博士学位論文
標準化されたリストを活用した健康管理に寄与する 支援システムの構築と評価
2016 年 3 月
兵庫県立大学大学院 応用情報科学研究科 応用情報科学専攻
髙見 美樹
要約
情報技術の急速な進歩の下、医療においても病院情報システムとして各種の専門的な業 務を支援する情報システムの導入を進められてきた。当初は、事務職が入力作業を行い、
単独の部門業務を支援するシステムが主流であったが、パーソナルコンピュータが個人に 普及し、情報処理技術が更に進歩したことにより、入力操作を医療従事者自身が実施する オーダリングシステムや看護業務支援システム等が開発され、導入されている。
これらの業務を支援するシステムは、専門的な単独部署での業務を支援するシステムと は異なり、多くの人が情報システムを利用し、入力された情報を共有することから、情報 の活用目的に沿った共有のルールや取り決めが必要となり、システム導入の際には、その 業務に関連するさまざまな情報に関して標準化が必要となる。しかし、システムを導入す る業務に関連する情報を標準化するには、多くの労力と時間が必要なため、1 つの施設で 取り組むには限界があり、システム導入を躊躇させる要因の一つとなっている。また、医 療機関毎のデータの比較や、地域包括ケアシステムの構築に向けて、医療機関間や医療機 関と介護事業所間、さらには家族間の情報共有も必要となり、施設内での標準化だけでは 済まされない現状となっており、学会や研究会なども、システム導入時に活用できる標準 化されたリストを作成する必要性が高まっている。
第 1 章の序論では、病院情報システムを例として標準化が必要となった背景と国の医療 分野におけるICT化への方向性、本論文の構成について述べた。
第 2 章では、本研究に関連した主な先行研究として、看護における観察項目の標準化に 関する取り組みや先行研究と、健康管理に寄与する支援システムに関する4つの取り組み について述べた。
第 3 章では、中小規模病院を対象とした長期療養型病床群における看護観察指示システ ムに、先行研究で取り組まれていた看護における観察項目の標準化を活用した標準患者観 察マスターを実装し、導入後の結果を基に評価を行った。実装に際しては、602 項目の標 準患者観察マスターの観察項目の特徴を整理し、大きく5つの特徴を持つ項目群に分類し た。また、これらの特徴から観察項目を「観察目的」「観察説明」として抽出し、この項目 を用いて患者の状態に合わせた、より柔軟性の高い観察指示のオーダーができる仕組みの 作成を試みた。システム構築後は、長期療養型病床にシステムを導入し、4 ヵ月後に入力 されているデータを基に、システムの評価を行った。その結果、観察項目として利用され ていた項目数は、全体の5分の1であった。システムを導入した神経難病病棟に入院して いる患者は、入院期間が長く、状態が安定しており、対象となる疾患、症状に特徴があっ たためと考えられた。また、「観察目的」「観察説明」を組み合わせた方法では、他者には 理解し難い観察項目が作成される可能性や、1 つの観察項目に複数の結果が必要となる項 目が作成されることがわかった。
第 4 章では、食事に関する情報の入力操作の軽減、入力作業の簡略化を目指して、食事
リストとして掲載された食事画像から色に着目し、食事に関する情報の抽出を試みた。「家 庭のおかずカロリーブック」に掲載されている「おかず」の食事画像を、主食材を中心に 切り出し、その画像に含まれている色の支配度から点数をつけ、主食材、調理方法による 特徴の抽出を試みた。また、実際に調理し、撮影した食事画像の色解析を実施した。その 結果、食事画像に含まれる色の情報のみでは、食事に関する情報の抽出は困難であり、追 加の情報が必要なことがわかった。
第 5 章では、タブレット端末を活用した家族の食生活を支援するシステムの構築と評価 を行った。本システムは、①食事入力が便利なタブレット端末を用いるシステムを構築す る。②特に健康上の問題を有していない者を対象とする。③家族成員の健康的な食生活の 質的向上を主題とする。④食事入力の簡素化を図るべく、食事メニューの分類と構成に注 力する。これら4つの特徴を有している。構築したシステムを約1ヶ月間、7家族にて、
毎日の食事入力を強制せずに試行実験を行った。その結果、食事入力の負担について課題 が残ったものの、本システムをほぼ毎日使用し、食事入力をしていた家族に関しては、徐々 に自身が設定した目標摂取カロリーの値に近づく結果が得られ、健康的な食生活への支援 に資する可能性があると考えられた。
第 6 章では、総合考察として、各研究で取り組んだ結果を基に、システムにおける標準 化されたリストの活用について考察した。そこで、標準化されたリストをどのように活用 するのかは、開発するシステムの特性によって異なることを指摘した。システム使用者の その業務における項目の必要性や使用頻度、利便性を考慮した項目立てのカスタマイズの 必要性、更に、システム使用者のみにて情報を活用する特性を持ったシステムの場合には、
より使用者個人に特化したリストの作成を支援する機能の必要性について述べた。
Creation and Evaluation of Support Systems Contributing to Healthcare Management Using Standardized Lists
Even in the field of medical care, rapid advances in information technology have been promoting the introduction of information systems that support a variety of specialized operations as hospital information systems.
For multiple people to use these systems and share entered information, rules and agreements for sharing in keeping with intended use of information are required as well as standardization with respect to various information relevant to operations. To realize standardization, information sharing is necessary not only within medical institutions but among institutions and within families as well. Standardization only within medical institutions is no longer acceptable. Opportunities to utilize standardized lists at conferences and workshops when systems are introduced are increasing.
Chapter 1 looks at the context in which a need for standardization arose and the trend toward ICT in Japan’s medical fields using hospital information systems as an example.
Chapter 2 details 4 initiatives related to previous research about standardization of observation items in nursing and healthcare management support systems as initiatives related to our study.
Chapter 3 looks at implementation of a standardized patient observation master utilizing standardization of observation items in nursing undertaken in previous research within nursing observation instruction systems in long-term care clinical groups targeting small and medium hospitals and evaluates the results.
Chapter 4 covers our attempt to extract information concerning diet focusing on the colors of listed food images as a dietary list with the aim of simplification and reduction of the task of data entry regarding dietary information. We concluded that extracting dietary information from only food image colors is difficult.
Chapter 5 covers the creation and evaluation of a mobile-tablet based system for enhancing dietary habits of family members. Despite the burden of entering meal information, the families that used it gradually came close to reaching their own calorie intake targets. The results of this trial suggest this system can contribute to the support of healthy dietary habits.
The summary in Chapter 6 considers the use of standardized lists in systems based on the results of our research and future challenges. Variations according to characteristics of the developed systems are noted.
i
目次
第1章 序論と研究目的... ... 1
1.1 序論... 1
1.2 研究目的... 2
第2章 本研究に関連した主な先行研究... 3
2.1 看護における観察項目の標準化に関する取り組みや先行研究... 3
2.1.1 病院-施設、訪問看護間における看護情報を電子的に交換するための項目 集の開発... 3
2.1.2 保健、医療、福祉領域の電子カルテに必要な看護用語の標準化に関する研究. 3 2.2 健康管理に寄与する支援システムに関する取り組みや先行研究... 4
2.2.1 携帯電話接続歩数計と携帯電話用e-ヘルスプロモーションシステムの開発. 4 2.2.2 げんき!家族応援団... 4
2.2.3 インターネットを用いた食事画像による遠隔栄養指導効果の検討... 4
2.2.4 デジタル写真を用いた食事記録システム「FoodLog」... 5
第3章 長期療養型病床群における看護観察指示システムへの標準患者観察マスターの 実装と評価... 6
3.1 目的... 6
3.2 倫理的配慮... 6
3.3 看護観察指示システムの構築... 6
3.3.1 「観察目的」、「観察説明」の開発... 6
3.3.2 看護観察指示システムの作成... 9
3.4 看護観察指示システムの評価... 10
3.5 考察... 11
第4章 食事リストに掲載された食事画像をもとにした食事に関する情報の抽出... 14
4.1 目的... 14
4.2 対象とした食事画像と色解析方法... 14
4.3 倫理的配慮... 14
4.4 主素材、調理法の分類と主要色(16色)における解析... 15
4.4.1 方法... 15
4.4.2 主素材、調理法の分類項目の作成と分類... 15
4.4.3 主要色(16色)における解析結果と考察... 16
4.5 切り出された主素材を中心とした画像を用いた主要色(8色)における解析... 21
ii
4.5.1 方法... 21
4.5.2 食事画像の切り出し及び、色解析の対象とする食事画像の選定... 22
4.5.3 主食材の項目作成と分類... 22
4.5.4 主要色(8色)における解析結果と考察... 23
4.6 調理法の再分類及び調理法、主食材を組み合わせた主要色(4色)における解析. 30 4.6.1 方法... 30
4.6.2 調理法の再分類と、調理法と主食材を組み合わせた分類... 30
4.6.3 主要色(4色)における解析結果... 31
4.6.4 主要色(4色)における分位点を活用した主食材の推定と考察... 33
4.7 撮影した食事画像を活用した食事に関する情報の抽出... 44
4.7.1 方法... 44
4.7.2 撮影方法について... 44
4.7.3 撮影した食事画像からの料理候補の推定と考察... 48
4.8 まとめ... 50
第5章 タブレット端末を活用した家族の食生活支援システムの構築と評価... 52
5.1 目的... 52
5.2 倫理的配慮... 52
5.3 食生活支援システムの特徴... 52
5.4 食生活支援システムの構築... 54
5.5 食生活支援システムの評価... 57
5.5.1 試行実験の概要... 57
5.5.2 試行実験の結果... 57
5.6 考察... 68
第6章 総合考察... 74
謝辞... 77
文献... 78
付録... i
1
第 1 章 序論と研究目的 1.1 序論
情報技術の急速な進歩の下、医療においても病院情報システムとして各種の専門的な業 務を支援する情報システムの導入が進められてきた。1960年代は、医事会計など事務職が 入力作業を行い、単独の部門業務を支援するシステムが主流であった。その後、パーソナ ルコンピュータが個人に普及したことに併せて、更なる情報処理技術の進歩により、複雑 かつ莫大な量の情報を処理する能力が向上したことから、情報の入力等の操作を医療従事 者自身が実施し、検査や処方、看護業務を支援するシステムとして、オーダリングシステ ムや看護業務支援システム等が開発され、導入されている。
これらの業務を支援するシステムは、専門的な単独部門での業務を支援するシステムと は異なり、その業務が展開される様々な場所で、多くの人たちが、情報システムを利用し、
入力された情報を共有することになる。そこで、どのような内容を、どのように入力し、
共通理解をしていくのか、情報の活用目的に沿って共有のルールや取り決めが必要となり、
システム導入の際には、その業務に関連するさまざまな情報に関して標準化が必要となる。
しかし、システムを導入する業務に関連する情報を標準化するには、多くの労力と時間が 必要なため、1 つの施設で取り組むには限界があり、システム導入を躊躇させる要因の一 つとなっている。また、医療機関毎のデータの比較や、地域包括ケアシステムの構築に向 けて、医療機関間や医療機関と介護事業所間との情報共有、さらには、患者個人、家族と の情報共有も必要となり、施設内での標準化や共通理解だけでは済まされない現状となっ ており、学会や研究会なども、システム導入時に活用できる標準化されたテキストや画像、
動画などのデータが体系的に示されたリスト(以下、「標準化されたリスト」とする)を作 成する必要性が高まっている。
国は、「健康・医療・介護分野におけるICT化の推進」を平成26年3月に示しており、
医療の質の向上、効果的、効率的な医療の提供、健康増進や医療費の適正化に向けて、医 療等分野へのICT活用を加速化させるとしている。今後、大規模病院だけでなく、中小規 模の病院や、在宅医療を提供する機関、事業所、各個人においても、システム導入が進む ことが予測される。しかし、一般社団法人保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)オー ダリング電子カルテ導入調査報告(2013年調査)では、病院における情報システムの導入 率は、オーダリングシステムでは32.4%、電子カルテシステムでは21.7%となっており、
全体的にみると、これらのシステムが導入されている病院は、まだ少ないのが現状である
1)。
著者はこれまで、今後、システムの導入が進むと予測される中小規模の病院や、健康増 進を目的としたシステムの導入に際し、必要とされる標準化されたリストを作成し、それ をもとにシステムを構築し、実際の活用状況から、その評価に取り組んできた。そこで、
本論文では、これらの取り組みについて述べ、標準化されたリストを活用する観点から包
2
括的なまとめを行う。第3章では、長期療養型病床を有する病院において、標準化された リストとして標準患者観察マスターを用いた看護観察指示システムを開発し、実際の病棟 にて活用されたリストの内容や活用状況について考察を行う。
第4章では、食生活支援システムにおける入力手段として、標準化されたリストである
「家庭のおかずのカロリーガイドブック」2)に掲載されている552種類の食事画像のみを 用いて、食事に関する情報の入力が可能か検証を行う。第5章では、標準化されたリスト である「家庭のおかずのカロリーガイドブック」、「新 毎日の食事カロリーガイドブック
‐外食編 ファストフード・コンビニ編・市販食品編・家庭のおかず編」3)に掲載されて いる食事リストを用いて、家族を対象とした食生活支援システムを開発し、家族を対象と して活用されたデータやシステムのログデータ等を基に、システムの使いやすさや健康的 な食生活支援に向けた貢献について考察を深める。更に、第3、4、5章の結果を基にその まとめと、標準化されたリストを活用する際における留意すべき点について述べる。
1.2 研究目的
本研究では、中小規模の病院や、健康管理を目的としたシステムの導入に際し、標準化 されたリストを活用したシステムを構築する。また、構築したシステムを活用し、入力さ れたデータや活用状況、システム使用者からの意見を基に評価を行う。これらの結果を基 に、標準化されたリストを活用する観点から包括的なまとめを行うことを目的とした。
3
第 2 章 本研究に関連した主な先行研究
2.1 看護における観察項目の標準化に関する取り組みや先行研究
2.1.1 病院-施設、訪問看護間における看護情報を電子的に交換するための 項目集の開発
この研究では、訪問看護や在宅ケアにおいて、病院からの継続的なケアの提供および 患者の生活の早期安定化に必要な患者情報を、病院と共有するために必要な項目の開発 を行っている 4)。看護における観察項目に関しては、在宅においても引き続き観察が必 要な項目として示されている。各項目の作成には、日本医療情報学会課題研究会の看護 サマリーネットワーク研究会による看護サマリー標準項目集(389 項目)を基に、実際に 看護師が記載した看護サマリーを検討することでさらに必要な項目の追加を行った。ま た、各項目の粒度を統一するために、厚生労働省の「電子保存された診療録の診療情報 の交換のためのデータ項目セット(J-MIX)」5)を参考に、各項目の調整を行った。その結 果、941 項目が特定され、看護情報を電子的に交換するための項目集(Nursing Summary Data Item Set : NDIS)として定義している。
2.1.2 保健、医療、福祉領域の電子カルテに必要な看護用語の標準化に 関する研究
この研究では、全国での統一された看護用語が整っていない現状を受け、電子カルテ システムへの搭載を前提として、看護関連マスターの研究開発が行われている。患者の 状態を表すマスターは、病棟の一般患者において最小限必要とされる項目として、始め に「標準患者観察マスター」が開発され、その後の検証を経て「看護実践用語標準マス ター」の「看護観察マスター」が開発されている6)。
開発にあたっては、まず各病院、辞書、テキスト等からたたき台が作成され、臨床看 護師によるチェックを受けたものを、実際に2病院にて開発中であった電子経過表や看 護計画及び実施結果を記載するマスターとして活用し、検証が進められた。2 病院での 活用の際には、各病院によって不足する部分が補充されたことから、2 病院の観察項目 について、再度マッチング作業を実施し、唯一1件となるように作業が行われている。
看護観察マスターは、「観察項目」、「観察結果」、「検索分類」の 3 つで構成されてい る。「観察項目」は、個々の観察の名称を表し、観察の目的や粒度の違い、治療、ケア を行う上で安全、管理に必要な観察項目も含まれている。「観察結果」は、個々の観察 項目の結果表記を表し、表記の用語、単位も含め統一されている。「検索分類」は、観 察項目を抽出するための項目である。本研究では約 1500 語の看護観察マスターが構築 された。
4
2.2 健康管理に寄与する支援システムに関する取り組みや先行研究
2.2.1 携帯電話接続歩数計と携帯電話用 e-ヘルスプロモーションシステムの
開発
健康増進に関心が高く、日々ウォーキングに取り組む中高年者を主な対象に、携帯電話 に接続するだけでデータをシステムに登録できる歩数計と、携帯電話用のシステムの開発 について報告されている7)。歩数計は、携帯電話を使用してWebサイトへ歩行データを送 信できる。歩行データは、日常生活のすべての歩数である総歩数と、運動として意識的に 取り組んだウォーキング歩数とを区別して記録し、運動としてのウォーキングについては、
その時間も記録している。携帯電話用の歩数計のデータ登録システムには、お知らせやウ ォーキング日誌などの機能があり、ウォーキング日誌では、ウォーキングの推移をグラフ で表示するほか、利用者の現在の歩数状況に対してアドバイスが表示される。フィールド テストの結果では、対象者が60歳~73歳であったことから、携帯電話自体のブラウザ機 能の操作を 87% がほとんど、全く使っていない状況であったが、操作性に不便を感じる との報告は少なく、おおむね便利として支持されたと報告されている。
2.2.2 げんき!家族応援団
インターネット食事支援システムを基にした、保健指導プログラムである。特定保健指 導に求められている「情報提供支援」「動機付け支援」「積極的支援」の各段階を支援の対 象としている8)。その中でも「積極的支援」では、事前に身体活動量を計測する機器を用 いて、エネルギーの摂取状況と消費状況の現状解析を行った上で、専門の管理栄養士によ る対面相談において、生活習慣改善のための目標設定や今後の進め方について調整が行わ れる。その後 6ヶ月の間に管理栄養士からの3回の電話相談と2回のメール相談、食事指 導を計3回受けることができる。食事指導では、デジタルカメラや携帯電話のカメラにて 食事の写真を撮影の上、送信することで、専任の栄養士が画像から食事内容を把握し、3 日後に登録者へ食事内容についてのアドバイスが返却される仕組みとなっている。
2.2.3 インターネットを用いた食事画像による遠隔栄養指導効果の検討
脂質異常症などの生活習慣病にて診療所に通院している患者を対象に、デジタルカメラ で撮影した食事写真をインターネットにて送信し、その画像をもとに大学病院の管理栄養 士から遠隔栄養指導を行うシステムが報告されている9)。患者は3日間の食事を撮影し、
自宅からインターネットにて10日に1度、1ヶ月に3回の割合で専用のサイトに送信する。
食事画像は、スケールと共に食事全体を撮影するほか、料理1品ずつの撮影を行う。大学 病院の管理栄養士は、受け取った写真をもとに食事内容を評価し、改善点を入力し患者へ 送信する。同内容のメールは診療所の医師にも送信され、診察時に食生活の改善状況につ いて確認するシステムである。
5
2.2.4 デジタル写真を用いた食事記録システム「FoodLog」
「食」に関わるライフログの共有に関する研究において開発された「FoodLog」は、写 真で食事の記録を残す仕組みとして開発されたWebシステムである10)11)。ユーザーは、携 帯電話やスマートフォンで食事のデジタル写真をとり、アップロードするだけで、食事記 録が作成される。食事画像からの特定メニューの判定には、画像の特徴量として、RGB カ ラーモデルを用いたRGBヒストグラム、HSVカラーモデル用いたHSVヒストグラム、カラ ーコレログラム、SURF(Speeded Up Robust Features)に、BoK(Bag of Keypoint)表現 を合わせた特徴量を用いている12)。それらの特徴量をSVM(Support Vector Machine)と 組み合わせた識別機を構築し、さらに、これらの識別機をAdaBoostで組み合わせ、判定の 精度を高めている。また、食事画像における食事以外の部分の影響を削除するため、食事 画像の領域を自動的に分割する仕組みを構築している。加えて、食事画像の検出、食事バ ランスの推定の精度を向上させるため、個人に特化したメニューの認識を行っている。そ のため、本システムの使用開始時は、撮影した食事画像とメニューの登録を行い、これら の記録が増えていくことで、精度の高いメニュー推定を行えるとしている。現在、開発さ れた「FoodLog」を用いて、生活習慣病の予防や、糖尿病の治療における食事管理に活用す るための検討が進められている。
6
第 3 章 長期療養型病床群における看護観察指示システムへの標準患者観察マ スターの実装と評価
本章では、長期療養型病床を有する病院において、標準化されたリストとして標準患者観 察マスターを活用したシステムを作成し、実際の病棟で活用されたリストの内容や活用状 況について考察を行う。
3.1 目的
長期療養型病床群においては、急性期での治療が終わり、病状は安定しているものの、
長期にわたって継続した療養が必要な要介護度の高い者が入院し、治療、療養を続けてい る。そのため、患者に対するケアは日常生活の支援が中心となり、看護師、准看護師と共 に介護職員が配置され、日々のケアを行なっている。長期療養型病床群にて利用する情報 システムは、患者の状況や施設、職員などの状況が異なることから、急性期の治療を行な う病院にて開発された病院情報システムをそのまま利用するのは難しい。また、長期療養 型病床群に入院している患者は、治療よりも医学的な管理が中心であることから、状態に 変化が少ない患者が入院する病院における早急なシステム開発の必要性は薄かったことか ら、長期療養型病床群に特化したシステム構築に関する報告は少ないのが現状である。
今回、長期療養型病床群であるX病院において、看護、介護職の実践能力の向上や評価 をサポートするための看護過程支援システムの一部として、看護観察指示システム(以下、
本システム)の作成を試みた13)。その後、本システムを導入し、入力された観察項目の内 容やシステムの利用方法について調査を行い、観察項目の選択における利便性について評 価することを目的とした。
3.2 倫理的配慮
本研究を実施するに際し、平成15年に島根大学医学部の倫理委員会より承認を受けた。
システム導入に際しては、倫理委員会より承認を受けた研究計画に基づき、研究対象フィ ールド施設の管理者および看護部管理者、研究対象となった患者および家族に文書により 研究の協力を依頼し、承諾を得た。
3.3 看護観察指示システムの構築
3.3.1 「観察目的」、 「観察説明」の開発
本システムでは、患者の観察指示を示すために必要な用語として、平成 15~16年度厚 生労働科学研究事業の「患者、医療、福祉領域の電子カルテに必要な看護用語の標準化と 事例整備に関する研究」において検証され、MEDIS-DC(医療情報システム開発センター)
の標準患者観察マスターとして採用が検討されていたもの(以下、標準患者観察マスター
7 とする)を利用できないかと考えた。
標準患者観察マスターは602項目あり、患者の全体的な観察項目を表現する用語として 開発されており、大きく、二つの枠組みに分けられ構成されている(表1)。
1)一般状態:バイタルサインや栄養、排泄などに分類され、表現されている項目 2)系統別:体格や外皮系などの枠組みで表現されている項目
表1 標準患者観察マスター(一部抜粋)
第1階層 第2階層 第3階層 第4階層 結果マスター
観察測定 身体
(一般状態)
一般状態
(バイタ ルサイン)
体温
直腸温 99.9℃ 腋下温 99.9℃ 膀胱温 99.9℃ 鼓膜温 99.9℃ 体表面(前額部) 99.9℃ 体表面(胸部) 99.9℃ 体表面(手掌部) 99.9℃ 体表面(足底部) 99.9℃
血圧
右上肢拡張期 999mmHg 右上肢収縮期 999mmHg 左上肢収縮期 999mmHg 左上肢拡張期 999mmHg 右下肢拡張期 999mmHg 右下肢収縮期 999mmHg 左下肢収縮期 999mmHg 左下肢拡張期 999mmHg
座位 999mmHg
臥位 999mmHg
立位 999mmHg
(出典)髙見 美樹、石垣 恭子、古賀 美紀他.長期療養型病床群における看護指示システムへの標準患 者観察マスターの実装と評価.医療情報学、24巻、6号、pp.631-638,2005
そこで、標準患者観察マスターの観察項目について、観察を行なう際の条件や修飾を含 んだ項目、観察した結果を表現した項目などに分類、整理した。その結果、標準患者観察 マスターに存在する観察項目には、大きく5つの特徴を持つ項目群として分類することが できた。
1)観察するときの条件を含んだ項目
8
「直腸温」や「右上肢拡張期血圧」などがあり、これは体温や血圧測定時の部位などを 条件として含んでいる項目
2)検査名や分類名
「胸部レントゲンの所見」や「ヒュージョーンズの分類」などの検査名や分類名 3)観察された結果としての項目
(1)「尿量減少」や「呼吸性アシドーシス」などの、二つのデータを比較した結果や 解釈、判断が含まれている項目
(2)「努力呼吸」や「ピポクラテス顔貌」など、症状や反射などの疾患の特徴を示す 項目
(3)「カテ刺激症状」や「レイノー現象」など、いくつかの症状が集約し、一つの名 称がつけられている項目
4)観察指示として使用しにくい項目
(1)「誤嚥の程度」、「嚥下障害の種類」などの、単に観察だけではなく、検査を行な わないと判断できない項目
(2)「オムツカウント」、「げっぷ」など、他施設では異なる意味として捉えられる可 能性がある項目や、俗語として使用されている項目
(3)「食道痛」、「中心静脈栄養」など、観察することができないと考えられる項目 5)観察指示としての項目
(1)「脈拍数」や「尿量」など、視診、触診、聴診することで判断される項目
(2)「疼痛の持続時間」や「掻痒感」など、患者の言葉を通して情報を得ることので きる項目
(3)その両方で観察が可能と考えられた項目(例:排ガス確認)
これらの特徴を有したマスターであるものの、観察指示をオーダーする際の観察項目と しての利用は可能であるとし、本システムの観察指示を表現する用語として標準患者観察 マスターを利用することにした。
これらの特徴から標準患者観察マスターの観察項目には、観察行為そのものや観察する 対象、目的、また、それらを説明する項目が組み合わされて構成されていると考え、研究 者2名、大学院生9名にてこれらの項目の抽出を行った。
そこで、本システムの観察項目として、これらの抽出された項目から看護師自身が作成 し、観察項目として利用することができれば、標準患者観察マスター602 項目の中から観 察項目を選択する方法のみでなく、患者の状態に合わせた、柔軟性の高い観察指示をオー ダーするシステムを作成することができると予測した。そのため、本システムでは、抽出 されたこれらの項目を「観察目的」、「観察説明」、「両方の要素が含まれる項目」の3つに 分け、これらを利用した観察項目の作成の方法を試みた。
「観察目的」:各観察項目に1つ存在し、この言葉によって観察の対象や目的を表現し
9
ている項目。134項目。(「意識」「コミュニケーション」等)
「観察説明」:観察の対象となる項目を説明する目的で使用されている項目。57 項目。
(「異常」「有無」等)
「両方の要素が含まれる項目」:「観察目的」と「観察説明」の両方の働きをもつ項目。
11項目。(「炎症」、「大きさ」等)
3.3.2 看護観察指示システムの作成
本システムにおける観察指示の入力は、立案された看護計画に沿って、観察項目を選択 し、条件を入力することとした。例えば「移動時」や「排泄時」、「回数」、「時間」等は、
選択又は直接入力することができるように設定した。
観察項目の選択には、二つの方法が可能である。
1)標準患者観察マスターから観察項目を直接選択する方法
2)今回作成した「観察目的」から1項目と、「観察説明」から複数項目を選択し、観察
指示を作成する方法(「観察目的」と「観察説明」の両方の働きをする項目については、同 じ項目を2回以上、利用できないように条件を設定した。)
観察指示をオーダーする看護師は、患者の状態に合わせて、観察項目を選択する方法を 選ぶことができるようにした。患者の状態に合わせた観察項目の作成とは、看護師が患者 の状態をアセスメントし、観察指示をオーダーする段階で、例えば、観察項目として「努 力呼吸」を選択する場合には、1)の方法を用いて、標準患者観察マスターを利用して、「努 力呼吸」を選択する。また、「努力呼吸」だけを観察するのではなく、呼吸状態の全般を観 察する「呼吸状態」のオーダーを希望する場合には、標準患者観察マスターには「呼吸状 態」という観察項目は存在していない。そのため、2)の方法を用いて、「観察目的」にて「呼 吸」、「観察説明」で「状態」を選択し、それを組み合わせることによって「呼吸状態」と いう意味の観察項目を作成し、オーダーすることが可能である。
これらのオーダーの後に、具体的な時間や「移動時」などの条件を加える場合には、選 択または直接入力することで観察指示をオーダーすることを可能とした。
1)の方法を用いて、標準患者観察マスターから観察項目を選択する場合には、第1階
層から選択していく方法と、語句の文字検索機能を利用し、希望する観察項目を選択する ことも可能である。さらに、2)の「観察目的」と「観察説明」から観察項目を選択する場 合においても、選択した「観察目的」と「観察説明」の語句の組み合わせから、それに対 応すると考えられる標準患者観察マスターを自動的に検索し、リストアップ表示する機能 を作成したことから、標準患者観察マスターから観察項目を選択する手段として、2)の方 法を活用することも可能としている(図1)。
10
図1:観察指示入力画面
3.4 看護観察指示システムの評価
本システム作成後、長期療養型病床群であるX病院の1病棟に本システムを導入した。
導入後、4 ヶ月が経過した時点で、入院患者に入力さている全ての観察指示、観察指示の 入力方法について調査した。調査した結果から、標準患者観察マスター及び「観察目的」、
「観察説明」の利用について、実際に指示として利用された項目と、観察項目の選択方法 から、本システムの利便性についての評価を行った。
本システムが導入された病棟は、神経難病病棟であり、病棟科外の患者及びショートス テイの患者を除き、35名の患者をシステム利用対象患者としている。病棟において患者の 日常生活のケアを行なっている職員数は21名であり、看護師7名、准看護師12名、介護 職2名である。本システムは、医師を含み、病棟の職員全員が利用可能である。看護指示 をオーダーしているのは主に看護師、准看護師で、オーダーの実施、確認については、看 護師、准看護師、介護職が利用可能である。
職員は、平均年齢38才、性別は女性19名、男性2名で、当該病棟の平均勤務期間は、
23.8ヶ月である。
本システム利用対象者である入院患者は、平均年齢76.1才、性別は、男性11名、女性 24名、入院からの平均在院日数は417.1日である。主な疾患として、脊髄小脳変性症、多 発性脳梗塞、パーキンソン病などである。
観察指示の入力状況は、システム対象患者 35名に対して、359項目の観察指示がオー ダーされていた。オーダーされた観察項目中、現在展開中の観察指示は274項目であった。
観察項目の種類は、標準患者観察マスターを利用した観察項目が 280 項目、「観察目的」、
「観察説明」を組み合わせた観察項目が 79 項目であった。その内容としては、標準患者
11
観察マスターを利用した観察項目を分類毎に整理すると、胸部、腹部関連 58 項目、外皮 系関連54項目、バイタルサイン関連49項目、症状関連37項目、眼、耳、鼻、口関連33 項目、排泄関連19項目、栄養関連が10項目と多かった(表2)。
「観察目的」「観察説明」を組み合わせた観察項目では、「観察目的」に「痰」を選択し た項目が8項目、「呼吸音」、「排便」、「疼痛」を選択した項目が各5項目、その他、「脈拍」
や「皮膚」、「平衡」等33種類、56項目が選択されていた。組み合わせによって作成され た観察項目には、『「痰」「性状」「色調」「量」』が一つの観察項目としてオーダーされてい た場合もあり、一つの観察項目に、複数の観察結果が必要になる観察項目も存在していた。
表2 標準患者観察マスターから選択された主な観察項目
分類 観察項目
栄養 食事摂取量
症状 表情 掻痒感
冷感 発赤
体格 体重
排液 嘔吐
排泄 尿 排便
バイタルサイン 血圧 体温
脈拍 呼吸
外皮系
発赤 乾燥
湿潤 びらん
褥創経過の評価 ブレーデンスケール
胸部・腹部
咳嗽 呼吸困難
喀痰 呼吸困難に伴う症状 胸痛 腹部膨満感 呼吸音
神経・精神 コミュニケーション 表情
眼・耳・鼻・口 嚥下障害 誤嚥 SPO2
3.5 考察
本システム稼動後4ヶ月の時点で、オーダーされた観察指示は、患者35名に対して、
359 項目であった。オーダーされた観察指示の内容についてみると、標準患者観察マスタ ーを利用し、観察項目を選択した場合は、標準患者観察マスター602 項目中、オーダーに
12
利用された観察項目は120項目であり、全体の5分の1のみであった。
観察指示としてオーダーされた観察項目には、同じ観察項目がいくつかオーダーされて いた。結果に示したごとく、その内容としては、褥創、掻痒感、喀痰、呼吸困難、排泄、
誤嚥、嚥下障害に関する観察項目が多くオーダーされていた。本システムが稼動している 病棟は、長期療養型病床群の神経難病病棟であり、入院期間が長く、患者の状態が安定し ており、対象とする疾患や症状に特徴があると考えられる。このことから、これらの使用 頻度が高い観察項目は、関連する観察項目毎にセット化するなどの対応が必要になると考 えられた。
「観察目的」と「観察説明」から観察項目を作成する場合では、様々な種類の観察項目 が作成されていた。これは、観察指示をオーダーする職員自身が、患者に必要な観察項目 を作成できることで、多くの種類の観察項目が作成されたと考えた。しかし、様々な職種 のシステム利用者が、言葉を組み合わせて観察項目を作成することで、他者に理解しにく い観察項目が作成される可能性や、一つの観察項目に対して、複数の観察結果が必要にな る観察項目が作成されることが解かった。また、「観察目的」、「観察説明」の項目数が多く、
語句の検索機能がないことから、必要とする言葉を捜し難いとの意見もあった。これらの 状況から、共通の理解を得られ、観察項目として開発が行なわれている標準患者観察マス ターを、今後は本システムの観察項目の中心として利用する必要があると考えた。
本システムでは、標準患者観察マスターから観察項目を選択するには、分類から観察項 目を選択し、観察指示画面において分類と観察項目を一緒に表示させている。これは、本 システム作成時の意図として、対象となる患者の病状や症状から観察項目の選択が可能に なり、選択しやすくなると予測していた。例えば「呼吸困難」に関連する項目は、「心臓」
と「呼吸困難」の分類に存在し、患者の状態に合わせて選択されると予測していた。しか し、実際には、語句の検索機能を利用し、観察項目を選択していたことから、同じ観察項 目であるにも関わらず、一緒に表示される分類が患者の病状と異なる可能性が出てきた。
これを受け、標準患者観察マスターの観察項目の重複を確認し、分類の表示について再検 討する必要があると考える。
また、語句の検索機能は、オーダーする際に、既に必要となる観察項目が解かっている 場合は利用しやすい。しかし、必要とする観察項目が解からない場合や、必要とする観察 項目が他にあるかを確認する場合等では、検索させた言葉に対応した観察項目しか選択で きず、幅広く検索することは難しい。その為、本システムで導入した「観察目的」「観察説 明」の組み合わせによる方法を、今後は、観察項目の作成ではなく、観察項目を検索する ためのツールとして利用できるように、再構築するべきであると考える。
今後、標準患者観察マスターに限らず、様々な種類の標準化されたリストが開発され、
その項目数は膨大になっていくと考える。そのため、膨大な項目から、必要とする項目を 選択することは、ますます困難になり、多くの時間と費用をかけて開発されても、実際に
13
システム利用者から利用される項目は、ごく一部になる可能性がある。佐藤らは、マスタ ーから項目選択の過程は、知的支援として学習効果にもつながるシステムであるとしてい る14)。本システムは、看護、介護職の実践能力の向上や評価をサポートするための看護過 程支援システムの一部として作成されている。そのため利用者の実践能力を向上させるた めにも、リストから観察項目を選択する過程は重要であり、システムの利便性の向上は急 務であると考える。
標準患者観察マスターは、電子カルテ等で利用することを目的に、患者の観察指示を示 すための用語として開発がすすめられたリストである。標準化されたリストは、そのリス トを活用する目的に沿って開発されることから、実際に活用した結果を踏まえた改修や、
今後の医療技術の進歩に合わせて必要となる項目の追加などは、今後も引き続き必要にな ると考える。
さらに、標準化されたリストを利用しやすいシステムとするためには、システム利用者 が必要とする項目を選択していく思考過程を理解し、それに合わせた情報を提供すること や、思考過程を一方向ではなく元に戻る機能などを作成することで、膨大なリストからす ばやく必要とする項目の選択を支援することが可能になると考える。本システムにおいて も、観察指示をオーダーする際のシステム利用者の思考過程と利用方法、選択の際に必要 とされる情報についてさらに研究を進め、利便性の高いシステムとして機能を充実させる 必要がある。
14
第 4 章 食 事 リ ス ト に 掲 載 さ れ た 食 事 画 像 を も と に し た 食 事 に 関 す る 情 報 の 抽 出
本章では、食事に関する情報の入力操作の軽減、入力作業の簡略化を目指して、食事リス トとして掲載された食事画像から色に着目し、食事に関する情報の抽出を試みた。
4.1 目的
これまでに提供されている食生活を支援するシステムにおける食事に関する情報の入 力は、摂取したメニューの名称を直接入力する方法や、あらかじめ登録されている食事メ ニューを選択し入力する方法、食事の写真を撮影し、その食事画像をメールや専用サイト に送信する方法がある。摂取したメニューの名称を直接入力する方法や、食事画像を送付 する方法は、操作者側は自由に入力や撮影ができるが、受取った側は、その情報や画像を 栄養士や保健師などが確認する時間が必要となる。また、あらかじめ登録されている食事 メニューを選択する方法においても、登録されたさまざまなメニューから、自身が摂取し たメニューを探すための入力操作が必要となり、登録数が多くなるに比例して、入力作業 への負担が増すこととなる。
そこで本章では、食事に関する情報の入力操作の軽減、入力作業の簡略化を最終目的と して、食事に関する情報の入力を支援するために、食事画像からその食事に関連する情報 を抽出することを目的とする。本研究で利用する食事画像は、システムを活用する対象者 が身近に携帯し、撮影する必要があることから、デジタルカメラや携帯電話に搭載されて いるデジタルカメラ機能で撮影した食事画像を用いることとした。
4.2 対象とした食事画像と色解析方法
この研究は家庭での使用を想定しているため、使用する食事画像は、香川氏の「家庭の おかずのカロリーガイドブック」2)にて掲載されている552種類の食事画像を対象とする こととした。そのため、この書籍に掲載されていない食事に関しては、本研究の対象に含 まれていない。
色の解析については、ビバコンピュータ株式会社のFeelimage Analyzer Version 1.1.03 を利用し、食事画像に含まれている色の解析を行った。
4.3 倫理的配慮
この研究に際して、「家庭のおかずのカロリーガイドブック」2)に掲載されているメニュ ーの名称および、食事画像の使用については、出版社である女子栄養大学出版部より承諾 を得た。
15
4.4 主素材、調理法の分類と主要色( 16 色)における解析 4.4.1 方法
「家庭のおかずのカロリーガイドブック」に掲載されている料理を主素材、調理法をも とに分類する。次いで、掲載されている料理から、家庭のおかず以外の料理を外した531 種類の食事画像を対象に色の解析を行う。解析は、基本色(赤、黄赤、肌色、茶色、黄色、
黄緑、緑、青緑、青、紫、赤紫、白、灰色、黒、ピンク)16色にて行い、結果は色点数に て出力される。色点数は、画像に含まれている色名および主要色を抽出し、その支配度か ら点数をつけたものである。その結果を主素材毎、調理法毎に整理し、主食材、色点数の 特徴を抽出する。
4.4.2 主素材、調理法の分類項目の作成と分類
主素材の分類については、「家庭のおかずのカロリーガイドブック」に掲載されている 料理は、主素材別に4つの食品群(1群:卵、牛乳、乳製品、2群:魚介、魚加工品、肉、
肉加工品、豆、豆製品、3 群:野菜、芋、芋加工品、きのこ、海草、4 群:穀物)に分け られており、一人分の食事画像とその栄養価(エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、
塩分、糖分、コレステロール、食物繊維、ビタミンE)、四群点数法※1による点数、レシ ピが掲載されている。素材は154種類に分類されており、4つの食品群を食事画像の解析 結果の整理に活用することとした。
調理法の分類については、まず調理法の分類項目の作成を行った。分類項目は、「家庭 のおかずカロリーガイドブック」に記載されている各料理における調理法を参考に作成し た。この際、調理法も食事に関する情報を把握する項目の一つとして、検索する項目の一 つとなることを想定し、出来る限り調理法の項目数を少なくすることを考慮した。そのた め、「揚げる」、「生」、「焼く」、「煮る」、「蒸す」の5つの調理法を項目として作成した。
各料理における調理法の分類は、その料理において主素材をどのように調理しているか を基準とした。同じ料理に 2 種類の調理法を活用している場合には、「揚げる」、「焼く」
などの油を多く使用する調理法を優先し、各料理において調理法を1つ選択した。ただし、
料理名に「サラダ」と付く場合は、サラダから「生」の調理法が想定されるとの意見を基 に、検討した結果、調理法を「生」に統一することとした。
解析の対象とする料理の抽出については、「家庭のおかずのカロリーガイドブック」に 掲載されている「おかず」を対象とするため、下記の4項目に値する食事画像は解析の対 象から外した。
• 調理前の素材が撮影されている料理
• デザート、お菓子類
※1食品を栄養学的な特徴別に4つのグループ(群)に分けた分類で、食品のエネルギー量を 80kcalで1点とする単位で表したもの
16
• 飲み物類
• 「おかず」ではないと考えられた料理(例:ディップ、カナッペなど)
その結果、531種類の料理を抽出し、解析の対象とすることとした。
4.4.3 主要色( 16 色)における解析結果と考察
抽出された531 枚の食事画像を色解析ソフトにて解析を行った。解析された色点数を、
主素材別4群と調理法毎に分類し、最大値、最小値、平均値を求めた(表3、4、5、6、7)。
表3 主素材別(1群、2群)における色点数
食品群 1群 2群
基本色 平均値 最大値 最小値 平均値 最大値 最小値 赤 0.070507 0.379628 0.000000 0.136334 0.599137 0.000000 黄赤 0.018136 0.088696 0.000000 0.016752 0.145142 0.000000 肌色 0.130925 0.430215 0.000000 0.085570 0.658919 0.000000 茶色 0.016114 0.102479 0.000000 0.029927 0.167120 0.000000 黄色 0.001289 0.012808 0.000000 0.000891 0.029317 0.000000 黄緑 0.002184 0.034970 0.000000 0.001324 0.056100 0.000000 緑 0.011603 0.096537 0.000000 0.005284 0.071838 0.000000 青緑 0.000001 0.000013 0.000000 0.000037 0.001523 0.000000 青 0.000020 0.000451 0.000000 0.000691 0.054192 0.000000 青紫 0.000006 0.000210 0.000000 0.000046 0.005000 0.000000 紫 0.000005 0.000181 0.000000 0.000096 0.010715 0.000000 赤紫 0.000028 0.000980 0.000000 0.000071 0.005493 0.000000 白 0.079695 0.429519 0.000000 0.033850 0.328618 0.000000 灰色 0.012810 0.113246 0.000000 0.028304 0.258085 0.000000 黒 0.003435 0.028621 0.000000 0.004847 0.076288 0.000000 ピンク 0.004198 0.042094 0.000000 0.013712 0.398978 0.000000
(1群:卵、牛乳、乳製品、2群:魚介、魚加工品、肉、肉加工品、豆、豆製品)
17
表 4 主素材別(3群、4群)における色点数
食品群 3群 4群
基本色 平均値 最大値 最小値 平均値 最大値 最小値 赤 0.081023 0.687018 0.000000 0.106869 0.411855 0.000000 黄赤 0.015722 0.226014 0.000000 0.023504 0.118808 0.000000 肌色 0.110681 0.705341 0.000000 0.172175 0.872337 0.000000 茶色 0.029297 0.212777 0.000000 0.038531 0.168633 0.000000 黄色 0.003245 0.068283 0.000000 0.000594 0.004768 0.000000 黄緑 0.005132 0.140742 0.000000 0.000570 0.004884 0.000000 緑 0.015916 0.129349 0.000000 0.002463 0.014088 0.000000 青緑 0.000115 0.007350 0.000000 0.000015 0.000259 0.000000 青 0.000457 0.037699 0.000000 0.000242 0.006082 0.000000 青紫 0.000050 0.007406 0.000000 0.000001 0.000017 0.000000 紫 0.000061 0.006614 0.000000 0.000001 0.000022 0.000000 赤紫 0.000037 0.004698 0.000000 0.000001 0.000024 0.000000 白 0.019993 0.469526 0.000000 0.046441 0.619825 0.000000 灰色 0.016732 0.238935 0.000000 0.009658 0.108716 0.000000 黒 0.015407 0.279895 0.000000 0.009618 0.344069 0.000000 ピンク 0.006193 0.175905 0.000000 0.010869 0.126712 0.000000
(3群:野菜、芋、芋加工品、きのこ、海草、4群:穀物)
18
表 5 調理法(揚げ、生)における色点数
調理法 揚げる 生
基本色 平均値 最大値 最小値 平均値 最大値 最小値 赤 0.199105 0.520505 0.000013 0.101196 0.687018 0.000000 黄赤 0.039667 0.145142 0.000000 0.008188 0.127393 0.000000 肌色 0.126123 0.467755 0.000000 0.075011 0.612067 0.000000 茶色 0.037983 0.212777 0.000000 0.016347 0.167120 0.000000 黄色 0.000213 0.003314 0.000000 0.002320 0.048721 0.000000 黄緑 0.000132 0.002775 0.000000 0.005088 0.140742 0.000000 緑 0.001496 0.026807 0.000000 0.013576 0.096537 0.000000 青緑 0.000013 0.000331 0.000000 0.000031 0.001523 0.000000 青 0.000266 0.004828 0.000000 0.001118 0.037699 0.000000 青紫 0.000153 0.007406 0.000000 0.000009 0.000447 0.000000 紫 0.000142 0.006614 0.000000 0.000011 0.000399 0.000000 赤紫 0.000099 0.004698 0.000000 0.000037 0.001132 0.000000 白 0.021685 0.163335 0.000000 0.059912 0.469526 0.000000 灰色 0.022532 0.258085 0.000000 0.021198 0.150305 0.000000 黒 0.004834 0.135714 0.000000 0.009554 0.279895 0.000000 ピンク 0.005379 0.039021 0.000000 0.013098 0.152529 0.000000
19
表 6 調理法(煮る、蒸す)における色点数
調理法 煮る 蒸す
基本色 平均値 最大値 最小値 平均値 最大値 最小値 赤 0.102864 0.534935 0.000000 0.116091 0.687018 0.000000 黄赤 0.016251 0.226014 0.000000 0.016432 0.226014 0.000000 肌色 0.113884 0.705341 0.000000 0.097606 0.705341 0.000000 茶色 0.028926 0.168633 0.000000 0.027921 0.202726 0.000000 黄色 0.002193 0.068283 0.000000 0.002097 0.068283 0.000000 黄緑 0.003196 0.121637 0.000000 0.003354 0.140742 0.000000 緑 0.010242 0.108954 0.000000 0.011011 0.129349 0.000000 青緑 0.000076 0.004027 0.000000 0.000053 0.004027 0.000000 青 0.000281 0.018044 0.000000 0.000445 0.054192 0.000000 青紫 0.000008 0.000984 0.000000 0.000050 0.007406 0.000000 紫 0.000024 0.002663 0.000000 0.000085 0.010715 0.000000 赤紫 0.000014 0.001540 0.000000 0.000057 0.005493 0.000000 白 0.025081 0.619825 0.000000 0.029940 0.369140 0.000000 灰色 0.016137 0.238935 0.000000 0.021422 0.258085 0.000000 黒 0.011097 0.344069 0.000000 0.008497 0.136867 0.000000 ピンク 0.008828 0.175905 0.000000 0.011039 0.398978 0.000000
20
表7 調理法(焼き)における色点数
調理法 焼き
基本色 平均値 最大値 最小値 赤 0.098859 0.564429 0.000000 黄赤 0.016469 0.154706 0.000000 肌色 0.108447 0.872337 0.000000 茶色 0.034536 0.202726 0.000000 黄色 0.001320 0.049768 0.000000 黄緑 0.001736 0.056100 0.000000 緑 0.007926 0.129349 0.000000 青緑 0.000068 0.007350 0.000000 青 0.000634 0.054192 0.000000 青紫 0.000062 0.005000 0.000000 紫 0.000128 0.010715 0.000000 赤紫 0.000084 0.005493 0.000000 白 0.033891 0.356258 0.000000 灰色 0.025695 0.223939 0.000000 黒 0.007747 0.115633 0.000000 ピンク 0.011505 0.398978 0.000000
これらの結果から、基本色16色においては、最大値や平均値に違いはあるものの、各主 素材、調理法においては大きな違いを認めることができなかった。また、解析された一つ 一つの料理における基本色16色の色点数の結果を確認したところ、例えば、「鮭の照り焼 き」では、青色の色点数が平均値以上を示している。主素材としては鮭のみであり、また、
切り身であることから、この青色の色点数は器の色の特徴を表していると考えられた。今 回の解析対象とした食事画像には、このような器の色の特徴が大きく現れていると推測さ れる料理が他にも数多くあったことから、器の色の特徴を最小限にした状態での色解析が 必要になると考えられた(図2、表8)。
図 2 食事画像「鮭の照り焼き」
21
表8「鮭の照り焼き」と主素材群(2群)における色点数の比較 食品群 鮭の照り
焼き
2群
基本色 平均値 最大値 最小値 赤 0.078703 0.136334 0.599137 0.000000 黄赤 0.002193 0.016752 0.145142 0.000000 肌色 0.247175 0.085570 0.658919 0.000000 茶色 0.002315 0.029927 0.167120 0.000000 黄色 0.000001 0.000891 0.029317 0.000000 黄緑 0.000008 0.001324 0.056100 0.000000 緑 0.010478 0.005284 0.071838 0.000000 青緑 0.000278 0.000037 0.001523 0.000000 青 0.054192 0.000691 0.054192 0.000000 青紫 0.000090 0.000046 0.005000 0.000000 紫 0.000307 0.000096 0.010715 0.000000 赤紫 0.000069 0.000071 0.005493 0.000000 白 0.012636 0.033850 0.328618 0.000000 灰色 0.032014 0.028304 0.258085 0.000000 黒 0.005044 0.004847 0.076288 0.000000 ピンク 0.013090 0.013712 0.398978 0.000000
4.5 切り出された主素材を中心とした食事画像を用いた主要色( 8 色)におけ る解析
4.5.1 方法
これまでの研究の考察から、食事画像に写っている器の影響を最小限にするため、食事
画像を100×100dotにて、主素材を中心に切り出した。また、切り出した画像に器が写っ
ている場合には、主素材を中心とし、画像の大きさを統一せず切り出した画像の2種類を 作成した。その後、切り出した食事画像を確認し、各料理において色解析に使用する食事 画像を1つ選択した。その際、主素材が食事画像に表れていない料理については、解析の 対象から外した。
次いで、各料理に使用されている最も多い食材を基に、主食材による料理の分類項目の 作成と、分類をおこなった。
各料理にて選択された1つの食事画像を色解析ソフトにて解析を行った。解析結果は、
食事画像に含まれている基本8色(黒系、青系、緑系、水色系、赤茶系、紫系、からし系、
ねずみ系)の色の割合で出力され、その結果を主食材および調理法を用いて基本8色毎の
22 特徴を整理した。
4.5.2 食事画像の切り出し及び、色解析の対象とする食事画像の選定
食事画像に写っている器の影響を最小限にするため、食事画像を100×100dotにて、主 素材を中心に切り出した(図3)。切り出した後の画像を確認し、器の映像が含まれている 場合には、画像の大きさを統一せずに、主素材を切り出すこととした(図4、5)。
食事画像の切り出しの際、どんぶりなどの料理では、主菜に隠れた穀物類が抽出できな い。そのため、穀物類が主食材となっている単品料理および、主食材の分類の際に乾物な ど他の食材との量の比較ができないと考えられた料理は、食事画像の解析の対象から外し た。そのため、マカロニ、春雨類は主素材の分類を「その他」へ変更し、対象とした料理 を457料理とした。
図3 切り出し後の「スクランブルエッグ」
図4 切り出し後の「鮭の照り焼き」
図5 主素材のみ切り出し後の「鮭の照り焼き」
4.5.3 主食材の項目作成と分類
「家庭のおかずのカロリーガイドブック」にて料理を分類している「主素材」は、その 料理に使用されている最も多い食材でない場合がある。例えば、「ハムエッグ」などは、「家 庭のおかずのカロリーガイドブック」には、「肉加工類」として分類されているが、その料
23 理に最も多く使用されている食材は「卵」である。
そのため、その料理に使用されている食材の中で、最も多く使用されている食材によっ て料理を分類することとし、その分類項目を「主食材」とした。1 つの料理に複数の食材 が同じ量で使用されている場合は、「家庭のおかずのカロリーガイドブック」にある「素材 別家庭料理」分類に使用されている主素材を優先し、主食材として分類した。主食材の項 目数は、出来る限り少なくなるよう考慮した(表9)。
表 9 主食材の分類
分類項目 料理に使用されている主素材
肉類
牛もも肉、牛肩肉、牛ヒレ肉、牛バラ肉、豚もも肉、豚ロース肉、豚ヒレ 肉、豚バラ肉、鶏もも肉、鶏胸肉、手羽先、鶏骨つき肉、鶏ささ身、羊肉、
牛タン、スペアリブ、牛レバー、豚レバー、鶏レバー、砂肝、牛ひき肉、
豚ひき肉、牛豚ひき肉、鶏ひき肉、ロースハム、ベーコン、
ウインナソーセージ、フランクフルト、ラム
魚類
アジ、イワシ、ウナギ、サワラ、サケ、サバ、サンマ、タイ、カレイ、
カツオ、カジキ、タラ、ブリ、マグロ、エビ、イカ、カニ、タコ、アサリ、
カキ、ホタテガイ、ホタテ、干物、ツナ、かまぼこ、焼きちくわ、
はんぺん、さつま揚げ
野菜
ほうれん草、にんじん、春菊、さやえんどう、かぼちゃ、にら、オクラ、
ブロッコリー、青梗菜、グリーンアスパラガス、トマト、小松菜、
ピーマン、キャベツ、もやし、大根、玉ねぎ、なす、きゅうり、レタス、
とうもろこし、セロリ、ねぎ、白菜、かぶ、ごぼう、はす、カリフラワー、
竹の子、じゃが芋、さつま芋、里芋、長芋、板こんにゃく、しらたき、
えのきたけ、しいたけ、エリンギ、ぶなしめじ、なめこ、まいたけ、
マッシュルーム、松たけ、わかめ、ひじき、もずく、こんぶ
その他
卵、うずらの卵、ピータン、牛乳、チーズ類、ゆで大豆、枝豆、納豆、
湯葉、もめん豆腐、絹ごし豆腐、焼き豆腐、厚揚げ、油揚げ、がんもどき、
凍り豆腐、うの花、白いんげん豆、金時豆、マカロニ、春雨
穀物類 ごはん、精米、玄米、もち米、もち、そば、うどん、そうめん、中華めん、
スパゲッティ、小麦粉、ビーフン、パン
4.5.4 主要色( 8 色)における解析結果と考察
主食材の分類を行い、切り出した画像を対象として食事画像の色解析を行った。解析の 結果は、主要色(8色)にて、結果は各色の構成割合で出力する(表10)。
24
表 10 主要色(8色)の名称
r g b 名称
064 064 064 黒系
064 064 192 青系
064 192 064 緑系
064 192 192 水色系
192 064 192 紫系
192 064 064 赤茶系
192 192 064 からし系
192 192 192 ねずみ系
主要色(8色)のうち、「黒系」「赤茶系」「からし系」「ねずみ系」の4色が、各色単色で 50%以上を占める料理が存在したことから、この4色を中心に解析結果を確認した。また、
その他の「青系」「緑系」「水色系」「紫系」については、各色において含まれる色割合が高 い料理のうち、上位 10~20 種類において含まれる値を基準値として設定し、解析結果の 内容を整理した。
食事画像において、「黒系」「赤茶系」「からし系」「ねずみ系」が 50%以上を占める料理 は277料理あり、全食事画像の60.6%であった(表11)。
表 11 食事画像における各色の割合と料理数 食事画像に占め
る色の割合
色系
黒系 赤茶系 からし系 ねずみ系
90%以上 4 5 3 18
80~90%未満 8 13 1 7
70~80%未満 15 10 2 12
60~70%未満 27 31 10 9
50~60%未満 38 22 12 30
合計料理数 92 81 28 76
1)主要色における料理の内容 a.黒系
黒系が50%以上を占める料理92種類のうち、野菜類の料理は、黒系と合わせて緑系の値 が高く、肉類、魚類の料理では、赤茶系の値が高い値であった(表 12)。また、魚類の場 合は、青系の値を高く示す料理もあり、この場合は皮付き魚の料理が多く認められた(表 13)。
25
表12 黒系80%以上の料理と主要4色の割合(%)
料理名 主食材 黒系 赤茶系 からし系 ねずみ系 なすの素揚げ 野菜類 92.25 0.04 0.00 4.74 牛ひき肉のハンバーグ 肉類 91.67 8.17 0.00 0.17 もずくの酢の物 野菜類 91.51 0.04 0.00 2.65 にらのお浸し 野菜類 90.32 4.39 0.27 0.09 なすの煮物 野菜類 89.06 1.32 0.46 6.48 ほうれん草のにんにく
炒め 野菜類 83.69 0.00 0.00 2.10
カレイの煮付け 魚類 83.54 3.62 2.43 7.14 牛レバーのカレーソテ
ー 肉類 83.44 15.31 0.85 0.40
わかめの炒め物 野菜類 82.96 0.00 0.03 2.57 春菊のお浸し 野菜類 81.52 0.00 0.08 1.41 春菊のごま和え 野菜類 81.14 0.42 1.59 6.20 あいびき肉のハンバー
グ 肉類 80.97 12.73 0.00 2.85
表 13 食事画像における黒系の割合と料理数 食事画像に占め
る色の割合(%) 料理数 主な料理
70~80%未満 15 さんまのみりん干し、ラムチョップ、
ほうれん草のお浸し
60~70%未満 27
さんまの塩焼き、カレイのから揚げ、
ほうれん草とベーコンのバター炒め、
しいたけの網焼き
50~60%未満 38 アスパラのソテー、牛もも肉のソテー
b.赤茶系
赤茶系が50%以上を占める料理81種類のうち、肉類の料理数が42種類、魚類の料理 数 23 種類であった。野菜類の料理では、にんじん、トマトを活用した料理が多く、赤茶 系の占める割合が高いことから、赤茶系以外の色では肉、魚類料理との違いが分かり難い ことが分かった(表14、15)。