シムビコートタービュヘイラー 30 吸入、同 60 吸入
平成 21 年 10 月承認 [販売名] シムビコートタービュヘイラー 30 吸入、同 60 吸入 [一般名] ブデソニド・ホルモテロールフマル酸塩水和物 [申請者] アストラゼネカ株式会社 [申請年月日] 平成 19 年 5 月 17 日 [剤型・含量] 1 回吸入量中にブデソニド 160μg 及びホルモテロールフマル酸塩水和物 4.5μg を含有する定量式吸入用散剤 [申請区分] 医療用医薬品(2)新医療用配合剤 [特記事項] なし [審査担当部] 新薬審査第四部審議結果報告書 平成 21 年 9 月 8 日 医薬食品局審査管理課 [販売名] シムビコートタービュヘイラー 30 吸入 及び同タービュヘイラー 60 吸入 [一般名] ブデソニド・ホルモテロールフマル酸塩水和物 [申請者] アストラゼネカ株式会社 [申請年月日] 平成 19 年 5 月 17 日 [審査結果] 平成 21 年 8 月 28 日に開催された医薬品第一部会において、本品目 を承認して差し支えないとされ、薬事・食品衛生審議会薬事分科会に報告 することとされた。 なお、本品目は生物由来製品及び特定生物由来製品に該当せず、再 審査期間は 6 年とし、原体は劇薬、製剤は毒薬又は劇薬に該当しないと された。
審査報告書
平成 21 年 8 月 11 日 独立行政法人医薬品医療機器総合機構
承認申請のあった下記の医薬品にかかる医薬品医療機器総合機構での審査結果は、以下のと おりである。
審査結果 平成 21 年 8 月 11 日 [販売名] シムビコートタービュヘイラー 30 吸入、同 60 吸入 [一般名] ブデソニド・ホルモテロールフマル酸塩水和物 [申請者] アストラゼネカ株式会社 [申請年月日] 平成 19 年 5 月 17 日 [特記事項] なし [審査結果] 提出された資料から、気管支喘息に対する本剤の有効性及び安全性が 示されたと判断する。 有効性については、国内臨床試験成績等から示されたと判断する。安 全性については、動悸、振戦等の β2刺激薬のクラスエフェクトと考えられ る有害事象の発現が用量依存的に認められていること、国内臨床試験に おいて予定最高用量である本剤 1280/36μg/日の長期投与時のデータ は限られていることなどから、特に高用量長期使用時の全身性の影響等 について、製造販売後調査の中でさらに確認する必要があると考える。 以上、医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本品目については、下記の効能・効果 及び用法・用量で承認して差し支えないと判断した。 [効能・効果] 気管支喘息(吸入ステロイド剤及び長時間作動型吸入 β2刺激剤の併用 が必要な場合) [用法・用量] 通常、成人には、1 回 1 吸入(ブデソニドとして 160μg、ホルモテロールフ マル酸塩水和物として 4.5μg)を 1 日 2 回吸入投与する。なお、症状に応 じて増減するが、1 日の最高量は 1 回 4 吸入 1 日 2 回(合計 8 吸入:ブデ ソニドとして 1280μg、ホルモテロールフマル酸塩水和物として 36μg)ま でとする。
審査報告(1) 平成 21 年 6 月 30 日作成 1. 申請品目 [販売名] シムビコートタービュヘイラー 30 吸入、同 60 吸入 [一般名] ブデソニド・ホルモテロールフマル酸塩水和物 [申請者] アストラゼネカ株式会社 [申請年月日] 平成 19 年 5 月 17 日 [剤型・含量] 1 回吸入量中にブデソニド 160μg 及びホルモテロールフマル酸塩水和物 4.5μg を含有する定量式吸入用散剤 [申請時の効能・効果] 気管支喘息 [申請時の用法・用量] 通常、成人には、1 回 1 吸入(ブデソニドとして 160μg、ホルモテロールフ マル酸塩水和物として 4.5μg)を 1 日 2 回吸入投与する。なお、症状に応 じて増減するが、1 日の最高量は 1 回 4 吸入 1 日 2 回(合計 8 吸入:ブデ ソニドとして 1280μg、ホルモテロールフマル酸塩水和物として 36μg)ま でとする。 [特記事項] なし 2. 提出された資料の概略及び医薬品医療機器総合機構(以下、「機構」)における審査の概要 本申請において、申請者が提出した資料及び機構からの照会事項に対する申請者の回答の概 略は、下記のようなものであった。 2-1. 起原又は発見の経緯及び外国における使用状況等に関する資料 シムビコートタービュヘイラー(本剤)は、ステロイド薬であるブデソニドと長時間作動型 β2刺激 薬(LABA)であるホルモテロールフマル酸塩水和物(ホルモテロール)を有効成分とし、アストラ社 (現アストラゼネカ社)で開発された喘息治療配合剤(連用式吸入用散剤)である。 アストラ社(現アストラゼネカ社)により開発されたブデソニドの吸入製剤であるパルミコートタービ ュヘイラー(PT)は、2009 年 5 月現在、気管支喘息の適応で本邦を含む 105 ヵ国*1で承認されて いる(本邦では 1999 年 6 月承認)。また、PT と同一の吸入器を用いたホルモテロールの吸入製剤 である Oxis Turbuhaler(OT)は、本邦では未承認であるが、2009 年 5 月現在、気管支喘息の適応 で 67 ヵ国で承認されている。本邦においても気管支喘息に対する OT の開発が進められていた
が、□□□。なお、本邦では、ホルモテロールの吸入製剤は承認されていないが、山之内製薬(現 アステラス製薬)により開発された錠剤及びドライシロップ(「アトック」)が気管支喘息等を適応症とし て 1986 年より市販されている。 本剤は、2000 年 8 月にスウェーデンで初めて承認され、2009 年 4 月現在、気管支喘息の適応 で欧州等 105 ヵ国で承認されている。また、シムビコートの加圧式定量噴霧吸入製剤(pMDI)も米 国等 15 ヵ国で承認されている。 本邦においては、本剤の臨床開発は 20□□□年より開始され、今般、ホルモテロール吸入剤単 剤での試験も含む国内臨床試験成績等に基づき、本剤の気管支喘息に対する有効性及び安全性 が確認されたとして、新医療用配合剤としての製造販売承認申請が行われた。 2-2. 品質に関する資料 (1) 提出された資料の概略 1) 原薬 ブデソニドは日本薬局方外医薬品規格収載品であり、本剤に使用されるブデソニドの原薬は、 既承認品目である PT 及びパルミコート吸入液の原薬と同一である。また、ホルモテロールは日本 薬局方収載品であり、機構は、提出された資料に基づいて、その製造方法及び安定性について特 段の問題はないものと判断した。 2) 製剤 本剤は、微細化されたブデソニド、ホルモテロール及び乳糖水和物を含有する粉末吸入製剤で あり、PT 及び OT の処方及び製造方法に基づいて製剤開発が行われた。本邦では、マウスピース から放出される薬物量(delivered dose)としてブデソニド 160μg 及びホルモテロール 4.5μg を含 有し、吸入回数が 30 回及び 60 回の 2 種類の製剤が申請製剤とされている。本剤と本邦既承認で ある PT との製剤設計上の相違は、①PT では表示投与量は metered dose(吸入器内の分量ユニ ットで量りとられる量)により規定されるのに対し、本剤では delivered dose により規定される、②PT が添加剤を含有しないのに対し、本剤は賦形剤として乳糖水和物を含有する、③本剤と PT の吸 入器の基本的な機能及び構造は同じであるが、本剤では、容器経路内への薬剤付着の改善、マ ウスピース、残量を示すインジケーターの改良等が施されていることである(下表参照)。 表 1 本剤、PT、OT の放出薬物量、製剤設計の比較 PT 200μg (本邦) Oxis Turbuhaler 本剤 ブデソニド metered dose 200μg - 180μg †1 delivered dose 140μg - 160μg
PT 200μg (本邦) Oxis Turbuhaler 本剤 ホルモテロール metered dose - 6μg 5μg †1 delivered dose - 4.5μg 4.5μg 添加剤 無 乳糖水和物 乳糖水和物 吸入器 従来型 従来型 改良型
†1 改良型では、マウスピースが取り外せない構造のため metered dose は測定できない。delivered dose は metered dose の約 90%と推定さ れている。 吸入用散剤の理想的な空気力学径は 0.5 ~ 5μm とされていることから、ブデソニド及びホルモ テロールの質量平均粒子径は 3μm 以下となるよう微細化されている。また、原薬と乳糖水和物の 混合物については、粉体流動性を高めるためスフェロイド化とよばれる造粒工程を経ている。製剤 特性として、表示吸入回数中の薬剤放出量、使用開始時と使用終了時付近における□□□、□□ □を変動させた場合の□□□、□□□を変動させた場合の□□□、□□□を変動させた場合の□ □□、充てん量について検討が行われている。 製剤の製造は、第一工程(□□□)、第二工程(□□□の混合)、第三工程(□□□)、第四工程 (□□□)、第五工程(□□□の混合)、第六工程(□□□)、第七工程(充てん・組立て)及び第八 工程(包装・表示・保管・試験)からなり、□□□工程は重要工程と位置づけられている。また、□□ □は重要中間体とされ、□□□が管理されている。 製剤の規格及び試験方法として、性状、確認試験(IR)、吸入量試験(吸入量均一性試験<ブデ ソニド:UV 法、ホルモテロール:HPLC >、平均吸入量)、微細粒子量試験(マルチステージリキッ ドインピンジャー)、定量法(HPLC)が設定されている。□□□、□□□は、検討されたが規格及び 試験方法として設定されていない。 製剤の安定性については、実生産スケールで製造された 30 吸入製剤及び 60 吸入製剤を用い て、長期保存試験(25℃/60%RH、暗所、24 カ月)、中間的試験(30℃/75%RH、暗所、24 カ月)、 加速試験(40℃/75%RH、暗所、6 カ月)及び苛酷試験(光<白色蛍光ランプ 120 万 lx・hr 及び近 紫外蛍光ランプ 200W・h/m2>)が実施された。これらの試験では、性状、確認試験、吸入量試 験、微細粒子量試験、定量法、純度試験、微生物限度試験が試験項目とされた。 長期保存試験においては、ホルモテロール由来の類縁物質である peakC の増加(30 及び 60 吸入計 6 ロット中の最大値<以下同様>□□□%)が認められた。中間的試験においては、ホル モテロール由来の類縁物質である D2537 及び PeakC の増加(□□□%及び□□□%)が認めら れ、加速試験においても D2537 及び PeakC の増加(□□□%及び□□□%)が認められた。苛 酷試験(光)では、曝光条件下における変化は暗所下と同様にわずかであった。製剤の有効期間 については、30 吸入製剤及び 60 吸入製剤ともに長期保存試験の結果に基づいて室温で 24 カ月
(2) 審査の概略
1) 本剤のブデソニドの表示投与量について
機構は、PT では表示投与量を metered dose で規定しているのに対し、本剤では delivered dose により規定する理由について説明を求めた。 申請者は、欧州における開発において、PT の表示投与量及び製品規格には metered dose を 採用したが、1995 年にヨーロッパ薬局方への乾燥粉末吸入剤の収載に際して delivered dose を規 格とすることで統一されたことに伴い、それ以降に開発された OT 及び本剤については、delivered dose を表示投与量及び製品規格として採用していること、また、改良型吸入器はマウスピースを取 り外せない構造であり metered dose の測定は不可能であることから、本邦においても本剤の表示 投与量及び製品規格として delivered dose を採用した旨を説明した。なお申請者は、本邦におい ては、PT の表示投与量として metered dose を採用しているが、製品規格としては delivered dose を採用していることを併せて説明した。 機構は、本邦における PT 200μg 製剤のブデソニドの delivered dose が 140μg であるにもかか わらず、本剤のブデソニドの delivered dose を 160μg として製剤開発を行った理由について説明 を求めた。 申請者は、欧州における本剤の製剤開発に際しては、製品規格として delivered dose が採用さ れている米国の市販 PT 製剤*2の規格値である□□□μg に基づいて、ブデソニドの delivered dose が設定されたことを説明した。その上で申請者は、本邦の PT 200μg 製剤の一吸引量試験及び本 剤の吸入量試験におけるブデソニドの平均吸入量の規格値はそれぞれ□□□~□□□μg 及び □□□~□□□μg であり、規格値幅はほぼ重なっていること、また、ブデソニド 1 日 2 回吸入時 の有効性を比較した海外臨床試験成績(試験 SD-004-0210)に基づき、従来型及び改良型のター ビュヘイラーは臨床的に置き換え可能であると判断されており、海外 SD-039-0349 試験等*3にお いても本剤と PT(欧州市販製剤<本邦市販と同一の製剤>)/OT 併用投与時の有効性及び安全 *2 米国市販製剤は、臨床試験に使用されたロットのブデソニドの実測値に基づき、本邦及び欧州の市販製 剤と比較して delivered dose が若干高く設定されている。また、本邦及び欧州の市販製剤と吸入器の部 品等が若干異なる。なお、米国では 2006 年 7 月に添加剤として乳糖水和物を含有し、改良型吸入器を 使用した Pulmicort Flexhaler が新たに承認されており、当初の PT 製剤は現在では販売されていない。 *3 SD-039-0349 試験においては、中等症以下の気管支喘息患者を対象に本剤 160/4.5μg 2 吸入 bd、 PT 200μg/OT4.5μg 併用 2 吸入 bd 又は PT 200μg 2 吸入 bd を 12 週間投与時の有効性及び安全 性の比較検討が行われ、本剤群及び PT/OT 群はそのまま、PT 群は本剤又は PT/OT に変更してさら に 12 週間投与された。また、SD-039-0689 試験においては、中等症~重症の気管支喘息患者を対象 に本剤 320/9μg 2 吸入 bd、PT 400μg/OT9μg 併用 2 吸入 bd 又は PT400μg 2 吸入 bd を 12 週間 投与時の有効性及び安全性の比較検討が行われた。
性はほぼ同様であることが示されていることから、ブデソニドの delivered dose 140μg と 160μg は 臨床的にはほぼ同用量とみなせると考える旨を説明した。 機構は、PT 200μg 製剤のブデソニドの表示投与量(metered dose である 200μg に基づく)と本 剤の表示投与量(deliverd dose である 160μg に基づく)の相違に伴う、両剤切り替え時の用量誤 認等による医療過誤を防止するため、対策を検討するよう申請者に求めた。 申請者は、①本剤の添付文書において 1 回吸入量の表記が「容器から放出される量」に基づい ている旨を記載するとともに、本剤市販開始にあわせ、PT の添付文書にも、1 回吸入量の表記が 「容器内で量り取られる量」に基づいている旨を追記する予定であること、②医療機関向けの資材 等において、用量の表記として PT では metered dose、本剤では delivered dose が採用されている ことを記載し、あわせて両剤のブデソニドの用量対応表を提示すること、③医師向けの資材等にお いて、PT 200μg 製剤と本剤のブデソニドの delivered dose には若干の差があるが、海外臨床試験 において、本剤及び PT/OT を併用した際の臨床的な有効性及び安全性は同様であることが示さ れている旨を記載することにより、用量表示の誤認による医療過誤、過量・過少投与の防止に努め ることを説明した。なお申請者は、本剤と PT の両剤が販売されている国において、現時点までに 用量表示の誤認による医療過誤は報告されてないことを併せて説明した。 機構は、本剤と PT は相互に切り替えて使用される機会が多いと想定されることから、両剤のブ デソニドの delivered dose は同一とすることが望ましいと考えるが、海外臨床試験(SD-004-0210 試 験、SD-039-0349 試験)の成績に基づけば、両剤のブデソニドの delivered dose の規格値の差が 臨床的有効性及び安全性に与える影響は大きくないと考えられることから、本剤のブデソニドの delivered dose の規格値は許容できるものと判断した。また、両剤の用量表示方法が異なることに ついては、開発の経緯上やむを得ないと考えるが、切り替えに際し両剤のブデソニドの用量関係が 誤認されることがないよう、医療現場に対して徹底した注意喚起を行う必要があると考える。現時点 では、申請者の対応案は妥当なものと考えるが、製造販売後にも医療現場の状況に十分に留意 し、適宜さらなる対策の必要性を考慮する必要があると考える。 2) 本剤の品質について 機構は、製剤の安定性試験においてホルモテロール由来類縁物質の増加が認められていること を踏まえ、当該類縁物質の規格及び試験方法を設定しない妥当性について説明を求めた。 申請者は、30 及び 60 吸入製剤各 3 ロットの長期保存試験 24 カ月におけるホルモテロール由 来類縁物質量の増加は、D2537 で最大□□□%(計 6 ロットの最大値として□□□%)、peakC で 最大□□□%(計 6 ロットの最大値として□□□%)とわずかであること、ホルモテロール原薬の個 々の類縁物質の規格値は 0.5%であるが、当該限度値に近い類縁物質を含有する原薬ロットを使 用した製剤で類縁物質が最大□□□%増加した場合でも、「新有効成分含有医薬品のうち製剤の
不純物に関するガイドライン」 (平成 15 年 6 月 24 日 医薬審発第 0624001 号)に規定される構造 決定の必要な閾値及び安全性確認の必要な閾値である 1.0%を下回ることから、規格の設定は不 要と考えることを説明した。 機構は回答を了承し、製剤の規格、試験方法、貯蔵方法及び有効期間について妥当と判断し た。 2-3. 非臨床に関する資料 <薬理試験成績の概要> (1) 提出された資料の概略 効力を裏付ける試験として、ホルモテロールの抗喘息作用、抗炎症作用、立体異性体及び代謝 物の薬理作用、並びにブデソニド/ホルモテロール併用時の抗喘息作用が検討された。また、副次 的薬理試験として、骨格筋、血漿カリウム値及び血糖値に及ぼすホルモテロールの作用が検討さ れた。ブデソニド/ホルモテロール併用時の安全性薬理試験は実施されていないが、「安全性薬理 試験ガイドライン」 (平成 13 年 6 月 21 日 医薬審発第 902 号)に従い、ラット及びイヌを用いたブ デソニド/ホルモテロール配合薬の単回及び反復吸入投与毒性試験成績に基づいて、安全性薬 理コアバッテリー項目が検討された。なお、薬力学的薬物相互作用試験に該当する試験について は実施されていない。 1) 効力を裏付ける試験 1-1) ホルモテロール A. 喘息モデルにおける抗喘息作用 a. モルモットにおけるヒスタミン誘発気管支収縮の抑制作用及び作用持続時間(4.2.1.1.5) 麻酔モルモット(各群 5 ~ 6 例)にホルモテロール、サルメテロール又はサルブタモールのエア ロゾルを 15 分間吸入投与したところ、ヒスタミン誘発気管支収縮の指標である気道抵抗値は投与 1 時間後において用量依存的に抑制され、最大抑制作用を示した最低濃度はそれぞれ 0.03、0.1 及び 1mg/mL であった。また、ホルモテロール 0.03mg/mL 及びサルメテロール 0.05mg/mL による 抑制作用は投与 5 時間後においても認められたが、サルブタモール 1mg/mL による抑制作用は 投与 1 時間後までであった。 b. イヌにおけるヒスタミン誘発気管支収縮の抑制作用(4.2.1.1.6) 麻酔イヌ(各群 3 ~ 4 例)にホルモテロール(3 ~ 100μg/mL)又はサルメテロール(10 ~ 3000μg/mL)のエアロゾルを、作用が飽和に達するまで 60 分間間隔でヒスタミン誘発前に 100 吸 入ずつ累積的に投与したところ、ヒスタミン誘発気管支収縮は用量依存的に抑制され、気道抵抗値
の増加に対する ED50値はそれぞれ 4 及び 98μg/mL、動肺コンプライアンスの低下に対する ED50 値はそれぞれ 10 及び 224μg/mL であった。なお、ホルモテロールを累積的に 100μg/mL 吸入 投与した 3 例中 2 例で、平均血圧の低下を伴う頻脈が認められた。 B. 抗炎症作用 a. スーパーオキシド産生に及ぼす作用(4.2.1.1.4) 健康ヒト末梢血から単離した好酸球を正常ヒト気管支上皮(NHBE)細胞培養系から調製した条件 培地で刺激することによって産生されるスーパーオキシドは、ホルモテロール(0.5×10-10~ 0.5×10-7mol/L)の添加により濃度依存的に抑制された。 b. In vivo のモルモット気管における血漿漏出の抑制作用(4.2.1.1.7) 麻酔モルモット(各群 6 ~ 8 例)の気管内にホルモテロール 10-9~ 10-7mol/L(総用量 0.1 ~ 10pmol)又はサルブタモール 10-6~ 10-4mol/L(総用量 0.1 ~ 10nmol)を 5 分間灌流したところ、 ホルモテロール 1 及び 10pmol、サルブタモール 1 及び 10nmol により、投与 10 分後におけるブラ ジキニン誘発血漿漏出は溶媒対照群と比べ有意に抑制された。投与 300 分後においてもホルモ テロールの抑制作用は持続していたが、サルブタモールの作用は消失していた。 C. 立体異性体の薬理作用 a. モルモット摘出気管の電気刺激収縮に対する抑制作用(4.2.1.1.1) モルモット摘出気管の外側及び内側にホルモテロール(R,R)-体又は(S,S)-体を累積添加したと ころ、迷走神経刺激による気管収縮は濃度依存的に抑制され、pEC50(-logEC50)値(平均値±標 準誤差、以下同様)は、外側添加ではそれぞれ 9.89±0.06 及び 6.42±0.14、内側添加ではそれ ぞれ 8.65±0.13 及び 5.45±0.15 であった。なお、(S,S)-体が神経刺激反応を増強する徴候は認 められなかった。 b. モルモット摘出気管のカルバコール誘発収縮に対する抑制作用(4.2.1.1.2) モルモット摘出気管にホルモテロール(R,R)-体又は(S,S)-体を累積添加したところ、カルバコー ル 0.1μmol/L 誘発収縮は濃度依存的に抑制され、pEC50値はそれぞれ 9.89±0.04 及び 6.96 ±0.02 であった。また、(S,S)-体 10nmol/L は、(R,R)-体の pEC50値に影響を及ぼさなかった。 c. モルモット摘出気管のメタコリン誘発収縮に対する抑制作用(4.2.1.1.3) モルモット摘出肺にホルモテロールのラセミ体又は(R,R)-体のエアロゾル(10μmol/L)を 5 分間
1.35nmol による気管収縮に対しても抑制作用が認められた。通気 20 分後においても明らかな気 管収縮抑制作用が認められ、その後徐々に消失した。 一方、(S,S)-体はメタコリンによる気管収縮に対して有意な抑制作用を示さず、メタコリン刺激に 対する反応性も増強しなかった。 以上の結果より申請者は、ホルモテロールの気管支拡張作用は主に(R,R)-体によるものであ り、(S,S)-体には気管支拡張作用がほとんどなく、(S,S)-体により(R,R)-体の気管支拡張作用が減 弱することや気道過敏反応が誘発される可能性もないと考えられると説明している。 D. 代謝物の薬理作用 a. モルモット摘出気管のカルバコール誘発収縮に対する抑制作用(4.2.1.1.8) モルモット摘出気管に、ホルモテロールの O-脱メチル体(Met 1)及び脱ホルミル体(Met 2)を累 積添加したところ、カルバコール 0.1μmol/L 誘発収縮は濃度依存的かつ完全に抑制され、pEC50 値はそれぞれ 9.59±0.06 及び 7.35±0.10 であった。
申請者は、代謝物 Met 1 は強力な平滑筋弛緩作用を示したが、in vivo で生成する Met 1 は微 量であるため(4.2.2.4.1、4.2.2.4.3、4.2.2.4.4)、ホルモテロールの吸入による気管支拡張作用への 寄与はないと考えられると説明している。 1-2) ブテソニド/ホルモテロール併用 A. ヒト気管支上皮細胞における GM-CSF 及び IL-8 産生の抑制作用 a. ブデソニド及びホルモテロールを単独又は同時添加時の GM-CSF 及び IL-8 産生の抑制作用 (4.2.1.1.9) NHBE 細胞を TNF-α で刺激した際に誘発される GM-CSF 及び IL-8 産生に対するブデソニ ド、ホルモテロールの各単独添加時又は同時添加時の抑制作用が検討された。TNF-α 誘発 GM-CSF 量は、ブデソニド 10-8mol/L 単独添加群では TNF-α 対照群と比較して約 40%、ホルモテロ ール 10-10~ 10-6mol/L 単独添加群では約 50 ~ 55%、ブデソニド/ホルモテロール 10-8/10-10~ 10-6mol/L 同時添加群では約 75%減少し、同時添加群では各単独添加群と比較しても有意な減 少が認められた。TNF-α 誘発 IL-8 産生量は、ブデソニド 10-8mol/L 単独添加群では TNF-α 対照群と比較して約 45%減少し、ホルモテロール 10-10~ 10-6mol/L 単独添加群では逆に約 35% 増加したが、ブデソニド/ホルモテロール 10-8/10-10~ 10-6mol/L 同時添加群ではブデソニドによ る IL-8 産生抑制作用は維持されており、ホルモテロールの影響は認められなかった。また、糖質コ ルチコイド受容体(GR)拮抗薬である RU486 を用いた検討により、ホルモテロールの作用は GR を 介するものではないことが示された。
b. ブデソニド及びホルモテロールを同時添加時の GM-CSF 産生の抑制作用(4.2.1.1.10) NHBE 細胞を TNF-α で刺激した際に誘発される GM-CSF 産生に対するブデソニド/ホルモテ ロール同時添加時の抑制作用に両薬の濃度比が及ぼす影響が検討された。用いたブデソニド/ホ ルモテロールの濃度は 10-6/10-6、10-8/2.8×10-10及び 10-9/2.8×10-11mol/L であり、濃度比は 1:1 及び本剤の配合比である 35:1 とされた。10-6mol/L の各単独添加群では、TNF-α 誘発 GM-CSF 産生の抑制率は TNF-α 添加 24 ~ 72 時間後で約 80%から約 60%まで経時的に低下した が、10-6/10-6mol/L 同時添加群では TNF-α 添加 72 時間後まで 90 ~ 95%の抑制率が維持さ れた。濃度比 35:1 の同時添加群(10-8/2.8×10-10及び 10-9/2.8×10-11mol/L)においても、 10-6/10-6mol/L 同時添加群と同程度の GM-CSF 産生抑制作用が認められ、その作用は TNF-α 添加 72 時間後まで持続した。 B. 糖質コルチコイド受容体の活性化に及ぼすホルモテロールの作用(4.2.1.1.11) NHBE 細胞の培地に、10-12~ 10-6mol/L のブデソニド、ホルモテロール及びサルメテロールを それぞれ単独で、又はブデソニド及びホルモテロールを同時に添加したときの GR の活性化に対 する作用が検討された。ブデソニド単独添加群では、添加 15 分以内に用量依存的な GR 核内移 行の促進作用が認められ、この作用は 4 時間持続したが、6 時間後にはブデソニド非添加時のレ ベルに戻った。ホルモテロール及びサルメテロールの単独添加群では、GR 核内移行の促進作用 は認められなかった。また、ブデソニド単独添加群では、用量依存的な糖質コルチコイド応答エレ メント(GRE)転写活性の増加及び酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)誘発 TPA 応答エレメント (TRE)転写活性の減少が認められた。ホルモテロール単独添加群では、GRE 転写活性の増加は 認められなかったが、PMA 誘発 TRE 転写活性及び TNFα 誘発 GM-CSF 産生の減少が認めら れた。ブデソニドとホルモテロールを同時添加したとき、ブデソニドによる GR 活性化及び GR 核内 移行促進作用に対するホルモテロールの影響は認められなかった。siRNA により GR 発現を抑制 したところ、ブデソニドの抗炎症作用は遮断されたが、ホルモテロールの抗炎症作用に対する影響 は認められなかった。 C. ラットアレルギーモデルにおける気管支収縮及び肺浮腫の抑制作用 a. ブデソニド及びホルモテロールを単独又は併用投与時の抑制作用(4.2.1.1.12) 卵白アルブミン(OA)により能動感作した雄性ラット(各群 4 ~ 10 例)を用いて、メタコリン誘発肺 浮腫及び気道炎症に対するブデソニド、ホルモテロールの各単独投与時又は併用投与時の作用 が検討された。被検薬の投与量は、試験 A ではブデソニド 3μg/kg、ホルモテロール 0.086μg/ kg、並びにブデソニド/ホルモテロール併用 1/0.03、3/0.086 及び 10/0.29μg/kg、試験 B ではブ デソニド 10、30 及び 100μg/kg、ホルモテロール 0.29、0.86 及び 2.86μg/kg、並びに併用
10/0.29、30/0.86 及び 100/2.86μg/kg とされた。試験開始 0 及び 7 日目にラットを OA 感作後、 14 ~ 21 日目に被検薬が 1 日 1 回連日気管内投与され、14 及び 21 日目には被検薬投与 2 時間 後に抗原曝露が行われた。最終抗原曝露 24 時間後にメタコリン刺激が加えられ、肺重量、摘出肺 ガス容積(ELGV)、肺胞洗浄液(BALF)中の総白血球数及び IL-1β 濃度が測定された。 肺重量は、3/0.086 及び 30/0.86μg/kg 併用群において同用量のブデソニド単独群と比較して 有意な低値を示し、30/0.86 及び 100/2.86μg/Kg 併用群においては同用量のホルモテロール単 独群と比較して有意な低値を示した。溶媒対照群との比較では、ブデソニド単独群、併用群ではい ずれの用量でも有意差が認められ、ホルモテロール単独群では 0.29μg/kg 及び 2.86μg/kg を除 き有意差が認められた。 摘出肺ガス容積(ELGV)は、30/0.86μg/kg 併用群のみで同用量の各単独群と比較して有意な 減少が認められた。溶媒対照群との比較では、併用群の 3/0.086、10/0.29(試験 A)、30/0.86 及 び 100/2.86μg/kg で有意差が認められ、各単独群の低用量では有意差はなく、ブデソニド 100μg/kg、ホルモテロール 2.86μg/kg のみで有意差が認められた。 BALF 中の総白血球数は、3/0.086 及び 100/2.86μg/kg 併用群で、同用量のブデソニド単独 群と比較して有意な減少が認められ、100/2.86μg/kg 併用群については同用量のホルモテロー ル単独群と比較しても有意な減少が認められた。また、BALF 中 IL-1β 濃度は、30/0.86 及び 100/2.86μg/kg 併用群で、同用量のブデソニド単独群と比較して有意な減少が認められた。溶媒 対照群と各投与群との比較では、白血球数及び IL-1β 濃度のいずれにおいても用量間で一定の 傾向は認められなかった。 b. 固定用量又は調整用量のブデソニド/ホルモテロール併用による気管支収縮及び肺浮腫の抑 制作用(4.2.1.1.13) OA により能動感作した雄性ラット(各群 12 例)を用いて、ブデソニド、ホルモテロールのいずれ かの用量を抗原曝露時に調整することによる、両薬併用時の気道収縮及び肺浮腫抑制作用への 影響が検討された。試験開始 0 及び 7 日目にラットを OA 感作後、13 ~ 21 日目に被検薬が 1 日 1 回連日気管内投与され、14 及び 21 日目には被検薬投与 30 分前に抗原曝露が行われた。被検 薬投与群として、ブデソニド/ホルモテロール 1/0.028μg/kg を連日投与する群(低用量固定群)、 10/0.28μg/kg を連日投与する群(高用量固定群)、低用量(1/0.028μg/kg)を基本とした上で、 14、21 日の抗原曝露後の投与量を両薬ともに増量し 10/0.28μg/kg とする群(BH/FH 群)、ホル モテロールのみ増量し 1/0.28μg/kg とする群(BL/FH 群)、ブデソニドのみ増量し 10/0.028μg/ kg とする群(BH/FL 群)、抗原曝露前後(13 及び 14 日、20 及び 21 日)の投与量を両薬ともに増 量する群(BH/FH2 群)、ホルモテロールのみ増量する群(BL/FH2 群)が設定された。最終抗原曝 露 24 時間後にメタコリン刺激が加えられ、肺重量、摘出肺ガス容積(ELGV)、肺胞洗浄液(BALF) 中の総白血球数が測定された。
BH/FH 群は、低用量固定群、BL/FH 群及び BH/FL 群と比較して OA 誘発 ELGV 増加を有意 に抑制したが、高用量固定群又は BH/FH2 群との比較では有意差は認められなかった。また、BH/ FH 群は、低用量固定群、BL/FH 群、BH/FL 群及び BL/FH2 群と比較して OA 誘発肺重量増加 を有意に抑制したが、高用量固定群又は BH/FH2 群との比較では有意差は認められなかった。 BALF 中の白血球数増加は、いずれの投与群間でも有意差は認められなかった。 以上より申請者は、BH/FH 群において、抗原曝露時に低用量を投与した群と比較して ELGV 及び肺重量の増加が有意に抑制されたこと、また、総投与量の 3.3 倍に相当する用量を投与した 高用量固定群と比較して、ELGV、肺重量及び BALF 中白血球数の増加が同程度以上に抑制さ れたことから、抗原曝露時に両薬を増量する投与方法は、気道の過敏反応及び炎症の抑制に有 効であることが示唆されたと説明している。また、本試験において、喘息の症状に応じて本剤の用 量を調整した投与法(1 ~ 4 吸入)により、一定の高用量(2 吸入)を投与した場合と同程度の有効 性が示され、総投与量を抑えた喘息管理が可能であることが示唆された臨床試験成績(Buhl R et al.Curr Med Res Opin 20:1209-1220,2004)と一致する結果が得られたと説明している。
D. 気管支拡張作用と耐性発現(4.2.1.1.14) ホルモテロールに対する耐性の発現がブデソニドにより抑制できるか検討するため、雄性モルモ ットにブデソニド 4.5mg/kg 及びホルモテロール 75μg/kg をそれぞれ単独又は併用して 1 日 2 回 6 日間反復吸入投与後に摘出した肺及び気管を用いて、ex vivo におけるホルモテロールのカル バコール誘発気管収縮抑制作用、並びに肺組織の β 受容体密度(Bmax)が検討された。 乳糖が前投与された対照群において、カルバコール 0.1μmol/L 誘発収縮はホルモテロールの 累積添加により濃度依存的かつ完全に抑制され、EC50値は 0.3nmol/L であった。ホルモテロール 単独の前投与により、濃度反応曲線は高濃度方向に 6 倍シフトしたが、最大反応に変化は認めら れず、ホルモテロールの前投与による反応性の低下に対して、ブデソニドの併用前投与は影響を 及ぼさなかった。また、ブデソニド単独の前投与はホルモテロールの気管収縮抑制作用に影響を 及ぼさなかった。 カルバコール濃度を 1μmol/L とし、気管収縮を増強しても、対照群の気管収縮はホルモテロー ルの累積添加によりほぼ完全に抑制され EC50値は 1.6nmol/L であった。この条件では、ホルモテ ロール単独の前投与により、濃度反応曲線は高濃度方向に 3 倍シフトし、最大抑制作用は約 10% 低下した。なお、ブデソニドの前投与はホルモテロールの気管収縮抑制作用に影響を及ぼさなか った。 肺組織の Bmaxは、ホルモテロール単独前投与及びブデソニド/ホルモテロール併用前投与によ り、対照群と比較して約 35%減少し、ホルモテロールによる受容体数の減少は、ブデソニドを併用
した場合でも阻害されなかった。また、ブデソニド単独の前投与による Bmaxへの影響は認められな かった。 2) 副次的薬理試験 2-1) ホルモテロール A. 骨格筋に及ぼす作用(4.2.1.1.2) モルモット摘出ヒラメ筋にホルモテロール(R,R)-体を累積添加したところ、ヒラメ筋における軽度 のテタニー性収縮は濃度依存的に抑制され、pEC50値は 9.26±0.08 であった。 B. 血漿カリウム値及び血糖値に及ぼす作用(4.2.1.2.1) イヌ(各群雌雄各 1 例)に、ホルモテロール(0.63 及び 2.8μg/kg/日)を乳糖添加乾燥粉末とし て 4 日間反復吸入投与したとき、ホルモテロールの血漿中濃度は、吸入投与 10 分以内に最高に 達した後、6 ~ 24 時間で消失し、この血漿中濃度変化に対応して用量依存的な頻脈、高血糖及 び血漿カリウム値低下が認められた。投与開始日の Cmaxは、0.63 及び 2.8μg/kg/日投与群でそ れぞれ 0.21 ~ 0.22 及び 0.62 ~ 0.83nmol/L であった。心拍数は最大で 221 回/分まで増加、血 糖値は最大で 10.1mmol/L まで上昇、血漿カリウム値は最大で 1.6mmol/L 低下した。なお、低カリ ウム血症を示す明らかな一般状態及び心不全の徴候は認められなかった。 (2) 審査の概略 機構は、ブデソニドとホルモテロールの併用により相乗効果が期待される薬理作用について公表 文献等も踏まえて説明するとともに、臨床用量でも期待し得る作用であるのか考察するよう求めた。 申請者は、気道炎症に関連して、①ヒト肺線維芽細胞における VCAM-1 の up-regulation(ブデ ソニド/ホルモテロールの抑制作用発現濃度又は用量<以下同様>、10-10/10-10mol/L) < Spoelstra FM et al.Thorax 57:237-241,2002 >、②ヒト好酸球におけるスーパーオキシド産生抑 制(10-10/10-9mol/L) < Miller-Larsson A et al.Eur Respir J 18:48s,2001 >、③ラットの Sephadex 誘発炎症性肺浮腫(4.3/0.126μg/kg) < Lindahl M et al.Eur Respir J 20:387s,2002 >、④ラッ トアレルギーモデルにおける肺浮腫(10/0.29μg/kg) < 4.2.1.1.12 >、気道リモデリングに関連し て、⑤培養ヒト肺線維芽細胞におけるプロテオグリカン産生(10-8/10-10mol/L) < Todorova L et al.Am J Respir Cell Mol Biol 34:92-100,2006 >、気道収縮に関連して、⑥ラットアレルギーモデ ルにおけるメタコリン誘発気道収縮(10/0.29μg/kg) < 4.2.1.1.12 >に対する、ブデソニド/ホルモ テロール併用による相乗的な抑制作用が認められていること、①~③及び⑤については、薬理作 用の発現濃度又は用量は、両薬が臨床効果を示す際の気道における濃度の推定値(ブデソニド/ ホルモテロール:10-8/10-10~ 10-6mol/L) < Korn SH et al.Eur Respir J 17:1070-1077,2001 >又は本剤の予定する一回用量(160/4.5μg)を患者体重 60kg として換算した値(2.7/0.075μg/
kg)とほぼ同程度又は低かったことから、臨床用量でも相乗効果が期待できると考える旨を説明し た。また、その他、メタコリン誘発気道収縮(3/0.08μg/kg)、気道炎症に関連する NHBE 細胞にお ける GM-CSF 産生(10-8/10-10mol/L、10-9/2.8×10-11mol/L) < 4.2.1.1.9、4.2.1.1.10 >、リモデ リングに関連するヒト気管支平滑筋細胞増殖(10-10/10-12mol/L) < Roth M et al.Lancet 360: 1293-1299,2002 >等においても、臨床用量付近でブデソニド/ホルモテロール併用により各単独 時よりも強力な抑制作用が認められており、気道収縮、気道炎症及びリモデリングの各病態に対し て、併用により各単独投与時に比べ大きなベネフィットが得られると考える旨を説明した。 機構は、糖質コルチコイドと β2刺激薬による相乗作用の機序の 1 つとして、β2刺激薬が GR の核内移行を促進させることが提唱されているのに対し、初代培養 NHBE 細胞を用いた検討では ホルモテロール添加により GR の核内移行の促進が認められなかったことについて考察を求めた。 申請者は、ホルモテロールを含む β2刺激薬は、初代培養のヒト肺線維芽細胞、気管支平滑筋 細胞及び血管平滑筋細胞等において、GR を核内に移行させ、DNA 上の GRE に結合させること が示されており、β2刺激薬による GR 活性化の機序として、β2刺激薬により活性化されたプロテ インキナーゼ A(PKA)による GR のリン酸化状態の変化が、糖質コルチコイドと GR との結合を促進 し、GR を活性化して NF-κB との結合を促進すること(Doucas V et al.Proc Natl Acad Sci USA 97:11893-11898,2000)等が提唱されていることを説明した。その上で申請者は、NHBE 細胞を用 いた試験では、ホルモテロールは GM-CSF 産生を抑制したが、この抑制は、siRNA により GR mRNA の大部分をノックアウトした場合にも持続し、GR 拮抗薬 RU486 によっても阻害されず、NHBE 細胞 におけるホルモテロールの抗炎症作用は GR 活性化によるものではないと考えられること、また、 NHBE 細胞においてホルモテロール及びサルメテロールはブデソニドによる GR の核内移行及び GR 活性化に影響を及ぼさなかったため、前述のような GR のリン酸化状態に影響を及ぼすとの機 序は考え難いこと、一方、β2刺激薬は転写因子 cAMP 応答エレメント結合タンパク(CREB)を活 性化し、CREB は GR と同様に炎症促進性の転写因子である NF-κB 及び AP-1 と相互作用す る、又はそれらのシグナル伝達を阻害することにより抗炎症作用を示すという機序が報告されてお り(Barnes PJ.Eur Respir J 19:182-191,2002)、実際に、ホルモテロールによる TNFα 誘発 GM-CSF 産生抑制作用は PKA インヒビターにより阻止されることが示されていること(Lovén J et al.Eur Respir J 30:848-856,2007)を踏まえると、CREB の活性化が気管支上皮細胞における β2刺激薬 の抗炎症作用の発現機序の 1 つと推察されることを説明し、GR シグナル伝達に及ぼす β2刺激 薬の作用には、細胞の種類によって異なる機序が関与すると考えられる旨を説明した。 機構は、ブデソニドとホルモテロールの併用による相乗作用の機序等の詳細は明確になってい ないものの、提出された薬理試験成績及び公表文献等により得られている知見を踏まえれば、ブ デソニド/ホルモテロール配合の薬理学的な意義は認められるものと考える。
<薬物動態試験成績の概要> (1) 提出された資料の概略 本申請において、ブデソニド、ホルモテロール及び両成分配合薬の非臨床薬物動態試験成績 が提出された。ブデソニドの薬物動態は PT 等の承認申請時に評価されていること、ホルモテロー ルは日本薬局方収載品であり、国内では経口剤として臨床使用されていることから、本項では、吸 入剤の開発にあたり、追加実施されたホルモテロールの非臨床薬物動態、配合薬の吸入投与によ るトキシコキネティクスについて記述する。 吸入投与においては、ホルモテロール又は配合薬の乾燥粉末が投与された。血漿中ブデソニド は、高速液体クロマトグラフィ・タンデム質量分析法(LC-MS/MS、定量下限:0.025nmol/L)、血漿 中ホルモテロールは LC-MS/MS 及び液体クロマトグラフィ-電気化学検出(定量下限:0.005 ~ 0.50nmol/L)、放射能は液体シンチレーションカウンターにより測定された。 1) 吸収(4.2.2.2.1、4.2.2.4.3、4.2.3.2.2 ~ 4.2.3.2.4、4.2.3.4.1.2、4.2.3.2.7 ~ 8) 1-1) ホルモテロール(4.2.2.2.1、4.2.2.4.3、4.2.3.2.2 ~ 4.2.3.2.4、4.2.3.4.1.2) 雄性マウス(30 例)における3H-標識体 100μg/kg 単回投与時のホルモテロールの消失半減期 は、静脈内投与 6.2 ~ 7.1 時間、経口投与 5.7 ~ 6.4 時間、気管内投与 7.5 ~ 9 時間であり、バ イオアベイラビリティ(BA)は経口投与 15 ~ 16%、気管内投与 52 ~ 61%であった。 雄性ラット(24 例)における3H-標識体 50μg/kg 単回静脈内投与時のホルモテロールの消失半 減期は 1.4 ~ 1.7 時間、全身クリアランスは 3.4 ~ 4.4L/h/kg、分布容積は 7.1 ~ 10.4L/kg であ り、3H-標識体 50μg/kg 単回気管内投与時の t maxは最初の測定時点(5 分)、消失半減期は 1.1 時間、BA は 122%であった。雌雄ラット(各 16 例)にホルモテロール(乾燥粉末)26、128 及び 852μg/kg/日(平均実投与量、以下、乾燥粉末については同様)を 6 カ月間反復吸入投与したと き、tmaxは最初の測定時点(15 分)、消失半減期は約 2 時間であり、Cmaxは、雄でそれぞれ 2.0、 7.0 及び 28.0nmol/L(各時点 1 例の値より算出、以下同様)、雌で 1.6、7.0 及び 23.2nmol/L、 AUC0-5hは雄でそれぞれ 4.11、16.2 及び 51.9nmol・h/L、雌で 3.46、12.4 及び 38.1nmol・h/L で あった。3 カ月間又は 24 カ月間反復吸入投与した毒性試験においても tmaxは最初の測定時点 (0.25 時間又は 0.5 時間)であった。 雌雄イヌ(各 3 例)にホルモテロール(乾燥粉末)0.51、2.8 及び 15μg/kg/日を 22 日間反復吸 入投与したとき、0.51μg/kg/日群の血漿中濃度は、ほぼすべての測定時点で定量下限(0.15nmol/ L)未満であった。2.8 及び 15μg/kg/日群の Cmax は、雄でそれぞれ 0.81±0.19 及び 5.83 ±0.91nmol/L ( 平 均 値 ± 標 準 偏 差 、 以 下 同 様 ) 、 雌 で 0.60±0.21 及 び 4.50±1.35nmol/L 、 AUC0-4hは雄でそれぞれ 1.07(2 例の平均)及び 8.43±0.37nmo・hl/L、雌で 1.10±0.17 及び 7.23 ±1.46nmol・h/L であった。
1-2) ブデソニド/ホルモテロール配合薬(4.2.3.2.7 ~ 8)
雌雄ラット(各 36 例)にブデソニド、ホルモテロール単独又は両成分配合薬(乾燥粉末)を 3 カ月 間反復吸入投与したとき、ブデソニドの Cmaxは 47.7、23.6 及び 43.7nmol/L(ブデソニド 73μg/kg/ 日、ブデソニド/ホルモテロール 11/0.61 及び同 51/2.7μg/kg/日、各時点雌雄別 3 例のプール 試料の平均値、以下同様)、AUC0-24hは 40.2、21.8 及び 37.6nmol・h/L、ホルモテロールの Cmax は 1120、776 及び 1240pmol/L(ホルモテロール 2.3μg/kg/日、ブデソニド/ホルモテロール 11/0.61 及び同 51/2.7μg/kg/日、各時点雌雄別 3 例のプール試料の平均値、以下同様)、AUC0-24hは 1350、886 及び 1640pmol・h/L であった。 雌雄イヌ(各 18 例)にブデソニド、ホルモテロール単独又は両成分配合薬(乾燥粉末)を 3 カ月 間反復吸入投与したとき、ブデソニドの Cmaxは 7.72、0.59、1.82 及び 10.3nmol/L(ブデソニド 48μg/kg/日、ブデソニド/ホルモテロール 2.0/0.11、同 9.8/0.51 及び同 50/2.7μg/kg/日、各時 点雌雄別 3 例のプール試料の平均値、以下同じ)、AUC0-24hは 15.4、1.57、4.31 及び 11.8nmol・ h/L、ホルモテロールの Cmaxは 265、13.8、50.4 及び 272pmol/L(ホルモテロール 2.7μg/kg/日、 ブデソニド/ホルモテロール 2.0/0.11、同 9.8/0.51 及び同 50/2.7μg/kg/日、各時点雌雄別 3 例 のプール試料の平均値、以下同じ)、AUC0-24hは 996、109、366 及び 1120pmol・h/L であった。 以上より、両動物種ともに両成分の吸収は速やかであり、併用投与時にも単独投与と比較して各 薬物の薬物動態は同様であると申請者は説明した。 2) ホルモテロールの分布(4.2.2.2.1、4.2.2.3.1 ~ 3) 雄性ラット(各時点 3 例)への3H-標識体 50μg/kg 気管内投与 5 分後の放射能は、肺及び気 管で最も高く、甲状腺、心臓、下垂体及び腎臓でも高い値であった。肺及び気管中放射能は時間 経過とともに低下、他の組織への広範な放射能の分布が認められたが、中枢神経系では低い値で あった。 有色雄性ラット(6 例)への3H-標識体 2μmol/kg(0.8mg/kg)単回静脈内投与 5 分後には、 3.9nmol/g 以上の放射能が下垂体、松果体、脈絡叢、副腎、網膜色素上皮、腎臓、尿、胆汁及び 消化管内容物で検出された。組織中放射能は経時的に低下したが、メラニン含有組織及び副腎髄 質では投与 2 日後にも高い放射能が認められた。気管内投与時(6 例)には、投与 4 時間まで投 与部位(気管、肺)に高い放射能が認められたが、他の組織への放射能の分布は静脈内投与時と 同様であった。経口投与時(8 例)には、排泄器官以外の組織中放射能は低く、メラニン含有組織 及び副腎髄質においても放射能の残留傾向は認められなかった。 妊娠ラット(5 例)に3H-標識体 2μmol/kg(0.8mg/kg)を静脈内投与したとき、胎児では、眼球の メラニン層に比較的高い放射能が認められたが、その他の組織中放射能は低い値であった。
3H-標識体(3H-R,R 又は3H-S,S を含むラセミ体)0.5nmol をモルモット摘出肺に灌流下で投与 したとき、灌流開始後 80 ~ 120 分の肺組織/還流液中放射能濃度比は、静脈内投与で(R,R)体 16 及び(S,S)体 11、気管内投与で同 26 及び 17 であった。 ラット、ウサギ、イヌ及びヒトにおけるホルモテロール(10、100 及び 500nmol/L)の血漿蛋白非結 合率は 42 ~ 58%でありエナンチオマー間及び動物種間で明らかな差は認められなかった。 3) ホルモテロールの代謝(4.2.2.4.1 ~ 4) マウス、ラット、ウサギ、イヌ及びヒト肝ミクロソームを用いた(R,R)-ホルモテロール(濃度 20μmol/ L)及び3H-標識体(濃度 0.01 及び 1.0μmol/L)のin vitro 代謝、マウスにおける3H-標識体 0.1mg/kg の静脈内、気管内及び経口投与時の尿中代謝物、ラットにおける同 50μg/kg の静脈内 投与時の尿中代謝物、気管内投与時の血漿、尿及び組織中代謝物の検討より、動物及びヒトにお けるホルモテロールの推定代謝経路は図 1 であると申請者は説明した。 図 1 動物及びヒトにおける(R,R)-及び(S,S)-ホルモテロールの推定代謝経路 ホルモテロールはグルクロン酸抱合及び O-脱メチル化を受けた後グルクロン酸抱合を受け、イ ヌ及びヒト、高濃度ではラット及びウサギで脱ホルミル体が認められ、イヌ及びヒトでは極性の低い代 謝物が複数認められた。両エナンチオマーの代謝パターンは類似していたが代謝物の生成量には 動物種で違いが認められた。 3H-標識体 0.5nmol をモルモット摘出肺に灌流下で静脈内又は気管内投与したとき、肺組織及 び還流液中に代謝物は認められなかった。 4) ホルモテロールの排泄(4.2.2.2.1、4.2.2.4.3、4.2.3.5.1.1) 雄性マウス(各 15 例)への3H-標識体(3H-R,R 又は3H-S,S を含むラセミ体)100μg/kg 投与に おいて、糞中放射能は、静脈内投与で(R,R)-体 17%及び(S,S)-体 20%((R,R)-体及び(S,S)-体 の順、投与後 168 時間までの回収率、以下同様)、気管内投与で 15%及び 14%、経口投与で 20%及び 25%であり、尿中放射能は、静脈内投与で 76%及び 74%、気管内投与で 81%及び
83%、経口投与で 79%及び 74%であった。静脈内投与時の未変化体の尿中排泄率に基づき算 出した気管内投与時及び経口投与時の BA は、(R,R)-体でそれぞれ 51.8%及び 15.3%、(S,S)-体でそれぞれ 61.3%及び 15.6%であった。 雄性ラット(各 3 例)への3H-標識体 50μg/kg 気管内又は静脈内投与において、投与放射能の 大部分は投与後 24 時間までに排泄され、168 時間までに約 30%が尿中、約 50 ~ 60%が糞中に 回収された。 授乳中ラット(16 例)に 15mg/kg を反復経口投与時の乳汁中に未変化体が認められ、乳児にお ける血漿中濃度は、母獣血漿中濃度の 1 ~ 4%であった。 5) ホルモテロールの薬物動態学的相互作用(5.3.2.2.1) ヒト肝ミクロソームにおいて、両エナンチオマーの O-脱メチル化に関与する CYP 分子種は CYP2D6、CYP2C8、9 及び 19 であり、(R,R)-ホルモテロールの代謝には CYP2D6 が最も関与し た。(S,S)-ホルモテロールの代謝に関与する分子種は特定されなかったが、O-脱メチル化体の生 成はケトコナゾールにより最も強く阻害された。ホルモテロールは、CYP2D6 が関与する代謝を 100μM で阻害したが、CYP1A2、2A6、2E1 及び 3A の反応に対する阻害率は小さかった。 ホルモテロールの臨床用量での血漿中濃度(0.2 ~ 0.3nM)を踏まえると、他剤との間で薬物動 態学的相互作用が生じる可能性は低いと申請者は説明している。 なお申請者は、配合薬の吸入投与による分布、代謝、排泄及び薬物動態学的相互作用は、両 成分の代謝や排泄経路が異なることから検討しなかった旨を説明した。 (2) 審査の概略 1) 配合薬投与時の薬物動態について 機構は、配合薬投与時の分布、代謝、排泄及び薬物動態学的相互作用が検討されていないこ とについて、①配合薬投与時に各成分の分布パターンが変化する可能性、②ブデソニドがホルモ テロールの代謝酵素を阻害する可能性、③ホルモテロールの排泄における種差についても検討し た上で、両成分が相互に影響を及ぼさないと判断した妥当性を説明するよう求めた。 申請者は、①分布パターンが変化する可能性については、ラット及びイヌにおける配合薬のトキ シコキネティックス試験成績、及び健康被験者を対象とした各成分単独又は併用投与試験 (SD-039-0722)において薬物動態学的な相互作用は生じなかったことから、配合薬投与時にも両 成分の分布パターンが変化することはないと考えること、②ブデソニドによるホルモテロールの代謝 阻害の可能性については、ブデソニドは、ヒト肝ミクロソームを用いたin vitro 代謝実験においてホ ルモテロールの O-脱メチル体生成を 0.1μM で阻害しなかったことから、臨床用量(Cmax:2 ~ 10nM)でホルモテロールの代謝を阻害する可能性はないと考えられ、実施した臨床試験において
も薬物動態学的相互作用は認められなかったこと(SD-039-0722)、③排泄における種差について は、ホルモテロール標識体投与時の放射能の主排泄経路には種差(ラット及びイヌ:糞中、マウス: 尿中)が認められたが、主代謝物はいずれもグルクロン酸抱合体であり、ブデソニドの主代謝物(水 酸化体)はラット及びイヌ共に糞中に排泄され、また、配合薬の 3 カ月間反復吸入投与試験では各 成分の消失挙動は単独投与時と比較して変化しなかったことから、両成分を併用した場合にも排 泄過程が影響を受けることはないと考えることを説明した。 機構は、両成分の代謝及び排泄プロファイル、毒性試験でのトキシコキネティックスデータ、健康 被験者を対象とした単独及び併用投与試験の成績(SD-039-0722)の詳細を確認したうえで、申請 用量における両成分の血漿中濃度は低いこと及び国内外既承認単剤の安全性情報を踏まえ、配 合薬投与時の分布、代謝、排泄各試験を実施しなかったことに対する申請者の説明を了承した。 2) 組織分布について 機構は、①反復気管内投与時のホルモテロールの蓄積性、及び②メラニン含有組織における安 全性について、毒性及び臨床試験成績、並びに市販後の安全性情報等に基づき説明するよう求 めた。 申請者は、①反復気管内投与時の蓄積性については、単回気管内投与と単回経口投与におい て3H-ホルモテロール 50μg/kg の血漿中放射能濃度は同様に推移したことから、反復経口投与 時のデータに基づき蓄積性の考察を行ったところ、21 日間反復経口投与時の血漿中放射能が最 高濃度に達する時間及び消失速度は単回投与時と同様であったこと、組織中放射能濃度は反復 投与 14 日目以後は一定の濃度に達したこと、放射能の消失速度は大部分の組織で単回投与時 と同様であったことから、反復気管内投与時にも著しい蓄積性は認められないと考えること、②メラ ニン含有組織における安全性については、ラットへの 6 カ月反復吸入及びイヌへの最長 12 カ月の 反復経口投与毒性試験において、眼科学及び病理組織学的検査で異常所見は認められなかった こと、ホルモテロール投与時に脱毛は認められなかったこと、イヌでは粘膜や皮膚の充血が用量依 存的にみられたが、病理組織学的検査では皮膚に異常所見はなく、充血は β2刺激薬の血管拡 張作用によると考えること、国内臨床試験では眼に関連する有害事象はいずれも軽度で因果関係 は否定され、毛根に関連する有害事象の報告はなく、因果関係有と判定された皮膚及び皮下組織 障害の事象は後期第 II 相試験の軽度なそう痒症 1 件のみであったこと、海外市販後データにお いて、メラニンへの結合に起因する重篤な眼及び皮膚障害等は報告されていないことを説明した。 機構は、以上の説明を了承し、本剤の反復吸入投与により特定の組織でホルモテロールの蓄積 が大きく増加する可能性、及びメラニン親和性に起因する安全性上の問題が生じる可能性は低い と判断した。
<毒性試験成績の概要> (1) 提出された資料の概略 ブデソニドの毒性試験成績については、PT 等の承認申請時に既に審査済みである。ホルモテ ロールの毒性試験としては、吸入又は経口投与等により実施された単回投与毒性試験、反復投与 毒性試験、生殖発生毒性試験、遺伝毒性試験、がん原性試験、及び局所刺激性試験の成績が提 出された。また、配合薬を用いた毒性試験として、単回吸入投与毒性試験、3 カ月間反復吸入投 与試験の各試験成績も提出された。ホルモテロールについては経口剤が臨床使用され、毒性につ いて既に一定の知見が得られていることから、本項では、主に吸入投与により実施されたホルモテ ロール及び配合薬の毒性試験について記述する。 1) 単回投与毒性試験 1-1) ホルモテロール A. マウス及びラットの吸入投与毒性試験(4.2.3.1.1 ~ 4) 雌雄マウスにホルモテロール(微細化乾燥粉末)36、100 及び 276mg/kg、雌雄ラットにホルモテ ロール(微細化乾燥粉末)40、88 及び 199mg/kg を単回吸入投与したとき、マウスにおける LD50 値は 276mg/kg(0.66mmol/kg)超、ラットにおける LD50値は 40 ~ 199mg/kg(0.1 ~ 0.48mmol/ kg)であった。一般状態の変化として用量依存的に、振戦、呼吸数減少、腹式呼吸、呼吸困難、自 発運動低下、流涎及び色素涙が認められた。ラット単回吸入投与試験では、心電図の変化(頻 脈、QRS 間隔延長、ST-T 変化、頻繁な異所性拍動及び房室ブロック)及び不整脈が認められ、ま た、重篤な一般状態の変化がみられた動物の剖検及び病理組織学的検査において、β 刺激薬の 大量投与時に通常みられる壊死や線維性瘢痕(Magnusson G et al.Cardiology 58:174-180, 1973,Knufman NMJ et al.Res Commun Chem Pathol Pharmacol 57:15-32,1987)のような心筋に 対する病変が認められた。 B. イヌ 5 日間反復吸入用量設定試験(4.2.3.1.5) 非げっ歯類を用いた単回投与毒性試験は行われていないため、イヌ 5 日間反復吸入用量設定 試験(4.2.3.1.5)が非げっ歯類を用いた単回投与毒性試験として採用された。雄雌イヌにホルモテ ロール(乳糖添加乾燥粉末)0.51、2.9 及び 15μg/kg/日(1.2、6.9 及び 36nmol/kg/日)が 5 日間 反復吸入投与された。一般状態の変化として用量依存的な頻脈が認められたが、β2刺激薬の作 用によるものと判断された。病理組織学的変化として 15μg/kg/日群に軽度から中等度の心筋壊 死/線維化が認められ、本試験における無毒性量は 2.9μg/kg/日と判断された。
1-2) ブデソニド/ホルモテロール配合薬 A. ラット単回吸入投与毒性試験(4.2.3.1.6) 雌雄ラットにブデソニド/ホルモテロール(微細化乾燥粉末)97/3mg/kg(225/7μmol/kg)が単回 吸入投与された。試験期間中死亡は認められなかった。痩化及び観察期間のほぼ全般にわたる低 体重、呼吸数の一時的増加、投与後一過性の自発運動の軽度な低下が認められ、病理学的検査 では、胸腺、脾及び副腎の臓器重量の低下が認められたが、これらはいずれも糖質コルチコイド又 は β2刺激薬の作用に関連するものと判断された。 B. イヌ単回吸入投与毒性試験(4.2.3.1.7) 雌雄イヌに、ブデソニド/ホルモテロール(微細化乾燥粉末)737/22μg/kg(1700/50nmol/kg)が 単回吸入投与された。試験期間中死亡は認められなかった。一般状態の変化として、粘膜及び皮 膚の充血、心室性頻脈を含む心拍数の増加等の心血管系への一時的な影響が認められ、病理学 的変化としてリンパ球数、好酸球数の低下、血漿中カリウム値の増加等が認められたが、いずれも 可逆的であり、糖質コルチコイド又は β2刺激薬の作用に関連するものと判断された。 以上より申請者は、ブデソニド/ホルモテロールをラット及びイヌに高用量で単回吸入投与したと きに認められた変化は、ブデソニド又はホルモテロール単独投与時の変化と同じであり、配合によ る毒性の増強や新たな毒性の発現は認められない旨を説明した。 2) 反復投与毒性試験 2-1) ホルモテロール A. ラット 3 カ月間反復吸入投与毒性試験(4.2.3.2.2) 雌雄ラットにホルモテロール(乳糖添加乾燥粉末)0.082、0.26 及び 0.87mg/kg/日(0.19、0.62 及び 2.1μmol/kg/日)が 3 カ月間反復吸入投与された。0.87mg/kg/日群の雌において、有意な 体重増加が認められた。全本薬投与群で心拍数の増加が認められたが正常洞律動であった。ま た、本薬投与群の雌全例で心臓の絶対重量及び相対重量の増加が認められたが、病理組織学的 変化は認められなかった。無毒性量は 0.87mg/kg/日と判断された。 B. ラット 6 カ月間反復吸入投与毒性試験(4.2.3.2.3) 雌雄ラットにホルモテロール(乳糖添加乾燥粉末)0.026、0.128 及び 0.852mg/kg/日(0.06、0.38 及び 2.0μmol/kg/日)が 6 カ月間反復吸入投与された。試験期間中に 7 例(血液サンプリング時 の麻酔よる死亡 4 例、呼吸困難による安楽死 1 例< 0.128mg/kg/日群>、他 2 例< 0.026 及び 0.852mg/kg/日群>)が死亡した。0.852mg/kg/日群の雌において、有意な体重増加率の上昇、 0.128mg/kg/日群以上で摂餌量の軽度増加が認められた。心電図検査を実施した本薬投与群全
例で頻脈が認められたが正常洞律動であった。本薬投与群で心臓の絶対重量及び相対重量の軽 度の増加が認められ、病理組織学的検査において、0.128mg/kg/日群以上で少数例に軽微から 軽度の心筋の線維化が認められた。無毒性量は心臓への影響が認められない 0.026mg/kg/日と 判断された。 C. イヌ 1 カ月間反復吸入投与毒性試験(4.2.3.2.4) 雄雌イヌにホルモテロール(乳糖添加乾燥粉末)0.51、2.8 及び 15μg/kg/日(1.2、6.7 及び 36nmol/kg/日)が 1 カ月間反復吸入投与された。2.8μg/kg/日群以上で軽度の体重増加傾向が 認められた。一般状態の変化として、用量依存的な頻脈、粘膜及び腹部皮膚の充血が認められた が、β2刺激薬の作用に関連するものと考えられた。心電図検査において 15μg/kg/日群の 3/6 例で投与初日に心室性不整脈が認められたが、投与 6 及び 21 日には認められなかった。病理組 織学的検査では、15μg/kg/日群において β2刺激薬の作用に関連するものと考えられる心臓の 限局性あるいは多巣性の線維化が乳頭筋に認められた(Petruska JM et al.Fundam Appl Toxicol 40:52-62,1997)。無毒性量は 2.8μg/kg/日と判断された。 D. イヌ 12 カ月間反復経口投与毒性試験(4.2.3.2.6) 雄雌イヌにホルモテロール 0.72、8.6 及び 92μg/kg/日(1.7、20 及び 219nmol/kg/日)が 12 カ 月間反復経口投与された。一般状態の変化として、全本薬投与群で投与約 3 カ月後から爪ケラチ ンの帯状白色化が用量依存的に認められたが、発現頻度は時間経過とともに減少し投与 10 カ月 後では 92μg/kg/日群のみで認められた。心電図検査において、全本薬投与群で心拍数の減少 を伴わない洞性頻脈が認められ、また、投与初日及び 2 日に、8.6μg/kg/日群の 1/10 例及び 92μg/kg/日群の 7/10 例で心室性期外収縮が認められた。病理組織学的検査において、乳頭筋 の軽微な限局性線維化~中等度の多巣性線維化が用量依存的(0.72μg/kg/日群 2/10 例、 8.6μg/kg/日群 3/10 例、92μg/kg/日群 5/10 例)に認められた。全本薬投与群で心臓の心筋線 維化が認められたため、無毒性量は得られなかった。なお申請者は、β2刺激薬による心筋線維 化はイヌの種特異的反応として知られていること(Detweiler DK et al.Toxicol Pathol 17:94-108, 1989,Dogterom P et al.Crit Rev.Toxicol 22:203-241,1992)、β2刺激薬を含む血管拡張作用 及び陽性変力/血管拡張作用を持つ化合物はイヌで右心房出血や線維化等の心臓病変を惹起す ることが知られているが、ヒトにおいて同様の所見は現在までに報告されていないこと等から、臨床 用量ではヒトの心臓に影響を及ぼさないと考えられる旨を説明している。
2-2) ブデソニド/ホルモテロール配合薬 A. ラット 3 カ月間反復吸入投与毒性試験(4.2.3.2.7) 雌雄ラットにブデソニド/ホルモテロール(微細化乾燥粉末)2.4/0.14、11/0.61 及び 51/2.7μg/ kg/日(5.5/0.34、26/1.5 及び 119/6.4nmol/kg/日)、ブデソニド 73μg/kg/日(169nmol/kg/日)又 はホルモテロール 2.3μg/kg/日(5.4nmol/kg/日)が 3 カ月間反復吸入投与された。配合薬群で は、11/0.61μg/kg/日群以上で体重抑制、胸腺重量減少等が認められ、病理組織学的検査にお いて、51/2.7μg/kg/日群で胸腺のリンパ球溶解及び脾臓の髄質外造血の頻度低下(雄のみ)が 認められた。ブデソニド群においては、配合薬で発現したすべての所見が認められ、ホルモテロー ル群では、体重増加が認められた。配合薬群で認められた所見は用量依存的であり、ブデソニドの 糖質コルチコイド作用によるものと一致し、ホルモテロールに起因する所見は認められなかった。ブ デソニド/ホルモテロールの無毒性量は 2.4/0.14μg/kg/日と判断された。 B. イヌ 3 カ月間反復吸入投与毒性試験(4.2.3.2.8) 雌雄イヌに、ブデソニド/ホルモテロール(微細化乾燥粉末)2.0/0.11、9.8/0.51 及び 50/2.7μg/ kg/日(4.6/0.26、23/1.2 及び 116/6.4nmol/kg/日)、ブデソニド 48μg/kg/日(111nmol/kg/日)又 はホルモテロール 2.7μg/kg/日(6.4nmol/kg/日)が 3 カ月間反復吸入投与された。配合薬群で は、9.8/0.51μg/kg/日群以上で用量依存的な体重増加抑制、コルチゾール濃度の低下、全投与 群で胸腺重量及び副腎重量の低下、2.0/0.11μg/kg/日群の雄を除く全投与群で胸腺萎縮並び に副腎索状帯の萎縮が認められ、これらの所見はブデソニド群においても概ね同様に認められ た。また、配合薬の 50/2.7μg/kg/日群及びホルモテロール群では、一過性の軽微から中等度の 頻脈が認められた。配合薬群で認められた所見は用量依存的であり、ブデソニドの糖質コルチコイ ド作用又はホルモテロールの β2刺激薬の作用と一致し、薬理作用から予測できない全身毒性は 認められなかった。ブデソニド/ホルモテロールの無毒性量は、雄で 2.0/0.11μg/kg/日と判断さ れ、雌では無毒性量は得られなかった。 3) ホルモテロールの遺伝毒性試験 遺伝毒性試験として、細菌を用いた復帰突然変異試験、マウスリンフォーマ TK 試験、染色体異 常試験及び小核試験が行われた。細菌を用いた復帰突然変異試験(4.2.3.3.1 ~ 2)では 2 バッチ 各 2 ~ 3 回の試験が実施され、各バッチ 1 回の試験において、わずかながら復帰変異コロニー数 の有意な増加が認められたが、再現性及び用量依存性がなかったことから、変異原性を示さないと 判断された。マウスリンフォーマ TK 試験(4.2.3.3.3)、ヒト末梢血リンパ球を用いたin vitro 染色体 異常試験(4.2.3.3.4)及び吸入投与(平均投与量 19.8 及び 39.4mg/kg)によるラット小核試験 (4.2.3.3.5)において、それぞれ影響は認められず、ホルモテロールは遺伝毒性を有さないと判断 された。