理 学 療 法 学
第
35
巻 第4
号150
−
158
頁 (2008
年
) スキ
ルア
ップ
・
セ
ミ
ナ
ー
心
疾患患 者
に
対 す
る 理
学
療
法
評価技術
と
ア
プ
ロー
チ
の
実
際
*高
橋 哲
也
* * は じ め に一
昔前 は,
心 臓 リハ ビ リテー
ショ ンは リハ ビ リテー
ションに 理 解 (興 味 )の あ る 先 駆 的 な 医 師のい る 施 設 が 中 心 に なって行 わ れ てい たこと も あ り,
運 動療 法を 中 心 と し た 心 臓 リハ ビ リテー
ショ ンに関わ る 理学療 法士 は少 数であっ た。 しか し,
近 年,
理学 療 法 対.
象 者の 多 様 化・
高 齢 化に より,
脳血管 疾 患 や 整 形 外 科疾 患 に おいて も,
心疾 患を合併し た患 者 (対 象 首)に対 して 理学 療 法を行う
こと は特 別なことではな くなっ て きた ように思 う。
心 臓 リハ ビ リテー
ショ ン,
特に心 疾 患 患 者に対 する理 学療 法は,一
部の特 殊な 施設で特 別に トレー
ニ ング さ れ た 理学療 法 士 が 行うもの で は ない。
心臓リハ ビリ テー
ショ ンは,
心 臓 その もの を リハ ビ リするの では なく,
心臓 病をもっ た方に対 するす べての リハ ビ リテー
ショ ン (理学 療 法 )を意 味 する。
臨 床経 験 のある 理学 療 法士 であれ ば誰 し もが 少 なか らずとも心 疾 患 を持 つ 対 象 者の 理学 療 法を経 験してい ることであろう。 心 疾 患に対.
する 埋学 療 法の経験のない理学療 法士 はいる と し ても,
心臓を 持た ない 人 はいない の で.
運動を 主 た る治療 手段とする理学 療法
士 は 少 な か ら ず 心 臓 に対 する 配慮が 必要である。
心 疾 患 患 者 に 対 す る 理学 療 法は,
派 手なテ クニ ッ クや 繊細な 手 枝 は ない。
し か し,
運 動 療 法 とい う 理学 療 法の中で も最もエ ビデン ス の多い 治 療 手 段 を 用い る た め に,
理学 療法上 が 正確に 理 解 し,
実 施 で き る こ と は き わ めて重 要 なこ と と思 わ れ る。
ま た、
心 疾 患 に 限 らず,
理学 療法 対 象 者の当 日の体 調やその変化,
運動 療 法を は じ め と し た 理学 療 法が実 施で きる状 態か どうか,
ま た,
ど の程 度の強度の運動を行 うこ とが最 も効 果 的か,
な ど を 判断 する こ と は,
理学療法アプロー
チの根 幹であ る と 思 わ れ る。
つ ま り,
理学療 法中 や 理学療
法 後に対.
象者
が 出すさ まざま なバイ タル サ インや,
対象 者との何 気ない雑 談や訴えの中か ら も 症 候 分 析 (疾 病 特 性の理 解 ) と 障 害 分 析に結 びつ く さ ま ざ ま な 情 報 を 収 集 し,
統 合 し 解 釈 す る 技 術 は,
運 動の 専 門 家 と し て の 理 学 療 法 士 が 当 然 持 ち 合 わ れ るべき 必 須の能 力 と思 わ れ る。
本スキル ァ ップセ ミ ナー
で は,
心 疾 患 患 者に対 する 理学 療 法 *Physiotherapy
Practice
andAssessmenL
f
〔}rPaLients
withCardiac
I
)iseases
* *
兵庫医 療 大 学 リハ ビ リ テ
ー
ション 学 部 〔〒650
−
8530
兵 庫 県 神 戸 市 中 央 区 港 島1
−
3
−
16
)
Telsuya
Takahashi
,
PT
.
PhD
:Dcpartrncnt
ofReilabi
庶atio11、
Hyogo
Universi
[y ofHealth
Sciences
キ
ー
ワー
ド:心 疾 患,
理 学療 法,
評価技 術 と して.
一
急性 期の評 価 技 術 」,
「回復 期の評 価 技 術 」,
「運 動療 法アプロー
チ の実 際 」,
「患 者 指導か ら疾 病管 理へ 」と4
部に分 けて解 説 する、
、
急 性 期
の評価 技 術
心 疾 患 患 者 を 急 性 期 か ら担 当 する場 合,
ベ ッ ドサイ ドで患 者 を直 接 評価 する前に,
まず 医 師の指 示 を確 認 し,
現 在の状 態や 治療 経 過 をカルテ や看 護 記録 か ら収 集することが 重 要であるD
。
1
.
離 床より も治療 を 最優 先 すべ き状 態 早 期 離床の概 念が定 着し た現 在にあっ ても,
心 疾 患 患 者に対 しては離床より も治療を最優 先 すべ き状 態があ70,
,
1
) 心 源 性ショ ッ ク心 源 性シ ョ ッ ク は
,
「急 性かつ 全 身の循 環 障害で,
末 梢 組 織 へ の血 液供 給 が急 激かつ広 範に不 足 した ため に,
全 身の組 織 が 酸 素 欠 乏に陥 り,
機 能 を維 持できな くなっ た状 態 」,
と定 義 さ れる。 各種 強心 楽 を投 与 されて い たり,
大 動 脈 内バ ル ンパ ンピ ング αABP
)や経 皮 的 心 肺 補 助 (PCPS
)とい っ た機 械 的 補 助 装 置をつ けた状 態であっ て も.
収 縮 期血圧は80mmHg
以下 と低 く,
時 間 尿は20
i’
nt以 ドと 乏尿で、
四肢の冷 感や チ ア ノー
ゼ 〔末 梢ll1L
管 収縮)が認め られる。
ま た,
意 識 障 害 (錯 乱,
傾 眠,
昏睡 な ど }や代 謝 性ア シドー
シ スが認め ら れる場 合は,
離 床よりも治 療を優 先させるべ きである。
2
) 強心 薬 (カテコ ラ ミ ン製 剤 ) 大 量 投 与 中 強 心 薬は心 筋 収 縮 力を強めてポン プ能 力を高め,
心 機 能を改 善 する こ と をH
的に投 与さ れて い る. 強 心 薬 投 与 中は,
投 薬 な しで ト分なM
.
JE
を維 持し,
各 種主要 臓 器に十 分な 血液 灌流 圧 を確保
する こ と がで き ない状 態であ る と考え ら れ る。
急性期治 療に おける 強 心昇圧薬は 交感 神 経 刺激薬であ る カテ コ ラ ミン製 剤 (塩 酸 ドパ ミン と 塩 酸 ド ブ タミン)の使用 が一
般 的 で あ る。
塩 酸 ドパ ミンはβ
受 容体作 動 薬 と して直接 作H
し,
心 収 縮 性 と心 拍 数 を 増 加 さ せ るc ま た,
交 感 神 経 終 末 よ りノル エ ピネフリン を遊 離し,
血 圧 を 上昇さ せ たり,
腎血流量 を増 加 さ せ る。
さ ら に.
ドパ ミン受 容 体 刺激作用 に尿量の増 加が 期待
で き る。
塩酸ドパ ミンの使用 景 は7
(μg
/kg
/min )で表現 さ れ,
使用 量 に よっ て作用 が 異 な る。一
方,
塩 酸ド ブ タ ミンはDOB
と略さ れ,
β受 容 体 を 直 接 刺 激 する た め,
心 筋 収 縮 力はDOA
の4
倍とい わ れ る、
t ノルエ ピ ネフ リン遊 離 作 用 が ない た め にDOA
に 比べ心拍数の 増 加 は 少 な く,
不 整 脈誘発 も 少 ない。一
心戻思
.
霍者に 対.
す
る 理学 療 法151
緲 分’ml) η 心 拍 出纔
.
.
.
.
.
》
の馨
費
…・
… 騨
》
鮪 酷‘
慕く海 で いる 1SlmmH
團[ 肺勤 脈 楔 入 圧 図1
Forrcstcr
の分類 と各サ ブ セッ トの治 療 法 方,
ノ ルエ ピ ネフリン は強い末
悄ll
[L
管
収 縮 作 用か ら,
塩酸ドパ ミ ン と塩 酸ド ブ タ ミ ンの高用 量使 用で も昇圧 で き ない場 合に使 用 され る。
その た め,
ノ ルエ ピネフリンが投 与さ れて いる時に は 理学療法
は適応で は ない判 断して よ』2
.
Forrestcr
の病型分類 を利用 した病 態 把 握ForreSter
の 病型分類 〔図1
) はス ワ ンガン ツカテー
テ ルか ら得ら れ る 心係数 と肺 動 脈 楔入 圧 より判 定さ れる病型分 類で,
この病 型 分 類 が 急 性 心 筋 梗 塞に対 する医 師の治 療 指 針に用い ら れ る。 ス ワ ンガン ツカ テー
テルは必 ず 挿 入 されている わ けで は ない の で,
ス ワ ンガン ツカ テー
テルか ら得 られる心 係 数と肺 動 脈 楔 人 圧の数 字に気 をと ら れる よりも,
理 学 療 法 を行 うヒで は む しろ,
現 在の治 療 内容から逆に心 係 数と肺 動 脈 楔入 圧を推 察 し,
左 室 機 能や病態,
さ ら には重 症 度 を把 握 すること が 可能で,
リス ク管 理に応 用 する こと ができるtt 筆 者は 以 下の順で現在医 師が行っ て い る治療 内容か ら心 臓の状 態 を推 測し,
リス ク管埋 に 応 用 して いる 〔表1
)D.
]) 機械 的 補助 循 環IABP
やPCPS
とい っ た機 械 的 補 助 装 置は,
強 心 薬の投 与だ けで は,
脳を は じ め と し た各種卞要 臓 器に1.
分 な[「IL液 灌 流 圧 を 確 保 する という心 臓の基 本 的 役割 を維 持 する こと がで き ない ほ ど 心機 能が低 下して い る場 合に,
心 臓のポンプ機 能を補 助 する 凵 的 で 用い ら れ る、
、
そのた め,
IABP
やPCPS
が用い ら れて い る場合 は,
心臓を機 械 的に補 助さ れ,
ボンプ失 調の図復を待っ ている 状 態 なので,
余 計な 心 負荷は 避けるべ きであり,
単な る 関節可 動 域 運 動 とい え ど も 通 応 と し ないと筆 昌は考えて いる。
2
)血 圧 と 心拍 数の推移末 梢 主 要臓 器に
.
1
.
.
分な 血 液を灌 流 する た め に は,
80
・・
−
90m
皿Hg
の収縮 期lflL
圧 が 必要である。 収 縮 期血 圧 が乱 降.
下 す る ような ポンプ失調 状 態 や,
血行動 態に影響を与える心房 細 動 や心 室 頻 拍な ど 頻脈 性 不整脈
や致死的不整脈が なく,
血 圧 と心 拍数 が 基 準 値 範 囲 内 で,
少 な く と も 過 去24
時間安定 して いる か どうか を看護 出 録 よ り評 価 す る。
3
) 強 心 薬 と利 尿薬につ い て強 心 薬が投 与さ れ てい る 時 に は
,
定 義 「:はForrcstcr
の心 機 能 分 類でW
群に 属 す る と 判 [折 で き る。
強 心薬を投 与さ れ てい る 場 合は、
薬でlfll圧 が維持さ れ てい る 状 態 と判断 す る。
特に,
塩酸
ドバ ミ ンは使
川量に よっ て作
用 が 異 な り,
安 静 度 も異な る。
ま た,
ノ ルエ ピネフリン投 与
の場 合
は 理学療 法
を行
わ ない (前
述)。
利 尿 薬が投 与さ れて いる時には,
Forres
匸erの・
L
・
機 能 分類で1
群に属 する (肺 うっ 血の状態) と考え,
心 機 能の低 下より も 肺 うっ血 が問 題で,
肺 うっ 血 は酸 素 化に影響を及ぼ し,
安静 時 や運 動 時の呼 吸 困 難や気 道 内分 泌 物の増 加 が ある と推 測 するこ と もできる。
4
) 酸 素 投tJ一
と水 分 バラン ス こ の他 にも、
酸 素投 与の状況 を確認 し.
酸 李 投与が行われ て い る 場合は,
心不全に よって左 房圧 (肺 静 脈圧)が上 昇し,
肺 うっ1fi
[が あ る と 判断す る。
引 き続き,
肺 うっ 血 (酸 素 化 ) 改 善 のた め に,
利 尿 が進ん でい る か どうか を 評価 する。
さ ら に,
上 。己利 尿 薬の効 果や酸素
化へ の影響
を 判断 する た め に,
水
分の イ ンアウ トのバ ラン ス を評価
するtt体
水 分が減
少すること で前
負 荷 (容量負
荷 )が軽 減さ れ,
肺 うっi1
も改 祥す る。
利 尿が悪い と さ れ る 目安
は1m
レkg
〆hr
以 ドま た は20
mt/
hr
以 下 と さ れ る、
,
心拍出 量の減 少やlrt
[圧の低
.
卜.
な ど に よ り馬血 流 量 は減
少す る。
心疾 患の場 合,
腎血流を維 持さ れ尿量 が保た れて い ること に注 意を払 う必要が あ る。
水 分の ブラ ス バ ラ ン スは腎 機能低 卜.
による尿量減 少や容量負 荷によ る肺 うっlf1L
の原因にも な る。
5
〕 半U
匡斤 基 本 的には,
心 原性ショ ックの状 態,
心 臓 が 原 因で呼 吸 不 全 とな り 人.
r
:呼吸 器 が 装 着 されてい る状 態,
IABP
やPCPS
とい っ た機 械 的補 助 装 置で治 療 されて い る状 態,
さら に強 心 昇 圧 薬 (カテコ ラミ ン製 剤 ) を 大 量投 与 中,
さら に は表2
の 「積 極 的 に は行わない」に示 すよう な状 況以外は離 床 を進め る ことにな るc 回復 期
の 評価 技 術
ICU
やCCU
で の急性 期 治療が終 了し,.
.
・
般病 棟に て離 床な ど理 学 療 法 を進め る にあたっ て,
患 者の更 なる回復 を 医 師より 依 頼 されてい る理 学 療 法士は,
自分たちが 行 う理 学 療 法 が 原 因 で患 者の回復 を 阻 害する以.
ヒに状 態 を悪 化 させないように細 心 の注 意 を払わな ければな らない。 心 疾 患の状 態を 正確に把 握で きずに,
運 動 強 度 も運動 量 も少 ない理 学 療 法を提 供して いれ ば,
理学 療 法 効 果が現れにく く,
回復は 遅 延 し,
入院期 間も延 長 す る,
また,
患 者を過 小 評 価し.
低めの ゴー
ルを設 定してし まう。
一
方,
運動 強 度も 運動量 も多い理学 療 法を提 供して いれ ば,
思 者の状 態 に沿わ ない理学 療 法と な り,
リスク が 発 生 す る こ と に なる。
1
.
アナログ情 報の重要 性 俵3
)⊥〕 心 疾 思の理学 療 法の リ ス ク管理 といっ て頭に浮かぶ のは.
モ ニ タ心 電 図や酸 素 飽 和 度 計,
電子血 圧計といっ た高額 な 電 子機 器と 思 わ れ る、
、
無 論,
そのような客 観 的なデジ タル電子 機 器は 心 疾 患 恵首のリスク管理 に不ロ∫欠であ る が,
そのような 盟 俔機 器 が 少 ない 場所で は,
門 診や 視 診,
触 診 な どアナロ グ情 十1
,も,
理 学 療 法のリスク 管 埋 と して重 要 な 評 価 に な りうる。
1
) 問 診 対 象 者とのコ ミュ ニ ケー
ショ ンの電要性を否 定 する 人 はい な152
理学療 法 学 第35
巻 第4
号 表1
患 者にア プロー
チする舸に医 師カ ルテ や看 護 経 過 記 録か ら収 集で き る情 報 機 械 的 補助 装 固の有 無 入工呼 吸器IABP
,
PCPS
人 工 血液 透 析↓
機 械 的補 助 装 置で治 療さ れ てい る場 合は,
まず
は 生命
維持のた めの治療を優 先 する.
血 圧,
心 拍 数の推 移 収 縮 期血 圧 心}fitU
安 定性 不 整 脈↓
・
収縮 期血 圧 〔収 縮 期血 圧80
〜
⊥50
mmHg ),
低め が望 ましい・
心拍 数 〔60
−
120
拍〆分 )・
極端に上がっ たり ドがっ たり してい ない・
不 整脈 (心房 細 動,
重症 心 室性 不 整 脈)は ない・
24
時 問の推 移 を評 価 する 投 薬内容 を 確 認 ノ ルエ ピ ネフリン 塩 酸 ドブ タ ミン塩
酸
ドパ ミン硝
酸 薬 利 尿 薬 鎮 痛薬 抗不整 脈薬1
・
ノル ァ ド レ ナ リン→
理学療 法 中 IE・
DOB
〔ドブ ト レックス)→
慎重 にβ受容 体を直 接 刺激 す る
.
心筋 収 縮ノ丿増 強 (τ)OA
の /倍1
) 末梢血管 や肺 動 脈の拡 張 作 用 〔尿 量 不 変,
クレ アチニ ンクリアラン ス増 加 〕 左 室拡 張 期圧の低 下,
心筋 酸 素消 費軍:の増 加が少 ないため,
艦血性 心 疾 患の心 不 全 改 前 に 用い ら れ ること が多い.
・
DOA
(イノバ ン)→
用景によっ て判 断5
−・
.
]O
γ以 上・・
末梢 細 動 脈・
腎・
冠 動脈 収 縮,
血[1
一
上昇 (ベ ッ ド上ROM
)2
〜
57
・…
心 筋収 縮 性 増 加
,
心拍 数 増 加 (ベ ッ ドヒー
端 座 位}0
.
5
〜
2
.
0
γ…
腎
・
冠血流 量 増 加,
肺動 脈 収 縮 (立位・
歩 行 開 始)・
血管 拡 張 薬→
硝 酸 薬 (ミリスロー
ル),
心 仕 事 量 軽 減・
利 尿 薬→ 持 続か適 峙か,
総 量と推 移 を評 価 する・
鎮 痛 薬→
使用 頻 度,
抗 不 整 脈薬→
投 薬 内 容 酸 素 化から肺の状 態 を推 定 投 与形態 投 与 量 血液ガス 酸 素 飽 和 度 呼 吸 回数・
マ スク か カ ヌ ラ か,
1
分 問 に何リッ トル か・
SpO295
% 以 ヒを 保つ こと を 目 標 に す る,
・
呼
吸 図 数 は 通常心拍
数のL
〆4
・
酸 素 化不全の原 因 を考 察す る 心 臓 由 来 (肺 うっ 血 や 肺水 煙),
呼吸 器 由来,
無 気 肺,
.
.
卜.
側 肺 障 害↓
利尿状 態 尿 量 総バ ラン ス 中’匚・
E
争m
辰d
王 〔CVP
) 腎 機 能↓
胸 部 レン ト ゲン写真↓
・
IC
し期は 十 分 な尿量の維
持 (>1in1
,’
kg
〆
’
hr
) が 大 切・
r
一
術 室 でのin
−
out も忘 れ ず に チJ一
ッ ク.
・
手術 後 は積 極的 にマ イ ナス バ ラン スを保つ こ と が多
い・
CVP
で 循 環 血 液 早:を 推 定 す る,
・
CVP
の正常f
直
は5
〜
12mmHg
.
・
心 拍 出 量 低 下 に よ り腎亅rri
’
流 量 低 下・
Cr
(
クレア チニ ン)基準
値は0
.
71
.
3
ing,
,
’
dl
・
左イf
胸 郭の比較,
横 隔膜の辺縁,
右 房,
左 心耳,
左 室,
人 動 脈 弓,
下 行大動 脈左 側縁,
肺 動 脈の広が り 〔肺 うっ 血 ),
CTR
,
胸 水,
Kerley
B
.
line
,
呼 吸 器 合 併 症の確 認,
・
特に 心 臓の裏
側 を しっ かりと 見 ること.
Forrester
分 類で患 者の 今の状 態 を推 定 ス ワ ンガン ツ カ テー
テ ル の値 治 療 内容か ら推 定↓
患 者.
の今の心 臓の状 態が推 定できる 芦Qrrester
の病
型分
類 と治 療 捲 針
心 係 数契
).
喫9
’
1
群:旺 常 韮群:肺 うっ蠢 (軽 過 観 豹 十 鎮 静 鎚 利 尿 薬,
1血管 拡 張 薬 匪群:囁
末 梢 循 環不金w
群:髄
うっ血椋 樹鬣繋不全1
輪 液.
ペー
シ ン グ 強心 昇rF薬+搬管 拡張・
簍,
lIABP
) 肺 動 賑 楔 入 圧18
(sumH9 ) い で あ ろ う.
:
旨
た と え そ れ が一
般 的 な 目常会 話 で あって も,
問 診 か ら得ら れ る 情 報 は 少 な く ない。
対 象 者に対 面し た と き に,
挨 拶を し ない理学 療 法士 はい ない で あ ろうtt 「こん に ち は.
今口 は 天気がい い ですね.
」
,
一
今
日の 調 丁 はいか が で す か ? ど こ か 痛い ところ は あ り ま せ ん か ?1
な ど と声を 掛 け るのが 常 で あ ろb
,
,
その声か け に 対 す る 反 応 を軽 視せず,
注 意深 く観 察 すること が 重 要 で あ る。
す ぐ に 目 を 開 け て体を起こそうと し ない 場合は,
相 当の疲 労が あ る か痛みや 不心 疾 患 患 者に対 する理 学 療 法
153
表2
心 疾 患 理学 療 法にお ける リスクマ ネー
ジメ ント基 準積
極 的 に は行わ ない1
.
心原 性ショッ クの 状 態・
巾.
圧低卜.
:収縮 期 血 圧80mmHg
以 卜.
・
乏 尿:時 間尿201111
以下・
冷や汗,
チ ア ノー
ゼ・
意識障 害 {錯 乱,
傾眠,
昏睡 な ど )・
代謝.
性ア シドー
シ ス2
.
カ テコ ラミ ン投 与 中 〔ノ ル ア ドレナ リン,
ドブタ ミ ン,
ドー
パ ミ ン〕 各 医 師の判 断に よりカ テコ ラミ ン投 与 中でも運 動 ができる場 合 もある3
.
安 静 時心 拍 数120
拍 以上 (瞬 間の.
.
ヒ昇は 含 まず}4
.
座位だけでも低 血 圧 症 状 が 出る場 合5
.
起 座 呼 吸 など急 性 心不全の症 状6
.
血 行 動 態の安 定 しない不 整 脈7
,
新た に発生し た心 房細 動8
.
安 静 時から胸 痛がある (不安 定 性 狭 心 症 )一
時 中 止 す る 亅,
運 動 処 方 が あ る 場 合 は 処 方 心 拍 数 以 上 に 連 続 し て 上 昇 し てい る 状 態2
.
運動処方
が ない場合
は 運動]「寺心拍
数150
拍
以.
ヒ3
.
収縮 期 血 圧160
〜
200mmHg
以 上 (幅は病態 に よ る)4
.
頻 呼 吸 (30
同以 上),
息 切れ 〔RPE
>17
)5
.
運動に よ る 心電 図 変化 〔虚 血性ST
下 降lmm
以 上t 側 副血行 路に よ る ものは除 く)6
.
動 悸7
.
め まい,
冷や汗,
吐き気 などの低血 圧 症状8
.
月匈痛0)出現9
,
肺 野 湿 性ラ音の出 現LO
.
心胸 郭比の連 続し た増 加 注 意が 必要なもの (リハ ビ リ テー
ショ ンを 制限するもので は ない)L
運動に よ る不整 脈の増加 (PVCIOIDil
分 以 上)2
.
乏 尿,
体.
電の増 加3
.
霧ξ量上曽JJ0
4
.
倦怠 感5
.
食 欲 不 振6
.
睡H
民イ{足7
.
.
.
ド肢の浮 肺 増 加8
.
高齢 者 快 感 で 人 と話 す こ とすら苦 痛 に 感 じて いる と きであろうし,
声 の張り や 反応の速さや 反 応の よ さ は,
N
復 が よ く,
血 圧 が 適 正 で脳灌流 圧も十 分 に あ る 証 拠 と も な る。
極少数で あ る が,
筆
者 は前日 と はうっ
て変わっ て急につ じつ まの合 わ ない こと をい い は じめ 「昨日 ま で は 優 しい 感じ の 人 だっ た の に急に 怒 りっ ぽく なってい る」 とい っ た変 化 を示す患者
を経
験 し た こ と が あ る。
その後,
その 患K一
は心不全が悪 化し,
初め て急 激な 不穏の症 状 は 心 不全の兆 候 で あっ た と 理 解 し た、
,
心 不 全の兆 候 と し て は,
不穏以外に も 錯 乱,
傾 眠,
昏 睡 な ど 意 識 障 害 を 認 め ること も あ る/
t 心不全に 閣連した自覚症 状のチェ ッ ク も重 要 で あ る。
表4
に 心不全に関 連した自覚 症 状の メ デ ィ カ ルチニ
」
ックとし て,
自覚 症状と質 閊 例 を まとめた、
.
例 え ば,
「昨日 は よく眠 れ な かっ た よ」とい う発 言に対して は.
隣の患 者さ ん のい びきがうる さ か ったのか.
仰 向 けになると息 苫 し くて眠 れ なかっ たの か,Jc
き な違い がある。 夜 間発 作 性 呼 吸 困 難 は,
心 不 全の典 型 的 な 初発 症状である。 仰 臥 位になる と,
下肢や腹 腔 内臓 器の血L
液が 静 脈 環流 と して増 加し,
肺 動 脈 楔 入圧を 増加させ,
肺のうっ 血 を強 く し,
呼 吸 困 難を誘 発 する。
また,
心不全 傾 向になる と,
体 液 性のホル モ ン,
レニ ン・
ア ンジ オ テン シ ン・
アル ドステロ ン の 分泌が促進 し,
その結 果,
水や ナ ト リウ ムが貯 留し,
Frank
・
Starting
機序によ り心拍出 罵:を維 持し ようとする、
.
そのため,
尿量 を減 少させ体重 が増 加す るの で,
「毎目.
き ち ん と お しっ こ 出 てい ま す か ?」,
「体.
電 増 え てい ま せ ん か ?」 とい う ような 問 診は,
心疾患 患者を担 当 するうえ で は 必 須の もの に な ろう
、
2
) 視 診声を掛 けたり
,
挨 拶を交わすの と 同時に,
患者の 顔色,
表
情,
形 状 な どの外
見 上の変化や 異常
を評 価 することも重要であ る。
チア ノー
ゼ,
顔面 蒼白,
眼剣 浮腫は心不全に特 徴 的な サ インで あ る。
ま た,
安 静 時の呼 吸 数 は 止 常 範 囲 か を 観 察 す る もの重 要 で あ る。
顔 色 や 表 情 に 加 え て,
四 肢 (特 に 末 梢 部 )の浮 幢,
色 調,
爪の色 な ど に も注 意 を 拡 大 す る。
青矧 辰系 の 観 察 も 重 要 で あ る
.
正 常 〔:静 脈 圧 が4
−
10
cmH :C
)) で は座 位で は外頸 静脈は 認 め ら れ ないが,
右心 不全と な り,
半 座位
で 頚動脈
怒 張が 認 め れ ば静
脈圧12cmH20
以 上,
座位
でも 認 め ら れ れ ば15cmH20
と推 定で き る。
31
触 診問 診や視 診である程 度の 状 態 を 推 測しつ つ
,
四肢の状 態,
皮 膚の 状態な ど を 触って 評 価 す る、
.
ま ず,
足 先 や 手 掌の温 か さ を 確認 す る。
心 不 全 が 悪 化 す る と交感神経系が 緊張し,
末梢の [il
/ 管 を 収 縮さ せ 血 流 を犠 牲に し て主要 臓 器のML
流 を保と う と す る。
進 行 する と 代謝 性ア シ ドー
シ スと な り,
手足 が冷た く な る、
、
皮 膚は交 感 神 経緊張時 に は冷
や汗を か き,
しっ と り と湿っ てい る。
154
理 学 療 法 学第
35
巻第
4
号
観察
内容
表
3
循
環 器疾
患 患者
にアプロー
チする際に収 集できる情報 根 拠 話 しか けてそ れに対 す る反 応 をみ る 〔問 診 )↓
声かけに対.
する反 応はい いか いっ て い る ことにつ じつ まは合 うか 顔色や表情を見たり,
全 身 を観 察 する (視 診 )↓
顔色は い い か 顔 〔まぶ た)はむ くん でい ない か 目の輝 きはある か す ぐに 目を開 け て体 を起こそうとする か・
心 不 全,
特に心 原性の ショ ック状 態で は不穏や錯 乱,
傾 眠,
昏睡 な ど意識障 害が, tli ること も あ る.
・
また,
全般 的に 「生 きのよ さ」や顔 色のよ さ は 血 圧 が低
い 場 合 に は 期 待 で き ない.
・
心不全による顔のむ くむ は 眼剣 浮 腫に 注 意 す る 白覚症状やその他の訴え を聞 く (問 診 ) 安 静 時か ら呼吸 が荒 くないか,
呼 吸 数は 止常 範 囲か 動 悸や胸 部 不 快 感 などの 自覚 症 状は ない か 痰 が多く ないか 倦 怠 感は強 くないか,
疲 労 感の残 存はない か 食 欲 不 振はない か 睡 眠不 足 は ないか 発 作 性 夜間呼 吸困難,
起 座 呼 吸は ない か 乏尿 は ない か,
体重の増 加 は ない か,
夜聞 尿の 増 加 は ない か・
肺 うっ血に より換 気が亢進 する.
安 静 侍か らの換 気 亢 進に は注 意 する・
高 齢 者で は胸 痛ない こともある・
肺 うっ血に よ る気 道 内 分泌 物の増 加・
末 梢 骨 格 筋へ の血 流 低 下によ りす ぐに アシ ドー
シ スになっ て しま う・
消 化 器 系の血 流 を犠 牲にして,
脳 な どの 主要 臓 器の血流 を 保とうと してい る・
睡眠 不足の翌日 は,
脈が速 くな りやすい・
肺 うっ血 が 強 く な る と横に なっ て 眠 れ な く な る.
心 不 全 増 悪 時の最 も基 本的 な サ イン・
心 不 全 に な る と 腎 血 流の減 少 に よ り尿 景 が 低一
ドす る.
夜 間 は骨格筋
の活
動が減
少し 血 流 が 必要なくな るの で腎血 流 が 相 対 的に増 えて 尿量が増 す.
脈
拍や 血旺 な どの測定
をする (触 診 ) 脈 拍 を 測 定 す る↓
l
!LL
)王 を測 定 する体
重 を 測定す る 体 温 は 正 常 範 剛 か・
数と規 則性を観 察 する こ と・
正常 範 囲 内か どうか・
急 激な増加はないか,
3
口で1
.
8
キ ロ以 上 は異 常 心音や呼 吸 音を評価 する (聴 診 ) 心拍 数と脈拍 数の解II雛は ないか↓
安 静 時 心 拍 数 増 加はないかラ
音
な どの異 常 呼 吸 音は ないか・
不 整 脈がある場 合は解 離 する・
心 不 全 傾 向にな ると安 静 時 心 拍 脈 は増 加 する・
肺 うっ 血による気 道 内分 泌 物の増 加が原因 心電 図やパ ル スオキ シ メー
タを使用 する.
モニ ター
心 電 図に問 題はない か↓
酸 素 飽 和 度はIE常 範 囲 か 運動に よ る白覚症状を聞 く (問 診)・
危 険 な 不整 脈や虚 血の反 応はない か,
心 室 性 期 外 収 縮の場 合は,
虚血 ?電 解 質 異常?薬の飲み忘れ?な どを考 慮 する・
心 不 全では末梢 血 流が悪 くな り酸 素 飽 和 度が測 定しづ らく なる・
脚が疲れる のか,
呼 吸 が 荒 くなる の か・
下肢 疲 労より息.
切れの強い 場 合は,
運動強度と心 機 能の改 善がマ ッチ して いない【
注 意】
経 時 的 変化, 再 現 性,
昨日との比 較 を 考慮 するこ と 水やナ トリウ ム の貯留や,
腎血流の低下 により尿量が低下 し て,
四肢 末梢にむ くみを 認める、
、
下肢の浮腫は特に 下 腿 脛骨下1
・
’
3
前 面で検 者の親 指 を押し当て て 圧痕 浮 腫が できる かど うか を評 価 するtt 心 尖 拍 動にも注 意 を払い たい/
t 乳頭 付 近の最 外 測の拍 動の位 置 を観 察す る.
左 室の肥 大 や 拡張に よ り外.
卜.
方 (左 第5
肋骨鎖 骨 中 線 外 側〕 に偏 移 する。
4
) 脈拍・
血圧の測 定 呱 圧 や脈拍の測 定か らも,
多 くの情 報 を得る ことができる。
脈拍の触 知からは,
脈拍 数の評価に加 えて、
リズム,
脈の大 き さ,
脈の遅 速,
脈の緊 張,
血管 壁の性 状を評 価 する こと がで きる、
t 健 常 成 人の安 静 時の脈 拍は60
〜
100
/分である (60
回以 下は除脈,
100
回 以 ト は頻 脈 )、
tt
脈 拍は精 神 的 緊 張で も 速 く な り,
運 動や食 後にも増 加 する、
,
ま た深 呼 吸に よっ て遅 くなる。
どのような状 況でも橈 骨 動 脈の触 診から おおよその脈 拍 を推 測 する技 術は重 要である。
脈 拍の リ ズム の判定 も重 要である,
リ ズムが完 全に 不整の場 合は心 房細動であるこ とが多 く,
規 則 的 に脈が抜け る場 合は 上室 性 また は心 室性 期 外 収 縮,
2
段 脈や3
段 脈である こと が多い.
期 外 収 縮の種 類は聴 診か ら は分か らな い。
心 臓の聴 診で は早期 期 外 収 縮の心 音は聴 取され,
脈 拍が欠 損 する。
心 房 細 動 時 も 同様に心 臓の拡 張が十 分でないうちに心 筋が収 縮 するの で,
脈 拍は欠 損 する。
心 疾 患 患 者に対 する理 学 療 法
155
脈の緊 張は脈 拍の硬 度ともい い,
動 脈の被 圧 迫 性 が 大 きい か 小 さいかを評 価 する。
橈 骨動 脈 を示 指,
中 指,
環 指の3
本で押 さえ,
中枢 側の指で動 脈を 圧 迫 す る、
、
末 梢の指 に 拍 動 が 触 れ な くな る 圧迫の強 さ を 評 価 す る。
脈 拍の緊 張 度 は収縮 期 血 圧 と 比 例し,
血 圧計が ない 場 合 に お お よ その血 圧推 定に役立つ 。 脈 拍 測 定の際 は 心 臓の高 さ で 目 的 と す る 動 脈 を 触 知する 原則は 忘 れ て はな ら ない。
心 疾 患の場合 は
liLL
圧 や 心拍 数を低め に抑 える こ とで,
心 筋 酸 素消 費量(
心負 荷 )の指 標と な る 二 牽積 を低 く抑 えることがで き る た め、
餉1
圧 は収縮期血 圧 が140
mmHg 以下,
安 静 時 心 揃 数は.
LOO
拍以 ドであ ること が 望 ま しい。
臨 床では,
それ以上の 場 合 も あ る た め に,
理学 療 法の中IE基 準は担 当医と相 談の ヒ,
上 限 下 限 を 決 定 してお く。
心疾 患 患 者に対して,
血圧は低め に 抑 え ら れ てい るであ ろうが,
意 識が低 下し,
話がで き な くなる ほ どの低 血 圧 に な ること は好ま しくない。
5
) 聴 診理 学 療 法
1
:が 行 う心 音の聴 診 は,
心 疾 患の診 断 目的で はな く,
あ くまでリスク管 理 を 目的 とする。
特に,
脈 拍 数に欠 損があれ ば,
心 音の聴二
刻こよっ て 心拍 数と脈 拍 数の解離 は ない か 確 認 す る ことも可 能である。
心 音の聴 診は僧 帽 弁の音 (心 尖 部の近 く で左 鎖 骨 中 線上.
第5
肋骨 問 ) を聞くこ とを基 本と す る,
、
工音 とH
音か ら収 縮 期,
拡 張 期 を同定 する。
頻脈で ない か ぎ り1
音 と]音の間 隔の ほ うが,
H
音 と1
音の間 隔 よりも短い。
ま た,
1
音は心 基 部より も心 尖 部で大 き く聞こえる。
日頃か ら自
分 自 身の心 音 を 聞いて よく覚 えて お くこ と で,
田音
やIV
音
の過 剰 心 音や心 雑 音の聴 診が 可能 とな る。
繰 り返 し と な る が,
あ くまで 心 音の聴 診は心 拍 数の 判定や 不整 脈の推 定な ど 理学 療 法の リス ク管理の参 考 程度 に と ど め て お き,
「心 雑 音 が し ま す ね」な ど とい て)た指摘 は 厳 禁 と すべ きで あ る.
呼吸音 も重 要 な 指 標 と な る
。
左 心不全 に よ る肺 うっ 血 が強 く なると気 道 内 分 泌 物が増 加し て 湿性ラ音を 聴 取 す る ように な る。
6
) 再び閊診 (運動に よ る白覚 症 状 を聞 く)
起立 や
,
足 踏み,
歩 行,
階 段 爿 降,
有 酸 素運動,
筋 力ト レー
ニ ングなどの運 動 を負 荷 し,
運 動 後の自覚 症 状 を聴 取 する。
ボ ルグスケー
ルも安 静 時 と運 動 終f
時に測 定 することが重 要であ る。 ボル グ スケー
ル で は下肢 疲 労 感,
ま た は呼吸 困 難 感 を 評 価 する ことになるが,
特に心 機 能が低下 してい る と き に は 下 肢 疲 労より も呼 吸に症 状が出現 する た め に,
歩 行日t
の呼吸 困 難感の 評価は 心機 能の同復を推 測 する重 要 な指 標と な る。
2
.
デジ ダル機 器か らの柄 報 収 集1
)心電 図 詳細は 成書にゅずるが,
モニ タ心 電 図 上では,
心 拍 数の ほ か に,
危 険な不整脈 〔LOWn
gradeW
b
以 ヒ) が ない か,
心 筋 虚 血の反 応 〔ST
低 下) はないか を 髦 に判 断 する。
心 竃 性 期 外 収 縮の場 合は,
虚血によ るものか,
カリウ ムなどの電 解 質に異 常 が ないか,
抗不整脈 薬の飲み忘れはない か問 診 する ことも電要 で あ る。
2
)パ ルス オ キ シメー
タ パ ルス オ キ シメー
タ は経皮 的 酸素 飽和 度を測 定 する装置と し て使 用さ れ る。
酸 素 飽 和 度の測 定に加 えて,
脈
拍、
脈
派か ら 心 拍リズム,
さ ら に酸素
飽和
度 が 測定で き る かでき ないか に よっ ては末梢の循 環 障 害の 有無を推 定 すること ができ る。
指 先プロー
ブ を 装着してし ば らくたって も脈 派が得ら れず 酸 素 飽 和 度の 測 定 ができないとしたら,
心 不 全による木 梢 循 環の悪 化 も考 え る。
運 動 療 法
アプ
ロー
チの実 際
心 疾 患 患 者の運 動 療 法の中心は 日本 循 環 器 学 会 な どが作 成し た「
心 疾 患に お け る 運動 療 法に 関するガイ ド ラ イン1
に した が っ て行われ る有 酸 素運動が 中心と な る が,
最 近 で は各種合併症 を有 する高 齢者や心不全が 原 因 で 長期臥床を 強い ら れ て 廃 用 症 候 群 を示す 患 者 も多 く,
理学 療 法十の必 要性が ま す ま す 高 まっ てい るよう
に感じ てい るt.
D
運動 療 法 を開始 する前に運動 療 法 を開始 する前に は
,
バ イ タ ル サ イ ンや全身
状態
の メ ディカル チェ ックを行う
こ とが 必 要であ る。
バ イ タルサ インは,
教科
書 的に は,
血 圧,
脈拍
,
呼
吸数
,
体 温と さ れ る が,
そ れ 以 外に も各種 胸 部症 状の有 無,
体重,
尿量,
浮腫,
睡 眠状 況,
疲 労 感の残 存 な ど を 聴取す る (表4
)、
、
2
)準備 運 動 準備 運動を 適 切 に行 うことで,
骨 格 筋や関節 結 合 織の伸 展 性 を高め,
関節 可 動 域を広 げ,
骨 格 筋の障 晋 を予 防 することがで きる。 また,
連動 筋の宋梢ll旺管の拡 張 を促 すことで,
運 動 開 始 時の急 激 な心 負 荷 を減 じること につ ながる、
,
さ らに,
軍 度の糖 尿 病や心 不 全を合併し てい る場 合に は,
ウォー
ムァッ プ時間を 長 くとり十分に血管 拡 張を促し て か ら運 動 する。
また,
身 体 を 温める こ とで酸 素解 離 曲線は右h
’
偏 移し,
ltM液か らの02
解 離 を促 進し,
より効 率よくi1
液が使 える (心 負 荷が減る〕。
そ し て,
体 温が 上昇 する ことで,
血液 粘 度は低 卜.
し,
血液が流れ や すく な る (心負 荷が波る )こと が 生 理学 的に証 明さ れて い る。
3
)有 酸 素 運動の実 際 日本 循 環 器学 会の 「心 疾 患に おける運 動 療 法に関する ガイ ド ラ イン2 /’
一
,
に よ る と,
有 戯 素運動は,
歩 行,
サ イ クリング、
水 泳な ど が推 奨さ れ,
運動 時 問は20
〜
60
分 問の持 続,
さらに,
運動の頻度は,
週3
〜
5
回 が推 奨さ れて いる (表5
) 心 疾 患に 対 す る 運動 療法 は,
た だ¥一
に運動を さ せ れ ばい いというもの で は ない。
運動 療 法の実施 に は安全の確 保が 重要で ある。 その た め,
運 動 療法開 始 初 期 は,
運動中の モ ニ タ リング が容 易で,
運 動 強 度 が・
定 に 保 ち 易い 自転.
申:エ ル ゴ メー
タ や トレッ ドミ ルを 使 川し て運 動 療 法を行 う. 運 動 強 度は最 高酸 素 摂 取 量の40
〜
60
%,
心拍 予 備 能 (Heart
Rate
Reserve
,
HRR
)の40
・
一
60
%。
Karvonen
法
1
(
最 高工IR
一
安 静 時HR
)×k
+安 静 時HRI
に よ る処 方で は,
定
数と して0
.
・
卜0
.
6
を 用いる、
、
日本では運 動 強 度の 指 標 とし て,
伝 統 的に無 酸素 性 (
嫌気 性
) 代 謝 閾 値 (AT
:Anaerobic
Thresh
〔〉⊥d
)を 凵安 に す るこ と が あ る。
AT
強度の運 動 療 法 で は,
嫌 気 性 代 謝 に よ る 乳 酸の蓄積が なく,
長 時 間の持 続 的 運 動 が 可 能 で,
代謝 性アシ ドー
シス の進行や 血中 カ テコ ラ ミンの著 しい増 加 な ど,
心 筋 に 悪 影 響 を与え る代 謝 内 分 泌系
の変化が 生 じに くい、
、
さ ら に,
AT
は運動 強 度と して は 中等 度の運動で あ り,
AT
強 度で あ れ ば換 気尢 進が 生ず,
高 強●
ユ56
理 学療 法 学 第35
巻第4
号表
4
運動療法
前のメ ディカルチェ ッ ク 自覚 症状 質 問 例 解 釈 血 圧1
.
いつ もの血 圧 は どのくらいですか ?」1
ご自宅で血圧をはかっ て いますか ?」 「自宅 と病 院で血 圧 が大きく異なります か?1
「朝や夜の血圧が日中よりも高い こと は あ りません か ?」 高 血 圧の 某 準値 は 診 療 所 血LJ
[1140f90
mmHg 以 上,
家 庭 血 圧/
35
〆85mmlIg
以 上 と し,
そ れ未 満 (V
/IIO
−
ISH
分 類で は家庭 血 圧125
/80mmHg
未満 )を 正常血 圧 と す る.
起 床 時に高血 圧 を示 す 例では脳心 血管イベ ン ト率が高 く予 後 不良.
家庭lllL
)t
は朝と夜に測ること が 望 ま しい.
口乎吸1
木嘆隹 起座呼吸 と 発 作 性 呼 吸 困難1
最 近息切 れ が ひ ど く な り ま せんか ?」 症状がより重 驚になると安 静 時 呼 吸困難 もみとめられる.
「仰向
けになっ て眠 れ ますか ?」
「夜 息 苦 し くて凵 を覚ま す こ と は あ り ま せんか 〜一
仰 臥 位に な る ことで静 脈還流が増加し肺 うっ血を助 長 することで呼 吸 が し に く くな り,
起座 呼 吸 と な る.
浮 腫 「r一
足 に むくみ はあ り ませ んか ?1
「むくみ に左 右差はあ り ますか ?」 水やNa
の貯 留や,
腎血流の低 ドに より尿 量が低 ドして,
末 梢にむ くみを認め る.
起立 して い る と出現し,
寝ると消 失ま た は軽 減 する 上b
’
肢の浮 腫 は 心 臓 性の ことが 多い.
眼 剣 浮腫 は 朝方 最 も強い.
咳や痰 「最近,
咳や痰は多
くない ですか ?一
,
「どのような痰 が どの程 度 で ま す か ?」 季 節の変わ り 日や 風 邪のせい にするので は なく,
気 道 内分 泌 物が増 加 し てい る背景 (肺うっlflL
,
急性 気 管 支 炎) を考 察 することが 重要 で あ る.
胸 痛や胸 部不快 「胸が痛い ことはあ り ますか ?」,
感1
どの ように痛みますか ?」 高 齢 者では,
狭 心症状が胸 痛より も胸 部 不 快 感と して 自覚さ れう
る ことも多い.
握 りこ ぶ しを前 胸 部に当て て胸 痛を表 現 するの は心 筋虚 血 を強 く示 唆 する所 見.
動 悸 「胸 が ど き ど き し ま せ ん か ?」1
ドキッて いう感
じは あ りますか ?」 息 苦し さ や胸ぐ る し さも動 悸と区別せず 訴 えること がある の で注 意 する.
動 悸の原因の正 確 な診 断は検 査が必 要.
い つ、
どの よ うに,
どのぐ らい の時間起き るのか に注 意,
チア ノー
ゼ 「手足がひどく冷たくな ること が あ りま すか ?1
心不全 が 悪 化 す る と 交 感 神 経系が 緊 張 し,
末 梢の 血 管 を 収 縮 さ せ 血 流を犠 牲に して 主要 臓 器の血 流 を保とう
とする.
進行
する と代
謝 性 アシ ドー
シス と な り,
于 足 が 冷 た く な る.
心 不 全の 場 合 は 交 感 神 経 亢進に よ り手に冷 汗を か き,
皮 膚の湿 潤性は高 くな る.
乏 尿 「毎日,
き ちん とお しっ こ出てい ます か :”1
「体 重 増 えて いませんか?」 心 不全 になる と,
代 償 的に水やNa
の 貯 留や腎血 流の低下 が認め ら れ,
尿量 が低下する.
心不全にな る と,
尿量 が 低 ド し,
末 梢 に む く み や体 重の増 加を認め る.
全 身の倦 怠 感 「.
疲れ がとれない ことはあ ります か?1
「なんとなく全 身がだるい ことはあ りま せ ん か ?二 心 不 全 状 態では末 梢 骨 格 筋へ の [llL
流 低 下に より,
活 動 筋は容 易にア シ ドー
シ ス になっ てしま う.
表5
持 久力お よ びレジスタンス トレー
ニ ン グの運 動 処 方 頻 度 強 度 持 久 力ト レー
ニ ン グ3
・
−
5H
/ 週50
「
〜
70
% maxHR
40
〜
60
%VO2rnax
orHRR
1
.
.
.
.
レ ジス タン スト レー
ニ ン グ2
〜
3H
、
週各
筋 肉郡 に対 する … 動 を8
〜
⊥5
回 繰 り す (1
〜
3
セッ ト).
持 続20
〜
60
分 下肢 運 動:歩行・
上肢 運動:腕エ ル 上下 肢運動:ボー
アロ一
ドfrk
運 動:leg
ex な ど 上 肢 運動:
bench
じurl な どmaxIIR
最 大 心 拍 数 (
220
一
年齢 ま た は 実 測値 ),
VO2rnax
最 大 酸 素 摂取量
,
HRR
:心 拍 数 予備 能 (Karvoncll
法 ) 度運動に 比べ運動 継 胱 性に優れ る。
また,
AT
以 卜.
の強 度で は,
血 圧 や心 拍 数の ヒ昇が抑 えら れ,
心 筋 虚血 や不 整 脈の 出現が少 な くなる ことも,
AT
が運 動 療 法 強 度と して好ま れ る 理 由で あ る。
し か し,
AT
強 度を気にするば か り,
日常生活すべ て をAT
強 度 以 下 に し な け れ ば な ら ない か と 混 乱 す るこ と も あ る。
AT
強 度 は あ く まで有 酸 素 運 動 を 行 う 際 に 使 用 さ れ る (安 全 性 の高い).
指 標 で あ り,
日常 生 活 すべて をAT
強度以 下 にする とい う もので は ない,
、
少 しの 時 間AT
を超 えてい ても,
す ぐに心 疾 患 患 者に対 する 理学 療 法
157
心 臓 が 悪 く なることはない。
AT
以 上の 運動で は交 感 神 経の持 続 的 な過 度 な緊 張が問 題 とな るので,
インター
バ ル ト レー
ニ ン グ を採用 す ること で,
持 続 的 な緊張 は 避 け ら れ る。
AT
よ りは む し ろ 異 常 心 血 管 反 応 や不整脈の出現,
虚 血の出現,
息 切れ な ど に 注 意 を 払い,
断続 的な 運動 療 法を行 うことで対 応する。
要 が あ るuAHA に よ る 運動療法
の リス ク分 類 を表
6
に示した/t/’
。
4
}レジス タン ス トレー
ニ ング 循 環 器疾患 に対 する 運動 療 法と して,
近年,
骨 格 筋トレー
二 ン グ (レジスタン ス トレー
ニ ング〉が注 目さ れて い る.
紙 面の 都 合上,
詳 細は成書を ご参 照願いたい4 )in/
。
どの患 者 に も 同 じ ように 運動 療 法を行 うの では なく.
患 者の 病 態に併せてリスクを分 類 し,
運 動 療 法 を安 全に進 めてい く必表