• 検索結果がありません。

道路交通社会に関する考察 [ PDF

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "道路交通社会に関する考察 [ PDF"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)道路交通社会に関する考察−福岡市交通量調査を例にして− キーワード:道路、交通、モータリゼーション、交通量調査. 発達・社会システム専攻 甲藤. 1.はじめに. 義臣. 可能かということを考えてみると、そもそも社会とは何. 本稿は多様で複雑な現代社会のひとつの側面である. かという問題が浮上する。これに関しては諸説あるもの. 「道路交通社会」に焦点を当て、それに関して多角的か. の、 「社会的行為から出発して、社会関係、社会集団、そ. つ社会学的な考察を試みるものである。現代社会におい. の相互的な関連としての全体的な社会構造」であるとい. て、われわれの日常生活と交通社会とには密接な関連が. う共通認識を抽出することができる。つまり、言語など. あり、ヒト、モノ、カネ、情報などの社会資源の流通は、. の有意味シンボルを媒介した複数の人間の行動があり、. 交通社会なくして存在しえないものである。. それらの相互行為や相互関係に規則性と持続性、さらに. しかしながら一口に交通社会といっても、その形態は. ある程度共通の志向が分有されている状態と換言できる。. 用途により様々であり、同列に論じることは難しい。そ. 交通社会においては先述のように高度に共有されてい. こで本稿では、われわれの日常生活と最も深いかかわり. る価値志向(理想の交通の四条件)が存在する。また、. をもち、なおかつ最も身近な「道路交通」に主眼を置い. 規則や秩序についても、交通社会特有の法規や慣例が存. て論を展開していく。. 在し、違反者には厳重な制裁措置がとられる。そして交 通社会における行為とは、すなわち「移動」であり、行. 2.道路交通社会とは. 為を媒介する相互に理解可能な有意味シンボルとは、交. まず、道路交通社会とはいかなるものかということを. 通の形態であり、具体的には交通の道具である自動車や. 明確にしなければならないが、そのためには交通社会と. 自転車、歩行者などである。特に道路交通社会において. はなにかということを明らかにする必要がある。しかし. は、まず自分がどのような形態で移動しているかという. ながらそれらはわれわれにとってあまりに日常的で身近. ことを常に周囲に示す必要があるからである。そして相. な存在であるがゆえに、感覚的、直感的に理解してしま. 互の交通形態が認知されることによって、状況に応じた. いがちである。. 行動が可能になるのである。したがって、われわれがた. では、人間にとって交通現象とはそもそもどのような. だ道を歩いているだけで、道路交通社会における歩行者. ものなのか。大久保(1998)によれば、人間生活にとっ. として周囲に認識され、さらに歩行者として最適な行動. て移動するという行動はきわめて根元的なものであり、. を期待され、われわれはそれに応えなければならない。. 人間の移動への欲求をより高度に実現するということが 交通現象なのだという。. 3.道路交通社会の形成過程. すなわち、交通現象は非常に高い普遍性を備えたもの. 今日の道路交通社会は複雑な混合交通である。ではそ. であるということがいえる。人間にとって「価値」の相. れはどのようにして形成されてきたのか。もちろん最初. 違はしばしば大規模な対立や紛争を生み出してきたが、. は人間は自らの足で歩いて移動するほかなかったが、や. こと交通現象に関しては、宗教的、政治的、経済的、文. がて家畜を利用することによって移動範囲を拡大させた。. 化的価値の差異による影響はほとんど表面化しない。な. そして蒸気機関や内燃機関の発明などの技術革新によっ. ぜなら、 「のぞましい」理想の交通とは、より速く、より. て、新たな動力源が現れた。陸上における人々の日常的. 安全で、より快適で、より経済的な交通に集約されるか. な移動手段が馬車から自動車へと変わったのは、20 世紀. らである。これらの四条件がより高度に満たされてさえ. 初頭のアメリカでのフォードT型の誕生によるところが. いれば、たとえキリスト教圏であれイスラム教圏であれ、. 大きい。. 資本主義体制であれ共産主義体制であれ、民主主義体制. フォードT型はアメリカで爆発的に普及し、モータリ. であれ独裁体制であれ、それこそがのぞましい理想の交. ゼーションという社会現象として認識された。そして日. 通にほかならない。. 本でも、 戦後に自動車産業が復興したことによって、 1960. 次に、交通現象のなかに限定的な社会を見出すことは. 年代から急激なモータリゼーションが進んだ。図1は.

(2) 1965 年から 2002 年までの間の日本における自動車保有. で、特に資格や免許をもたずとも、誰もが歩行者になり. 台数の推移をあらわしたものである。. うる。 次に法規上は軽車両に含まれる自転車である。これも. 図1 自動車保有台数の推移. 使用に際して特別な資格は必要なく、間口の広い移動形 態である。歩行よりは数倍速く移動でき、また肉体的疲. 6000. 労も歩行ほどではない。しかし誰でも利用できる便利な 道具であるため、利用者のマナーやモラルにかかわる問. 5000 乗用車 台 数 ( 万 台. 題が多く発生していることも事実である。 次に、運転に免許が必要な原動機付自転車および普通. 4000 貨物車. 自動二輪車である。これらは 16 歳以上で運転免許取得が 可能という点で、間口の広い移動形態である。動力機関. 3000 乗合車. が搭載されているため、自転車よりも速く、少ない疲労. ) 2000. で移動できる。燃料消費効率もよい。しかしながら運搬 二輪車. 1000. 能力が低く、天候に影響を受けやすく、また法規上も冷 遇されているため、理想の交通にはまだ遠い。 次に、18 歳以上で運転免許取得が可能な普通自動車で. 19 65 19 年 69 19 年 73 19 年 77 19 年 81 19 年 85 19 年 89 19 年 93 19 年 97 20 年 01 年. 0. ある。自動車が広く普及しているということは既に述べ たが、それは現状において理想の交通に最も近い移動形 態が自動車だからである。自動車における移動速度、安. 一般の市民にとって最も身近な乗用車は、1965 年にはわ. 全性、快適性のメリットは、取得と維持にかかる経済的. ずかに 180 万台弱であったが、直近のデータでは 5000. コストというデメリットを補って余りあるものである。. 万台を越えており、しかも毎年増加しつづけていること. しかしながら増えすぎた自動車に道路が対応しきれなか. がわかる。. ったり、環境への悪影響が増大したりと、問題も多い。. また、都道府県別の一世帯あたりの自動車保有台数を. これまでに挙げた形態以外にも、道路交通社会には乗. 見てみると、2002 年 3 月末時点で全国 47 都道府県のう. 合バス、タクシー、路面電車などの旅客輸送機関が存在. ち、一世帯あたり 1.0 台以上保有する都道府県は 42 にお. する。それぞれにメリット、デメリットがあるが、いず. よんでいる。逆に 1.0 台以下なのは東京都、神奈川県、. れも自家用の乗用車なり二輪車なりを持たない人々にと. 大阪府、京都府、兵庫県の 1 都 2 府 2 県のみで、いずれ. っては、重要な移動手段であることは間違いない。また、. も公共交通が高度に発達した大都市圏である。また、1.5. トラックなどの貨物車両も、今日の物流を支えるうえで. 台以上を保有するのが長野、山形、茨城、群馬、栃木、. 重要な存在である。. 岐阜、福井、富山の各県で、いずれも大都市圏から離れ た地方である。 いずれにせよ、人類は理想の交通に近づくべく、知恵 を絞ってきた。そして今日、道路交通社会の中心には自. このように、今日の道路交通社会には、大別して歩行 者、自転車、二輪車、乗用車、タクシー、バス、貨物車 などが同一の道路上を共通の規則と秩序に従って移動し、 流れているのである。. 家用乗用車(マイカー)があるが、マイカー以外の交通 主体も存在し、それらが複雑な混合交通を成しているの である。. 5.道路交通問題とその解決に向けて ここでは主に自動車と地球環境との問題と、都市と地 方の道路交通問題とに分けて考察する。. 4.道路交通社会の構造 道路交通社会には様々な交通主体が存在するが、それ ぞれの特徴や長所・短所はどのようなものなのか。. まず地球環境との問題では、自動車の排出ガスが原因 となって地球温暖化や酸性雨といった現象が生じている ことが挙げられる。その他にも、人体の呼吸器などへの. まず最も身近で基本的な「歩行者」がある。移動する. 悪影響も指摘されている。排出ガスを低減もしくはなく. 際の任意性は高いが、理想の交通には程遠い。なぜなら、. すために、自動車企業は様々な研究開発を進め、行政も. 移動速度は遅く、常に身体的危険に晒され、肉体的疲労. サポートをしているが、自動車を利用するユーザーの意. をともなうからである。しかしながら間口の広さは一番. 識も重要である。アイドリングストップ運動なども叫ば.

(3) れているが、所詮は対処療法的な応急処置に過ぎない。. 図2 大博通と渡辺通を結ぶ四経路の平均. また、自動車を廃棄、解体する際に発生する空調装置 の冷却ガスが、上空のオゾン層を破壊するという現象も. 45000. ある。. 40000. そして、資源エネルギー問題も重要な問題である。ガ. 35000. ソリン自動車やディーゼル自動車の燃料のもととなる石. 30000. 油は化石燃料であり、有限である。しかし石油は燃料以. 台 25000 数 20000. 外にも、電気やガスのもととなったり、化学繊維やプラ スチック製品などにも広く利用されたりと、きわめて重. 15000. 要な天然資源である。今や世界的に「省エネルギー」が. 10000. 那ノ津通 昭和通 明治通 国体道路. 5000. 求められている以上、自動車企業はもちろん、ユーザー. 0 19 76 19 年 79 19 年 82 19 年 85 19 年 88 19 年 91 19 年 94 19 年 97 20 年 00 20 年 03 年. にもそれを踏まえた行動が要求される。まして現状では 燃料として石油を使用しない水素自動車や電気自動車な どの次世代自動車は開発途上にある以上、日常生活レベ ルでのユーザーの意識が重要になってくる。 次に都市と地方の道路交通問題であるが、それぞれの 特徴は大きく異なる。都市に特有の道路交通問題は、 「混. また、図3と図4は、それぞれ大博通と渡辺通におけ る各計測地点の交通量を合計したものを、年次別に並べ たものである。. 雑」に集約されるが、地方では公共交通機関の衰退や廃 図3 大博通 合計交通量の推移. 止といった深刻な問題が懸案となっている。向都離村現 象によって地方の過疎化が問題となっているが、それを. 250000. 可能にしたのはマイカーの普及という私的モータリゼー. 240000. ションと、高速交通網の整備であった。マイカーの普及. 230000 台 220000 数 210000. ない高齢者などの交通貧困層は自由に移動することが困. 200000. 難になり、いわゆる陸の孤島ができあがってしまった。. 190000. この問題を解決するのは容易ではない。地方自治体の. 1996年. 1998年. 2000年. 2002年. 1998年. 2000年. 2002年. 1994年. 1996年. 1992年. 1990年. 1988年. 1986年. 1984年. 1976年. かといってこのままにしておけば、地方はますます衰退. 1982年. 180000. 財政状況は厳しく、公的な支援はあまり期待できない。. 1980年. 業に追い込まれたのである。その結果、マイカーを持た. 1978年. によって地方の公共交通機関は採算がとれなくなり、廃. し、都市部はますます過密化してしまう。まして今後は 公共交通機関を必要とする高齢者が増加していくという ことが明白である以上、地域社会におけるシビルミニマ. 図4 渡辺通 合計交通量の推移. ムとしての公共交通を社会福祉的位置付けで維持存続し 270000. ていくことが必要である。. 260000. 6.福岡市交通量調査の分析. 250000. ここからは福岡市内の主要経路の交通量がどのような 経年変化をしているのかを分析し、福岡市の道路交通社. 台 数. 240000 230000. とがわかる。. 1994年. 1992年. ないが、経路によって交通量に大きな差があるというこ. 1990年. したものである。全体的に見て特に大きな変化は見られ. 1988年. 200000 1986年. 路)の平均交通量を 1976 年から 2003 年にわたって比較. 1984年. 210000. 1982年. を結ぶ主要四経路(那ノ津通、昭和通、明治通、国体道. 1980年. 220000. 1978年. 図 2 は、福岡市の中心部を縦断する大博通と渡辺通と. 1976年. 会の側面を探る。.

(4) これによると、特に渡辺通において、近年交通量の減. 文献. 少傾向が見られる。しかしながら周辺では地下鉄新規路. 谷藤正三,1976, 『総合交通計画』技報堂. 線のための工事や車線規制が頻繁に行われており、これ. 大久保敦彦,1979, 『現代社会学の課題 交通文化への新. らが完了する平成 17 年以降、交通量にも何らかの変化が 生じる可能性がある。. しい視座』八千代出版 山田宗睦,1979, 『道の文化』講談社. また、図5は今回の分析のなかで最も大きな変化を記 録している西新の脇山口交差点における交通量の経年変. 菅原操,1979, 『新交通計画特論:地域と交通の調和』山 海堂 運輸経済研究センター交通学説史研究会編,1982, 『交通. 化である。. 学説史の研究』成山堂書店. 図5 脇山口交差点. 1983, 『ふるさと飛行 福岡県航空写真集』西日本新聞社. 30000. 児玉幸多,1986, 『近世交通氏の研究』筑摩書房 1989, 『福岡市市制 100 周年記念 写真集 ふるさと 100. 25000 20000. 百道浜 ∼荒江 方向. 池田博行・松尾光芳,1994, 『現代交通論』税務経理協会 大久保敦彦,1998, 『交通社会学』八千代出版. 台 15000 数 10000. 年』福岡市. 天神∼ 姪浜方 向. 5000. 資料 NMCA 日本二輪車協会 http://www.nmca.gr.jp 交通エコロジー・モビリティ財団. 19 76 19 年 79 19 年 82 19 年 85 19 年 88 19 年 91 19 年 94 19 年 97 20 年 00 20 年 03 年. 0. http://www.ecomo.or.jp 財団法人 自動車検査登録協力会 http://www.aira.or.jp. これによると、1980 年代前半以降、交通量が急激に伸. 財団法人 日本自動車研究所. びていることがわかる。 これは 1989 年に百道浜地区で開. http://www.jari.or.jp. 催されたアジア太平洋博覧会「よかトピア」と、1993 年. 社団法人 日本自動車工業会. に開業した福岡ドームが主要な要因であると考えられる。. http://www.jama.or.jp. これら百道浜地区の開発に合わせて、両方向とも交通量. 独立行政法人 交通安全環境研究所. が増加しており、近年では安定して推移している。なお、. http://www.ntsel.go.jp. 今後福岡都市高速道路の環状化や国道 202 号外環状線の 供用開始によって、交通量の減少が予想されるが、これ は福岡市内のほぼ全域において同様に言えることである。 都市部の交通渋滞や交通混雑を抜本的に解消する方法 としては、環状道路を整備するということがあるが、福 岡市は今まさに整備中である。そのため市内各所で工事 による道路規制が頻繁に行われており、交通の流れはス ムーズとはいえない。まずは地下鉄新規路線の営業開始 によって市内中心部の車線規制は完了するであろうが、 市民にとって重要な公共交通機関である福岡市営地下鉄 を結果として環状化しなかったのは大いに疑問の余地が 残る。とはいえ都市高速および幹線道路の環状化と、鉄 道と道路の連続立体交差事業によって、市内外各所への アクセシビリティ向上が待たれるところである。.

(5)

参照

関連したドキュメント

学術関係者だけでなく、ヘリウム供給に関わる企業や 報道関係などの幅広い参加者を交えてヘリウム供給 の現状と今後の方策についての

■さらに、バス等が運行できない 広く点在する箇所等は、その他 小型の乗合い交通、タクシー 等で補完。 (デマンド型等). 鉄道

(1)原則として第3フィールドからのアクセス道路を利用してください。ただし、夜間

積雪寒冷地の冬期道路では,吹雪による視程障害や吹

凡例 高速道路 一般国道 主要地方道等 DID(人口集中地区). JR東海道本線 通学路 小学校 H30事故発生箇所

道路の交通機能は,通行機能とアクセス・滞留機能に

3号渋⾕線(池尻 三軒茶屋出⼊⼝ 三軒茶屋出⼊⼝付近) 更新 付近) 更新イメージ イメージ. コンクリ

我が国では,これまで数多くの全国交通需要予測が行わ れてきた.1つの例としては,(財)運輸政策研究機構が,運