310‑‑ 弘 前 医 学 19,310‑322,1967
抗 てんかん剤の脳組織代謝に及ぼす影響
一 呼 吸 と解糖 について ‑
及 川 光 平
OIKAWA̲KOHEI
弘 前 大 学 医 学 部 神 経 精 神 医 学 教 室 (主任 佐 藤時治 郎 教授) (指導 和 田豊治 前 教授) (28.Ⅶ.1966受 付)
緒 言
1912年 に 合 成 さ れ た5) Phenobarbitalが Hauptmanに よって卓越 して抗痩撃剤 で あ る ことが認 め られて以来,抗 てんかん剤 の開発 は著 し く発 展 し,今 日では数多 くの抗 てんか ん剤 が経験 的 に 自由に駆使 で き る よ うに な り,事実 ,てんか ん発作 のお よそ80%が完全 抑制 ない し軽 減す る とい う段 階に までいた っ
16) てい る.
しか しなが ら抗 てんか ん剤作用 の実態 はほ とん ど不 明のままで ある.抗 てんかん剤お よ びそれに関連 した麻酔剤等の作用機序は,19‑9) 32年 に Quastelお よびW heatleyらのinvitro の実験 に よ り呼吸抑制 に よる もので あ ること が観察 され, その後,ほ とん どの中枢神経抑 10) 制剤 について も同様であ る ことがわか った.
そ して,かか る抑制 の結果お こるブ ドウ糖酸 化の障害 と,つ いで起 こる高 エネル ギー燐酸
(ATP)生 成の阻害が麻酔剤 の作用機序 と考 3)
え られ るよ うにな った. しか し, この よ うな 結果 を もた らす必要 な試験 管内濃度は,生 体 内で麻酔 されてい る脳 でみ られ るよ うな濃度 と比較 しては るかに高過 ぎる とい うこ とがや
4) 7)
が てわか った. とこ ろ がMcIIwainは,電気 刺激 に よ り高 め られ た呼 吸は麻酔剤 の効 果 を 受 けやすい こ とを示 し,Quastelの呼 吸抑制 説 を新 しい見地 か ら再評価 させ るよ うにな っ た .
12) ところでToman及 びGoodmanの見解 の よ うに,一般 に抗 てんかん剤の防禦 的 あるい は抑 制的作用 は,脳神経細胞興奮に対す る聞 値 の上昇 あるいは反応 の低下 で表現 され るよ13) うに思 われ る. Towerも指摘 してい る よ う に,抗 てんか ん剤 の効 力が正常 ノイ ロ ンの活 動 を邪魔せずに, あるいは他 の麻酔剤 の特徴 で ある全身抑制 を必要 とせず,機能元進お よ び発作 に対 して比較 的特 異 的 に 作 用 す るの で, この よ うな点では抗 てんかん剤は奇妙 で ある. これが全 く作用様式上 の量 的な差 異で あるのか あるいは真の質的 な差異に よるのか とい う こ とは 今 後 の解 明に得 たねほな らな
I.,ヽ.
この論文 の 目的は,複合酵素 系であ る脳各 部 位に対す る各種抗 てんかん剤 の反応 の差異 を,組織呼 吸お よび解糖 の面か ら追及 し,玩 てんかん剤 の作用機序 の一端 を うかがお うと す る ものである.
実 験 方 法
実験 は次 の4種類 について行 な った.
1) ラ ッテ大脳皮質 に対す る添加実験 . 2) モルモ ッ 川 西部位別 の添加実験 . 3) 電撃 モルモ ッ 十脳 に対す る添加実験 . 4) 慢性 投与 モルモ ッ ト脳 に対す る実験 . 実験動物は, 1) の実験 には体重200‑ 250 gの ウィスク 一系 ラ ッテ (樵 ) を, 2)以下
の実験 には体重350‑500gのノ、‑ トレイ系成
抗 てんかん剤 の脳組織代謝 に及ぼす 影響
熟 モル モ ッ ト (雄 ) を使用 し,安静状 態 に於 いて鋲 に よ り瞬時 断頭 し, 直 ち に 全 脳 を 摘 也 ,数 分問 水冷Krebs‑RingerPhosphate液 (以下KRP液 と略記 ) につ けた後 ,大 脳 皮質
・大 脳 白質 ・間脳 ・/」\脳 皮質 の切 片 を速やか に作製 した.た ゞし, ラ ッテ脳 の場合 は,大 脳皮質 切片 のみ を用 いた .
切 片 の厚 さは0.3‑0.4/〝∽ とし,安 全 カ ミ ソ リの刃 を用い, フ リーノ、ン ドで作製 した . 大 脳及 び 小脳 は軟 脳膜 をその血 管 とともに毛 筆 に よって除去 し,大 脳 白質 は第1層 を,他 の部位 は第2層まで を用 いた.
作製 した切 片 の適 当量 (湿重 量50mg程 度) を加 糖 (終末 濃度10mM)KRP液 (実 験 の 都度 作製 ) 3mlに浮遊 させ, ワール ブル グ 検圧 計 (直接 法) に よ り切片 の酸素 消費量 を 測定 した.た だ し, ラ ッテ大 脳 皮質 切 片につ い てはCa除去 の条件 の浮遊液 を使用 した . す なわ ち刺激 系の条件 下 で行 な った.反応容 器 の 内容 は表 1の如 くで あ る.気相 は純酸素 を もって置換 し, 恒 温槽 の温 度は 37.5oC, 予備琵童 は15分 間 とした .断頭 よ り予備振痘 終 了後 ,組 織切 片 の酸素 消費量 を90分 間測定 した.組織切片 の重量 は,正確 に110oC,120 分 間 ,恒 温乾 燥器 中で乾燥 させ ,乾燥重量 を 秤 り,湿重 量対 乾燥重 量 の比 を100対18とし て湿重量 を算 出 した .酸 素 消費量 は90分 ・湿 重 量 1g当た りの一tとM数 に換算 し,一LCM/g/90 ml'/1.として表 わした.
表 1 反 応
ー 311
呼 吸抑 制率 は予備 振塗 終 了後30分 冒か らの 60分 間の酸素 消費量 の減 少の度合 を%に表現
した もので あ る.
乳酸生 成量 は,振 畳 終 了後 ,恒 温槽 よ り容 器 を と り出 し直 ちに氷冷 し,それ ぞれ の容器 内 切片浮遊液 を検体 として Barkar‑Summer‑ son氏 法 に よ り比色 定量 した .切 片 を容 器 内 浮遊液 中に入 れ ,氷 冷 してお けば,予備 振 塗 直前 におい て も浮遊液 中に乳酸発生 の ない こ とを あ らか じめ確か めて い るので,振 痘終 了 直後 のそれ ぞれ の容 器 内切 片浮遊液 の乳酸量 を もって,す なわ ち予備 振達15分 と酸 素 消費 量測 定時 間 を含 め,計105分 間 の値 を測定 し , 湿 重量 1g当 た りの乳酸生 成 量 をFLM数 に換 算 し, uM/,'g/105mz‑n.として表 わ した.実施 方 法 は反応 液1ml(切 片 を含 まず) を10%三 塩 化酢 酸 4mlに加 えて 除 蛋 白 し, 除 蛋 白液
1/mlを乳酸定 量用 の試料 とした.
実験 は ,1) ラ ッテ大脳 皮質 に対す るAlevi‑ atin,Phenobarbital,Resochin,Diamoxの 影 響 を観察 す るた めに,各薬剤 の終末 濃 度が 夫 々 10mM,1mM, 0.1mMとな る よ うに し た .予備振 壷 終 了後30分 間 ,加 糖KRP液 を 浮遊液 として酸 素 消費量 を測定 し,30分 の読 み終 了後直 ちに側 室 よ り抗 て んか ん剤 を添加 して,以後60分 間観察 した.Aleviatinは水 に不溶性 のた め,NaOH水 に溶 かしpH 11.0 とした .Diamoxも水 に不溶性 で,Diamox l当量 あた り1.5当量 のNaOHを含 む水 に溶 容 器 内 容
添 加 実 験 慢性投与実験 終 末 濃 度
KRP
2,700mg/dllブ ドウ糖 副 窒 20% KOH
・L'PJJ窒 ≡ 10 m M 抗 てんかん剤 1m M抗 てんかん剤
2.5cc
(モ ル モ ッ ト脳 ) 2.5cl
」 ̲7エ アメこ野 卑 質 ) 0.2ll O.2cl 0.3cc 0.3ll 0.3cc
0.2rl 10nLM
0.2(r
l0 m M
lmM
O.1mM
312 ‑ Iと 川
表 2 ラッテ大脳皮質正常対照例 (7例平均)
時 間 30 分 60 分 90 分 乳 酸 生 成
酸素消費量 (う4.1(±5.9) 126.2 (±6,1) 187.5(±6.3) 53.0(士5.8)
表 3 抗 てんかん剤添加に よる ラ ッテ大脳皮質呼吸抑制 と乳酸生成
添加剤 乳酸生成
\
Aleviatin 呼 吸 抑 制 率 (7例平 均) 乳 酸 生 成 量 phenobarbital 呼 吸 抑 制 率 (7例平 均) 乳 酸 生 成 量 Res。chin 呼 吸 抑 制 率 (5例平 均)
8.8 (±0.9) 18.6(±1.4)券 42.5 (±5.0) 50.0(±4.9) 7.5(±0.7) 10.4 (±0.9) 35.5(±4.1) 43.1(±5.0) 6・2(士0・5) ! 7・8(士0・6) 乳 酸 生 成 量 42.0(±5.3) 50.1(±6.0) DiaTn。Ⅹ 呼 貿 抑 制 率
(5例平均) 乳 酸 生 成 量
5.6(±0.5) 8.2 (±0.7) 42.5(±5.4) 48.1(±5.9) 井他 の三者の薬剤 に対 して夫 々有意 (P<0.01)
×Aleviatin及びPhenobarbitalに対 して夫 々有意 (P<0.01) か し,pH 9.0とした. なお,pH 9.0ない し
pH ll.0のNaOH水 0.3mlを側室 に入れ , 同様 の添加 を行 な って酸 素消費量及 び乳酸生 成量 を測定 した ところ, これ の影響 を無視 し 得 ることを確認 した.
2) モルモ ッ 吊 函部位別切片 に対す るAle‑
viatin,Phenobarbital,Resochinの添加 実験 を行 ない,薬剤 の終末濃度 を夫 々 10mM, 1 mM,0.1mMとな る よ うに してその局所差 を 検討 した.
3)60てノOlt, 2‑ 3秒 間の耳孔通電 で,モ ルモ ッ 十に強直性 間代性 の痘撃 を起 こさせ , 1日1回10日間施行 し,最終電撃時 よ り3(時 間経 て断頭 した脳 各 部位切片 につ いて,Ale‑
viatin,Resochinを 2)と同様 の方法 で添加 して観察 した.
4) Aleviatin,Resochinの夫 々 1077‡g/短 を 1日 1回,30日間,モルモ ッ 十の預背部皮 下 に注射 し,最 終注射時 よ り30時 間 を経 て断 頭 した脳 の各部 位について観察 した.
56.6 (二6.0) 95.6(±6,1) 67.6(工6.2) 112.0(i7.2) 29.5(±3.0)×
114.3(±8.0) 27.5(±2.8)×
81.0(±6.9)
実 験 結 果
1) ラ ッテ大脳皮質切片 の組織呼 吸お よび 乳酸生成量 の正 常対 照例 は表2に示 した.
Aleviatin,Phenobarbital,Resochin,Diamox の影響 につ いては,呼 吸抑 制率 ・乳酸生成量 を 表 3に 示 した. 数値は5‑ 7例 の平均値 で,呼 吸抑制率 は%で,乳酸生成量は F!M/g/
105min.で表わ して ある.
薬剤添加後60分間の呼 吸抑制率 は,終末濃 度が 0.1mMの場合 はいずれ も109,6以 下に と ゞま i),各薬剤 間の差異は著 明でない.終末 濃度が 1mM ではAleviatin添加 の呼吸抑制 率 は18.6%で他剤添加 のそれ に比 し有意 の高 値 (P<0.01)を示 した.終末濃 度が 10T7iM の時 はAleviatin及 びPhenobarbitalでは夫 々 56.6%,67.6,% とい う高い呼 吸抑制率 を示 し,Resochin,Diamoxのそれ は夫 々29・50/0, 27.5% の呼 吸抑 制率 に と ゞま り, いずれ も Aleviatin及びPhenobarbitalの呼吸抑制率 に 比 し夫 々有意 の低値 (P<0.01)を示 した .
乳酸生成量 は,終末濃度が0.1mM及び1
抗 てんかん剤 の脳組織代謝 に及 ぼす影響 図1 ラ ッテ大 脳皮質代謝
終末濃度酸素乳酸
謙加藁剤 ・濃 0.1は3mM品 t品 tm侵 温M 消費量壷妄tOmM生成量乳酸
AleVTatin l ttlIl 巾 ー川 侶
mMの場合は,いずれも対照例の53.OilM/g/105min.(以下単位を略す)よりも低値を示した.ところが終末濃度が10mMという高濃度に於いては,対照値よりも著しく高く,Aleviatin,Phenobarbital,Resochin,Diamox添加のそれはそれぞれ95.6,112.0,114.3,81.0という結果を得た. 以上の結果を総括して表わしたのか図1である.即ち終末濃度0.1mMでは各薬剤と 表4モルモッ
呼吸と 乳酸生成
率 分 量 分 分利 成 抑 30生 0 0 9吸醗0 呼
乳 Eid
) )) 9) 6 2 0 0 2 5 6 6 0 5
±
±
±
± (±
( (( 1( 91 n J1 4 7 2 02 3 6 0 5
1
‑313
も呼吸抑制は明瞭ではなく,乳酸生成は対照値よりも低値を示す傾向を認める.1〝‡Mでは,呼吸抑制はAleviatinに於いてのみ明瞭で他の薬剤ではたかだか10%内外であり,乳酸生成は対照値よりも低値を示す傾向を認める.10mMの高濃度に於いては,呼吸抑制はAleviatin,Phenobarbitalで著しく,Reso‑chin,Diamoxでは中等度である.乳酸生成は各薬剤ともに著明な増量を示している. 2)モルモット脳局所別切片の組織呼吸および乳酸生成量の正常対照例は表4に示した.Aleviatin添加実験の結果は,表5の如くである.終末濃度が0.1mMでは,呼吸抑制率は大脳皮質が10%を越えるが,その他は10,06以下である.終末濃度が1mMでは,大脳皮質及び小脳皮質に於いて呼吸抑制率が高く,それぞれ41.3%,30.7%であり,いずれも大脳白質と間脳に対してその差は有意(P<0.01)であった.終末濃度が10mMになると呼吸抑制率は著しく大で,しかも各部位別間に著明な差を認めない.卜脳正常対照例
大 脳 白 質 間 脳 小 脳 皮 質
7
) ) ) ) 8) 6 01 5 4 4 5 n U 5
±
±
±± (± ( (( 9(
7 5 5 5 75 30 17 3 5 3
24.4(±4.9)47.9(±5.2)72.6(土5.6) 1.0(±0.2)43.8(±5.8) / 31.6(±5.9)63.0(土6.6)94.4(±6.5) 0.4(±0.15)49.7(±6.1)
表 5 正 常 モノしモ ッ ト脳の部 位別呼 RB抑制率 と乳酸生 成量 (Aleviatin添加)
、旦 位 I l ‑:;: ,:
大 脳 皮 質 5
:二̲ ̲:二 .:∴ ̲‑ 二 ̲̲こ 14.2(±1.2) 18.8(±1.5) 30.7(±2.8)汰
30.2(±6.0) 39.0(±6.1) 40.2(±6.3) 58.4(±5.5) 53.4(±5.4) 53.8(±5.5) 117.0(土18.0) 106.9(±15.1) 108.7(±16.2) 0.1 呼吸抑 制率 15・7(±1・4)
〝‡M 乳酸生成量 49.8(±6.1) 1.0 呼 R}1抑 制率 41・3(±4・0)港
〝‡ゝl
乳酸生 成量 41.8(±7.2) 10.0 呼 吸抑 制率 芦 61・8(±5・8)
〝‡M
乳酸生 成量 l128.4(±21.0)
告大脳 白質 及び間脳 に対 して夫 々有意 (P<0.01)
314 ‑ Tヒ 川
表 6 正常 モルモ ッ ト脳の部位別呼吸抑制率 と乳酸生成量 (Phenobarbital添加) 弓手≡ = 二二 二二 面
終末 呼吸と
濃度 \ 乳酸生成 0.1
77才ヽI
1.0
771ゝ1
10.0
77gゝ′l
I,iiiiiSa!
終末 \、\、
大 脳 変 質 L 大 脳 白 質 間 脳 小 脳 支 質
呼吸抑制率 7.3 (±0.6) 乳酸生成量 48,0(±6.5) 呼吸抑制率 8.2 (±0.8) 乳酸生成量 43.2(±6.9) 呼吸抑制率 53.6(±5.0) 乳酸生 成量 105,7(±18.0)
4.5 (±0.4) 6.6 (±0.7) 8.」 (±0.8) 32.4 (±5.8) 38.O (±5.9) 44.8 (±6.3) 9.7(±1.0) 13.1(±1.日 9.1(±0.9) 30.0 (±5.9) 36.8(±6.7) 38.0 (二6.3) 50.5 (±4.9) 56.4(士5.7) 53.2(±5.5) 104.0 (±15.8) 110.1(±16.9) 100.9(±15.9)
表 7 正常モ′レモ ッ ト脳の部位別呼吸抑 制率 と乳酸生成量 (Resochin添 加)
‑‑ 1一旦 位
・/㌧し.̲∵与
呼吸 と
大 脳 支 質 護窟 \、■宕転 嫁 '‑敬 5 0.1 呼吸抑制率 4・6 (±0・5)
∫′′\1
乳酸生成量 38.8(±6.9) 1.0 呼吸抑制率 6・1(±0・6) 77ZゝrI
乳酸生 成量 40.8(±7.0) 1
10.0 ;呼吸抑制率 ; 11・4(±1・0)
JllM A
大 脳 白 質 間 脳 小 脳 皮 質
5 5 5
6.9(土0.7) 8.0(±0.8) 5.8 (±0.6) 30.2(±4.8) 37.6 (±5.1)1 34.4(±5.6)
32.1(±5.6) 40.1(±6.1) i 41.4(±6.6) 14・1(±1・2) 34・7 (±2・8). E 33・5(±1'・6)*
51.0 (±5.8) 59.9 (±5.9) l 67.9 (±7.8) 甘大脳皮質及び大脳白質に対 し夫 々有意 (P<0.01)
乳酸生 成 は 0.1mM,177LMの濃度で は減 少 の傾 向が うかが われ ,10/〝Mの高濃 度 にな る と著 し く増 量す る.
Phenobarbital添 加 実 験 の結果 は表6に示 した.終末 濃度 0.1mMの場合 は呼 吸抑 制率 は ,各 部位 とも10%以下 で あ る.終末 濃度が 1mMの場合 は10%前後 の呼 吸抑制率 を示す が ,間脳 のみが13.1%とい う比較 的 高値 を示 してい る. しか し,各 部位別 間 に有意 の差 を 認 めない .
乳酸 の生 成 は ,0.1mM, 1mMの終末濃 度 の場 合 は,対 照例 よ りも低値 を示 し, 10mM の高濃 度 にな る と著 しい増量 を示す .
Resochin添 加 実験 の結果 は, 表7に示 し た.終末 濃度0.1mMの ときは各 部位 とも1O
%以 下の呼 吸抑 制率 を示す. 1mMの終末 濃 度の場合 ,小 脳皮質 及 び間脳 の呼 吸抑 制率が
それ ぞれ14.9,0,0',ll.2,Oiuで,他部 位 に比 して それぞれ 有意 の高値 (P< 0.01) を示 してい る.終末 濃度が 10mM の 高濃 度 の場合 も呼 吸抑制率 は間脳 と小脳 皮質 で高値 を示 す .大 脳 皮質及 び大脳 白質 にお いて はそれぞれ11.4
9,0/, 14.1%の呼 吸抑 制率 しか示 さず ,Alevi‑ atin,Phenobarbitalの場合 と異 な る結果 を得
た .
乳酸 の生 成 は0.1mM,1mMの終末 濃度 で は対 照例 よ り低値 の傾 向 を示す .10mMの終 末濃 度 の場合 は,対 照例 よ りか な りの増量 を 示 すが ,Aleviatin,Phenobarbitalに於 け る 程若 し くは ない .
以上 のAleviatin,Phenobarbital,Resochin の添加 実験 に よる正 常 モルモ ッ 吊 歯部 位別 の 組織呼 吸抑制 率 を図2に, また乳酸生成 を図
3に示 した .
抗 てんかん剤 の脳組筒代謝 に及ぼす影響 図2 正常 モルモ ッ 目 顔呼 貿抑制率
(各濃度薬剤添 加)
■ ■■ Aleviatin
⊂二二コphenobarbital
[:=コ Resochin
大脳 皮質 大脳 白質 間 脳 小脳 皮質
大
脳皮質大脳白質0nU0 o 432 1 終末濃度mM
間脳
小 脳 皮 質
‑ 315
図3 正常 モル モ ッ ト脳乳蟹生成量 (各 濃 度薬剤添 加)
PM/g/105min, 〜t
M終末濃度1m終末濃度m
大脳 皮質 大脳白質
大脳皮質
間脳 小脳皮質
小脳皮質
大脳 皮 質 大脳白質 間 脳 小脳皮質
.帆
E‑軒トト叶‑L5M終末濃度o 脂間質白脂大質皮脂大
表 8 電 撃 モ ル モ ッ ト 脳 対 照 例
小脳 皮質
\ 部位 大 脳 皮 質 大 脳 白 質 乳酸生 成
30 分 60 分 90 分 呼 吸 抑 制 率 乳 酸 生 成 量
5 34.3 (±6.1) 68.3 (±6.1) 101.9 (±5.8) 1.5 (±0.1) 49.1(±5.58)
17.6 (±5.1) 34.9 (±5.2) 52.6 (±6.0) 0.9 (±0.1) 35.7(±5.1)
間 脳 55 小 脳 皮 質
23.4 (±4.8) 46.7(±5.0) 69.8 (±4.9) 0.8(±0.1) 43.2(±5.55)
29.6 (±6.6) 59.0 (±6.8) 88.3(±7.1) 0.8 (±0.1) 48.0(±6.0)
表 9 電撃 モル モ ッ 吊 図の部 位別呼 吸抑 制率 と乳酸生成量 (Aleviatin添 加)
:., ∴ 5‑ 5
脳 L 小 脳 安 芸
lJL\1
8.1(±0.8) 乳酸生成 量 46.1(±5.6) 32.0(±4.9) 40.7 (±5.6) 44.1(±5.9)
∴ t ̲ 二 二 ‑̲二 二̲I
呼 吸抑制率 58.3(±5.9) 55.0 (±5.8) L 59.7 (±6.0) 115.2(±19.0) 116.0(±21.5) 112.1(±16.1)
30.7 (±2.8)諒 43.3 (±6.1) 51.5(±5.5) 101.4 (±16.8)
☆ 大脳 白質及び間脳に対 してそれ ぞれ有 意 (P<0.01)
3) 電撃 モルモ ッ ト脳の対照例の組織呼吸 脳対照例 に比 し差異は認 め られ なか った.
お よび乳酸生成 は表8に示 した.酸素消費量 電撃脳 に於 け るAleviatin添加実験 の結果 お よび乳酸生成量は,非電撃正常モルモ ッ ト は表9に示 した. この 結 果 は 非 電 撃 正常対
316 ‑ 及 川
表10 電 撃 モ ル モ ッ 吊 由の 部 位 別呼 吸 抑 制率 と乳 酸 生 成 量 (Resochin添加) 大 脳 皮 質 大 脳 白 質 l
L 間 脳 ! 小 脳 皮 質 護 度 \ 五転 成\‑ぞ
0.1
5 I 5 1 5
i
呼R22抑制率
乳 酸 生 成 量
10.0 JJ!ll
8.8(±0.7) 5.8(±0.5) ■ 12.0(±1.1)キ 16.6(±1.4)首 40.8(±6.7)
弟大脳皮質及び大脳白質 に対 してそれぞれ有意 (P<0.01) 蓑 11 Aleviatin慢 性 投 与 脳
て ここ‑‑\部位
大脳
例数弓ー P
率量
分分分制成
抑生
306090較酸
呼乳
率 量
分 分 分 利 成 抑 生
30 1ぅ0 90吸 歓 呼 乳
5
訟
大脳自質問 5
) )㌔‑ ノ)
\ノt 2 9 01 5 4 4 516
±
±
±±
(± ( ((
49439( 5 9 3 9 3 1 2 4 ) 3 ) ) ) 6) 9 755 5 5 51
6 (((((±±±±± 5
2 7 3 2 09ワ】4 3 3 581 4
22.1(±5.3)43.3(±5.9)65.1(±5.8) 3.0(±0.5)35.2(±6.8)
表12 Resochin慢 性 投 与 脳
) ) ) )
\ノt 2 5 6 1
〇 6 4 6 6 2 5
±
±
±±
±
( ( / し( 5( 7 411 2 33 6 4 1 231つ り ) ) ) ) )
1 0 8 2 0 ' D 7 6 3 6
±
±
±±
(± ( ((
(
2 5 7 7 に0 U1 C U 2 2 2 5 仁U 2 4 照例に於けるAleviatin添加実験の結果と,ほゞ同様の傾向を示している.すなわち終末濃度1mMの場合は,呼吸抑制率は大脳皮質と小脳皮質で高値を示し,いずれも,大脳白質および間脳における呼吸抑制率に対し,有意(P<0.01)であった.乳酸生成は非電撃正常対照例に於ける場合と同様の傾向を示し た.
電撃脳におけるResochin添加実験の結果は表10に示した.この結果は非電撃正常対照例におけるResochin添加実験の結果と同様の傾向を示している.すなわち,1mMの終末濃度の場合,′」↓脳皮質と間脳の呼吸抑制率
39.8(+̲4.1)i
72.8 (±9.8)
26.9 (±5.8) 52.3(±5.8) 77.0 (±6.2) 7.0 (±0.9) 41.2 (±6.7)
脳 小 脳 皮 質
19.1(±5.1) 】 22.1(±6.1) 38.0(±5.3) 41.2 (±6.7) 54.3 (±6.6) ・ 56.5 (±6.4) 3g封三三:8日 32g・.i ((≡喜:89ヨ が他部位 に比 して有意 の高値 (P< 0.01)を 示 してい る.乳酸生成 は非電撃正常対照例に 於 け る場合 と同様 の傾 向を示 した.
4) 第4の実験 ,す なわ ちAleviatin,Reso‑
chin慢性投与脳 に於 け る酸素消費 及 び 乳 酸 生成は表11ノ‑表12に示 した. また,経時的 な グラフを図4に示 した.正 常対照例 に比 し, 酸素消費量は低下 してお り,乳酸 の生 成 も低 い傾 向 を示 してい る.
考 接
1) ラ ッテ大脳 皮質切片 に対す る抗 てんか ん剤 の影響 を概観す る と,Aleviatinな らび
抗 てんかん剤 の脳組織代謝 に及ぼす影響 図 4 抗 てんかん剤慢性投与 モルモ ッ 吊 菌と
正 常対照例 との比較
大脳皮質 琴〃M'g⊂一・‑I‑,小脳皮質
iT:三 雲‑ 翠/ F' / ノ
対 照例 //ノ′■
素100 消 費A 巨∃
o/̀
〃M'g/105min A leviatin
投与脳 /メ //メ
,//;,7:‑'‑‑‥ /▲
/▲/ 上 ノ// ▲/ /
30 60 90〔分J 30
/
60 90 分 ) Resochin
投 与 脳
lI //
● //
// ●1
ii‑ W .,控 ノ′',Ao/ 60 ,・0(令 )
(読)乳酸成生量 における 一一一一は対照値 を示す . にPhenobarbitalで は添加 薬 剤 の終 末 濃 度が 0.1mMと1mMの比較 的低 濃 度 に於 い て は , 呼 吸 はや ゝ抑 制 され る傾 向が うかが われ ,乳 酸生 成 量 も対 照値 よ りは 低い傾 向 に あ る. と ころが 10mM の高 濃 度 に な る と呼 吸 は著 明 に 抑 制 され る一 方 ,乳 酸 の生 成 が著 し く増 量 す る. この こ とは,invitroの代 謝 に於 い て , 充 分 な抑 制剤 が加 え られ る と,組織 の呼 吸 は 低下 す るが , この低 下 は ク レアチ ン燐 酸 の減 少 と乳酸 の増加 を伴 っ て い る こ と に 相 当す● る.す な わ ち,機 能 の抑 制が 支 配 的 な作用 で あ るな らは ,呼 吸 の抑 制 は二 次 的 な もの で あ り,直 接 ,呼 吸 を阻 害 す るな らば それ は 中毒
8)
作 用 で あ る とい う M cIIwainの理 論 に まつ ま で もな く,終 末 濃 度 が 10mMの高 濃 度 は,秦 剤 の抗 て んか ん作 用 で は な く, 中毒 量 として の 作 用 で あろ うと思 われ る.Resochinの 添 加 で は終 末 濃度 が10〝‡Mの ときは ,Aleviatin, Phenobarbitalの添加 の場 合 に 比 して呼 吸抑 制 率 は低 い . しか し乳酸 の生 成 は著 し く増 量
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して い る. したが ってResochinの場 合 も高 濃 度 で は 中毒 量 として の作用 を現 わ して はい る ものの ,Aleviatin,Phenobarbitalとは何 らか の点 で作 用機 序 を異 に してい る もの と推 定 され る.Resochinは われ われ の治験 に よ る と,臨床 的 には小 発 作 absence・痘 撃 型 ・ 側 頭葉 に焦 点 を有 す る精 神運 動 発作 型 のて ん か ん に他 剤 と附加 的 に用 い て と くに効 果 が あ り, そ の奏 効機 序 は主 として本剤 の血 管透 過 17)18) 性 元進 の抑 制 作 用 に あ る もの と推 定 され る.
しか し,本 剤 の作用 機 転 を考 え る とき,対血 管作 用 や呼 吸酵 素 系に対 す る作 用 だ けで は割 切 れ ない面 もあ る.炭 酸 脱水 酵 素荊】制剤 で あ るDiamox添 加 の場 合 も,傾 向 は Resochin に類 似 してい る.す なわ ち,高 濃度 に於 い て も呼 吸 の抑 制 が Aleviatin,Phenobarbitalほ ど著 明 で は ない . この こ とは , 臨床 的 に Re‑
sochinをDiamoxに併 用 した場合 , て んか ん 発 作 の抑 制作用 が さ らに高 め られ る とい う事 実 か ら考 えて,興味 深 い ものが あ る. したが ってい ずれ に して も,呼 吸抑 制 のみ を抗 て ん 1い か ん作用 の本 態 と見 倣 す こ とは で きない こ と は当 然 と云 え よ う.
2) モ /レモ ッ トに於 け る実験 はすべ て, 静 止 系 の代 謝 で行 な った. K一効 果 , 電 気 刺激 効 果 あ るい はATPな どの刺激 系は ,坐 体 の 代謝 に類 似 してい る とい われ る. しか し現 在 で は,静止 系の代 謝 にお い て さえ,多 くの疑 問が 残 され てお り,脳切 片 の糖代 謝 経 路 の問 題 もその ひ とつ で あ る.静止 系 で は脳 の代 謝 はEmbden‑Meyerhof系 よ りTCAサ イ クル を通過 しない の で は なか ろ うか との推 論 もあ るが , しか し静止 系 にお い てTCAサ イ ク/レ の各 メ ンバ ーを基 質 とした際 , いず れ の部 位
6)
で も呼 吸 をい となむ こ とが浜 口の成績 に も示 され てお り, この こ とか ら脳 組 織切 片 で は静 止 時 も ブ ドウ糖 はTCAサ イ クル を経 て酸 化 され てい る もの と解 され よ う. したが って静 止 系 にお け る代謝 実験 は基 礎 的 な実験 で あ る と と もに, 検 索 す る意 義 も十 分 に あ る とい え る.