ る ; 取 得 し た 時 に 流 動 資 産 と し て 分 類 で き る 財 産 , ま た は す ぐ に 流 動 資 産 に 変えることのできる財産と交換する。」ことと定義している。ラッセル・ボワ

ーズ([ 3  J ,  p .   1 5 5 ) も 同 じ よ う に 「 実 現 と は , 価 値 増 加 を 処 分 可 能 な 形 態 に する行為または状態として定義されよう。」と述べている。

実現について,

I

分配可能な形態での資産の受領」といったテストが,従来,

一 般 に 採 用 さ れ て い た こ と は , ア メ リ カ 公 認 会 計 士 協 会 の 会 計 調 査 研 究 書 第 三 号 の ス タ ッ プ の 調 査 に よ っ て も 確 認 さ れ て い る 。 同 研 究 書 ( [ 1 9

p p .   14‑15 

〈訳)

1 2 8 頁 〉 に お い て は , 次 の よ う な 要 件 が 実 現 の テ ス ト と し て 列 挙 さ れ て いる。

( 1 )   その項目がすでに稼得されたものであるべきこと。

( 4 )   この他にも多くの論者によって, r 分配可能な形態での資産の受領」が実現のテス トとして,実務上伝統的に採用されてきたことが指摘されている。たとえば,チャー ルズ・ T ・ホングレン ( ( 1 1 ) , p .   3 2 4 ) は , r 現行会計実務の擁護者は,一般的に慣 習的純利益概念および慣習的実現テストに満足している。実務的/レールによれば,流 動資産との交換時(通常,財および用役の販売時〉に,実現は生じると考えられてい る。」と述べている。また, W.A. ベイトンと W.A. ベイトン] r ,  ( ( 1 7 ) ,   p .   2 7 8 )   は , r 製品と現金または確実な現金請求権とを交換するこのプロセスが, IT'実現』を構 成し,販売により測定される収益を『実現した収益』として記述することを正当化す る。」と述べている。また, R. F. サルモンソン((1 8 l p .   1 0 2 ( 訳) 1 2 4 頁 〉 も同様 な点を次のように指摘している。 r 合衆国最高裁判所は,資産価値における増加は資 本から分離され,そして処分可能なまたは分配可能な形態におかれたときにのみはじ めて実現利益を構成するものとなるとしづ判決をくだしている。そして,このような 考えは,販売一市場取引としてゆるく定義されたーがおこなわれ,そして流動(現金 または現金に近しう資産が受け取られたときに,実現は生じる,とし、う実務家の見地 の基底をなしている。 J

‑ 84‑

(6)

(2)  それが企業とある外部者との聞の取引で、発生した転換(

c o n v e r s i o n )

結果であるべきこと。

(3)  それが合法的な販売または〈上の(2)と関連する〉類似の過程の結果であ るべきこと。

(4)  それが資本から分離されたものであるべきこと。

(5)  それが(上の(4)と関連して〉分配可能な形態を採っているべきこと。

( 6 )  

それが(上の

( 5 )

と関連して〉流動資産によって裏付けられているべきこ

(7)  それが企業に及ぼした影響を正確に測定で、きるか,あるいは,その影響 の予測が信頼度の高いものであるべきこと。

前述した擁護論を補足する意味で計ヨ摘すべき第二の点は,次の点である。つ まり,その擁護論は,より直接的には実現主義を擁護する議論であるが,実現 主義は歴史的原価主義を必然、的に導く原則であり,両者は未実現利益の排除と いった点で、表裏一体の関係にあるところから,その擁護論は歴史的原価主義の 擁護論にもなっている点である

O

実現主義が歴史的原価主義を支持する原則で あり,またそれを必然、的に導く原則であることは,多くの論者により指摘され ている。たとえば,ジョージ

'R

・カトレットとノルマン・

0

・オルソ

γ([ 6]

, 

pp.35 ー 3 6 )は

i会計は,ほとんどの場合収益を認識するために実現主義の 原則を用いる。この原則の必然、的結果として,資産は原価基準によって貸借対 照表に計上されることになる。」と述べている。また, アメリカ会計士協会の 企業所得研究委員会([

2]

, 

p .   27 

(訳)

5 0

頁〉も「実現性の公準に関する最高裁 判所の主張は資産をそれが実現するまでは原価で繰越すべきだとする命題に支 持を与えることとなり,かくてまた会計文献で所謂『伝統的な原価主義』の樹 立に役立った。」と述べている

O

さらに, ロパート・ T ・スプローズとモーリ

ス・ムーニッツ

( [ 1 9 J

,p

.   1 6  

(訳)1

3 0

頁〉も同様な見解を次のように述べて いる。

( 5 )  

この他にも多くの論者によって,実現主義は歴史的原価主義を支持する原則である

(7)

‑506‑

カレントコスト

「貸借対照表と損益計算書とは,棚卸資産や有形償却資産の時価が高くな っていても,これらを歴史的原価で維持することによって,強制的に結びつけ られる。したがって,このような棚卸資産や有形固定資産の評価は,利益の算 定に適用される実現主義の副産物であって,資産それ自身の独立的な算定から 生まれたものではない。」

前述した擁護論を補足する意味で指摘すべき第三の点は,次の点である O つ まり企業会計上の利益が分配可能な利益でなくてはならないとの考えは,課税 所得概念の影響を大きく受けているという点である。たとえば,カール・トー マス・デパイン([ 8] ,  p p .   283‑284) は,この点を次のように説明している。

「法人(および個人〉所得税の驚くほどの負担は,税を支払う資金にたいす る必要性を考慮しない利益の定義には会計士が慎重に近づくべきであることを 意味する。事実,今日の税率の下での所得税によって,会計士は実務上実現ポ スチュレイトにしがみつかざるをえなくなっていると主張されている。配当の 支払いのために,借入を増やすことはできるが,かかる財務的方策は明確な限 界をもっている。」

また, ミッチェル・チャットフィルド([ 7] ,  p .   2 0 8 ) は「実現主義が一般 化するにさいして,課税の影響がもっとも重要であった。課税所得を決定する さいに用いられた取引アプローチおよび判決から,利益は稼得されるに先だっ て実現していなければならないとの考えが出現した。」と述べている O さらに,

ことが指摘されている。たとえば, M ・チャットフィノレド(( 7  J ,  p .   2 5 7 ) は , r 実 現ルーノレは,すべての資産は販売されるまで歴史的原価で評価されることを要求し た。」と述べている。また,植野教授 ( C 2 5 J , 72 頁〉は, r 原価主義をより積極的にさ さえるものとして,実現主義の原則がある。資産評価における原価主義と損益計算に おける実現主義とはある面では表裏一体をなしている。 J と述べている。また,若杉 教授 ( ( 2 7 ) , 6 3 頁〉はこの点について次のように述べている。 r 取得原価主義におい ては,資産は原則として取得価格をもって評価され,時価による再評価の結果として の未実現利益の排除が重要な意義をもっている。この場合実現は売上収益認識のため の規準であり,かつ未販売の資産の再評価から生ずる未実現利益の排除の規準である ともに,他方,資産評価における取得原価主義を支援する役割をも果している。」

‑ 86‑

(8)

R'F

・サルモ

γ

ソン

( [ 1 8 J

p p .   25‑26 

(訳)

33‑34

頁〉は「所得にたし、す る課税の会計理論におよぼした最大の影響は実現原則の発展に横たわってい る。」と述べ, 次に示すようなアイズナ一対マツコンパ一事件における最高裁 判所の見解を引用している。

「ここにおいてわれわれは本質的な問題をもっている。すなわち,資本にた いして発生する利得ではなく,投資における価値の成長または増価でもなく て,投資されたものであれ,使用されたものであれ,いわゆる資本から区分さ れ,派生するにいたって,ここに受取人(納税者〉によって彼の別の用途のた めに受取られまた引き出されるところの利得,利潤,すなわち財産から生じる 交換可能価値である……。」

分配可能利益算定機能に基づく歴史的原価主義擁護論 に対する批判

分配可能利益算定機能にたいする役立ちを論拠として実現主義・歴史的原価 主義を擁護する主張に対して,以下で指摘するような批判点が考えられる。

第一の批判は「物品による配当の支払がありうる。」とのロパート・ R ・ス ターリング

( [ 2 1 J

p .   2 9 4 )

の見解にみられる

O

ヘンリー・ランド・ハットフ ィルド

( [ 1 0 J

p . 2 2 8  

(訳)

2 1 8

頁〉も現金によらない配当の支払いが可能であ ることを次のように述べている。

「たとえ現金を保持していなくても,会社が配当金を支払うことは十分でき ることなのである。たとえば,オランダ東イ

γ

ド会社は定期的に配当金の一部 分を香料で支払った。もっと最近の例は

1 9 0 7

年に大西洋沿岸鉄道会社によっ て宣言され,その当時金庫の中に納まっていた自己株式で支払われた配当であ

この第一の批判は不適切であると考えられる。というのは,配当は通常現金 で支払われるからである。

第二の批判は,擁護論が「単なる資産増価は企業に分配可能な資産をもたら

(9)

さないこと」を前提としている点に向けられる。つまり,単なる資産増価も長 期的には企業の借入能力を増し,企業に資金の流入をもたらすとの観点からの 批判が考えられる。かかる批判は次に示すアーサー・

L.

トーマス

( [ 2 3 ]

,p

.   9 2 )

の見解にみられる

O

「増価は,それが実現していようといまいと再投資資産を提供できるし,し ばしば提供している。というのは,増価は少なくとも長期的には,仕入先およ び他の借入源泉の両方からの会社の借入能力を増加させる傾向にあるからであ

この批判は不適切であると考えられる。というのは,資産増価が常に借入能 力を増加するとはかぎらないからである。この点について,ベイト

γ

・リト ルト

γ([16J

,p.62 (訳)

1 0 4

頁〉は次のように述べている。

「増加分が流動資産の追加分を獲得する基礎または手段を供する場合もない わけではなし、。土地の増加分は借入とし、う手続を通じて資金に転換されうるの だともいえる。しかし,このような形式による財務上の調整は,利益実現の過 程とはみなしがたく,ことに事業継続中の企業について困難である。社債また は他の契約にもとづく証券の発行による企業資産の増加は,現存の資産の販売

または転換とは別個のものである。」

第三の批判は,擁護論が「収益が分配可能性のテストを満たせば,自動的に 利益の分配可能性が保証されること」を前提としている点に向けちれる。ウィ

リアム・

1

・バッター

( [ 2 6 J

,p.37 (訳)64頁〉は,この点について次のよう に述べている。

「分配可能性のテストは収益の流れがそれに対応する費用の流れに一致して いるとしづ事実を考慮しなければならないため,収益に適用することはできな い。……収益の流れと費用の流れとの純差額だけがこういった資産を株主に分 配するとしづ問題を検討する場合に考慮できることである。こうして,分配可 能性を利益認識のテストとして適用するためには,収益および費用の流れから 発生した資産および持分を検討する必要がある。すくなくとも分配可能性は,

‑ 8 8  ' ‑

(10)

利益がそのテストを適用することのできる特定の資産に関連をもたなければな らないことを意味している。」

収益が分配可能な資産に裏付けられるからといって,収益と費用の差額であ る利益の分配可能性が保証されることにはならなし、。それ故,この第三の批判 は適切であると考えられる。

第四の批判は,実現した利益も再投資されれば,分配不能になるとの批判で ある

O

この批判は次のようなW

A

・ベイトン

( [ 1 5 J

p .   4 5 3 )

の見解にみら れる。

「個々の取引の観点からみれば完全に実現しまた認識することができる利益 を,表示された資金が棚卸資産または直ちに配当には利用できないその他の形 態の資産に費消される場合に,期間利益として表示することは適切ではないの だろうか。……稼得され,実現した利益は,必ずしも分配可能な利益ではない。」

また,

R

R

・スターリング

( [ 2 1 J

,p

.   2 9 5 )  

も同主旨の批判を次のように 述べている。

仁利益を示す資産の増加が生産設備に投下される場合,利益はもはや分配可 能な形態ではない。……利益を受取額に基づいて認識する場合でさえ,現金を 非流動資産に転換することにより利益は未実現となるであろう。ほとんどの企 業は,浮遊現金の保有を嫌うので利益は一時的に実現するにすぎない。」

この第四の批判に対して,擁護論の立場から,次のような反論がなされるで あろう。①現金主義に基づく利益に対しでも同じ批判が当てはまる。したがっ て,いかなる基準による利益も分配可能利益を直接的に表示できなし、。②実現 した利益は,分配可能な形態の資産で維持される可能性がある。しかし,未実 現利益はこの可能性が全くない。これら二つの反論は,いずれも消極的な反論 であり,説得力に欠ける。したがって,実現した利益も再投資されれば分配不 能になるとの第四の批判は適切であると考えられる。

以上述べたように,擁護論に対する第三,第四の批判は,適切であると考え られる。したがって,分配可能利益算定機能にたいする役立ちを論拠として実

(11)

‑510‑

現主義・歴史的原価主義を擁護することはできなし、。

W

分配可能利益算定機能に基づいて歴史的原価主義を擁護しようとする議論 は,企業会計上の利益は分配可能なものでなければならないとの考えに基づい ている。この議論によれば実現主義による収益は,分配可能な資産に裏付けら れる。したがって,実現主義およびそれと表裏一体の関係にある歴史的原価主 義は,分配可能利益算定機能にたいして有用であると主張される。しかしなが ら実現主義は,収益が分配可能な資産に裏付けられていることを保証するに すぎないし,また,実現した利益も再投資されれば分配不能になると考えられ るので,分配可能利益算定機能にたいする役立ちを論拠として実現主義・歴史 的原価主義を擁護する議論は否定せざるを得なし、。

参 考 文 献

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羽Te

I n t e r p r e t   t h e  R e a l i z a t i o n  C o n c e p t ?

" 

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η 3  

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 37‑38) は同主旨の批判を次のよう

7..

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