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Care Support of Home Helpers and Facilities Care Workers for the Serious Handicapped Person who need Medical Care

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Academic year: 2021

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医療的ケアを必要とする重度障害者に対するホームヘルパー と施設支援員による支援

―東京、神奈川、愛知、大阪の調査からー

春見静子

Care Support of Home Helpers and Facilities Care Workers for the Serious Handicapped Person who need Medical Care

-Research in Tokyo, Kanagawa, Aichi and Osaka-

Shizuko Harumi

要旨: 厚生労働省が設置した、「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方に 関する検討会」(座長大島伸一)は、2010 年 12 月に中間まとめを発表し、たんの吸引などを介護サ ービス事業者の業務として実施できるようにしていきたいという見解をまとめた。このように、制 度の見直しが現実味を帯びてきたこの時に、在宅の重度障害者と家族を直接に支援している東京、

神奈川、愛知、大阪のホームヘルパーと通所施設支援員を対象として、医療的ケアについてどのよ うに考え、実際に何を行い、何を望んでいるかについてアンケート調査を行い、その結果を分析し た。実際に医療的ケアを行っているものは施設支援員では 65%、ホームヘルパーでは 57%であり、

いずれも半数以上であった。かれらの多くは医療的ケアを行う必要性や意義については認識しつつ も、現状の不備についても訴えていた。もっとも切実な課題として、「研修の不十分さ」があげられ た。また医師や看護師などの医療職との連携や協力が不可欠であることも示された。

Keywords ::医療的ケア、 重度障害者、 ホームヘルパー、 施設支援員、 研修制度 Mecical Care, Serious Handicapped Person, Home Helper, Facilities Care Worker, Training Course

はじめに

医療的ケアを必要とする重度障害者が地域で生活を送るためには、それぞれのライフステージに 応じた日中の生活の場が用意されていることが必要である。特別支援学校は 18 歳までの子どもたち が学び、人々と交わる重要な場所であるが、人工呼吸器を装着していたり、頻繁にたんの吸引を行 わなければならない児童の場合には、看護師の配置や送迎の問題などがあり、通学したくても通学 できずに、訪問教育を受けなければならないというケースもまだ少なくない。しかし、家族の強い 要望と特別支援学校の教師たちの熱意により、その歩みはゆっくりではあるが、道は少しずつ開け てきている。特別支援学校で友達や教師と楽しい時を過ごした子どもたちが次に通うところは、主 に作業所や訓練施設などの社会福祉施設であり、そこでは彼らの受け入れはスムーズにいっている のだろうか。医療的ケアが必要であるということで、その利用が大きく制限されてはいないだろう か。施設ケアの主な担い手である施設支援員は医療的ケアを必要とする利用者の受け入れと、施設 における医療的ケアの実施についてどのような考えを持ち、医療的ケアの実施にどの程度携わって

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いるのだろうか。

呼吸器の管理やたんの吸引や経管栄養の処置などは医療法が定めるところの医療行為であり、医 療職が原則行うべきもので、特別支援学校の教師や施設支援員やホームヘルパーなどの非医療職は 行うべきではないというのが通常の理解である。しかし、障害者と一緒に生活している家族は、医 療機関での訓練を受けた後に、障害者が在宅で過ごしている間は昼夜を問わすかなり難しい医療的 ケアを自分たちの手で行っている。そしてそれは違法ではない。在宅生活とはずっと家に閉じこも っている生活ではなくて、年齢相応な場所と方法で地域の中でできるだけ当たり前の生活を送るこ とを意味している。そうであれば医療的ケアは医療行為であると同時に生活支援行為でもある。

このような理解から、厚生労働省は「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方 に関する検討会」(座長大島伸一)を設置して、その中間まとめが 2010 年 12 月に提出された。検討 会はたんの吸引などを介護サービス事業者の業務として実施できるように位置づけていきたいとい う確認のもとに、そのための条件を提案した。

筆者は 2008 年、2009 年の 2 年間にわたり厚生労働科学研究費補助事業として「医療的ケアを必 要とする障害者と家族への支援策に関する調査研究」を行って、医療的ケアが必要な障害者の家族 の状況を調査し、切実な訴えに耳を傾けてきた。主たる介護者はほとんどが母親であったが、その 介護労働の過酷さと片時も傍から離れられないという緊張からくる心理的な負担は想像を超えるも のがあった。しかも、病気や障害が重度化したことにより気管切開や呼吸器の装着がなされて、医 療的ケアが必要になったとたんに、施設に医療的ケアのできる職員がいないという理由でそれまで 利用できていたサービスを続けて利用することができなくなったという悲痛な訴えを聞いてきた。

また、重度障害者の多くは、加齢とともに障害が重くなるので、40 代、50 代の障害者を介助する高 齢な母親の負担がどれほどのものかについても家庭訪問をした際に目のあたりにしてきた。

1 調査の方法

(1)調査の目的

重度障害者が地域の中で当たり前の生活をしたいという要求と、重度障害者の家族が当たり前の 生活が全くできていないという現状を改善するために、直接に障害者と家族を支援しているホーム ヘルパーや施設支援員がこの事態をどのようにとらえ、医療的ケアにについてどこまでかかわり、

どんな実践を行っているかを調べることにより、まさに今、制度の見直しの必要が求められている 時に、そのための参考資料になることを期待して今回の調査を行った。本調査の目的は次の2点で ある。

① 医療的ケアを必要とする障害者が地域生活を送る上でもっとも必要とされるホームヘルプサ ービスと通所施設サービスの最前線にあるホームヘルパーと施設支援員のいわゆる非医療職が、利 用者のニーズと法律の制限との狭間の中で、どのように考え、行動しているかを明らかにする。

② 非医療職が医療的ケアに参加するための必須条件を明らかにする(医療職との連携、契約、

研修制度等)

(2)検討委員会

この調査は、独立行政法人福祉医療機構「長寿・子育て・障害者基金」の助成を受けて行った。

調査にあたり、「在宅での医療的ケアの人材に関する研究」検討委員会(委員長 筆者)を設置し た。委員は、東京、神奈川、愛知、大阪の地域バランスを考えた代表者 14 名で、医師 4 名、大学関 係者 3 名、特別支援学校教諭 1 名、障害者施設関係者 2 名、ホームヘルパー協会代表2名、障害者 家族会代表 1 名で構成された。

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(3) 調査の方法

郵送によるアンケート調査を行った。東京、神奈川、愛知、大阪の4地区において、医療的ケア を実施しているか、関心がありそうな訪問介護事業所(ホームヘルパーステーション)と通所施設 をワムネットで検索し、前もって電話をして了承を得た後に、アンケート用紙を送付し、回収した。

調査期間は 2009 年 10 月 20 日―12 月7日で、回収率は 46.6%であった(表1)。

1 配布数と回収率

合計 東京 神奈川 愛知 大阪

事業所数 125 38 21 32 34

配布枚数 1398 296 308 321 473

回収数 651 157 144 155 195

回収率 46.6% 53.0% 46.7% 48.3% 41.2%

(4) 結果の集計

調査結果は、質問項目に沿って回答者全体を、ホームヘルパーと支援員ごとに単純集計し、重要 と考えられる項目については、クロス集計をした。

2 調査結果の概要

(1) 回答者の属性

有効回答者数 651 人の内訳は、ホームヘルパー329 人、施設支援員 322 人であった。

① 勤務地は 東京 24.1%、神奈川 22.1%、愛知 23.8%、大阪 30.0%で、大阪の割合が少し高 いが、地域の偏りは大きくないと考えられる。

② 性別と年齢では、男性が 33.0%、女性が 67%であった。 年齢に関しては 20 代から 50 代ま で均等に分布しているが、施設支援員は 30 代が最も多いのに対して、ホームヘルパーは、50 代と 60 代の合計が 27.2%で高い割合を占めている。

③ 所持している資格

2 所持している資格

カテゴリー名 全体 ( %) ホームヘルパー( %) 施設支援員 ( %) ホームヘルパー2級 368 (56.5) 238 (66.5) 130 (44.4)

ホームヘルパー1級 47 ( 7.2) 42 (11.7) 5 ( 1.7)

介護福祉士 234 (35.9) 162 (45.3) 72 (24.6)

社会福祉士 69 (10.6) 24 ( 6.7) 45 (15.4)

精神保健福祉士 0 ( 0.0) 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)

看護師 31 ( 4.8) 11 ( 3.1) 20 ( 6.8)

介護支援専門員 40 ( 6.1) 26 ( 7.3) 14 ( 4.8)

作業療法士 1 ( 0.2) 0 ( 0.0) 1 ( 0.3)

理学療法士 3 ( 0.5) 1 ( 0.3) 2 ( 0.7)

その他の資格 164 (25.2) 67 (18.7) 97 (33.1)

不明 33 ( 5.1) 3 ( 0.8) 30 (10.2)

全体 651 (100.0) 358 (100.0) 293 (100.0)

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所持している資格は、ホームヘルパー2 級資格が全体の 56.6%で最も多い。介護福祉士がそれに続 いて 35.9%であり、ホームヘルパー、施設支援員いずれもこの二つの資格がベースになっている。

施設支援員の場合には社会福祉士は 15.4%、看護師は 6.8%、その他の資格(社会福祉主事や保育 士が予想される)も 23.1%含まれている(表2)。

④ 経験年数

1年未満の人が 9%である一方で、10 年以上継続して勤務している人も 24%いる。とくにホーム ヘルパーは支援員に比べて経験年数が長い人が多い(表 3)。

表3 経験年数

カテゴリー名 全体 ( %) ホームヘルパー( %) 施設支援員 ( %)

1年未満 58 ( 8.9) 30 ( 8.4) 28 ( 9.6)

1年以上3年未満 95 (14.6) 38 (10.6) 57 (19.5)

3年以上5年未満 107 (16.4) 68 (19.0) 39 (13.3)

5年以上10年未満 228 (35.0) 149 (41.6) 79 (27.0)

10年以上 155 (23.8) 67 (18.7) 88 (30.0)

不明 8 ( 1.2) 6 ( 1.7) 2 ( 0.7)

全体 651 (100.0) 358 (100.0) 293 (100.0)

(2)医療的ケアの実施の状況

① 医療的ケアの実施状況

医療的ケアの経験があると答えたのは 651 人中 414 人で 63.6%であり、ホームヘルパーは 56.7%

で、施設支援員は 65.5%でやや支援員の方の割合が高い。いずれについても今回の調査でかなり割 合が高いのは、調査の依頼の段階で、医療的ケアを積極的に行っている事業所が多く選ばれたため であると思われる。一般的な状況でみれば、それよりもかなり低くなることが予想される(表4)。

表4 医療的ケアの実施の経験

カテゴリー名 全体 ( %) ホームヘルパー( %) 施設支援員( %)

ある 414 (63.6) 222 (62.0) 192 (65.5)

ない 229 (35.2) 128 (35.8) 101 (34.5)

不明 8 ( 1.2) 8 ( 2.2) 0 ( 0.0)

全体 651 (100.0) 358 (100.0) 293 (100.0)

② 医療的ケアを必要とする利用者の有無

ホームヘルパーが担当している利用者の中に医療的ケアの必要な重度障害者がいるかをたずねて いる。回答者の中で、医療的ケアを必要とする重度障害者を担当しているものは約 7 割いる。支援 員の勤務する施設に医療的ケアの障害者がいると答えたものは 9 割にのぼっている(表5,6)。

(5)

表5 担当する利用者の中に医療的ケアの必要な人がいるか(ホームヘルパー)

カテゴリー名 ホームヘルパー( %)

いる 277 (77.4)

今はいないが前にはいた 30 ( 8.4)

一度もいなかった 23 ( 6.4)

不明 28 ( 7.8)

非該当 0 ( 0.0)

全体 358 (100.0)

表6 施設に医療的ケアを必要とする利用者がいるか(施設支援員)

カテゴリー名 施設支援員( %)

いる 263 (89.8)

今はいないが以前はいた 6 ( 2.0)

いない 17 ( 5.8)

不明 7 ( 2.4)

非該当 0 ( 0.0)

全体 293 (100.0)

③ 実施した医療的ケアの種類

実施した医療的ケアの種類では、たんの吸引がもっとも多く、ホームヘルパーと支援員がともに 5 割を超えていて、次が経管栄養で、4 割程度、呼吸器の管理はホームヘルパーの方がやや多く、3 割が経験している。たんの吸引の内容では、気管内吸引を行っている者がホームヘルパーでは 39.9%、支援員では 24.9%となっている(表7)。

表7 実施した医療的ケアの種類

カテゴリー名 全体 ( %) ホームヘルパー( %) 施設指導員( %) 吸引 349 (53.6) 191 (53.4) 158 (53.9) 経管栄養 266 (40.9) 137 (38.3) 129 (44.0) 呼吸管理 181 (27.8) 113 (31.6) 68 (23.2)

導尿 66 (10.1) 32 ( 8.9) 34 (11.6)

その他 111 (17.1) 55 (15.4) 56 (19.1)

不明 0 ( 0.0) 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)

非該当 237 (36.4) 136 (38.0) 101 (34.5) 全体 651 (100.0) 358 (100.0) 293 (100.0)

④ 医療的ケアを実施した場所

医療的ケアを実施している場所を見ると、ホームヘルパーが通所施設で行っているものが 14.5%

であるのに対して、施設の支援員の 11.6%は利用者の自宅で医療的ケアを行っている。外出先では いずれも 2 割程度が行っている。このことから、利用者の在宅生活を支える援助者としてのホーム ヘルパーと支援員はともに医療的ケアを実施する場所を在宅、施設と限定せずに、利用者のニーズ に応じて柔軟に活動の範囲を広げていることが分かる(表8)。

(6)

表8 医療的ケアを実施した場所

カテゴリー名 全体 ( %) ホームヘルパー( %) 施設支援員( %)

利用者の自宅 207 (31.8) 173 (48.3) 34 (11.6)

通所施設内 212 (32.6) 52 (14.5) 160 (54.6)

グループホーム等居住施設内 92 (14.1) 41 (11.5) 51 (17.4)

外出先 146 (22.4) 70 (19.6) 76 (25.9)

その他 23 ( 3.5) 12 ( 3.4) 11 ( 3.8)

送迎バスの中 89 (13.7) 23 ( 6.4) 66 (22.5)

不明 1 ( 0.2) 1 ( 0.3) 0 ( 0.0)

非該当 237 (36.4) 136 (38.0) 101 (34.5)

全体 651 (100.0) 358 (100.0) 293 (100.0)

⑤ 利用者と家族からの医療的ケアの依頼と依頼に応じられなかった経験

回答者のうち 351 人(53.9%)が本人や家族からの依頼を受けて医療的ケアを実施したと答えて いる。

医療的ケアの実施の経験のある者が 414 人(63.6%)であるということからみても、利用者や家族 からの依頼が多いということが分かる(表9)。

表9 利用者や家族から医療的ケアの依頼を受けた経験 カテゴリー名 全体 ( %) ホームヘルパー( %) 施設支援員( %) ある 351 (53.9) 203 (56.7) 148 (50.5) ない 279 (42.9) 141 (39.4) 138 (47.1)

不明 21 ( 3.2) 14 ( 3.9) 7 ( 2.4)

全体 651 (100.0) 358 (100.0) 293 (100.0)

一方、本人や家族からの依頼に応じられなかったという経験をもつものも 20.2%いて、そのよう なことはないと答えた 38.7%よりは少ないが、回答者の約半数の 46.1%が回答していない(非該当)

ので、それを除くと 35.9%が依頼に応じられなかった経験をもっている(表 10)。

10 利用者や家族からの依頼に応じられなかった経験

カテゴリー名 全体 ( %) ホームヘルパー( %) 施設支援員( %)

ある 126 (19.4) 73 (20.4) 53 (18.1)

ない 194 (29.8) 110 (30.7) 84 (28.7)

不明 非該当

31 300

( 4.8) (46.1)

20 155

( 5.6) (43.3)

11 145

( 3.8) (49.5) 全体 651 (100.0) 358 (100.0) 293 (100.0)

⑥ 医療的ケアを実施する理由と、実施しない理由

医療的ケアを行う理由について回答しているものは、全回答者数 651 人中、414 名である。その 414 人についてみてみると、280 人(67.6%)が「利用者自身にとって意義ある行為だと思うから」

と答え、262 人(63.2%)は、「事業所が受けている仕事だから」と答え、さらに 50%が「家族の要

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望にこたえたいから」と答えている。ホームヘルパーも支援員も共に「医療的ケアが利用者に必要 かつ有意義な行為と考えている」という回答が最も多い(表 11)。

11 医療的ケアを実施する理由

カテゴリー名 全体 ( %) ホームヘルパー( %) 施設支援員( %) 事務所や施設が受けている仕事だから 252 (38.7) 130 (36.3) 122 (41.6) 利用者自身にとって意義のある行為と思うから 280 (43.0) 140 (39.1) 140 (47.8) 家族の強い要望に応えるようにと思うから 178 (27.3) 94 (26.3) 84 (28.7) 研修を受け不安なく仕事としてできるから 112 (17.2) 62 (17.3) 50 (17.1)

やむを得ずに医療的ケアを実施した 53 ( 8.1) 26 ( 7.3) 27 ( 9.2)

その他 21 ( 3.2) 10 ( 2.8) 11 ( 3.8)

不明 5 ( 0.8) 4 ( 1.1) 1 ( 0.3)

非該当 237 (36.4) 136 (38.0) 101 (34.5)

全体 651 (100.0) 358 (100.0) 293 (100.0)

一方で、医療的ケアを実施しない理由を答えているのは、229 人とさらに少ないが、理由として 最も多いのが、「研修を受けていないし、事業所から指示されていない」というもので 119 人、回答 者の 52.2%を占めている。「事業所が障害者を受け入れていない」という理由が次に多く、回答者 の 19.2%である(表 12)。

12 医療的ケアを実施しない理由

カテゴリー名 全体 ( %) ホームヘルパー( %) 施設支援員( %)

事業所や施設で受け入れていないから 44 ( 6.8) 32 ( 8.9) 12 ( 4.1)

研修を受けていないし事業所や施設からの指示も受けていないから 119 (18.3) 64 (17.9) 55 (18.8)

研修を受けてはいるが事業所や施設から指示を受けていないから 17 ( 2.6) 8 ( 2.2) 9 ( 3.1) 障害者本人や家族から依頼を受けたことがないから 40 ( 6.1) 29 ( 8.1) 11 ( 3.8)

その他 24 ( 3.7) 9 ( 2.5) 15 ( 5.1)

不明 26 ( 4.0) 10 ( 2.8) 16 ( 5.5)

非該当 422 (64.8) 230 (64.2) 192 ( 65.5)

全体 651 (100.0) 358 (100.0) 293 (100.0)

(3)ホームヘルパーと支援員の医療的ケアについての意見

① 実施について賛成か反対か

13 ホームヘルパーや施設支援員が医療的ケアをすることに賛成か反対か

カテゴリー名 全体 ( %) ホームヘルパー( %) 施設支援員( %) 基本的に賛成である 356 (54.7) 212 (59.2) 144 (49.1) 基本的に反対である 53 ( 8.1) 31 ( 8.7) 22 ( 7.5) どちらともいえない 223 (34.3) 103 (28.8) 120 (41.0)

不明 19 ( 2.9) 12 ( 3.4) 7 ( 2.4)

全体 651 (100.0) 358 (100.0) 293 (100.0)

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ホームヘルパーや支援員などの非医療職が医療的ケアを行うことについての意見では、賛成が反 対を大きく上回っている。しかし、どちらともいえないと答えたものも 30%程度いる。それは、反 対ではないが、現状では困難だという認識によるものと推測される。支援員とホームヘルパーの比 較では、ホームヘルパーの方が積極的で、賛成が 17%程上回っている(表 13)。

② ホームヘルパーや支援員が医療的ケアを行う意義と課題

非医療職が医療的ケアを行う意義として最も高い支持を得ているのは、「利用者の活動や生活の場 が広がる」と「家族の負担の軽減になる」であり、ともに7割近い回答になっている。医療的ケア を生活支援行為と考えているものも5割を超えている(表 14)。

14 非医療職が医療的ケアを行うことの意義

カテゴリー名 全体 ( %) ホームヘルパー( %) 施設支援員( %) 治療重視から生活重視への転換で必要である 250 (38.4) 142 (39.7) 108 (36.9) 医療的ケアは生活支援行為である 344 (52.8) 190 (53.1) 154 (52.6) 利用者の活動や生活の場が広がる 445 (68.4) 222 (62.0) 223 (76.1)

利用者のQOLの向上に役立つ 345 (53.0) 195 (54.5) 150 (51.2)

利用者をトータルに支援できる 321 (49.3) 185 (51.7) 136 (46.4)

利用者と信頼関係を築くために重要である 151 (23.2) 86 (24.0) 65 (22.2) 結果として家族の負担が軽減する 459 (70.5) 264 (73.7) 195 (66.6)

その他 19 ( 2.9) 15 ( 4.2) 4 ( 1.4)

不明 32 ( 4.9) 20 ( 5.6) 12 ( 4.1)

全体 651 (100.0) 358 (100.0) 293 (100.0)

一方、医療的ケアを行う上で一番強く認識されている課題は、「医療的ケアに関する研修が不十 分である」ということである。全体で 69.3%であり、ホームヘルパーも施設支援員も同じような割 合を示している。これは、非医療職が医療的ケアを行うために、研修が不可欠であるということを 彼ら自身が一番よく分かっているということの証拠であろう。その他の課題としては、「業務として 位置づけられていない」や「免責や賠償保険制度がない」が、いずれも5割を超えている。これら は、医療的ケアが合法的な行為として位置づけられ、そのための制度の整備が必要であるというこ とを意味するものではないだろうか(表 15)。

15 非医療職が医療的ケアを行う場合の課題

カテゴリー名 全体 ( %) ホームヘルパー( %) 施設支援員( %) 医療的ケアがホームヘルパーや施設支援員の業務とし

て位置づけられていない 358 (55.0) 207 (57.8) 151 (51.5) 医療的ケアについての加算がない 195 (30.0) 112 (31.3) 83 (28.3) 非医療職のための医療的ケアの研修が不十分である 451 (69.3) 246 (68.7) 205 (70.0) 訪問看護事業所または看護師の協力が得られにくい 133 (20.4) 78 (21.8) 55 (18.8) 免責制度や賠償保険制度が未整備である 355 (54.5) 192 (53.6) 163 (55.6)

その他 32 ( 4.9) 15 ( 4.2) 17 ( 5.8)

不明 57 ( 8.8) 35 ( 9.8) 22 ( 7.5)

全体 651 (100.0) 358 (100.0) 293 (100.0)

(9)

(4) 医療的ケアの研修について

非医療職が医療的ケアを行う上での一番大きい課題としてあげられたのが、「研修が不十分」とい うことであった。ではどのような研修を彼らは求めているのだろうか。

① 内部研修と外部研修への参加経験

ホームヘルパー事業所も通所施設も、どちらも 7 割程度が施設内での研修の機会を設けている。

外部での研修については、参加者は3割以下で、内部の研修に比べて低い。また研修会につい ての情報をもっていないものが3割、情報があっても参加していないものは4割を占めている。外 部研修に参加するためには、本人の意欲だけでは不十分であり、職場の理解や参加費用や欠勤など の問題があり、希望してもできないということもあるのではないだろうか(表 16)。

16 外部研修への参加経験

カテゴリー名 全体 ( %) ホームヘルパー( %) 施設支援員( %)

研修会に参加したことがある 155 (23.8) 87 (24.3) 68 (23.2)

研修会の開催は知っているが参加したことがない 267 (41.0) 135 (37.7) 132 (45.1)

研修会があることを知らない 210 (32.3) 122 (34.1) 88 (30.0)

不明 19 ( 2.9) 14 ( 3.9) 5 ( 1.7)

全体 651 (100.0) 358 (100.0) 293 (100.0)

② 研修会への要望

17 外部研修への参加の意向

カテゴリー名 全体 ( %) ホームヘルパー( %) 施設支援員( %) 受けたい 455 (69.9) 253 (70.7) 202 (68.9)

受けたくない 9 ( 1.4) 6 ( 1.7) 3 ( 1.0)

どちらともいえない 168 (25.8) 86 (24.0) 82 (28.0)

不明 19 ( 2.9) 13 ( 3.6) 6 ( 2.0)

全体 651 (100.0) 358 (100.0) 293 (100.0)

18 研修で学びたいこと

カテゴリー名 全体 ( %) ホームヘルパー( %) 施設支援員( %)

医療的ケアの歴史と考え方 74 (11.4) 42 (11.7) 32 (10.9)

医療的ケアの心構え 142 (21.8) 79 (22.1) 63 (21.5)

医療的ケア実施に必要な人体器官の基礎知識 291 (44.7) 147 (41.1) 144 (49.1) 医療的ケア内容についての具体的知識 417 (64.1) 211 (58.9) 206 (70.3)

実習・体験 356 (54.7) 202 (56.4) 154 (52.6)

その他 9 ( 1.4) 7 ( 2.0) 2 ( 0.7)

不明 33 ( 5.1) 24 ( 6.7) 9 ( 3.1)

全体 651 (100.0) 358 (100.0) 293 (100.0)

外部の研修会への参加希望は 70%程度で高い。実際に参加することが困難であったとしても、参

(10)

加の必要性を感じているのは事実である。また、内容に関しては、「具体的な知識」や「実習・体験」

といった、手技を含む技術的なものへの要望が高い(表 17、18)。

(5) 医療職との連携について

① ホームヘルパー事業所が訪問看護ステーションを併設しているか、通所施設に看護師がいる

ホームヘルパー事業所がヘルパーステーションと訪問看護ステーションの両方を備えていると、

医療的ケアを必要とする利用者にとっては非常に心強い。障害が重い場合にはヘルパーと看護師が ペアで訪問することを家族は強く希望している。しかし、実際には併設している事業所は 14%に満 たない。一方、通所施設では、重度の障害者を受け入れる場合には看護師は 90%以上雇用されてい る(表 19,20)。

19 ホームヘルパー事業所に訪問看護ステーションが併設されているか

カテゴリー名 ホームヘルパー( %)

併設している 49 (13.7)

併設していない 264 (73.7)

わからない 19 ( 5.3)

不明 26 ( 7.3)

非該当 0 ( 0.0)

全体 358 (100.0)

20 施設に看護師が配置されているか

カテゴリー名 施設支援員( %)

看護師がいる 271 (92.5)

看護師がいない 18 ( 6.1)

不明 4 ( 1.4)

非該当 0 ( 0.0)

全体 293 (100.0)

② 通所施設において医療的ケアを行う職員

通所施設において医療的ケアを看護師のみで行うと回答したものが 42%であったのに対して、看 護師の指導を受けながら支援員も行う 48%や、研修を受けた支援員が行う 47%はいずれもそれよりも 高い割合を示していて、支援員がかなり日常的に医療的ケアにかかわっている現実が明らかになっ た(表 21)。

そのことは、1施設平均で 9.3 人の医療的ケアを必要とする利用者がいるのに対して、看護師の 数は常勤看護師の場合は、1施設の平均が 1.4 人、最大値は 6.0 人、非常勤看護師の場合は、平均 が 1.7 人、最大値は 9.0 人であることからも理解できる(表 22,23)。

(11)

21 施設で医療的ケアを担当する職員は誰か

カテゴリー名 施設支援員( %)

看護師のみが行う 123 (42.0)

看護師の指導のもとに支援員も行う 141 (48.1)

研修を受けた支援員が行う 137 (46.8)

担当している支援員が行う 24 ( 8.2)

担当する職員はとくに決まっていない 18 ( 6.1)

その他 9 ( 3.1)

不明 8 ( 2.7)

非該当 0 ( 0.0)

全体 293 (100.0)

22 施設を利用する医療的ケアの必要な障害者

施設における医療的ケアの必要な障害者数 施設支援員( %)

1人 38 (13.0)

2人 28 ( 9.6)

3人 17 ( 5.8)

4人 23 ( 7.8)

5人 15 ( 5.1)

6人 18 ( 6.1)

7人 4 ( 1.4)

8人 7 ( 2.4)

9人 3 ( 1.0)

10~19 人 35 (11.9)

20 人以上 33 (11.3)

不明 42 (14.3)

非該当 30 (10.2)

全体 293 (100.0)

23 施設に配置されている看護師(常勤・非常勤看護師)

カテゴリー名 常勤看護師( %) 非常勤看護師( %)

0人 60 (20.5) 56 (19.1)

1人 94 (32.1) 80 (27.3)

2人 53 (18.1) 31 (10.6)

3人 17 ( 5.8) 40 (13.7)

4人 11 ( 3.8) 29 ( 9.9)

5人 7 ( 2.4) 5 ( 1.7)

6人以上 1 ( 0.3) 2 ( 0.7)

不明 28 ( 9.6) 28 ( 9.6)

非該当 22 ( 7.5) 22 (7.5)

全体 293 (100.0) 293 (100.0)

(12)

③ 医療的ケアを実施するにあたって整備している事項

法的には正式に認められていない医療行為を非医療職が実施するにあたり、ヘルパー事業所や施 設はどのような事項を整備し、どのような条件を設けているであろうか。

利用者と契約を結んでいるのはホームヘルパーでは5割、支援員では6割程度あり、研修に関 しては事業所が研修を行っているのは5割程度、また、主治医や訪問看護師による研修は4割程度 となっている。ホームヘルパーで訪問看護師と連携していると答えたものは3割を超えている。ホ ームヘルパーで医療的ケアの記録の整備が26.3%であるというのは問題であり、改善が必要である

(表24)。

24 医療的ケアを実施するにあたり整備していること

カテゴリー名 全体 ( %) ホームヘルパー( %) 施設支援員( %)

利用者との契約 348 (53.5) 177 (49.4) 171 (58.4)

主治医からの依頼書 143 (22.0) 48 (13.4) 95 (32.4)

主治医による研修 119 (18.3) 46 (12.8) 73 (24.9)

事業所による研修 313 (48.1) 158 (44.1) 155 (52.9)

訪問看護師による研修 132 (20.3) 94 (26.3) 38 (13.0)

家族および本人による指導 275 (42.2) 162 (45.3) 113 (38.6)

緊急時の主治医との連携 229 (35.2) 125 (34.9) 104 (35.5)

訪問看護師との連携 156 (24.0) 112 (31.3) 44 (15.0)

医療的ケアの記録 206 (31.6) 94 (26.3) 112 (38.2)

医療的ケアをカバーする保険に加入している 52 ( 8.0) 33 ( 9.2) 19 ( 6.5)

不明 156 (24.0) 100 (27.9) 56 (19.1)

全体 651 (100.0) 358 (100.0) 293 (100.0)

最後に

一般の平均寿命が延びるとともに、障害のある人についても長く生きられるようになった。し かし、加齢により障害はますます重度化し、さらに障害が引き起こす病気の結果としても思わぬ形 で、気管切開や人工呼吸器の装着が必要になる事態が起こりうる。そうなった時に、それまで地域 生活をしていた障害者が利用していたサービスが、看護師の手が足りないので対応できないという 理由で断られてしまったら、どうなるだろうか。彼らは、病院や療養施設や重症心身障害児施設な どに入所してケアを受けるべきなのだろうか。そのような施設に空きがないのも事実であるが、彼 らが地域で医療的ケアを受けながらグループホームや家族との生活を継続することはできないだろ うか。

このような問題に向き合うために、愛知県においても、重度の障害者に有意義な地域生活が保障 されることを願って、2002 年に「医療・福祉・保健・教育ネットワーク名古屋」(ネットワーク名 古屋)が設立された。ネットワークは過去 17 回の例会のうち,5 回が医療的ケアに関するテーマを 取り上げている。そして、2011 年 3 月には、「愛知県の重症心身障害児者の医療的ケアを考える」

というシンポジウムを主催し、愛知県の全地域から 174 名が参加した。シンポジストとしては、発 達センター医師、障害者施設支援員、地域の相談支援専門員、看護師、家族会代表、厚生労働省障 害福祉課長らがこの問題について熱心に討論を行った。

今回の調査では、重度障害者の地域生活を支えているホームヘルパーと施設の支援員を対象とし て、非医療職の立場で、医療的ケアを必要とするに至った重度障害者をどのようにケアすべきかに

(13)

ついての意見を求めた。

現に、多くの事業所や通所施設には医療的ケアを必要とする重度障害者の利用者が登録されてい て、必要な支援を受けていた。ホームヘルパーが通所施設に出向いて支援することもあるし、施設 支援員が家まで行って、施設の外で支援をするということも見られた。つまり、重度の障害者が地 域で生活し、本人と家族を支援するためには、ホームヘルプと通所サービスのどちらも欠くことの できない重要なものであり、互いに深く関係し合っているということが分かった。同様に施設では、

支援員が主治医や看護師の指導のもとに、医療職と協力し合って医療的ケアにあたっている。また 在宅では、訪問看護師とホームヘルパーがペアで訪問して家族を支えているという事実も明らかと なった。

障害者本人や家族が求めているというだけの理由で、非医療職が安易に医療的ケアを行うことは 危険であるだけではなく、違法行為にもなりうる。幸いに厚生労働省は医療的ケアに非医療職がか かわっていけるような方向性を示し始めている。しかし、それらは、事業所や施設やホームヘルパ ーや支援員のためではなく、あくまでも重度の障害者の要求に応じるための一歩でなければならな い。予想される障害を一つずつ克服して、重度の障害があっても、また、医療的ケアが必要になっ た時にも、最後まで地域で暮らしていけるような制度に成熟していって欲しいと強く願うものであ る。

参考文献

春見静子、「医療的ケアを必要とする障害者と家族への支援策に関する調査研究」 (厚生労働科学 研究費補助 障害者保健福祉総合研究事業 平成 19 年度―29 年度総合報告書) 2009 年 3 月 春見静子 「在宅での医療的ケアの人材に関する調査研究報告書」(独立行政法人福祉医療機構「長

寿・子育て・障害者基金」助成事業) 社団法人生活福祉研究機構 2010 年 3 月

春見静子 「医療的ケアを必要とする障害者と家族に対する支援」医療福祉研究 第 5 号 1-12 頁 愛知淑徳大学医療福祉学部 2009 年

春見静子 「医療的ケアを必要とする障害者の家族への支援―困難事例へのヒアリング調査―」 医 療福祉研究 第 6 号 69-79 頁 愛知淑徳大学医療福祉学部 2010 年

医療・福祉・保健・教育ネットワーク名古屋 「愛知県の重症心身障害児の医療的ケアを考える」

事業報告書 (独立行政法人福祉医療機構 平成 22 年度社会福祉振興助成事業 )2011 年 3 月

表 21  施設で医療的ケアを担当する職員は誰か  カテゴリー名  施設支援員( %)  看護師のみが行う  123 (42.0)  看護師の指導のもとに支援員も行う  141 (48.1)  研修を受けた支援員が行う  137 (46.8)  担当している支援員が行う  24 ( 8.2)  担当する職員はとくに決まっていない  18 ( 6.1)  その他  9 ( 3.1)  不明  8 ( 2.7)  非該当  0 ( 0.0)  全体  293 (100.0)  表 22  施設を利用する医療的ケ

参照

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