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東 京 一 極 集 中 と東 京 圏 の再 編

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東 京 一 極 集 中 と東 京 圏 の再 編

業務核都市構想の批判的検討

有里 典三

1.は じ め に

本稿 の課 題 は,80年 代 に入 って顕著 とな った東 京一極 集 中 とい う 「東京 問題」 を 総 括 し,当 時 の 『首 都 改 造計 画』(1985年)や 『第 四 次首 都 圏 基 本計 画』(1986年)

の 中で示 され た東 京 圏再編 の方 向 を批判 的 に再検 討す るこ とにあ る。

80年 代 を中心 とす るバ ブル経済 の発 生 の期 間 には,東 京 お よび東京 圏へ の社会, 経 済,文 化機 能 の一極 集 中 と人 口の再 集 中が急速 に進 行 した こ とは周 知 の とお りで

あ る。 当時,こ の傾 向が さらに進展 すれ ば,東 京 お よび東京 圏 の居 住 環境 の改善 が 困難 に なるばか りか,東 京 圏以外 の各 地方 の活力 も減 退 し,結 果 と して 国土全体 の 均 衡 あ る発展 が 阻害 され る と危惧 されて いた。 こ う した東京 一極 集 中の弊 害 を是 正 し,二 十一 世紀 に 向けて の東京 圏 の方 向 を示 す ため に,前 述 した よ うな首都 圏 につ い ての改造 計画 が相次 い で策定 された経緯 が あ る。

90年 代 に入 ってバ ブ ル経 済が崩 壊 し,東 京 お よび東 京圏 を取 り巻 く社 会状 況 は劇 的 に変 化 した。 東京 圏へ の社 会 人 ロの増加 だ け を見 て も,87年 を ピー ク と してその テ ンポが急 速 に弱 ま り,94年 に はつ い に転 出超 過 とな ってい る。研 究者 の なか には,

「明治以 降,永 遠 につ づ くと見 な されて きた東 京 集 中 の酒 々た る流 れ が,こ こに き て か な り明 白 なか たち を と りなが ら終焉 の時期 を迎 えて い る」(向 山,1998,p.92) と主張 す る者 もい る。 た しか に,首 都 圏 につ いて の改 造計 画が 目的 と した東京 一極 集 中の是正 と広域 的な分散 の流 れが,少 な くと も人 口移動 とい う量 的 な側 面で は実 現 しつ つ あ る と言 えそ うであ る。だが,は た して都市 機 能の面 で は ど うであ ろ うか 。

さ らに,い わ ばバ ブル経済期 の産 物 と も考 え られ る東 京圏 の再編 の方 向 は,バ ブル 経 済崩壊 後 の現在,ど の ように継承 され,ど の よ うに修 正 され な けれ ばな らないの だ ろ うか。 こ う した問題 に答 え るため には,今 一 度80年 代 の 「東 京 問題 」 を考 え直 し,そ の 当 時 の社 会 状 況 の なか で,東 京 圏 の 再 編 問 題 を批 判 的 に検 討 す る こ とが 前 提 条件 とな るはずで あ る。

そ こで本稿 で は,ま ず,80年 代 の東京 につ い ての現状 認識 と問題構 成 を明 らかに す るこ とに課 題 を限定 す る。巨大都 市東 京が,ど の よ うな要 因 に よって世 界都 市へ と変貌 したのか。 そ れ によ って,80年 代 の東京 に何 が起 き,ど の ような変化 が生 じ

(2)

たの だろ うか。 また,そ こ には,こ れ まで とは違 った どの ような新 しい都 市 問題 が 顕在 化 したのだ ろ うか 。以上 の考察 を踏 まえた上 で,次 に課 題 とすべ きは,東 京 圏 の再編計 画 につ いて批判 的 に検 討 す る こ とであ る。今後 わ れわ れ は,東 京 をい かな る方針 に基づ い て,ど の よ うに変 えてい こ うと してい るの か。将 来 に対 す る影響 は どの よ うに予測 で きるだ ろ うか。

本稿 の前半 で は,東 京 一極集 中 とい う80年 代 の 「東京 問題 」 の原 因 とその実態 を 考察 した後,わ れわれが 直面 して い る巨大都 市 東京 の 問題性 につ い て検討 す る。後 半 で は,首 都改 造 の基本 方針 を東京都 お よび東 京 圏 とい う二 つ の文 脈 の なかで検討 し,そ れぞ れの開発 上 の特 徴 を明 らか にす る。 そ して最 後 に,東 京 圏再編 の具体 的 なプ ロジ ェク トと して提 唱 された業務 核都 市構想 の要点 と,こ の都 市構想 自体 に内 在 す るい くつ かの 問題点 を別挟 す るこ とに したい 。

2.東 京 の世 界 都 市化 と東京 一極 集 中の メカ ニ ズム

80年 代 に入 って,新 た な地域 問題,と くに巨大都 市 問題 が再 燃 した。 この地域 問 題 は,同 じ地域格 差 の再発 ・再 燃で はあ って も,従 来 とは まった く異質 な性格 を も

ってい る。 どの よ うな点 が異質 なので あ ろ うか。

経 済学者 の大 内秀 明 に よる と,新 たな地域 問題 の異質性 は,(1)低 成 長 下 にお ける 格差 の拡大,(2)脱 工 業化 に よる経 済 のサ ー ビス化 ・ソフ ト化 に基づ く格差,(3凍 京 一極 集 中 とい う新 た な 「東 京 問 題」 の発 生 に求 め られ る とい う(大 内,1987,pp.3

‑4) 。 一点 目につ いて は,従 来 の地域 格差 が 日本経 済 の高度 成長 に よる地域 格 差 で あ った点 と比べ る と,ま った く状 況 を異 に してい る。二 点 目は,高 度成長 下 の地域 格 差 が,日 本経 済 の高度工 業化 に よる産業構 造 の転換 に と もな うもの であ った のに 対 し,新 しい格 差 は脱工 業化 によ る産業構 造 の転i換が原 因 とな ってい る。三 点 目は, 従来 の地域 格差 の拡 大が東 京 ・名古屋 ・大阪 の三大都 市 圏 と地方 圏 との間 の格 差拡 大 であ り,そ こには中央対 地方 の対 立 図式 が あ ったの に対 し,80年 代 の格 差 は,名 古屋 ・大 阪 の地 位 の相 対 的 な低 下 と東京 の世界都 市 へ の脱 皮 によ る地域 問題 とい う 新 たな質 をそな えてい る点で あ る。 つ ま り,東 京が 世界都 市化 す るの に と もなって 発生 した新 た な 「東 京 問題」 とい う性 質 を帯 びて い る。 この点 を も う少 し詳 し く検 討 して お こ う。

東 京が80年 代 に入 って世界都 市 と して登場 した背 景 に は,国 際 的 な資 金流 通 の面 で東 京 が主導 的 な役 割 を果 た してい る こ とのほか に,日 本 円が世界 貨 幣 と して の地 位 を担 うよ うにな った とい う事 情 が あ る。80年 代 に浮上 した国際化 に して も,金 融 の国際化 と結 び付 い た国際化 で あ り,日 本 円の 国際市場 で の役 割 か らきてい る国際 化 で あ る点 に 留 意 して お く必 要 が あ ろ う。 情 報 化 につ い て も 同様 で あ る。 高 度 情 報 化 が意 味 してい る内容 は,主 として 「国際金 融情 報 のそれ で あ り,株 式市場 や為 替 市 場の 国際 的 な関連 に と もな う情報 の流 れであ る。 だか らこそ,24時 間都市 と して の情報化 につ なが るわけで あ る」(大 内,1987,p.5)。 こう した近年 の 日本経 済 の国 際 的地位 の高 ま りや わが 国の金融市 場 の 国際化 ・自由化 の進 展 によ り,東 京 の金 融

一28‑一

(3)

図1東 京集 中の マ クロ的連鎖

日本 経 済 の 世界 経 済 におけ るウェート増 大

貿易収支の大幅黒字 国際 金 融 センター 化

NIES y

金融大国化 金融自由化要求

外国企業の対日進出増大 極東拠点としての重要性拡大

海 外 立 地 ・製 品 輸入 の 増 大

高度経済機能の 京 集

ハイレベ ルな商 業 ・サ ービス施 設 の 増 強

金融機能 の集中

都 市 型サ ービス の増 大

所 得 ・資 産 の地 域

間格 差 拡 大 多 様 な消 費 ニーズ

東京への本社 機 能集中

人材確保

・多

自由 時 間の 増 大 ・ 高 学歴 化

ライフスタイルの 変 化 ・多様 化

情報量の地域 間格差増大

企業サービス投入 比率増加

・会

行政機関の集積

事務所向けサービス 供給の多様化

大学 ・研 究 機 関 等の 集 積

都 市 型 産 の 整備 (情報 ・交 通 ネットワー ク)

経 済 の ソフト化 ・サ ー ビス化 の進 行

資 料:経 済 企 画 庁 「東 京 の世 界 都 市 化 と地 域 の 活 性 化 』p.51,

機 能 が 一 国 レ ベ ル を こ え て,国 際 的 な 金 融 セ ン タ ー と して の 地 位 と役 割 を も つ よ う に な っ た こ と が 東 京 の 世 界 都 市 化 の 理 由 で あ り,そ れ に と も な う新 た な 東 京 一 極 集 中 も,図1に 示 し た よ う に 金 融 化 ・国 際 化 ・情 報 化 が 結 合 し た 「日本 経 済 の マ ク ロ 的 潮 流 と,そ れ が も た ら し た 急 速 な 産 業 構 造 調 整 と い う 文 脈 の 中 で 発 生 」(経 済 企 画 庁 総 合 計 画 局,1989,p.50)し て い る 。 東 京 一 極 集 中 化 は す で に 国 内 問 題 で は な い 。

そ れ は,ロ ン ド ン や ニ ュ ー ヨ ー ク が 抱 え る 問 題 と も 共 通 す る 世 界 都 市 の 問 題 で あ り, 世 界 都 市 ・東 京 問 題 と 考 え な け れ ば な ら な い 。

3.東 京 一 極 集 中 の 特 徴

前述 した よ うに,最 近 の東京 一極集 中は,金 融 化 ・国際化 ・情 報化 が結 合 したか た ちで発 生 してい る現 象 で,基 本的 には 「東 京 の国 際金融 セ ンター化 」,「脱工業化 に よる経済 のサ ー ビス化 ・ソフ ト化」,「情報 化 の進展 」 とい う観 点 か ら説 明す るこ

とが で きる。 しか しなが ら,集 中の度 合 い は領域 に よって さ まざまであ り,な か に

(4)

は集 中傾 向の見 られ ない分 野 もあ る こ とに注意 しな ければ な らな い。 そ こで次 に, 80年 代 以 降 に発生 した東京 一極集 中の特徴 を よ り詳細 に把握 す る 目的で,(1)集 中が 著 し く進 展 して い る分 野,(2)集 中が緩 や か に進展 して いる分 野,反 対 に,(3)変 化 が 見 られな いか分散 が進 んで い る分 野,と い うよ うに便宜 的 に三つ の分 野 に類 型化 し

て整理 して み る こ とにす る。 さ らに,そ の集 中が東 京 圏内部 の どうい った地 域 に発 生 して い るのか,と い うこ とにつ いて も検 討 してお く必 要が あ る。 この点 は,東 京 一極 集 中 を是正 す るた めの対 策 と して

,東 京 圏 の地 域構 造 の再 編 が喫 緊の課 題 にな ってい る現 在,無 視 す る こ とので きない観 点 と言 わね ばな らない。

(1)集 中 が 著 し く進 展 し て い る 分 野

まず 最 初 に,最 近 十 年 間 に 東 京 へ の 集 中 が と り わ け 顕 著 で あ っ た 金 融 機 能 に つ い て 検 討 し て お き た い 。 金 融 機 能 の 集 中 傾 向 を 明 ら か に す る た め に,こ こ で は 預 貯 金 残 高,株 式 売 買 高,全 国 銀 行 貸 出 残 高,手 形 交 換 高 の 対 全 国 シ ェ ア を 指 標 と して 取 り上 げ て み よ う 。 図2は,金 融 機 能 が 昭 和50年 か ら62年 の 間 に 東 京 圏 に ど の 程 度 集 中 し た か を 示 し た も の で あ る 。 そ れ に よ る と,昭 和62年 度 の 東 京 圏 に お け る 全 国 シ ェ ァ は,預 貯 金 残 高 が84.8%,株 式 売 買 高 が70.4%,全 国 銀 行 貸 出 残 高 が56.3%, 手 形 交 換 高 が48.5%と い う高 率 を 示 し て い る 。 ほ ぼ 十 年 前 の 昭 和50年 度 の 全 国 シ ェ ァ と比 較 し て み る と,そ れ ぞ れ26.9%増,15.6%増,6,9%増,4.4%増 で,従 来 か

ら 高 い 対 全 国 シ ェ ア が あ っ た に も か か わ らず,近 年,取 引 額 は 高 い 伸 び を 示 し,全 国 に 占 め る シ ェ ア も 急 激 に 増 加 し て い る こ と が わ か る 。

こ の 点 を 東 京 都 で 見 て み る と ど う で あ ろ う か 。 図3は,同 じ指 標 を 使 っ て 東 京 都 へ の 金 融 機 能 の 集 中 状 況 を 示 した も の で あ る 。 こ れ に よ る と ,昭 和62年 度 の預 貯 金 残 高 は84.8%(対50年 度 比30.0%増),株 式 売 買 高 は66.8%(同16.4%増),全 国 銀 行 貸 出 残 高 は49.4%(同6.1%増),手 形 交 換 高 は38.1%(同3.8%増)と 高 い シ ェ ァ を 示 し,東 京 圏 と 同 様 に 東 京 都 に お い て も金 融 機 能 が こ の 十 年 間 で 著 し く増 加 し て い

%90

80

70

60

50

40

図2金 融機 能 の集 中状 況(東 京 圏)

30

50525456586062(年 度)

注:日 本 銀 行 調 査 統 計 局 都 道 府 県 別 経 済 統 計 』

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80

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50

40

図3金 融 機 能 の集 中状 況(東 京 都)

30

50525456586062(年 度)

注:日 本 銀 行 調 査 統 計 局 都 道 府 県 別 経 済 統 計 』

84.4

預貯 金残 高

66.8 '

61.3

株式 売買高 '

54.8

' 57.3

'

' 49.4

50.4 貸出残高

44.5

43.3 38.1

34.3 手形交換 高 34.3

ii 1 1 1 1

一30一

(5)

る こ とが 読 み取 れ る。 しか も,東 京 圏 の シェアの大 部分 を東京都 が 支 えてい るこ と が はっ き りと窺 え る。 と りわ け金融 機 関の著 しい都心 集 中の状 況 は,在 日外 国銀行 の支店 の約68%と 在 日外 国証券 会社 の支 店 の92%が,千 代 田,中 央,港 の都心 三 区 に集 中 して立 地 してい る こ とに も表 われてい る。

この よ うな東 京へ の金 融機能 の集 中は,日 本 経済 の国際的 な地位 の高 ま りや金融 の 自由化 ・国際化 を反映 した もので あ り,そ れ に よって東 京 の 国際金融 セ ンター と

しての重 要性 が増大 した こ とによ る もので あ る。 そ れ を物 語 る ように,80年 代 に入 って東京 には,外 国の金 融機 関が これ まで以 上 に進 出 し,国 際金 融機 能の集積 が急 速 に進展 してい る状 況 にあ る。

(2)集 中 が 緩 や か に 進 展 し て い る 分 野

次 に,こ の 十 年 間 に 東 京 へ の 集 中 が 緩 や か に 進 展 した 分 野 を 人 と金 の 両 面 か ら考 察 し て み よ う 。 ま ず,人 関 連 の 指 標 と し て,人 口,職 業 別 従 業 者 数,産 業 別 就 業 者 数 に 注 目 し て み た い 。 全 国 に 占 め る 東 京 圏 の 人 口 の 割 合 は,昭 和30年 度 の17.0%か

ら40年 度 の21.0%,50年 度 の24.0%へ と急 増 し た 後,そ れ 以 降 は 緩 や か な 増 加 に 転 じて い る 。 た と え ば,昭 和55年 度 に お け る東 京 圏 の 対 全 国 比 は24.3%で あ っ た の に 対 し て,62年 度 の そ れ は25.2%と わ ず か な が ら増 加 して い る 。50年 代 か ら60年 代 の は じ め に か け て の 人 口 の 趨 勢 は,前 半 よ り も後 半 の 方 が 幾 分 増 加 傾 向 を 示 し て い る と言 っ て よ い 。

こ れ は,東 京 圏 へ の 人 ロ 流 入 が こ の 間 一 貫 して 横 ば い ま た は 微 増 で あ っ た の に対 し,東 京 圏 か ら の 人 口 流 出 が し だ い に 減 少 し た た め に 生 じた 現 象 で あ る 。 こ の 要 因 の 一 つ と し て は,「 第1次 ベ ビ ー ブ ー ム 世 代(昭 和22‑一一24年生 ま れ:昭 和50年 に26〜28 歳,昭 和55年 に31〜33歳)が,人 口 流 出 世 代(大 都 市 圏 の20〜29歳)か ら 定 着 世 代 へ 移 行 し て い っ た と い う コ ー ホ ー トの 構 成 変 化 に よ る 影 響 」(経 済 企 画 庁 総 合 計 画 局 編,

%40

30

20

10

図4職 業別 従 業 者数 の推 移

05055

注:総 務 庁 『国 勢 調 査 』 専 門 的 ・技 術 的職 業

事務的職業

28.1 30.5

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32.7

図5第3次 産 業 、金 融 ・保 険 業 、 サ ー ビ ス 業 の 就 業 者 数 の 推 移

33.0 金 融 ・保 険 業(東 京 圏)

267第 三 次 産業(東 京圏)

ロノ

̲.̲・ ・一 ・一 ・一'一'一 ヂニ 琶亥 業(東 京 圏) 25.4

23.7

金 融 ・保 険 業(東 京 都)

28.3

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16.? 第=次 産 業(東 京都)

22.5

16.4

60(年)

15.3サ ー ビ ス業(東 京 都)15・6 5053

注:総 務 庁 『事 業 所 統 計 』

5661(年)

(6)

1989,p68)を 上 げ る こ とが で きる。 しか しなが ら,こ れ を東 京都 の人 口傾 向 と比 較 して み る と,ほ ぼ横 ばい状態 を示 してい る こ とか ら,50年 代 以 降 にお け る東 京圏 の人 口増 は東京都 以外 の三 県 の増 加 によ る もので あ る と判 断 して 間違 いは ない。

では,職 業別 従業者 数 と産業 別就業 者 数の推 移 に注 目す る とど うだ ろ うか 。まず, 対 全 国比 自体 につい てみ る と,人 口の場合 とそれ ほ ど大差 が ない こ とが わか る。図 4は,最 近十 年 間 の東 京 圏 にお け る職 業 別従 業 者 の推移(対 全国比)を ま とめ た も ので あ る。事 務 的職業従 業者 の方 は,昭 和50年 度 が30.5%,55年 度が30.2%,60年 度 が31.0%と やや増 加傾 向 にあ る ものの ほ とん ど変化 は見 られ ない。それ に対 して, 専 門的 ・技 術 的職業 従業 者 の方 は,昭 和50年 度 が28.1%で あ るの に対 して,60年 度 は31.0%と 比 較 的増 加傾 向が 顕著 で あ る。 これ を東京 圏 と東 京都 に分 けて,第 三次 産業,金 融 ・保 険業,サ ー ビス業 とい った産 業別 の就業 者数 で整理 してみ たのが 図 5で あ る。 この 図 を見 る と,東 京 圏 の第三次 産業就 業者 数 の対 全 国比 が,昭 和50年 度 の26.7%か ら61年 度 の28.3%へ と増加 してい る こ と,こ れ にはサ ー ビス業就 業者 数 の増 加 が大 き く寄 与 して い るこ とが読 み取 れ るだ ろ う。 それ とは対 照 的 に,東 京 都 にお け る第三 次 産 業就 業 者 数 とサ ー ビス業就 業者 数 の 変化 はほ とん ど見 られ な

いQ

以 上 の 点 を も う 一 方 の 金 額 に つ い て の 指 標 で 見 て み る と ど う で あ ろ う か 。 図6と 図7は,最 近 十 年 間 に 東 京 圏 と 東 京 都 で,総 生 産 額 と 商 業 販 売 額 の 全 国 シ ェ ァ が 各 々

ど の よ う に 変 化 し た か を 表 し た も の で あ る 。 そ れ に よ る と,東 京 圏 に お け る 総 生 産 額 の 全 国 シ ェ ア は,昭 和50年 度 が28.4%,56年 度 が28.9%,60年 度 が29.9%と 緩 や か な 増 加 を示 し て い る こ と が わ か る 。 一 方,東 京 都 の 全 国 シ ェ ア は,昭 和50年 度 が 16.7%に 対 して56年 度 が16.4%と 一 時 的 に や や 減 少 して い る も の の,全 体 と し て は 同 じ よ う に 緩 や か な 増 加 傾 向 に あ る 。

他 方,商 業 販 売 額 を 指 標 に と っ て 検 討 し て み る と,東 京 圏 の 全 国 シ ェ ア が,昭 49年 度 は35.6%,54年 度 は35.2%,60年 度 は38.6%と 全 体 と し て は や は り緩 や か な

図6総 生 産 額 の推 移 図7商 業販 売 額 の推 移

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30

ボ享 ,。

15

9.9

7.L

10

505254565860(年 度)

注 二経 済 企 画 庁 編 『県 民 経 済 計 算 年 報 』

%60

50

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30

20 49515457

注:通 産 省 「商 業 統 計 表 』

8.6

2.1

60(年)

32

(7)

増加傾 向 を示 して いて,人 関連 の指標 か ら読 み取 れ る傾 向 を裏打 ち して い る と言 っ て よい。 た だ,前 述 の総 生産額 の場合 と違 う点 は,昭 和54年 度 か ら57年 度 にか けて 幾分 高 い伸 び を示 した後,最 近 は若干 で はあ るが減 少傾 向 に転 じてい る こ とで あ る。

こ う した傾 向 は,図7に 示 され た東 京都 の全 国 シ ェアにつ いて見 た場 合 で もまった く変わ りはない。

(3)変 化 が見 られない分野 ない し分散 が進 展 して いる分野

反対 に,こ の十 年 間で東京 へ の集 中 に変化 が見 られなか った分 野 ない しは分散 が 進 んで い る分野 を取 り上 げてみ よ う。 まず,変 化 の見 られ ない もの と して は,本 社 機 能 を上 げ る ことが で きる。 図8は,東 京 圏,東 京都,23区 別 に最 近十年 間 の上場 企 業 の本社 立 地状 況(全 国シェア)を ま とめ た もので あ る。 昭和63年 現在 の全 国 シ ェ アにつ いて見 る と,東 京 圏が54.6%,東 京都 が48.8%,23区 が47.2%を 占め てお

り,上 場 企業 の ほぼ半数 が東京 都 に立地 してい る こ と,し か も,そ の なか の97%が 23区 に集 中 して い るこ とが わか る。 この割合 は,十 年前 の昭和54年 度 と比較 してみ

る とほ とん ど変化 してお らず,ほ ぼ横 ばい状 態 にあ る と言 って よい。 さ らに,こ う した傾 向 を資 本金100億 円以上 の上 場 企業 に限定 して検討 す る と,昭 和63年 度 の東 京 圏の全 国 シ ェアが62.6%,東 京都 の それが58.1%,23区 の それが57.5%と な り, 大企業 ほ ど東京 圏 と りわ け23区 に立 地 して い る割合 が高 い ことが は っ き りす る。 ま

た,資 本 金100億 円以 上 の大 企業 の場 合,東 京 圏 の全 国 シ ェアだ けが最 近五 年 間 に わずか なが ら増 加 して い る ことに も留意 してお きた い(図9参 照)。

他 方,分 散 が進 んで い る分 野 に 目を転 じてみ る と,情 報サ ー ビス業 と製造 業が そ の代 表格 で あ る ことが わか る。 もっ と も,製 造業 に比べ 情報 サ ー ビス業 の近 年 にお ける成長 は著 し く,東 京圏 や東京都 の全 国に 占め るシ ェア は,か な りの高率 で あ る こ とに注意 す る必 要が あ る。 この点 を踏 まえた上で,ま ず,情 報 サ ー ビス機 能 の分 散 化 を確 かめ るた めに,情 報サ ー ビス業 の事業 所数 と従業 者数 を指標 と して採 用 し

%60

50

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20

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図8本 社 立 地 状 況(上 場企 業)

54596163(年)

㎜ 東 京圏 匹】東京都 黙23区 注:東 洋 経 済 新 報 社 会 社 四 季 報 』

図9

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20

10

資 本 金100億 円以 上 の 上 場 企 業 の本社 立 地 状 況

58 63(年)

注:東 洋経 済 新報 社 『会社 四季 報 』

(8)

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40

30

図10情 報 サ ー ビス 業の 事 業所 数 、 従 業者 数 の推 移

注:総 務 庁 「事業 所統計 』

56

60.5

7808配﹂4

42.1

61(年)

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禽30

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図11製 造 品 出荷 額 の推 移

1

関東圏

34.7 357

26.6

東京 圏

東京都 26..9

9.0 7.8

35.4

24.8

7.2

05052

5456586061(年)

注:通 産 省 『工 業 統 計 表 』

て み よ う 。 図10は,昭 和50年 か ら61年 の 期 間 に,二 つ の 指 標 の 全 国 シ ェ ア が ど の よ う に 推 移 し た か を 示 し た も の で あ る 。 東 京 圏 で は,こ の 期 間 に 事 業 所 数 の 全 国 シ ェ ァ が55.5%か ら50.7%へ と4.8%減 少 し,従 業 者 数 の 全 国 シ ェ ア も,61.1%か 60.5%へ と わ ず か な が ら減 少 し て い る 。 こ う し た 緩 や か な 分 散 化 は 東 京 都 の 場 合 に も 同 じ よ う に 見 ら れ,昭 和61年 度 の 全 国 シ ェ ア が,事 業 所 数 で は42 .1%(対50年 比5.0%減),従 業 者 数 で は48.8%(同4.6%減)と 幾 分 減 少 し て い る の が わ か る 。

次 に,製 造 業 の 分 散 状 況 を 調 べ る た め に,製 造 品 出 荷 額 を 指 標 と し て 検 討 し て み よ う 。 こ れ ま で に 見 た 情 報 サ ー ビ ス 業 と比 較 す る と,東 京 圏 や 東 京 都 に お け る 製 造 業 の 全 国 シ ェ ア は 格 段 に 低 い(図11参 照)。 す な わ ち,東 京 圏 の 全 国 シ ェ ア は 昭 和50 年 度 が26.9%,十 年 後 の61年 度 が24.8%と ほ ぼ4分 の1に す ぎ ず,加 え て 減 少 傾 向

に あ る 。 と り わ け 東 京 都 の シ ェ ア は 低 い 。 し か も,昭 和50年 度 が9.0% ,61年 度 が わ ず か7.2%と し だ い に 減 少 し て き て い る 。 こ れ ら の 数 値 は,地 方 へ の 工 場 の 移 転 が 着 実 に 進 ん で い る こ と を 物 語 っ て い る 。 参 考 ま で に こ れ を 関 東 圏 に ま で 広 げ て み る と,よ う や く製 造 業 の 全 国 シ ェ ア は 増 加 傾 向 に 転 じ る が,そ れ で も全 体 の3分

1に 過 ぎ な い こ とが 読 み と れ る だ ろ う 。

(4)東 京 圏へ の集 中 と東 京都へ の集 中

これ まで に検 討 した東 京 圏へ の集 中の動 向 を東 京都へ の集 中の動 向 と比較 してみ る と,必 ず しも両者 が 一致 しない こ とが わか る。 そ こで最後 に,分 野別 にい くつ か の主 だ った指標 を拾 い上 げ,こ れ まで に見 た東 京 一極 集 中の地域 的 な特徴 を総 合 的 に考察 して お きたい と思 う。 まず,金 融 関連分 野 の各指標 につ いて は,金 融機 能が 東 京都 心 部 に集 中 して い るため,東 京都 の動 向が その まま東京 圏 の動 向 とな って お り,集 中が両者 とも著 しく進 んで い る とい った傾 向が見 られ る。 同様 に,総 生 産額 や商業 販売 額 につ いて も,東 京 圏 と東 京都 で と もに全 国シ ェアが増大 し集 中が 進 ん で いる。 しか しなが ら,東 京都 の方 が集 中の傾 向 は よ り顕 著 であ る。一方,人 口に

一 一34一

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つ いて見 る と,東 京 圏 の人 口の伸 び率 が東 京都 の それ を上 回 ってお り,東 京 圏へ の 集 中が進 んで はい る ものの東京都 で はほぼ横 ばい状 態 とな ってい る。事 業所 数 お よ び従業 者数 に関 して も,人 口の場 合 と同様 に東京 圏 で は集 中傾 向 にあ るが,東 京都 で は逆 に全 国シ ェアが減少 してい る。以 上 とは対 照 的 に分 散が 進 んで い る もの には, 第二次 産業 就業 者,製 造 品 出荷 額,工 場立 地状 況 の各指標 が あ る。 これ らの指標 に つ いて は,東 京 圏,東 京都 ともに全 国 シ ェアが 減少 し分散 が進 んでい るが,と くに 東京都 にお いて その傾 向が顕著 で あ る。

以 上 を総 合 す る と,80年 代 に入 って発 生 した東京 へ の一極集 中は,高 度 経 済成長 期 に生 じた人 や モ ノの圧倒 的な速度 の物 理 的集 中 と比較 して,金 融 や企 業 の中枢管 理機 能 の集 中 とい った側 面が よ り顕 著 とな って い る。今 回 の東京 一極集 中は,そ れ に と もな って住 宅 問題,居 住環 境整備 の立 ち遅 れ,交 通 混雑,防 災 問題 な どの都市 問 題 を よ り顕在 化 させ,東 京 圏 内 に住 む都市 生活 者 の不 満 を一層増 大 させ る結果 と

な った 。 と くに地価 の高 騰 は,国 民 生活 や都 市整備 の面 な どに多 大 の支障 を きた し てい る。以 下で は,こ う した東京 一極集 中に付 随 して発 生 して い る都市 問題 として の 「東京 問題 」 の実態 を よ り詳 しく考 察 してみ る こ とに しよ う。

4.都 市 問 題 と して の 「東 京 問 題 」

(1)戦 後 最大 の地価 の高騰

1984年 か らは じまった地価 の高騰 は,戦 後 三 回 目の もので 「バ ブル地価 」 と呼ぶ のが適 当 であ ろ う。今 回の地価高 騰 は,商 業地 の地価 上昇 が先行 し,地 域 的 に は東 京 圏の地価 上昇 が著 しい こ と,ま た都 心部 ほ ど高変動 率 を示 して い る点 に特 徴 が あ る。一 例 と して,今 回 の地価高騰 の実態 を公示 地価 に よって見 て み る と,短 期 間 の うち にいか に ドラステ ィ ックな変動 が起 こったかが 理解 で きる。す な わち東京 圏で は,87年 か ら88年 にか けて地価 の高騰 が ピー クに達 し,ピ0ク 時 の変動 率 は,住 宅 地 が実 に68.6%,商 業地 が61.1%を 記 録 した(ち なみに,東 京都区部 のピーク時 にお ける変動率は,住 宅地が76.8%,商 業地が76.2%で ある)。 これ を高騰 前 の83年 度 の公示 地価 と比 較す る と,わ ず か五年足 らず の問 に住 宅地 が2.50倍,商 業 地が3.41倍 に急 騰 した こ とにな る。

こ う した 「バ ブル地価 」 を引 き起 こ した原 因 を探 って み る と,少 な くと も次 の三 つ の要 因が考 え られ る。 まず,今 回の地価 高騰 は,基 本 的 に は都心 の オ フ ィス ビル 需要 が増 大 した こ とが きっか け とな った。す な わち,本 社 機 能や外 資系企 業 の都 心 指 向,情 報化 ・OA化 の進展 に ともな う床 需要 の増 大 な どに よって,都 心 にお ける オ フ ィス ビルの需要 が高 ま り,ビ ル用地 を確 保 す るため の企業 の投機 的な取 引が活 発化 した点で あ る。そ の結 果,都 心 部 の住 宅地 が業 務地化 し,そ れ に商業 地価格 が 跳 ね返 る とい う ように,住 宅地 を巻 き込 み なが ら地価 高騰 が進 行 した。 い わゆ る, 国際化,情 報化,サ ー ビス化 とい った経 済構造 の変化 とオ フ ィス需要 の急 激 な増大 に と もな う都心 商業 地 の地価高騰 であ る。 そ して,こ の東 京都 心部 の商業 地 に端 を

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図12地 価 上昇 の波 及過程

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資 料:国 土 庁 土 地 局

発 した地価 の上 昇 は,図12に 示 した よ うに,「 周 辺 の商業 地 に波及 す る と同時 に, 都 心部等 の住 宅地 に商業 地価格 が 反映 し,さ らに多摩 地域 か ら東 京 圏,続 い て大阪, 名 古屋 圏,地 方 中心 都市 に波及 して い くとい う構i図をと って」(東 郷,1992,p.13) 進行 した のであ る。

こ う した地価 の高騰 に拍 車 をか けたのが,低 金利 下 の金余 り現 象 とそれ に よる資 金 の積極 的 な貸 し出 しとい う第二 の要 因で あ る。 い わゆ る,金 融 面 にお け る過 剰流 動i生で あ る。 また,こ れ らの要 因 に加 えて,都 市計 画,土 地利 用規 制 がい まだ十分 に整備 され てい なか った こ と も,地 価 の高騰 に歯止 めがか か らなか った第三 の要 因

と して指 摘 で きるだ ろ う。

(2)地 価 の高騰 に ともな って顕在 化 した諸 問題

で は,以 上 の ような地価 の高騰 がい か なる都 市 問題 を顕在化 させ た のだ ろ うか。

この点 につ いて はさ まざまな問題 を指摘 で きるで あ ろ うが,そ のなか でわ れわ れが と くに重 要 と考 え るの は,① 住 宅 問題 お よびそ れ との関連 で生 じた夜 間人 ロの空洞 化 や高齢 化率 の上 昇 に よる コ ミュニ テ ィ活動 の衰退 問題,な らび に,② 社 会資 本整 備 の立 ち遅 れが原 因で生 じた居 住環 境 問題で あ る。以 下,順 を追 って それ ぞれ の問 題 点 を考 察 して み よ う。

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①住 宅 問題 お よび コ ミュニテ ィ活 動 の衰退 問題

東 京 圏 にお ける住 宅事 情 は,住 宅 ・宅地供給 の不 均衡 に よって ます ます深 刻化 し てい る。第一 に指摘 で きる こ とは,今 回 の地価 の高騰 によ って住宅価 格 が上 昇 し, 新 規 の住 宅取 得 が難 し くな って い る点 で あ る。東 京 圏の住 宅 地価格 の年 間可 処分所 得 に対 す る比 率 は,昭 和50年 の後 半 に は減 少傾 向 にあ った もの の,「 バ ブ ル地価 」 に よって低所 得層 の み な らず平均 的 な勤労 者層 に とって も,都 内23区 や その周辺 地 域 で新 たに住 宅 を取得 す るこ とが著 し く困難 に な って きてい る。 その結果,取 得 可 能 な住 宅地 が都 心か らます ます 遠 ざか り,都 内で働 く者 に とって は長時 間通勤 が常 態化 してい る。 この よ うな遠方 の住 宅へ の居住 は,家 庭生 活 に もさま ざまな悪 影響 をお よぼす。 とりわ け,サ ラ リーマ ンの精神 的,肉 体 的 な負 担増 や ウイ ー クデ ーが ほ とん ど母子 家庭化 して い る とい った状 況 は,子 供 の養育面 に も少 なか らず 支 障 を

きた して い る と考 えな ければ な らない。

第二 に,公 共住 宅 の供 給 が用地 の取得 難 な どに よって難 し くな ってい るほか,民 間賃貸住 宅 の供給 も,規 模 や家賃 の面 で都 市住 民 の期 待 にそ う もの にはな ってい な い。た とえ ば,住 宅 の規模 につ いて言 え ば,国 の定 めた最低居 住 水準(4人 世帯で50㎡) に満 た ない世帯 が全体 の二割近 くもい る現 状 で あ る。現在,大 都市 の住民 の六割近 くが民 間の賃貸 住宅 に住 んで い るが,そ の多 くは狭 くて設備 も劣悪 な状 態 にあ る。

参考 まで に88年 度 の住宅 統計調 査 を例 に とる と,東 京都 区部 にお ける一住 宅 当 た り の平均 床 面積 は,持 ち家 が91.76㎡ に対 して,住 宅 総数 の約 六 割 を占め てい る民営 の借 家(170万 戸)で は,34.16㎡ とわず か三分 の一 の広 さ しか な いのが実状 で あ る。

この ような狭 い住 居 に はゆ っ く りと くつ ろげ る空 間 もない し,三 世代 同居 な どの場 合 には,狭 い住居 に生 活 して い るこ とに よって家族 関係 が 歪 め られ る とい った弊害

も生 じて い る。

と りわ け深 刻 な の は民 間 の木造 賃 貸 住 宅(狭 小過密住宅)で あ る。 と くに,高 齢 者 で一人 暮 ら しの借 家住 まいの場合,風 呂が な く トイ レや台所 も共 用 とい う劣 悪 な 居住 環 境 の木 造賃 貸 住 宅 に住 む比 率 が きわめ て高 い。 こ う した木造 賃貸 住 宅 は,

「新宿,台 東,墨 田,荒 川,太 田,豊 島 な どの 区 に多 く(い ずれ も20%以 上),さ ら に 『設備 共用 』 の比 率 の高 い(老 朽化 した)木 賃 アパ0ト 居住 世 帯 は,新 宿,文 京, 台 東,墨 田,江 東,渋 谷,豊 島 な どに多 い(い ずれ も30%以 上)。 よ り正確 に は木賃 アパ ー トはほ ぼ山手線 の沿 線地域 に 『木賃 アパ ー トベル ト地帯』 を形 成 して い る」

(高橋1992,p.28)こ とが報告 されて い る。これ らの地域 は,東 京 の旧市 街地(15区) の周辺 に相 当 し,明 治 末期 か ら大正 時代 にか けて と,昭 和 の戦後 に無 計画 に住 宅が 建 設 され,高 密化 して きた地域 で あ る。 なかで も問題 なの は,当 該地 域で は高齢化 率が高 く人 ロの減 少 も目立 ってい る点で あ る。 とい うの は,都 心 周辺 地域 で は,地 価 の上 昇 に と も な っ て 住 み 替 え を考 え る30代 か ら40代 の核 家 族 を 中心 に,地 価 が 安

く自然 環境 に も恵 まれ た郊 外へ 転 出す る傾 向が あ るか らであ る。反対 に,高 齢 者層 は長 い 間住 み慣 れ た地域 に とどまる傾 向が強 い。 こう した事情 か ら,都 心 周辺 地域 で は,財 政 基盤 を危 う くす る よ うな地域 の過疎化 と ともに,生 活機 能が低 下 しコ ミ

ュニテ ィ活 動 が衰退 す る とい った深 刻 な事 態 が生 じて い る。現在,東 京都 で は,区

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部 の特 定地域 に密 集 してい る木 造賃 貸住 宅 を改 善 し,当 該 地域 の再生 を どの ように してはか るかが大 きな政策 課題 とな ってい る。

② 社会 資本 整備 の立 ち遅 れ が原 因 で生 じた居住 環境 問題

豊か な住 生 活 を実現 す るため に は,個 々の住 宅 の質 的向上 と併せ て 良好 な居 住環 境 の確 保 が不 可欠 であ るが,東 京 圏 にお ける上 下水 道,都 市公 園,道 路 網,廃 棄物 処 理施 設 な どの居住環 境施 設 の整備 は,地 価 の高騰 に よる用地 取得 の 困難 さや供給 能力 の限界 な どの要 因が重 な って,そ れぞれ 困難 な問題 をか か えてい るのが実状 で あ る。なかで も東 京 圏 にお ける交通 問題 は,職 と住 の遠 隔化 に よる通勤 時 間の増大, 自動車利 用 の増大 に と もな う交通 混雑 の激化,排 気 ガス に よる大 気汚 染,騒 音 お よ び振 動,駐 車場 問題 と多 岐 にわ た ってい る。 交通 混雑 につ いて具体 的 な数値 を例 に 上 げれ ば,東 京 都 内の 自動車保 有台 数 は年 々増 え続 けてお り,地 価 高騰 以前 の84年

に320万 台 であ った ものが,六 年 後 の90年 に は403万 台へ と25%も 増加 して い る。一 方,こ の間 の東 京都 内 にお ける都 市計 画道 路 の完成 延長 の伸 び は147km(11%増)に す ぎない。東京 におけ る道路 の拡張 は きわめて困難 な事業 で あ り,平均 道路 率 を1%

上 げるの に約 十年 を必要 とす る と言 われ てい るほ どで ある。

こ う した増 加 の一途 をた どる 自動車 交通量 を処 理 す るため に は,都 市 活動 を支 え る体 系 的 な道 路網 の整備 に加 えて,自 動 車 の使 用抑 制 な ど総 合 的 な交通 政策 を とる こ とが重 要 とな る。現 時 点 の重 点課 題 は,東 京 圏全 体 を視 野 に入 れ なが ら,核 都市

図13東 京 圏の広域 幹線 道路 ・都 市 高速 道路

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な ど周辺 地域 を育成 す るこ とに よって都 市 の一点集 中構 造 を再編 す る こ とであ り, その ための広 域交 通網 や幹線 道路 網 の整 備が 進 め られてい る。

深 刻化 す る交 通 渋滞 を緩和 し,広 範 な都 市 活動 を支 え る交 通網 を形成 す るた め,放 射 路線 の み な らず,環 状路 線 を重点 に整備 を促 進す る必要 が あ る。また, 東京 圏 を視野 におい た多核 ・多心 型 の都 市構造 へ の再編 を誘 導 し,自 動 車交 通 の広 域 分散 をはか るた め,広 域 幹 線 道路 の整備 を促 進 して い く必 要が あ る(東 京都企画審議室,1990a,p.208)。

東 京都 は,以 上 の よ うな課題 に対 処す るため に,『 第 三次東 京都長 期計 画』(1990年) の なか で,「 ① 東京 圏 の業 務核 都 市 な ど との連携 を高 め,自 動 車交 通 を分散,誘 導 す るため,広 域 幹線 道路網 の整備 を促 進 す る」 こ とを 目標 に掲 げて,東 京 外郭 環状 道路,核 都 市広 域幹 線 道路,首 都 圏 中央連 絡 道路(圏 央道)の 整 備 を進 めて い る。

また,副 都 心 の育成 な ど多心型都 市構 造 へ の再 編 お よび一般 道路 の混雑緩 和 をはか るため に,中 央 環状線,都 心新 宿線,多 摩新宿 線 な どの都 市 高速道 路 の整備 と,都 市 の骨 格 を形成 す る幹線 道路 の体系 的な ネ ッ トワ ーク化 を推進 してい る(図13参照)。

また,活 発 な都市 活動 や モ ー タリゼ ー シ ョンの進 行 は,多 くの利 便性 や物 質 的な 豊 か さ を都 市住 民 に もた ら した反面,そ の顕在 的逆機 能 と して大気 汚染 や騒 音 な ど の環境 問題 を発 生 させ た。東京 都 は,こ れ まで に 「東 京都 公害 防 止条例 」(1969年) をは じめ と して,「 東 京 にお ける 自然 の保護 と回復 に関す る条例 」(1973年),「 東 京 都環 境影 響評 価条例 」(1980年)を 制 定す るな ど,積 極 的 な環境行 政 を推進 して きた。

その結果,東 京 の環境 汚染 は一 時の危 機 的状 況 を脱 した もの の,旺 盛 な都市 活動 や 利便 性,効 率 性 を追求 す る都 市 的生活 様式 な どによ って,80年 代 に入 る と都 市型 ・ 生 活型 の環境 問題 がふ た た び顕在化 して きた。

多 くの環境 問題 の なかで もと くに注 目 した いの は,大 気 汚染 と りわ け窒素 酸化 物 の 問題 であ る。 最近 の汚 染状 況 と して は,「 二 酸化 硫 黄 と一 酸化 炭素 は環境 基準 を 達 成 して い る もの の,二 酸化 窒 素や 光化 学 オキ シ ダン ト等 につ い ては,環 境 濃度 の 改善 が す す ん でい ない」(東 京市政調査会,1992,p.21)と い う。1985年 度 の窒 素 酸 化 物 の排 出量 を例 に とる と,自 動 車 の排気 ガ ス に よる ものが全体 の70%を 占 めてお

り,と くにデ ィーゼ ルの排 出割合 が高 い こ とが指 摘 されてい る。

都 で は,窒 素酸 化 物対 策 と して,「 工 場,事 業場 に対 す る総 量 規制 の徹 底 をはか る一方,自 動 車排 出ガス規 制が もっ と も基 本 的な政 策で あ る と考 え,規 制 強化等 に つ いて 国 に要 望 す る とと もに,自 動車 使 用合 理 化 の推 進,低 公 害 車 の利 用」(東 京 市政調査会,1992,p.21)を 促 進 して い る。さ らに,「87年 に は環 境管 理計画 を策 定 し, 窒 素 酸 化 物 削 減 目標 と基 本 的 な施 策 を明 らか に す る ほ か,89年 に は,自 動 車 公 害 防 止 対 策 を総 合 的 ・計 画 的 に推進 す るた め 『東京 都 自動 車公 害 防止 計 画』 を策定 」 (東京市政調査会,1992,p.22)し て,90年 度 まで に二 酸化 窒 素 につ いて の環境 基 準 を総体 と して達成 す るこ とをめ ざ してい る。

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以上 の よ うな都 市 問題へ の対応 と して は,個 別 の問題 ご とに適切 な都市 政策 を積 み重 ね る こ とが重要 であ るの は言 うまで もない。しか しなが ら,東 京 圏 におい て は, 住 民 の生活 圏 や企 業 の活動 圏が行 政 区域 をこえて拡 大 し,広 域 的 に密接 な関係 を形 成 してい る こ と も忘 れて はな らな い。 したが って,都 市 問題 と しての 「東 京 問題」

へ の対応 も,必 然 的 に広 域 的 な観 点 か ら対応 す るこ とが重要 に なって きてい る。そ れ は,と りもなお さず,「 業 務 管理機 能 を中心 とす る都市 機 能 の集 中 に起 因 してい る0点 集 中型 の都市 構造 を,多 心 型 の構造 に転換 し,都 心部 にお ける重 荷 を軽 減す ると と もに,都 市機 能 の広域 的 な展 開 をはか る こ と」(東京市政調査会,1992,p.25) にほか な らない。

5.東 京 圏再 編 の基 本 的枠 組 み

東京 一極 集 中 を是正 す るための東 京 圏再編 の方 向 は,そ の前 提 と して東 京 の都市 空 間 を どの よ うに把握 す るか が 出発 点 となって い る。つ ま り,東 京 の都 市空 間 は, すで に飽 和状 態 なのか,そ うで ないのか 。飽 和状 態 で はない とす れ ば,改 造 の方 向

は必然 的 に東京 の都市 空 間 を タテ に延 ばすの か,ヨ コに延 ばす の か とい う二者 択0 になるだ ろ う。反対 に,飽 和 状 態 だ とい う見 方 に立て ば,東 京 へ の集 中圧 力 をどの よ うに して回避す るのか とい うこ とが問題 にな る。 その手 法 は,機 能移転 なのか遷 都 なのか,あ るい は人 ロ抑 制 なのか 。東京 一極集 中 を是 正 す るた め に東京 圏 の再編 をめ ざ して 策 定 さ れ た 『首 都 改 造 計 画』(1985年)や 『第 四 次 首 都 圏 基 本 計 画』

(1986年)は,基 本 的 に は 「都市 集積 の メ リ ッ トを最大 限 に評価 し東 京 の 巨大 化 を 肯 定 しよ う とす る視 点(巨 大化肯定)」(佐 々木,1991,p.223)に 立 って い る。東京 は 日本の牽 引車 として,も っ と大 き くな って よい とい う考 え方 で あ る。 この 点で は, 都 市集積 の デ メ リ ッ トに注 目 し東 京 の巨大化 を否定 す る遷都 論 とは対 照的 で あ る。

た だ,『 首都 改 造計 画』 や 『首 都 圏基 本計 画』 は,東 京 の 巨大化 を無条 件 に肯 定 す るの で はな く,消 極 的 に肯 定す る立場 で あ る こ とに も注意 す る必 要 があ る。消極 的 に肯定 す る とい うの は,東 京 が 過度 に巨大化 す る ことは好 ま しくないが,所 得 の 格差 そ の他人 間 の 「向都 性」 は,自 然 の動 きで あ るため止 む を得 ない とす る考 え方 に立脚 して い る。 こ う した考 え方 か ら,さ らに二種 類 の改造 方法 を導 出す るこ とが で きる。 い わゆ る 「副都 心育成 説」 と 「圏域 内分散 説」 で あ る。都 心 に対 置 して副 都心 を配 置す る とい う前 者 の改 造手 法 は,都 内 の多摩 地域 の空 間 まで利 用 して文化, 居住,研 究 とい った機 能別 の空 間 をつ くり(つ まり空間を機能別 に特化 させて),核 と な る複 数 の 「心」 を育成 しよう とい う ものであ る。 いわ ゆる多心化 政 策で あ る。 こ う した多 心型構 造論 をは じめて 明確 に打 ち出 したの は,1963年 の大都市 再 開発 問題 懇 談 会 の提 言 だ と言 わ れ て い る。 そ れ以 降 の都 庁 の 東 京 改 造 論 は,東 京 の 巨 大 化 を 消極 的 に肯定 す る立場 に立 って構想 され た もの ばか りで,例 外 な くこの機能 別特化 論 と多 心型 構造 論 を基 盤 に して進 め られて きた と言 って よい(東 郷,1986,pp.44‑

47)。 そ れ に対 して,後 者 の圏域 内分 散説 は,東 京 圏 内の ヨコの広 い空 間 を活用 し, よ り広 域 的 に機 能分 散 を図 ろ う とい うもので あ る。 こ う した広 域 的分散 論 は,都 庁

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の東京改 造論 と違 って,都 市機 能 を都 内 に とど ま らず東 京 圏内 に分 散 させ,そ れに よって多核 多心型 の都 市構1造を育成 す る ことをめ ざ してい る(佐 々木,1991,p.226)。

言 うまで もな く,国 土庁 が進 め る 『首都 改造計 画』や 『第四次 首都 圏基本 計画』 は, この圏域 内分散説 にほか な らない。 この政策 は,前 述 した よ うに,80年 代 以 降 に発 生 した新 た な東 京一極 集 中 を是正 す るには広 域 的 な観 点か らの対 応 が必要 だ とす る 考 え方 を基礎 と してい る。

要 す る に,「 副都 心 育成 説」 と 「圏域 内分散 説 」 は,国 際責 任 論 あ るい は東京 に 対 す る外 国の評価 な ど,い わば世界 レベ ル の問題 意識 か らす れ ば,「 諸機 能 の集 中 は利 益 に こそ なれ,決 して不利 益 に はな らな い… …[む しろ],国 際金融 機 能 以外 の世界 的規模 の都市 機能 は まだ まだ不 十分で あ り,今 後 一層 の強化 が必 要 とされて い る」 とい った共 通 の考 え方 に立脚 して い る。 しか し他 方 で,都 市 レベル の問題意 識 か らすれ ば,諸 機 能 の過 集 中が将来 の東京 に とって望 ま し くない ばか りかす で に 重 荷 にな って い る こ とか ら,「 集 中 か ら生 じる様 々 な都市 問 題 を解消 し,都 市構 造 の歪 みや都市 機能 の不 均衡 を是 正す るため には,過 度 に集積 した機能 の分 散 を図 る 必要 が あ る」(東 京都企画審議室,1990b,pp.14‑15)と の認 識 で一 致 して い る と見て

よい。 いわ ゆ る選択 的分散 を重 視す る立場 で あ る。

基 本 的 には,東 京 圏 内外 へ の諸機 能 の分 散 を志 向 しつ つ も,東 京 圏が,わ が 国の発展 に貢献 す る最大 の極 と して の役 割,国 際 中枢都 市 と しての役 割 を担 っ てい くべ きであ る として,東 京 の果 たす役 割 を積極 的 に位置 づ けて い るのであ る。 い うなれ ば,都 市機 能 の過度 の集 中 を招 くこ とな く,高 次 の都 市機 能へ の 質的転換 をすす め,そ の他 の業務 機 能 につ い て は選択 的 に分 散 す る とい う構 図

を意 図 してい るので あ る(東 郷,1986,p.22)。

こう して、 バ ブル経済期 に相 次 いで策 定 され た 『東京都 長期 計 画 マ イ タウ ン東 京21世 紀 をめ ざ して』(1982年)や そ の改 訂 版 で あ る 『第二 次 東 京都 長 期 計画 マ イ タ ウ ン東 京21世 紀 へ の 新 た な展 開』(1986年),『 第 三 次 東 京都 長 期 計 画 マ イ タウ ン東 京21世 紀 をひ ら く』(1990年)で は,東 京 の都 市構 造 を一 点 集 中 型か ら,職 と住 の均衡 の とれ た多 心型 へ と転 換 し,都 心 部へ の これ以 上 の業 務機 能 の集 中 を抑 え,副 都 心 や多摩 の 「心」へ 誘導 し分散 立 地 させ る 「多心 型都 市づ く り」

を都市構造 論 の基 本 にす え るこ とにな った。多心 型都 市構 造論 は,ま さ し く東京 に お け る都 市作 りの基 本 的課題 と言 って よい だ ろ う(東 郷,1986,p.44)。 他 方,国 土 庁 の 『首都改 造計 画』や 『第四次首都 圏基本 計画』で は,広 域 的分散 論 の立場 か ら, 都心部 に集 中 しが ち な業務機 能 を東京 圏全体 で 適切 に受 け止 め る よう,東 京 圏で の 機 能 集 積 の 拠 点 とな る 「業 務 核 都 市 の 整 備 」 を基 本 政 策 と して打 ち 出 して い る。 こ の 政策 の背 後 には,「 中核 となる都 市 施 設 の整備 が促 進 され,良 好 な業 務市 街地 の 形成 が進 め ば,経 済 原則 に基づ い て都 心 と業務核 都 市 との 間で諸機 能 の選 択 的分 散 が 図 られ,多 核 多 圏域 型 の都 市づ く りに向 けて の動 きが 活発化 す る」(東 京都企画審 議室,1990b,p.36)と の楽観 的 な見 方が存 在 して い るこ とは否 定 で きない。

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6.業 務 核 都市 構 想 の 内在 的 批判

(D業 務 核都 市構 想 の基 本方 針

まず は じめ に,東 京一極 集 中の是 正策 として,業 務 核都 市 の整備 を積極 的 に打 ち 出 した 「多極 分散型 国土 形成促 進法」(以 下 「促進法」 と略記)に つ いて見 て お こ う。

この 「促 進 法」(1988年)は,1987年 に策 定 された 『第 四次 全 国総 合 開発 計 画』(以 下 「四全総」 と略記)の 基 本 法 と して の性 格 を もつ と同時 に,そ れ を推 進 し実施 す る

ための立 法 で もあ る。 ここで言 う多極分 散型 国土 の形成 とは何 を意味 してい るので あ ろ うか。 四全 総 で はそ の 目的 を次 の よ うに述べ て いる。

「交流 ネ ッ トワー ク構想 の推 進 に よ って,各 地域 を活性 化 し,多 極 分 散 型 国 土 を形 成す る必要 が あ る。 本格 的国 際化 の時代 が到 来 し,東 京 圏が世 界都 市 と して の役 割 を高 め る中で 国土 の均 衡 あ る発展 を図 るため に は,高 次都 市機 能 を 東 京 圏が一元 的 に担 うので はな く,そ の多極 的 な分担 に よ り東京 一極 集 中 を是 正 す る と ともに地 方 圏 を戦略 的,重 点 的 に整 備す る ことが特 に重 要」で あ る と。

つ ま り,東 京 の世界 都市化 と共 に生 じた一極 集 中構 造 の弊害 を是正 し国土 の均 衡 あ る発展 を 目標 として,東 京 圏 と地方 圏 の役 割 の分担,と くに地方 圏の戦 略的 ・重点 的 な整 備 を強調 した もの と言 って よい。 そ のなか で と くに,東 京 圏の役割 や位 置づ けにつ いて は以 下 の よ うに述べ られて い る。

「東 京 圏 は,我 が 国 の首都 と して のみ な らず,金 融,情 報等 の面 で世 界 の中 枢 的都 市 の一 つ と して,我 が国及 び国際経 済社会 の発展 に寄 与す る。そ のた め, 国際 金融機 能等 の都 心部 で の展 開 に伴 う要請 に対応 し,都 心部 及 び東京 臨海 部 の総合 的整備 を進 め る。 また,都 心 部 に集 中 しが ちな業務 機 能等 を圏域 全体 で 適切 に受 け止 め る よ う,業 務核都 市 等へ の諸機 能 の=選択 的分散 等地域 構 造 の改 編 を推 進 す る と ともに,通 勤 の利 便性 の向上 を図 りつつ,良 好 な住 宅 の供 給 を

図 る等 東京 圏 の居 住 環境 の改善 を進 め る」 と。

こ こで強調 されて い るのは,い わ ゆ る都心部 の国際 金融 セ ンター化 と周辺 部へ の業 務 機能 の選択 的分 散化 を軸 とした東京 圏再編 の視 点 で ある。 その成否 を握 る もの と

して期待 され てい るのが業 務核都 市 の整備 で あ る。

四全総 を推 進 す る 「促進 法」 は,東 京一極 集 中 を是 正 し多 極分 散型 の 国土 を形 成 す る た め に,全 国 的 な視 野 に立 って,(1)国 の行 政 機 関 等 の 移 転,(2>地 方 の振 興 開 発, (3)業務核 都市 の整備 とい う三つ の基本 的方策 を打 ち出 して い る。 だが,本 稿 で考 察 の対 象 とす る業務核都 市構 想 は,も とも と東京 圏 とい う限定 された範域 の なか で, 80年 代 に入 って顕在化 した 「東京 問題」 に対 す る広域 的 な対応 の必 要性 か ら提 起 さ れ た もの と言 って よい。 す なわ ち,東 京 圏 にお いて は,住 民 の生活 圏 や企 業 の活動

一42一

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圏が行 政 区域 を越 えて広 が って い るため,そ れ に ともない住 民 や企 業 の広域 的 な関 係 もます ます密接 に な って きて い る。 したが って,「 東京 問題 」 につ い て は,広 域

的 な観 点 か ら対 応 す る必 要 があ る とい うわ けで あ る。

ところで,こ の 「業務 核都 市」 とい う概念 が提起 され たの は,四 全総 が は じめて で はない。最 初 にこの概 念 を明確 に位 置づ けたの は,先 にみ た国土庁 にお け る首都 改 造 に関連 した計 画 の なか にお いて であ る。 そ こで次 に,東 京 圏の再編 とい う本 来 の文脈 の なか に業 務核都 市 を位置 づ け直 し,そ の特徴 を よ り詳 しく検討 して み るこ とに しよ う。

85年 に策 定 された 『首都 改造計 画』 で は,東 京 大都 市圏 にお ける東 京都心 部へ の 一 極依 存構 造 を

,「 巨 大都 市 の集積 を効率 的 かつ 最大 限 に生 かす 構造 」 として肯 定 的 に と らえ なが らも,そ れ に と もな う多様 な都市 問題 に対応 す るため に,東 京 大都 市 圏の地域構 造 を再編 す る必 要性 を強調 して い る。 そ のため の首都改 造 の基本 方針 と して,「 東 京都 心 部へ の一極 依存 構造 にかわ って,分 化 を基調 と した,複 数 の核 と圏域 を有 す る多核多 圏域 型 の地域構 造 を形成 し,こ れ を基 調 として,東 京大都 市 圏 を連 合都 市 圏 として再構 築す るこ と」 を提 起 してい る。

その分化 の ため の圏域 と して構 想 され たのが,五 つ の 「自立都 市 圏」 であ り,そ の核 とな るのが 「業務核 都 市」 で あ る。 その基 本 的 なコ ンセ プ トは こ うであ る。 ま ず,東 京都 区部 において は,諸 機 能 の過 度の集 中 と拡 大 を抑 制 しつ つ人 口の定 着 を 図 り,均 衡 あ る地域社 会 の形成 をめ ざす こ とが課題 とされて い る。 一方,自 立都 市 圏 の形 成 につ いて は,東 京都 区部 の周 辺 部 に核都 市 を戦略 的 に育成 し,そ れ らの核 都 市 を中心 と して,新 た な地域社 会(す なわち,こ こで言 う五つの自立都市圏)を 形成 す る こ とが 目標 とされて い る。 この核 都 市が言 うまで もな く業 務核都 市 であ る。 こ の業務核 都 市 につ いて は,東 京都 区部 の 「周辺 部 にお いて,地 域社会 の経 済 的 自立 性 の向上 の担 い手 と して,ま た,高 次 の都 市 的サ ー ビス提 供 の場 と して,自 立 都市

圏 の核 とな る」 もの と位置 づ け られて い る。

さらに,こ う した業務核 都市 の整備 方針 と して は,1984年 の4月 に 「業 務核都 市 基 本方針」 が公 布 され た。 その なかで,業 務核 都市 の整備 地域 を,① 広域 的 な経済 社 会 生活 圏 の中心 であ る こ と,② 東 京 圏 にお け る適 正 な配 置 に資す る こ と,③ 中核 的施設 ・業 務施 設 の用 地 の確 保 が容 易で あ る こ と,④ 業務核 都 市整備 が一体 的,効 率 的 に行 われ る地域 で,原 則 と して市 町村 を単位 と して設 定 す る こ とが打 ち出 され た。業務核都 市 を整備 す る場合 の拠 点地域(業 務施設集積地域)の 中核 とな るのが, こ こで言 う中核 的施 設 で あ る。 これ は,特 定施設(「 民間事業者の能力の活用 による特 定施設の整備 の促進 に関する臨時措置法」第二条第一項各号に掲げる施設),ま た は政 令 施 設(多 極分散型国土形成促進法施行令第七条各号 に掲 げる施設)の うちの,① 業 務 機 能 集 積 の た め に必 要 な 基 盤 とな る施 設,② 業 務 機 能 集 積 を誘 発 させ る 先 導 的 な施 設 の いず れ か に該 当す る もの とされて い る。そ の整 備 に際 して配慮 すべ き重要 事項 と

しては,他 の計画 との調 整,環 境 の保 全,地 価 の安 定,適 正 かつ合理 的 な土地利 用, 災 害 防止,業 務機 能 と居 住機 能 の調和,広 域 的 な交通体 系 の整備 の ほか,東 京 圏内

の地方公 共 団体 間の連携 の充実強化 を図 る よ う努 め るこ とが 上 げ られ てい る。

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