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労働者 の 自殺 に対す る使 用者 の予見可 能性 の 位置 づ け 勝亦啓文 著

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【論 説 】

労働者 の 自殺 に対す る使 用者 の予見可 能性 の 位置 づ け

勝亦啓文 著

I.は じ め に

平 成18年 の 自殺 対 策 基 本 法 制 定 や こ れ に基 づ く総 合 対 策 要 綱 の 制 定 に み られ る よ う に、 自殺 の 問 題 と そ の 予 防 策 へ の 関 心 が 高 ま る 中 、 労 働 法 領 域 に お い て も、 労 働 者 の精 神 的 な健 康 保 持 の た め の 諸 措 置(メ ン タ ル ケ ア)の 具 体 的 取 り組 み に 一 定 の 進 展 が み られ る 。 しか し、 厚 生 労 働 省 が 平 成23年6月14日 に発 表 した 「平 成22年 度 脳 ・心 臓 疾 患 お よ び精 神 障 害 な どの 労 災 補 償 状 況 ま とめ」 に よれ ば1、 精 神 障 害 にか か る認 定 請 求 件 数1,181件 、支給 決 定 件 数 は308件 と2年 連 続 で過 去 最 高 を記 録 し(従 来 労 災 認 定 を請 求 しな か っ た ケ ー ス が 顕 在 化 し た結 果 と も考 え られ る)、

うち 自殺(未 遂 含 む)の 支 給 件 数 は171件 に の ぼ る。 ま た 平 成23年3月 11日 の 東 日本 大 震 災 発 生 以 降 の 自殺 者 の 増 加 に つ い て 内 閣 府 が 実 態 調 査

を始 め る な ど2、 厳 しい 労 働 環 境 に 置 か れ て い る 労働 者 の メ ン タ ル ケ ア の た め の体 制 構 築 は 、 喫 緊 の 課 題 に な っ て い る とい っ て よい だ ろ う。

自殺 予 防 の た め に は企 業 だ け で は な く、行 政 、 地 域 、 家 族 、 本 人 自身 そ れ ぞ れ の 取 組 み が 必 要 で あ る が 、 労 働 者 が 一 日の 大 部 分 を過 ご し、 と

りわ け ス ト レス 要 因 を抱 え や す い 職 場 に お い て 実 施 され る 対 策 は 、 自殺 とい う重 大 な結 果 を 防止 す る た め に非 常 に重 要 で あ る 。

業 務 に起 因 す る 、 あ る い は 業 務 に起 因 しな い にせ よ、 労 働 者 の 精 神 疾 患 の 発 症 な い し悪 化 の 予 防 策 は 、 一 次 予 防(発 症 させ な い た め の 対 策)、

二 次 予 防(早 期 発 見 と対 処 に よ る 病 状 の 改 善)、 三 次 予 防(再 発 防 止)そ

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れぞ れ の 段 階 で の 対 応 が 必 要 で あ る と さ れ る が 、 労 働 安 全 衛 生 法 に お い て は 、 次 の よ う な対 応 が 使 用 者 に求 め ら れ る 。

ま ず 、 労 働 安 全 衛 生 法70条 の2第1項 の 厚 生 労 働 大 臣 に よ る 、 事 業 者 が 講 ず べ き健 康 の 保 持 増 進 の た め の 措 置 に 関 す る 指 針 と し て 、 「労 働 者 の 心 の 健 康 の保 持 増 進 の た め の 指 針 」(平18.3.31健 康 保 持 増 進 の た め の 指 針 公 示 第3号)が 定 め ら れ て い る 。 これ 自体 は 、 メ ン タ ル ヘ ル ス ケ ア に 関 して 「積 極 的 に 取 り組 む こ とが 望 ま しい 」 と され る内 容 を示 した 行 政 通 達 に 過 ぎな い が 、 衛 生 委 員 会 や 安 全 衛 生 委 員 会 の 活 用 と基 本 計 画 を作 成 し て 、 「セ ル フ ケ ア」、 「ラ イ ン に よ る ケ ア 」、 「事 業 場 内 産 業 保 健 ス タ ッ フ等 に よる ケ ア」 及 び 「事 業 場 外 資 源 に よ る ケ ア」 の統 合 的 な 実 施 を 求 め て い る 。 一 次 予 防 か ら三 次 予 防 まで を含 む 統 合 的 な対 策 を求 め る もの で は あ る が 、 使 用 者 の 法 的 義 務 と して の 実 施 が 強 制 さ れ る も の で は な い 。

ま た 、 従 前 か ら存 在 す る 産 業 医 の 一 般 的 権 限 に基 づ く対 応 の 中 で 、 メ ン タ ル ヘ ル ス対 策 が 実 施 さ れ る こ と もあ る。 労 働 安 全 衛 生 法13条3項 は

「産 業 医 は 、 労 働 者 の 健 康 を確 保 す る た め 必 要 が あ る と認 め る と き は 、 事 業 者 に対 し、 労 働 者 の 健 康 管 理 等 に つ い て 必 要 な勧 告 を す る こ とが で き る。」 と した う え で 、同 条4項 で 「事 業 者 は 、前 項 の 勧 告 を 受 け た と き は 、 こ れ を尊 重 しな け れ ば な らな い 。」 と して い る 。 ま た 同法 の 平 成17年 改 正(18年4月 施 行 、 従 業 員50人 未 満 の 小 規 模 事 業 場 で は平 成20年4月 か ら)に よ り、 月40時 間 を超 え る 労 働 が100時 間 を超 え る場 合 に労 働 者 本 人 の 申 出 に 基 づ き、 原 則 と し て産 業 医 が 面 接 指 導 を実 施 す る義 務 が 課 さ れ て い る ほ か 、 事 業 主 は産 業 医 の 意 見 を 「聴 く」 こ と、必 要 に応 じて 、

「当 該 労 働 者 の実 情 を考 慮 して、 就 業 場 所 の 変 更 、 作 業 の 転 換 、 労 働 時 間 の短 縮 、 深 夜 業 の 回 数 の 減 少 等 の措 置 を 講 ず る ほ か 、 当 該 医 師 の 意 見 の 衛 生 委 員 会 若 し くは 安 全 衛 生 委 員 会 又 は 労 働 時 間 等 設 定 改 善 委 員 会 へ の 報 告 そ の 他 の適 切 な措 置 」 を行 う こ とが 求 め られ て い る(66条 の8)。

しか し、 こ れ らの 規 定 の 違 反 に 罰 則 は な く、 産 業 医 の 判 断 が 必 ず し も 使 用 者 の 具 体 的 措 置 を 義 務 付 け る も の で は な い 点 と、 メ ン タル ヘ ル ス 問 題 に対 す る産 業 医 個 人 の 力 量 に そ の 実 効性 が か か っ て い る 点 で 、 十 分 な

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労働 者の自殺 に対する使用者の予見可 能性の位置づけ(勝 亦啓文) メ ン タル ヘ ル ス対 策 を普 遍 的 に 実 施 す る 担 保 に な っ て い な い。

自殺 の 予 防 の 観 点 か らす る と、 使 用 者 に よ る総 安 全 衛 生 対 策 の 推 進 は 重 要 な課 題 で あ る が 、 現 状 で は 、 なお 十 分 な 実 効 性 を 持 っ て い な い状 況 で あ ろ う。

他 方 、企 業 の 実 務 で は 、 労 働 者 の 自殺 に お け る 民 事 損 害 賠 償 訴 訟 に お い て 、 使 用 者 に どの 程 度 の義 務 が 課 せ ら れ て い る か 、 結 果 的 に ど の よ う な責 任 を 負 うか とい う問 題 につ い て の 労 務 管 理 担 当 者 の 関 心 は 高 い 。 使 用 者 の 果 たす べ き配 慮 義 務 に関 す る判 断 が 、 実 際 の 労 務 管 理 に 反 映 さ れ る こ とが 多 い と い う意 味 で 、 損 害 賠 償 法 理 と い う事 後 的 な 救 済 法 理 に お け る 判 断 が 、 結 果 的 に企 業 の 予 防 実 務 に影 響 を与 え て い る現 実 が あ る3。

労 働 者 の 自殺 をめ ぐ る損 害 賠 償 訴 訟 を概 観 す る と、 使 用 者 に広 範 な 注 意 義 務 な い し配 慮 義 務 を認 め る 例 も多 い が 、 自殺 に対 す る 予 見 可 能 性 を 問 題 と して 、 労 働 者 側 の 請 求 を 棄 却 す る例 も見 ら れ る。 裁 判 例 に お け る 使 用 者 の 「予 見 可 能 性 」 の位 置 づ け は 必 ず し も統 一 的 で な い こ と か ら、

本 稿 で は 、 労 働 者 の 自殺 を め ぐ る近 時 の損 害 賠 償 請 求 訴 訟 に お い て 、 予 見 可 能 性 が ど の よ う に と ら え られ て い る か 、 使 用 者 に どの 程 度 の 予 見 可 能 性 が 要 求 さ れ るか を整 理 す る と と も に、 予 防 との 関 連 性 を踏 ま え 、 そ の 位 置 づ け の あ り方 に つ い て 検 討 し た い4。

II.民 事損害賠償事案 における 「自殺の予見可能性」

1.労 災 保 険 と民 事 損 害 賠 償 の 関 係

労 働 者 が 自殺 を 図 っ た 場 合 、 本 人 な い しそ の 遺 族 に対 す る 事 後 的 な 救 済 手 段 と し て は 、 労 働 者 災 害 補 償 保 険 法(以 下 、 労 災 保 険 法)に よ る 保 険 給 付 と、使 用 者 に 対 す る民 事 損 害 賠 償 請 求 が あ る。 た だ し労 災 保 険 に よ る 先 行 給 付 は 義 務 付 け られ て い な い た め 、 民 事 損 害 賠 償 請 求 が 先 行 す る こ と もあ りえ 、 労 災 保 険 に よ る 給 付 が 先 行 した 場 合 で も、 な お 残 余 の 損 害 賠 償 請 求 権 が 労 働 者 な い しそ の 遺 族 に あ れ ば 、 民 事 損 害 賠 償 請 求 が 提 起 され る。

労 災 保 険 で は、 精 神 的 な 障 害 の 労 災 認 定 に つ い て 、 「心 理 的 負 荷 に よ る

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精 神 障 害 等 に 係 る 業 務 上 外 の 判 断 指 針 」(平 成11年 基 発554号)が 、a.

対 象 疾 病 に 該 当 す る精 神 障 害 を発 病 して い る こ と、b.対 象 疾 病 の 発 病 前 お お む ね6か 月 の 問 に 、 客 観 的 に 当 該 精 神 障 害 を発 病 させ るお そ れ の あ る 業 務 に よる 強 い 心 理 的 負 荷 が 認 め られ る こ と 、c.業 務 以 外 の 心 理 的 負 荷 及 び個 体 側 要 因 に よ り当 該 精 神 障 害 を発 病 した とは 認 め られ な い こ と

の 総 合 評 価 に よ り、 障 害 の結 果 と して の 自殺 も含 め 、 労 災 と認 め られ る 精 神 的 障害 の 範 囲 を定 め た 。 ま た 、 平 成21年 基 発0406001号 に よ り、 評 価 項 目の 追 加 や 一 部 見 直 しが 行 わ れ て い る が 、 発 病 前 お お む ね6か 月 の 出 来 事 に つ い て心 理 的 負 荷 を評 価 し、 総 合 的 に判 断 す る 点 は 同様 で あ る 。 さ ら に平 成22年4月 に は、 業 務 上 の 疾 病 に つ き 、労 働 基 準 法 施 行 規 則 別 表1の2に お い て 、8号 の脳 血 管 疾 患 に加 え、9号 「人 の生 命 に か か わ る 事 故 へ の 遭 遇 そ の 他 心 理 的 に過 度 の負 担 を与 え る事 象 を 伴 う業 務 に よ る 精 神 及 び行 動 の 障 害 又 は これ に付 随 す る疾 病 」 が 追 加 され て い る。

しか し、 労 災 保 険 は 労働 基 準 法75条 以 下 に基 づ き、 無 過 失 で 労働 者 に 発 生 した 災 害 に対 す る使 用 者 の 定 額 補 償 責 任 を基 礎 に して い る こ とか ら、

労 災 認 定 の 場 合 に は、 「業 務 起 因性 」 が あ る か が 問 題 に な り、 使 用 者 の予 見 可 能 性 の 有 無 は 特 段 問題 と さ れ な い 。

労 働 者 の 自殺 に対 す る 業 務 起 因 性 を否 定 した 不 支 給 処 分 の 取 消 請 求 を 認 容 した 近 時 の 裁 判 例 だ け で も、 国 ・真 岡労 基 署 長(関 東 リ ョー シ ョク) 事 件(東 京 地 判 平18.11.27労 判935号44頁)、 新 宿 労 基 署 長(佼 成 病 院) 事 件(東 京 地 判 平19.3.14労 判941号57頁)、 国 ・八 王 子 労 基 署 長(パ シ フ イ ッ ク コ ン サ ル タ ン ツ)事 件(東 京 地 判 平19.5.24労 判945号5頁)、 国 ・ 福 岡 中 央 労 基 署 長(九 州 テ ン)事 件(福 岡 地 判 平19.6.27労 判944号27頁)、

国 ・静 岡労 基 署 長(日 研 化 学)事 件(東 京 地 判 平19.10.15労 判950号5頁)、

国 ・北 九 州 西 労 基 署 長 事 件(テ トラ)事 件(東 京 地 判 平21.2.26労 判990 号163頁)、 国 ・渋 谷 労 基 署 長(小 田急 レス トラ ン シ ス テ ム)事 件(東 京 地 判 平21.5.20労 判990号119頁)、 国 ・江 戸 川 労 基 署 長(四 国 化 工 機 工 業) 事 件(高 松 高 判 平21.12.25労 判999号93頁<要 旨>)、 国 ・諌 早 労 基 署 長(ダ イ ハツ 長 崎 販 売)事 件(長 崎 地 判 平22.10.26労 判1022号46頁)、 国 ・三 田 労 基 署 長(日 本 電 気)事 件(東 京 地 判 平22.3.11労 判1007号83頁<要

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労働者の 自殺 に対す る使用者 の予見可能性 の位置づけ(勝 亦啓文) 旨>)の ほ か 、 地 公 災 基 金 の事 例 で あ る が 、 地 公 災 基 金 愛 知 県 支 部 長(A 市 役 所 職 員 ・うつ 病 自殺)事 件(名 古 屋 高 判 平22.5.21労 判1013号102頁) な ど、 相 当 数 に上 る 。

他 方 、 業 務 起 因 性 を 否 定 し た 例 を 見 る と、 個 体 的 要 因 が 大 き く、 業 務 起 因 性 が な い と した さ い た ま労 基 署 長(日 研 化 学)事 件(東 京 高 判 平 19.10.11労 判959号114頁)、 個 体 的 要 因 は 認 め られ る が 、 発 症 前 お よび 発 症 後 の 業 務 に 要 因 が 認 め ら れ な い とす る 国 ・池 袋 労 基 署 長(A社)事 件(東 京 地 判 平21.9.9労 経 速2056号16頁)、 業 務 上 の 要 因 も個 体 上 の 要 因 も認 め られ な い 国 ・福 岡 中央 労 基 署 長(デ ュ ポ ン)事 件(東 京 地 判 平 22.6.9労 経 速2087号3頁)が あ げ られ る。

労 災 認 定 に お い て は 、 業 務 上 の負 荷 要 因 の 存 在 と個 体 的 要 因 の 存 在 の 相 関 関 係 の 中 で 、 業 務 上 の 負 荷 と精 神 障 害 の 発 症 の 「相 当 因 果 関 係 」 が 認 め られ れ ば 、 業 務 起 因 性 の あ る 精 神 的 障 害 の結 果 と して の 自殺 と して 、 死 亡 に も 因果 関 係 が 認 め られ て お り5、 労 災 保 険 法12条 の2の2第1項

に基 づ く不 支 給 処 分 、 同2項 に基 づ く支 給 制 限 は 事 実 上 行 わ れ て い な い こ とか ら6、 業 務 起 因 性 の 「有 無 」 の み が 重 要 に な り、 死 亡 に対 す る予 見 可 能 性 は 問 題 と され な い 。 こ の た め 、 業 務 に起 因 す る う つ 病 エ ピ ソ ー ド

の 存 在 が 認 め られ れ ば 、 原 則 と して 自殺 に つ い て の 業 務 災 害 該 当 性 が 認 め ら れ る が 、 個 体 的 要 因 が 大 きい 場 合 に は 、 業 務 との 因 果 関 係 が 否 定 さ れ る こ とに な る。

2.民 事 訴 訟 に お け る 自殺 の予 見 可 能 性 1)予 見 可 能 性 を肯 定 した例

こ れ に対 して 民 事 損 害 賠 償 請 求 の 場 合 、 注 意 義 務 違 反 な い し安 全 配 慮 義 務 違 反7の 前 提 と して の 予 見 可 能 性 と、 相 当 因 果 関 係 の あ る損 害 の 範 囲 を確 定 す る前 提 と して の 予 見 可 能 性 とい う二 つ の 面 で 、 使 用 者 の 自殺 に対 す る 予 見 可 能 性 が 問 題 と さ れ る こ とが あ る。 労 働 者 自殺 を め ぐる 裁 判 例 の 中 で 、 予 見 可 能 性 に つ い て 説 示 す る 裁 判 例 で 、 予 見 可 能 性 が ど の よ う に捉 え られ て い る か を概 観 して み た い 。

労 働 者 の うつ 病 に よ る 自殺 の 民 事 損 害 賠 償 請 求 に 関 す る最 高 裁 先 例 は 、

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電 通 事 件(最2小 判 平12.3.24民 集54巻3号1155頁)で あ る。 最 高 裁 は、

3日 に1度 の 頻 度 で 翌 朝 ま で 残 業 して い た 入 社1年4か 月 後 の 社 員 の 自 殺 に対 す る 不 法 行 為 損 害 賠 償 請 求 に お い て 、 自殺 と業 務 の 因 果 関係 に つ い て 、「長 時 間 労 働 、平 成 三 年 七 月 こ ろ か らの 同 人 の 異 常 な 言 動 等 に加 え、

うつ 病 患 者 が 自殺 を 図 る こ とが 多 い こ と も考 慮 す れ ば 、Aが 常 軌 を逸 し た 長 時 間労働 に よ り心身共 に疲弊 して うつ 病 に陥 り、 自殺 を 図 っ た こ と は、被告 は も ち ろ ん通 常 人 に も予見 す る こ とが 可 能 で あ っ た と い うべ き で あ る か ら、Aの 右 長 時 間労働 とう つ 病 と の 間 、 さ ら に うつ 病 とAの

自殺 に よ る 死 亡 と の間 に は 、 い ず れ も相当 因果 関 係 が あ る とい うべ きで あ る 」 と の 地 裁 、 高 裁 判 決 に つ い て 、 「負 担 を軽 減 させ る た め の 措 置 を 採 らな か っ た こ と に つ き過 失 が あ る と して 、 … 損 害 賠 償 責 任 を肯 定 した も の で あ っ て 、 そ の判 断 は 正 当 」 と して お り、 安 全 配 慮 義 務 違 反 は な い と す る使 用 者 側 上 告 を 棄 却 し た う え で 、 逸 失 利 益 約9590万 円 、 慰 謝 料 2000万 円 等 の う ち 、過 失 相 殺 の類 推 適 用 に よ っ て3割 を減 じた 高 裁 の 判 決 に対 す る 労 働 者 側 上 告 を認 容 して 、 労 働 者 側 敗 訴 部 分 を破 棄 、 差 戻 し

て い る 。

原 審 が 長 時 間 労 働 に よ る負 荷 に よ る うつ 病 発 症 と、 そ の結 果 と して の 死 亡 は 、通 常 人 に も予 見 可 能 で あ っ た と して使 用 者 に負 担 軽 減 義 務 違 反 の過 失 が あ る と認 め た こ と か ら、 何 ら か の 業 務 上 の 要 因 の存 在 と 自殺 と い う結 果 に つ い て相 当 因 果 関係 を ス トレー トに認 め る 判 断 を維 持 し、 か つ 労 働 者 の 個 体 的 要 因 が 通 常 予 想 さ れ る 範 囲 内 で あ れ ば 賠 償 の 減 額 事 由 と す る こ と は で きな い と した 点 で 、 そ の 後 の 裁 判 例 に大 き な 影 響 を与 え て い る。

た と え ば 、 オ タ フ ク ソ ー ス 事 件(広 島地 判 平12.5.18労 判873号15頁) は 早 朝 出 勤 、猛 暑 の 中 で 、 特 注 ソ ー ス 担 当 を し て い た責 任 者 の 自殺 に つ い て 、 使 用 者 の 安 全 配 慮 義 務 違 反 の 有 無 に つ き、 「作 業 員 が 身体 的慢性疲

労 の 状 態 を生 じや す くな っ て お り、 被 告 らは こ れ を認 識 す る こ とが 可 能 で あ っ た」 の で あ り、 「被 告 ら にお い てAを 直 ち に特 注 ソ ー ス 等 製 造 部 門 か ら外し 、 あ る い は医師 の治療 を受 け させ る な ど の適 宜 の措置 を と る こ とが で き、 本 件 事 故 の 発 生 は これ を 防 止 す る こ とが で きた 」 と して 、

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労働者 の自殺 に対する使用者の予見可能性の位置づ け(勝 亦啓文) 逸 失 利 益 等 に加 え 、 本 人 分 慰 謝 料2300万 円 を認 容 して い る 。

こ の ほ か 、 短 大 卒 業 後 す ぐ に保 母 と な り、1年 後 に う つ 症 状 を 発 症 し て 退 職 し た もの の 、 退 職 の1か 月 後 に 自殺 した21歳 の 労 働 者 の 遺 族 か ら の 債 務 不 履 行 に よ る 損 害 賠 償 事 案 で あ る東 加 古 川 幼 児 園 事 件(最3小 判 平12.6.27労 判795号13頁)は 「被 控 訴 人 園 の 勤 務 条 件 は 劣 悪 で 、Aを うつ 状 態 に 陥 らせ る もの で あ っ た と い う ほ か な い こ と な ど、 本 件 に あ ら わ れ た 事 情 を 総 合 す れ ば、Aは 、 被 控 訴 人 園 の 過 酷 な 勤 務 条 件 が も と で 精 神 的 重 圧 か ら う つ 状 態 に 陥 り、 そ の 結 果 、 園 児 や 同 僚 保 母 に 迷 惑 を か け て い る と の責 任 感 の 強 さ や 自責 の 念 か ら、 つ い に は 自殺 に及 ん だ も の と推 認 す る こ と が で き る(Aが 自殺 した の は被 控 訴 人 園 を 退 職 して か ら 約 一 か 月 後 で あ る が 、 前 判 示 の とお り、 三 か 月 間 の過 酷 な 勤 務 条 件 は十 分 うつ 状 態 の 原 因 と な りう る もの で あ り、 そ の 回 復 期 に 自殺 が 多 い こ と か らす れ ば、 右 退 職 か ら 自殺 ま で の 一 か 月 間 は被 控 訴 人 園 で の 勤 務 とA の 自殺 に つ い て の 相 当 因 果 関 係 を否 定 す る もの で は な い 。)。そ う で あ れ ば、 被控訴人園 は 、従 業 員 で あ るAの仕事 の 内 容 につ き通 常 なす べ き配 慮 を 欠 き、そ の 結 果Aの 自殺 を招 い た もの とい え る か ら、債 務 不 履 行(安 全 配 慮 義 務 不 履 行)に よ る損 害 賠 償 責 任 を 負 う もの とい うべ き で あ る 」

と して 、 逸 失 利 益 に加 え 、 両 親 各 自 の慰 謝 料1000万 円 を 認 め つ つ 、 過 失 相 殺 に よ り8割 を減 額 し た 大 阪 高 判 平10.8.27(労 判744号17頁)を 維 持 した 。

前 掲 電 通 事 件 最 高 裁 判 決 は、 注 意 義 務 違 反 と 自殺 と の 因 果 関 係 を広 く 認 め た う え で 、 本 人 側 の 性 格 的 要 因 を減 額 事 由 と で き な い と した の に 対

し、 本 判 決 の よ う に 、 配 慮 義 務 違 反 と 自殺 の相 当 因 果 関 係 を 認 め な が ら、

過 失 相 殺 を 用 い て 減 額 す る 裁 判 例 は、 そ の 後 何 件 か み られ る。

た とえ ば 、 み くま の 農 協(新 宮 農 協)事 件(和 歌 山 地 判 平14.2.19労 判 826号67頁)は 、 台 風 被 害 の 対 応 に あ た っ て い た 入 職33年 目 の ガ ソ リ ンス タ ン ド所 長 の 自殺 に 対 す る 遺 族 か らの 債 務 不 履 行 ・不 法 行 為 損 害 賠 償 請 求 事 案 で あ る が 、 判 決 は 「使 用 者 で あ る 旧 組 合 と して は 、 通 常 業 務 に加 え て復 旧 作 業 に 従 事 す る 本 件 給 油 所 職 員 、 と りわ け、 所 長 と い う責 任 あ る 立 場 に あ っ た亡Aに 対 して 、 通 常 時 以 上 に 、 そ の健 康 状 態 、精 神

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状 態等 に留 意 し、 過 度 な負 担 を か け心身 に変調 を来 して 自殺 をす る こ と がないように注意すべき義務を有していたとい わ な け れ ば な ら な い 。 し か る に 、 上 司 と して 亡Aに 対 し指 揮 監 督 命 令 を な し う る 立 場 に あ っ たB

ら に お い て は、 亡Aが 、 台 風 後 の 処 置 の 中 で 既 に処 理 の 目途 が 立 っ た損 害 に つ い て 思 い 悩 み 、Bら に対 して 、 蒸 し返 す よ う に 同 じ趣 旨 の発 言 を 繰 り返 して い た こ と な どか らす る と、 亡Aの 異 変 を認 識 し う る可 能 性 を 有 して い た に もか か わ ら ず 、旧 組 合 は、 浸 水 被 害 を受 け た 日の 翌 日 か ら 4日 間 通 常 業 務 を 休 業 す る こ と と して(略)、 そ の 間 、 旧 組 合 本 所 等 か ら 応 援 の 者 を 派遣 して清 掃 等 を手 伝 わ せ た に止 ま り、 … 旧 組 合 に は安 全 配 慮 義 務 違 反 及 び 不 法 行 為 上 の 過 失 が 認 め られ る」 と して逸 失 利 益 に加 え 、 死 亡 した 本 人 の 慰 謝 料1800万 円 、 妻 ・子 計4名 そ れ ぞ れ200万 円 の 慰 謝 料 等 を認 容 しつ つ 、 過 失 相 殺 等 で7割 を減 額 して い る。

また 、三 洋 電 機 サ ー ビ ス事 件(東 京 高 判 平14.7.23労 判852号73頁)は 、 入 社26年 後 の労 働 者 が 係 長 昇 進 を苦 に悩 ん で い た 中 で 自殺 した こ と に対

して 、 遺 族 が 上 司 個 人 と会 社 に対 し て不 法 行 為 損 害 賠 償 請 求 を行 っ た 事 案 で あ る が 、 「一 審 被 告Nと して も、Aの 精 神 状 態 が 単 な る 一 時 的 な 気 分 の 落 ち 込 み で は な く、 自分 の 意 志 の 力 で は 克 服 で き な い 内 的 な 障 害 が あ っ て 、 医 師 の 治 療 に よ ら な け れ ば 回 復 で き な い 病 的 状 態 に あ る こ と、

そ して 、単 にAの 訴 えが あ る だ け で は な く、 医 学 的 見 地 か ら もAは 相 当 期 間 の休養 を す る 状 態 で あ っ た こ と を知 る こ とが で き、 この ま まAに 勤 務 を 継 続 さ せ た場 合 に はAの心身 に さ ら に深 刻 な影 響 が及び 、 状 況 に

よ っ て は 自 殺 な どの 最 悪 の事態 が 生 じる こ と もあ る も の と予見 で きた も の とい うべ きで …Aが 自殺 未 遂 事 故 を 起 こ した こ と を知 っ た平 成8年5 月 下 旬 以 降 は よ り一 層 予 見 が 可 能 で あ っ た」 と しつ つ 、 「Aの 勤 務 状 態 は 極 め て安 定 して い た か ら、 一 審 被 告 らがAの 自殺 す る こ と は予 見 で き な か っ た 旨 主 張 す る が 、 上 記 〈1>な い し<6>の 事 情 に 照 らせ ば 、 こ の 間Aは 理 性 的 な 行 動 を保 ち外 見 上 問 題 の な い 勤 務 態 度 を と る た め 自己 統 制 の た め の 非 常 な努 力 を して い た もの と推 測 で きる の で あ り、一審被告 Nも こ の事実 を認 識 す る こ と は で きた もの とい うべ き で あ る か ら、 上 記 の ような勤務状態 が 認 め ら れ た か ら と い っ て 、 一審被告 ら に と ってAの

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労働者の 自殺に対す る使用者の予見可能性の位 置づ け(勝 亦啓文) 自殺 企 図 に つ い て の 予 見 可 能 性 が な か っ た とは い え な い 」 と して 逸 失 利 益 、 死 亡 した 本 人 の 慰 謝料2200万 円 を認 め つ つ 、 過 失 相 殺 の 類 推 適 用 で 8割 を減 額 して い る 。

そ して 、 上 司 か ら、 か らか い や 強 迫 め い た 言 辞 を 受 け 欠 勤 が ち と な り、

後 に統 合 失 調 症 な い し境 界 性 人 格 障 害 と診 断 さ れ た 職 員 の 自殺 事 案 で あ る 川 崎 市 水 道 局(い じめ 自殺)事 件(東 京 高 判 平15.3.25労 判849号87頁) は 、 上 司 個 人 へ の 不 法 行 為 、 市 へ の 国 賠 法 請 求 に つ い て 、 市 の 安 全 配 慮 義 務 違 反 に関 し、 「精 神 疾 患 に罹 患 した者 が 自殺 す る こ と は ま まあ る こ と で あ り、 しか も、 心 因 反 応 の 場 合 に は、 自殺 念 慮 の 出 現 す る 可 能 性 が 高 い こ と を も併 せ 考 え る と、Aに 対 す る い じめ を認 識 し て い た 被 告Y2及 び い じめ を受 け た 旨 のAの 訴 え を聞 い たB課 長 に お い て は、 適 正 な措 置

を執 ら な け れ ば 、Aが 欠 勤 に と ど ま らず 、 精 神 疾 患(心 因 反 応)に 罹 患 して お り、 場 合 に よ っ て は 自殺 の よう な 重 大 な 行 動 を起 こ す お そ れ が あ る こ と を予 見 す る こ と が で き た とい うべ きで あ る 。 し たが っ て 、 上 記 の 措 置 を 講 じて い れ ば 、Aが 職 場 復 帰 す る こ とが で き、 精 神 疾 患 も回 復 し、

自殺 に至 ら な か っ た で あ ろ う と推 認 す る こ とが で き る か ら、被 告Y2及 びB課 長 の安全配慮義務 違 反 とAの 自殺 との 間 に は相 当 因果 関 係 が あ る

と認 め る の が 相 当 で あ」 り、 「第1審 被 告 の 職 員 の 言 動 に よ っ てAに 精 神 分 裂 病 等 が 発 症 す る こ と は予 見 不 可 能 で あ っ た か ら、仮 に い じめ が あ っ た と して も、 そ の 行 為 とAの 死 亡(自 殺)と の 間 に は相 当 因 果 関 係 が な い 旨 主 張 す る が 、 前 記 認 定 説 示 の とお り、Y2ら3名 の 言 動 がAに 対 す る い じめ(不 法 行 為)で あ り、 そ の 行 為 とAの 心 因 反 応 な い し精 神 分 裂 病 の 発 症 ・自殺 との 間 に 実 的 因 果 関係 が 認 め ら れ る 以 上 、 不 法 行 為 と 損害(Aの 死 亡)と の 間 に 相 当因果関係が あ る(損害 論 の 問 題)と い う べ きで あ る」 と して 、 逸 失 利 益 と慰 謝 料1200万 円等 を認 め つ つ 、 過 失 相 殺 の類 推 適 用 で7割 を減 額 して い る 。

しか し なが ら、 こ の他 の 裁 判 例 で は 、 使 用 者 が 素 因 減 額 な い し過 失 相 殺 を主 張 しな い か 、 前 掲 電 通 事 件 最 高 裁 判 決 を 意 識 し て減 額 を しな い も

の が 多 い 。

山 田 製 作 所(う つ 病 自殺)事 件(福 岡高 判 平19.10.25労 判955号59頁)は 、

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長 時 間 労 働 が 続 き 、 入 社6年 後 に 自殺 した 塗 装 班 リ ー ダー の 一 般 社 員 の 自殺 に 対 す る債 務 不 履 行 ・不 法 行 為 損 害 賠 償 請 求 事 案 で あ るが 、「労働者 の 健 康 状 態 の悪 化 を現 に 認 識 して い た か 、 あ る い は、 そ れ を現 に 認 識 し て い な か っ た と して も、就労環境 等 に照 ら し、労働者 の健康 状 態 が 悪 化 す る お そ れ が あ る こ と を容易 に認 識 し得 た というよう な 場 合 に は 、結果 の予見 可 能 性 が 認 め られ」、 「故Aの労働 時 間 を 適 正 な 程 度に抑える こ と

を前 提 に、故Aの精神面 で の健康 状 態 を調 査 し、 改 め て 故Aに つ い て休 養 の必 要 性 につ い て検討 し た り、 例 え ば 、異動 に つ い て の希望聴取 を行 い 、心身 の状 態 に適 した配属先 へ の異動 を行う な どの 対 応 を取って い れ ば 、 同年5月14日 に故Aが 自殺 に よ り死 亡 す る こ と を 防 止 し得 る 蓋 然 性 は高 か った と い え る。 した が っ て 、上 記 控 訴 人 の 安 全 配 慮義務 違 反(注 意 義 務 違 反)と 本 件 自殺 との 間 に は 因 果 関 係 が あ る 」 と して 、 逸 失 利 益 に 加 え 、 慰 謝 料2800万 円 等 を 認 容 し て お り、 「自殺 の 原 因 に つ い て 家 族 関係 な どの 個 人 的 な 要 因 を認 め る こ と は で きず 、 故Aの 性 格 な ど に上 記 損 害 額 を減 額 す べ き要 因 を 認 め る こ と は で きな い」 と して 、 使 用 者 側 の 過 失 相 殺 の 主 張 を退 け て い る 。

そ して 、 海 上 自衛 隊3等 海 曹 の 自殺 に 関 して 国 賠 法 請 求 事 案 で あ る 国 (護衛 艦 さ わ ぎ り)事 件(福 岡 高 判 平20.8.25判 例 時 報2032号52頁)は 、 上 官 らに よ る指 導 目的 を逸 脱 した い じめ が あ っ た 事 実 は 認 め られ な い が 、

「馬 鹿 」、 「3曹失 格 」 と い っ た 指 導 の域 を超 え た誹謗 を継 続 的 に行 っ た 点 で 国賠 法 上 違 法 な行 為 が あ り、 「本 件 行 為 とAの う つ 病 へ の り患 及 び 自 殺 と の間 に は 相 当 因 果 関 係 が 認 め られ る とい うべ きで あ る 」 と こ ろ 、故 意過失 の 判 断 に お け る予 見 可 能 性 は 、 「心 理 的負荷 の蓄積 と い う危険 な 状 態 の 発 生 そ の もの で あ る という べ きで あ り、故意 又 は過 失 の判 断 の 前 提 と な る予見 の対象 も、 こ れ に 対 応 した も の と な る と考え ら れ 、Aのう つ 病 的症 状 ひ い て はAの 自殺 に つ い て の 予 見 可 能 性 、 回 避 可 能 性 を問う

もの で は な い と い うべ きで あ る」 で あ る と して 、 両 親 の 慰 謝 料 請 求(各 200万 円 、150万 円)を 認 容 して い る 。

ま た 、 早 朝 出 勤 を続 け 、 異 物 混 入 事 故 へ の 対 処 に あ た る 中 、 上 司 か ら 厳 しい 叱 責 を受 け た 入 職12年 目の 青 果 係 長 の 自殺 に対 す る不 法 行 為(予

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労働者の 自殺 に対す る使 用者の予見可能性の位置づけ(勝 亦啓文)

備 的 に債 務 不 履 行)損 害 賠 償 請 求 事 案 で あ る音 更 町 農 業 協 同 組 合 事 件(釧 路 地 帯 広 支 判 平21.2.2労 判990号196頁)は 、 安 全 配 慮 義 務 違 反 の 有 無

の検 討 の 中 で 、 「被 告 が 亡Aの 精 神 面 の 変 調 に つ い て予 見 可 能 性 が なか っ た と いう こ とは で きず 、 ひ い て は亡Aの 自殺 に つ き予 見 可 能 性 が な か っ た とい う こ と は で き な い」 と して 、 因 果 関 係 につ い て 、 「被 告 が 前 記 安 全 配 慮 義 務 を尽 く し、 亡Aの 心 身 の 状 態 に適 した 配 属 先 へ の異 動 を 行 う な

ど して 、 そ の 業 務 負 担 を軽 減 し、 労 働 時 間 を適 正 な も の に抑 え る な ど の 対 応 を と り、 あ る い は亡Aの 精 神 的不 調 を疑 い 、 精 神 科 へ の 受 診 を勧 奨 す る な どの 措 置 を と っ て い れ ば 、 亡Aが うつ 病 エ ピソ ー ドに罹 患 す る こ と を 防止 し、 あ る い は亡Aが 自殺 に よ り死 亡 す る こ と を 防止 で きた 蓋 然 性 は高 か っ た とい うべ きで あ る 」 と して 逸 失 利 益 に加 え 、 本 人 分 慰 謝 料 3000万 円 を認 容 した 。

こ の ほ か 、 派 遣 労 働 者 と して 、 昼 夜 交 代 勤 務 で ク リ ー ン ル ー ム 内 の 製 品 検 査 業 務 に 従 事 し、3年 後 に 自殺 し た労 働 者 の 遺 族 か らの 不 法 行 為 損 害 賠 償 請 求 事 案 で あ る ニ コ ン ほ か 事 件(東 京 高 判 平21.7.28労 判990号 50頁)は 、 安 全 配 慮 義 務 違 反 の 有 無 に つ き、 「労 働 者 が 過 重 な 業 務 に 従 事 す る な ど して 疲 労 や 心 理 的 負 荷 等 が 過 度 に 蓄 積 す る と、 労 働 者 の 心 身 の 健 康 を損 な う危 険 が あ る こ とが 周 知 の 事 実 で あ る の は 既 に説 示 した と お りで あ る か ら、 過 重 な業務 へ の従事 の 点 に つ い て の認 識 あ る い は認 識 可 能 性 が あ れ ば 、労働 者 の心身 の健康 が 損 な わ れ る こ と そ の 内 容 と し てうつ 病 等 の精神障害 を 発 症 す る こ と も含まれ 、 ま た 、 そ の結果労働者 が 自殺 を す る に 至 る こ と も通 常 あ り得 る こ とで あ る につ い て予見 す る こ とが で き、 ま た 、 過 重 な業務 が 行 わ れ る こ と を回 避 す れ ば、労働者 の

心身

の健康が 損 な わ れ る こ と を 回避 す る こ とが で き た という こ とが で き る。 本 件 に お い てAが うつ 病 を発 症 しそ れ に よ っ て 自殺 に 至 っ た の は 労 働 者 の 心 身 の 健 康 が 損 な わ れ る とい う 危 険 が 具 体 化 した 一 態 様 で あ る と い うべ き と こ ろ 、 こ の 危 険 の予 見 可 能 性 及 び 結 果 回 避 可 能 性 を認 め る に つ い て 、心身 の健康 が 損 な わ れ 、 そ の結果 、 自殺 に至 る可 能 性 も あ る こ と を 予 見 す る こ とが で き た こ と(略)以 上 に、 そ の結果(自 殺)発 生 ま で の具体化 の 過 程 を 個 別具体的 に 認 識 す る こ とが 可 能 で あ っ た こ と ま で

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を必 要 と しな け れば な ら な い 理 由 は な い とい うべ きで あ る(な お 、 過 重 な業 務 に従事 す る な ど して 、疲労や 心 理 的負 荷 等 が 過 度 に 蓄 積 し、 そ の 結 果 うつ 病 を発 症 し、 う つ 病 に よ っ て 自 殺 をす る に 至 る という 経 過 は 、 医 学 的 知 見 に 照 ら して も全 く特 別 な も の で は な い か ら、Aが従事 した業 務 の 過 程 にお い て 過 重 な労働 等 が 行 わ れ 、 そ の こ と に起 因 してAにう つ 病 が 発 症 し、 そ れに よ っ てAが 自殺 を す る に 至 っ た こ と につ い て 相 当 因 果関係 を認 め る こ とが で きる)」 と して 、 逸 失 利 益 に加 え 、本 人 分 慰 謝 料 2000万 円 を認 容 して い る 。 ま た 、 前 掲 電 通 事 件 の判 示 を引 用 し、 過 失 相 殺 事 由 は認 め られ ない し、 「Aの 性 格 あ る い は これ に基 づ く業 務 遂 行 の 態 様 等 が 損 害 の 発 生 又 は 拡 大 に寄 与 した と して も、 そ の よ う な場 合 に 、 当 該 業 務 に 従 事 す る 特 定 の 労 働 者 の 性 格 が 同 種 の 業 務 に 従 事 す る 労 働 者 の 個 性 の 多 様 さ と して 通 常 想 定 さ れ る 範 囲 を外 れ る もの で な い 場 合 に は」、

素 因 減 額 す る こ と もで き な い と して い る。

担 当 業 務 自体 が 過 重 な もの だ っ た こ と に加 え、 長 期 に わ た り月100時 間 を超 え る 時 間外 労 働 を して い た入 社6年 目 の 現 場 監 督 の 自殺 に対 す る 損 害 賠 償 請 求 事 案 で あ る九 電 工 事 件(福 岡 地 判 平21.12.2労 判999号14 頁)で も、 「長 時 間 労 働 の継 続 な ど に よ り疲 労 や 心 理 的負 荷 等 が 過 度 に 蓄 積 す る と労 働 者 の 心 身 の健 康 を損 な うお そ れ が あ る こ と は広 く知 ら れ て い る と こ ろ で あ り、 うつ 病 の 発 症 及 び こ れ に よ る 自殺 は そ の 一 態 様 で あ る。 そ うす る と、 使 用 者 と して は、 上 記 の よ う な結 果 を 生 む 原 因 と な る 危 険 な 状 態 の発 生 自体 を 回 避 す る必 要 が あ る と い うべ きで あ り、 事 前 に 使用者側 が当該労働 者 の具体 的 な健康状 態 の悪 化 を認識 す る こ とが 困難 で あ っ た と して も、 こ れ だ け で 予 見 可 能 性 が な か っ た と は い え な い の で あ っ て 、 当 該労働 者 の健康 状 態 の悪 化 を現 に認 識 して い た か 、 あ る い は 、 そ れ を現 に認 識 して い な か っ た と して も、就労環境 等に 照 ら して 、労働

者の健 康 状 態 が 悪 化 す る お そ れ が あ る こ と を容 易 に認 識 し得 た とい う よ う な 場 合 に は 、 結 果 の予見 可 能 性 が 認 め ら れ る もの と解 す る の が 相 当 で あ る」 と して逸 失 利 益 に 加 え 、慰 謝 料150万 円 を認 容 して い る。

また 、 入 社3年 後 の 海 外 取 引担 当 バ イ ヤ ー の 自殺 に対 す る債 務 不 履 行 ・ 不 法 行 為 損 害 賠 償 請 求 事 案 で あ る マ ツ ダ(う つ 病 自殺)事 件(神 戸 地 裁

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労働 者の自殺 に対する使用者の予見可能性の位置づ け(勝 亦啓文)

姫 路 支 判 平23.2.28労 判1026号64頁)は 、 自 殺 は 「通 常 は 、 当 該 労 働 者 が 死 の 結 果 を認 識 し認 容 し た もの と考 え ら れ るが 、 少 な く と も、 当 該 労 働 者 が 業 務 に起 因 す る 精 神 障 害 を発 症 した 結 果 、 正 常 な 認 識 、 行 為 選 択 能 力 が 著 し く阻害 さ れ 、 自殺 を 思 い と ど ま る精 神 的 な 抑 制 力 が 著 し く 阻 害 さ れ て い る状 態 で 自殺 に 至 っ た 場 合 に は 、 当 該 労 働 者 が 死 亡 とい う 結 果 を認 識 し認 容 し て い た と して も、 当 該 結 果 を意 図 した と ま で は い う

こ と が で き な い 」 か ら、 「業 務 に よ り発 症 し たICD‑10第V章 のF0な い しF4に 分 類 さ れ る精 神 障 害(注:FO:症 状 性 を 含 む 器 質 性 精 神 障 害 、 F1精神作用物質使用 に よ る精神 お よ び 行 動 の障害 、F2:精神分裂 病 、 分 裂 病 型障害 お よ び妄想 性障害 、F3:気 分[感情]障害 、F4:神経症

障害、 ス ト レ ス 関 連障害 お よ び身体表現性障害 )に罹患して い る と認 め られ る 者 が 自殺 を 図 っ た 場 合 に は、 原 則 と して 、 当 該 自殺 に よ る死 亡 に つ き業 務 起 因 性 を 認 め る の が 相 当 で あ」 り、 「上 記 注 意 義 務 は、 労働 者 の 心 身 の健 康 が 損 な わ れ る お そ れ に対 す る もの で あ る か ら、 こ の 場 合 の 結 果 と は 、 心 身 の 健 康 が 損 な わ れ る こ と で あ り、 予 見 の 対 象 は 、 心 身 の 健 康 が 損 な わ れ る こ と で 足 り る とい うべ き と こ ろ、 うつ 病 を発 症 し 自殺 に 至 る とい う こ とは 、 ま さ に 心 身 の 健 康 が 損 な わ れ る お そ れ が 具 体 化 した もの で あ り、 ま た 、 過 重 な業 務 に よ って 心 身 の 健 康 が 損 な わ れ る場 合 の 一 態 様 と して、うつ病を発症し自殺に至ることが通常あり得ることは周

知 の事実 とい え る こ とか らす れば 、 過 重 な 業 務 等 に 対 す る認 識 可 能 性 が あ れ ば 、こ の 点 の 予 見 可 能 性 を認 め る こ とが で き る とい うべ きで あ 」っ て 、

「使用者 に安全 配 慮 義 務 違 反 が 認 め ら れ る に は 、予見 可 能 性 が 必 要 で あ る と こ ろ 、予見義務 の 内 容 と して 、 具 体 的 に 、特定の疾 患 の 発 症 を予 見 し得 た こ と まで は要求 さ れず 、 『過 重労働を す れば 、労働 者 の健康が 悪 化 す る お そ れ が あ る』 と い う抽象的 な危惧 が 予 見 し得 た な らば予見 可 能 性 は肯 定 され るの で あ って 、具体的 に は 、①使用 者 又 は代理 監 督 者 た る 上 司が 、

当該労働者 が心身の健康を 損 な っ て い る 状 態(体調 悪 化) を認 識 して い た か 又 は認 識 可 能 で あ っ た か 、若しくは 、②心身の健康 を損 な う原 因 と な っ た労働実態 に つ い て 、使用 者 又 は代理 監 督 者 た る 上 司が 認 識 して い た か 又 は 認 識 可 能 で あ れ ば 、 上 記 予 見 可 能 性が 認 め られ る 」 と して 、 逸

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失 利 益 に 加 え 、本 人 の 慰 謝 料2500万 円 、 原 告 父 母 の 慰 謝 料 各250万 円 等 を認 容 して い る。

こ の よ う に 、予 見 可 能 性 を肯 定 す る裁 判 例 は 、 使 用 者 の 負 うべ き配 慮 義 務 な い し注 意 義 務 につ い て 、 自殺 と い う結 果 に対 す る 具 体 的 予 見 可 能 性 を 求 め て い る の で は な く、 労 働 者 の 健 康 を悪 化 させ る 蓋 然 性 が あ る こ

と を予 見 し、 あ る い は し う る場 合 に こ れ を認 め て い る。

こ れ らの 裁 判 例 は 、 労 働 者 の 健 康 を悪 化 させ る状 況 を 回 避 す る 義 務 の 違 反 が あ れ ば、 疾 患 の 発 生 と死 亡 の 因 果 関 係 もそ の ま ま認 め る とい う 立 場 と い え る だ ろ う8。 もっ と もこ の 場 合 、 素 因減 額 な い し過 失 相 殺 を どの

よ う に行 うべ きか が 、 次 の 重 要 な 問 題 とな る 。

2)予 見 可 能 性 を否 定 す る例

他 方 で 、 先 輩 看 護 師 か らの い じめ を苦 に した 男 性 准 看 護 師 の 自殺 に対 す る 、 加 害 者 へ の 不 法 行 為 請 求 お よ び 使 用 者 へ の 債 務 不 履 行 請 求 事 案 で あ る誠 昇 会 北 本 共 済 病 院 事 件(さ い た ま地 判 平16.9.24労 判883号38頁) は 、 「被 告 誠 昇 会 は 、 被 告Y2ら のAに 対 す る 本 件 い じめ を認 識 す る こ と が 可 能 で あ っ た に もか か わ らず 、 こ れ を 認 識 して い じめ を 防 止 す る 措 置 を採 らなか った安全 配慮 義務違 反 の債務 不履行 が あ った と認 め る こ とが で き、 … 本 件 い じめ とAの 本 件 自殺 との 間 に事 実 的 因 果 関係 が 認 め られ る こ と は 、 す で に認 定 説 示 した と こ ろ で あ る 」 が 、 「い じめ に よ る 結 果 が 必 然 的 に 自殺 に結 び つ くも の で な い こ と も経 験 則 上 明 ら か で あ る。 し た が っ て 、 い じめ を原 因 とす る 自殺 に よ る 死 亡 は、 特 別 損 害 と して 予 見 可 能 性 の あ る場 合 に 、損害賠償義務者 は 、 死 亡 と の 結 果 につ い て損害 賠 償 義 務 を 負 う と解 す べ きで あ る」 と して 、 直 接 の加 害 者 で あ る 「被 告Y2

らのAに 対 す る い じめ は 、 長 期 間 に わ た り、 しつ よ う に行 わ れ て い た こ と、Aに 対 して 「死 ね よ。」 との 言 葉 が 浴 びせ ら れ て い た こ と、被告Y2は、

Aの勤務 状 態 ・心身の 状 況 を認 識 して い た こ と など に 照 らせ ば 、被告Y2 は 、Aが 自殺 を図 る か も しれ な い こ と を予見 す る こ と は可 能 で あ っ た と 認 め る の が 相 当 で 」、 加 害 者 本 人 で あ るY2は 死 亡 につ い て損 害 賠 償 義 務

を負 うが 、 「被 告 誠 昇 会 が 被 告Y2ら の行 っ た 本 件 い じめ の 内 容 や そ の深

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労働者の 自殺 に対す る使用者の予見可能性の位置づけ(勝 亦啓文)

刻 さ を具体的 に認 識 して い た と は認 め られ な い し、 い じめ と自殺 との関 係か ら、被告 誠昇 会 は 、Aが 自殺 す る か も し れ な い こ と につ い て予見 可 能 で あ っ た と ま で は認 め が た い 。 被 告 誠 昇 会 は 、 本 件 い じめ を 防 止 で き

な か っ た こ と に よ っ て太 郎 が 被 っ た損 害 につ い て 賠 償 す る 責 任 は あ る が 、 Aが 死 亡 した こ と に よ る損 害 に つ い て は賠 償 責 任 が な い 」 と して 、 い じ

め に 対 す る 慰 謝 料500万 円 の み を 認 容 して い る。

前 掲 の 予 見 可 能 性 を認 め る 裁 判 例 が 、 労 働 者 が 自殺 す る こ と に対 す る 具 体 的 な予 見 可 能 性 を、 使 用 者 の 労 務 管 理 上 の 注 意 義 務 違 反 な い し安 全

配 慮 義 務 違 反 の 前 提 と して 、 あ る い は死 亡 との 相 当 因果 関 係 の 前 提 と捉 え て こ な か っ た の に対 し、 本 判 決 は い じめ を原 因 とす る 自殺 に よ る死 亡 は 「特 別 損 害 」 で あ る と し て 、 自殺 に対 す る 具 体 的 な予 見 可 能 性 を 問 題 に して い る 点 が 特 徴 で あ る。 同 判 決 が 、 こ の よ う な 処 理 を い じめ 自殺 固 有 の 問 題 と と ら え て い る の か 、 労 働 者 の 自殺 一 般 の 問 題 と し て捉 え て い るの か は 明 瞭 で な い もの の 、 従 前 多 くの 裁 判 例 が 認 め て きた 、 精 神 障 害 の 発 生 と 自殺 の 相 当 因 果 関 係 を ス ト レー トに 認 め る処 理 とは 明 らか に 立 場 を異 に す る もの と い え る。

しか し、 労 働 者 の 自殺 に対 す る損 害 賠 償 責 任 を 否 定 した例 で は、 死 亡 と い う結 果 に対 す る 予 見 可 能 性 が な い こ と を理 由 に 、 請 求 を棄 却 す る も の が 多 い 。

た と え ば 、 日勤 教 育 を 受 け て い た 運 転 士 の 自殺 に対 す る遺 族 か らの 損 害 賠 償 請 求 事 案 で あ るJR西 日本 尼 崎 電 車 区事 件(大 阪 高 判 平18.11.24労 判931号51頁)は 、 運 転 手 に対 す る 日勤 教 育 実 施 と 自殺 に 条 件 的 因 果 関 係 は認 め られ るが 、 「権 利 侵 害 行 為 と結 果(損 害 発 生)と の 問 に法 律 上 の 因果 関係 が あ る とい う た め に は 、単 に条 件 的 因果 関 係 が あ る の み な らず 、 行 為 と損 害 発 生 との 間 に い わ ゆ る 相 当 因 果 関 係 が あ る と認 め られ る こ と を要 す る と解 す べ きで あ 」 り、「使 用 者 が 、被 用 者 に対 し、指 導 教 育 を行 っ た こ と に よ り、 あ る い は指導・ 教 育 方 法 の 誤 り等 で 被 用 者 を精神 的 に追 い詰め 、精神 状 態 を悪 化 させ た こ とが 、事実 と し て認 め ら れ る と して も、

そ の精神 状 態 の悪 化 か ら 自 殺 ま で に 至 る とい う こ と は、 極 め て特異 な 出 来 事 とい うべ きで あ っ て 、 通 常 生 ず べ き結 果 で は な い 」 と して 、 自殺 は

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特 別 損 害 に あ た り、 予 見 可 能 性 が な い か ら、 相 当 因 果 関 係 が な い と して 請 求 を棄 却 して い る。

ま た 、 入 社 半 年 後 のSEの 自殺 に 対 す る 遺 族 か ら の 債 務 不 履 行 請 求 事 案 で あ る み ず ほ トラ ンス シ ス テ ム ズ(う つ 病 自殺)事 件(東 京 高 判 平 20.7.1労 判969号20頁)は 、 業 務 の 過 重 性 は 認 め られ ず 、 個 体 的 要 因 が 大 き い か ら、 業 務 と う つ 病 発 症 の 相 当 因 果 関係 は認 め られ な い し、 「Aに 出 社 を 取 りや め る よ う指 示 しな か っ た こ と を も っ て 、 被 控 訴 人 会 社 が う つ 病 増 悪 防 止 義 務 に 違 反 した も の とい う こ と は で き な い 。 仮 に 「9月25 日及 び26日 の2日 間 の 出社 」 と 「Aの う つ 病 の 本 件 自殺 を決 意 す る ほ ど まで の 増 悪 」 との 間 に相 当 因 果 関 係(法 的 因果 関 係)が あ る と した 場 合 にお い て も、 上 記 の よ う な 経 緯 に徴 す る と、被 控 訴 人 会 社 に お い て9月 25日 以 降 にAが 出 社 す る こ と に よ ってAのうつ病がその自然的経過を 超 え て 本件 自殺 を決 意 す るほど ま で に急 激 に増 悪 す る こ と を予見 す る こ と は で き な か っ た もの で あ る。 そう とす れ ば 、 そ の よ うな予見義務 を前提 とした安全配慮義務(増 悪防 止義務)を 被控 訴 人会社 に課 す こ とはで き な い 」 と して 棄 却 し て お り、 仮 定 的 な判 断 の 中 で の 説 示 で あ る が 、 うつ 病 増 悪 に よる 自殺 に対 す る安 全 配 慮 義 務 の 存 在 を も否 定 して い る。

同 様 に 月8回 程 度 の 当直 と60時 間程 度 の 時 間 外 労 働 、 常 勤 医 の退 職 に よる 医 師減 少 問 題 に対 処 して い た医 師 の 自殺 に対 す る 立 正 佼 成 会 事 件(東 京 高 判 平20.10.22労 経 速2023号7頁)は 、 債 務 不 履 行 ま た は 不 法 行 為 に あ た らな い とす る 中で の 判 示 と して 、 「業 務 の 遂 行 と う つ病 発 症 との 間 に は 、 相 当 因果 関 係 も肯 定 す る こ とが で き」、 「被 控 訴 人 は、 亡Aの 心 身 の 健 康 状 態 に 十 分 に配 慮 し、 業 務 量 ・業 務 内 容 の 適 切 な調 整 を行 うべ き義 務 を負 う と と も に、 健 康 状 態 に 問 題 が 発 生 した 場 合 や そ れ が 顕 在 化 した 場 合 に は適 切 な 措 置 を講 ず べ き義 務 を負 う もの とい う こ とが で きる」 が 、

「被 害 法 益 が 生 命 や健 康 に関 わ る 重 大 な もの で あ る か ら とい っ て 、 直 ち に 上 記 予 見 の 内 容 が 抽 象 的 な危 惧 感 で 足 りる と解 す る こ と は で きず 、 本 件 の よ う な 安 全 配 慮 義 務 な い し注 意 義 務 の 存 否 が 問 題 と な る事 案 に お い て も、 労 働 者(亡A)に う つ 病が 発 症 す る こ と を具体的 に予見 す る こ と ま で は必要 で な い もの の 、業務 の 遂 行 に伴う疲労 や 心 理 的負荷 等が 過 度 に

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労働者 の自殺 に対 する使用者の予見可能性の位置づ け(勝 亦啓文)

蓄 積 す る こ と に よ り、 亡Aの心身の 健 康 が 損 な わ れ て 何 らか の精神障害 を起 こ す お そ れ につ い て は 、具体的客観的 に 予 見 可 能 で あ る こ とが 必 要」

で あ る と して 、 業 務 の 過 重 性 は 認 め られ る が 、 精 神 障 害 の 発 症 に つ い て の 使 用 者 の 予 見 可 能 性 が な い と して 、 請 求 を棄 却 して い る 。

本 判 決 は 「精 神 障 害 を起 こ す お そ れ に 対 す る具 体 的 客 観 的 な予 見 」 と い う高 度 な 予 見 可 能 性 を求 め て お り、 業 務 の 過 重 性 が あ り なが ら も、 そ れ に 対 す る 安 全 配 慮 義 務 や 注 意 義 務 も、 具 体 的 な 障 害 の 発 生 の予 見 が な け れ ば 認 め られ な い とす る点 で は 、 従 来 の 安 全 配 慮 義 務 に 関 す る 裁 判 例 と大 き く異 な る 判 断 枠 組 み を提 示 して い る。

ま た 、 架 空 出 来 高 の 解 消 を 命 じ ら れ た 営 業 所 長 の 自殺 に対 す る 損 害 賠 償 請 求 事 案 で あ る前 田 道 路 事 件(高 松 高 判 平21.4.23労 判990号134頁)は 、 職 場 の メ ン タ ル ヘ ル ス に つ い て 使 用 者 が 何 ら対 策 を と っ て い な か っ た と は い え ず 、 「Aの 部 下 ら に は 、Aに 元 気 が な い あ る い はAが 疲 れ て い る と感 じて い た 者 は い た も の の 、Aが 精 神 的 な 疾 患 に罹 っ て い る か も しれ な い とか 、Aに 自殺 の 可 能 性 が あ る と感 じて い た 者 が い な か っ た こ と は 原 判 決 認 定 の とお りで あ り、 さ ら に、Aの 上 司 ら は 、Aが 行 っ た 架 空 出 来 高 の 計 上 額 は約1800万 円 で あ る と認 識 して い た の で あ っ て 、 こ れ を遅 く と も平 成16年 度 末 ま で に 解 消 す る こ と を 目 標 とす る 業 務 改 善 の指 導 は 、 必 ず し も達 成 が 容 易 な 目標 で は な か っ た もの の 、 東 予 営 業 所 の 業 績 環 境 に か ん が み る と、 不 可 能 を 強 い る も の と い う こ と は で き な い の で あ り、 架 空 出 来 高 の 計 上 の解 消 を 求 め る こ と に よ りAが 強 度 の 心 理 的 負 荷 を受け 、精神的 疾 患 を発 症 す る な ど して 自殺 に 至 る とい う こ と に つ い て は 、Aの 上 司 ら に予 見 可 能 性 は な か っ た とい う ほか な い 」 と して 請 求 を 棄 却 した 。

上 司 に体 を触 られ た 女 性 労 働 者 の 自殺 「未 遂 」 に 対 す る 不 法 行 為 請 求 事 案 で あ るA株 式 会 社(自 殺 未 遂)事 件(大 阪 地 判 平21.10.16裁 判 所 ウ ェ ッ ブ ペ ー ジ掲 載)も 、 セ ク シ ュ ア ル ・ハ ラ ス メ ン ト行 為 お よ び被 害 の 申 告 に 対 して 十 分 な調 査 を尽 くさせ な い ま ま 、 適 切 な措 置 を 執 らな か っ た こ と は配 慮 義 務 に 反 す る が 、 「本 件 セ ク シ ュ ア ル ・ハ ラ ス メ ン ト及 び こ れ に 対 す るJの 対 応(不 作 為)と 原 告 の 自殺 未 遂 と の 間 に相 当 因 果 関係 が あ

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る と まで は い え ず 、 他 に これ を認 め る に 足 りる 的 確 な証 拠 は な い 」 と し て 退 け て い る。

ま た、 入 社37年 の 労 働 者 の 自殺 に 対 す る 遺 族 か ら の 不 法 行 為 損 害 賠 償 請 求 事 案 で あ る 日本 通 運(大 阪 ・自殺)事 件(大 阪 地 判 平22.2.15判 時 2097号98頁)は 、C型 肝 炎 に よ りイ ン タ ー フ ェ ロ ン 治 療 中 の 労 働 者 に 配 転 や 減 給 を行 っ た こ とが 安 全 配 慮 義 務 に 違 反 す る と は い え な い が 、 入 院 治 療 を非 難 す る よ うな 発 言 に は 「不 安 感 を増 大 させ 、 精 神 状 態 を 悪 化 さ せ る も の で あ っ て 、Aの 精 神 面 を含 む 健 康 管 理 上 の 安 全 配 慮 義 務 に違 反 す る も の とい う こ とが で き る」 と こ ろ、 労 働 者 の うつ 状 態 の発 症 につ い て は上 司 に予 見 可 能 性 が あ り安 全 配 慮 義 務 違 反 が 認 め られ るが 、 「被 告 が 、Aに 対 し、解雇 に対 す る 恐 れ か らう つ 病 に 罹 患 し て い る こ と を前 提 と した 処 遇 を した り、 自殺 の危険 性 等 も予 見 した 対 応 を と るべ き義 務 が あったということはできない」 と して 、 「発 症 」 に対 す る 慰 謝 料300万 円 等 の み を認 容 した 。

こ の ほ か 、 上 官 の い じめ に よ る 自殺 を 理 由 とす る 上 官 本 人 お よ び 国 に 対 す る損 害 賠 償 請 求 事 案 で あ る 国(護 衛 艦 た ち か ぜ 〔海 上 自衛 隊 員 暴 行 ・ 恐 喝 〕)事 件(横 浜 地 判 平23.1.26労 判1023号5頁)で は 、 部 下 を エ ア ガ

ン で 打 つ 、 ビ デ オ を 無 理 や り買 わ せ る な ど した上 官 の 行 為 は不 法 行 為 で あ り、 上 官 個 人 の不 法 行 為 お よ び そ の 上 官 ら の指 導 監 督 義 務 違 反 と、 自 殺 との 間 に 「事 実 的 因 果 関係 」 が 認 め られ るが 、損 害 の 算 定 に あ た っ て 、

「被 告Y2がAの 死 亡 に よ る損 害 に つ い て 賠 償 責 任 を負 う とい う た め に は 、 被 告Y2に 本 件 自殺 の 予 見 可 能 性 が あ る こ と を 要 す る 」 と こ ろ 、Y2 はAを 狙 い 撃 ち に して い た わ け で は な く、Aも 死 亡 前 に はY2と 行 動 を 共 にす る こ と も少 な くな っ て い た の で あ る か ら、 「被 告Y2に お い て 、本

件 暴 行 等 に よ り、Aが 自殺 す る こ と まで 予 見 す る こ とが で きた と まで は 認 め られ な い 」 か ら 、 「Aの 死 亡 に よ っ て 発 生 し た損 害 に つ い て は、 被 告Y2の 不 法 行 為 と の 間 に 相 当 因 果 関 係 が あ る と は 認 め られ な い 」 し、

指 導 監 督 義 務 違 反 が あ っ た と さ れ る 上 官 ら に つ い て も、 「こ れ を予見し て い た と か 、予見 す る こ とが 可 能 で あ っ た と は認 め ら れ な い 」 と し て 、 暴 行 及 び恐 喝 に よ りAが 被 っ た精 神 的 苦 痛 に対 す る 慰 謝 料400万 円 の み

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労働者の自殺 に対する使用者の予見可能性の位置づけ(勝 亦啓文) を認 容 して い る 。

3)裁 判 例 の 判 断枠 組 み

こ れ ら裁 判 例 の 傾 向 を整 理 す る と、次 の こ とが 言 え る 。

A.長 時 間労 働 等 の 客 観 的 に 過 重 で あ る と認 め ら れ る 事 情 が 業 務 上 存 在 す る場 合

お よび

B.現 に うつ 症 状 が 発 症 し て い る こ と を 知 っ て い た に もか か わ らず 、 使 用 者 が 悪 化 を避 け る措 置 を と らな か っ た 場 合

以 上2つ の 場 合 にお い て は 、 使 用 者 の 注 意 義 務 な い し配 慮 義 務 違 反 に よる う つ 病 発 症 と 自殺 に ア プ リオ リ に 因果 関 係 を認 め 、 使 用 者 の 注 意 義 務 な い し配 慮 義 務 違 反 と、 そ れ に よ る 死 亡 へ の賠 償 責 任 を 認 め る判 断 が

ほ ぼ 定 着 して い る とい え る。

上 記A、Bの 場 合 、 使 用 者 の 義 務 違 反 か ら死 亡 と い う結 果 に対 す る賠 償 責 任 をス ト レー トに 導 け る か は 法 理 と して は な お 説 明 が 必 要 に な る で あ ろ う し、 本人 側 の 要 因 を ど の段 階 で 、 どの 程 度 考 慮 す べ きか も問 題 と な る 。

ま た 、 予 防 的 な 観 点 か ら見 る と、 い ず れ の 立 場 に よ る 場 合 で も、 異 常 な所 見 を見 せ て い る労 働 者 に対 す る 措 置 義 務(二 次 予 防 の 義 務)は ほ ぼ 肯 定 さ れ て い る も の の 、 一 次 予 防 の 義 務 範 囲 に不 明 瞭 な 部 分 は残 る。 他 方 で 、

C.い じめ を原 因 とす る 場 合 お よ び

D.個 体 的 要 因 が 大 きい 場 合

こ の場 合 につ い て は、 さ ら に 以 下 の よ う に判 断 が 分 か れ る。

1)自 殺 は 予 見 不 可 能 、 結 果 回避 不 可 能 で あ り、 義 務 違 反 は な い とす る

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事例

自殺 に対す る具体 的予 見可 能性 を使用 者 の注意 義務 ない し安 全配慮 義 務 の範 囲 におい て考慮 す る立場 で あ り、結 果 的 には、相 当程 度 の具体 的 危 険性 を伴 う前 駆 的症状 を具 体 的 に予見 した場合 を除け ば、使用 者 が な

ん らかの措置 を とるべ き義務 自体が否 定 され る ことになる。

2)注 意 義 務 な い し安 全 配 慮 義 務 違 反 を認 め つ つ 、 過 失 相 殺 等 で 減 額 す る事 例

自殺 に 至 る原 因 と な っ た精 神 疾 患 の発 症 と業 務 上 の 要 因 自体 に対 す る 認 識 可 能 性 が あ れ ば 、 使 用 者 に 結 果 と して の 労 働 者 の 死 亡 に 対 して も予 見 可 能 性 を肯 定 しつ つ も、 損 害 額 の 算 定 に お い て調 整 を 図 る 立 場 で あ り、

労 使 の 利 益 調 整 とい う点 で 使 い や す い 法 理 で あ る が 、 法 理 と して の 明確 性 を欠 く危 険 は あ る。

3)な ん らか の精 神 的 ス トレ ス を与 え た こ と、 あ る い は 防 止 し なか っ た こ と に対 す る配 慮 義 務 違 反 を 認 め つ つ 、 死 亡 に対 す る予 見 可 能 性 に よ っ て 損 害 賠 償 の 範 囲 を限 定 す る事 例

か な りの 蓋 然 性 を もっ て 自 殺 に至 る とい うわ け で は な い と して も、 精 神 的 疾 患 を抱 え る者 が 結 果 的 に 自殺 した 場 合 に、 使 用 者 に労 働 者 の 死 に 対 す る具 体 的 予 見 を 求 め る とす れ ば 、 逸 失 利 益 の 損 害 賠 償 が 認 め ら れ る ケ ー ス は きわ め て 限 定 的 に な る 。 使 用 者 の 行 動 の み が 自殺 を招 く とい う ケ ー ス は き わ め て 稀 で あ る こ と か ら、 結 果 的 に、 使 用 者 の 責 任 を 過 度 に 軽 減 して し ま う の で は な い か と い う懸 念 が あ る。

III.予 見可能性 に関す る検討

前 述 の よ う な 裁 判 例 の動 向 に つ い て 、濱 口教 授 は 、 前 掲 ニ コ ン ほ か 事 件 評 釈9に お い て 「本 件 の よ う に全 く異 常 の 認 識 が な い に も か か わ らず 予 見 可 能 性 を認 定 した 例 は 見 当 た ら な い 。 こ の 点 も、 か な り疑 問 が 残 る (Yに つ い て は 退 職 の 申 し出 を 受 け て い るが 、 これ が 異 常 を認 識 し得 る よ

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労働者の 自殺 に対 する使用者の予見可能性の位置づ け(勝 亦啓文)

う な態 様 の も の で あ っ た と の 認 定 は な い)。」 と の 疑 問 を示 して い る。 確 か に 同 事 案 以 前 の 裁 判 例 で は 、 過 重 労 働 の 結 果 と し て の 自殺 に対 す る 予 見 可 能 性 に つ い て 一 般 論 と して は 死 亡 に 対 す る具 体 的 予 見 可 能 性 は 要 し な い と い う判 示 を して い る もの の 、 事 案 と して は 、 自殺 直 前 に な ん らか の 異 常 な 行 動 を使 用 者 側 が 認 識 して お り、 あ る い は認 識 しえ た ケ ー ス で あ り、 事 前 に行 動 の 異 常 性 を 認 識 して い な か っ た 場 合 に も、 従 来 の 法 理 が そ の ま ま妥 当 しえ る か につ い て は 、議 論 の 余 地 が あ る と思 わ れ る。

しか し、 逆 に一 般 的 に 死 亡 と い う結 果 に対 す る 予 見 可 能 性 を 要 求 す れ ば 、 実 質 的 に は 被 害 救 済 の 余 地 を 著 し く狭 く して しま うお そ れ が あ る こ とか ら、 学 説 は、 前 掲 立 正 佼 成 会 事 件 の よ う に 、 予 見 の 内 容 は 抽 象 的 な 危 惧 感 で 足 りず 、 何 らか の 精 神 障 害 を起 こ す お そ れ を具 体 的 客 観 的 に 予 見 可 能 で あ る こ とを必 要 とす る こ とに は 批 判 的 で あ る 。

水 町教 授 は 、 前 掲 立 正 佼 成 会 事 件 評 釈 に お い て 、 この よ う に 高 度 な 予 見 可 能性 を 要 す る と解 す る こ とは 従 前 の 裁 判 例 か らみ て 疑 問 が あ る と し

て い る ほ か10、 同様 に和 田 教 授 も、 同 判 決 の 判 断枠 組 み を批 判 した上 で 、 電 通 事 件 を 先 例 とす る 判 例 法 理 にお い て は 、 イ)業 務 上 の 負 荷 が 労 働 者

の 健 康 を損 な う こ とが 経 験 則 上 認 め ら れ る よ う な 場 合 に お い て は 、 使 用 者 は 当 然 に 心 身 の 健 康 の 侵 害 を 予 測 して お くべ きで あ り、 ロ)負 荷 の 程 度 が そ の 程 度 に 至 らな い 場 合 で も、 個 体 的 要 因 か ら心 身 の 健 康 の侵 害 が 予 測 さ れ る場 合 に は そ れ を 回避 す る義 務 を負 う もの と さ れ る の で あ っ て 、

両 者 は 排 斥 しあ う もの で は な く、 事 案 に 応 じて 相 対 的 に 義 務 の 範 囲 が 定 ま る もの と して い る11。

い ず れ にせ よ、 注 意 義 務 な い し安 全 配 慮 義 務 の 存 在 の 前 提 と して、 一 般 的 に死 亡 に対 す る 具 体 的 な 予 見 可 能 性 を 求 め る 立 場 は 、 支 持 され て い な い 。 注 意 義 務 な い し配 慮 義 務 の 内 容 と して 、 過 重 な 労 働 に よ り心 身 の 不 調 が 生 じた 場 合 、 死 亡 に対 す る 因 果 関 係 は 特 段 問 題 と しな い 電 通 事 件 最 高 裁 判 例 の立 場 は 、 お お む ね 支 持 さ れ て い る とい え る だ ろ う。

他 方 で 、C.い じめ を原 因 とす る場 合 に つ い て は、 これ を電 通 事 件 の よ う に 、 過 重 労 働 を原 因 とす る 場 合 の 自殺 と同 様 の 法 理 で 処 理 し う る か は 、 な お 検 討 を要 す る と と も に、D.個 体 的 要 因 が 大 きい 場 合 の 処 理 の あ り方

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につ い て も、位 置 づ け を明 確 に す る必 要 が あ る 。

上 田教 授 は 、 精 神 障 害 ・自殺 を 理 由 とす る 民 事 損 害 賠 償 請 求 訴 訟 にお い て は 、 労 働 に 「過 重 性 が 認 め られ る 以 上 、 精 神 障 害 の 発 症 な らび に 自 殺 とい う結 果 に結 び つ い た 可 能 性 は否 定 で き な い こ と に な り、 そ の他 の 自殺 を 導 く要 因 の 存 在 は 、 過 失 相 殺 の 問 題 と して 処 理 さ れ る こ とに な ろ う」12と す る ほ か 、 濱 口 教 授 も、 前 掲 誠 昇 会 北 本 共 済 病 院 事 件 評 釈 の 中 で 、 「安 全 配 慮 義 務 の 射 程 を 予 見 可 能 性 の み で 捉 え る と、本 判 決 の よ う に オ ー ル ・オ ア ・ナ ッシ ング と な り、 か え って 問 題 が あ るの で は な か ろ う か」

と した う えで 、 「多 くの 裁 判 例 は債 務 不 履 行 責 任 に も過 失 相 殺 を適 用 す る こ と に よ り、 使 用 者 に求 め られ る安 全 配 慮 義 務 の程 度 に応 じた損 害 賠 償 額 を認 め る とい うや り方 を して き たの で は なか ろ うか 」 と指 摘 す る30。 和 田教 授 が 指 摘 す る よ う に 、 注 意 義 務 な い し安 全 配 慮 義 務 は事 案 にお い て 相 対 的 で あ る と 同 時 に 、 重 層 的 な も の で あ り、 労 務 管 理 に お け る具 体 的 な 実 施 可 能 性 を考 え れ ば 、 一 次 予 防 に対 応 す る使 用 者 の 通 常 の 対 応 と、

二 次 予 防 に対 応 す る使 用 者 の 通 常 の対 応 を前 提 に義 務 内 容 を考 え る 必 要 が あ る だ ろ う。

こ の 点 、 労 災 保 険 で は使 用 者 の 無 過 失 責 任 を 前 提 と した 業 務 起 因 性 が 認 め ら れ る こ と に加 え、 労 働 者 の 自殺 に対 す る 民 事 損 害 賠 償 事 案 にお い て は 、 労 働 者 の 自殺 につ い て か な りの 広 範 囲 な 使 用 者 の 予 見 可 能 を前 提 とす る 注 意 義 務 な い し配 慮 義 務 が 認 め られ て きた 。 しか しな が ら、 使 用 者 と労 働 者 な い しそ の遺 族 との 間 の 損 害 賠 償 の 問 題 領 域 で は、 労 働 者 に 実 現 した リ ス ク を 労 使 間 で 合 理 的 な配 分 す る こ とが 必 要 に な る 。 近 時 の 裁 判 例 の 一 部 が 提 示 す る 、 死 亡 に つ い て 具 体 的 な 予 見 可 能 性 を 求 め る こ とが 妥 当 とい え る か とい う問 題 は 、 こ の 意 味 で無 視 す る こ とは で き な い 。

まず 、 う つ 病 の 発 症 が 自殺 の 可 能 性 を相 当 程 度 高 め る こ と は 認 め ら れ る にせ よ、 労 働 者 の 死 亡 とい う 重 大 な 結 果 の 回避 の た め に使 用 者 に 具 体 的 に どの よ う な措 置 義 務 が 課 せ ら れ て い る か と い う レベ ル で の 予 見 可 能 性 と、 死 亡 に よ っ て 生 じた損 失 の 合 理 的 配 分 をす る 場 合 の 予 見 可 能 性 の

違 い を 踏 ま え た法 理 を構 築 す る必 要 が あ る よ う に 思 わ れ る 。

労 働 の 過 程 で 一 般 的 に 生 じ得 る リス ク 要 因 を予 防 す る とい う意 味 で の

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参照

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