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金融商品測定の基礎概念

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(1)

金融商品測定の基礎概念

今田正

Abstract

This paper investigate concepts that underlie accounting recognition and measurement on finantial instruments. This paper is intended to analyse such issues as how shoud finantial instruments be measured. It concerns the amount at which financial assets and liabilities be reported upon recognition-in conceptual terms, what measurement attributes should be used. The analysis deals with initial and subsequent measure- ment issues raised by unconditional receivables and payables first, followed by the implementation issues raised by impairment of uncondi- tional receivables.

はじめに

FASBは,1986年以来,金融商品に関する認識と測定及び開示に関する プロジェクトを進めてきた。その間の成果は次のような基準書(SFAS)と して表わされている。SFAS第105号「オフバランス・リスクを伴う金融商 品,ならびに信用リスクの集中を伴う金融商品に関する情報の開示」(1990

(1)       (2)

年),第107号「金融商品の公正価値に関する開示」(1991年),第114号「債権

(3)

者による貸出金の減損の会計処理」(1993年),第115号「債務証券および特

(4)

定の持分証券投資の会計」(1993年),第118号「債権者による貸出金の減損 の会計処理:収益の認識と開示」(1994年),第119号「金融派生商品および

151

金融商品の公正価値に関する開示」(1994年),として表わされてきた。これ

(6)

(2)

らの金融商品の認識と測定,及び開示の 3つのプロジェクトの基底にある流 れは(オン,オフバランスにかかわらず)金融資産(同負債)の時価評価(公正 価値評価)への転換である。プロジェクトは「認識・測定」に先がけ,リス ク情報(信用リスク・市場リスク)の開示という,ディスクロージャー・プロ ジェクトを先行させるなかで公正価値評価の拡大を計ってきた。これは単に 開示にとどまるものではない。それはオフバランスの金融商品を含め,

r

時 価情報の開示」→「財務諸表上の計上」→「評価・損益認識」への方向性を 決定づける役割も果し元;オンバランスの金融資産(負債)に係わる時価評 価は

SFAS

第1

15

号において売買目的の有価証券について公正価値評価とし て適用され,未実現保有損益を当期利益に含めることを認めた。また,同第

114

号では貸出金について期待将来キャッシュ・フローの現在価値測定が導 入された。ここでは,以上のような流れにある金融商品の認識と測定の問題 について,特に後者の測定属任

Bj

こついて整理せんとするものであり,主要に は現在価値会計を中心として検討する。

(1)  FASB. Statement of Financial Accounting Standards No.105

, 

Disc10sure of Informa tion about Finacial Instruments with Concentrations of Credit Risk, 1990. 

(2)  FASB

, 

SFAS No.107

, 

Disc10sures about Fair Value of Financial Instruments

, 

199

1 .  

(3)  FASB

, 

SFAS No.114

, 

Accounting by Creditors for Impairment of a Loan

, 

1983.  (4)  FASB

, 

SFAS No.115

, 

Accounting for Certain Investments in  Debt and Equity 

Securities, 1993. 

(5)  FASB

, 

SFAS No.118

, 

Accounting by Creditor for Impairment of a Loan‑Income  Recognition and Disc1osures, 1994. 

(6)  FASB

, 

SFAS No.119

, 

Disc10sure about Derivative Financial Instruments and Fair  Va1ue of Financial Instruments, 1994. 

(7) 

企業財務制度研究会『金融商品をめぐる米国財務会計基準の動向~ (米国財務会計基

準(金融商品)研究委員会,下巻),財団法人企業財務制度研究会,

19957

月 ,

6

参照。

(3)

(8)  FASB

概念ステイトメント第

5 (FASB

SFAC No.5

, 

Recognition and Measure ment in Financial Statements of Business Enterprises

, 

1984.)

は,測定属性として次 の

5

つを掲げている。①歴史的原価(歴史的収入額)

(historical cost  (historical pro ceeds) 

)②現在原価

(currentcost).

③現在市場価値

(currentmarket value)

,①正味 実現可能(決済)価値

(netrealizable(sett1ement)value)

,⑤将来キャッシュ・フロー の現在(割ヲ1)価値

(present(or discounted) value of future cash f1ow)

である。

一 測 定 の 基 礎 概 念

会計認識の理論的,実務的な展開の歴史は資産・負債の存在とその金額的 大きさを確かめる試みが,その本質をなしてきたといってよい。かくて,企 業の資産・負債およびそれらの変動に関する情報は財務報告にとって目的適 合的である。この目的のためには,企業の財務諸表はすべての資産・負債が 認識されるべきであり,同様に,収益・費用およびその他の資産・負債の変 動要素がその発生時に認識されるべきである。しかし,一般論としてはそう であっても,会計的な認識と測定には不確実性

(uncertainty)

を必然的に 伴う(:

Johnson and Storey

はこのような認識と測定の不確実性を克服する基礎 概念に「キャッシュ・コーンシカンス

J

(

cash consequence

りなる概念を置

く。キャッシュ・コーンシカスとはなにか。

それは,企業の資産たる事物の基本的特徴は将来純キャッシュ・インフロ ーをもたらすこと。同様に負債たるそれは,将来純キャッシュ・アウトフロ ーをもたらすことである。これら一連の資産および負債に関するキャッシュ

・インフローおよびアウト・フローがこれら事物のキャッシュ・コーンシカ

ンスであ : 4 しかし,資産および負債はその他のキャ、ソシュ・コーンシカン

スを有す。たとえば,資産は原価をもって取得され,その取得は現金の支出

を伴う。同様に負債の発生は現金の受取を伴う。これらもまた,資産・負債

のキャッシュ・コーンシカンスである。したがって,資産・負債のキャッシ

(4)

ュ・コーンシカンスはそれらの存在期間を通じてもたらされるインフローお よびアウトフロー総額である。ところで,資産・負債のキャッシュ・コーン シカンスは時間的側面を有している。すなわち,現在を過去と将来を分つも のとみれば,

(a)

過去キャッシュ・コーンシカンス

(pastcash conse quence)

, 

(b)

将来キャッシュ・コーンシカンス

(futurecash conse quence) 

, お よ び (

)現在キャッシュ・コーンシカンス

(presentcash  consequence)

である。資産・負債はいかなる時点をとっても過去及び現在 キャッシュ・コーンシカンスを有するが,勿論,企業にとって重要なのは資 産・負債の現在キャッシュ・コーンシカンスである。現在キャッシュ・コー ンシカンスは,もし貨幣の時間的価値に関して現在価値に調整されるとすれ ば,過去及び将来のキャッシュ・コーンシカンスと等しくなる。すべてのキ ャッシュ・コーンシカンスの金額および時期,さらに金利が与えられれば,

資産・負債はつぎのどれかによって測定される。

(a)

将来キャッシュ・コー ンシカンスの現在割引によって,また (b) 過去キャッシュ・コーンシカン スの現在アキュミュレーションによって現在キャッシュ・コーンシカンスが 得られ,さらに,

(c)

現在交換価格によって測定される。これら 3つのど の方法によってもその結果は同じで,資産・負債の現在キャッシュ・コーン シカンスの測定となぶこのように一定時における資産ないし負債価値は現 在キャッシュ・コーンシカンスに等しい。すなわち,現在価値会計モデルと して規定されたのである。このことを

Johnsonand Storey

のモデルによっ て,以下検討しょう。

[設例]

キャッシュ・インフロー:

所有主による投資 顧客より

2 3 4  総 計

58*l

45  60 l

65 ドル

58l

170 

(5)

総現金受取

キャッシュ・アウトフロー:

賃金・給料 設備・機械 その他の役務費

小 計 所有主への配分

非貨幣資産の購入

総現金支出

103 ドル 60 ドル 65 ドル

15 j

20 l

10 ドル n u  

EEA 15 

228 ドル

45l

25  10  80j

55*J

90

58  58l

88 ドル 55 ドル 30 ドル 55 ドル 228 ドル

fJv 

ネット・キャッシュ・イン 15ドル 5ドル 35ドル (55)ドル

フロー(アウトフロー~,J

~

J V    JJ V   JJ  J V   ¥JJJ V  

30 l

40 l

10 ドル 15*  20* 

*期首

45 ドル 60 ドル 65 ドル キャッシュ・インフロー

キャッシュ・アウトフロー ネット・キャッシュ・フロー

'

s

nHv‑Fhd 

qu

I

レ 一 レ

︐ ︐

J

l

一口

l

‑ ︑ ︑ ︐

︐ ︐ ︐

nR

U

nRU

U

一 回

hd‑J'a

40  10  20 ドル 55 ドル

1期 第2期 第3 上掲のような設例において:キャ、ソシュ・フロー利率を20パーセントと仮定す る。以上の情報によって,資産の現在キャッシュ・コーンシカンスはどの時点(第

1期期首から第3期末まで)でも,どの方法によっても見出すことができる。

(a)将来キャッシュ・コーンシカンスの割引

第 l期の期首における資産の現在キャッシュ・コーンシカンスは資産の純将来キ ャッシュ・インフローを20パーセントで割引くことによって決定できょう。

現在キャッシュ・コーンシカンス=将来キャッシュ・コーンシカンスの割引額 15ドル 20j

55ドル

1.20  (1.20)2  (1.20)3  15ドル 20ドル 55j

1.20  1.44  1.728  58.22ドル=58.22ドル=12.50ドル+13.89l

+3

1 .

83ドル

これはまた,第3期の期末から始めて各期ごとの割引額,すなわち,各期の期首 の現在キャッシュ・コーンシカンスを計算することもできる。

(6)

55.00l

45.83l

4 1. 20  +20.00 

65.83ドル 54.86l

4 1. 20 

58.22j

4

15.00  69.86ドル

1. 20 

(b)  過去キャッシュ・コーンシカンスのアキュミュレーション

資産の将来キャッシュ・コーンシカンスを割引くのとは反対に,過去のキャッシ ュ・コーンシカンスのアキュミュレーションによって現在キャッシュ・コーンシカ ンスを決定することもできる。たとえば,第3期の期末における資産の現在キャッ シュ・コーンシカンスはつぎのように決定されよう。

現在キャッシュ・コーンシカンス=過去キャッシュ・コーンシカンスのアキュミ ュレーション額 = [58.22

ドル(1.

20)3J 

[15

ドル(1.

20)2+20

ドル(1.

20)J

= [58.22

ドル(1.

728) J 

[15

ドル(1.

44)  +20

ドル(1.

20) J  55.00

l

=55.00

j

レ=

[100.60

l

レ ]

[21.60l

+24.00l

〕 レ

現在キャッシュ・コーンシカンスは第 l期の初めから出発し,各期ごとアキュミ ュレートすること,すなわち,第2期から第 4期の初めにおいて現在キャッシュ・

コーンシカンスを計算することもできる。

58.22

ドル(1.

20)ー‑‑69.86

ドル

15.00 

54.86

ドル(1.

20)一→ 65.83

ドル

20.00 

45.83

ドル(1.

20)55.00

ドル

(c)  現在交換価格の発見

市場におけるすべての演者が同じ情報のもとで行動し,売り手と買い手が特定の 時点、において当該資産について単一の交換価格に達する。

(7)

このように,資産,負債の認識と測定の基礎概念は,所与の時点において,

資産ないし負債の意味が当該企業にとってのその現在キャッシュ・コーンシ カンスの機能にあることが強調され,現在価値会計が論理づけられるのであ る 。

(1)  Johnson

,  L .

T. and Storey

, 

R.

K . ,  

Recognition in  Financ1Statements: Underlying  Concepts and Practical Conventions

, 

FASB

, 

Research Report

, 

1982

, 

p. 4  (2)

i d .,

p. 5. 

(3)

i d .,

pp. 5 ‑6  (4)

i d .,

p.27.  (5)

i d .,

pp.2728. 

(6)  r

貨幣は稼得力をもつものであるから,いま

100

ドルを受取る人は将来のある時では なく,今回受取ろうとするであろう。もし,貨幣の稼得が年に

10%

であるとすれば,

今回

100

ドルを受取る人は

1

年後には

110

ドルを受取る人とちょうど同じ購買力を得た ことになる。このように,貨幣の時間的価値は,一定の状況のもとである人がとる,

大きな金額を後で受取るより早い時期に少額を受取る選好として表現される。例えば,

ある人が今日の

100

ドルを受け取るか

1

年後の

110

ドルを受取るかの選択を行うとする。

この選択は(1)今日の

100

ドルの受取りか,

(2) 1

年後の

100

ドル・プラス・剰余

10

ドルの 受取りかの選択である。早期の受取りの選択は

1

年後の

100

ドルと

10

ドルの剰余より今 日の受取りを高位におくことを意味し,後での受取りを選択することはその逆を意味 している。貨幣の時間的価値とは,この早期の受取りの選択として表わされる」

(Lorensen

,  L . ,  

Accounting for Liabilities

, 

AICPA

, 

Accounting Research Monograph  No.4 

, 

1992

, 

pp. 1920.)

(7)  Johnson

,  L .

T. and Storey

,  R . K . ,  

Op.  cit.

, 

p. 28.

キャッシュ・フロー価値について設 例によってみよう。たとえば,いま,

100

の元本を年利率

5 %

で運用すると,

1

年後は

100

x (1 +0.05)  = 105

となる。すなわち,

1

年間の金利を

5%

とすれば,現在の

100

1

年後の将来価値

(futurevalue)

105

となる。

2

年後のキャッシュ・フローは,元 本を

2

年間複利運用すると

100x (1 +0.05)2= 110.25

となる。では,金利が年

5 %

の 場合,

1

年後の

100

の現在価値

(presentvalue)

は ,

Xx(I+0.05) =100

, 

X=95.24 

となる。また,この

5%

を割引率

(discountrate)

という。すなわち,現在価値とは

将来価値の現在時点における価値である。つまり,現在価値

x

(1 +金利) =将来価

(8)

値,かくて,金利 rのとき,現在価値と n年後の将来価値の関係は,

現在価値=一一一一一将来価値+r)n 

これは

n

年後のキャッシュ・フロー額が現在いくらの金額に相当するかを表わして いる。また,キャッシュ・フローの現在価値から初期投資額をヲ│いた値は正味現在価 (netpresent value)と呼ばれる。また,複数のキャッシュ・フローの現在価値は,

各々キャッシュ・フローの現在価値の合計となる。ある資産がt年後に生み出すキャ ッシュ・フローをCtとすると,現在価値は次の式をもって示される。

O .   C2  C3  Cn  pv=一一一+一一一一一一十一一一一一一+・・・+一一一一一

+r' 

(1 

+r)2' 

( 1  

+r)3 ,  , 

(1 

+r)n  (8)  Ibid.

, 

p.37. 

ニ 金 融 商 品 の 測 定

( 1 )   金融商品の初期測定

FASB

の「金融商品プロジェクト」の認識問題と並ぶいま一つの側面で ある測定問題に関する展開を

FASBW

討議資料

jI

金融商品の認識と測定」

(1991

年,以下, ~討議資料』という。)を手掛りとして検討しょう。

まず,初期測定は金融資産,負債が認識計上されるその額のことであるが,

概念的にいえば,如何なる測定属性が用いられるべきかに関係している。

『討議資料』は金融商品の初期測定として 4 つの可能性ある属性

(at tributes)

を識別する。

まず,金融商品が全体として現金との交換によって取得される場合の初期 測定は,当該資産の対価ないし原価,または負債の収入額とよばれる,金融 商品との交換における受払い額

(whatwas received or paid in exchange for  the instrument)で測定されぶこの測定は現金が唯一の対価である場合は

明確な手段である。この方法は適用が容易であるが,認識時における損益の 計上はない。

2

の選択肢は,初期測定をその契約における規定額,すなわち取引規定

(9)

価額

(statedtransaction value)

で測定する。たとえば,債権・債務に関し ていえば,契約において金利が特定されていないとすればその債務総額とな る。固定金利の借入の場合は元本額であり,それはまた,契約に規定された 金利で割ヲ│いた支払額の現在価値でもある。普通株については額面額であり,

保証のような条件付商品の場合は,その保証総額がそうであぷ債権・債務 の初期測定基準として提唱されるのは,それが取引価格を表わしているから である。

3

の選択肢は認識時の市場価値

(marketvalue when recognized)

であ る。現在市場価値とは,現在の取引においである資産が売却されるか負債が 決済される現金額ないしその同等額である。この方法は認識時点や金融商品 の種類を問わず適用可能で、ぁぷこの市場価値による初期測定の根拠は,そ れが金融商品の将来経済便益に関する最も適合的情報であるからとされる。

初期測定の最後の選択肢は金融商品に関して,受取また支払われるであろ う期待価値,すなわち期待将来キャッシュ・フロー

(expectedfuture cash  flows)

による測定である。受取債権についてはインフローで,支払債務に ついてはアウトフローで,また複合商品については純フローで測定する。期 待将来キャッシュ・フローはしばしばその現在価値に割ヲ│かれる。現在価値 は数学的手法の結果であって,割引に用いられる金利が決定的であり,測定 結果の経済的意味を決定している。もし,期待将来キャッシュ・フローがリ スクを適切に見込んだ市場金利で割引かれるとすれば,その結果は基本的に は認識時の市場価値となる。

期待将来キャッシュ・フローが提唱されるのは,将来キャッシュ・フロー が条件付また無条件の受取債権,支払債務の源資となるからであり,それら の予測測定は論理的でもあるというのである。

(2) 

金融商品の事後測定

事後測定とは金融資産および負債が認識後の決算時において測定されるべ

(10)

き金額である。すなわち,如何なる測定属性が用いられるべきか, ~討議資 料』は歴史的価格

(historicalprices)

によるか現在価格

(currentprices) 

によるかに分けぷ歴史的価格に基づく測定は唱歴史的原価庁(

historical cost

つ法ないし、償却原価グ(

amortizedcost

り法ともよばれ,それは減 損ないし低価法に基づく減価の可能性も含む。他方,現在価格に基づく測定 は

m

市場価値グ(

marketvalue")

,  ¥¥公正価値庁(

fairvalue

り,、値洗い庁

(

marktomarket

り,法とも呼ばれる。

まず,歴史的価格に基づく測定は実際の取引を反映するという利点を有す るが満期前に売却または決済されないかぎり損失機会や(市場金利の変動とい った)外的事象を表わさない。しかし,この方法は,現在価格法に比べ損益 認識を容易にし,より予測可能とすることから投資家や債権者にとり有用と なるとする。

特に,この測定の支持者は,金融商品に関してだけ現在価格を用い,他方 で,非金融資産・負債の測定を歴史的価格に基づくのは問題が多いという。

だが,異なった測定属性(ある部分については歴史的価格で,他の部分は現在価 格で)がこんにちの実務で用いられており,投資家も債権者も多様なデータ

ーをとりあつかうことに慣れている,というのである : l

一方,現在価格に基づく測定は,決算時の金融商品に関して,また当該期 間の経済的事象から生じる損益についての適合的情報を提供する : l 現在価格

を用いる測定は経営者,投資家,債権者あるいは規制当局をして実体の投資 および財務戦略のよりよい評価を可能とするとされる。

現在価格による測定はいかなる金融商品も満期前に売却ないし決済されな いとすれば,当該期間の損益の大きな変動をもたらすが,金融商品が満期前 に売却ないし決済されるとする場合,期間損益の変動を減少させる。それは,

実現した損益はすでに事後測定の過程を経て認識されているからである。ま

た現在価格による測定は評価増しされたか,減価された資産のみを選択的に

売却することによる計上利益の操作の可能性を排除することによって,企業

(11)

間の比較を可能とするというのである。以下では,これらの一般概念をふま え,具体的金融資産・負債について,検討することとしょう。

(1)  FASB

, 

Discussion Memorandum

, 

Recognition and Measurement o[ Financial In struments

, 

199

1 .  

(2)id.

par.72.  (3)id.

par.73.  (4) id.

par.76.  (5) id.

par.79.  (6) id.

par.8

1 .  

(7)  Ibid.

, 

par. 82

, 

83.  Mi1ler. P.B.W.and Bahnson

, 

P.

R . ,  

Four Steps to Useful Present  Values

, 

Journal 01 Accountan

, り

May 1996

, 

p. 9

1 .  

(8)id.par.84.  (9)id.par.86.  (10)id.

par.87.  (11) i

par.89.

(1~

I b

id.

, 

par.92. 

(1~ 昂id. ,par.93.  (

1

4)昂

id.

par.94.  (15)id.par.95.  (16) id.par.96. 

三無条件の受取債権・支払債務と測定

( 1 )   無条件の債権・債務の初期測定

金融商品の測定問題を,

FASB

金融商品プロジェクトがいう基礎的商品

の一つである無条件の債権・債務

(unconditionalreceivables and payables) 

を例に検討しよう。

(12)

まず,無条件の債権とは特定の期日以内に一定額の現金ないしその他の金 融資産を受取る無限定の契約上の権利であり,無条件の債務は一定額の現金 ないしその他の金融資産を引渡すべき無限定の契約上の義務である。このよ うに,定義自体が将来支払いをなすべき無限定の現在の義務の存在を措定し ている。かくて,無条件の債権および債務は資産,負債の定義に合致し,そ の資産,負債の性質も明確である。したがって,無条件の債権・債務契約は その発生と同時にその当初において認識するとされる。

では,無条件の債権・債務の初期測定は如何になされるべきか,

w

討議資 料』は 4 つの代替的属性を提示し f i :

まず,

r

授受額

J(amount paid or received)

であり,現金にて取得された 金融商品はその現金授受額(または資産の対価ないし原価および負債収入額)で 測定される。ただし,現金との交換によらない場合の「授受額」の測定は容 易でなく,一般には,対価となる非現金資産や非契約事項さえ評価すること も可能である。実際,

APB

オピニオン第

29

号「非貨幣取引の会計」

(4j

こおけ る基本原則は受取られた資産の公正価値が「より明確」でないかぎり,

r

提 供された資産の公正価値」を用いるとしていぷ

2

は ,

FASB

概念構造において識別されたわけではないが, r 取引規定

価額

J(stated transaction value)

は財貨ないし用役と交換に取得ないしヲ│

受けられた無条件の債権・債務に関する実務に用いられる初期測定基準であ る。すなわち,それは金融商品をその取引において規定された額で測定する のである。

つぎは,現在市場価値

(currentmarket value)

である。現在市場価値は,

相互に無関係だが,意思を有する当事者間の現在取引において,債権が売却

されうるか,債務が決済されうる現金額ないし現金同等額であぷ認識時の

市場価値はほぼ支払ないし受取額と等ししとこのようなことから,認識時の

測定基準としての市場価値は無条件の債権・債務の現金効果に関する適合的

情報を提供するとされる。すなわち,認識時の市場価値はしばしば最終的に

(13)

受払額あるいは取引規定価額と等しい。市場価値は受払が行われない多くの 無条件の債権・債務についても合理的に信頼しうる程度に決定ないし見積り 可能であると主張されるのである。

最後の方法は,無条件の債権・債務をその期待将来キャッシュ・フロー(純 キャッシュ・インフローおよびアウトフロー)をもって測定する方法であり,期 待将来キャ、ソシュ・フローはしばしば現在価値に割引かれ本 : l 現在価値は数

学的手法の結果であるから,割引に用いられる割引率が決定的であり,それ が結果として得られる測定値の経済的意味を決定することになる。たとえば,

もし期待将来キャッシュ・フローが予測されるリスクを見込んだ市場利子率 で割ヲ│かれるとすれば,結果として得られるのは基本的には認識時の市場価 値となる。契約約定利率で割引けば基本的に取引規定価額が得られ 4 1 ; かく

て,この方法の支持者は,期待将来キャッシュ・フローは,条件付にせよ無 条件にせよ,債権・債務の価値の源泉であるから,それらの予測による測定 は合理的なものであるというのである。

(2) 

無条件の債権・債務の事後測定

この場合の事後測定は,もし債権・債務がそれが認識された会計期間に完 全に決済されなし

1

か支払われない場合に問題となる。その計上価額は初期測 定のまま決済まで変動を加えず継持することもできるが,発生主義会計のも とで,それもむずかしいことである。債権・債務の初期測定額を超える返済 のキャッシュ・フローの額の大部分は広く利息一債務者によるの現金保有ま たは使用の結果,当期中に債権者が稼得した現金の使用料ーと考えられている。

一定の無条件の債権・債務の計上額をその決済ないし支払の時まで認識しな いということは結局その利息収入の全体を,当該ローンの期間にわたってで はなく,支払時に帰属させることになるが,これは発生主義の基準に反する,

というのである。

では,事後測定の基礎はなにか。『討議資料』は一般論においてみたと同

(14)

様に,

2

つの代替的方法,歴史的価格と現在価格による方法を提示している。

歴史的価格に基づく事後測定においては,その初期測定額の計上を継続し つづけるが,その初期測定から満期までのその増減は(

a)

利息の発生,また

(b)

減損を反映するのみである。一方,この方法の代替的測定属性は概念的には 期待将来キャッシュ・フローを歴史的金利で割ヲ│いた現在価値であり,一般 に「償却原価]とよばれ 4 1 : この償却原価が支持されるのは,それが実体 の実際取引を反映するからである。それは,市場価値の変動は報告利益や財 政状態に影響を与えるべきではなく,それらの変動は満期前に債権を売却す るか債務の決済を行わない限り,実体のキャッシュ・フローを変えることは ないとみるからである。

特に,歴史的価格の支持者は,現在市場価値情報がいかに利点があるとし ても,非金融資産および負債が歴史的価格に依拠し続ける一方で,金融資産 にのみ現在価格を用いることは適当でない。特に非金融企業の資産は多くが 非金融資産であるのに対して,その負債は多くが金融負債であるというので ある。

無条件の債権・債務の事後測定のいま一つは,現在価格に基づく方法,す

なわち現在市場価値によるものである。現在市場価値が提唱されるのは,そ

れが決算時の無条件の債権・債務および当該期間に実際に発生した損益に関

する最も適合的情報を提供するというので、ぁ 4 1 : 現在市場価値法は財務諸表

上で現在状況の効果を認識することができるが,償却原価法は単に当初計画

されたことを報告するにすぎないという。現在市場価値による事業測定は市

場利子率等の変動によって計上利益および持分に大きな変動を及ぼす。しか

し現在市場価値の支持者は計上利益の変動は経営者が採用した戦略に伴う

リスクや可能性を表現するに過ぎない。むしろ,現在価格による測定は無条

件の債権・債務が満期日前に売却ないし決済される場合の計上利益の変動を

減ずることになる。というのは,あらゆる実現損益は既に事後測定の手続を

通じて認識されているからである。かくて,現在価格測定は評価増しされた

参照

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