令和元年度厚生労働行政推進調査事業費(地域医療基盤開発推進研究事業)
分担研究報告書
医療機器の研修・保守点検指針の作成に関する研究
研究分担者
菊地 眞 公益財団法人医療機器センター 理事長
研究要旨
第5次医療法改正(2007年施行)において、医療機関に対して医療機器に係る安全確 保のための体制の確保が義務づけられた。しかしながら、具体的な水準を示したものはな い。そこで、本研究において、医療法に求められる事項のうち、「従業者に対する医療機 器の安全使用のための研修の実施」および「医療機器の保守点検に関する計画の策定及び 保守点検の適切な実施」について、施設の規模や専門家の有無によらず活用可能なガイド ラインなどを作成することとした。
ガイドラインの対象として、2018年6月12日付医政地発0612第1号・医政経発0612 第1号通知より、特定機能病院における定期研修としてとくに安全使用に際して技術の習 熟が必要と抽出されている医療機器、特性等に鑑みて保守点検が必要な医療機器とした。
ガイドラインの作成方法は次のとおりとした。学会や職能団体などが作成した生命維持 管理装置等や放射線関連機器等に関する既存のガイドラインや各社製品の取扱説明書、各 種団体の教育コンテンツなどを収集・分析した。そして、この分析結果を踏まえ、該当の 医療機器を取り扱う臨床工学技士や診療放射線技師、病院団体、医療機器団体および医療 機器研究者からなる研究班において本ガイドラインに記載すべき内容を議論し、「医療機 関における生命維持管理装置等の研修および保守点検の指針案」および「医療機関におけ る放射線関連機器等の研修および保守点検の指針案」を作成し、専門家の意見を聴取する ために関連学会などに対してレビューを依頼した。
2019年度は、2018年度に作成した人工心肺装置、CT装置、MR装置およびリニアッ ク装置に関する研修および保守点検のガイドライン案について、学会から聴取した意見を 踏まえて、記載内容の再検討を行なった。また、人工呼吸器、血液透析監視装置およびリ モートアフターローディング装置の研修および保守点検のガイドライン案を作成し、関連 する学会に対してレビューを依頼した。
今、医療現場では医療機器の研修や保守点検のガイドラインが求められている。しか し、それらは活用される現場の実情を踏まえたものでなければ形骸化するばかりか、現場 の混乱を招くことにもなりうる。本研究では従来の関連する研究で得られた知見なども参 考に、社会実装可能な保守点検ガイドラインなどの完成を目指す。
○研究協力者
城守 国斗 公益社団法人日本医師会 加納 繁照 四病院団体協議会
熊代 正行 公益社団法人日本診療放射線技師会 那須野 修一 公益社団法人日本臨床工学技士会 青木 茂樹 順天堂大学
石原 美弥 防衛医科大学校
百瀬 直樹 自治医科大学附属さいたま医療センター 安野 誠 群馬県立心臓血管センター
中山 裕一 社会医療法人若竹会 つくばセントラル病院 野村 知由樹 医療法人医誠会 都志見病院
江田 哲男 東京都済生会中央病院 富田 博信 埼玉県済生会川口総合病院 中村 勝 愛知医科大学病院
川守田 龍 社会医療法人きつこう会 多根総合病院
○オブザーバー
一般社団法人日本医療機器産業連合会 一般社団法人日本医療機器工業会
一般社団法人日本医療機器テクノロジー協会 一般社団法人電子情報技術産業協会
一般社団法人日本画像医療システム工業会 一般社団法人米国医療機器・IVD工業会 欧州ビジネス協会 EBC医療機器・IVD委員会
A.研究目的
第5次医療法改正(2007年施行)におい て、医療機関に対して医療機器に係る安全 確保のための体制の確保が義務づけられ た。また、「医療計画の見直し等に関する意 見のとりまとめ(2016年12月26日、医療 計画の見直し等に関する検討会)」におい て、医療の安全の確保等に関して、高度な 医療機器については配置状況に加えて稼働 状況等も確認し、保守点検を含めた評価を 行う旨が記された。しかしながら、個々の 医療機器について、実施すべき研修や保守 点検に関する水準を示したものはない。
本研究においては、医療法による医療機 関における医療機器の安全管理の体制確保 として求められる事項のうち「医療機器の 保守点検に関する計画の策定及び保守点検 の適切な実施」について、施設の規模や専 門家の有無によらず活用可能なガイドライ ンなどを作成することを目的とした。合わ せて、「従業者に対する医療機器の安全使用 のための研修の実施」に関しても、同様の ガイドラインを作成することとした。
B.研究方法
平成29年度厚生労働行政推進調査事業
(地域医療基盤開発推進研究事業)「中小医 療機関向け医療機器保守点検のあり方に関 する研究」において作成した「CT装置およ びMR装置の保守点検指針」の作成方法を
踏襲するものとした。
具体的な方法については、学会や職能団 体などが作成した生命維持管理装置等や放 射線関連機器等に関する既存の保守点検ガ イドラインや各社製品の取扱説明書など、
各種団体の教育コンテンツなどを収集・分 析し、医療機関において実施すべき保守点 検や研修の内容について検討した。
作成したガイドライン案について、関係 学会などに対してレビューを依頼した。
なお、本研究は医療機関における生命維 持管理装置や放射線関連機器の保守点検や 研修について検討するものであり、医療機 関において医療安全や医療機器保守管理の 業務経験を有する医師、臨床工学技士およ び診療放射線技師などの医療従事者、職能 団体、病院団体、医療機器団体、研究者、
行政関係者(厚生労働省医政局経済課)が 参画した。
C.研究結果 1. 対象製品の選定
平成30年6月12日付医政地発0612第 1号・医政経発0612第1号通知では、特定 機能病院における定期研修として、とくに 安全使用に際して技術の習熟が必要と抽出 されている医療機器、特性等に鑑み、保守 点検が必要な医療機器が抽出されている。
一覧を次表に示す。
生命維持管理装置等
①人工心肺装置および補助循環装置
②人工呼吸器
③血液浄化装置
④除細動装置
(自動体外式除細動器:AEDを除く)
⑤閉鎖式保育器 放射線関連機器等
⑥CTエツクス線装置
(医用X線CT装置)
⑦診療用高エネルギー放射線発生装置 (直線加速器等)
⑧診療用粒子線照射装置
⑨診療用放射線照射装置
(ガンマナイフ等)
⑩磁気共鳴画像診断装置 (MR装置)
これらのうち、2018年度は生命維持管理 装置等から人工心肺装置、放射線関連機器 等からCT装置、MR装置およびリニアッ ク装置の保守点検および研修のガイドライ ンを作成することとした。ただし、CT装置 およびMR装置の保守点検ガイドラインに ついては、2017年度に作成したことから、
今後、再検討する予定とした。
2019年度は生命維持管理装置等から人工 呼吸器および血液透析監視装置、放射線関 連機器等から診断用粒子線照射装置の保守 点検および研修のガイドラインを作成する こととした。
2. 生命維持管理装置等の研修および保守点 検ガイドラインの作成
ガイドラインの記載内容の検討に先立 ち、取りまとめの方針について、議論を 行った。
また、検討にあたって重要な視点とし て、2017年度に作成した医療機関における 放射線関連機器等の保守点検指針の検討と 同様に、医療の安全を確保することは当然 のことながら、医療機関の現状を踏まえて 過度な負担とならないよう、適切な指針と なるように議論を深めることが重要である ことを確認した。
(1) 保守点検ガイドラインの作成に関する方 向性
取りまとめの方針は、次のとおり決定し
た。
日常的に、毎日、実施可能な最低限の要 求水準について、まず取りまとめる。そ れ以外については、今後、さらに検討を 深める。
点検内容は、施設内で個別のスタッフが 目視などで実施できることとし、その他 の人員等により実施される可能性のある 項目とは分けて記載する。
点検頻度に明確な定めがない項目やメー カや機種ごとに異なっている項目につい ては、保守の範疇として整理できないも のも含まれている可能性があるため個別 的に反映せず、添付文書等を参照する旨 を記載する。
(2) 研修ガイドラインの作成に関する方向性 前出の通知に示される研修の項目とし て、当該機器を安全に使用するために必要 となる基礎的な内容について、次の項目に 分けて取りまとめることとした。
⑦有効性・安全性に関する事項
⑧使用方法に関する事項
⑨保守点検に関する事項
⑩不具合等が発生した場合の対応(施設内 での報告、行政機関への報告等)に関す る事項
⑪使用に関して特に法令上遵守すべき事項
⑫その他
(3) 研修および保守点検に関するガイドライ ンの記載内容の検討
学会や職能団体などによる生命維持管理 装置等に関するガイドラインや講習内容、
各社製品の添付文書や取扱説明書などにつ いて、記載内容を分析した。なお、添付文 書などは、(一社)日本医療機器テクノロジー 協会、(一社)日本医療機器工業会、(一社)米 国医療機器・IVD工業会および欧州ビジネ ス協会の協力を得て、加盟企業が取り扱う 代表的な機種のうち、直近の約5年間に製 造販売承認等を取得した製品を中心に収集 した。
これらの内容を元に、(1)および(2)の方向 性に従い、本ガイドラインに記載すべき内 容を検討し、指針案を作成した。
2019年度は、2018年度に指針案を作成
した人工心肺装置について、学会のレ ビューによって得た意見を踏まえ、研究班 において指針案の再検討を行なった。さら に、人工呼吸器および血液透析監視装置に ついて、(1)および(2)の方向性に従い、本ガ イドラインに記載すべき内容を検討した。
そして、指針案を作成し、専門家の意見を 聴取するために、次の団体にレビューを依 頼した。
(一社)日本医療機器学会
(一社)日本血液浄化技術医学会
付属資料1として、2020年3月末時点の
「医療機関における生命維持管理装置等の 研修および保守点検の指針案」を示す。
3. 放射線関連機器等の研修および保守点検 ガイドラインの作成
(1) 保守点検ガイドラインの作成に関する方 向性
生命維持管理措置等と同様の方向性とし た。
ただし、2018年度に放射線治療機器の保 守点検の検討において、CT装置等の診断機 器と同様にすべきか、毎週、毎月および毎 年などの精度管理についても記載すべき か、研究班において大いに議論した。
本年度の対象品目についても、昨年同様 に、日常的に、毎日、実施可能な最低限の 要求水準を取りまとめる旨の方針を踏襲す ることとし、施設の状況に応じて放射線治 療の質と安全の確保のために必要に応じて 学会等のガイドラインを参照することとし た。
(2) 研修ガイドラインの作成に関する方向性 生命維持管理装置等と同様の方向性とし た。
(3) 研修および保守点検に関するガイドライ ンの記載内容の検討
学会や職能団体などによる放射線関連機 器等に関するガイドラインや講習内容、各 社製品の添付文書や取扱説明書などについ て、記載内容を分析した。なお、添付文書 などは、(一社)日本画像医療システム工業 会、(一社)米国医療機器・IVD工業会およ び欧州ビジネス協会の協力を得て、加盟企
業が取り扱う代表的な機種のうち、直近の 約5年間に製造販売承認等を取得した製品 を中心に収集した。
2019年度は、2018年度に指針案を作成 したCT装置、MR装置およびリニアック 装置について、学会のレビューによって得 た意見を踏まえ、研究班において指針案の 再検討を行なった。さらに、リモートアフ ターローディング装置について、(1)および (2)の方向性に従い、本ガイドランに記載す べき内容を検討した。そして、指針案を作 成し、専門家の意見を聴取するために、次 の団体にレビューを依頼した。
(公社)日本放射線技術学会
(公社)日本医学放射線学会
(公社)日本放射線腫瘍学会
(一社)日本磁気共鳴医学会
付属資料2として、2020年3月末時点の
「医療機関における放射線関連機器等の研 修および保守点検の指針案」を示す。
D.考察
医療法などの定めにより、医療現場にお いては医療機器の研修や保守点検のガイド ラインが求められている。しかし、ガイド ラインは活用される現場の実情を踏まえた ものでなければ形骸化するばかりか、現場 の混乱を招くことにもなりうる。
本研究では従来の関連する研究で得られ た知見なども参考に、社会実装可能な保守 点検ガイドラインなどの完成を目指した。
ガイドライン作成の大きな方針は、2017 年度に作成したCT装置およびMR装置の 保守点検指針を踏襲するものと決定した が、対象製品が生命維持管理装置や放射線 治療機器に拡大したため、装置の用途や特 性が異なることから、作成にあたっては大 いに議論を行った。
E.結論
本研究では、既存の関連するガイドライ ンなどの記載内容を元に、研修や保守点検 として実施すべき項目を検討している。今 後も、職能団体、病院団体、医療機器団体 および学会などから広く協力を得ながら、
医療機関で活用可能な研修および保守点検 に関するガイドラインの完成を目指す。
F.研究発表 1. 論文発表
とくになし。
2. 学会発表
青木郁香,菊地眞.シンポジウム2 医療
機器安全管理における質の向上に向けて:
生命維持管理装置の安全管理の現状.第 94回日本医療機器学会大会.2019年6月
青木郁香,菊地眞.シンポジウム 2 隣の
医療機器安全管理:数字で見る:臨床工学 技士と医療機器安全管理〈中四国版〉.第 9回中四国臨床工学会.2019年9月
3. その他(講演など)
とくになし。
G.知的財産権の出願・登録状況 1. 特許取得
とくになし。
2. 実用新案登録 とくになし。
3. その他 とくになし。