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Ⅱ 研究内容 1 思いや考えを適切に表現するとは国語科の学習における文学的な文章では 読み手の一方的な感覚で自由に読み取る読解に終始したり 場面ごとの登場人物の心情や物語の結末を おもしろかった 悲しかった 嬉しかった など平板に読み取ったりするのではなく 叙述を根拠に読み取ることが重要である 解説

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Academic year: 2021

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沖縄県立総合教育センター 後期長期研修員 第55集 研究集録 2014年3月

〈国語〉

思いや考えを適切に表現し読解力を育成する指導の工夫

-読みを活かし本の推薦の文章を書くことを通して(第5学年)-

那覇市立小禄南小学校

テーマ設定の理由

絶え間なく更新される知識・情報には国境がなく、日々進歩していく技術等を基盤とした知識基盤社会 は、予測がつかない時代と言われ、そのような時代を子ども達は生きている。その中で、科学技術や情報 機器の発達は様々なコミュニケーションを容易にした。しかし、科学技術がどんなに進歩しても、パソコ ンや携帯電話、インターネットといった道具を活用するのは人間自身である。情報を取捨選択し、思いや 考えをどのように伝え、人間関係を構築していくのかが、これからの社会では問われてくるであろう。こ のような背景の中で、言葉本来の持つ力はより一層重要になってくる。次世代を担う子ども達にとって「確 かな学力・豊かな心・健やかな体」の調和に裏付けされた「生きる力」を育むことは重要な課題である。 「小学校学習指導要領解説国語編」(以下「解説国語編」と略す)では、「実生活で生きてはたらき,各 教科等の学習の基本となる国語の能力を身に付けること」、「言葉を通して的確に理解し,論理的に思考し 表現する能力,互いの立場や考えを尊重して言葉で伝え合う能力を育成すること(中略)」等が挙げられ ている。思いや考えを述べ合うということは、他者を理解し自己の考えを深めていくことの出発点となる。 また、基礎的・基本的な知識・技能を繰り返し学習し、その知識・技能を活用した思考・判断は、表現さ れ初めて他者に伝わる。さらに、交流を通して再び、思考・判断するという流れの中で、自己の思いや考 えが深まり適切に表現されることに活かされると考える。そのような学習のプロセスを通して、主体的に 学習に取り組み、単元全体を通した課題を探究することのできる国語の能力を身に付けられるような指導 を工夫したいと考える。 これまでの文学的文章における授業実践を振り返ると、教科書の内容を正確に理解させることに意識が 向いていた。物語のあらすじを捉えさせるために、文章を場面ごとに分けた読み取りに終始し、書かれて いることをそのまま順を追って読むことや登場人物の心情を確認するだけの授業展開となっていた。何の ために教材を学ぶのか、授業を通して学んだことをどう活かしていくのかを教師が見通せていなかった。 平成25年度「全国学力・学習状況調査」では、「読むこと」の領域の「推薦文を比べて読み,推薦している 対象や理由,それぞれの本や文章の読み方の違いをとらえる」が全国的に正答率が低い結果となった。本 校の正答率も低く、特に、無解答率の割合が高いという結果が出ていた。このことからも学習したことが 活かされていないのではないかと考える。教科書教材で学んだことを次の学びへと活かしていくには、 教師自身の作品全体を捉えた深い教材分析が基盤となる。さらに、文章をとおして様々な考え方を身に 付けるためにも、幅広い読書を通して、児童の「文学作品をもっと読みたい」、「自分の考えを書いてみた い」という意欲的な学びに変えていけるような授業改善を図っていくことが大切だと考える。 そこで、本研究では、文学的な文章の学習において、指導事項を明確にした単元を構成し、読む目的を 持たせた単元を貫く言語活動として「推薦の文章を書く」ことを設定し、単元を通して課題解決する授業 を展開する。さらに、児童が読みの目的に向かって見通しを持ち、表現したい思いや考えを膨らませなが ら課題解決に取り組むことができるよう並行読書も取り入れる。文学的な文章における登場人物の心情、 場面についての描写等、作品全体を通して読み取らせながら推薦の文章を書くことで、感動した思いや客 観的な考えを適切に表現する読解力を育みたい。また、作品の魅力や価値について、読み取ったことを交 流させる学習を展開していく。これらの手立てが、これまでの授業を改善する一助になると考える。 このように、付けたい力から単元を貫く言語活動を設定することで、児童は読み取りに必要な視点を明 確にし、叙述から読み取れる登場人物の心情を交流することを通して、ものの見方や考え方を広げ、自分 の思いや考えを表現し意欲的に学習に取り組むことができると考え本テーマを設定した。 〈研究仮説〉 文学的な文章の学習において、単元を貫く言語活動を設定し、文章の解釈に必要な視点を明確に与え、 意見や感想を交流させることで、読みを活かした本の推薦の文章を書くこととなり、物語世界を想像を広 げて読むことができ、思いや考えを適切に表現し読解力を育成することができるであろう。

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研究内容

1 思いや考えを適切に表現するとは 国語科の学習における文学的な文章では、読み手の一方的な感覚で自由に読み取る読解に終始した り、場面ごとの登場人物の心情や物語の結末を「おもしろかった、悲しかった、嬉しかった。」など 平板に読み取ったりするのではなく、叙述を根拠に読み取ることが重要である。 「解説国語編」〔C読むこと〕の領域目標には「目的に応じ,内容や要旨をとらえながら読む能力 を身に付けさせるとともに,読書を通して考えを広げたり深めたりしようとする態度を育てる。」と あり、文学的な文章の解釈における指導事項としては「登場人物の相互関係や心情,場面についての 描写をとらえ,優れた叙述について自分の考えをまとめること」が明記されている。そのために、物 語の設定をつかみ、登場人物に視点をあてたり、場面についての描写をとらえたりして作品全体から 中心人物の心情の変容を読み取らせる。また、作品の根底を流れる作者のメッセージとしての考え方 ・生き方をとらえて読むことは大切である。さらに、目的に応じて複数の本を比べて読み、ものの見 方や考え方を広げるなど、読書を通して生涯に渡って学び続ける態度の育成にもつなげていく。 森山卓郎(2007)は、読解の三要素として、「言語的理解・文脈的理解(書かれたものをどう理解 するか)」と「主体化(書かれたものに対してどんな思いを持つか)」を挙げている。その中で、主体 化を、「単なる理解だけにとどまらず,読み手が主体的にどう受け取って,それに対してどんな意見 や感想をもつのか。また,自分の生き方や感じ方と対照させたり,その作品は好きかどうかを感じた りして,物語に述べられた様々なことを関連づけて考えていくこと」としている。 そこで本研究では、中心人物の心情の変容や場面描写からとらえた思いや考えを、自分なりの生き 方や生活に関連づけて表現することを主体化ととらえることとする。そして、交流を通して再び自分 の思いや考えを振り返るという流れの中で、自分の考えの形成や思いを深め、適切に表現する力を育 成していく。 思いや考えを適切に表現するとは、言語的理解・文脈的理解を基礎的・基本的な知識・技能の習得 とし、それらを活用した、思考・判断・表現を主体化として獲得する力を読解力ととらえる。つまり、 思いや考えを適切に表現するという行為は、自分の考えや意見を根拠をもとに述べ、自分の生き方や 感じ方を対照させて読む力であり、そのことによって実生活で生きてはたらく国語の能力の育成へと 繋がっていくと考える。 2 読解力とは 文章の解釈について「解説国語編」によると、「本や文章に書かれた内容を理解し意味付けること である。具体的には,今までの読書経験や体験などを踏まえ,内容や表現を,想像,分析,比較,対 照,推論などによって相互に関連付けて読んでいく。」と述べている。また、「文章の内容や構造を理 解したり,その文章の特徴を把握したり,書き手の意図を推論したりしながら,読み手は自分の目的 や意図に応じて考えをまとめたり深めたりしていくことである。」と明記されている。 また、PISA型読解力では、「書かれたテキストを理解し,利用し,熟考し,これに取り組む能 力」と定義している。そこで読解力を、文章や資料から情 報を取り出すだけではなく、内容を比較したり推論したり することで意味を解釈し、これまでの知識や考え方、経験 と結び付けて読むこととらえる。本研究では、読み取った 文章を熟考・評価して、独自の意見が表現できることを加 えるまでを読解力として研究を進める。これまでの、必要 な情報を引き出し、内容理解までにとどまっていた授業展 開に加えて、本研究では、自分の考えや意見を根拠をもと に述べる力=思いや考えを適切に表現する力を意図的に、 そして往還的に組み込んでいくことが大切であると考える (図1)。 このことから読解力とは、読み手が文章から取り出した 情報を基にあらすじ等をおさえ、内容理解にとどまるだけ ではなく、「単元を貫く言語活動」を設定し、課題解決に向けて「読む」、「考える」、「伝える」とい った読解の流れを往還的に関わらせて取り組む一連のプロセスで育まれる力であると考える。 図1 読解力のプロセス 情報の取り出し 情報へのアクセス・取り出し

伝える力

表現

考える力

熟考 評価

読む力・聞く力

解釈

読解力

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3 読みを活かし推薦の文章を書くことについて (1) 読みを活かすこととは これからの時代に求められる国語力について文化審議会(平成16年2月3日)では「論理的思考 力・情緒力・語彙力の育成」を挙げている。その中で「自分の考えや意見を論理的に述べて解決し ていく力を論理的思考力(考える力)ととらえ,その基盤として大きくかかわるのは,その人の情 緒力(感じる力)である(中略)。さらに論理的思考力と情緒力を根底で支えているのが語彙力(国 語の知識)である。」としている。児 童は、文学的文章を読み進める過程に おいて、そこに描かれている人物像に 自分自身を反映させたり、客観的にと らえたりしながら、これまでの自分の 経験も関係付けて読み取っていく。さ らに、友達との交流を通して得られた 新たな解釈から読みを深め、言語感覚 を豊かにしながら情緒力を育んでいく と考える。つまり文学作品を読むとい うことは、必要な情報を取り出し、内 容を理解するだけはなく、叙述や場面、 状況、前後の文脈から行間に表れてく る書き手の思いを推論・解釈し、自分 の思いや考えを豊かに想像して登場人 物の心情に迫らせていくことである。 そこで、物語を読み取る視点を明確にする「手引き」を作成し、活用させる(図2)。手引きの視 点は、単元構想表の指導事項と合わせ、児童の学習進行表とも整合性をもたせる。そして「単元を 貫く言語活動」と関連させながら読み取らせることで、読みを活かした推薦の文章を書くことにつ なげていく。 (2) 推薦の文章を書くことについて ① 推薦の文章を書くこと 文学作品を読んで、推薦の文章を書くということは、作品に対して感動したことを相手に伝え たいという思いから始まる。他者へ伝えたいという思いを持ったとき、人は初めて主体的に読み に向かうことができると考える。「自分の読みの感動の中心はどこだろうか、相手に読んでほし い場面や理由は何だろうか」などの推薦したい内容を吟味することで、作品を読み返すことにな り、文学作品の魅力をより一層感じ取ることができる。そして、心が大きく動いたことを推薦の 文に書くことで、自分自身の表現が洗練されていく。また、言語的理解・文脈的理解をもとにし てどんな思いや考えを持つかという思考力・判断力が育まれたり、さらに、自分自身の生き方に 価値付けたりすることで読解が深まっていくと考える。「推薦の文章を書く」ポイントとして樺 山敏郎(2013)は「本や文章を推薦する際には,特徴をとらえて推薦することが必要である。文 章の内容を引用したり,要約したりして,自分が読んで 感動したところを伝え,相手の読書意欲を喚起すること が大切」と述べている。そこで樺山の提唱する6つの読み の観点(表1)を取り入れる。登場人物の相互関係から見 えてくる人物像(イ)、あらすじや文章構成(ウ)、情景描 写や優れた叙述を自分の表現に活かしていくこと(エ)で 作品の根底に流れる作者のメッセ―ジに気付くこと(カ) ができ深い読み取りにつながると考える。文学作品を読み 「推薦文を書く」という単元を貫く言語活動を設定し学習 の目的を明確にすることで、児童は学習のゴールを見通す ことができる。そのため、教材文を目的を持って読み、主 体的な読みを進めることにつながると考える。 表1 物語を推薦する6つの読みの観点 図2 物語を読み解く手引き

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また相手に応じた推薦をするための手立 てとして、「~をお薦めします。」、「~の良 いところは・・・です。」などの表現を推 薦の言葉として使い、作品を評価する言葉 として「心が温まる」、「深い味わいがある」 など文学作品に対する思いや感情を表現す る言葉も伝えながら相手の読書意欲の喚起 につながる推薦ができるよう「推薦の言葉」 を児童に提示し、推薦の文を書かせるため の手立てとする(表2)。 ② 並行読書を設定すること 国語科において、実生活に生きてはたら く言語の能力を育成するために、読解力を 身に付けることは大切な手立てになると考える。あらゆる情報の渦中で生きていくこれからの児 童は、様々な価値観の中に身を置き、その中で情報を吟味し、取捨選択しながら自分の考えを形 成し表現する力が求められてくる。そのためにも、その土台としての読解力の育成は重要だと考 える。水戸部修司(2012)は、「本や文章を目的に応じて選んだり,複数の資料を比べたりしな がら自分の考えを明確にして読んだりするといった読む能力像を,課題解決の過程に即して幅広 く描く必要がある。」と述べている。一つの単元を学習しながら、同じ書き手のシリーズ作品や 教科書教材と同じ課題を持った作品を並行して読書に取り組ませることで、児童は様々な文章に 同時に触れることができる(図3)。 そこで、教材文との比較をさせなが ら読書に取り組ませることで、自ら選 んで読むこと、読んだことに対して自 分の考えを持つことなど、主体的な思 考・判断を伴う学習ができると考える。 また、交流することで、思いや考えを 適切に表現することへとつながり、さ らに自分の考えの形成ができると考え る。このことから、目的に応じた並行 読書は、教科書教材を読むことにとど まらず、多様な作品に触れ、様々な人 間の描写を読むことで作者が伝える生 き方についての解釈に幅をもたせるこ とにつながると考える。 ③ 自分の考えを形成し交流すること 文学的な文章を読んで、読み取った 内容をいくつかのことと比べたり、関係付けたりしながら自分自身の課題を明確にし、考えをま とめることは大切である。いくつかのことを比べたり、関係付けたりするためには同じテーマに ついて書かれている本や文章、同一の作者による本や文章を読み比べることが、多種多様な課題 を解決する一つのヒントとなる。「解説国語編」では、「比べて読むことは,様々な違いを発見す る喜びを知り,知識や情報を豊かにしたり,読書の範囲を広げたりすることにつながり,多くの 本や文章などを読むことの意義や楽しさを実感させることになる」と述べている。 さらに、水戸部は、「無目的に発表させたり作文を書かせたり,与えられた文章の与えられた 段落や場面を読み取れるようにすればよいのではない。自分はこんな思いや考えを,この相手に どうしても伝えたい,自分はこの本がお気に入りだ,この文が大好き,この疑問についての情報 をもっと知りたいといった,子どもの主体的な言語に対する意識を重視すること」と述べている。 学習したことを自分自身の課題だけにとどめるのではなく、互いの考えがどのように共通し相違 しているかなどを明らかにしながら他者との交流を通して自分の考えをもったり、より深めたり しながら、適切に表現されることに活かせると考える。 図3 水戸部による並行読書 表2「推薦の言葉」 推薦の言葉 作品を評価する言葉 「~をすいせんします。」 「~をおすすめします。」 「~にぴったりです。」 「~のよいところは・・・です。」 「ぜひ~してほしいです。」 「きっと~だと思います。」 「~にふさわしいと思います」 「今にも~しそうなお話です」 「あこがれる」 「我を忘れて」 「たまらない」 「心が温まる。」 「深い味わいがある。」 「胸をふくらませる。」 「かんめいを受ける。」 「胸が高まる。」 「好ましい」「適切な」 「ここちよい」「切ない」 「痛快」「胸にひびく」 「圧倒される」

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指導の実際

1 単元名 「推薦しよう!椋鳩十さんが伝える生き方についてのメッセージを」 教材文 大造じいさんとがん 椋 鳩十 作(教育出版 5年上) 2 単元の目標 ○ 物語の基本構造を押さえて読むことができる。(読む エ) ○ 物語の中で推薦したい場面をとらえて読むことができる。(読む オ) ○ 物語を読んで推薦し合い、自分の考えを広げたり深めたりしながら読むことができる。(読む カ) 3 単元の評価規準 国語への関心・意欲・態度 読む能力 言語についての知識・理解・技能 ・推薦しようと考えた理由を明ら ・物語の基本構造を押さえて読んでいる。(エ) ・言葉の正しさや美しさを捉えた かにし、対象となる本を読み返 ・物語の中で推薦したい場面をとらえて読んでいる。(オ) り、その言葉が適切であるかど す等、効果的に推薦するために ・物語を読んで考えたことを推薦し合い、自分の考えを広げた うかを感じ取ったりしながら読 読みを工夫しようとしている。 り深めたりしながら読んでいる。(カ) んでいる。(イ(カ)) 4 指導と評価の計画(全三次 10時間) 時 目標 学習活動 ◇指導上の留意点 ◆指導事項 学習活動に即した評価規準 【観点】 (方法) 1 ・学習の見通しを ・椋鳩十のシリーズ作品 ◇並行読書に関心を持たせるた 【関】登場人物の生き様や場面描写を 第 もつことができ の並行読書をしていく め、椋鳩十のシリーズ作品の 基に推薦することを知りや並行 一 る。 ことを確認する。 ブックトークを行う。 読書を楽しもうとしている。 次 ・教師自身の本のショー ◇「大造じいさんとがん」の「本 (行動・ノート・発言) ウィンドウによる作品 のショーウィンドウ」のモデ の推薦を聞く。 ルを提示する。 【言】本の特徴をとらえて推薦の 2 ◆「紹介」と「推薦」の違いを確 イメージをしている。 ・物語の全体像を ・音読する。 認する。 (ノート・発言) とらえることが ・初発の感想を書いて発 できる。 表する。 ◇初発の感想から一人一人の読み 【読】感想を書いている。 ・音読する。 や感じ方の違いに気付かせる。 (ノート・発言) 3 ・登場人物を確か ・中心人物や対人物、物 ◆難しい語句は国語辞典で調べて 【言】文章を理解するために必要な文 め物語の設定を 語全体の設定を確認す 確認させる。 字や語句を調べようとしている。 を読み取る。 る。(手引き①) (行動・ノート) 4 ・物語のあらすじ ・音読する。 ◇物語の全体像をつかませる。 【読】物語の概要がわかるように、 第 をまとめること ・大事なところを落とさ ◇時・場所・人物の変化を根拠に 観点をもとに叙述をとらえ 二 ができる。 ないように要約してあ 場面ごとにわけ、あらすじをと あらすじをまとめている。 次 らすじをまとめ、交流 らえさせる。 (ノート・交流) する(手引き②③)。 ◆文章全体の構成をとらえさせる (設定-発端-展開-山場-結末)。 5 ・中心人物が一番 ・音読する。 ◇中心人物の変容場面はどこかを 【読】場面の展開に即して登場人 変容した場面を ・人物相互の関係から、 叙述を根拠に交流させる。 物の 相互関係や心情、各場 とらえることが 場面の展開に応じた中 ◆登場人物の相互関係や心情、場 面についての描写から山場 できる。 心人物と対人物の関わ 面についての描写から山場をと と、中心人物の変容をとら りの変容を読み取り、 らえさせる。 えている。 交流する。(手引き④) (ノート・交流) 6 ・登場人物の気持 ・音読する。 ◇中心人物の気持ちの変容がわか 【読】中心人物と重要人物の行動 ちや人物像を読 ・場面構成を基に山場を る文にサイドラインを引きなが や関わりの変容を叙述を基 み取ることがで 押さえ、登場人物の気 ら叙述に即して説明できるよう に読み取っている。 きる。 持ちや人物像を読み取 にさせる。 (ノート・交流) りまとめる。 ◆場面の移り変わりに注意し、登 ・お互いの感想を交流し 場人物の心情や情景などについ 合う。(手引き④⑤) て、叙述を基にして読ませる。 7 ・中心人物の変容 ・音読する ◇物語の構成、あらすじ、中心人 【読】場面の展開に即して優れた から受け取った ・椋鳩十が作品を通して 物の変容など叙述に即して,根 叙述に着目して自分の考え 本 作者のメッセー 伝えたかったことをブ 拠を明らかにさせてまとめさせ をまとめている。 時 ジをまとめる。 ックパンフレットにま る。 (ノート・交流) とめ、交流する。 【言】推薦の言葉を使い、ブック ① (手引き⑧) パンフレットにまとめる。 8 ・椋鳩十作品の魅 ・並行読書してきた本の ◇「大造じいさんとがん」で学ん 【読】椋鳩十の作品を読んで推薦 第 力を、本のショ 中から、お気に入りを だ推薦の方法を活かしてまとめ の文章を書くことができる。 三 -ウィンドウを 選び、その作品を推薦 させる。 (ノート・発言) 次 9 通して交流し読 するために本のショー ◆関連作品の共通点や相違点につ 【関】推薦する本を読み返しなが みを深めること ウィンドウを書く。 いてまとめる。 ら推薦するために工夫しよ ができる。 うとしている。(ノート) 10 ・自分が選んだ作 ・本の推薦交流会を行 ◇読書座談会を通して、お互いの 【読】選んだ本について自分の考 品を推薦し合う。 う。 共通点や相違点についてまとめ えを発表し、交流しようと 本 る。 している。(行動・発言) 時 【関】推薦しようと考えた理由を 明らかにし、効果的に表現 ② しようとしている。 (ノート) 【読】場面の展開に即して優れた 叙述に着目して自分の考え をまとめている。 (ノート・交流) 単 元 を 貫 く 言 語 活 動 『 推 薦 し よ う ! 椋 鳩 十 さ ん が 伝 え る 生 き 方 に つ い て の メ ッ セ ー ジ を 』 並 行 読 書 『 椋 鳩 十 さ ん が 書 い た シ リ ー ズ 作 品 を 読 も う 』

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5 本時の学習指導 (1) 本時1 ( 7/10時) ① ねらい 作者が物語を通して伝えたかったメッセージをまとめよう。 ② 授業仮説 作品を通してのメッセージをとらえる場において、メッセージの見つけ方を確認し、中心人物 の気持ちの変容や物語の山場、クライマックスを通して変わった中心人物の言葉と行動を押さえ ることで、椋鳩十さんが伝える生き方についてのメッセージをとらえることができるであろう。 ③ 展開 主な学習活動 ◇指導上の留意点 ◆指導事項 評価の【観点】(方法) 導 1 前時の確認。 ◇大造じいさんの残雪に対する気持ちを確認させる。 入 ・メッセージの見つけ方を確認。 ◇クライマックスの一文を確認させる。 センテンスカードで物語の流れを確認。 ◇結末の大造じいさんの言葉や行動を確認させる。 2 十の場面を音読する。 ◇十の場面を中心に音読させる。 大造じいさんの言葉や行動を意識させる。 ◇「がんの英雄」「えらぶつ」をキーワードとして読 3 めあての確認をする。 み取らせる。 4 作品を通してメッセージを伝えている内 ◇大造じいさんの気持ちの変容がわかる叙述と重なる 容を読み取る。 ことに気付かせる。 展 5 交流する。 開 ・ペアで交流し相手の考えを発表する。 ◇全員必ず意見を言わせる。 【読】場面の展開に即し ・グループで交流する。 ◇ペアで聞き合った内容を他のメンバーに伝える。 優れた叙述に着目して自 6 共有する。 分の考えをまとめている。 ・グループで集まった、椋鳩十さんのメッ (ワークシート・交流) セージを発表する。 7 まとめる。 【言】推薦の言葉を適切 ・椋鳩十さんが伝える生き方のメッセージ に使いブックパンフレッ をまとめる。 ◇たくさん出てきた作者のメッセージから特に推薦し トにまとめている。 ・意見を聞いて最終判断をする。 たいメッセージを選んで感想をまとめる。 (ワークシート) ま 8 学習のまとめをする。 ◇学習進行表で振り返る。 と ◇本時の学習でまとめたことをパンフレットにまとめ め 9 次時の予定を確認する て推薦していくことを確認する。 (2) 本時2 (10/10時) ① ねらい 椋鳩十さんの作品を推薦し、生き方についてのメッセージを伝え合おう。 ② 授業仮説 作品を通して受け取った作者のメッセージを推薦する場において、読んだ作品のあらすじや魅 力的な場面、推薦を書いた本のショーウィンドウをもとにグループ交流し、その後、全体で共有 することで、椋鳩十さんが伝える生き方についてのメッセージをとらえることができるであろう。 ③展 開 主な学習活動 ◇指導上の留意点 ◆指導事項 評価の【観点】(方法) 導 1 本時の確認。 ◇交流の仕方を確認する。 ・本のショーウィンドウで椋鳩十さんの作 入 品を推薦することを確認。 ・それぞれの作品の推薦ポイントを聞いて お互いで評価をさせる。 ◇4つのブースに分かれて交流をさせる。 2 めあての確認をする。 【読】選んだ本について 3 交流する。 ◇各グループ10分間。 自分の考えを発表し、交 展 ・各作品のグループごとに発表してもらう。 ◇グループの推薦後1分間で感想メモをまとめる。 流しようとしている。 開 4 全体で共有する。 ◇読み取った作者のメッセージをみんなで確認する。 (行動・発言) ・各グループで交流した椋鳩十さんのメッ ・画用紙にキーワード並べて掲示。 【関】推薦しようと考え セージを発表する。 ・思いやり・認め合い・讃え合い・共存する等。 た理由を明らかにし、効 →人としてどう生きていくかにつなげていく。 果的に表現しようとして いる。(ノート) 5 まとめる。 【読】場面の展開に即し ・椋鳩十さんが伝える生き方のメッセージ ◇自分の思いや考えを作者のメッセージと重ねて感想 て優れた叙述に着目して を確認する。 を書かせる。 自分の考えをまとめてい る。(ノート・交流) ま 6 学習のまとめをする。 ◇学習進行表で振り返る。 と ◇本時の学習で交流したショーウィンドウを他の学級 め や学年に推薦していくことを確認する。 「大造じいさんとがん」が伝える生き方についてのメッセージを読み取ろう! 椋鳩十さんが伝える生き方についてのメッセージを伝え合おう!

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6 仮説の検証 本研究では、単元を貫く言語活動を設定した授業を展開する中で、推薦の文章を書いて交流すると いう活動が、思いや考えを適切に表現する力、すなわち読解力を育成する指導として有効かどうかに ついて分析・検証する。教材文「大造じいさんとがん」において、単元を貫く言語活動を「推薦しよ う!椋鳩十さんが伝える生き方についてのメッセージを」と設定し実践を行った。検証の方法として、 検証の事前及び事後のアンケートのまとめ、ノートやワークシート、本の推薦のブックパンフレット、 ショーウィンドウの記載内容、授業での児童の様子等から検証していく。 (1) 「推薦の文章を書く」単元を貫く言語活動を設定することによる読解力の育成 本単元では、解説国語編に示す第5学年及び第6学年の指導事項「エ 登場人物の相互関係や心 情、場面についての描写をとらえ、優れた叙述について自分の考えをまとめること」、「オ 本や文 章を読んで考えたことを発表し合い、自分の考えを広げたり深めたりすること」の指導事項を付け たい力として、単元を貫く言語活動を「推薦しよう!椋鳩十さんが伝えるメッセージを」と位置付 けた。作者の伝えたいメッセージを自分の生き方にどう反映させるかを推薦の視点とすることで、 文学作品を読み深めていくことにつながっていくことをねらいとした。そのために、物語の基本構 造を押さえること、自分が推薦したい魅力的な場面(心に残った場面・不思議に思った場面など) を選ぶこと、同じ作者の書いたシリーズ作品を比べて読むことを単元の目標として授業を展開した。 第2時での全文を読んで感想を書く学習活動では、推薦したい魅力的な場面をとらえて書くとい う視点を与えたところ、「一番印象に残った場面は、最後の大造じいさんとがんが離れる場面です。 敵同士なのに堂々と戦おうと言ったからです。」、「この物語の中で一番印象に残ったところは、残 雪がじいさんを正面からにらみつけたという場面です。なぜなら大造じいさんに何かを伝えたいよ うに思えたからです。」のように物語の山場を中心にとらえて感想を書いていくことができた(図 4)。これらの感想から、単元を貫く言語活動を設定したことで、読みの目的を持ち中心人物の変 容から自分の考えを形成し生き方につながる内容を読み取っていると考える。第3時から第6時ま での学習活動では、物語を読み解くために作成した手引きを活用し、登場人物について書かれてい る叙述や、魅力的な描写、あらすじから読み取れる物語の基本構造、中心人物の変容をとらえてい く学習を展開した。第7時の「作者が物語を通して伝えたかったことをまとめよう」の学習活動で は、叙述をもとに、作者椋鳩十が伝えたいメッセージを自分が読みとったことをもとにまとめる学 習を展開した。ここで、大造じいさんを通し て語られている作者のメッセージには、人間 として生きるには何が大切かというメッセー ジが込められていることの視点をもたせて読 みを深めさせたいと考え、単元を貫く言語活 動を「椋鳩十さんが伝える生き方についての メッセージを考えよう」と見直した。作者の 伝えるメッセージを、叙述に書かれている根 拠をもとに、「残雪が、はやぶさも人間も関係 なく、仲間を助けようとしていく姿に助け合 って生きていくことの大切さを学びました。」、 「最初は残雪のことをいまいましく思ってい た大造じいさんだけど、最後に残雪を認めた から、認め合って生きていく大切さすばらし さを考えさせてくれる本です。」、「頭領として のいげんを傷つけまいと努力しているようで もあったという文から、一生懸命に生きる生 き方が伝わってきました。」等、読み取ったこ とから、自分の考えを形成し、思いや考えを 深めて物語の魅力をブックパンフレットにま とめることができた。授業後のアンケート結 果をみると、「物語を読むことが好き」と答え た児童が60%から73%に増えた(図5)。また ク ラ イ マ ッ ク ス の 場 面 を と ら え 、 引 用 し て 感 想 を 書 い て い る 。 ク ラ イ マ ッ ク ス に つ な が る 伏 線 を と ら え て 書 い て い る 。 図4 初発の感想

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「物語を読んで思ったことや考えたことを書くことが嫌い」と授業前は76%が否定的にとらえてい たが、授業後は58%に減少した(図6)。このように、「推薦しよう!椋鳩十さんが伝える生き方に ついてのメッセージを」と指導事項を意図して、教師の付けたい力を単元を貫く言語活動に設定す ることで、児童は読むことの目的を見通し、思いや考えを適切に表現し、主体的に学ぶ意欲へとつ なげて作品を推薦することができたと考察できる。 (2) 文学的な文章を読み取る視点をもたせる読解力の育成 物語を魅力的に感じた場面に、児童は様々な思いを馳せて読み進めていく。「なぜ中心人物はそ のような思いを持ったのか。」、「自分も中心人物のように変わりたい。」、「中心人物のような考え方 はすごいと思う」等、自分が魅力的に感じた場面を推薦したい思うとき、子どもたちの思考は、よ り活発になり主体的な学習へと向かうと考える。そこで、子ども達の思考を整理するためにも、メ ッセージを読み取る視点(表3・表4)を提示し、推薦したい魅力的な場面とその理由を明らかに していく必要があると考えた。物語の基本構造を押さえ、中心人物の気持ちの変容をとらえるため に、第4時での「物語のあらすじを書こう」の学習活動で は、「いつ・どこで・だれが・どんなことをした」に視点 をあて、物語を十の場面に分ける学習を展開した。各場面 を「○○をした大造じいさん。」という体言止めの一文で まとめ、大造じいさんの残雪に対する言動に着目させるこ とで、大造じいさんの心情も同時にとらえることができた。 その結果、作品全体からわかる大造じいさんの気持ちの変 容をとらえたあらすじをまとめることができた。 第5時、第6時の学習では、物語を読み解くために作成 した手引き(図2)を活用しながら、中心人物の気持ちが 大きく変化する事件となる山場を読み取る学習を行った。 そこで、中心人物の気持ちや状況が大きく変わったところ はどの一文かを問うと、児童は、A「大 造じいさんは、ぐっと銃をかたに当て て残雪をねらった。が、なんと思った か、再び銃をおろしてしまった。」B「大 造じいさんは、強く心を打たれて、た だの鳥に対しているような気がしなか った。」という二つの文をとらえていた。 山場をとらえる視点は「物語の視点が 変わった後ろに山場がくる」、「会話文 か描写の文で表現される」、「決定的な 変容、中心人物が変わったところが一 文で表現されている」である。これら の視点で読み取っていくと、山場はB の「大造じいさんは、強く心を打たれ て、ただの鳥に対しているような気が しなかった。」という一文になる。しか 図6 物語を読んで感想を書くことについて 授業前 授業後 12% 18% 12% 24% 28% 32% 48% 26% 物語を読んで感想を書くことは好きですか ア 好き イ どちらかといえば好き ウ どちらかといえば嫌い エ 嫌い N=34 図5 物語を読むことについて 授業前 授業後 45% 38% 15% 35% 18% 21% 22% 6% 物語を読むのは好きですか ア 好き イ どちらかといえば好き ウ どちらかといえば嫌い エ 嫌い N=34 表3 物語を読み取る視点 表4 作者のメッセージを読み取る視点 ①最初と最後の中心人物の気持ちの 変容によって表される。 ②「山場」を中心として表される。 ③「中心人物」の言葉や行動に表される。 ①物語の設定をつかむ。 ②物語の基本構造を押さえる。 ③中心人物の気持ちの変容を読み取る。 図7 ワークシート(第7時)

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しAを選んだ児童の感想として、「最初は、残雪をいまいましく思っていたけど、はやぶさと戦っ ている残雪を見て、気持ちが変わったから。」、「今までの 大造じいさんなら、残雪のことを迷わず撃っていたのに、 心が動いて銃をおろしたから。」と叙述をもとに根拠を述 べていたことから、大造じいさんの気持ちが大きく変容す るきっかけを読み取っていたと考えられる。よってAの一 文も山場にせまる伏線であり、作者のメッセージをとらえ る上で大事な一文とした。第7時では、山場を中心とした 作者のメッセージをまとめることができた。このことを通 して、文学的文章を読み取る視点を明確にし、叙述を根拠 に大造じいさんの気持ちの変容をとらえ、作者が伝える生 き方についてのメッセージをうけとめることができたと考察する(図8)。 (3) 意見や感想を交流することによる読解力の育成 第8時の「作者が物語を通して伝えたかったことをまとめよう」の学習活動では、教科書教材の 「大造じいさんとがん」から受け取ったメッセージをブックパンフレットにまとめる学習を設定し た。推薦したい魅力的な場面を選び、そこから 伝わる作者のメッセージを書かせ、グループ交 流を行った。その交流の様子から「残雪は救わ ねばならぬ仲間の姿があるだけだったという文 章から仲間を大切にしてほしいという作者の思 いなのかなと思った。だから仲間を思うという メッセージが大事じゃない?」、「やっぱり認め 合うという言葉だと思う。最初はたかが鳥と残 雪を呼んでいたのに、最後は英雄といって残雪 のことを認めているから。」というように根拠 をもとにメッセージを考えている様子がみられ た。そこで、グループ交流で出た児童の意見を 全体で共有し、中心人物の気持ちの変容、物語 の山場、中心人物の言動の三点を視点としてメ ッセージをとらえることを確認した。その結果、 メッセージのキーワードを、「一生懸命生きる」 「思いやり」、「堂々と生きる」、「助け合う」、「認 め合う」、「素直に生きる」、「支え合う」、「動物 への愛情」等、メッセージの視点が「生きる」 とは何かについて焦点化され自分がどう生きる かにつなげることができ、児童一人一人がブッ クパンフレットに思いや考えをまとめることが できた(図9)。第10時では、並行読書を通し て伝わってきた作者の生き方についてのメッセ ージを推薦するために、本のショーウィンドウ にまとめる学習を行った(図10)。児童は並行 読書で読んだ作品「アルプスの猛犬」、「ああ公」 「片耳の大シカ」の三冊を「大造じいさんとが ん」の教科書教材と重ねて読み、これまでの学 習と同様に、並行読書の中から一冊を選び、単 元を貫く言語活動「推薦しよう!椋鳩十さんが 伝える生き方についてのメッセージを」という 読みの目的をもって読み進めた。作品の一番魅 力的な場面、あらすじ、魅力的な描写、推薦の 言葉を四つのウィンドウにまとめさせた。その 図8 児童が受け取ったメッセージ 根 拠 と な る 叙 述 を も と に 作 者 の 伝 え る メ ッ セ ー ジ を 解 釈 し て い る 。 図9 ブックパンフレット 図10 児童が作った本のショーウィンドウ

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本のショーウィンドウには、児童の推 薦したい思いが、反映され学級での読 書座談会での推薦に活かされた(図11)。 交流後の児童の感想から「『片耳の大 シカ』を読んでみたいと思いました。 この物語から助け合って生きるという 椋鳩十さんから受け取った人が多かっ たからです。」、「友達がぐっとくるシー ンがあると推薦していたので『アルプ スの猛犬』を読んでみたい。」、「助け合 って生きるというメッセージを推薦して いた『アルプスの猛犬』を読んでみたい。自分 だったらどういうメッセージを受け取るか知り たいと思いました。」等の感想があり、また、 アンケートの結果でも、「物語を読んで感動し たことや自分の感じた本の魅力を友達に薦めよ うと思う。」と答えていた児童が57%から73% に増えた(図12)。さらに、まとめのふり返り シートから、教科書教材とシリーズ作品から、 作者のメッセージに自分の思いや考えを膨らませて受け取っていたことが読み取れる(表5)。こ れらのことから、単元を貫く言語活動を設定し、文学的な文章を読み取ったことを、並行読書を行 いながら推薦し合うという交流を通して、児童は、物語から伝わったメッセージに、自分なりの価 値付けをし、そこから新たな考えを見出すことで思いや考えが適切に表現され、生き方のメッセー ジを考えることを通して読解力が育成されたと考える。

成果と課題

1 成果 (1) 「推薦しよう!椋鳩十さんが伝える生き方についてのメッセージを」と単元を貫く言語活動を設 定することで、児童は読むことの目的を見通し、主体的に学び、児童が思いや考えを適切に表現す ることで、読解力を育成することができた。 (2) 物語を読み取っていくために文学的文章を読み取る視点を明確にしたことによって、作品全体を 把握し、物語のあらすじや、中心人物の言動から読み取れる気持ちの変容などから、作品の根底を 流れている、作者が伝える生き方についてのメッセージをとらえることができた。 (3) 意見や感想を交流したことで、一人一人が、物語から伝わったメッセージに自分自身の思いや考 えを形成し価値付けたことで、読解力を育成することができた。 2 課題 (1) 指導と評価の一体化を目指し、ねらいに即した児童の思考を整理しやすくするためのワークシー トの作成。 (2) 並行読書の時間の設定の仕方。児童の学びの連続の中に読書が位置付けられるように、休み時間 や放課後の時間、さらに家庭学習と連動させた読書の充実。 表5 感想交流後のふり返りより 椋 鳩 十 さ ん が 、 え が い た 物 語 で 受 け 取 っ た メ ッ セ ー ジ は 、 「 動 物 へ の 愛 情 」 と 「 助 け 合 う 」 で す 。 す べ て 人 間 と 動 物 が 関 わ っ て い ま す 。 な の で 、 動 物 へ の 愛 情 、 そ し て 共 に 生 き て い き た い と い う の が 椋 鳩 十 さ ん の 理 想 な の か な と 思 い ま し た 。 私 が 椋 鳩 十 さ ん か ら 受 け 取 っ た メ ッ セ ー ジ は 動 物 と 人 間 が 助 け 合 っ て 生 き る で す 。 助 け 合 っ て 生 き る っ て こ と は 、 認 め る と い う 意 味 で す 。 私 は 動 物 に 対 し て も 認 め る の が す ご い と 思 っ た か ら で す 。 ぼ く は 、 椋 鳩 十 さ ん の 本 を 読 ん で 、 「 共 存 」 し な が ら 生 き る と い う メ ッ セ ー ジ を 受 け 取 り ま し た 。 ぼ く は 「 大 造 じ い さ ん と が ん 」 の 話 の 中 で 、 い ま い ま し く 思 っ て い た 残 雪 を 最 後 は が ん の 英 雄 と よ ん で い た よ う に 、 認 め た 相 手 が い る か ら 、 気 持 ち や 考 え も 変 わ る こ と が で き る と 思 い ま し た 。 だ か ら 「 共 存 」 す る と い う こ と は 大 切 だ と 思 い ま す 。 図12 本の推薦について 授業前 授業後 33% 34% 24% 39% 15% 24% 27% 4% 本の魅力を友達に薦めようと思いますか ア 思う イ どちらかといえば思う ウ どちらかといえば思わない エ 思わない N=34 図11 本のショーウィンドウの内容

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〈参考文献〉 水戸部修司著 2013 『小学校国語科 授業&評価パーフェクトガイド』 明治図書 文部科学省 2013 『言語活動の充実に関する指導事例集~思考力,判断力,表現力等の育成に向けて~』 教育出版 鹿毛雅治・奈須正裕編 2012 『学ぶこと教えること』 金子書房 有元秀文著 2012 『まともな日本語を教えない勘違いだらけの国語教育』 合同出版 水戸部修司監修 2012 『国語 言語活動 実践アイディア集』 小学館 水戸部修司編 2011 『小学校国語科 言語活動パーフェクトガイド5・6年』 明治図書 国立教育政策研究所 2010 『評価規準作成のための参考資料【小学校編】』 田近洵一・井上尚美編 2010 『国語教育指導教育用語辞典』 教育出版 文部科学省 2010 『言語活動の充実に関する指導事例集【小学校版】』 文部科学省 2008 『小学校学習指導要領』 東京書籍 文部科学省 2008 『小学校学習指導要領解説 国語編』 東洋館出版 有元秀文著 2008 『必ず「PISA型読解力」が育つ七つの授業改革』 森山卓郎編 2007 『「言葉」考える読解力-理論&かんたんワーク-』 明治図書 〈参考URL〉 文化審議会答申 2004 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/toushin/04020301.htm (2013/10/25アクセス)

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参照

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