グリコールアルデヒドによる小胞体ストレス誘導性 アポトーシスに関する研究
本論文は
2014
年北海道薬科大学における博士(薬学)の 学位取得のために提出し受理されたものである。平成25年度
北海道薬科大学大学院薬学研究科 生物薬学専攻 博士後期課程
佐 藤 恵 亮
ⅰ
目 次
略 語 ・ 略 号 表
. . . 1
緒 言
. . . 3
第 1 章 グ リ コ ー ル ア ル デ ヒ ド(
GA)に よ る ア ポ ト ー シ ス の
誘 導 第 1 節 序 論. . . 8
第 2 節 実 験 方 法
. . . 9
第 3 節 実 験 結 果
. . . 1 2 1.
シ ュ ワ ン 細 胞 の 細 胞 生 存 率 に 対 す るGA
の 影 響... 12
2.
シ ュ ワ ン 細 胞 の 細 胞 生 存 率 に 対 す る ジ カ ル ボ ニ ル 化 合 物 の 影 響... 14
3. GA
に よ る 細 胞 傷 害 と ア ポ ト ー シ ス と の 関 連 性... 15
第 4 節 考 察
. . . 1 9
第 2 章 グ リ コ ー ル ア ル デ ヒ ド(GA
)に よ る 小 胞 体 ス ト レ ス の 誘 導 第 1 節 序 論. . . 2 3
第 2 節 実 験 方 法. . . 2 5
第 3 節 実 験 結 果. . . 3 1 1.
ミ ト コ ン ド リ ア に 対 す るGA
の 影 響... 31
2. ROS
産 生 量 に 対 す るGA
の 影 響... 32
3.
小 胞 体 ス ト レ ス セ ン サ ー に 対 す るGA
の 影 響... 34
4.
オ ー ト フ ァ ジ ー に 対 す るGA
の 影 響... 35
ⅱ
5.
小 胞 体 ス ト レ ス 誘 導 性 ア ポ ト ー シ ス 促 進 因 子 に 対 す るGA
の 影 響.. 36
6.
膜 受 容 体 に 対 す るGA
の 影 響... 37
第 4 節 考 察
. . . 3 8
第 3 章 グ リ コ ー ル ア ル デ ヒ ド(GA)に よ る ス ト レ ス 応 答 機
構 の 誘 導 第 1 節 序 論. . . 4 3
第 2 節 実 験 方 法. . . 4 5
第 3 節 実 験 結 果. . . 4 9 1. GA
に よ る 細 胞 傷 害 に 対 す るNAC
の 影 響... 49
2.
細 胞 内GSH
量 に 対 す るGA
の 影 響... 51
3. MRP1
発 現 量 に 対 す るGA
の 影 響... 52
4. Keap1/Nrf2
シ ス テ ム に 対 す るGA
の 影 響... 54
5. Nrf2
ノ ッ ク ダ ウ ン 細 胞 に お け るGA
の 影 響... 57
6. GA
に よ る 細 胞 傷 害 に 対 す るKeap1/Nrf2
シ ス テ ム 活 性 化 の 影 響... 58
第 4 節 考 察
. . . 5 9
総 括. . . 6 4
謝 辞. . . 6 7
参 考 文 献. . . 6 8
1
略語・略号表
本 論 文 に お い て は 以 下 の 略 語 お よ び 略 号 を 用 い た ( ア ル フ ァ ベ ッ ト 順 )
AGEs
糖 化 最 終 産 物advanced glycation end products
ATF6
活 性 化 転 写 因 子6 activating transcription factor 6
CDF
カ ル ボ キ シ-2',7'-ジ ク ロ ロ フ ル オ レ セ イ ン 5 (and 6)-carboxy-2',7'-dichlorofluorescein
ジ ア セ テ ー ト (5-, 6-混 合 物 ) diacetate
CHOP C/EBP
類 似 タ ン パ ク 質C/EBP-homologous protein
3-DG 3-デ オ キ シ グ ル コ ソ ン 3-deoxyglucosone
DMEM
ダ ル ベ ッ コ 変 法 イ ー グ ル 培 地Dulbecco’s modified Eagle’s medium DPBS
ダ ル ベ ッ コ リ ン 酸 緩 衝 食 塩 水Dulbecco’s phosphate-buffered saline DTNB 5,5’-ジ チ オ ビ ス (2-ニ ト ロ 安 息 香 酸 ) 5,5’-dithiobis (2-nitrobenzoic acid) DTPA
ジ エ チ レ ン ト リ ア ミ ン 五 酢 酸diethylenetriaminepentaacetic acid EDTA
エ チ レ ン ジ ア ミ ン 四 酢 酸ethylenediaminetetraacetic acid
EPS
エ パ ル レ ス タ ッ トepalrestat
FBS
ウ シ 胎 児 血 清fetal bovine serum
GA
グ リ コ ー ル ア ル デ ヒ ドglycolaldehyde
GAPDH
グ リ セ ル ア ル デ ヒ ド-3-リ ン 酸 glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase
脱 水 素 酵 素γ-GCS γ-
グ ル タ ミ ル シ ス テ イ ン 合 成 酵 素γ-glutamyl cysteine synthetase
GO
グ リ オ キ サ ー ルglyoxal
GSH
還 元 型 グ ル タ チ オ ンreduced glutathione
GSSG
酸 化 型 グ ル タ チ オ ンoxidized glutathione
HE
ヒ ド ロ エ チ ジ ンhydroethidine
HO-1
ヘ ム オ キ シ ゲ ナ ー ゼ-1 heme oxygenase-1
IRE1
イ ノ シ ト ー ル 要 求 性 酵 素1 inositol-requiring ER-to-nucleus signal kinase 1 Keap1 Kelch
様ECH
結 合 タ ン パ ク 質1 Kelch-like ECH-associated protein 1
LDH
乳 酸 脱 水 素 酵 素lactate dehydrogenase
MG
メ チ ル グ リ オ キ サ ー ルmethylglyoxal
MRP1
多 剤 耐 性 関 連 タ ン パ ク 質1 multidrug resistance-associated protein 1
2
MTS 3-(4,5-
ジ メ チ ル チ ア ゾ ー ル-2-イ ル)-3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)- 5-(3-カ ル ボ キ シ メ ト キ シ フ ェ ニ ル )- 5-(3-carboxymethoxyphenyl) - 2-(4-ス ル フ ォ フ ェ ニ ル )- 2-(4-sulfophenyl)-2H-tetrazolium salt
二 水 素 テ ト ラ ゾ リ ウ ム 塩NAC N-
ア セ チ ル-L-シ ス テ イ ン N-acetyl-L-cysteine
NADH
還 元 型 ニ コ チ ン ア ミ ド ア デ ニ ンreduced nicotinamide adenine dinucleotide
ジ ヌ ク レ オ チ ドNADPH
還 元 型 ニ コ チ ン ア ミ ド ア デ ニ ンreduced nicotinamide adenine dinucleotide
ジ ヌ ク レ オ チ ド リ ン 酸
phosphate
Nrf2 NF-E2
関 連 転 写 因 子2 nuclear factor erythroid 2 -related factor 2 PBS
リ ン 酸 緩 衝 食 塩 水phosphate-buffered saline
PERK RNA
依 存 性 プ ロ テ イ ン キ ナ ー ゼ 様RNA-dependent protein kinase-like ER kinase ER
キ ナ ー ゼPI
ヨ ウ 化 プ ロ ピ ジ ウ ムpropidium iodide
ROS
活 性 酸 素 種reactive oxygen species
SOD
ス ー パ ー オ キ シ ド ジ ス ム タ ー ゼsuperoxide dismutase TBS
ト リ ス 緩 衝 食 塩 水Tris-buffered saline
TNF
腫 瘍 壊 死 因 子tumor necrosis factor
3
緒 言
2012
年 の 世 界 に お け る 糖 尿 病 人 口 は3
億7,100
万 人 と み ら れ て お り 、2030 年 に は5
億5,200
万 人 に 急 増 す る と 予 測 さ れ て い る(Fig. 1)
1 )。2012 年 の わ が 国 に お け る 糖 尿 病 人 口 は710
万 人 と み ら れ 、2030
年 に は1,000
万 人 を 超 え る と 予 測 さ れ て い る 。糖 尿 病 自 体 は 死 因 の 上 位 で は な い が 、死 因 の 上 位 を 占 め る 脳 梗 塞 や 心 筋 梗 塞 の リ ス ク フ ァ ク タ ー で あ り 、神 経 障 害 、腎 症 、網 膜 症 と い っ た 糖 尿 病 三 大 合 併 症 を 引 き 起 こ す 。合 併 症 の 中 で も 糖 尿 病 性 神 経 障 害 は 、比 較 的 早 期 か つ 高 頻 度 に 認 め ら れ る が 、自 覚 症 状 に 乏 し く 軽 視 さ れ や す い 。 し か し 、 痛 み や 異 常 感 覚 な ど の 症 状 が 出 現 す る と 治 療 が 難 し くQOL
を 著 し く 損 な う 疾 患 で あ り 、発 症 早 期 か ら の 進 展 阻 止 は 大 き な 課 題 と な っ て い る 。Fig. 1
世 界 お よ び 日 本 に お け る 糖 尿 病 人 口1 )
糖 尿 病 合 併 症 が 発 症 す る メ カ ニ ズ ム に は 、 ポ リ オ ー ル 代 謝 経 路 の 活 性 化 、 プ ロ テ イ ン キ ナ ー ゼ
C
の 活 性 化 、酸 化 ス ト レ ス 、糖 化 反 応 の 亢 進 な ど の 関 与 が 示 唆 さ れ て い る 2 )。 な か で も 糖 化 反 応 の 亢 進 は 、 糖 尿 病 性 神 経 障 害 の 主 要 因 で あ り 、 シ ュ ワ ン 細 胞 の 細 胞 死 を 引 き 起 こ す こ と が 報 告 さ れ て い る 3 )。 シ ュ ワ ン 細 胞 は 、神 経 細 胞 の 跳 躍 伝 導 に 必 須 な 神 経 組 織 構 成 細 胞 で あ り 、神 経 損 傷 時 の 再 生 に 重 要 な 役 割 を 担 っ て い る 。シ ュ ワ ン 細 胞 で は 、糖 化 反 応 が 引4
き 金 と な っ て 生 成 す る 糖 化 最 終 産 物
advanced gl ycation end products( AGEs)
の 蓄 積 が 確 認 さ れ て い る 4 )。 そ の た め 、
AGEs
に よ る シ ュ ワ ン 細 胞 の 傷 害 が 糖 尿 病 性 神 経 障 害 に 関 与 し て い る と 考 え ら れ て い る 5 )。糖 化 反 応 は グ ル コ ー ス な ど の 還 元 糖 と タ ン パ ク 質 の 非 酵 素 的 な 結 合 に 基 づ く 反 応 ( メ イ ラ ー ド 反 応 ) で あ る (
Fig. 2
)。 還 元 糖 の カ ル ボ ニ ル 基 と タ ン パ ク 質 の ア ミ ノ 基 が 反 応 し て シ ッ フ 塩 基 を 作 り 、ア マ ド リ 変 換 を 経 て 比 較 的 安 定 な ア マ ド リ 化 合 物 を 作 る 初 期 反 応 、高 反 応 性 の 中 間 体 が 生 じ る 中 期 反 応 、AGEs
が 生 成 す る 後 期 反 応 に 区 別 さ れ る 6 )。 糖 化 反 応 は 、 血 中 グ ル コ ー ス 濃 度 に 依 存 し て 起 こ り 、タ ン パ ク 質 の 翻 訳 後 修 飾 と し て 酵 素 タ ン パ ク 質 や 構 造 タ ン パ ク 質 に 様 々 な 影 響 を 及 ぼ し 糖 尿 病 の 病 態 に 関 わ っ て い る と 考 え ら れ て い る 6 )。 ア マ ド リ 化 合 物 で あ る ヘ モ グ ロ ビ ンA1
cは 、 糖 尿 病 の 診 断 基 準 や 血 糖 コ ン ト ロ ー ル の 指 標 、 評 価 に 利 用 さ れ て い る 。Fig. 2
糖 化 反 応 の 概 要α-
ヒ ド ロ キ シ ア ル デ ヒ ド で あ る グ リ コ ー ル ア ル デ ヒ ド(GA
)は 、糖 化 反 応 か らAGEs
が 生 成 す る 過 程 で 形 成 さ れ る (Fig. 3)。 こ の 過 程 で は 、 幾 つ か の
反 応 性 に 富 む 中 間 体 が 形 成 さ れ る 7 - 9 )。AGEs
は 生 成 経 路 の 異 な るAGE-1~ 6
に 分 類 さ れ る 1 0 - 1 2 )。AGEs
の 前 駆 体 と し て メ チ ル グ リ オ キ サ ー ル (MG)、 グ
リ オ キ サ ー ル(GO)、 3-
デ オ キ シ グ ル コ ソ ン(3-DG
)な ど の ジ カ ル ボ ニ ル 化 合 物 が 広 く 知 ら れ て い る が 7 - 9 )、GA
由 来 のAGE-3
は ジ カ ル ボ ニ ル 化 合 物 由 来 のAGEs
よ り も 細 胞 傷 害 能 が 強 い こ と が 報 告 さ れ て い る 3 )。 さ ら に 、 炎 症 性 組 織 で は ア ミ ノ 酸 の 酸 化 促 進 に よ っ てGA
の 生 成 能 が 上 昇 す る こ と が 知 ら れ て い る 1 3 )。 し か し 、GA
が 生 体 に ど の よ う な 影 響 を 及 ぼ し て い る の か は 明 ら か に さ れ て い な い 。5
Fig. 3
糖 化 反 応 経 路糖 尿 病 の 根 底 に は 、酸 化 ス ト レ ス が 関 与 し て い る と 考 え ら れ て い る 。
1980
年 代 後 半 に グ ル コ ー ス の 自 動 酸 化 や 糖 化 反 応 に 伴 う 活 性 酸 素 種reactive oxygen species( ROS)の 産 生 が 明 ら か に さ れ て 以 来 、糖 尿 病 と 酸 化 ス ト レ ス
の 関 連 性 を 示 す 多 数 の 知 見 が 報 告 さ れ て い る 。 ジ カ ル ボ ニ ル 化 合 物 で あ るMG
は 、 シ ュ ワ ン 細 胞 に お い て 酸 化 ス ト レ ス を 誘 導 し 、 ア ポ ト ー シ ス を 惹 起す る 1 4 )。MG や
AGEs
が 、ROS の 産 生 や 抗 酸 化 酵 素 群 の 失 活 に よ り ア ポ ト ーシ ス を 誘 導 す る こ と が 種 々 の 培 養 細 胞 系 で 立 証 さ れ て い る 1 5 - 1 7 )。ア ポ ト ー シ ス に は ミ ト コ ン ド リ ア 、小 胞 体 、膜 受 容 体 を 介 す る 経 路 な ど が 存 在 す る こ と が 知 ら れ て い る が 、
MG
やAGEs
に よ る ア ポ ト ー シ ス に は ミ ト コ ン ド リ ア を 介 す る 経 路 の 関 与 が 提 唱 さ れ て い る 1 8 , 1 9 )。即 ち ミ ト コ ン ド リ ア 傷 害 に よ り 、 酸 化 ス ト レ ス が 生 じ て ア ポ ト ー シ ス に 至 る と 考 え ら れ て い る 。一 方 、近 年 に な っ て 小 胞 体 ス ト レ ス 応 答 経 路 の 分 子 機 構 が 次 々 と 明 ら か に な り 、糖 尿 病 の 病 態 形 成 に 小 胞 体 ス ト レ ス に よ る ア ポ ト ー シ ス が 関 与 し て い る こ と が 報 告 さ れ て い る 2 0 , 2 1 )。し か し 、MG の よ う な ジ カ ル ボ ニ ル 化 合 物 やAGEs
等 に よ る ア ポ ト ー シ ス 誘 導 へ の 小 胞 体 ス ト レ ス の 関 与 に つ い て は 、現 在 ま で ほ と ん ど 報 告 が な さ れ て い な い 。小 胞 体 ス ト レ ス は 、 糖 化 反 応 や
SH
基 の 酸 化 な ど を 受 け 、 異 常 立 体 構 造 を も つ 折 り 畳 み 不 全 タ ン パ ク 質(unfolded proteins)が 小 胞 体 内 腔 に 蓄 積 す る 状
態 で あ る 2 2 )。 小 胞 体 ス ト レ ス に よ る ア ポ ト ー シ ス 誘 導 機 構 をFig. 4
に 示 す 。 小 胞 体 ス ト レ ス が 生 じ る と 、異 常 タ ン パ ク 質 を 小 胞 体 ス ト レ ス セ ン サ ー が 感6
知 す る 2 3 -2 5 )。 主 な 小 胞 体 ス ト レ ス セ ン サ ー と し て
RNA-dependent protein kinase-like ER kinase
(PERK
)、inositol-requiring ER-to-nucleus signal kinase 1
(
IRE1
)、activating transcription factor 6( ATF6)が 知 ら れ て い る
2 3 -2 5 )。小 胞 体 ス ト レ ス セ ン サ ー は 、オ ー ト フ ァ ジ ー や 転 写 因 子 で あ るC/EBP-homologous
protein
(CHOP
) を 介 し た ア ポ ト ー シ ス を 誘 導 す る 2 6 )。 一 方 で 、 細 胞 は ス ト レ ス に 対 抗 す る た め の 防 御 機 構 を 構 築 し て お り 、小 胞 体 ス ト レ ス な ど の 多 種 多 様 な ス ト レ ス を 緩 和 す る た め に 、ス ト レ ス 応 答 機 構 を 活 性 化 す る 2 7 -3 0 )。ス ト レ ス 応 答 機 構 と し て 、Fig. 5
に 示 す よ う な 抗 酸 化 酵 素 群 や 第 Ⅱ 相 解 毒 酵 素 群 の 発 現 誘 導 が 起 こ る 。 な か で も 、heme oxygenase-1( HO-1) は 、 代 表 的 な
ス ト レ ス 応 答 タ ン パ ク 質 で あ る 。 ま た 、 還 元 型 グ ル タ チ オ ン (GSH) 生 合 成
の 律 速 酵 素 で あ るγ-glutamyl cysteine synthetase
(γ-GCS
) の 発 現 も 誘 導 さ れ る 。 さ ら に 、 薬 物 代 謝 酵 素 で あ るGSH S-
ト ラ ン ス フ ェ ラ ー ゼ 、 薬 物 ト ラ ン ス ポ ー タ ー で あ るmultidrug resistance associated protein -1( MRP1) な ど 多 く
の ス ト レ ス 応 答 タ ン パ ク 質 の 発 現 誘 導 が 起 こ る 。近 年 、こ れ ら ス ト レ ス 応 答 タ ン パ ク 質 の 発 現 制 御 にKelch-lile ECH-associating protein 1/ nuclear factor
erythroid 2-related factor 2( Keap1/Nrf2
)シ ス テ ム が 関 与 し て い る こ と が 示 さ れ て い る 2 7 -3 0 )。7
前 述 し た よ う に 、
GA
が 生 体 に ど の よ う な 影 響 を 及 ぼ し て い る の か は 明 ら か で は な い 。GA
に 関 す る 研 究 報 告 は ジ カ ル ボ ニ ル 化 合 物 に 比 べ て 圧 倒 的 に 少 な く 、健 常 人 や 糖 尿 病 患 者 に お け る 血 中 濃 度 な ど に つ い て は 報 告 さ れ て い な い 。 ヒ ト の 生 体 濃 度 (physiological concentration
) が0.1
~1 mM
と 推 測 し て い る 報 告 が あ り 3 1 -3 3 )、こ れ に よ る と 、ジ カ ル ボ ニ ル 化 合 物 の 血 中 濃 度( 数µM〜 数 十 µM)
3 4 )と 比 較 し て 高 濃 度 に 存 在 す る と 考 え ら れ る 。 一 方 、GA
の 細 胞 傷 害 能 や ジ カ ル ボ ニ ル 化 合 物 と の 比 較 を 示 し た 報 告 は な さ れ て い な い 。 ヒ ト 乳 が ん 細 胞 に お い てGA
に よ る ア ポ ト ー シ ス 誘 導 を 示 す 唯 一 の 報 告 が あ る も の の 3 5 )、シ ュ ワ ン 細 胞 を は じ め と す る 他 の 細 胞 系 に 対 す るGA
の 影 響 は 不 明 で あ る 。本 研 究 で は 、末 梢 神 経 構 成 細 胞 で あ る シ ュ ワ ン 細 胞 に 及 ぼ す
GA
の 各 種 影 響 に つ い て 検 討 し た 。 第 1 章 で は 、GA
に よ る 細 胞 傷 害 能 、 ジ カ ル ボ ニ ル 化 合 物 と の 比 較 、ア ポ ト ー シ ス と の 関 連 性 に つ い て 検 討 し た 。第 2 章 で は 、GA に よ る ア ポ ト ー シ ス 誘 導 メ カ ニ ズ ム を 探 る 目 的 で 、小 胞 体 ス ト レ ス 関 連 因 子 に 対 す る 影 響 を 中 心 と し て 検 討 を 行 っ た 。第 3 章 で は 、ス ト レ ス 応 答 タ ン パ ク 質 に 対 す る 影 響 、並 び に そ の 発 現 を 制 御 す るKeap1/Nrf2
シ ス テ ム に 着 目 し て 検 討 し た 。こ れ ら の 結 果 、シ ュ ワ ン 細 胞 に お い てGA
が 小 胞 体 ス ト レ ス 誘 導 性 ア ポ ト ー シ ス を 引 き 起 こ す と い う 新 規 の 知 見 が 得 ら れ た の で 、以 下 に 詳 述 す る 。8
第 1 章 グ リ コ ー ル ア ル デ ヒ ド (
GA) に よ る ア ポ ト ー シ ス の 誘 導
第 1 節 序 論
糖 尿 病 性 神 経 障 害 は 、糖 尿 病 三 大 合 併 症 の
1
つ で あ り 、最 も 早 期 か つ 高 頻 度 で 発 症 が 認 め ら れ る 。シ ュ ワ ン 細 胞 は 、末 梢 神 経 の 機 能 維 持 に 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る が 、糖 尿 病 性 神 経 障 害 で は シ ュ ワ ン 細 胞 が 傷 害 を 受 け る こ と が 知 ら れ て い る 3 6 )。血 中 グ ル コ ー ス 濃 度 に 依 存 し て 糖 化 反 応 が 起 こ り 、糖 化 反 応 の 亢 進 が シ ュ ワ ン 細 胞 の 傷 害 を 誘 発 し 、糖 尿 病 性 神 経 障 害 の 病 態 形 成 や 進 展 に 結 び つ く と 考 え ら れ て い る 3 7 , 3 8 )。糖 化 反 応 か ら
AGEs
が 生 成 す る 過 程 で は 、幾 つ か の 反 応 性 に 富 む 中 間 体 が 形 成 さ れ る 7 - 9 )。中 間 体 と し てMG
、GO
、3-DG
な ど の ジ カ ル ボ ニ ル 化 合 物 が 広 く 知 ら れ て い る 7 - 9 )。ま た 、GA や グ リ セ ル ア ル デ ヒ ド な ど のα-
ヒ ド ロ キ シ ア ル デ ヒ ド も 挙 げ ら れ る 7 - 9 )。 ジ カ ル ボ ニ ル 化 合 物 に つ い て は 、 糖 尿 病 合 併 症 と の 関 連 性 を 示 す 報 告 が な さ れ て い る 。例 え ば 、細 胞 傷 害 能 は グ ル コ ー ス やAGEs
よ り も ジ カ ル ボ ニ ル 化 合 物 の 方 が 強 い こ と や 6)、 ジ カ ル ボ ニ ル 化 合 物 の 中 で もMG
の 作 用 が 最 も 強 い こ と 3 9)が 報 告 さ れ て い る 。 ま た 、 健 常 人 に 比 べ 糖 尿 病 患 者 で は 、血 中MG
濃 度 が 上 昇 し て い る 3 4)。一 方 、α-
ヒ ド ロ キ シ ア ル デ ヒ ド で あ るGA
は 、ヒ ト の 生 体 濃 度 が0.1
〜1 mM
と 報 告 さ れ て お り3 1 - 3 3 )、 ジ カ ル ボ ニ ル 化 合 物 の 血 中 濃 度 ( 数
µM〜 数 十 µM)
3 4 ) と 比 較 し て 高濃 度 に 存 在 す る 。
GA
は 糖 化 反 応 の み で は な く 、 活 性 化 さ れ た リ ン パ 球 系 細 胞 に お い て ミ エ ロ ペ ル オ キ シ ダ ー ゼ を 介 し て セ リ ン か ら 生 成 さ れ 、 炎 症 時GA
生 成 能 は 上 昇 す る 1 4 )。 し か し な が ら 、GA
が 生 体 に ど の よ う な 影 響 を 及 ぼ し て い る の か は 明 ら か で は な い 。糖 尿 病 性 神 経 障 害 に は シ ュ ワ ン 細 胞 の 傷 害 が 重 要 で あ る こ と は 既 に 述 べ た が 、ラ ッ ト シ ュ ワ ン 細 胞 に お い て
MG
が ア ポ ト ー シ ス を 誘 導 す る こ と が 実 証 さ れ て い る 1 5 )。さ ら に 、MG に よ る ア ポ ト ー シ ス 誘 導 は 、シ ュ ワ ン 細 胞 だ け で は な く 、他 の 培 養 細 胞 系 に お い て も 認 め ら れ る 。例 え ば 、ヒ ト 網 膜 周 皮細 胞 4 0 )、ヒ ト 単 球 性 白 血 病 細 胞 4 1 )、褐 色 細 胞 4 2 )、ヒ ト 大 動 脈 内 皮 細 胞 3 8 ) や
ウ シ 大 動 脈 内 皮 細 胞 4 3 ) な ど が あ る 。ま た 、
AGEs
に よ る ア ポ ト ー シ ス 誘 導 は 、9
ラ ッ ト シ ュ ワ ン 細 胞 を は じ め ヒ ト 線 維 芽 細 胞 4 4 )、 ウ シ 網 膜 周 皮 細 胞 4 5 )、 ヒ ト 尿 細 管 細 胞 4 6 )、 ヒ ト メ サ ン ギ ウ ム 細 胞 4 7 )、 ラ ッ ト 骨 芽 細 胞 4 8 )で 起 こ る 。 こ れ ら の 報 告 か ら 、長 期 間 の 高 血 糖 状 態 に よ り 増 加 し た
MG
やAGEs
に よ っ て 、ア ポ ト ー シ ス が 進 行 し 、糖 尿 病 性 神 経 障 害 を は じ め と す る 糖 尿 病 合 併 症 の 進 展 に 結 び つ く と 考 え ら れ る 。 一 方 、GA
に つ い て は 、 ヒ ト 乳 が ん 細 胞 に お い て ア ポ ト ー シ ス 誘 導 を 示 す 報 告 が 唯 一 あ る も の の 3 5 )、シ ュ ワ ン 細 胞 を 含 め 、ヒ ト 乳 が ん 細 胞 以 外 の 細 胞 に 対 す るGA
の 影 響 は 明 ら か に さ れ て い な い 。 本 研 究 で は 、 シ ュ ワ ン 細 胞 を 用 い 、GA
の 影 響 に つ い て 検 討 し た 。 第 1 章 で は 、 ラ ッ ト シ ュ ワ ン 細 胞 をGA
で 処 理 し 、 そ の 細 胞 傷 害 能 を 評 価 し 、MG
な ど の ジ カ ル ボ ニ ル 化 合 物 と の 比 較 検 討 を 行 っ た 。 続 い て 、GA
が シ ュ ワ ン 細 胞 の ア ポ ト ー シ ス を 誘 導 す る 可 能 性 に つ い て 、ア ポ ト ー シ ス の 形 態 学 的 特 徴 で あ る 細 胞 膜 構 造 の 変 化 、DNA
の 断 片 化 、 ま た 生 化 学 的 特 徴 で あ る カ ス パ ー ゼ の 活 性 化 を 指 標 と し て 検 討 し た 。第 2 節 実 験 方 法
1.
試 薬GA
( 二 量 体 )は 、Sigma Chemical Co.
(St. Louis, MO, USA
)よ り 購 入 し た 。GO( 40%水 溶 液 )は 、関 東 化 学 株 式 会 社( 東 京 )よ り 、3-DG、Hoechst 33258
は 株 式 会 社 同 仁 化 学 研 究 所 ( 熊 本 ) よ り 、MG
(40%水 溶 液 ) は 、 ナ カ ラ イ
テ ク ス 株 式 会 社 ( 京 都 ) よ り 購 入 し た 。CellTiter96
®AQueous One Solution
Proliferation Assay
は 、プ ロ メ ガ 株 式 会 社( 東 京 )よ り 購 入 し た 。パ ラ ホ ル ム ア ル デ ヒ ド(4%
)リ ン 酸 バ ッ フ ァ ー は 、和 光 純 薬 工 業 株 式 会 社( 大 阪 )よ り 購 入 し た 。Annexin-V-FLUOS staining kit
は 、Roche( Indianapolis, IN, USA
) よ り 、 ウ サ ギ 由 来 抗cleaved caspase-3
抗 体 、Alexa Fluor
®488
標 識 抗 ウ サ ギIgG
抗 体 はCell Signaling Technology
(Beverly, MA, USA) よ り 購 入 し た 。
Dulbecco’s modified Eagle’s medium
(DMEM)、 Dulbecco’s phosphate-buffered
saline
(DPBS
)、 ペ ニ シ リ ン-
ス ト レ プ ト マ イ シ ン 溶 液 、L-
グ ル タ ミ ン 溶 液 、 エ チ レ ン ジ ア ミ ン 四 酢 酸 (EDTA
)/
ト リ プ シ ン 溶 液 はLife Technologies
10
Corporation
(Carlsbad, CA, USA
) よ り 購 入 し た 。 ウ シ 胎 児 血 清 (FBS
) はCambrex Co.( East Rutherford, NJ, USA
)よ り 、blocking agent
はGE Healthcare UK Ltd.
(Little Chalfont, UK
) よ り 購 入 し た 。 そ の 他 の 試 薬 は 、 全 て 市 販 の 特 級 品 を 使 用 し た 。2. 細 胞 培 養 と GA
処 理細 胞 は 、大 日 本 住 友 製 薬 株 式 会 社( 大 阪 )か ら 購 入 し た ラ ッ ト シ ュ ワ ン 細 胞 を 使 用 し た 。 培 地 と し て
DMEM
に10% FBS、 2 mM L-
グ ル タ ミ ン 、 ペ ニ シ リ ン(200 U/mL)、ス ト レ プ ト マ イ シ ン( 200 µg/mL)を 添 加 し た も の を 用
い 、CO2イ ン キ ュ ベ ー タ ー(37
℃, 5% CO
2/ 95% air
)内 で 培 養 し た 。本 研 究 で は 、3~ 20
継 代 の シ ュ ワ ン 細 胞 を 用 い た 。GA
処 理 は 、 以 下 の よ う に 行 っ た 。 シ ャ ー レ ( 直 径6 cm
) あ る い は マ ル チ ウ ェ ル プ レ ー ト に シ ュ ワ ン 細 胞 を 播 種 し 、コ ン フ ル エ ン ト 状 態 ま で 培 養 し た 。 培 地 を2% FBS
を 含 むDMEM
に 交 換 後 、GA( 100~ 500 µM
) を 添 加 し た 。CO
2イ ン キ ュ ベ ー タ ー 内 で イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン(0
~24
時 間 )後 、GA を 含 む 溶 液 を 除 き 、 細 胞 をDPBS
で 洗 浄 し て 測 定 に 用 い た 。3.
細 胞 傷 害GA
に よ る 細 胞 傷 害 能 の 評 価 は 、 生 細 胞 数 と 相 関 性 を 示 す テ ト ラ ゾ リ ウ ム 塩3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-5-(3-carboxymethoxyphenyl) -2-(4-sulfophenyl) -2 H-tetrazolium salt
(MTS
) の 還 元 能 お よ び 死 細 胞 数 と 相 関 す る 乳 酸 脱 水 素 酵 素 (LDH
) の 漏 出 を 指 標 と し て 行 っ た 。MTS
還 元 能 : 生 細 胞 のNAD(P)H
デ ヒ ド ロ ゲ ナ ー ゼ やNAD(P)H
に よ っ てMTS
が 還 元 さ れ て 生 成 す る ホ ル マ ザ ン を 指 標 に し た 4 9)。96 well plate に て 培 養 し た シ ュ ワ ン 細 胞 にGA
を 添 加 しCO
2イ ン キ ュ ベ ー タ ー 内 で イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン(0~ 24
時 間 )後 、GA
を 含 む 溶 液 を 除 き 、37
℃ に 加 温 し て お い たDMEM
(
FBS free
)250 µL/well
で 細 胞 を 洗 浄 し た 。 次 い で 、DMEM( FBS free
)100
µL
を 加 え 、CellTiter96
®AQueous One Solution Proliferation Assay
溶 液 を10
µL/well
添 加 し 、37 ℃ で1
時 間 イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン し た 。そ の 後 、490 nm の 吸 光 度 をmicroplate reader
(Labsystems Multiskan Bichromatic、 大 阪 ) に よ
11
り 測 定 し た 。
LDH
漏 出 :12 well plate
に て 培 養 し た シ ュ ワ ン 細 胞 にGA
を 添 加 し 、CO
2イ ン キ ュ ベ ー タ ー 内 で
24
時 間 イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン 後 、 培 地 中 へ 漏 出 し たLDH
の 活 性 ( 細 胞 外LDH
活 性 ) と 細 胞 内 に 残 存 す るLDH
の 活 性 ( 細 胞 内LDH
活 性 )を 測 定 し た 。培 地 の 一 部 を 細 胞 外LDH
活 性 の 測 定 用 試 料 と し た 。 細 胞 を0.1% TritonX-100
含 有PBS( 1 mL)を 加 え て 十 分 に 攪 拌 し て 可 溶 化 し
た 。 遠 心 後 の 上 清 を 細 胞 内LDH
活 性 の 測 定 用 試 料 と し た 。LDH
活 性 は 、 試 料 を0.62 mM
ピ ル ビ ン 酸 ナ ト リ ウ ム 含 有50 mM
リ ン 酸 カ リ ウ ム バ ッ フ ァ ー(
pH 7.5) に 添 加 後 、 0.2 mM NADH
を 加 え て 反 応 を 開 始 し 、340 nm
に お け る 吸 光 度 の 変 化 か ら 求 め た 。LDH
の 漏 出 は 次 の 式 か ら 求 め た 。LDH
漏 出(%
)= 細 胞 外
LDH
活 性/
( 細 胞 外LDH
活 性 + 細 胞 内LDH
活 性 )×100
4. ア ポ ト ー シ ス の 生 化 学 的 変 化
ア ポ ト ー シ ス の 生 化 学 的 特 徴 で あ る カ ス パ ー ゼ
3
の 活 性 化 は 、 抗cleaved caspase-3
抗 体 を 用 い て 測 定 し た 。6 well plate
に て 培 養 し た シ ュ ワ ン 細 胞 に500 µM GA
を 添 加 し 、CO
2イ ン キ ュ ベ ー タ ー 内 で24
時 間 イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン し た 。GA を 含 む 溶 液 を 除 去 し 、DPBS で 細 胞 を 洗 浄 し た 。4% パ ラ ホ ル ム ア ル デ ヒ ド で 細 胞 を 固 定 し 、氷 冷 メ タ ノ ー ル を 用 い て 細 胞 透 過 処 理 を 行 っ た 。 そ の 後 、0.5% blocking agent
で ブ ロ ッ キ ン グ 処 理 を 行 い 、 同 溶 液 で 希 釈 し た 抗cleaved caspase-3
抗 体(1:200
)と 室 温 で1
時 間 イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン し 、次 い で 、Alexa Fluor 488
で 標 識 し た 抗 ウ サ ギIgG
抗 体(1:1,000
)を2
次 抗 体 と し て 、室 温 で30
分 イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン し た 。EDTA/
ト リ プ シ ン 溶 液 を 添 加 し て 細 胞 を 剥 離 し 、遠 心 分 離 し て 上 清 を 除 去 し た 。細 胞 沈 渣 をDPBS
で 懸 濁 し 、 セ ル ス ト レ ー ナ ー チ ュ ー ブ で ろ 過 し た 。Alexa Fluor 488
の 蛍 光 は 、 フ ロ ー サ イ ト メ ー タ ーGallios
(Beckman Coulter Inc., Fullerton, CA, USA
)(FL-1
チ ャ ネ ル :530 nm) を 用 い て 測 定 し た 。
5. ア ポ ト ー シ ス の 形 態 学 的 変 化
ア ポ ト ー シ ス の 形 態 学 的 特 徴 を 細 胞 膜 構 造 の 変 化 お よ び
DNA
の 断 片 化 を 指 標 に 解 析 し た 。12
細 胞 膜 構 造 の 変 化:細 胞 膜 構 造 の 変 化 を 示 す ホ ス フ ァ チ ジ ル セ リ ン の 細 胞 膜 表 面 へ の 露 出 に つ い て 解 析 す る た め に
Annexin-V-FLUOS staining kit
を 使 用 し た 。6 well plate
に て 培 養 し た シ ュ ワ ン 細 胞 にGA
(250, 500 µM) を 添 加
し 、CO
2イ ン キ ュ ベ ー タ ー 内 で イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン(0
~24
時 間 )し た 。GA を 含 む 溶 液 を 除 去 し 、DPBS
で 細 胞 を 洗 浄 後 、Annexin-V-FLUOS
溶 液 を 加 え 、 室 温 で30
分 イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン し 、 共 焦 点 レ ー ザ ー 顕 微 鏡LSM700
(Carl Zeiss, BRD
)( 励 起 波 長:488 nm, 555 nm)お よ び フ ロ ー サ イ ト メ ー タ ー(FL-1
チ ャ ネ ル :530 nm、 FL-2
チ ャ ネ ル :585 nm
) で 測 定 し た 。DNA
の 断 片 化 : ヘ キ ス ト 染 色 に よ り 評 価 し た 。12 well plate
に て 培 養 し た シ ュ ワ ン 細 胞 に500 µM GA
を 添 加 し 、CO
2イ ン キ ュ ベ ー タ ー 内 で24
時 間 イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン し た 。GA
を 含 む 溶 液 を 除 去 し 、DPBS
で 細 胞 を 洗 浄 し た 。 そ の 後 、4%
パ ラ ホ ル ム ア ル デ ヒ ド で 細 胞 を 固 定 し 、 氷 冷 メ タ ノ ー ル を 用 い て 細 胞 透 過 処 理 し た 。Hochest33258 のDPBS
溶 液 を 加 え 、共 焦 点 レ ー ザ ー 顕 微 鏡 ( 励 起 波 長 :405 nm) で 測 定 し た 。
6. 統 計 処 理
デ ー タ は 平 均 値
±標 準 偏 差 で 示 し た 。 F
検 定 に よ る 等 分 散 の 検 定 後 、t
検 定 を 行 い 、p<0.05
を 有 意 と し た 。第 3 節 実 験 結 果
1. シ ュ ワ ン 細 胞 の 細 胞 生 存 率 に 対 す る GA
の 影 響ラ ッ ト シ ュ ワ ン 細 胞 を
GA( 100, 250, 500 µM
) で 処 理 し 、 経 時 的 に 細 胞 生 存 率 を 測 定 し た (Fig. 6)。 細 胞 生 存 率 は MTS
還 元 能 を 指 標 に し た 。MTS
は テ ト ラ ゾ リ ウ ム 塩 で あ り 、生 細 胞 に よ り ホ ル マ ザ ン へ 還 元 さ れ る 4 9 )。GA 100
µM
で は 、細 胞 生 存 率 に 影 響 は 見 ら れ な か っ た 。GA 250 µM
で は 、16
時 間 お よ び24
時 間 に お い て 有 意 な 低 下 が 認 め ら れ た 。GA 500 µM
で は 、16
時 間 以 降 細 胞 生 存 率 は 著 し く 低 下 し た 。 こ れ ら の 結 果 か ら 、GA
は 濃 度 お よ び 時 間 依 存 的 に シ ュ ワ ン 細 胞 の 生 存 率 を 減 少 さ せ る こ と が 明 ら か に な っ た 。Fig. 7
13
に 、 死 細 胞 の 指 標 で あ る
LDH
漏 出 を 測 定 し た 結 果 を 示 す 。GA 500 µM
処 理24
時 間 に お い て 、 顕 著 なLDH
漏 出 が 認 め ら れ た 。 こ れ ら の 結 果 か ら 、 シ ュ ワ ン 細 胞 はGA
に よ り 細 胞 傷 害 を 起 こ す こ と が 明 ら か と な っ た 。Fig. 6
細 胞 生 存 率 に 対 す るGA
の 影 響シ ュ ワ ン 細 胞 を 100 、 250、 500 µM の GA で 0~ 24 時 間 処 理 し た 。 細 胞 生 存 率 は 、
MTS 還 元 能 を 指 標 と し た 。 各 測 定 時 間 に お け る コ ン ト ロ ー ル ( GA 未 処 理 細 胞 ) の 値
を 100%と し て 細 胞 生 存 率 を 表 し た 。 デ ー タ は 、 平 均 値 ±標 準 偏 差 ( n=6) で 示 し て い
る 。 *p<0.05: コ ン ト ロ ー ル と 比 較 。
14
Fig. 7 LDH
の 漏 出 に 対 す るGA
の 影 響シ ュ ワ ン 細 胞 を 100、 250、 500 µM の GA で 24 時 間 処 理 し た 。 LD H 漏 出 ( % ) = 細 胞 外 LDH 活 性 /( 細 胞 外 LDH 活 性 + 細 胞 内 LDH 活 性 ) ×100 と し て 評 価 し た 。 デ ー タ は 、 平 均 値 ± 標 準 偏 差 ( n=3) で 示 し て い る 。 *p<0.05: コ ン ト ロ ー ル と 比 較 。
2. シ ュ ワ ン 細 胞 の 細 胞 生 存 率 に 対 す る ジ カ ル ボ ニ ル 化 合 物 の 影 響
シ ュ ワ ン 細 胞 に 対 す る
GA
お よ び ジ カ ル ボ ニ ル 化 合 物(MG, GO, 3-DG
)の 細 胞 傷 害 能 に つ い て 比 較 検 討 し た 。 シ ュ ワ ン 細 胞 を500 µM
のGA
お よ び ジ カ ル ボ ニ ル 化 合 物 で24
時 間 処 理 後 、 細 胞 生 存 率 を 測 定 し た (Fig. 8)。 細 胞
生 存 率 は 、GA 処 理 で は 有 意 に 低 下 す る の に 対 し 、MG、GO、3-DG 処 理 で は 有 意 な 低 下 は 認 め ら れ な か っ た 。 シ ュ ワ ン 細 胞 に お い て 、GA
は ジ カ ル ボ ニ ル 化 合 物 よ り も 細 胞 傷 害 能 が 強 い と 考 え ら れ る 。15
Fig. 8
細 胞 生 存 率 に 対 す る ジ カ ル ボ ニ ル 化 合 物 の 影 響シ ュ ワ ン 細 胞 を 500 µM の GA ま た は ジ カ ル ボ ニ ル 化 合 物 で 24 時 間 処 理 し た 。 細 胞 生 存 率 は 、 MTS 還 元 能 を 指 標 と し た 。各 測 定 時 間 に お け る コ ン ト ロ ー ル( 未 処 理 細 胞 ) の 値 を 100%と し て 細 胞 生 存 率 を 表 し た 。 デ ー タ は 、 平 均 値 ±標 準 偏 差 ( n=6 ) で 示 し て い る 。 *p<0.05: コ ン ト ロ ー ル と 比 較 。
3. GA
に よ る 細 胞 傷 害 と ア ポ ト ー シ ス と の 関 連 性GA
に よ る シ ュ ワ ン 細 胞 の 細 胞 傷 害 に ア ポ ト ー シ ス が 関 与 す る 可 能 性 に つ い て 検 討 し た 。ア ポ ト ー シ ス の 形 態 学 的 特 徴 で あ る 細 胞 膜 構 造 の 変 化 、DNA
の 断 片 化 、ま た 生 化 学 的 特 徴 で あ る カ ス パ ー ゼ の 活 性 化 を 指 標 と し て 解 析 し た 。初 め に 、ア ネ キ シ ン
V
お よ び ヨ ウ 化 プ ロ ピ ジ ウ ム(PI)の 二 重 染 色 を 行 い 、
細 胞 膜 構 造 の 変 化 に つ い て 、共 焦 点 レ ー ザ ー 顕 微 鏡 お よ び フ ロ ー サ イ ト メ ー タ ー を 用 い て 解 析 し た 。 ア ネ キ シ ンV
お よ びPI
の 二 重 染 色 法 は 、 細 胞 膜 構 造 の 変 化 に 基 づ い て 細 胞 死 様 式 を 判 定 す る 方 法 で あ る 。細 胞 が ア ポ ト ー シ ス に 向 か う 早 期 の 過 程 で は 、ホ ス フ ァ チ ジ ル セ リ ン が 細 胞 膜 表 面 へ 移 行 し 、こ れ に ア ネ キ シ ンV
が 結 合 し て 蛍 光 強 度 の 上 昇 を 示 す 。一 方 、ア ポ ト ー シ ス が 進 行 す る と 、細 胞 膜 構 造 は 崩 壊 す る た め 、PI
が 細 胞 内 へ 侵 入 し て 核 と 結 合 し 、PI
の 蛍 光 強 度 も 増 強 す る 。即 ち 、生 細 胞 で は ア ネ キ シ ンV
、PI の 蛍 光 は 共 に 陰 性 で あ る が 、ア ポ ト ー シ ス の 初 期 段 階( 早 期 ア ポ ト ー シ ス )で は ア ネ キ シ16
ン
V
の 蛍 光 は 陽 性 、PI の 蛍 光 は 陰 性 を 示 し 、ア ポ ト ー シ ス が 進 ん だ 段 階( 後 期 ア ポ ト ー シ ス )で は ア ネ キ シ ンV、PI
の 蛍 光 は 共 に 陽 性 に な る 。シ ュ ワ ン 細 胞 をGA( 100, 250, 500 µM
)で24
時 間 処 理 し 、ア ネ キ シ ンV
お よ びPI
の 二 重 染 色 を 行 い 、 共 焦 点 レ ー ザ ー 顕 微 鏡 を 用 い て 観 察 し た (Fig. 9)。 コ ン ト
ロ ー ル 細 胞 、GA 100 µM
処 理 細 胞 、GA 250 µM
処 理 細 胞 で は 、ア ネ キ シ ンV
、PI
共 に 蛍 光 を 示 さ な か っ た 。 一 方 、 細 胞 傷 害 が 顕 著 で あ っ たGA 500 µM
処 理 細 胞 で は 、 ア ネ キ シ ンV
の み 蛍 光 を 示 す 細 胞 、 ア ネ キ シ ンV
お よ びPI
の 両 蛍 光 を 示 す 細 胞 が 観 察 さ れ た 。こ の 結 果 は 、シ ュ ワ ン 細 胞 をGA 500 µM
で24
時 間 処 理 す る と 、早 期 ア ポ ト ー シ ス 細 胞 と 後 期 ア ポ ト ー シ ス 細 胞 が 混 在 し て い る こ と を 示 唆 し て い る 。Fig. 9
細 胞 膜 構 造 の 変 化 に 対 す るGA
の 影 響シ ュ ワ ン 細 胞 を 100, 250, 500 µM の GA で 24 時 間 処 理 し た 。 ア ネ キ シ ン V お よ び P I の 二 重 染 色 を 行 い 共 焦 点 レ ー ザ ー 顕 微 鏡 に よ り 評 価 し た 。緑 の 蛍 光 は ア ネ キ シ ン V 、 赤 の 蛍 光 は P I の 蛍 光 を 示 す 。
次 に 、
GA
処 理 に よ り 、 生 細 胞 か ら 早 期 ア ポ ト ー シ ス 細 胞 、 後 期 ア ポ ト ー シ ス 細 胞 へ 至 る 経 時 的 変 化 を 追 跡 す る 目 的 で 、シ ュ ワ ン 細 胞 をGA 500 µM
で4
〜24
時 間 処 理 し 、 フ ロ ー サ イ ト メ ー タ ー を 用 い て 検 討 し た 。 フ ロ ー サ イ ト メ ト リ ー 解 析 は 細 胞 集 団 の 蛍 光 強 度 の 分 布 を 評 価 す る も の で あ り 、Fig. 10
は 各 パ ネ ル を 分 割 し て 表 し た 。 生 細 胞 は 領 域A( ア ネ キ シ ン V
陰 性 、PI
陰 性 ) に 、早 期 ア ポ ト ー シ ス 細 胞 は 領 域B( ア ネ キ シ ン V
陽 性 、PI 陰 性 )に 、後 期17
ア ポ ト ー シ ス 細 胞 は 領 域
C( ア ネ キ シ ン V
陽 性 、PI陽 性 )に 分 布 す る と 考 え ら れ る 。GA 未 処 理 の コ ン ト ロ ー ル で は93%の 細 胞 が 領 域 A
に 分 布 し た 。GA(
500 µM
)処 理 で は4〜 16
時 間 に お い て 時 間 依 存 的 に 早 期 ア ポ ト ー シ ス 細 胞 の 増 加 が 認 め ら れ た 。ま た 、16〜24
時 間 で は 生 細 胞 お よ び 早 期 ア ポ ト ー シ ス 細 胞 が 減 少 し 、 後 期 ア ポ ト ー シ ス 細 胞 の 増 加 が 確 認 さ れ た 。Fig. 10
細 胞 膜 構 造 の 変 化 に 対 す るGA
の 影 響シ ュ ワ ン 細 胞 を 500 µM の GA で 24 時 間 処 理 し た 。 ア ネ キ シ ン V お よ び P I の 二 重 染 色 を 行 い フ ロ ー サ イ ト メ ー タ ー に よ り 分 析 し た 。 A 領 域 は 生 細 胞 、 B 領 域 は 早 期 ア ポ ト ー シ ス 、 C 領 域 は 後 期 ア ポ ト ー シ ス 細 胞 と し て 評 価 し た 。
DNA
の 断 片 化 に つ い て 、 ヘ キ ス ト 染 色 を 行 い 、 共 焦 点 レ ー ザ ー 顕 微 鏡 に よ り 測 定 し た (Fig. 11)。 GA( 500 µM, 24
時 間 )処 理 細 胞 で は 、DNA
の 断 片 化 を 示 す 青 色 蛍 光 が 顕 著 に 観 察 さ れ た 。18
Fig. 11 DNA
の 断 片 化 に 対 す るGA
の 影 響シ ュ ワ ン 細 胞 を 500 µM の GA で 24 時 間 処 理 し た 。 DNA の 断 片 化 は 、 Hoechest 33258 を 用 い 、 共 焦 点 レ ー ザ ー 顕 微 鏡 に よ り 評 価 し た 。
次 に 、カ ス パ ー ゼ カ ス ケ ー ド の 下 流 に 位 置 す る ア ポ ト ー シ ス 実 行 酵 素 で あ る カ ス パ ー ゼ
-3
の 活 性 を フ ロ ー サ イ ト メ ー タ ー に よ り 測 定 し た (Fig. 12
)。コ ン ト ロ ー ル 細 胞 と 比 較 し て
GA( 500 µM, 24
時 間 ) 処 理 細 胞 で は 、 カ ス パ ー ゼ-3
の 活 性 化 を 示 す 領 域A
か ら 領 域B
へ の シ フ ト が 認 め ら れ 、 平 均 蛍 光 強 度 は コ ン ト ロ ー ル の 約3
倍 で あ っ た 。以 上 の 結 果 よ り 、
GA
に よ る シ ュ ワ ン 細 胞 の 細 胞 傷 害 に ア ポ ト ー シ ス が 関 与 し て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。19
Fig. 12
カ ス パ ー ゼ-3
に 対 す るGA
の 影 響シ ュ ワ ン 細 胞 を 500 µM GA で 24 時 間 処 理 し た 。 カ ス パ ー ゼ -3 活 性 は 、 抗 カ ス パ ー ゼ -3 抗 体 を 用 い フ ロ ー サ イ ト メ ー タ ー に よ り 測 定 し た 。グ ラ フ は 、 コ ン ト ロ ー ル の 平 均 蛍 光 強 度 を 1 と し た と き の 相 対 値 で 表 し た 。 デ ー タ は 、 平 均 値 ±標 準 偏 差 ( n=3 ) で 示 し て い る 。 *p<0.05: コ ン ト ロ ー ル と 比 較 。
第 4 節 考 察
第 1 章 で は 、
GA
が ラ ッ ト シ ュ ワ ン 細 胞 の 細 胞 死 を 惹 起 し 、 こ の 細 胞 死 に ア ポ ト ー シ ス が 関 与 し て い る こ と を 示 し た 。ラ ッ ト シ ュ ワ ン 細 胞 の 細 胞 死 誘 導 に は250 µM
お よ び500 µM
のGA
処 理 濃 度 を 要 し た(Fig. 6)。本 研 究 で は 、
ラ ッ ト シ ュ ワ ン 細 胞 を10% FBS
含 有DMEM
で 培 養 後 、GA
添 加 時 に 培 地 を2% FBS
含 有DMEM
に 交 換 し 実 験 を 行 っ た 。 こ の 場 合 、GA
添 加 直 後 、GA
が 培 地 中 の 血 清 タ ン パ ク 質 と 相 互 作 用 し 、何 ら か の 影 響 を 及 ぼ し て い る 可 能 性 が 考 え ら れ 、 実 験 に 先 立 ち 、 無 血 清DMEM
を 用 い て 検 討 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、GA
に よ る 細 胞 傷 害 能 に は2% FBS
含 有DMEM
お よ び 無 血 清DMEM
の 条 件 下 で 違 い は 認 め ら れ な か っ た(data not shown)。従 っ て 、GA
と 血 清 タ20
ン パ ク 質 の 相 互 作 用 は 殆 ど な い と 考 え ら れ る 。一 方 、添 加 し た
GA
が ど の 程 度 細 胞 内 に 取 り 込 ま れ る の か は 明 ら か で は な い が 、MG
を 培 養 細 胞 に 添 加 し た 場 合 、 細 胞 内 に 取 り 込 ま れ るMG
は 僅 か 数%で あ る
5 0 )。 現 在 、GA
の シ ュ ワ ン 細 胞 内 へ の 取 り 込 み に つ い て は 検 討 中 で あ る が 、 培 地 中 に 残 存 す るGA
を2,4-
ジ ニ ト ロ フ ェ ニ ル ヒ ド ラ ジ ン を 用 い て 測 定 し た と こ ろ 、取 り 込 み の 程 度 は10%前 後 で あ る と い う 結 果 が 得 ら れ て い る 。こ の こ と か ら 、本 実 験 で は
主 に500 µM
のGA
を 用 い た が 、 細 胞 内 に 取 り 込 ま れ るGA
は か な り 低 濃 度 で あ る と 予 想 さ れ る 。 ま た 、GA
の 生 体 濃 度 は0.1〜 1 mM
と 推 測 さ れ て い る3 1 - 3 3 )。
GA
が 細 胞 内 外 で 生 成 す る こ と を 考 慮 す る と 、 本 研 究 で 用 い たGA
の濃 度 は 生 体 内 に お い て 存 在 し う る 濃 度 と 考 え ら れ る 。
GA
は 濃 度 お よ び 時 間 依 存 的 に シ ュ ワ ン 細 胞 の 細 胞 生 存 率 を 減 少 さ せ た(
Fig. 6
)。 糖 化 反 応 か らAGEs
が 生 成 す る 過 程 で は 、α-
ヒ ド ロ キ シ ア ル デ ヒ ド 化 合 物 と し てGA
だ け で な く グ リ セ ル ア ル デ ヒ ド も 形 成 さ れ る 7 -9 )。 グ リ セ ル ア ル デ ヒ ド の 影 響 に つ い て 検 討 し た 結 果 、シ ュ ワ ン 細 胞 の 生 存 率 に 対 す る 影 響 は 認 め ら れ な か っ た (data not shown
)。 さ ら に 、GA
の 細 胞 傷 害 能 は 、MG
、GO
、3-DG
な ど の ジ カ ル ボ ニ ル 化 合 物 に 比 べ て 強 い こ と が 明 ら か に な っ た (Fig. 8)。 こ れ ら の 結 果 か ら 、 シ ュ ワ ン 細 胞 は 、 糖 化 反 応 の 中 間 体 の な
か で もGA
に 対 す る 感 受 性 が 高 い と 示 唆 さ れ る 。AGEs
は 生 成 経 路 に よ りAGE-1
~AGE-6
の6
種 類 に 分 類 さ れ る 9 )。そ の 中 でGA
由 来 のAGE
はAGE-3
と 示 さ れ る 。α-
ヒ ド ロ キ シ ア ル デ ヒ ド 由 来 のAGEs
は 、 ジ カ ル ボ ニ ル 化 合 物 由 来 のAGEs
よ り も 細 胞 傷 害 能 が 強 い こ と が 報 告 さ れ て い る 3 )。よ っ て 、GA
由 来 のAGE-3
の 細 胞 傷 害 能 は 強 い と 考 え ら れ る 。本 研 究 に お い て 、GA に よ る シ ュ ワ ン 細 胞 の 傷 害 がGA
に よ り 直 接 起 こ る の か 、あ る い はAGE-3
の 生 成 を 経 て 起 こ る の か に つ い て は 明 ら か で は な い 。GA( 500 µM) に よ る シ ュ ワ
ン 細 胞 の 細 胞 傷 害 は16
時 間 お よ び24
時 間 で 顕 著 に 認 め ら れ た が(Fig. 6, 7
)、ヒ ト 軟 骨 細 胞 に お い て
GA
(500 µM) か ら AGE-3
が 生 成 す る ま で に24
〜48
時 間 の イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン 時 間 を 要 す る こ と が 示 さ れ て い る 5 1 )。 お そ ら くGA
に よ る 細 胞 傷 害 に は 、AGE-3
で は な く 、GA
が 直 接 関 与 し て い る と 推 測 さ れ る 。第 1 章 で は 、シ ュ ワ ン 細 胞 の 細 胞 死 が 顕 著 で あ っ た
500 µM GA
で24
時 間21
処 理 し た 条 件 を 主 に 用 い て 、ア ポ ト ー シ ス の 関 与 の 可 能 性 に つ い て 検 討 し た 。
GA
処 理24
時 間 に お い て 、細 胞 膜 構 造 の 変 化 を 示 す ホ ス フ ァ チ ジ ル セ リ ン の 細 胞 表 面 へ の 露 出 (Fig. 9) お よ び DNA
の 断 片 化 (Fig. 11) が 認 め ら れ た 。
併 せ て 、ア ポ ト ー シ ス 実 行 酵 素 と さ れ る カ ス パ ー ゼ-3
が 活 性 化 さ れ る こ と が 明 ら か に な っ た(Fig. 12
)。ア ネ キ シ ンV
お よ びPI
二 重 染 色 法 に よ る フ ロ ー サ イ ト メ ト リ ー 解 析 で は 、GA 処 理24
時 間 ま で に 、生 細 胞 か ら 早 期 ア ポ ト ー シ ス 、 後 期 ア ポ ト ー シ ス 細 胞 へ 至 る 経 時 的 変 化 が 認 め ら れ た (Fig. 10
)。 こ の 経 時 的 変 化 はMTS
還 元 能 に よ り 評 価 し た 細 胞 生 存 率 の 結 果 (Fig. 6)に 一
致 す る 。 さ ら に 、GA
処 理24
時 間 で は 細 胞 膜 の 損 傷 に 伴 うLDH
漏 出 が 認 め ら れ 、GA に よ る 細 胞 死 が 確 認 さ れ た(Fig. 7)。以 上 の 結 果 は 、GA
が シ ュ ワ ン 細 胞 に お い て ア ポ ト ー シ ス を 引 き 起 こ す こ と を 示 唆 し て い る 。本 章 で 得 ら れ た 結 果 をFig. 13
に 示 す 。ヒ ト 乳 が ん 細 胞 を 用 い た 研 究 報 告 で は
GA
がROS
産 生 を 増 大 し 、こ の こ と が ア ポ ト ー シ ス 誘 導 に 関 係 し て い る 可 能 性 を 示 し て い る 。そ の メ カ ニ ズ ム は 次 の 通 り で あ る;GA
は 細 胞 内 でGSH
を 基 質 と し てglyoxalase
に よ り 代 謝 さ れ 、ジ カ ル ボ ニ ル 化 合 物 で あ るGO
とsuperoxide anion radical( O
2・—)に 変 換 さ れ る 。 さ ら に 生 じ たGO
は 直 接 ま た はhydrogen peroxide( H
2O
2) の 増 加 を 介 し て 酸 化 ス ト レ ス に よ る ア ポ ト ー シ ス を 誘 導 す る 。シ ュ ワ ン 細 胞 に お い て 、GO
に よ る 生 存 率 の 低 下 は 認 め ら れ ず (Fig. 8
)、 シ ュ ワ ン 細 胞 と ヒ ト 乳 が ん 細 胞 で はGA
に よ り 誘 導 さ れ る ア ポ ト ー シ ス の メ カ ニ ズ ム が 異 な る こ と が 考 え ら れ る 。ア ポ ト ー シ ス に は ミ ト コ ン ド リ ア 、小 胞 体 、膜 受 容 体 を 介 す る 経 路 な ど が 知 ら れ て い る 。
MG
お よ びAGEs
の 場 合 、 多 種 多 様 な 培 養 細 胞 で ア ポ ト ー シ ス が 認 め ら れ て い る が 、多 く の 報 告 は ミ ト コ ン ド リ ア の 傷 害 が 引 き 金 と な り 、ROS
生 成 が 増 大 し 、ア ポ ト ー シ ス に 至 る メ カ ニ ズ ム を 示 し て い る 。当 研 究 室 に お い て も 、ヒ ト お よ び ウ シ 血 管 内 皮 細 胞 に お い てMG
が ア ポ ト ー シ ス を 誘 導 す る 過 程 で は 、ミ ト コ ン ド リ ア 膜 電 位 の 低 下 に 続 き 、ROS 量 が 上 昇 す る こ と を 確 認 し て い る 4 2 , 4 3 )。一 方 、GA
が ア ポ ト ー シ ス を 誘 導 す る 過 程 に お け る 、 ミ ト コ ン ド リ ア 、小 胞 体 や 膜 受 容 体 に 対 す る 影 響 に つ い て は 、ヒ ト 乳 が ん 細 胞 を 含 め て 全 く 報 告 さ れ て い な い 。22
そ こ で 次 章 で は 、シ ュ ワ ン 細 胞 に お け る
GA
の ア ポ ト ー シ ス 誘 導 機 構 に つ い て 、GA
が ミ ト コ ン ド リ ア 、 小 胞 体 、 膜 受 容 体 に 及 ぼ す 影 響 、ROS
産 生 に 対 す る 影 響 に つ い て 検 討 し た 。Fig. 13 GA
に よ る ア ポ ト ー シ ス の 誘 導23
第 2 章 グ リ コ ー ル ア ル デ ヒ ド (
GA) に よ る 小 胞 体 ス ト レ ス の 誘
導第 1 節 序 論
ア ポ ト ー シ ス は 、ミ ト コ ン ド リ ア の 傷 害 に よ り 引 き 起 こ さ れ る ミ ト コ ン ド リ ア 依 存 性 の 経 路 、小 胞 体 や 膜 受 容 体 を 介 す る ミ ト コ ン ド リ ア 非 依 存 性 の 経 路 に 大 別 さ れ る 。糖 化 反 応 に よ り 生 成 す る
MG
な ど の ジ カ ル ボ ニ ル 化 合 物 やAGEs
に よ り 誘 導 さ れ る ア ポ ト ー シ ス に は 、 ミ ト コ ン ド リ ア 依 存 性 経 路 の 関 与 が 報 告 さ れ て い る 。ROS
の 産 生 や 抗 酸 化 酵 素 の 失 活 に よ り ミ ト コ ン ド リ ア が 傷 害 を 受 け 、 傷 害 を 受 け た ミ ト コ ン ド リ ア か らROS
が 派 生 し 、 酸 化 ス ト レ ス に 起 因 し た ア ポ ト ー シ ス を 生 じ る と 考 え ら れ て い る 。MG
は 、 タ ン パ ク 質 と の 非 酵 素 的 反 応 に よ りMG
ラ ジ カ ル と な り 、こ の ラ ジ カ ル の 自 動 酸 化 に よ っ てO
2・—を 生 成 す る 5 2 )。ま た 、Cu,Zn-superoxide dismutase(SOD)や GSH peroxidase
な ど の 抗 酸 化 酵 素 の 活 性 低 下 を 引 き 起 こ す 5 3 )。シ ュ ワ ン 細 胞 を 用 い た 研 究 報 告 で は 、MG に よ る 細 胞 内ROS
の 増 大 1 4 )、AGEs に よ る ミ ト コ ン ド リ ア の 傷 害 が 示 さ れ て い る 1 9 )。 他 の 培 養 細 胞 系 に お い て もROS
の 増 大 や ミ ト コ ン ド リ ア の 傷 害 を 示 す 報 告 が な さ れ て お り 、こ れ ら の 報 告 は 、い ず れ もMG
やAGEs
が 酸 化 ス ト レ ス を 介 し て ア ポ ト ー シ ス を 誘 導 す る メ カ ニ ズ ム を 提 唱 し て い る 1 5 -1 8 )。第 1 章 で は 、
GA
が シ ュ ワ ン 細 胞 の ア ポ ト ー シ ス を 誘 導 す る こ と を 示 し た 。 ヒ ト 乳 が ん 細 胞 の 場 合 、GA に よ る ア ポ ト ー シ ス にROS
の 関 与 が 示 唆 さ れ てい る 3 5 )。 し か し 、
GA
が ミ ト コ ン ド リ ア の 傷 害 を 起 こ し て い る の か 、 あ る いは ミ ト コ ン ド リ ア 非 依 存 性 経 路 で あ る 小 胞 体 や 膜 受 容 体 を 介 し て ア ポ ト ー シ ス を 生 じ て い る の か は 不 明 で あ る 。
近 年 、小 胞 体 ス ト レ ス 応 答 経 路 の 分 子 機 構 が 次 々 と 明 ら か に な り 、糖 尿 病 を は じ め 、が ん 、炎 症 性 疾 患 、パ ー キ ン ソ ン 病 な ど の 神 経 変 性 疾 患 な ど 多 様 な 疾 患 の 病 態 形 成 へ の 関 与 が 示 唆 さ れ て い る 5 4 , 5 5 )。最 近 で は 、2 型 糖 尿 病 患 者 に お い て 、膵
β
細 胞 の 生 細 胞 数 が 減 少 し て い る こ と が 明 ら か に な っ て き てお り 5 6 )、膵