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ヨーロッパの一体性を求めて

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博士学位論文

ヨーロッパの一体性を求めて

欧 州 統 合 へ の イ ギ リ ス の 政 府 間 主 義 的 ア プ ロ ー チ

2014

9

愛 知 県 立 大 学 大 学 院 国 際 文 化 研 究 科 国 際 文 化 専 攻

山 田 亮 子

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目 次

第 1節 ヨ ー ロ ッ パ の 統 合 を め ぐ る 二 つ の 立 場

第 2節 先 行 研 究 の 検 討 4

2-1 超 国 家 的 統 合 の 立 場 か ら の 評 価

2-2 新 た な 視 点 か ら の 再 考 7 第 3節 先 行 研 究 の 問 題 点 と 本 研 究 の 課 題 10 第 4節 二 つ の 課 題 の 歴 史 的 背 景 14 4-1 イ ギ リ ス 主 導 に よ る ヨ ー ロ パ の 統 一

4-2 「 制 限 さ れ た 責 任 」 の 原 則 17

第 5節 論 文 の 構 成 19

第 6節 英 仏 の 対 立 と WEU の 位 置 付 け に つ い て 21 章 欧 州 政 治 協 力 (EPC) の 進 展 と イ ギ リ ス 26

は じ め に 第 1節 EPC の 登 場 ― フ ー シ ェ ・ プ ラ ン か ら ハ ー グ ・ サ ミ ッ ト ま で 29 1-1 政 治 統 合 の 始 ま り と フ ー シ ェ ・ プ ラ ン の 挫 折

1-2 ハ ー グ ・ サ ミ ッ ト 31

第 2節 EPC発 足 と 時 代 背 景 33

2-1 EPCと イ ギ リ ス

2-2 東 西 デ タ ン ト に 伴 う 諸 問 題 34 2-3 デ タ ン ト と EPC発 足 と の 関 連 37 2-4 デ タ ン ト ・EPC・ イ ギ リ ス の EC 加 盟 38 第 3節 デ タ ン ト の 進 行 と 英 ・ 仏 ・ 西 独 の 収 斂 39

3-1 複 数 の 新 展 開

3-2 NATO の 分 裂 40

3-3 超 大 国 デ タ ン ト 42

3-4 EPC の 発 展

第 4節 「 欧 州 外 交 政 策 」 の 登 場 と イ ギ リ ス の 貢 献 44 4-1 EPCの 強 化

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4-2 範 囲 の 拡 大 46 4-3 単 一 欧 州 議 定 書 47 4-4 イ ギ リ ス の 構 想 48

お わ り に 50

章 ブ レ ア 政 府 の 方 針 転 換 と 共 通 外 交 ・ 安 全 保 障 政 策 (CFSP) 55 は じ め に 第 1節 仏 独 の 協 調 と イ ギ リ ス の 孤 立 57

1-1 仏 独 の 共 同 提 案

1-2 メ イ ジ ャ ー 政 府 と マ ー ス ト リ ヒ ト 条 約 59 第 2節 ブ レ ア 政 府 と ア ム ス テ ル ダ ム 条 約 62

2-1 国 益 に 適 う 構 想

2-2 譲 歩 と 抑 制 63

第 3節 中 立 国 に よ る 提 案 の 背 景 と 影 響 66

3-1 提 案 の 背 景 67

3-2 イ ギ リ ス と の 共 同 歩 調 68

第 4節 安 全 保 障 ・ 防 衛 政 策 の 発 展 70

4-1 方 針 転 換 の 本 質 と サ ン ・ マ ロ 英 仏 共 同 宣 言

4-2 ア メ リ カ の 反 応 75

お わ り に 78 章 ブ レ ア 政 府 の 欧 州 政 策 と イ ラ ク 戦 争 参 戦 へ の 道

― ― 二 人 の 外 相 の 視 点 か ら 84 は じ め に

第 1節 ヨ ー ロ ッ パ の 指 導 的 パ ー ト ナ ー 86 1-1 EU拡 大 へ の イ ニ シ ア テ ィ ヴ 87

1-2 人 道 的 介 入 と コ ソ ボ 紛 争 89

第 2節 ブ レ ア 首 相 の 逸 脱 ― イ ラ ク 戦 争 参 戦 の 決 断 93

2-1 参 戦 の 前 提 条 件 94 2-2 安 全 保 障 理 事 会 で の 合 意 を 求 め て 97

2-3 逸 脱 と 抵 抗 99

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第 3節 ヨ ー ロ ッ パ へ の 回 帰 103

お わ り に 107

章 イ ラ ク 戦 争 後 の EU安 全 保 障 ・ 防 衛 政 策 の 新 展 開 ― 欧 州 憲 法 条 約 草 案 を め ぐ る 攻 防 と ブ レ ア 政 府 の 功 績 113 は じ め に 第 1節 欧 州 憲 法 条 約 草 案 と EU 内 分 裂 の 危 機 115

1-1 コ ン ベ ン シ ョ ン 開 催 の 背 景 116 1-2 コ ン ベ ン シ ョ ン と イ ギ リ ス 117 1-3 バ ル ニ エ 報 告 書 の 提 案 と イ ギ リ ス の 異 議 118

1-4 対 立 の 焦 点 120

第 2節 対 立 か ら 妥 協 へ ― 新 し い 緊 急 対 応 部 隊 構 想 の 形 成 121

2-1 英 仏 共 同 の 防 衛 イ ニ シ ア テ ィ ヴ 122

2-2 4か 国 に よ る ミ ニ ・ サ ミ ッ ト の 波 紋 124

2-3 合 意 に 向 け た 交 渉 と 二 つ の 妥 協 125

2-4 欧 州 憲 法 条 約 の 合 意 128

第 3節 共 通 安 全 保 障 ・ 防 衛 政 策 (CSDP) の 成 立 が 意 味 す る も の 129

3-1 ブ レ ア 政 府 の 功 績 3-2 CSDPに 対 す る イ ギ リ ス 政 府 の 評 価 132

お わ り に 135

141

第 1節 政 府 間 協 力 と 統 合 の 推 進 142

第 2節 課 題 の 検 討 と 各 章 で の 成 果 143

2-1 第1章 で の 検 討 の 成 果 144

2-2 第2章 で の 検 討 の 成 果 145

2-3 第3章 で の 検 討 の 成 果 147

2-4 第4章 で の 検 討 の 成 果 148

第 3節 本 研 究 の 意 義 151

参 考 文 献 154 資 料(EUと NATO の 拡 大 ・ 略 年 表 ) 160

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1

第 1 節 ヨ ー ロ ッ パ の 統 合 を め ぐ る 二 つ の 立 場

2014年 現 在 、28 か 国 を 構 成 国 と す る 欧 州 連 合 (EU: European Union) は 、 フ ラ ン ス ・ 西 ド イ ツ ・ ベ ル ギ ー ・ オ ラ ン ダ ・ ル ク セ ン ブ ル ク ・ イ タ リ ア の 6 か 国 を 創 設 メ ン バ ー と し て 1952 年 に 発 足 し た 「 欧 州 石 炭 鉄 鋼 共 同 体 (ECSC:

European Coal and Steel Community)」 を 起 源 と し て い る 。 そ の ECSC の 発 足 に 至 る 背 景 に は 、 近 代 国 家 の 確 立 以 来 頻 発 し て い た 主 権 国 家 間 の 戦 争 を 回 避 す る 方 法 と し て 、 欧 州 統 合 が 提 唱 さ れ て き た 経 緯 が あ る 。 平 和 思 想 と し て 育 ま れ て き た 欧 州 統 合 の 理 念 は 、 第 1次 世 界 大 戦 後 に 、 没 落 し た ヨ ー ロ パ の 復 権 を 求 め る 「 汎 ヨ ー ロ ッ パ 運 動 」 と し て 拡 大 し た 。 そ れ は 、 既 に 経 済 が 国 家 の 範 囲 を 乗 り 越 え て い る と い う 認 識 を も と に 、 国 境 を 廃 止 し て ヨ ー ロ ッ パ に 平 和 と 再 生 を も た ら す 欧 州 統 合 へ の 支 持 を 訴 え る も の で あ っ た1。そ の 理 念 は 、第 2 次 世 界 大 戦 に よ っ て 荒 廃 し た ヨ ー ロ ッ パ を 再 建 す る 試 み の 中 で 、 実 現 に 向 け て 大 き く 動 き 出 し た 。 戦 後 、 東 西 冷 戦 が 進 行 し 、 国 際 的 緊 張 が 次 第 に 増 大 す る 情 勢 の 中 で 、 ヨ ー ロ ッ パ に 真 の 平 和 と 復 興 を も た ら す こ と を 目 的 に 、 仏 独 和 解 に 基 づ く 欧 州 統 合 を 実 現 す る 要 求 が 高 ま っ て い た 。

復 興 に 取 り 組 む 欧 州 大 陸 に お い て 、 急 速 な ド イ ツ の 復 活 と 台 頭 を 恐 れ る フ ラ ン ス は 、 ド イ ツ の 脅 威 を 抑 制 す る た め に 仏 独 間 の 和 解 に 基 づ く 国 際 機 構 の 創 設 を 提 案 ( シ ュ ー マ ン ・ プ ラ ン ) し た 。 そ れ は 特 定 の 領 域 で 国 家 主 権 を 超 越 す る

( 拘 束 で き る ) 権 限 を 備 え る 超 国 家 的 機 関 の 創 設 で あ っ た 。 そ こ に 各 国 の 主 権 を 委 譲 す る こ と に よ っ て ド イ ツ の 基 幹 産 業 で あ る 石 炭 ・ 鉄 鋼 の 生 産 を 国 際 的 に 管 理 す る こ と が 意 図 さ れ て い た 。 そ の 目 的 は 、 国 際 的 枠 組 み の 中 に ド イ ツ 復 興 の 原 動 力 を 埋 め 込 む こ と で 仏 独 間 の 戦 争 を 物 理 的 に 不 可 能 と し 、 戦 争 で 荒 廃 し た ヨ ー ロ ッ パ に 平 和 と 繁 栄 を 築 く こ と で あ っ た2。石 炭・鉄 鋼 部 門 に 限 定 し て 統 合 を 進 め る 6 か 国 の 共 同 体 は 、 や が て 経 済 全 般 に 渡 る 「 共 同 市 場 」 構 想 に 発 展

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し 、1958 年 に は 加 盟 国 の 主 権 の 一 部 を 共 同 体 に 委 譲 す る こ と を 規 定 し た ロ ー マ 条 約 が 発 効 し EEC (European Economic Community) の 発 足 に 至 っ た 。

大 西 洋 に 浮 か ぶ 島 国 イ ギ リ ス で は 、 英 仏 海 峡 の 向 こ う の 大 陸 で 始 ま っ た 統 合 の 動 き を 懐 疑 的 に 見 て お り 、 共 同 体 創 設 の プ ロ セ ス に 対 し て 極 め て 非 協 力 的 な 態 度 を 示 し た 。ECSC の 創 設 に 繋 が る フ ラ ン ス の 提 案 、 つ ま り 、 当 時 の 基 幹 産 業 で あ っ た 石 炭 と 鉄 鋼 の 生 産 を 各 国 政 府 の 影 響 力 か ら 独 立 し た 共 通 の 高 等 機 関 の 管 理 下 に 置 く と い う 案 に 対 し て 、 イ ギ リ ス は 検 討 の 結 果 、 参 加 し な い こ と を 決 定 し た 。 そ れ は 、 そ の プ ラ ン が 「 国 家 主 権 の 部 分 的 放 棄 」 を 前 提 と し て い た た め で あ る3。イ ギ リ ス は 国 家 主 権 の 放 棄 を 受 け 入 れ る 訳 に は い か な か っ た 。な ぜ な ら 、 主 権 の 委 譲 は 、 イ ギ リ ス が ヨ ー ロ ッ パ の 復 興 を 支 援 す る に 当 た り 自 ら 設 定 し た 限 界 を 超 え る か ら で あ っ た4。こ の よ う な 立 場 を と る イ ギ リ ス は 、ヨ ー ロ ッ パ に お い て 超 国 家 的 な 統 合 が 始 ま る 過 程 に 創 設 メ ン バ ー と し て 参 加 す る 機 会 を 失 い 、 仏 独 を 中 心 に 推 進 さ れ た 欧 州 統 合 か ら 距 離 を 置 く こ と に な っ た 。

し か し 、イ ギ リ ス は 1961年 に 初 め て EEC へ の 加 盟 申 請 を 行 っ た 。こ の 姿 勢 の 転 換 は 、 イ ギ リ ス が 欧 州 統 合 の 根 本 に あ る 超 国 家 性 を 受 け 入 れ た た め で は な く 、 急 速 に 発 展 す る EEC に 加 わ る こ と で 生 じ る 利 害 を 勘 案 し て 決 断 に 至 っ た も の で あ っ た5。 結 果 と し て 、 イ ギ リ ス の 第 1 次 加 盟 申 請 は 拒 否 さ れ 、 そ の 後 1967年 に 行 っ た 第 2次 加 盟 申 請 も 挫 折 し 、最 終 的 に イ ギ リ ス が 欧 州 共 同 体(EC:

European Community)6 に 加 盟 を 果 た し た の は 1973 年 の こ と で あ っ た 。 欧 州 統 合 を め ぐ り 、 イ ギ リ ス が 欧 州 大 陸 諸 国 と は 異 な る 立 場 を と っ た 背 景 に は 、 国 家 主 権 に 対 す る 考 え 方 の 違 い が 根 底 に あ っ た こ と は 明 ら か で あ る 。 国 家 主 権 の 委 譲 を 受 け 入 れ な い イ ギ リ ス の 立 場 は 、そ の 後 イ ギ リ ス が EEC/EC か ら EU に 続 く 欧 州 統 合 の 周 辺 に 位 置 す る と み な さ れ る 決 定 的 な 要 因 と な っ た 。 両 者 の 間 で 、な ぜ 国 家 主 権 の 捉 え 方 に 違 い が 生 じ た の か 、ま た 、今 日 に 至 る ま で 、 な ぜ イ ギ リ ス が 国 家 主 権 の 浸 食 を 嫌 い 、 大 陸 諸 国 と 歩 調 を 合 わ せ る こ と に 抵 抗 を 示 し た の か と い う 疑 問 を 解 明 す る に は 、 イ ギ リ ス の 国 家 の 成 り 立 ち や 戦 争 体 験 が 、 そ れ ら に 基 づ く 安 全 保 障 観 も 含 め て 、 大 陸 諸 国 の 状 況 と は 大 き く 異 な る こ と を 再 認 識 す る 必 要 が あ る 。

加 え て 、 戦 後 の イ ギ リ ス と 欧 州 大 陸 諸 国 と の 関 係 を 考 え る 際 に は 、 仏 独 中 心

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3

に 推 進 さ れ た 欧 州 統 合 の 観 点 か ら だ け で な く 、東 西 分 断 が 進 む 時 代 背 景 の 中 で 、 イ ギ リ ス が 独 自 の 視 点 か ら ヨ ー ロ ッ パ の 一 体 性 の 確 立 を リ ー ド し た こ と に も 注 目 し 、 十 分 に 検 討 す る こ と を 忘 れ て は な ら な い 。 欧 州 大 陸 に お い て 超 国 家 的 な 統 合 が 始 ま る 以 前 か ら 、イ ギ リ ス が 第 2次 世 界 大 戦 後 の 国 際 秩 序 構 築 に 中 心 的 役 割 を 果 た し た こ と は 広 く 認 め ら れ て い る 。 戦 後 の 欧 州 再 建 へ の 努 力 の 中 で 、 次 々 と 設 立 さ れ た OEEC (Organization for European Economic Cooperation)、 ブ リ ュ ッ セ ル 条 約 機 構 、 欧 州 審 議 会 、 NATO (North Atlantic Treaty Organization)、WEU (Western European Union) は 、 す べ て イ ギ リ ス 政 府 の 方 針 に 沿 っ た 政 府 間 主 義 的 な 国 際 協 力 機 構 で あ り 、 イ ギ リ ス が 主 導 す る ヨ ー ロ ッ パ の 統 一 と 国 際 秩 序 の 建 設 を 体 現 す る も の で あ っ た 。政 府 間 主 義 と い う の は 、 国 際 機 構 に お い て 各 国 共 通 の 利 害 に 関 し て 協 議 す る 場 合 、 各 国 政 府 の 拒 否 権 を 認 め 、 全 会 一 致 を 原 則 と し て い る 。 そ こ で の 決 定 は 全 て 各 国 政 府 を 経 由 し て 実 施 さ れ 、 各 国 政 府 の 権 限 は 国 際 機 構 で の 決 定 に 拘 束 さ れ る こ と な く 尊 重 さ れ る と い う も の で あ る 。 従 っ て 、 政 府 間 協 力 の 場 合 、 政 治 、 経 済 、 外 交 、 軍 事 の 各 領 域 に お い て 各 国 は 、 国 際 機 構 で の 決 定 事 項 に よ る 介 入 を 受 け る こ と な く 、 国 家 主 権 を 維 持 で き る の で あ る 。 政 府 間 協 力 に 基 づ く ヨ ー ロ ッ パ の 一 体 性 の 確 立 を 追 求 す る イ ギ リ ス と 、 超 国 家 的 統 合 に よ る ヨ ー ロ ッ パ の 平 和 と 繁 栄 を 希 求 す る 大 陸 諸 国 は 、 そ の 立 場 の 根 本 的 な 違 い を 、 戦 後 ヨ ー ロ ッ パ の 復 興 を め ぐ る 協 議 の 中 で 次 第 に 顕 在 化 さ せ て い っ た 。 両 者 が 対 立 す る 中 で 、 大 陸 諸 国 は イ ギ リ ス の リ ー ダ ー シ ッ プ を 回 避 し 、超 国 家 的 欧 州 統 合 の 理 想 を 求 め て ECSC の 創 設 に 向 か っ た の で あ る 。

本 研 究 は 、 イ ギ リ ス が 超 国 家 的 欧 州 統 合 か ら 距 離 を 置 く こ と に な っ た 要 因 と し て 、 同 国 が 国 家 主 権 の 委 譲 を 受 け 入 れ な い 立 場 を と る こ と に 注 目 し 、 そ こ に 至 る イ ギ リ ス の 地 理 的 ・ 歴 史 的 背 景 の 一 端 を 明 ら か に す る こ と か ら 始 め る 。 そ れ を 手 掛 か り と し て 、 イ ギ リ ス 独 自 の 観 点 に 立 ち 、 欧 州 統 合 と イ ギ リ ス と の 関 係 を 見 直 し て い く 。 そ れ は 、 今 日 に 至 る ま で 、 イ ギ リ ス は 欧 州 統 合 の 周 縁 に 位 置 し て き た と す る 見 方 を 見 直 す こ と に 繋 が る も の で あ る 。 こ れ ま で 、 仏 独 中 心 に 推 進 さ れ る 超 国 家 的 統 合 の 立 場 か ら イ ギ リ ス の 姿 勢 が 評 価 さ れ 、 欧 州 統 合 に 消 極 的 な イ ギ リ ス を 表 す 様 々 な 見 方 が 提 示 さ れ て き た 。 こ う し た 見 方 に 対 し 、

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本 研 究 で は 、 戦 後 国 際 秩 序 の 形 成 を リ ー ド し た イ ギ リ ス の 政 府 間 主 義 的 な ア プ ロ ー チ の 延 長 線 上 で 、 イ ギ リ ス と 欧 州 統 合 と の 関 係 を 捉 え 直 す こ と を 試 み る 。 欧 州 統 合 を 政 府 間 主 義 の 立 場 か ら 見 直 す た め に は 、 ヨ ー ロ ッ パ の 経 済 的 統 合 の 進 展 に 伴 い 、 政 治 と 経 済 の 両 面 で バ ラ ン ス の と れ た 欧 州 統 合 を 達 成 さ せ る 目 的 で 出 現 し た 、 政 治 的 統 合 へ の 流 れ に 光 を 当 て る 必 要 が あ る 。 イ ギ リ ス が EC 加 盟 を 果 た す 1970 年 代 初 頭 に 、 そ の 第 一 段 階 と し て 「 欧 州 政 治 協 力 (EPC:

European Political Cooperation)」の 枠 組 み が 形 成 さ れ 、イ ギ リ ス は そ の EPC へ の 参 加 を 通 し て 、ヨ ー ロ ッ パ の 政 治 的 統 合 に 積 極 的 に 関 わ っ て い く 。EPC は や が て EUを 構 成 す る 政 府 間 協 力 の 柱 の 一 つ 、「 欧 州 外 交・安 全 保 障 政 策(CFSP:

Common Foreign and Security Policy)」 に 到 達 し 、 欧 州 諸 国 の 合 意 に 基 づ く 対 外 的 行 動 を 発 展 さ せ る 基 礎 と な っ た 。本 研 究 は 、EPC の 登 場 か ら CFSP の 発 展 に 至 る 、 ヨ ー ロ ッ パ の 政 治 的 統 合 に 向 か う 動 き を 概 観 し 、 そ の 過 程 に 積 極 的 に 関 わ り 、 重 要 な 役 割 を 果 た し た イ ギ リ ス 政 府 の 姿 勢 を 検 討 す る 。 そ れ を 通 し て 、 政 府 間 主 義 と 大 西 洋 主 義 を 柱 と す る 独 自 の 立 場 か ら ヨ ー ロ ッ パ の 一 体 性 を 求 め て 積 極 的 に 行 動 す る イ ギ リ ス の 姿 勢 を 明 ら か に し 、 欧 州 統 合 に 否 定 的 ・ 消 極 的 な イ ギ リ ス と い う こ れ ま で の 見 方 と は 異 な る 新 し い イ ギ リ ス 像 を 考 え る 視 座 を 提 供 す る 。

2 節 先 行 研 究 の 検 討

2-1 超 国 家 的 統 合 の 立 場 か ら の 評 価

こ れ ま で の 研 究 で は 、 イ ギ リ ス が ECSC へ の 参 加 を 選 択 し な か っ た こ と は 、 ヨ ー ロ ッ パ の 統 合 に 乗 り 遅 れ る こ と に な っ た 「 失 わ れ た 機 会 」 で あ る と す る 見 方 や7、欧 州 共 同 体 の 一 員 と な っ て も 、し ば し ば 、統 合 の 進 展 に 対 し て 適 用 除 外 を 主 張 す る イ ギ リ ス の 姿 勢 を 、「 乗 り 気 で な い ヨ ー ロ ッ パ 人 」8、「 厄 介 な パ ー ト ナ ー 」9、「 優 柔 不 断 な 傍 観 者 」10 と み な す な ど 、 欧 州 統 合 に 対 す る イ ギ リ ス の ネ ガ テ ィ ヴ な 姿 勢 を 表 す 様 々 な 見 方 が 提 示 さ れ て き た 。 そ う し た イ ギ リ ス の 印

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象 は 、EC 予 算 に 対 す る 自 国 の 過 剰 負 担 を 不 当 と し て 返 金 を 求 め る 非 妥 協 的 な 態 度 や11、 統 一 通 貨 ユ ー ロ に 参 加 す べ き か 否 か と い う 問 題 に 決 着 を つ け て い な い 現 状 に よ っ て ま す ま す 強 ま っ て い る12。 イ ギ リ ス の 欧 州 統 合 へ の 姿 勢 を ネ ガ テ ィ ヴ に 捉 え た 代 表 的 な 先 行 研 究 は 以 下 の と お り で あ る 。

1950 年 代 か ら 60 年 代 に か け て 、ECSC の 誕 生 か ら EEC の 発 足 へ と 超 国 家 的 な 統 合 が 進 む ヨ ー ロ ッ パ に お い て 、 統 合 形 成 の プ ロ セ ス へ の 不 参 加 を 決 断 し た イ ギ リ ス は 対 応 を 誤 っ た と い う 立 場 か ら 、「 船 に 乗 り 遅 れ た 」と い う 見 方 が 認 識 さ れ る よ う に な っ た 。 そ の 認 識 は 、 イ ギ リ ス が 第 1 次 EEC 加 盟 申 請 に 失 敗 し た 後 に 、イ ギ リ ス 政 府 内 に も 広 ま り 始 め た13。こ の 見 方 は 、イ ギ リ ス の 対 EEC 政 策 研 究 の 先 駆 者 と さ れ る ミ リ ア ム ・ キ ャ ン プ ス の 「the British missed the opportunity」と い う 表 現 を も と に し た と さ れ て い る 。キ ャ ン プ ス の 1964年 の 著 書 を 見 る と 、そ れ は 次 の 文 脈 で 使 わ れ て い る 。「 戦 後 数 年 間 に 、イ ギ リ ス は ヨ ー ロ ッ パ 大 陸 の 回 復 す る パ ワ ー と 統 合 に 向 か う 推 進 力 を 過 小 評 価 し 、 自 国 の 相 対 的 衰 退 を 理 解 す る の に 手 間 取 っ た た め に 、 自 国 が 望 む ヨ ー ロ ッ パ を 形 作 る 機 会 を 捕 え 損 な っ た 。」キ ャ ン プ ス は 、イ ギ リ ス は も っ と 早 い 時 期 に ヨ ー ロ ッ パ に 参 加 す る 決 断 を し て い れ ば 、 よ り 容 易 な 道 を 進 む こ と が で き た は ず だ と 述 べ て い る 。 そ の 根 拠 と し て 、 キ ャ ン プ ス は イ ギ リ ス と 大 陸 6か 国 と の 長 い 交 渉 の 間 に 生 じ た 軋 轢 と 緊 張 は 、6 か 国 の 結 束 を 強 固 に し 、 共 同 体 の 骨 格 を 6 か 国 の 意 向 に 沿 う 方 向 に 固 め る 触 媒 と し て 作 用 し た こ と を 挙 げ 、 よ り 早 期 の 、 ま だ ヨ ー ロ ッ パ が 柔 軟 な 時 期 に 、 イ ギ リ ス に そ の 用 意 さ え あ れ ば 、 リ ー ダ ー シ ッ プ を 無 償 で 得 ら れ た 時 期 が あ っ た と 主 張 し て い る14

し か し 、 こ う し た 見 方 は 、 イ ギ リ ス が 欧 州 統 合 へ の 参 加 を 見 送 っ た 根 本 的 原 因 が 、 国 家 主 権 の 委 譲 を 受 け 入 れ な か っ た こ と に あ る と い う 事 実 を 見 過 ご し て お り 、 大 陸 欧 州 諸 国 と イ ギ リ ス の 間 の 、 歴 史 的 背 景 に 基 づ く 国 家 主 権 の 捉 え 方 の 違 い を 考 慮 に 入 れ て い な い こ と は 明 ら か で あ る 。 本 研 究 で は 、 両 者 の 立 場 の 違 い を 明 確 に し た 上 で 、 大 陸 で 実 際 に 欧 州 統 合 が 始 ま る 以 前 か ら 、 戦 後 の 国 際 秩 序 の 形 成 に 指 導 力 を 発 揮 し た イ ギ リ ス の 立 場 を 中 心 に 、 ヨ ー ロ ッ パ と イ ギ リ ス と の 関 係 を 見 直 し て い く 。

政 治 学 者 ス テ ィ ー ブ ン ・ ジ ョ ー ジ が 1990 年 に 出 版 し た 著 書 の タ イ ト ル と し

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て 用 い た 「An Awkward Partner( 厄 介 な パ ー ト ナ ー )」 は 、73 年 に 共 同 体 の 一 員 と な っ て 以 来 、EC 諸 国 と の 意 見 の 相 違 を 表 明 し 続 け て 摩 擦 を 生 む イ ギ リ ス の 姿 勢 を 表 現 し て い る 。 そ の 見 方 は 、 イ ギ リ ス は 伝 統 的 な 姿 勢 に 固 執 す る 余 り 欧 州 統 合 の 理 想 を 受 け 入 れ る こ と に 失 敗 し た と い う 見 解 に 基 づ い て い る 。 ジ ョ ー ジ は 、 こ の イ ギ リ ス の 姿 勢 を 「 国 家 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ 」 に 対 す る 意 識 の 強 さ と 、 伝 統 的 な 国 際 協 調 主 義 に 依 拠 す る も の と し て い る 。 そ れ は 、 自 国 の 利 益 、 ア メ リ カ と の 関 係 、 さ ら に は 世 界 の 秩 序 に 関 す る 独 自 の 見 解 を 主 張 す る イ ギ リ ス の 姿 勢 が EC 諸 国 と の 意 見 の 相 違 の 源 と な り 、「 厄 介 な パ ー ト ナ ー 」、 つ ま り 、 論 争 を 引 き 起 こ し 、 ア メ リ カ 寄 り の ト ロ イ の 木 馬 と み な さ れ る 要 因 と な っ た と し て い る15

し か し 、 こ う し た 見 方 は 、 超 国 家 的 な 欧 州 統 合 を 理 想 と す る 立 場 か ら 、 イ ギ リ ス の 姿 勢 を 極 め て 否 定 的 に 捉 え た も の で あ り 、 政 府 間 主 義 と 大 西 洋 主 義 の 立 場 か ら 、 欧 州 統 合 を 自 国 の 方 針 に 沿 っ て リ ー ド す る こ と を 国 益 と 捉 え る イ ギ リ ス の 姿 勢 に 対 す る 公 正 な 評 価 を 阻 害 す る 偏 っ た 見 方 で あ る 。 本 研 究 で は こ う し た 偏 見 を 取 り 除 き 、 欧 州 統 合 に 対 す る イ ギ リ ス の 姿 勢 を よ り 広 い 視 野 で 評 価 す る 。

「Reluctant Europeans( 乗 り 気 で な い ヨ ー ロ ッ パ 人 )」は 、歴 史 家 の デ イ ヴ ィ ッ ド ・ ゴ ウ ラ ン ド と ア ー サ ー ・ タ ー ナ ー が 2000 年 に 出 版 し た 著 書 の タ イ ト ル と し て 用 い ら れ 、 欧 州 大 陸 か ら 離 脱 し て い る と い う 凝 り 固 ま っ た 意 識 を 克 服 で き な い で 、 統 合 す る ヨ ー ロ ッ パ の 周 辺 的 立 場 に 甘 ん じ 続 け る イ ギ リ ス の 姿 勢 を 表 し て い る 。 ゴ ウ ラ ン ド ら に よ る と 、 第 2 次 世 界 大 戦 以 降 現 代 に 至 る ま で 、 島 国 の 伝 統 と 戦 勝 国 イ ギ リ ス の 世 界 大 国 と し て の 意 識 が 、 イ ギ リ ス は ヨ ー ロ ッ パ か ら 離 れ て い る と い う 感 覚 の 源 泉 と な っ て き た 。 そ の 中 で 、 欧 州 統 合 へ の イ ギ リ ス の 参 加 と い う テ ー マ は 、 イ ギ リ ス 国 内 に お い て 、 国 家 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ ・ 独 立 ・ 主 権 と い う 問 題 に 関 す る 大 論 争 を 引 き 起 こ し 、 欧 州 大 陸 と の 緊 密 な 連 合 を 支 持 す る 国 家 的 同 意 の 形 成 を 困 難 に し た の で あ る 。 こ う し た 国 内 の 分 裂 が 、 イ ギ リ ス は 乗 り 気 で な い ヨ ー ロ ッ パ 人 と い う 大 陸 諸 国 の 見 方 を 強 め た と さ れ て い る 。 ゴ ウ ラ ン ド ら は ま た 、 連 邦 主 義 へ の 反 感 を 示 し た こ と も 、 イ ギ リ ス が 欧 州 大 陸 か ら 分 離 し て い る こ と を 決 定 付 け た 要 素 と し て い る 。 そ れ に つ い て

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ゴ ウ ラ ン ド ら は 、1940 年 代 に イ ギ リ ス が 、連 邦 的 ヨ ー ロ ッ パ の 構 想 を 大 陸 の 敗 戦 国 の 誇 大 な 妄 想 と み な し て 忌 み 嫌 っ た の と 同 様 に 、90年 代 に お い て も 、イ ギ リ ス は 連 邦 主 義 に 異 議 を 唱 え 、 マ ー ス ト リ ヒ ト 条 約 か ら 連 邦 と い う 言 葉 を 削 除 す る こ と を 促 し た 唯 一 の 国 で あ る と 述 べ 、 大 陸 諸 国 と の 立 場 の 違 い を 強 調 し て い る16

こ う し た 見 方 は 、 イ ギ リ ス の 地 理 的 ・ 歴 史 的 独 自 性 に 基 づ く 国 家 の 成 り 立 ち が 、 大 陸 諸 国 と は 異 な る こ と に 注 目 し な が ら 、 そ の 独 自 性 を 肯 定 的 に 捉 え る こ と な く 、 大 陸 と 分 離 し た イ ギ リ ス の 特 殊 性 に 捕 わ れ た 偏 っ た 見 方 で あ り 、 ヨ ー ロ ッ パ と 建 設 的 に 関 係 構 築 を 維 持 し よ う と し た イ ギ リ ス の 姿 勢 を 考 慮 に 入 れ て い な い 。 本 研 究 で は 、 大 陸 諸 国 と は 異 な る イ ギ リ ス の 独 自 性 を 肯 定 的 に 捉 え 、 独 自 の 視 点 か ら ヨ ー ロ ッ パ へ の 関 与 を 積 極 的 に 進 め る イ ギ リ ス の 姿 勢 を 明 ら か に す る 。

以 上 の 諸 研 究 の 立 場 を 纏 め る と 、「 時 宜 を 捉 え て 欧 州 統 合 へ の 参 加 を 決 断 し な か っ た イ ギ リ ス の 選 択 を 誤 り と し 、 そ の 結 果 、 自 国 の 国 益 に 適 わ な い 方 向 に 発 展 し た 共 同 体 へ の 参 加 を 余 儀 な く さ れ た イ ギ リ ス は 、 伝 統 的 な 意 識 を 克 服 で き な い た め に 、欧 州 統 合 を 受 け 入 れ る こ と が で き な く な っ た 。」と い う よ う に 、ヨ ー ロ ッ パ に 対 す る イ ギ リ ス の 姿 勢 を き わ め て 否 定 的 ・ 悲 観 的 に 捉 え て い る の が 明 ら か で あ る 。 こ う し た 立 場 は 、 イ ギ リ ス が 独 特 の 地 理 的 ・ 歴 史 的 背 景 と 戦 争 体 験 に 基 づ く 独 自 の 視 点 か ら 、 ヨ ー ロ ッ パ の 一 体 性 を 求 め て 積 極 的 に ヨ ー ロ ッ パ と 関 わ っ た 経 緯 に 注 目 す る こ と な く 、 仏 独 の 主 導 で 進 展 す る 超 国 家 的 欧 州 統 合 の 立 場 か ら イ ギ リ ス の 姿 勢 を 評 価 し た も の で あ る 。 こ の 見 方 は 、 イ ギ リ ス と 欧 州 統 合 の 研 究 の 中 で 広 く 定 着 す る も の と な っ て い る 。 そ の 一 方 で 、 イ ギ リ ス の 政 府 資 料 の 公 開 が 進 む に つ れ て 、 イ ギ リ ス は ヨ ー ロ ッ パ に 対 し て 遥 か に 建 設 的 に 関 与 し 、 指 導 力 を 発 揮 し た と い う 見 方 も 現 れ る よ う に な っ た 。 歴 史 家 の ジ ョ ン ・ ヤ ン グ 、 シ ョ ー ン ・ グ リ ー ン ウ ッ ド 、 ジ ョ ン ・ ケ ン ト の 研 究 が こ の 系 統 に 属 し て い る 。

2-2 新 た な 視 点 か ら の 再 考

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第 2次 世 界 大 戦 直 後 に イ ギ リ ス が 発 表 し た 「 第 3 勢 力 」 構 想 に つ い て 、 ヤ ン グ は 、 イ ギ リ ス の リ ー ダ ー シ ッ プ の も と で 西 欧 諸 国 間 の 協 調 を 働 き か け 、 独 立 独 行 の 西 欧 を 作 り 上 げ る こ と を 目 指 し た も の と 評 価 し て い る17。 そ の 目 的 は ソ 連 と 対 決 し 、ア メ リ カ に 匹 敵 す る よ う イ ギ リ ス の 国 力 を 強 化 す る こ と で あ っ た 。 そ の 一 方 で 、ヤ ン グ は 、EEC 加 盟 を 決 断 し た イ ギ リ ス の 対 外 政 策 を「 革 命 的 変 化 」 と み な し 、 そ う し た 変 化 を 選 択 し た イ ギ リ ス の 方 針 と 、 イ ギ リ ス の 伝 統 的 な 目 的 、 即 ち 、 世 界 の 中 で 自 国 の 国 力 ・ 影 響 力 を 強 化 す る こ と に 固 執 し 続 け る イ ギ リ ス の 姿 勢 と の 間 に 、「 明 白 な 矛 盾 が あ る 」と 指 摘 し て い る 。そ し て ヤ ン グ は 、イ ギ リ ス は な ぜ ヨ ー ロ ッ パ に 向 か っ て 動 き な が ら 、伝 統 的 な 国 際 的 影 響 力・

国 家 主 権・国 益 に 関 し て 、相 当 な 継 続 性 を 維 持 し て い る の か と 問 い か け て い る18。 ヤ ン グ が 指 摘 す る イ ギ リ ス の 明 白 な 矛 盾 と い う の は 、 従 来 の 政 府 間 主 義 に 基 づ く 国 力 の 強 化 を 追 求 す る 姿 勢 を 維 持 し な が ら 、 超 国 家 的 な 性 格 を も つ 欧 州 統 合 に 接 近 す る 政 策 を と っ た こ と を 指 し て い る 。 仏 独 を 中 心 に 推 進 さ れ る 欧 州 統 合 は 、 国 家 主 権 の 一 部 を 共 同 体 に 委 譲 す る こ と を 前 提 と し て 統 合 の 深 化 を 推 進 す る 力 を も ち 、 仏 独 の 国 益 に 適 う 方 向 を 目 指 し て い た 。 他 方 で 、 こ の よ う な 方 向 性 を も つ 共 同 体 に 参 加 し た イ ギ リ ス は 、 国 力 を 強 化 し て 米 ソ と 肩 を 並 べ る こ と を 主 眼 と し て お り 、 統 合 を 推 進 す る 仏 独 の イ ニ シ ア テ ィ ヴ と は 方 向 性 が 異 な っ て い た 。 ヤ ン グ は 、 政 府 間 主 義 の 立 場 か ら ヨ ー ロ ッ パ を リ ー ド し た イ ギ リ ス の 姿 勢 を 重 視 し な が ら 、 結 果 と し て 、 イ ギ リ ス の 明 白 な 矛 盾 を 正 す 見 方 を 提 示 す る こ と な く 、 イ ギ リ ス は 欧 州 統 合 の 周 辺 に 位 置 す る こ と に な っ た と 結 論 付 け て い る19

イ ギ リ ス が 「 欧 州 統 合 の 周 辺 に 位 置 す る 」 と い う 見 方 は 、 仏 独 が 推 進 す る 超 国 家 的 欧 州 統 合 の 立 場 か ら イ ギ リ ス の 姿 勢 を 評 価 し た も の で あ る 。 ヤ ン グ は 、 イ ギ リ ス の EEC/EC 加 盟 を 促 し た 要 因 と し て 、衰 退 し た イ ギ リ ス の 経 済 力 の 回 復 を 目 指 し た こ と に 焦 点 を あ て て い る 。 ヤ ン グ は イ ギ リ ス の 欧 州 統 合 へ の 参 加 を 経 済 的 な 側 面 か ら 論 じ る 一 方 で 、1960年 代 以 降 に EECの 経 済 的 発 展 に 伴 っ て 登 場 し た 政 治 的 統 合 の 面 か ら 、 イ ギ リ ス の ヨ ー ロ ッ パ へ の 関 与 を 考 察 す る 視 点 に 欠 け て い る 。 そ れ は 、 政 治 と 経 済 の 両 面 で 究 極 的 な 統 合 を 目 指 す ヨ ー ロ ッ パ に お い て 、 外 交 の 領 域 で 政 府 間 協 力 の 枠 組 み が 形 成 さ れ る 過 程 に 関 与 し た イ

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ギ リ ス に つ い て 考 察 す る 視 点 で あ る 。 政 治 的 統 合 に 向 か う 動 き が 本 格 化 し 、 1970 年 初 頭 に 「 欧 州 政 治 協 力 (EPC)」 と し て 成 立 す る 時 期 と 同 じ く し て 、 イ ギ リ ス の EC 加 盟 が 実 現 す る の で あ る 。こ の EPC の 成 立 に 関 与 し た イ ギ リ ス の 姿 勢 を 検 討 す れ ば 、 戦 後 に 政 府 間 協 力 の 立 場 か ら ヨ ー ロ ッ パ の 一 体 性 の 確 立 に 指 導 力 を 発 揮 し た イ ギ リ ス の 姿 勢 と 矛 盾 す る こ と な く 、 イ ギ リ ス の ヨ ー ロ ッ パ に 接 近 す る 動 き を 論 じ る こ と が で き る は ず で あ る 。

ヤ ン グ は こ の よ う に 、 超 国 家 的 統 合 の 立 場 か ら 評 価 す る 姿 勢 を 残 し な が ら 、 他 方 で 、 イ ギ リ ス を 例 外 と 捉 え る 従 来 の 見 方 を 改 め る 見 方 を 提 示 し て い る 。 ヤ ン グ は イ ギ リ ス が 大 陸 か ら 分 離 し た 特 殊 な 立 場 に あ る 「 例 外 主 義 」 の 概 念 を 、 欧 州 統 合 に 敵 対 す る 者 の 概 念 と み な し 、 誇 張 し て は な ら な い と 戒 め て い る 。 イ ギ リ ス は 海 峡 で 隔 て ら れ て い る と は い え 、 大 陸 か ら 完 全 に 分 離 す る に は 地 理 的 に あ ま り に も 欧 州 大 陸 に 接 近 し て お り 、 古 来 大 陸 諸 国 と 共 通 の 文 明 を 発 達 さ せ て き た イ ギ リ ス は 、 大 陸 で の 展 開 を 決 し て 無 視 で き な い 位 置 に い る か ら で あ る

20。 さ ら に イ ギ リ ス は 、 第 2 次 世 界 大 戦 以 降 一 貫 し て 「 欧 州 政 策 」 を 掲 げ 、 大 陸 と の 協 力 に 無 関 心 で は な か っ た こ と が 明 ら か で あ る 。ヤ ン グ は 、EEC 創 設 メ ン バ ー を 含 め 、す べ て の 国 は 独 自 の 歴 史・国 益・伝 統 を 有 す る と い う 意 味 で「 例 外 」 で あ り 、 イ ギ リ ス が 1950 年 代 60 年 代 に EEC に 参 加 し な か っ た こ と は 、 他 の 多 く の ヨ ー ロ ッ パ の 国 が ま だ 参 加 可 能 な 状 況 に 達 し て い な い 中 で 、 経 済 的 ・ 軍 事 的 ・ 外 交 的 に 重 要 な 大 国 で あ る イ ギ リ ス が 敢 え て 不 参 加 を 選 択 し た こ と が 個 別 研 究 に 値 し た と 述 べ て い る 。 加 え て 、 ヤ ン グ は 、 当 初 か ら す べ て の 加 盟 国 は 、 欧 州 統 合 を 国 家 の 目 的 達 成 の た め の 手 段 と し て 利 用 し た こ と が 明 白 で あ り 、 帝 国 ・ コ モ ン ウ ェ ル ス の 重 要 性 の 低 下 に 伴 う 国 力 の 衰 退 を 回 復 し 、 イ ギ リ ス 経 済 の 成 長 を 促 進 す る 目 的 を も っ て EEC 加 盟 を 決 断 し た イ ギ リ ス は 決 し て 例 外 で は な い と し て い る21

本 研 究 は 、 イ ギ リ ス の 立 場 を 「 例 外 」 と み な す 概 念 を 改 め 、 一 貫 し て 「 欧 州 政 策 」 を 掲 げ た イ ギ リ ス は 、 大 陸 と の 協 力 関 係 の 維 持 に 努 め た と す る ヤ ン グ の 研 究 成 果 を 引 き 継 ぐ と と も に 、 ヤ ン グ の 研 究 で 見 落 と さ れ て い る 、 政 府 間 協 力 の 領 域 で 欧 州 統 合 に 関 与 す る イ ギ リ ス に つ い て 検 討 を 補 う こ と を 試 み る 。EPC が 登 場 し た 1970 年 代 初 頭 は 、 イ ギ リ ス の EC 加 盟 が 実 現 す る 時 期 で も あ る 。

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こ の 時 期 の 一 致 は 、EPC の 成 立 ・ 発 展 と イ ギ リ ス の EC 加 盟 が 無 関 係 で な い こ と を 物 語 っ て い る 。イ ギ リ ス を 巻 き 込 み 、EC 諸 国 は EPCで の 協 議 を 通 し て 対 外 的 に 一 つ の 「 ヨ ー ロ ッ パ の 声 」 を 作 り 出 す 努 力 を 進 め て い く 。 後 に 、 マ ー ス ト リ ヒ ト 条 約 に よ っ て 経 済 共 同 体 の 柱 と と も に EU を 構 成 す る 政 府 間 協 力 の 柱 の 一 つ 「 共 通 外 交 安 全 保 障 政 策 (CFSP)」 に 到 達 す る EPC は 、1970 年 代 に イ ギ リ ス の 参 加 と と も に 活 動 を 開 始 す る の で あ る 。 イ ギ リ ス と 欧 州 統 合 と の 関 わ り を 、 よ り 広 い 視 野 で 検 討 す る に は 、 欧 州 統 合 を 超 国 家 的 統 合 の 領 域 だ け で な く 、 政 府 間 協 力 の 領 域 に も 広 げ て 捉 え 直 し 、 ヨ ー ロ ッ パ の 一 体 性 の 確 立 を 求 め て 積 極 的 に 行 動 し た イ ギ リ ス の 姿 勢 を 検 討 す る 必 要 が あ る 。

3 節 先 行 研 究 の 問 題 点 と 本 研 究 の 課 題

前 節 で 検 討 し た と お り 、 本 論 文 は 欧 州 統 合 に 対 す る イ ギ リ ス の 姿 勢 を ネ ガ テ ィ ヴ に 捉 え る 見 方 を 再 考 し 、 第 2 次 世 界 大 戦 直 後 に ヨ ー ロ ッ パ の 一 体 性 の 構 築 を リ ー ド し た イ ギ リ ス の 姿 勢 を 原 点 と し て 捉 え 、 そ の 延 長 線 上 で 積 極 的 に 欧 州 統 合 と の 関 わ り を 試 み る イ ギ リ ス 像 を 提 示 す る こ と を 目 的 と し て い る 。 本 節 で は 、 そ の 第 一 歩 と し て 、 従 来 の 見 方 が 見 過 ご し て い る 、 大 陸 欧 州 諸 国 と イ ギ リ ス の 間 の 歴 史 的 背 景 に 基 づ く 国 家 主 権 の 捉 え 方 の 違 い に 光 を 当 て る 。 大 陸 諸 国 と イ ギ リ ス の 立 場 の 違 い を 再 認 識 し 、 イ ギ リ ス が 国 家 主 権 の 委 譲 を 受 け 入 れ な い と い う 方 針 を と る に 至 っ た 背 景 の 一 端 を 明 ら か に し て い く 。 そ れ を も と に 、 先 行 諸 研 究 が 抱 え る 問 題 点 を 特 定 し 、 本 研 究 で 取 り 組 む 課 題 を 提 示 す る 。

伝 統 的 に イ ギ リ ス は 米 欧 間 の 架 橋 と し て 、 ま た 、 世 界 に 広 が る 帝 国 ・ コ モ ン ウ ェ ル ス の 中 心 と し て グ ロ ー バ ル な 観 点 に 立 ち 、 世 界 的 な 役 割 と 影 響 力 を 維 持 す る こ と に 重 点 を 置 い て き た 。 第 2 次 世 界 大 戦 で は 、 戦 勝 国 と し て ア メ リ カ ・ ソ 連 と 並 ぶ 「 世 界 的 強 国 」 の 地 位 へ の 信 念 を 固 め た 。 ま た 、 国 内 に お い て は 、 議 会 主 権 と 安 定 し た 2 大 政 党 の 政 治 シ ス テ ム を 確 立 さ せ て 、自 国 の 政 治 シ ス テ ム へ の 信 頼 を 揺 る ぎ な い も の と し た 。 ま た 、 長 い 間 外 国 に よ る 侵 略 や 占 領 を 受 け た こ と が な く 、 ナ チ ス ・ ド イ ツ の 脅 威 か ら も 独 立 を 守 っ た イ ギ リ ス は 、 主 権

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の 喪 失 と い っ た 国 家 の あ り 方 を 根 本 的 に 変 え る よ う な 挫 折 を 経 験 し て い な か っ た 。 そ の た め 、 イ ギ リ ス は 国 家 主 権 を 絶 対 視 し 、 こ れ に 対 す る い か な る 制 限 に も 慎 重 に な っ た22

対 照 的 に 、 大 陸 諸 国 で は 侵 略 や 革 命 が 繰 り 返 さ れ 、 国 家 の 体 制 は 頻 繁 に 変 化 を 強 い ら れ た 。 第 2次 世 界 大 戦 中 は 、 軍 事 的 敗 北 、 占 領 、 荒 廃 を 経 験 し 、 終 戦 直 後 は 共 産 党 に よ る 体 制 転 覆 の 危 険 に 晒 さ れ た 。 こ の よ う に 政 治 的 不 安 定 が 続 い た 大 陸 諸 国 で は 、 自 国 の 政 治 制 度 に 対 す る 信 頼 が よ り 希 薄 で あ り 、 国 家 主 権 の 持 つ 限 界 へ の 認 識 が 共 有 さ れ て い た 。 さ ら に 、 大 陸 諸 国 の 関 心 の 中 心 は ヨ ー ロ ッ パ の 地 域 問 題 で あ り 、 と り わ け 、 ド イ ツ の 脅 威 に い か に 対 処 す る か が 大 陸 諸 国 に と っ て 重 要 な 外 交 問 題 と な っ て い た 。 そ の 中 で 、 国 民 国 家 を 乗 り 越 え 、 よ り 広 い ヨ ー ロ ッ パ の 枠 組 み の 中 で 平 和 と 繁 栄 を 追 求 し よ う と い う 気 運 が 生 じ た の で あ る23。 こ う し て 、 国 家 間 の 戦 争 の 可 能 性 を 廃 棄 す る こ と を 目 的 に 、 国 家 主 権 を 拘 束 す る 中 心 的 機 関 を 設 立 し 、 仏 独 の 和 解 に 基 づ く 欧 州 統 合 の 理 念 を 現 実 の も の と す る 動 き に 至 っ た24

他 方 イ ギ リ ス で は 、 当 時 の 豊 富 な 石 炭 と 鉄 鋼 の 生 産 量 が 、 大 陸 諸 国 を 遥 か に 上 回 る 経 済 力 を も た ら し 、「 世 界 的 強 国 」と し て の 信 念 を 支 え て い た 。そ う し た 優 位 な 立 場 に 立 つ イ ギ リ ス の 目 か ら は 、 主 権 を 委 譲 す る よ う な 機 関 を 必 要 と す る 大 陸 諸 国 は 、 国 力 の 脆 弱 さ を 証 明 す る も の で し か な か っ た25。 そ し て 、 不 安 定 な 政 治 シ ス テ ム を 持 つ 大 陸 諸 国 と 、 主 権 を 共 有 す る 超 国 家 的 機 関 の 創 設 に 参 加 す る こ と は 、 イ ギ リ ス の 政 治 や 経 済 に 不 安 定 を も た ら す も の と い う 警 戒 感 が 広 ま り 、 強 い 反 発 を 招 い た の で あ る 。 イ ギ リ ス が 政 府 間 主 義 に 固 執 す る の は 、 不 安 定 な 他 国 の 情 勢 に 影 響 さ れ な い イ ギ リ ス の 独 立 し た 国 家 の 権 限 を 絶 対 的 な も の と 認 識 す る た め で あ っ た 。

イ ギ リ ス が ECSC 参 加 の 前 提 と な っ た 、「 国 家 主 権 の 喪 失 」 を 受 け 入 れ な か っ た の は 、 こ の よ う に 、 イ ギ リ ス の 国 家 の 成 り 立 ち や 独 特 の 戦 争 体 験 に 基 づ く 国 家 主 権 の 捉 え 方 が 、 大 陸 諸 国 の 状 況 と は 根 本 的 に 異 な る こ と を 要 因 と し て い る 。 創 設 メ ン バ ー の 中 で 、 特 に フ ラ ン ス と ド イ ツ は 、 国 家 主 権 の 委 譲 を 伴 う 統 合 を 求 め る 国 家 的 理 由 が あ っ た 。 フ ラ ン ス は ド イ ツ の パ ワ ー を ヨ ー ロ ッ パ の 枠 組 み の 中 で コ ン ト ロ ー ル す る こ と を 望 み 、 ド イ ツ は 他 の 自 由 民 主 主 義 国 家 と の

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繋 が り を 求 め て い た 。 仏 独 に と っ て 国 家 主 権 の 喪 失 は 望 ま し い 目 的 ( フ ラ ン ス に と っ て は 安 全 保 障 、 ド イ ツ に と っ て は 民 主 主 義 ) を 達 成 す る た め の 代 価 で あ っ た 。

こ れ に 対 し て イ ギ リ ス は 、 ヨ ー ロ ッ パ の 平 和 維 持 が 国 益 に 適 う も の の 、 ド イ ツ の 脅 威 か ら は 隔 た り 、 主 権 を 委 譲 す る 国 家 的 必 要 性 が な か っ た26。 イ ギ リ ス の 優 先 事 項 は ソ 連 の 共 産 主 義 と 対 決 し 、 ア メ リ カ の 経 済 力 に 匹 敵 す る こ と で あ り 、 そ の た め の 国 力 の 強 化 を 目 指 し て い た 。 イ ギ リ ス は 、EEC/EC 加 盟 を 自 国 の 衰 退 し た 国 力 を 支 え 、 政 治 力 、 経 済 力 を 高 め る た め の 手 段 と み な し て い た 。 従 っ て 、 共 同 体 へ の 参 加 は 、 イ ギ リ ス の 国 力 ・ 国 際 的 影 響 力 を 強 化 す る た め の も の で あ っ て 、 主 権 の 委 譲 に よ っ て イ ギ リ ス の パ ワ ー が 損 な わ れ て は な ら な い と い う の が イ ギ リ ス の 立 場 で あ っ た 。

欧 州 統 合 に 対 す る イ ギ リ ス の 姿 勢 を 消 極 的 ・ 否 定 的 ・ 周 辺 的 に 捉 え る 従 来 の 見 方 は 、 イ ギ リ ス が 歴 史 的 背 景 に 基 づ く 独 自 の 立 場 に 立 っ て い る こ と を 考 慮 に 入 れ て い な い の は 明 ら か で あ り 、 イ ギ リ ス が 国 力 の 強 化 を 最 優 先 に 考 え 、 国 家 主 権 の 喪 失 は そ れ を 損 な う も の と み な し て い る こ と を 見 過 ご し て い る 。 そ の よ う に 捉 え る と 、 ヨ ー ロ ッ パ に 接 近 す る イ ギ リ ス は 、 国 家 主 権 が 関 わ ら な い 領 域 で あ れ ば 、 戦 後 に 指 導 力 を 発 揮 し た よ う に 、 ヨ ー ロ ッ パ の 一 体 性 の 構 築 に 積 極 的 に 関 与 す る と い う 見 方 を 引 き 出 す こ と が で き る 。 こ う し た 考 え の も と で 、 こ れ ま で 検 討 し て き た 先 行 研 究 の 問 題 点 を 整 理 す る と 、 欧 州 統 合 に 対 す る イ ギ リ ス の 姿 勢 を ネ ガ テ ィ ヴ に 捉 え る 見 方 は 、

① 1950 年 代 初 頭 に フ ラ ン ス が 主 導 し た 超 国 家 的 統 合 の 観 点 か ら イ ギ リ ス の 姿 勢 を 評 価 す る 偏 っ た 見 方 で あ る 。

② 戦 後 国 際 秩 序 の 構 築 に 指 導 力 を 発 揮 し た イ ギ リ ス の 立 場 か ら 欧 州 統 合 を 捉 え る 視 点 が 欠 け て い る 。

③ 1970 年 初 頭 に 登 場 し た 欧 州 政 治 協 力 に 参 加 し た イ ギ リ ス の 立 場 を 考 慮 に 入 れ て い な い た め 、 イ ギ リ ス と 欧 州 統 合 と の 関 係 を 考 察 す る 上 で バ ラ ン ス を 欠 い た 見 方 し か 提 供 し て い な い 。

と い う 3点 を 特 定 す る こ と が で き る 。

加 え て 、 欧 州 統 合 に 積 極 的 に 関 与 す る イ ギ リ ス の 姿 勢 を 検 討 す る に は 、 絶 え

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ず 「 欧 州 政 策 」 を 掲 げ 、 大 陸 と の 協 力 関 係 の 維 持 に 努 め た イ ギ リ ス の 姿 勢 を 明 ら か に す る 必 要 が あ る 。 そ れ は 、 先 行 研 究 の 中 に 見 ら れ る 二 者 択 一 的 な 見 方 、 即 ち 、 イ ギ リ ス は 次 第 に ヨ ー ロ ッ パ か ら 離 れ 、 ア メ リ カ と の 特 別 な 関 係 を 選 択 し た と す る 見 方 を 再 考 し 、 ヨ ー ロ ッ パ か ら 離 脱 す る こ と な く 関 係 維 持 を 模 索 す る イ ギ リ ス の 姿 勢 を 示 す こ と で あ る 。

1950 年 代 の 超 国 家 的 欧 州 統 合 の 立 ち 上 げ に 参 加 し な い こ と を 選 択 し た イ ギ リ ス の 姿 勢 に つ い て 、ブ レ ア 政 府 の 外 交 政 策 を 研 究 す る 細 谷 雄 一 は 、49 年 4月 の 北 大 西 洋 条 約 調 印 を 契 機 と し て 、「 イ ギ リ ス は 西 欧 諸 国 と の 関 係 構 築 を 放 棄 し 、 ア メ リ カ と の 緊 密 な 関 係 を 自 国 の 外 交 の 基 軸 と し た 。」と 結 論 付 け て い る27。戦 後 イ ギ リ ス は 、 ソ 連 の 脅 威 が 高 ま る 中 で 、 ア メ リ カ と の 特 別 な 関 係 を 、 脆 弱 な ヨ ー ロ ッ パ と の 関 係 よ り も 優 位 な 位 置 に 置 い て き た 。 し か し 、 問 題 は 、 イ ギ リ ス は 欧 州 大 陸 で の 展 開 を 決 し て 無 視 で き な い 位 置 に い る の で あ り 、 大 陸 と の 関 係 構 築 に 決 し て 無 関 心 で は な か っ た こ と が 見 過 ご さ れ て い る 点 で あ る 。 ま た 、 ブ リ ュ ッ セ ル 条 約 の 締 結 が 北 大 西 洋 条 約 の 前 段 階 と し て 重 要 で あ っ た よ う に 、 大 西 洋 同 盟 の 成 立 に は 、 西 欧 諸 国 の 協 力 が 不 可 欠 で あ っ た こ と に も 注 意 を 向 け る 必 要 が あ る 。

以 上 の 諸 問 題 を 解 決 し 、 欧 州 統 合 に 対 し て 積 極 的 に 働 き か け る イ ギ リ ス 像 を 提 示 す る た め に 、 本 論 文 で 取 り 組 む 課 題 を 次 の よ う に 設 定 す る 。

① ヨ ー ロ ッ パ の 経 済 的 発 展 に 伴 っ て 登 場 し た 、 政 府 間 協 力 の 枠 組 み の 形 成 過 程 を 通 し て 、 欧 州 統 合 の 政 治 的 領 域 で の 進 展 に 積 極 的 に 関 与 す る イ ギ リ ス の 姿 勢 を 明 ら か に す る 。

② 米 欧 の 相 互 に 依 存 す る 関 係 が 成 り 立 つ た め に は 、 ヨ ー ロ ッ パ が 一 体 と な る こ と が 不 可 欠 と み な し て 、 そ の 構 築 を リ ー ド す る イ ギ リ ス の 役 割 を 明 ら か に す る 。

こ れ ら の 課 題 に 取 り 組 む た め に 、 本 論 文 で は 、1970年 代 か ら 80年 代 に か け て 、東 西 デ タ ン ト が 進 む 状 況 の 中 で 登 場 し た EPC と 、EC正 式 加 盟 に 先 立 っ て EPC に 参 加 し 、EPC の 活 動 に 積 極 的 に 関 わ っ た イ ギ リ ス の 姿 勢 に つ い て 検 討 す る 。そ の 後 、1990年 代 以 降 、EPC の 後 身 と し て EUに 取 り 入 れ ら れ た CFSP の 進 展 に 関 与 し た イ ギ リ ス 政 府 、 と り わ け ブ レ ア 政 府 の 対 応 に 焦 点 を あ て 、

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EPCへ の 参 加 を 契 機 に 、統 合 す る ヨ ー ロ ッ パ の 一 員 と し て 、政 府 間 協 力 に 基 づ く ヨ ー ロ ッ パ の 一 体 性 の 構 築 に 関 わ っ た イ ギ リ ス の 姿 勢 を 明 ら か に す る 。 そ れ は 、 デ タ ン ト か ら 冷 戦 終 結 後 に か け て 、 安 全 保 障 環 境 の 急 激 な 変 化 へ の 対 応 を 試 み る EC/EU に お い て 、 外 交 と 安 全 保 障 の 領 域 で 指 導 的 な 役 割 を 果 た そ う と し た イ ギ リ ス 政 府 の 姿 勢 を 検 証 す る こ と で あ る 。

本 論 文 で は ま た 、1950 年 代 以 降 の 欧 州 統 合 構 想 へ の イ ギ リ ス の 対 応 を 決 定 付 け た と さ れ る 、「limited liability( 制 限 さ れ た 責 任 )」の 原 則 を 参 照 し 、国 家 主 権 の 委 譲 を 回 避 し つ つ 、 絶 え ず ヨ ー ロ ッ パ と の 関 係 維 持 に 努 め て き た イ ギ リ ス の 姿 勢 を 示 す 。 イ ギ リ ス の ヨ ー ロ ッ パ へ の 関 与 と 、 ア メ リ カ と の 関 係 を 表 裏 一 体 の も の と す る こ の 原 則 を 拠 り 所 と し て 、 大 西 洋 同 盟 を 基 に 、 米 欧 の 相 互 に 依 存 す る 関 係 を 形 作 る 上 で 、 イ ギ リ ス が 欧 州 諸 国 の 協 調 を 重 視 し た こ と を 、EPC の 成 立 ・ 発 展 、 及 び EU の 安 全 保 障 政 策 の 進 展 に 関 与 し た イ ギ リ ス の 姿 勢 を 検 討 す る こ と を 通 し て 明 ら か に す る 。

4 節 二 つ の 課 題 の 歴 史 的 背 景

前 節 に お い て 検 討 し た と お り 、 本 論 文 で 取 り 組 む 二 つ の 課 題 に つ い て 検 討 す る 足 掛 か り と し て 、 本 節 で は 戦 後 イ ギ リ ス の 対 外 姿 勢 の 形 成 を 促 し た 歴 史 的 経 緯 に つ い て 概 観 す る 。 そ れ を 通 し て 、 今 日 に 至 る ま で 、 大 西 洋 主 義 と 政 府 間 主 義 を 基 本 と し て き た イ ギ リ ス の 対 欧 州 政 策 の 原 点 と も い え る 状 況 を 明 ら か に し 、 二 つ の 課 題 に つ い て 検 討 を 始 め る 出 発 点 と す る 。

4-1 イ ギ リ ス 主 導 に よ る ヨ ー ロ ッ パ の 統 一

イ ギ リ ス が 独 自 の 視 点 か ら ヨ ー ロ ッ パ の 一 体 性 を 追 求 し リ ー ダ ー シ ッ プ を 発 揮 し た こ と は 、1946 年 9 月 に チ ャ ー チ ル (Winston Churchill) が チ ュ ー リ ヒ 大 学 で の 講 演 で 、「 欧 州 合 衆 国 」の 創 設 を 提 案 し た こ と に 遡 る こ と が で き る 。チ ャ ー チ ル の 呼 び か け は 、 欧 州 各 地 の 連 邦 主 義 的 欧 州 統 合 運 動 に 火 を つ け る が 、

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チ ャ ー チ ル 自 身 は 政 府 間 主 義 的 立 場 か ら 「 ヨ ー ロ ッ パ の 統 一 運 動 」 を 支 持 し て い た 。 当 時 チ ャ ー チ ル は 、 野 党 保 守 党 の 党 首 で あ っ た が 、 国 家 主 権 の 制 限 を も た ら す 超 国 家 的 機 関 の 設 立 に 対 す る 反 感 は 、1945 年 に 政 権 に つ い た 労 働 党 と 共 有 し て い た 。「 欧 州 合 衆 国 」の 構 想 を 提 唱 す る チ ャ ー チ ル は 、大 陸 ヨ ー ロ ッ パ の 連 邦 主 義 者 た ち に 、 彼 が 当 然 そ の 実 現 に 努 め る も の と の 期 待 を 抱 か せ た 。 し か し 、 チ ャ ー チ ル が 言 及 し た 「 欧 州 合 衆 国 」 の 中 に は イ ギ リ ス が 含 ま れ て い な か っ た 。 チ ャ ー チ ル の 構 想 は 、 連 邦 的 な 欧 州 統 合 へ の 気 運 を 盛 り 上 げ た が 、 イ ギ リ ス が そ の 一 員 に な る こ と を 期 待 し た 連 邦 主 義 者 た ち を 失 望 さ せ る こ と に な っ た28

1945年 7 月 に 発 足 し た ア ト リ ー(Clement Attlee)労 働 党 政 権 の 外 務 大 臣 ベ ヴ ィ ン (Ernest Bevin) は 、 西 欧 諸 国 の 結 集 を 呼 び か け 、 ア メ リ カ ・ ソ 連 か ら 自 立 で き る ヨ ー ロ ッ パ を 建 設 す る こ と を 当 初 の 目 標 と し て い た 。 そ の 中 で ベ ヴ ィ ン 外 相 は 、 英 仏 の 協 調 を 中 心 と す る 西 欧 諸 国 の 経 済 的 統 合 の 可 能 性 に 重 点 を 置 き 、1948 年 1月 に は 、そ う し た 西 欧 諸 国 間 の 協 調 に 基 づ い て 、イ ギ リ ス の 国 力 を ア メ リ カ ・ ソ 連 に 対 抗 で き る 「 第 3 勢 力 」 と す る 構 想 を 明 ら か に し た 。 同 外 相 の 「 第 3勢 力 」 構 想 は 、 ベ ネ ル ク ス 諸 国 の 共 感 を 呼 び 、 同 年 2月 に 起 き た プ ラ ハ の 政 変 に よ っ て 共 産 主 義 に 対 す る 危 機 感 が 増 大 す る 中 で 、 ヨ ー ロ ッ パ の 安 全 保 障 へ の 意 識 を 高 め る こ と と な っ た 。 そ れ は 、 翌 月 の 3 月 に イ ギ リ ス ・ フ ラ ン ス ・ ベ ル ギ ー ・ オ ラ ン ダ ・ ル ク セ ン ブ ル ク の 5 か 国 の 間 で 、 相 互 防 衛 を 含 む 安 全 保 障 と 、 経 済 ・ 社 会 の 領 域 で の 協 力 を 謳 う ブ リ ュ ッ セ ル 条 約 の 調 印 と な っ て 結 実 し た29

ベ ヴ ィ ン 外 相 が 「 第 3 勢 力 」 構 想 に お い て 大 陸 諸 国 と の 経 済 関 係 の 強 化 に 関 心 を 示 し た の に 対 し 、 政 府 内 で は イ ギ リ ス 経 済 の 世 界 的 役 割 を 重 視 す る 大 蔵 省 と 商 務 省 が 、 脆 弱 な 大 陸 経 済 と の 関 係 強 化 に 反 対 し て 、 外 相 の 路 線 と 対 立 し て い た 。 し か し 、 当 初 は フ ラ ン ス と の 協 調 を 重 視 し て い た ベ ヴ ィ ン 外 相 で あ っ た が 、 ソ 連 の 脅 威 が 急 速 に 増 大 す る 状 況 の 中 で 、 ヨ ー ロ ッ パ の 安 全 保 障 に 対 す る ア メ リ カ の 支 援 が 決 定 的 に 重 要 で あ る と い う 認 識 を 持 つ よ う に な っ た30。 ベ ヴ ィ ン 外 相 は 、 ア メ リ カ の 支 援 を 確 実 に す る た め に も 、 ブ リ ュ ッ セ ル 条 約 の 成 立 を リ ー ド し て ヨ ー ロ ッ パ の 結 集 を 示 し た の で あ っ た が31、 そ れ と 同 時 に 、 ヨ ー

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ロ ッ パ の 防 衛 網 で あ る ブ リ ュ ッ セ ル 条 約 を 、 ア メ リ カ ・ カ ナ ダ も 含 む 安 全 保 障 の よ り 広 域 な「 大 西 洋 同 盟 」に 広 げ る 交 渉 に も 着 手 し た 。こ う し た 状 況 の 中 で 、 欧 州 統 合 の 推 進 方 法 に 関 す る 英 仏 の 立 場 の 間 に 、 大 き な 隔 た り が 存 在 す る こ と が 次 第 に 明 ら か に な っ た 。 そ の 認 識 が 高 ま る に つ れ て 、 イ ギ リ ス 政 府 内 の 対 立 す る 二 つ の 路 線 、 即 ち 、 大 陸 諸 国 と の 関 係 強 化 を 主 張 す る 外 相 と 、 そ れ に 反 対 す る 経 済 関 係 省 庁 は 、 軍 事 的 に も 経 済 的 に も 脆 弱 な 大 陸 へ の 関 与 は 大 き な リ ス ク を 伴 う と い う 見 方 に 収 斂 し て い く の で あ る32

英 仏 間 の 立 場 の 違 い は 、ア メ リ カ が 戦 後 ヨ ー ロ ッ パ の 復 興 支 援 を 目 的 に 1947 年 6 月 に 発 表 し た マ ー シ ャ ル ・ プ ラ ン を 受 け 入 れ る た め の 「 欧 州 経 済 協 力 機 構

(OEEC)」を 設 立 す る 協 議 に お い て 鮮 明 に な っ た 。フ ラ ン ス が 、強 力 な 指 揮 権 を 持 っ て 復 興 に 取 り 組 む 組 織 を 想 定 し た の に 対 し 、 イ ギ リ ス は 自 国 の 経 済 政 策 に 介 入 す る よ う な 執 行 機 関 が で き る こ と に 断 固 反 対 す る 立 場 を 通 し た 。 そ の 結 果 、OEEC は イ ギ リ ス の 主 張 の 通 り 政 府 間 協 力 を 原 則 と す る 調 整 機 関 と な り 、 1948年 4月 に 設 立 さ れ た33

英 仏 の 対 立 は 、1949 年 1 月 に「 欧 州 審 議 会 」の 設 立 を め ぐ っ て 再 現 さ れ 、さ ら に 先 鋭 化 し た 。 フ ラ ン ス が 志 向 す る 欧 州 統 合 は 、 ヨ ー ロ ッ パ を 一 つ の 国 家 に な ぞ ら え て 、「 欧 州 憲 法 」 を 創 案 す る 超 国 家 的 な 「 欧 州 議 会 」 を 設 置 し 、「 欧 州 政 府 」を も つ「 欧 州 連 邦( 欧 州 合 衆 国 )」の 創 設 を 想 定 し た 。イ ギ リ ス 政 府 に と っ て そ の よ う な 急 進 的 で 非 現 実 的 な 欧 州 統 合 は 受 け 入 れ 難 く 、 各 国 政 府 代 表 か ら な る 閣 僚 理 事 会 の 形 態 に 留 め る こ と を 主 張 し た 。 最 終 的 に は 、 英 仏 双 方 の 要 求 を 取 り 入 れ た 「 欧 州 審 議 会 」 の 設 立 が 決 定 し た も の の 、 強 い 発 言 力 を も つ イ ギ リ ス の 優 勢 の も と で 、「 欧 州 審 議 会 」は 国 家 主 権 を 優 位 に 置 く 方 式 と な り 、大 陸 の 連 邦 主 義 者 た ち の 理 想 か ら は 程 遠 い 政 府 間 協 力 の 機 構 と な っ た34

大 陸 諸 国 は 、 イ ギ リ ス 主 導 で ヨ ー ロ ッ パ の 統 一 を 進 め る 限 り 、 欧 州 連 邦 の 理 想 を 実 現 す る こ と が 困 難 で あ る こ と を 認 識 し 始 め た35。 そ れ が フ ラ ン ス の 主 導 で 超 国 家 的 な 欧 州 統 合 の 構 想 に 着 手 す る き っ か け と な り 、ECSC の 創 設 に 繋 が っ た の で あ る 。 他 方 、 イ ギ リ ス は 大 陸 諸 国 の 連 邦 主 義 の 圧 力 に 辟 易 し 、 弱 小 国 の 非 現 実 的 な 取 り 組 み か ら は 一 定 の 距 離 を 置 く と い う 見 方 に 至 っ た 。

戦 後 世 界 秩 序 の 構 築 に 主 導 的 に 取 り 組 ん で き た イ ギ リ ス は 、「 世 界 的 強 国 」と

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し て 国 家 主 権 を 不 動 の も の と し 、 自 国 の 体 制 が 超 国 家 的 機 関 に よ っ て コ ン ト ロ ー ル さ れ る こ と を 受 け 入 れ な か っ た 。 こ れ に 対 し て 、 欧 州 諸 国 は ヨ ー ロ ッ パ の 平 和 と 繁 栄 を 希 求 す る 連 邦 主 義 に 鼓 舞 さ れ 、 イ ギ リ ス の イ ニ シ ア テ ィ ヴ に 追 随 す る こ と な く 、 国 家 主 権 の 委 譲 を 伴 う 共 同 体 の 立 ち 上 げ に 向 か っ た の で あ る 。 戦 後 ヨ ー ロ ッ パ の 再 建 を め ぐ っ て 明 ら か に な っ た 二 つ の 立 場 は 、 こ の よ う に 異 な る 方 向 を 目 指 し て い た 。 イ ギ リ ス は 、 独 自 の 視 点 か ら ヨ ー ロ ッ パ の 一 体 性 を 追 求 し た 結 果 、大 陸 の ECSC 創 設 諸 国 と は 、国 家 主 権 の 捉 え 方 を 中 心 に 、根 本 的 に 方 向 性 が 異 な る こ と を 認 識 し た の で あ る 。 そ の 認 識 を も と に 、 イ ギ リ ス は ヨ ー ロ ッ パ へ の 関 与 に 自 ら 限 界 を 定 め る こ と に し た 。

4-2 「 制 限 さ れ た 責 任 」 の 原 則

1949年 1 月 25 日 付 の 覚 書 に 記 さ れ た「limited liability」の 原 則 は 、イ ギ リ ス 政 府 内 に お い て 、 ベ ヴ ィ ン 外 相 と ク リ ッ プ ス (Sir Stafford Cripps) 大 蔵 相 と の 合 意 の も と で 、 イ ギ リ ス の ヨ ー ロ ッ パ へ の 関 与 に 限 界 を 定 め る も の で あ っ た 。 ベ ヴ ィ ン 外 相 は 、 大 陸 諸 国 と の 関 係 強 化 を め ぐ り 、 イ ギ リ ス の 世 界 的 役 割 を 提 唱 す る 経 済 関 係 省 庁 と 対 立 し て い た も の の 、「 欧 州 審 議 会 」を め ぐ る 協 議 を 通 し て 大 陸 諸 国 の 連 邦 主 義 に 嫌 気 が 差 し 、 ク リ ッ プ ス 大 蔵 相 と 共 同 の 立 場 に 立 つ に 至 っ た の で あ る 。 両 者 の 連 名 に よ る 覚 書 の 要 旨 は 次 の と お り で あ る 。

我 々 は 、 西 欧 復 興 の リ ー ダ ー シ ッ プ を と る に あ た り 、 リ ス ク へ の 見 識 を 失 っ て は な ら な い 。 そ の リ ス ク と は 、 我 々 の 生 存 に 必 要 な も の を 奪 い 、 独 立 し た 単 一 体 と し て 存 続 で き な い 道 に 導 く も の で あ る 。 我 々 は 西 欧 の 復 興 の た め に あ る 程 度 の リ ス ク を 冒 す 用 意 が あ る が 、 次 の 具 体 的 な 原 則 を 定 め る 必 要 が あ る : イ ギ リ ス の 経 済 構 造 が 取 り 返 し の つ か な い 程 損 な わ れ る よ う な リ ス ク を 冒 し て は な ら な い 。( 下 線 は 筆 者 )

こ の 覚 書 は 、 ヨ ー ロ ッ パ に 対 す る 自 国 の 関 与 を 制 限 す る 原 則 を 定 め た 上 で 、 ヨ ー ロ ッ パ へ の 関 与 と 、 ア メ リ カ を 中 心 と し た 大 西 洋 同 盟 の 確 立 と を 表 裏 一 体 の

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も の と し て 結 び 付 け て い る 。 そ れ は 次 の よ う に 表 現 さ れ て い る 。

我 々 の 防 衛 政 策 の 基 盤 で あ る 大 西 洋 条 約 は 、 ア メ リ カ ・ カ ナ ダ ・ イ ギ リ ス ・ 西 欧 諸 国 を 繋 い で 一 体 化 す る も の で あ り 、 そ れ は 、 フ ラ ン ス と ベ ネ ル ク ス 諸 国 の 経 済 的 安 定 が 回 復 さ れ た 時 に 初 め て 全 体 と し て 完 成 さ せ る こ と が で き る 。

し か し 、 も し 我 々 の 西 欧 復 興 の 努 力 が 失 敗 し 、 イ ギ リ ス の 経 済 構 造 が 正 常 に 機 能 し な く な っ た 時 に は 、 ア メ リ カ の 軍 事 上 ・ 政 治 上 ・ 経 済 上 の 支 援 を 継 続 し て 受 け る こ と を 期 待 で き な く な る だ ろ う36

こ の 1月 25 日 付 の 覚 書 の 趣 旨 は 、同 年 10月 に 閣 議 に 提 出 さ れ た 覚 書 の 中 に も「 イ ギ リ ス が 冒 す べ き で な い リ ス ク 」と し て 書 き 込 ま れ 、1950 年 代 以 降 の 欧 州 統 合 構 想 へ の イ ギ リ ス の 対 応 を 決 定 付 け た と さ れ て い る37。 こ う し た 状 況 を 考 慮 す れ ば 、ベ ヴ ィ ン 外 相 と ク リ ッ プ ス 大 蔵 相 に よ る 連 名 の 覚 書 は 、1950 年 代 か ら 現 在 に 至 る ま で の イ ギ リ ス の 欧 州 統 合 に 対 す る 外 交 姿 勢 の 原 点 と み な す こ と が で き る 。

そ れ を 念 頭 に 置 い て 改 め て 覚 書 に 目 を 通 す と 、 イ ギ リ ス は ア メ リ カ ( 大 西 洋 同 盟 ) か ヨ ー ロ ッ パ か と い う 二 者 択 一 の 局 面 に 立 っ て い る の で は な く 、 イ ギ リ ス が 西 欧 の 復 興 に 責 任 を 負 う こ と を 前 提 と し て 、 大 西 洋 同 盟 が 成 り 立 つ こ と を 示 し て い る 。 言 い 換 え れ ば 、 ア メ リ カ を 中 心 と す る 広 大 な 大 西 洋 安 全 保 障 の 枠 組 み の 中 に 、 イ ギ リ ス が 牽 引 す る ヨ ー ロ ッ パ の 一 体 性 を 不 可 欠 な 要 素 と し て 包 括 的 に 含 め る こ と を イ ギ リ ス の 方 針 と し て い る 。

さ ら に 重 要 な の は 、 イ ギ リ ス が 西 欧 の 復 興 に 対 し て 負 う 責 任 に つ い て 、 限 界 を 定 め て い る こ と で あ る 。 そ れ に よ れ ば 、 限 界 を 超 え る 関 与 は イ ギ リ ス の 生 存 可 能 性 を 損 な い 、大 西 洋 同 盟 の 包 括 的 な 枠 組 み も 崩 壊 さ せ る と い う こ と で あ る 。 こ の 、限 界 を 超 え る 関 与 と い う の は 、国 家 主 権 を 喪 失 す る こ と を 意 味 し て い る 。 1月 25 日 付 の 覚 書 は 、「 西 欧 へ の イ ギ リ ス の 支 援 は 、limited liability( 制 限 さ れ た 責 任 ) の コ ン セ プ ト で 制 御 し 、 国 家 主 権 の 明 け 渡 し を 回 避 し な け れ ば な ら

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な い 」 と い う 外 務 省 と 大 蔵 省 の 共 通 の 認 識 の も と で 提 出 さ れ 、 イ ギ リ ス の 対 欧 州 政 策 の 礎 と な っ た38

「limited liability」、 つ ま り 、 イ ギ リ ス 政 府 が 西 欧 へ の 関 与 を 自 ら 制 御 す る と い う 原 則 は 、 西 欧 諸 国 の 連 邦 主 義 的 な 統 合 へ の 動 き に い か に 対 処 す る か と い う 議 論 の 中 で 到 達 し た 方 策 で あ り 、 現 在 に 至 る ま で イ ギ リ ス が 国 家 主 権 の 委 譲 の 回 避 に 固 執 す る こ と を 理 解 す る 上 で 重 要 な 拠 り 所 と な る 。 こ の 原 則 を イ ギ リ ス の 欧 州 統 合 に 対 す る 政 策 の 原 点 と 捉 え る と 、 イ ギ リ ス が 北 大 西 洋 条 約 調 印 を 契 機 に ヨ ー ロ ッ パ か ら 離 れ 、 ア メ リ カ を パ ー ト ナ ー と し た と す る 従 来 の 見 方 と は 異 な る 、 新 た な 見 方 を 示 す こ と が で き る 。 そ れ は 、 イ ギ リ ス は 西 欧 諸 国 と の 関 係 構 築 を 放 棄 し た の で は な く 、 関 係 を 制 御 す る こ と に よ っ て 、 超 国 家 的 な 統 合 へ の 関 与 を 控 え 、 自 国 の 方 針 に 適 う 政 府 間 協 力 の 領 域 に 特 定 し て リ ー ダ ー シ ッ プ を 発 揮 す る こ と を 選 択 し た と い う 見 方 で あ る 。 ヨ ー ロ ッ パ の 協 調 を 図 る こ と は 、 イ ギ リ ス の 国 力 を 強 化 す る と と も に 、 ア メ リ カ と の 関 係 を 維 持 す る た め に も 不 可 欠 で あ る 。 ヨ ー ロ ッ パ の 一 体 性 と 大 西 洋 共 同 体 の 成 立 は 不 可 分 の 関 係 に あ り 、 イ ギ リ ス は 、 双 方 の 関 係 の 包 括 的 な 結 び つ き を 可 能 に す る 重 要 な 位 置 を 占 め て い る 。

5 節 論 文 の 構 成

本 論 文 は 、ヨ ー ロ ッ パ の 経 済 的 発 展 に 伴 い 登 場 し た 欧 州 政 治 協 力(EPC)と 、 EU の 発 足 と と も に EPC を 引 き 継 い で 導 入 さ れ た 共 通 外 交 ・ 安 全 保 障 政 策

(CFSP) の 成 立 と 発 展 の 過 程 を 主 軸 と し 、 政 府 間 協 力 の 領 域 で 欧 州 統 合 の 進 展 に 積 極 的 に 関 与 す る イ ギ リ ス 政 府 の 取 り 組 み を 検 討 す る 。

EPCと イ ギ リ ス 政 府 の 関 わ り に つ い て は 第1章 で 検 討 す る 。CFSP と イ ギ リ ス 政 府 の 関 わ り に つ い て は 、 特 に 、CFSP の 中 の 安 全 保 障 ・ 防 衛 政 策 の 進 展 を 促 し た ブ レ ア 政 府 の 外 交 姿 勢 に 焦 点 を 絞 り 、第2章 と 第4章 に お い て 検 討 す る 。 第2章 で は 、 従 来 の イ ギ リ ス の 方 針 を 転 換 し 、EU の 防 衛 政 策 に 積 極 的 に 取 り 組 む ブ レ ア 政 府 に つ い て 検 討 す る 。 ま た 、 イ ギ リ ス の イ ラ ク 戦 争 参 戦 が ブ レ ア

参照

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