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茨城大学学術企画部学術情報課(図書館) 情報支援係 http://www.lib.ibaraki.ac.jp/toiawase/toiawase.html
Title
アーネスト・サトウ『会話篇』 Part II 訳注稿 (補遺)
Author(s)
櫻井, 豪人
Citation
茨城大学人文学部紀要. 人文コミュニケーション学科論集
, 14: 119-136
Issue Date
2013-03
URL
http://hdl.handle.net/10109/3566
Rights
このリポジトリに収録されているコンテンツの著作権は、それぞれの著作権者に帰属 します。引用、転載、複製等される場合は、著作権法を遵守してください。『人文コミュニケーション学科論集』14, pp. 119-136. © 2013茨城大学人文学部(人文学部紀要) 櫻井 豪人 前号まで、アーネスト・サトウ『会話篇』PartⅡの訳注を試み、本論集に連載してきたが、 本号ではその補遺として、『会話篇』PartⅡで用いられている原文の用語の説明と、訳注の際 に用いた訳語との対応について述べ、拙訳と原文とを合わせて読む際の便宜を図る。 まず最初に、『会話篇』PartⅡに用いられている略語一覧を掲げ、その後に原語の解説と訳 語との対応関係について述べる。 1. 略語一覧 abbreven./abbrevn.…abbreviation「省略(形)」 acc. to…according to「…によれば」「…を参照」 accentd.…accented
adj.…adjective「形容詞」 adv.…adverb「副詞」
(c)…the word of Chinese origin「漢語」 caus.…causative「使役態」 cf.…confer「…を参照」 Chin.…Chinese「中国の」「中国語の」「漢語の」「漢語」 comp./compd.…compound「複合(語)」「複合した」 conc.…concessive「譲歩法」 cond./condition.…conditional「条件法」 contr./contrn.…contraction「縮約(形)」「縮約したもの」 desid.…desiderative「願望法」 Dict.…Dictionary「辞書」 Engl.…English「英語(の)」 equivt.…equivalent「同義(語)」 exclam.…exclamation「感嘆詞」 exprn.…expression「表現」「言い回し」 fr.…from i.e.…id est「すなわち」 ibid.…ibidem「同書に」
imperat.…imperative「命令法」 indic.…indicative「直説法」 interj.…interjection「間投詞」 intrans. …intransitive i.v.…intransitive verb「自動詞」 Introd.…Introduction「序文」 Jap.…Japanese「日本の」「日本語(の)」「和語(の)」
lity./lit.…(translate) literally/literal translation/literal meaning「直訳」 neg.…negative「否定(形)」「否定の」 nom.…nominative「主格(の)」 pass.…passive「受動態」 perh.…perhaps pr.…provincialism「方言(形)」 prob.…probable「推量法」 prob.…probably pronunc.…pronunciation「発音」 pres.…present「現在(形)」 q.v.…quod vide「…の項を見よ」「参照」 sent.…sentence subst.…substantive「名詞」 syll.…syllable「音節」 syn.…synonym「同義(語)」 t.v.…transitive verb「他動詞」 termn.…termination「語尾」 v.…vide「…を見よ」 v.i.…verb intransitive「自動詞」 vulg.…vulgar「卑俗な」「卑俗な言い方(言い回し)」 2. 原語と訳語との対応 2.1. 本訳注稿における訳語・訳文の基本方針 訳文に用いた文法用語は、基本的に学校国文法の用語を踏襲した。すなわち、例えば、 conjugationやinflectionの訳語として「(語形)変化」ではなく「活用」を用い、particleの訳 語として「不変化詞」ではなく「助詞」を用いたように、多くの日本人にとって馴染みのあ る用語を極力用いるように心がけた。これは、馴染みのない用語を用いることによって訳文
が難解になってしまうことを避けるためである。 また、同一の原語には可能な限り同一の訳語を当てるように心がけたが、その結果とし て訳文が日本語として不自然になる場合には、文脈により訳語を使い分けた。例えば原文 にparticleとある場合、大半は「助詞」と訳したが、ところどころ「助詞」ではないものも particleと呼ばれており、その場合は「接頭語」などと訳し分けたような箇所がある。(詳細 は後述。) 訳文の作成に際しては、なるべく原文を参照せずとも意味が把握できるような訳になるよ う心がけた。それゆえ、原文以上に説明が長くなっている箇所が少なくない。 2.2. 原語と訳語の具体的対応関係 以下に原語と訳語の具体的対応関係について述べるが、ある程度関連性のあるまとまりに 分けて説明する。 A.文体・古語・位相・方言に関する用語 ・written language…「文語」と訳した。「書き言葉」と訳してもよいが、大半は古語や文語 的表現のことをさしているので、「文語」に統一して訳した。通常はwritten languageと いう書き方がなされるが(第1章9番、第1章19番、第4章23番、第21章3番、語形変化表 p.167)、例外的にliterary style(文語体)という書き方がなされている箇所がある(第15 章1番)。 ・literary style…「文語体」と訳した。第15章1番で見られる表現。 ・colloquial (language)…場合により「口語(の)」「口語的」「口語形」「口語表現」などと 訳した。「話し言葉」と訳してもよいが、written languageを「文語」と訳したのに対応 させて、「口語」に統一した。大半はcolloquialという書き方がなされるが(第1章9番、 第1章14番、第3章22番、第6章22番、第6章26番、第8章49番、第9章25番、第10章15番、 第11章11番、第11章28番、第12章42番、第13章3番、第15章1番、第19章29番、第23章 40番、語形変化表p.167)、例外的にspoken languageという書き方がなされている箇所も ある(第1章19番、語形変化表p.167)。
・spoken language…「colloquial (language)」と同様、「口語」と訳した。
・archaic (word)…「古語」と訳した。具体的には、「三日」は「みつ」と日を表わす古語「か」 から(第1章13番)、「まこと」は「真」と「言葉」の古語「こと」との複合語(第2章 38番)、「しかし」は古語「しか」と「ある」の古語の過去形「ありし」とが縮約した もの(第3章22番)、「よければ」は「よく」と「ある」の条件法「あれば」との縮約形か、 もしくは語根「よ」と古語動詞「ける」(文語でしか用いられない)の条件法「ければ」 との縮約形(第4章23番)、「おっしゃりました」は古語の動詞「おおせる」の丁寧形で あり、その直説法現在形から最後のuを抜いて「aれる(areru)」を加えて成ったもの(第 8章1番)、「ついて」は古語「説く」の転訛したものと言われている「つく」の分詞(第
9章2番)、「仰せつけて」は古語「仰せる」と「つける」の複合語「仰せつける」から 成る(第10章6番)、「めでたい」は古語動詞「めづる」の願望形容詞(第12章19番)。 ・old (word)…archaicと同様、「古語」と訳した。具体的には、「来ます」は語根「来」に古 語の動詞「在す」を加えて作られたもの(第1章1番)、「おんな」は古語「おみな」の縮 約したもの(第1章6番)、「おととい」は古語「をちつ日」の転訛(第1章12番)。 ・vulgar(vulg.)…「卑俗な」「卑俗な言い方(言い回し)」と訳した。 ・slang…そのまま「スラング」と訳した。日本語の用法を説明する際に、英語でのスラン グ表現(slang expression)を用いて説明している。具体的には、「口を出す」は英語の jawのスラング表現に似ている(第9章34番)、「見立てる」は英語のto spotのスラング表 現にとても近い(第10章53番)の2例。 ・provincialism(pr.)…「方言(形)」と訳した。 B.発音に関する用語 ・syllable(syll.)…「音節」と訳した。 ・accent…そのまま「アクセント」と訳した。 ・emphasis…「強勢」と訳した。 ・stress…「強勢」と訳した。
accent, emphasis, stressに違いは感じられない。accentも高低アクセントのことではなく、 全て強勢のことをさしているものと思われる。 C.語形に関する用語 ・form…文脈に応じて「語形」「形態」「形」と訳した。 ・substitute…「代用(形)」「…の代わり」と訳した。 ・paradigm…「活用表」ではなく、「語形変化表」と訳した。この表が、学校文法で「活用」 と呼ぶものより広い範囲の語形変化を含んているためである。 D.活用語に関する用語 ・conjugation, conjugate…学校文法とのつながりを重視して、「活用(する)」と訳した。 ・inflection, inflect…「活用(した語形)」「活用する」と訳した。conjugationが活用の仕方や 活用の種類そのものをさすのに対し、inflectionは活用した後の各々の語形をさす。(第2 章7番(正しくは8番)、第15章10番、語形変化表p.168「譲歩法過去形に活用した形」。) ・base…「語基」と訳した。学校文法でいう動詞の未然形および仮定形をこう呼ぶ。学校文 法でいう動詞未然形は「否定の語基(negative base)」と呼び(例えば「参ら」)、仮定 形は「条件法語基(conditional base)」(例えば「参れ」)と呼ぶ。(第1章8番、第1章14 番、第2章1番、第2章12番、第3章2番、巻末の語形変化表。)これらに対し、学校文法 の連用形は「語根(root)」と呼び(例えば「参り」)、終止・連体形は「直説法現在形 (indicative present)」(例えば「参る」)、命令形は「命令法(imperative)」(例えば「参れ」) と呼んでいる。
・root…「語根」と訳した。大半は学校文法でいう動詞の連用形をさす。(第1章1番、第1 章5番、第1章8番など記載箇所多数。ちなみに形容詞の連用形は、形容詞の「副詞形 (adverbial form)」と呼ぶ場合が多い。)一方、「形容詞語根(root of an adjectiveまたは adjective root)」という表現も時折見受けられ、その場合は「やす(い)」「大き(い)」「小 さ(い)」「短(い)」「柔らか(い)」「にく(い)」など、ほぼ学校文法でいう形容詞の 語幹をさす。(第2章7番(正しくは8番)、第4章28番、第7章20番、第11章16番。)また、 「少し」「すぐ」「確か」「聊か」といった、学校文法でいうほぼ形容動詞語幹に相当する ものも「形容詞語根」と呼んでいる。(第1章5番、第1章15番、第15章13番。)さらに、「か く」「斯様」の「か」や「さぞ」「さよう」の「さ」、「あいつ」の「あ」などは、「指示 詞語根(demonstrative root)」と呼んでいる。(第4章3番、第8章6番、第9章6番。) E.テンス(時制)・アスペクト(相)に関する用語 ・past…「過去(形)」と訳した。 ・present(pres.)…「現在(形)」と訳した。 ・future…「未来(形)」と訳した。 ・present tense…「現在時制」と訳した。第1章23番、第6章6番に見られる。 ・frequentative…「反復相」と訳した。「あったり」「なかったり」(第1章14番の語形変化表)、 「磨いたり」(第5章7番)、「どいたり」(第11章44番)、「致したり(して)」(第18章10番)、 「ましたり」「来たり」「行ったり」「思ったり」など(巻末の語形変化表)をさす。巻 末の語形変化表の解説では、「反復相は大抵、動詞「する」to doにつなげて用いられる。 複数の反復相がつながっているのであれば、「する」はその最後にのみつけられる」と 説明されている(p.169)。 ・continuative…「継続相」と訳した。この相は、巻末の語形変化表に取り入れられていない。 「継続相現在(continuative present)」「継続相過去(continuative past)」「継続相の分詞 (continuative participle)」という形で用いられる。また、「継続相現在の分詞」という表 現もある(第15章17番「道外ていて」)。 ・continuative present…「継続相現在」と訳した。学校英文法でいう現在進行時制、すなわち 「現在…している最中である」という状態をさし、「切っておる」(第2章12番)や「道 化ている」(第15章17番)をそのように呼んでいる。また、第2章12番の「出している」 の説明の中で、「「いる」to beを伴う分詞は、継続相の現在または過去を表わすが、その どちらであるかは文脈に依存する」と述べている。これは、例えば「現在、東京に店を 出している」と「過去に二度、東京に店を出している」のような相違を想定しているも のと思われる。 ・continuative participle…「継続相の分詞」と訳した。第5章7番において、反復相の「磨いた り」を継続相の分詞の一種と説明しているが、継続相と反復相は異なるアスペクトとし て区別されるべきであろうから、この説明は合理性を欠く。(→J.participle)
・perfect…「完了相」と訳した。この相も、巻末の語形変化表に取り入れられていない。第 11章33番のみに「完了相の分詞(perfect participle)」として記述が見られる。
・perfect participle…「完了相の分詞」と訳した。第11章33番で「どちらが伸びていましょう。」 (PartⅠ英訳Which is the longest?)の「伸びて」をこう呼んでいる。この場合、動作が
進行中である状態(すなわち継続相)ではなく、動作が完了していることを示している。 (→J.participle) F.ムード(法)に関する用語 ・indicative(indic.)…「直説法」と訳した。 ・conditional(condition.)…「条件法」と訳した。 ・probable(prob.)…「推量法」と訳した。 ・concessive…「譲歩法」と訳した。 ・imperative(imperat.)…「命令法」と訳した。 ・desiderative(desid.)…「願望法」と訳した。
・hypothetical conditional present…「仮想的条件法現在形」と訳した。 ・hypothetical conditional past…「仮想的条件法過去形」と訳した。
「仮想的条件法」は語形変化表p.168にのみに見られる用語である。「仮想的条件法現 在形」は、例えば「行かば」のように、学校文法でいう順接仮定条件を示す古語の未然 形+「ば」を示す。Aston口語文典第2版p.35以下の語形変化表には仮想的条件法が示され ているものの、Satowは「仮想的条件法現在形は廃れてしまっているので語形変化表に 含めなかった」としている。「仮想的条件法過去形」はAston口語文典の用語で、例えば 「行ったらば」のように、助動詞「たり」を介在させたものをさす。 ・potential…「可能法」または「可能」と訳した。この法は、巻末の語形変化表に取り入れ られていない。これは恐らく、可能法の形態が一通りに定まらないからであろう。言い 換えれば、可能法とは語形変化の形態の一つではなく、可能の文法的機能を有している という機能そのものをさす用語ということである。大半のpotentialは五段動詞のいわゆ る可能動詞形をさす。しかし、その他の場合は、語形の成り立ちについて説明がなされ ると共に、「可能法として用いられている(used as a potential)」という表現がよく用い られている。以下にPartⅡでの記述例を掲げる。 【五段動詞の可能動詞形の例】 「行ける」は「行く」の可能法(第2章43番) 「読める」は「読む」の可能法(第3章21番) 「出せる」は「出す」の可能法(第18章54番) 「覚え尽くせる」は「覚え尽くす」の可能法(第20章40番) 「持てる」は「持つ」の可能法(第22章57番) 「売れる」は「売る」の自動詞形で、可能法として用いられている。第二活用(一段動詞)
はこの語形を取ることができない(第2章16番) 【その他の語形の例】 「参られる」は「参る」の可能法で、areru形は受動態、丁寧形としても用いられる(第 1章23番) 「下される」は「下す」の可能法で、敬語の意味合いに用いられる(第2章20番) 「まかる」は「まける」の不規則な可能法(第2章36番) 「聞こえる」は「聞く」の可能法で、不規則に作られる(第6章13番) 「いられる」は「いる」の可能法(第9章21番) 「儲かる」は「儲ける」の自動詞形で、可能法として用いられる(第21章3番) 「請け合われる」は「請け合う」の受動態であるが、可能法として用いられている(第 23章6番) 「麁末にできる」はここでは「麁末にする」の可能法として考えるべきである(第24章 6番) G.ヴォイス(態)や自動詞・他動詞に関する用語 ・active…「能動態」と訳した。 ・passive(pass.)…「受動態」と訳した。 ・causative(caus.)…「使役態」と訳した。 これらの態は、巻末の語形変化表に示されていない。 ・intransitive verb(i.v.)…「自動詞」と訳した。 ・verb intransitive(v.i.)…「自動詞」と訳した。 ・transitive verb(t.v.)…「他動詞」と訳した。 ・intransitive form…「自動詞形」と訳した。 「自動詞」という用語について、大半は通常の感覚で良いが、時折、単に他動詞・自 動詞の関係(すなわちヴォイスの問題)のみならず、可能の意味(すなわちモダリティ の問題)を含むものも「自動詞」または「自動詞形」と呼ぶことがあり、やや注意が必 要である。例えば「売る」の自動詞形「売れる」(第2章16番、「売れないか。」(PartⅠ の英文Can’ t you sell it?)の「売れる」)、「通る」の自動詞「通れる」(第11章26番)など。 (→F.potential) 勿論、形態的には同じ関係であって、単純に他動詞・自動詞の関係といってよいもの もある。例えば「破る」の自動詞「破れる」(第4章34番)、「焼く」の自動詞「焼ける」(第 12章5番)、「売り切る」の自動詞「売り切れる」(第16章19番)など。 なお、第4章34番では「同一語根の-uと-eruで終わる一組の動詞において、必ずしも 最初に他動詞があって自動詞が二次的に作られるとは限らないということを、学習者は 注意して覚えておかなければならない。例えば「開ける」to open(他動詞)と「あく」to open(自動詞)のように」との指摘がなされている。従って、自動詞と他動詞の区別は、
単に形態のみによって行われているわけではない。 H.否定に関する用語 ・neg.…negative「否定(形)」「否定の」と訳した。 ・negative participle…「否定の分詞」と訳した。 I.形容詞に関する用語 ・adjective…「形容詞」と訳した。基本的には学校文法でいう形容詞と形容動詞をさすが、「願 望形容詞(desiderative adjective)」や「代名形容詞(pronominal adjective)」はそれ以外 のものをさす(→desiderative adjective, pronominal adjective)。例外的なものに、「半年」 の「半」を形容詞と呼ぶ例(第3章24番)がある。
・adjective root, root of an adjective…「形容詞語根」と訳した。ほぼ学校文法でいう形容詞・ 形容動詞の語幹をさす。(→D.root) ・adverbial form…「副詞形」と訳した。主に学校文法でいう形容詞(もしくは形容詞型活用 の助動詞)の連用形をさす。すなわち、第3章21番や第8章6番で「喜ばしく」のような ものを形容詞の副詞形と呼ぶほか、第10章5番では「なるべく」の「べく」も、語根「べ」 の副詞形と呼んでいる。また、単に「副詞」と呼んでいる場合もある(→J.adverb)。 巻末の語形変化表p.167の説明によれば、かつて動詞連用形+「て」のことを「副詞形」 と名づけようとしたことがあると述べるが、本文中でそう呼んでいる例は無く、そのよ うなものは専らparticiple(分詞)と呼んでいる(→J.participle)。 ・verbal form…「動詞形」と訳した。第2章7番(正しくは8番)に出てくる用語で、実際は 叙述用法として用いる形容詞終止形のことをそのように呼んでいる。(具体例はis cheap 「安い」を挙げている。)また、第1章14番には「動詞として用いられる(USED AS A VERB)「ない」の活用」という表があるが、この「動詞として用いられる」というの は「叙述用法に用いられる」という意味で解するのが良いように思われる。 ・attributive form…「連体形」と訳した。学校文法でいう動詞・形容詞の連体形に相当する。 形容詞に対する記述は、第2章7番(正しくは8番)の「やすい」のみに限られる。また、 「不自由な」「感心な」「妙な」のような形容動詞の連体形はattributiveとのみ記されてお り、「どういう(意味)」「わけのわからない(こと)」「是非も無い(こと)」のようなも のと合わせて「連体修飾語句」と訳した。(→K.attribute, attributive form)
・conditional form…「条件法形」と訳した。第4章23番に見られ、「よければ」を形容詞「よい」 の「条件法形」と呼んでいる。学校文法でいう形容詞の仮定形に相当するが、第1章9 番の「ない」の語形変化表では、「条件法現在形(Condition. Pres.)」として「なければ」 または「なけりゃ(Nakeria)」、「条件法過去形(Condition. Past)」として「なかったら」 を挙げている。形容詞の条件法についての記述は非常に少ない。 ・desiderative adjective…「願望形容詞」と訳した。「行きたい」「申したい」など、動詞に「た い」を付けた形をこう呼ぶ。第3章2番「頼みたい」、第9章15番「申したい」、第14章3
番「頂きとう」、第15章10番「なりたい」、および語形変化表p.169に見られる。また、 第1章9番では「たい」を「an adjectival termn. expressing desirability(願望を表す形容詞 語尾)」としている(→Q.termination)。第12章19番で「めでたい」も願望形容詞であ るとしているのは、やや穏当性を欠くか。 ・pronominal adjective…「代名形容詞」と訳したが、実際には「あの」「その」など、学校文 法でいう連体詞をさす。(→K.pronominal adjective) J.副詞・連用修飾に関する用語 ・adverb(adv.)…「副詞」と訳した。ただし、学校文法でいう副詞よりも範囲が広く、学校文 法でいう形容詞・形容動詞の連用形もこのように呼ぶ。(例えば「安う」「安く」は「安 い」の副詞、「叮嚀に」は副詞、など。)そういった場合、「連用形」と訳しても意味は 通じるが、活用形の一つとして捉えているのではなく、転成した別品詞として捉えてい ると見られるので、そのまま「副詞」と訳した。(→I.adverbial form) ・participle…「分詞」と訳した。大半は学校文法でいう動詞連用形+「て」(巻末の語形変化 表ではこれを「副詞形(adverbial form)」と呼ぶ)のことをさす。しかし、「磨いたり」 を「継続相の分詞の一種」としたり(第5章7番)、「行かずに」「なくて」「変わりませず」 「ならず」「申しませんで」のようなものを「否定の分詞」としているので(巻末の語形 変化表)、正確には、学校文法でいうところの「用言を含んだ連用修飾語」の全般をさす。 K.連体修飾に関する用語 ・attribute…「連体修飾語句」と訳した。「不自由な」「感心な」「妙な」のような形容動詞連 体形や、「どういう(意味)」「わけのわからない(こと)」「是非も無い(こと)」のよう な連体修飾句をさす。(→I.attributive form) ・attributive form…「連体形」と訳した。学校文法でいう動詞・形容詞の連体形に相当する。 ただし記述は稀で、動詞の場合、第21章3番で「遂げたる」「買い込みし」といった文 語的表現の連体形に対してこの語が用いられている。(→I.attributive form) ・generic…「属性を表わす」と訳した。 ・generic particle…「属性を表わす助詞」と訳した。連体格助詞「の」のみならず、学校文法 でいう形容動詞連体形語尾「な」についてもこう呼ぶ(第7章19番「様な」の「な」)。 ・possessive…「所有を表わす」「所有(の)」と訳した。 ・possessive particle…「所有を表わす助詞」と訳した。(古語の連体格助詞「が」や、近代語 の連体格助詞「の」に対して用いる。第1章19番。) ・possessive case…「所有格」と訳した。 ・pronominal adjective…「代名形容詞」と訳した。「あの」「その」など、学校文法でいう指 示語の連体詞をさす。第1章6番と第2章25番に出てくる用語である。 L.指示詞に関する用語 ・demonstrative…「指示詞」と訳した。実際には「指示詞語根」(demonstrative root)という
表現でのみ出現する。具体的には、第4章3番(「斯様」thusに見られるような指示詞語 根「か」)、第8章6番(「さよう」などに見られる指示詞語根「さ」)、第9章6番(「あいつ」 の「あ」は指示詞語根「あ」)に見られる。 ・demonstrative particle…「指示助詞」と訳した。第9章1番のみに出てくる。「行かないとさ。」 の「さ」をさす(→Q. particle)。第11章24番においても「左様さね」の「さ」が第9章 1番の「さ」と同様であるとされるが、品詞名は書かれていない。 M.名詞に関する用語 ・noun…「名詞」と訳した。 ・substantive(subst.)…「名詞」と訳しても差し支えないが、nounと区別するために「実名詞」 と訳した。主に、名詞起源でない名詞を説明したり、名詞が他の品詞に転成したことを 説明する場合などに用いる。具体的には、「のち」(起源的には後方・背後を示す「実名 詞」との説明、第1章5番)、「から」(fromの意で、起源的には「実名詞」との説明、第 1章13番)、「うち」(inside, house, homeの意の「実名詞」との説明、第1章18番)、「不 自由」(厳密には「実名詞」との説明、第3章15番)、「まで」(起源的には距離を表わす 「実名詞」との説明、第3章46番)、「前」(frontの意味の「実名詞」との説明、第7章5 番)に用いられている。(ただし、第1章18番の「へ」では、「恐らく起源的には「名詞 (noun)」であったと思われる」と記している。ここは、他の箇所との兼ね合いから考 えればsubstantiveとあるべきところと思われる。) ・abstract noun…「抽象名詞」と訳した。第1章5番(「いで」の項、「大抵の動詞語根は抽象 名詞として扱われる」)、第2章7番(正しくは8番、「やすいこと」「やすさ」)、第5章16 番(「髪を結うこと」の意味での「髪結い」)に見られる。 ・concrete noun…「具象名詞」と訳した。第12章15番のみに見られる用語で、「「羽織」は動 詞「羽織る」の語根で具象名詞として用いられる」と説明している。抽象名詞とは反対 に、有形物の名詞をさす。 N.主格・主語に関する用語 ・nominative(nom.)…「主格(の)」と訳した。ただし、第16章16番のnominative(「私」を 「御座ります」の主語(nominative)と呼ぶことはできない)のみは「主語」と訳した。 これは本来、subjectとあるべきところである。 ・nominative case…「主格」と訳した。 ・subject…「主語」と訳した。ただし、第20章31番の「「最初」から「書き附けた物が」ま で」のように、長い範囲をさす場合は「主部」と訳した。また、これに対応するものと して、同章同番の「「段々の」(訳者注:「段々に」の誤り)から「出来て来た物」まで」 をpredicateとしているが、そちらは「述部」と訳した。 O.感嘆詞・間投詞に関する用語 ・exclamation(exclam.)…「感嘆詞」と訳した。「な」=eh!(「なんと言ったっけな」の「な」、
第7章24番)、「さあ」=come along!(第12章14番)、「いや」(第12章28番、 第16章16番、 第23章48番)、「はや」(第13章9番)。 ・interjection(interj.)…「間投詞」と訳した。「なに」(第3章30番)、「これ」=here!(第11章 44番)、「ええ」(第15章13番)、「あのう」(第18章53番)、「まあ」(第23章37番)。 interjectionとexclamationの間に違いは特に感じられないが、念のため分けて訳した。 学校文法でいう感動詞や間投助詞に相当する。 ・expletive…第4章10番では「虚辞」、第17章1番では「意味の無い間投詞」と訳した。前者 は「湯が沸いているかえ」の「え」をan emphatic expletiveと呼び、後者は「出立致さ なくてはならないて」の「て」をa mere expletiveと呼んでいる。(expletiveの訳語につい ては再考して統一したい。) P.数詞に関する用語 ・numeral…「数詞」と訳した。 ・auxiliary numeral…「助数詞」と訳した。「一冊」の「冊」、「一軒」の「軒」、「一杯」の「杯」 などをさす。やや特殊なものとして、第3章5番で「一か月」の「か」を助数詞として いる例や(「げつ」は「つき」のこととしている)、第22章68番で「ひと寝入り」の「寝 入り」のことを「昼寝」を数える助数詞と捉えている例が挙げられる。 ・ordinal (numbers)…「序数」と訳した。 Q.助詞・接頭辞・接尾辞・語尾に関する用語 ・particle…ほぼ学校文法でいう「助詞」に相当するので、「助詞」と訳した。ただし、若 干の例外がある。その一つは、第1章5番の「おいでなさい」の「お」で、ここのみ particleを「接頭辞」と訳した。本来ならprefixとあるべきものと考えられる(実際、第 6章22番では「御」をprefixとしている)。ただし、「お」は「ご」「み」「おん」などと ともにhonorific(敬語)とのみ記されることがほとんどで、particleなのかprefixなのかを 明記しないことが大半である。第1章5番で「お」をparticleと記したのは、英文法にお けるparticle(通常は「不変化詞」などと日本語訳される)に接頭辞が含まれるからであ ると考えられるが、その後、particleは助詞のみに用い、「お」などはprefixとして用語 を分けたのであろう。もう一例、やや違和感のあるものに、第9章1番の「行かないとさ」 の「さ」がある。原文ではdemonstrative particleと記されているが、こちらは形式的に「指 示助詞」と訳した(→L. demonstrative particle)。 ・prefix…「接頭辞」と訳した。 ・suffix…「接尾辞」と訳した。 独立した一語としての機能を持たないという観点から、「接頭語・接尾語」ではなく、 一様に「接頭辞・接尾辞」と訳した。 接頭辞には、「第」(第1章13番)のような序数を表す接頭辞、「御」(第6章22番)の ような敬語の接頭辞、「召し連れる」「召し上がる」などの「召す」(第4章31番)や「罷
り出る」の「罷り」(第17章20番)のような複合動詞の前部要素が含まれる。 また、他に接頭辞と訳したものに、particleとされているものの一部があるが、(具体 的には「おいでなさい」の「お」、第1章5番)、むしろこれは例外的なものである。(→ particle) 一方、接尾辞には、「様」「殿」「君」などの一連の敬称(第3章26番、第6章22番)や、 「若い衆」「子供衆」「別手衆」「役人衆」などの「衆」(第12章9番)、「思し召す」の「召す」 (第4章31番)、「照り込む」の「込む」(第22章26番)、「恐れ入る」の「入る」(第22章 26番)など、複合動詞の後部要素も含まれる。 ・termination(termn.)…「語尾」と訳した。具体的には「たい」「ます」「しい」などの活用語 尾のみをさす。「たい」「ます」は学校文法において助動詞に分類されているもの、「しい」 は形容詞活用語尾に分類されているものということになるが、この他に、「一寸とした」 の「した」なども「語尾」と呼んでいる。以下に「語尾」の例を挙げる。 「たい」は願望を表わす形容詞語尾(adjectival termination)(第1章9番) 「かく」の「く」は副詞語尾(adverbial termination)(第4章3番) 「めでたい」の語尾「たき」はそれがもともと持っていたveryの意味(訳者注:「愛で甚し」 の「甚し」のこと)を保持している(第12章19番) 「騒々しい」「恐ろしい」の「しい」は語尾(第12章20番、第25章17番) 「一寸とした」の「した」は、英語の-ishのような形容詞語尾(adjectival termination) である(第19章4番)
「が ま し い」はhaving the air of(…の 態 度 で あ る)を 意 味 す る 複 合 語 尾(compound termination)(第25章17番) 丁寧の語尾「ます」(巻末の語形変化表) R.複合語に関する用語 ・compound(comp. / compd.)…「複合する(した)」「複合(語)」と訳した。 ・compose, composition…compoundと同様、「複合する(した)」「複合(語)」と訳した。通 常はcompoundであるが、それと同じ意味で時折用いられる。例えば、第2章43番(「値 切 る」は「値」priceと「切 る」to cutの 複 合 語)、第5章3番(「雨 戸」の「あ め」の「e」 は他の語と複合する場合に大抵「a」になる)、第6章47番(「入る」は、複合語の最初 の要素の意味を強めているに過ぎない)など。
・compound verb(compd. verb)…「複合動詞」と訳した。
・auxiliary verb…「補助動詞」と訳した。学校文法の補助動詞と同じ概念である。 S.待遇表現に関する用語
・honorific…「敬語(の)」と訳した。honorificが指すものは、大半が接頭辞の「お」「ご」「み」 (御)であり、学校文法でいう尊敬の意味にも丁寧の意味にも用いられているため、「敬
例(第1章5番「なさい」の項)、②可能法「下される」がhonorific senseで用いられると する例(第2章20番)、③受動態「仰せ付けられ」をan honorificとしての用法とする例(第 18章63番)の3例に限られる。①②③ともに尊敬の意味であるが、接頭辞の「お」「ご」 「み」を「敬語」と訳すのと整合性を持たせるため、全て「敬語」と訳した。特に②と ③は、後に示す「丁寧形(polite form)」の尊敬の意味(areru形による丁寧形)と全く 同じものであり、honorificとpoliteとが完全には使い分けられていないことを示している。 (第23章18番および同章29番において、「御湿り」や「御寒い」の「お」が、聞き手に 対する丁寧さ(politeness)とは関係なく挿入されているというのも、honorificとpolite の混用例と言えるかもしれない。) ・respect…「敬意」と訳した。第1章5番の3箇所のみに見られる。 ・courteous, courtesy…「丁重な」「丁重(さ)」と訳した。 ・polite, politeness…「丁寧の(な)」「丁寧(さ)」と訳した。学校文法でいう敬語の「丁寧」 と同じ意味の場合もあるが、学校文法でいう「尊敬」や「謙譲」の意味も含んでいる。 動詞に「ます」を付けた形は特に「丁寧形(polite form)」と呼び、これが多数を占める。 (語形変化表p.167, p.170においても、「ます」を「丁寧の語尾」と呼んでいる。)また、 丁寧の補助動詞として「(…して)下さい」(第2章20番)と「(…して)あげましょう」 (第2章24番)を挙げているが、これらも学校文法の敬語でいう「丁寧語」に当てはま るであろう。その一方で、politeには以下のような例がある。 【尊敬の意味】 「召す」は特定の語根に付く丁寧の接頭辞または接尾辞(第4章31番、「思し召す」「召 し上がる」「召し抱える」など) 「思し召し」は「了見」の丁寧な語(第10章50番) 「尊来」は「いで」の丁寧な同義語(第25章8番) 【謙譲の意味】 「承る」は「聞く」の丁寧な同義語(第6章31番) 「お目にかかる」は(「会う」の)丁寧な表現(第5章30番) 「うかがう」は「聞く」の丁寧な同義語(第6章34番) 「申す」は「言う」より丁寧な言い方(第8章23番) これに類するものとして、第14章3番では、「頂く」を贈り物として受け取るの意の 丁寧な表現とし、「頂く」は「もらう」よりも丁重(courteous)であり、「もらう」と 同様に補助動詞としても用いられる、としている。 【敬称】 自分の下僕に話しかける際に「さん」「どん」「公」は使わないが、他人の下僕を呼ぶ際 にはそれらを用いて丁寧さを示す必要がある(第3章26番) 「中納言様」の「様」は丁寧の「様」(第19章53番)
「皆様」は「皆」の丁寧な表現(第22章62番) 【その他】 「願う」は「頼む」よりも丁寧な表現(第6章37番) 「大儀」は「御苦労」より丁寧さに欠ける表現(第13章30番) 「駕籠かき」より「駕籠屋」の方が丁寧な言い方(第17章5番) ・polite form…「丁寧形」と訳した。通常は語尾に「ます」をつけた動詞をこう呼んでいる。 (第1章1番、第1章8番、第2章9番、第2章24番、第2章36番、第3章21番、第8章1番、第 9章21番、第11章1番、第15章2番。)ただし、例外的なものとして、第1章23番において 「れる」「られる」をつけた動詞(areru形、具体的には「参られる」)が丁寧形としても 用いられるという指摘がある。Hoffmannのp.245を見よとあるのでそこを参照すると、 そこ(厳密にはp.244の下部から)に見られる記述では「polite form(丁寧形)」という用 語ではなく The language of courtesy, which gives to the predicate verb the passive form (三 澤光博氏の訳によれば「述部動詞を受動形にする礼譲の言葉」)というフレーズで説明 がなされ、その例の一つに能動の意味で用いられる「参られ」(つまり「参り」の尊敬 表現)を挙げている。SatowはHoffmannの言うcourtesyをpoliteと同義と取ったのであろ うが、その中身は「丁寧」ではなく「尊敬」であるので、妥当な考え方とは言い難い。 実際、『会話篇』の他の箇所でareru形を「丁寧形」と説明している箇所はほとんど存在 しない。(例外的に、第10章48番でのみ「思う」に対する「思わせられる」(→「思わっ しゃる」)を丁寧形と呼んでいる。これも尊敬語を丁寧形と呼ぶ例であるが、全体を通 してそのようなものは上記の2例「参られる」「思わせられる」に限られる。) T.出自の言語に関する用語
・(c)…「漢語」と訳した。PartⅡp.1の脚注に「(c) Denotes that the word is of Chinese origin.」 と記されている。 ・Chinese(Chin.)…場合によって「中国の」「中国語(の)」「漢語(の)」と訳し分けた。 ・Japanese(Jap.)…場合によって「日本の」「日本語(の)」「和語(の)」と訳し分けた。 ・English(Engl.)…「英語(の)」と訳した。また、「our」とあるところも「英語において」 などと訳した場合がある。 U.関係・関連を表す用語 ・correlative…「相関語」と訳した。「あげる」と「くれる」「もらう」など、主に授受関係 にある語をさす。(英文法においては、eitherとorやthe formerとthe latterのようなものを correlative(相関語)と呼ぶ。)具体的には、「あげます」は「下さる」の相関語(第2章 24番)、「申す」は「なさる」の相関語(第2章39番)、「もらう」は「くれる」「あげる」 などの相関語(第5章23番)、「診てもらう」は「診てくれる」の相関語(第10章13番)。 ・connect with…「と関連する」と訳した。「たか(高)」と「たけ(丈)」(第2章34番)、「ぶっ つけ」と「ぶちつけ」(第9章40番)、「かすかに」と「霞」(第10章9番)、「まさか」と「ま
さしく」(第20章41番)のように、語源的に繋がりのあることをこう表現しているよう である。 V.同義を表す用語 ・equivalent(equivt.)…「同義(語)」と訳した。 ・synonym(syn.)…「同義(語)」と訳した。 equivalentとsynonymの間に、特に使い分けがあるとは思われないので、ともに「同 義(語)」と訳した。 W.強意・強調に関する用語 ・intensive…「強意の」と訳した。例えば、「照り込む」の「込む」は強意の接尾辞(第22章 26番)。 ・intensive force…「強意の働き」と訳した。「取り調べる」「取り揃える」の「取り」に対し て用いている(第10章41番、第17章2番)。 ・intensive form…「強意形」と訳した。第25章13番のみに見られ、「打ち絶えまして」は「絶 えて」の強意形としている。 ・intensify…「強める」と訳した。 ・strengthen…intensifyと同様、「強める」と訳した。 ・emphasis, emphasize…「強調」「強調する」と訳した。 ・emphatic…「強調(の)」「強調形」と訳した。具体的には、「あんまり」は「あまり」の強 調形(第4章17番)、「なんに」は「なに」の強調形(第8章14番)、「いんえ」は「いえ」 をより強調した口語形(第12章42番)、「どっこ」は「どこ」の強調形(第14章20番)。 X.縮約・簡略・省略に関する用語 ・contraction(contr./contrn.)…「縮約(形)」「縮約したもの」と訳した。またcontractedは「縮 約した(された)」と訳した。多くは音便化等の音変化によって変化した場合に用いら れる用語である。以下に例を挙げる。 「きのう」は「さきの日」の縮約(第1章1番) 「おとっつぁん」は「おととさん」の縮約(第1章5番) 「おっかさん」は「おかかさん」の縮約(第1章5番) 「おんな」は「おみな」の縮約(第1章6番) 「あさって」は「あす去って」の縮約(第1章25番) 「しあさって」は「さき(=し)あさって」の縮約(第1章25番) 「やのあさって」は「いやのあさって」の縮約(第1章25番) 「そんなら」は「それなら」の縮約(第2章39番) 「そんな」は「それな」の縮約(第2章42番) 「言っちゃ」は「言っては」の縮約(第2章42番) 「しかし」は「しかありし」の縮約(第3章22番)
「さん」は「さま」の縮約(第3章26番) 「こう」は「かく」の縮約(第4章3番) 「手水」は「てみず」の縮約(第4章9番) 「よければ」は「よく」と「あれば」の縮約、または「よ」と「ければ」の縮約(第 4章23番) 「一束」は「いちそく」の縮約(第4章42番) 「隣り」は「戸並び」の縮約(第5章44番) 「こんな」は「これな」の縮約(第6章14番) 「だった」は「であった」の縮約(第7章20番) 「おっしゃる」は「おおせられる」の縮約(第8章1番) 「言わっしゃる」は「言わせられる」の縮約(第8章13番) 「あいつ」は「あやつ」の縮約(第9章6番) 「どっか」は「どこか」の縮約(第9章25番) 「いろんな」は「いろいろな」の縮約(第9章42番) 「あんな」は「あれな」の縮約(第12章46番) 「引っ越す」は「引き越す」の縮約(第13章14番) 「とう」は「とく」の縮約(第14章27番) 「一献」は「いちこん」の縮約(第15章11番) 「あらっしゃる」は「あらせられる」の縮約(第16章3番) 「一梃」は「いちちょう」の縮約(第17章5番) 「一疋」は「いちひき」の縮約(第17章5番) 「宜し」は「よろし」または「よろしい」の縮約(第17章9番) 「よんどころなく」は「よりどころなく」の縮約(第17章20番) 「じゃ」は「では」の縮約(第18章16番) 「夫」は「それは」の縮約(第19章51番) 「かじかむ」は「かじけしかむ」の縮約(第22章57番) 「月迫」は「月」と「迫」の縮約(第22章69番) ・short…「短縮形」と訳した。 「お見せ」は「お見せなさい」の短縮形(第2章25番) 「次第」は「次第に」の短縮形(第3章4番) 「叶いません」は「心にかないません」の短縮形(第23章48番) ・abbreviation(abbreven./abbrevn.)…「省略(形)」と訳した。 「まあ」は「まず」の省略形(第3章6番) 「なん」は「なに」の省略形(第3章9番) 「どん」は「どの」の省略(第3章26番)
「です」は「でござります」の一般的な省略形(第9章28番) 「くんな」の「な」は「なされ」の省略形(第13章30番) 「其」は「それ」の省略形(第17章22番) 「もう」は「もうはやたまらない」の省略(第23章48番) 一番目の形態(訳者注:例えば「行かず」)は二番目の形態(訳者注:例えば「行か ずに」)の省略形(語形変化表p.168) ・ellipsis, elliptical…「省略」と訳した。本来あるべき語句が省略されていることを示すが、 単に語が省略されている場合のみならず、簡略化されていることも指す。 「帰るであろう」は「帰るものであろう」の省略(第1章14番) 「できない」は「私にはできない」の省略(第3章23番) 「湯上がり」は「湯上がりの浴衣」の省略(第4章24番) 「召す」は「召し乗る」や「召し着る」の省略(第4章31番) 「きのうの」は「きのうの襦袢」の省略(第4章38番) 「で」や「にて」は「にして」の省略(第4章38番) 「髪」は「髪の毛」の省略(第5章16番) 「あちらのだ」は「今言ったのはあちらのだ」の省略(第5章21番) 「あげます」は「あげますはずだ」の省略(第5章30番) 「そうか」は「そうだか」の省略(第5章43番) 「隣り」は「隣りの家」の省略(第5章44番) 「もし」は「もしもどなたでございませんか」の省略(第11章4番) 「火の見」は恐らく「火の見どころ」の省略(第12章8番) 「お気の毒な…。」は「お気の毒なことです。」の省略(第12章28番) 「いやもう」は「いやもうたまらない」の省略(第12章30番) 「打つ」は「湿りの鐘を打つ」の省略(第12章36番) 「お暇に致しましょう」は「お暇申すことに致しましょう」の省略(第13章9番) 「欺くとは」は「欺くということは」の省略(第14章23番) 「旧年は種々はや、何卒相変わりませず」が、「旧年は種々ご厚恩にあずかりまして、 何卒相変わりませずご懇意を願います」の省略(第15章2番) 「しかし、早速失礼でございますが、急ぎますから…」は「もうそっとお話し申し上 げて、ほどをはからって、座敷みなひけて一緒に退散すべきはずだが、しかしながら 急ぎますから早速失礼でございますが(訳者注:冒頭のERRATAで原文gozaをgozai に訂正)お暇を申します」の省略(第15章19番) 「能うこそ」は「能うこそいらっしまし」の省略(第16章5番) 「是は」は「是はお珍しい」の省略(第16章16番) 「適宜く加減を頼むぞ」は「加減を適宜くするように頼むぞ」の省略(第17章25番)
「だって」は「左様であっても」の省略(第20章2番) ・elide…「省略」と訳した。 「下すって(kudas tté)」は「下さって」の二番目のaの母音を省略(第2章20番) 「ましたら」は「ましたらば」の「ば」を省略(語形変化表p.169) ・understand, be understood…「省略している(されている)」という意味で用いられているこ とが多い。(特に第16章以降に多く見られるが、それ以前の章にも散見する。) 「省略(する)」という表現は、このほかにomit(omission)、be droppedなどが用いら れているが、ほぼ同じ意味である。 Y.参照の用語 ・q.v.(quod vide)…「…の項を見よ」「…を参照」と訳した。 ・vide(v.)…一律に「…を見よ」と訳した。 ・see…「…を見よ」(第15章11番)と訳した。 ・cf.(confer)…一律に「…を参照」と訳した。 ・ibid.(ibidem)…「同書に」と訳した。
・according to(acc. to)…場合によって「…によれば」「…を参照」と訳し分けた。 Z.その他、頻出する表現 ・for…言い換えに用いられる際は、「…のこと」と訳した。stands forの略か(第3章34番参 照)。「(略語などが)…を表わす」の意。 ・from(fr.)…fromのみで複合語などの成り立ちが説明されている場合は「…から成る」と訳 した。 ・force…場合によって「意味」「意味合い」「働き」「機能」と訳し分けた。文法的機能(職能) を指している場合が多いが、そうでない場合もある。
・lity./lit.…(translate) literally/literal translation/literal meaning「直訳」と訳した。初出で ある第1章3番にはliteral meaningと省略せずに書かれている。
なお、第3章以降は特に「lity.」などと記されずに直訳の記される箇所が現れ始め、 第5章以降はそのような箇所が頻繁に見られるようになる。よって、明記されていない にもかかわらず直訳と思われる箇所には、適宜「(直訳は)」と記した。
・would, would be, might…「であろう」「かもしれない」と訳すと不自然な場合が多いので、 「である」「できる」と断定的に訳した場合がある。