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- - ノルウェーにおける離婚後の子どもの養育と意見の尊重

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(1)

『人文コミュニケーション学科論集』

19, pp. 111-126. © 2015

茨城大学人文学部(人文学部紀要)

-家族保護課でのインタビュー調査を中心に-

  野口 康彦 青木  聡

要約

 本稿の目的は、

2015

2

月に行ったノルウェー・オスロ市内に位置する、子ども青少年家

族局(

Bufetat:

ブフェタット)を構成する機関である家族保護課の視察において、スタッフ

に対するインタビューと小冊子『私の意見はどうなるの?』を紹介しながら、ノルウェーに おける離婚後の子どもの養育と子どもの意見の尊重のあり方について理解を深めることであ る。また、ノルウェーにおける子どもの養育環境及び離婚の手続きや離婚後の面会交流の実 際について、複数の当事者に対するインタビューを通して、制度の現状や子どもの養育の実 態に関するリポートを行った。今回の視察によって、ノルウェーでは、法律婚あるいは同棲 婚にかかわらず、親の離婚後の子どもの養育をめぐる親と国の責務が明確にされており、ま た子どもの意見の尊重がなされている点が明らかになった。

1

.はじめに

 わが国では、子どもとの面会交流をめぐる父母間の紛争が顕在化しており、民間の面会交 流支援機関の援助を受けて、子どもとの面会交流の機会を持とうとする親も増えている(野 口,

2015

)。離婚後の親子の面会交流について民法に明文の規定は入ったものの、面会交流 に関する具体的なルールの設定が日本では十分でない。より良い心身の発達と子どもの利益 を実現するためだけではなく、親が子どもを養育する責務を全うするためにも、面会交流も 含めた離婚後の子どもの養育環境の整備は緊急的な課題である。そのためには、子どもの権 利擁護において国民の意識が高く、さらに法制度を整備している諸外国の現状について理解 を深めていくことも重要であろう。

 本稿の主な内容は、

2015

2

月に実施した、ノルウェー・オスロ市内に位置する子ども青 少年家族局(

Bufetat:

ブフェタット)構成する機関の一つである家族保護課(

Familievern:

ファ ミリーバーン)の視察の調査報告である。家族保護課のスタッフへのインタビューを紹介し、

また子ども向け小冊子『私の意見はどうなるの?』の内容の一部を参照しながら、ノルウェー における離婚後の子どもの養育と子どもの意見の尊重のあり方について理解を深めたい。ま

(2)

た、ノルウェーにおける子どもの養育環境、そして離婚の手続きや離婚後の面会交流の実際 について、複数の当事者に対するインタビューも行うことができた。これらの報告を通して、

日本における離婚後の親子の面会交流のあり方について、有用な示唆を得たい。なお、ノル ウェーを調査対象とした理由は、男女の平等と子どもの人権が尊重されている国でありなが らも、離婚後の子どもの養育支援をめぐる報告が極めて少ないことである。尚、ノルウェー 語の「

vern

」は「保護」という意味を持つため、本論ではファミリーバーンを「家族保護課」

と訳した。

2

.ノルウェーにおける子どもの養育支援体制

 ノルウェーの面積は

38.6

万平方キロメートルであり、日本とほぼ同じである。ノルウェー 外務省が発行している「ノルウェーデータ」(

2014

)によると、

2013

年の人口は約

510

万人 であり、日本で言えば福岡県の人口よりも若干多い程度である1。ノルウェーの付加価値税は、

食料品が

15

%で一般的にそれ以外の物は

25

%である(ホテル等観光に関係するもの、輸入 品は異なる)。また、収入によって所得税の違いはあるが、最も高い人で

50

%以上の所得税 が課せられる。ただし、収入自体も高額であり、

2014

年度版の「ノルウェーデータ」によ ると、産業別労働者の平均月間給与は、男性で

42,100

ノルウェークローネ(以下、

NOK

する。

1

クローネを

16

円とした場合、日本円で約

67

4

千円)、女性で

36,400NOK

(日本円で 約

58

2

千円)である。他の北欧諸国と同様に、ノルウェーは高税率と高福祉で知られてい るが、国の利益を社会的に分配する方策をとることで、安定した社会を形成していると言 えるだろう。なお、既婚カップルは

852,430

組に対して、サンボウエと呼ばれる同棲カップ ルは

286,362

組であった。ただし、同棲カップルについて

1990

年の

102,000

組と比較すると、

同棲カップルの数が

2.8

倍程度増えている。また、同性婚が認められており、男女ともに、

法律婚は

18

歳からできる。また、法律上、離婚後

1

年以上は結婚できない。

 『ノルウェーを知るための

60

章』(大島美穂・岡本健志編)を参照しながら、ノルウェー の教育制度を概観したい。ノルウェーの義務教育期間は

10

年となっており、

6

歳になる年に 義務教育機関に入学をする。最初の

7

年間が小学校であり、その後の

3

年間は中学校である。

年間の登校日数は日本の登校日数の

3

分の

2

程度となる

190

日であり、夏休みは

2

か月程度で ある(在ノルウェーの日本人の方へのインタビューでは、小学校の夏休みの宿題はないとい うことだった)。ノルウェーの教育において重要視されているのは学力だけでなく、「平等(男 女だけでなく、人種・宗教間の平等を含む)」、「民主主義」、「地域共同体」といった政治的 思想が学校では強調されているという。高校入試は存在せず、中学校で行われる筆記試験と 口頭試験の結果が入学審査に使用される。高校は

3

年制で、高等教育進学コースとなる普通 科と調理人などの職業科に分かれる。なお、小学校から高校までの授業は無料である。

(3)

 大学入試も高校入試と同じ方式で行われ、

2011

年には

25

万人が学生として登録されたと いう。ノルウェーの高等教育であるが、総合大学及び専門大学、そして私立の総合大学と専 門大学、それ以外に警察専門大学、軍事専門大学に分かれている。修士課程の成績が良好で あれば博士課程への進学が許可され、博士課程への学生には給与が支給される。基本的には 大学の授業料は無料であるが、すべての学生が国の教育ローンや基金を利用して奨学金や学 生ローンを受ける権利を持つ。

 なお、ノルウェーでも過去

20

30

年の間に移民の数が大幅に増えており、オスロ市内の 学校に通う児童の

40

%は移民系住民であるという。ノルウェー語を母語としていないため、

小学校の授業についていけない場合もあり、オスロ市内の

25

の義務教育機関にはノルウェー 語およびノルウェー社会を学ぶための「受け入れクラス」が設置されている。通常

1

年間こ の機関で勉強をした後に、一般クラスに編入されるという。

 

1978

年に男女平等法

Gender Equality Act

)が制定し、

1979

年より施行された。独立機 関である「男女平等オンブッド」(現在は平等・反差別オンブッド)が実施を行う。

1988

年 の男女平等法の改正では、「政府または地方自治体が任命するすべての公的な委員会は、少 なくとも一方の性が

40

%となるように構成されなければならない」とするクォータ制度が 導入された。父親による育児休暇制度が

1993

年に導入され、育児休暇のうち父親が

4

週間を 利用するものと示されており、その後段階的に

14

週にまで引き上げられたが、

2014

年に

10

週に短縮された。両親の育児休暇制度(

2014.7

月現在)であるが、産休前の給与

100

%受給 の場合は

49

週間、

80

%の場合は

59

週間となっている。また、両親併せて

3

年間の育児休暇の 取得も可能であるという。

 ノルウェーにおける育児支援政策を管轄しているのは、ノルウェー子ども・平等・社会省 である。同省は

1977

年に家族・平等局を前身とするが、子ども・家族省と再編・改称され るなどの経緯を経て、現在に至っている。

1981

年に「子どもオンブッド制度」が誕生した。

子どもオンブッドとは、青少年の利益を守るために任命された特別の委員で、必要な場合は いつでも電話をかけて相談することができる。

3

.インタビュー調査の結果と考察

1

)ノルウェーの子育て環境

①インタビューの調査協力者と方法

 ノルウェーにおける子育て環境について理解を深めるために、オスロ近郊に在住する

2

の日本人女性に対して、

2015

2

7

日にインタビューを行った。一人は、

3

人の子どもがい るAさんという

30

歳代の女性であり、もう一人は

2

人の子どもを持つBさんで、やはり

30

代の女性である。

2

人とも夫がノルウェー人であり、ノルウェーに転居して

6

年目を迎えて

(4)

いる。また、

2

人とも専業主婦である。なお、Aさんは、第

1

子を日本で産んでいるが、第

2

子と第

3

子はノルウェーで分娩を経験している。インタビューは半構造化的な質問項目を設 定し、

IC

レコーダーに録音した。なお、半構造化面接ではあるが、インタビュー調査の利 点を活かすために、調査協力者にかかわる固有の事情をできるかぎり反映されるような形式 で質問と応答を行った。以下に、

2

人へのインタビュー結果の概要をまとめた。

②インタビュー調査の結果の概要

1

)出産と産休に関する制度

 ノルウェーでは、無痛分娩が主流であるが、普通分娩を選べることもできる。出産の方法 は、ベッドでも水中でも可能であるが、入院期間は

2

3

日である。日本では入院期間中の

1

週間の間に病院のスタッフから授乳の仕方などを教わるが、ノルウェーでは聞かなければ何 も教えてくれなかった。出産前の健診はおおざっぱであり、

18

週目くらいに、

1

回しかエコー をとらない。出産手当金は、最初に日本円にすると

30

万円くらい出た。ただし、永住権と は関係がなく、個人番号を取得しておかないと、病院に受診もできないので、それを発行し てもらってから受診をした。出産についてはどのような方法をとっても全て無料になる。

 産休は分娩の

3

週間前から取得でき、専業主婦だと夫は

2

週間の育児休暇がある。第

1

子に 限らず、働いている場合は

100

%の給与保証があり、

1

年間休んでいても、必ず元のポジショ ンに戻ることができる。保育園は有料であり、オスロなどの都市部は子どもの数が多くて利 用できないこともあるが、地域を限定しなければ

100

%入所できる(なお、ノルウェーでは

1

年間育児休暇が取れるので、

0

歳児を預かる公立の保育園はない)。保育料は日本円にして 月に

5

万円くらいであり、公立も私立も変わらない。ノルウェーの保育所の開所時間は、

17

時あるいは

17

時半までで、両親のどちらかが迎えに行くことになっている。ノルウェーで は朝礼のような習慣もなく、

6

時に働き始めて

15

時には退出するというような働き方が可能 となるので、親は子どもを迎えに行くことができる。保育園も朝の

7

時か

7

時半に子どもの 受け入れをしている。

2

)ノルウェー人の家庭生活と子育ての環境について

 ノルウェーの子どもは、中学校の時点で将来の進路を考えるようだ。大学ではなくて、高 校で将来の仕事が決まる。高校まで学費は全て無料であり、小学校は教材費もかからないが、

学童保育の利用料は親の負担となる。小学校

1

年生の終了時間は、

13

時半であり、

10

時くら いにランチをする。普通の会社員もランチは

11

時くらいと食事の時間が早い。夜も

17

時か

18

時に食事をして、寝る前の

21

時から

22

時に夜食を食べる習慣がある。日曜日はショッピ ングセンターも閉まり、娯楽施設もないので、森に散歩をしに出かけたり、冬はクロスカン トリーをするなど健康志向が高い。ノルウェー人は家族で過ごす時間を大切にする傾向があ り、仕事によって家庭を犠牲にしたくないと考えるため、働く時間帯を変えたいと思ったら 仕事を変えるようだ。

 子どもの医療費は無料だが、薬代は負担する。専門にかかわらず、ノルウェーは主治医が

(5)

決まっている。なので、朝、子どもに熱が出たから受診したいと言うと、今日はいっぱいな ので

3

日後に来てくださいと言われたこともあった。子どもにとって経済的なメリットとし て、

16

歳になるまで、毎月約

1000

クローネ(日本円で約

16000

円)の子ども手当が出る。子 どもの習い事では、スポーツの人気がある。中学校に部活動がないので、地域のスポーツク ラブに入ることが多い。女子はハンドボールやバレーボール、男子はサッカーの人気がある。

もちろん、冬はスキーをする子どもも多い。

 ノルウェーの人は勉強よりも、学校では自分の生き方を見つけるという点が重要視されて いるようである。福祉的にも整っているので、競争心で上に行かせようというのもない。そ の一方で、ノルウェーには学歴社会の側面もあり、高卒と大学院卒では同じ仕事をしても給 与が違う。専門分化されており、例えば日本は文学部を卒業しても、異なる専門分野に就職 することができるが、ノルウェーでは勉強した分野にしか進学や就職ができないというのは ある。

 ノルウェーはヨーロッパの中でも経済が安定していて、就職率が高い。石油が出て、国自 体が潤っている。労働時間も短く残業もない。仕事を頑張りたい人には物足りないかもしれ ないが、家族とのんびり暮らしたい人には適するだろう。

3

)ノルウェーでの婚姻

 正式な婚姻と同居での制度の違いはなく、権利はほぼ、一緒である。結婚しないで同居す ることを、サンボウエと呼んでいる。サンボウエとは、直訳すると同棲という意味になる。

(AさんとBさんは、ビザの関係もあり法律婚である)ノルウェーに住んで、サンボウエで もビザがとれる。

③インタビューの考察

 石油などの天然資源に恵まれており、ノルウェーの国民の生活の質は世界でも最も豊かな 国の一つであると言える。インタビューから、ノルウェー人は高学歴志向があまりないとい う発言があったが、ノルウェーにおいて学校は学力を身に着けるばかりでなく、自国の文化 や歴史、そして自分の生き方を考える場所になっているからであろう。また、子育てをする ための柔軟な労働時間の設定や労働時間の短縮についても工夫がされており、子どものいる 家庭の生活環境を向上させるために、両親が仕事と家庭を両立させるための施策が展開され ていることへの理解も深まった。

2

)離婚後の親子の面会交流の実態

 離婚後の親子の面会交流の実際の一端を知るために、

2015

2

8

日に、ノルウェーに在 住する

2

人のノルウェー人男性にインタビューを行った。一人は、法律婚をせずに同棲によ る事実婚(サンボウエ)を経験したCさんであり、もう一人は法律婚後の離婚の手続き中で あるDさんである。調査の趣旨を説明したうえで同意書にサインをしてもらい、インタビュー を行った。なお、離婚後の親子の面会交流の実態について検証することがインタビューの目

(6)

的であるが、調査協力者にかかわる固有の事情をできるかぎり反映されるような形式で質問 と応答を行った。

①Cさんのインタビュー概要

1

)Cさんのプロフィール

 Cさんの年齢は

31

歳であり、両親ともにノルウェー人である。高校を卒業して、コピー 機の修理をする技術者として働いている。Cさんは

2011

年に結婚して、

2013

年に離婚した。

法律婚ではない、サンボウエだった。元パートナーはベトナム人で、

5

歳の娘がいるが、そ の子は元パートナーの前の夫の子どもである。

2

)子どもとの面会交流について

 別居する前に、ファミリーテラピーにいるサイコロジストを訪問して面談を受け、子ども との面会の取り決めをフィフティ・フィフティと決めた。フィフティ・フィフティは法律的 に決められているのではなく、お互いに話し合って決めた。

1

週間は元のパートナーで、

1

週間は自分のアパートに子どもは住み、そこから同じ学校に通っている。自分の家には娘の 部屋も用意している。離婚した後、子どもが転校するようなことのないように配慮している。

クリスマスや子どもの誕生日、夏休みの過ごし方は、元パートナーと話し合って、お互いの 意見が同意できるようにしている。子どもの誕生日には

3

人で過ごすこともあった。去年の 夏休みは、自分の両親と一緒に

1

週間ギリシャに旅行に行った。土日は、子どもと一緒に図 書館に行ったり、外出をしたり、公園で遊んだりしている。祖父母の家に行くこともある。

3

)子どもの養育について

 このままフィフティ・フィフティで子どもと会うのは、

18

歳までになる。子どもがフィ フティ・フィフティを変えて欲しいと言ってきたら、子どもの意見を聞くようにする。ノル ウェーでは、子どもは

12

歳になると母親か父親のどちらと一緒に住みたいのか、自分の意 見を示すことができる。子どもにとっては、両親がいた方がベターだと思う。

4

)サンボウエについて

 サンボウエとは、結婚はしていないが一緒に住んでいる状態をいう。結婚する前に同棲す る、トライアルみたいなもので、同居の期間は人によるが、

1

年とか

1

年半くらいだったり する。サンボウエは結婚する人のほとんどが経験しているのではないか。アパートを借りら れるようになってからではないと、サンボウエを始めることはできないので、サンボウエを 始める時期は働き始める

20

歳くらいからだろう。

②Dさんのインタビュー概要

1

)Dさんのプロフィール

 ノルウェー人の父と日本人の母親を持つDさんは、オスロ市内で日本製品を輸入する会 社を経営している。Dさんの国籍はノルウェーであるが、

4

歳まで日本の九州で生活をして おり、その後

12

歳までカナダで暮らし、そこからまた日本に戻ったという。Dさんは日本

(7)

の大学を卒業した後に、父親の勧めによって

23

歳の頃(

2002

年)にノルウェーに住むこと になった。元妻とはノルウェーで知り合い、結婚したのは

2004

年であった。妻が中国人で あったため、上海で仕事をしていた時期もあったが

2005

年にノルウェーに戻ってきたという。

2010

年に女児をもうけるが、現在は離婚を前提とした別居期間中である。

2

)ノルウェーでの結婚と離婚をめぐる手続きについて

 中国で婚姻届を提出したが、ノルウェーに転居した際に、中国語の証明書を英語に翻訳し て書類をフォルケレジッスル(国民番号を発行する国民登録署)に提出し受理された。金銭 的な問題が未解決なこともあり、妻との離婚は成立しておらず、別居期間になっている。別 居が決まった際に、役所に出向いて面談を受けた。

3

)別居期間中の子どもの養育について

 ノルウェーでは離婚して子どもがいる場合、子ども手当とひとり親手当てが出るが、離 婚せずに悪用する人もいるので、別居期間中の

1

年に

4

回以上訪問の訪問は禁止されている。

週ごとに分けるなど状況に応じて変えているが、月のうちの半分は子どもとの面会(同居)

にあてている。役所には

6

4

の割合で届け出をしており、その方が妻にわたる手当の額が 増えるからであるという。NAV(ノルウェー労働福祉局:

Norwegian Labour and Welfare

Administration

のホームページに計算式があり、子どもの面倒を何日見ているのか、何泊 父親のところにとまっているのかとか、そのような情報を入力して計算する。

 子どもとの受け渡しの方法は、例えば、妻が朝子どもを保育園に送っていき、自分が迎え に行く方法が多い。夫婦仲がうまくいかなくて別居に至った経緯もあり、妻とは会いたくな い時もあるが、子どものために話をするのは大切だと思う。昨年のクリスマスは

3

人で過ご した。また、仕事上、日本に渡航することがあるが、

2

回のうちの

1

回は娘を日本に連れて いくように妻と話し合っている。

 別居期間中の子どもの養育を難しく思うのは、忙しくて時間がないこともあり、料理のレ パートリーが少なく、娘に栄養が十分な食事を出してあげられない時である。また、

1

1

の交流の時間が多いので、娘が飽きているのではないかと思うことがある。ただ、別居して いる現在の状態よりも、問題を解決できずに夫婦が口論をしており、それを娘が見ていた時 期の方が問題だった。未就学児である娘が小学校に入学する際の学校の選択については、妻 と話し合って決めるのだが、子どもの住所が妻になっているので、彼女の方に権利がある。

③インタビューの考察

 ノルウェーではサンボウエという事実婚の形態があるが、同棲の際も役所に届け出をする ことによって、法律婚と同じ対応が子どもにも適用される。ちなみに、

2013

1

1

日では、

既婚カップル

852,430

組のうち子どものいるカップルが

341,730

組に対して、同棲カップルは

286,362

組のうち

157,863

組のカップルに子どもがいる(ノルウェーデータ

2014

)。また、オ スロ市内のアパート代が

2

あるいは

3

部屋で

7

NOK

(日本円で約

11

2

千円)程度であると いう点から、アパート代が高額であるため、サンボウエを始めるのには、ある程度の経済的

(8)

な基盤も必要であるとのことであった。なお、ノルウェーでは、男女ともに、法律婚は

18

歳から可能である。

18

歳未満だと中絶は無料であることから、日本でいうできちゃった婚 は「アンユージュアル」であるとCさんは言った。その発現の趣意は、ノルウェーはプロテ スタントが多いものの、宗教色は薄いからであるということだったが、結婚しないのも、や はり宗教色が薄いからではないかということであった。

 Dさんのインタビューでは、別居期間中の子どもとの面会や同居について、その実際を知 ることができた。新しい恋人もいるDさんにとって、離婚を前提とした別居期間を過ごして いるが、

1

年間のうちに離婚を取りやめる夫婦もいるのではないかと考えた。なお、Dさん はそのようにしていないが、別居期間中に新しい恋人と同居しても、離婚そのものには影響 がないという。なお、娘が生まれた際にDさんも育児休暇を取っているが、休んでいる間の 給与は国が出すということであり、男性にとってもノルウェーは子育てしやすい環境である と感じた。娘との同居については、料理など悩ましい問題もあるようであったが、「

3

人で家 族は成り立つものがある」というDさんの発言が印象に残った。

3

)家族保護課

①インタビューの手続き

 

2015

2

9

日に、子ども青少年家族局の

3

種類の窓口の

1

つである家族保護課を訪問した。

なお、子ども青少年家族局(

Bufetat

)は、

Barne

(子ども)、

Ungdoms

(青少年)、

Familie

(家 族)を合わせた用語であり、子ども・平等・社会省の下部組織となる行政機関である。子ど もや青少年、そして家族に関連する成長や発達の問題に、子ども青少年家族局は対応してい る。その他にも、子どもの福祉サービス、保護施設を探している保護者のいない未成年者、

家族カウンセリング、親教育、女性のシェルターと近親者による危機管理センター、適応、

青少年への情報のサービスについても対応している。なお、子ども青少年家族局はノルウェー

写真

1

 家族保護課の面接室の一室

(9)

5

つの地域に設置されており、各地域における家族保護課以外の窓口には、子ども保護課、

養子縁組課がある。

 オスロ市内の家族保護課では、午前

9

時から

12

時の

3

時間にわたって、

Toril Stray

氏(弁護 士)、

Yvonne Severinsen

氏(心理士)、

Arve Bjelland Grov

氏(心理士)に実務についてお話 を伺った。ノルウェー語を介したコミュニケーションが適切であると考えたため、ノルウェー 語に堪能な現地に在住する日本人である、ノードストッケ和美さんに通訳を依頼した。ノー ドストッケ和美さんの夫は大学教員をしていたノルウェー人であり、そして、子どもの相談 機関で弁護士として働いている娘がいる。ノルウェーでの生活も長く、また子どもの養育問 題をめぐる裁判に立ち会うなど、子どもの養育支援について経験と知識を有する方であった。

あらかじめ用意しておいた質問項目は、離婚後の子どもの養育の実際や子どもの意見の尊重 といった子どもの権利擁護等であったが、特に日本との制度や状況の違いに関しては自由に 話してもらうように心がけた。

②家族保護課の機能や役割と離婚の手続き

 行政機関としての家族保護課の機能や役割に関する

Toris

弁護士の説明は以下のようなも のであった。

 ノルウェーを

5

つの地域に分けて、地域ごとに子ども青少年家族局がある。オスロ市内で は、家族保護課の部署として子ども保護課、養子縁組課が設立されている。家族保護課はノ ルウェーに

49

か所あり、

1950

年代から作られた。スタッフの職務は家族が問題を抱えてい る時に支援をすることであり、カウンセリングや助言、そして調停を行う。ただし、家族保 護課の主な仕事は、麻薬などといった問題のない、いわゆる一般的な家族への支援である。

別居・離婚時において

16

歳になるまでの子どもがいる家族は、調停が入るように法律で決 められている。法的に

1

回の調停を受けることが義務付けられており、そこで合意ができな ければ、

6

回は無料で調停を受ける権利が父母に与えられている。家族保護課で調停を受け、

別居・離婚後の子どもの養育に関して父母が合意した後に、文書による離婚の手続の申請を 行い、最終的には県が申請書を受理する。しかし、正式に離婚するのには

1

年間別居の期間 が必要となる。

2

年以上別居している時は、離婚手続をしていなくても離婚になる。このよ うな手続きは夫婦法に基づいている。

 子ども法

31

条に、

7

歳から子どのも意見を聞くことになっており、

7

歳でも自分の意見を 言えるのであれば、離婚後の面会や同居に子どもの意見を取り入れる。夫婦が別居する際は、

子どもが週のうちに何日間どちらの親と過ごすなど、子どもの意見を聞くことになっている。

子どもの考えを聞くのは、裁判官や調停にかかわる専門家であり、子どもの意見を尊重する が、親も同意しなければいけない。

③離婚後のひとり親家庭への手当て金について

 別居した場合は、子ども手当が増額される。子どもがどこに住むかによって手当ての額が 違うので、それが議論のテーマにもなっている。その児童手当とは別に、一人で子どもを

(10)

育てる場合の手当てがある。それは子どもが

8

歳まで、期間は

3

年間であり、収入が

1

年間に

400

NOK

以上ある人は

0

になることもあるなど、手当金は収入によって違うが、児童手当 とひとり親手当てが

1

か月

2

NOK

(日本円で約

32

万円)の人もいる。子どもの滞在日数に よって手当ての金額が違うので、それも夫婦で話し合うが意見が食い違う時は、NAVが入っ てアドバイスや介入をする時がある。離婚後に子どもが

2

か所に住む場合、

1

か所を住所と して申請することが定められている。子どもに

2

つの住居がある場合、年間

4

NOK

の税金 の免除がある。なお、フォルケレジッスルという国民登録署があり、国民番号を発行してい る。ノルウェーには戸籍制度がなく、赤ちゃんが生まれればフォルケレジッスルに届け出て、

国民番号を発行してもらう。

④調停(メッケリン)の資格と職務について

 インタビューにおいて「メッケリン(調停、調停者)」という聞きなれない用語を頻繁に 耳にするため、調停の資格について

Toris

弁護士に確認した。また、他の業務のために

Toris

弁護士は中座したため、インタビューの続きは

Yvonne

さんと

Arve

氏に引き続き対応しても らった。

 調停者になるには認可証が必要であり、

1

年間のレクチャーの受講とその後に

1

年間の臨 床経験が必要となる。そして

2

回の試験を受けるなど、かなり厳しい条件がある。大学での 専攻は、ソーシャルワークであり、精神科であり、セラピストであり、弁護士もいるし、神 学の人もいる(ここで

Toris

弁護士は退席)。調停が法律で義務として定められているのは、

世界でもノルウェーが最初ではないか。アメリカではメディテーションで、レベルが深刻に なってからの介入だが、ノルウェーの場合は子どもを保護するという視点から、子どもの心 理的な問題を最初から予防的に保護していく。

 別居中の人を集めるプログラムの中に講習があって、テーマは離婚していても別居してい ても親ですよというテーマ。再び、双方が仲良くなりなさいとは言わないけど、自分を見つ けるというのがある。自分たちの体験を語る中で、自分の考えをまとめたり、新たな発見を 見つけたり、そういう時間を作る役割がある。家族保護課に電話をする人たちは、夫婦の共 同性がないとか、どうしたらいいんですかという、そういう程度の質問が

30

%くらいあって、

面接でアドバイスをしたり、カウンセリングをしたりする。そのような予防的なかかわりが 多い。カウンセリングと助言は記録に残すが、調停に関しては記録をせずに、来所した証明 書を発行する。それが児童手当の申請などに使用される。調停の記録をしない理由は、裁判 になった際に悪用されることがあり、中立的な立場を守るためにも記録は書かない。ただし、

裁判に呼ばれた時は、自分が記憶しているものを話す。

⑤ノルウェーにおける親の離婚を経験した子ども

 親に会いたくないと訴えたり、年齢が低い子どもへの対応について、

Yvonne

さんと

Arve

さんに質問をした。

 子どもが自分から家族保護課に相談するケースは、ほとんどない。ノルウェーでは、オン

(11)

ブッドやインターネットで子どもが相談できるシステムを作っているので、そのような機関 を子どもは利用しているのではないか。オスロには

15

の区があって、その区役所の中にも、

親が離婚した子どものグループとか、学校から案内を受けてやってくる子どももいるし、市 と区のレベルで親の離婚を経験した子どものケアをしている。ノルウェーは離婚率が

40

であり、親が離婚したり、別居することによって、ノルウェーの子どもたちは悩んでいる。

離婚するのが当たり前のようになっているが、子どもたちも悩んでいるのであって、離婚が 普通のようにはらないようにしようという議論がなされている。

⑥離婚後の親子の面会交流

 ほとんどのケースは協力的にやっているのではないか。再婚している人も多いので、私の 子ども、あなたの子どもというのが日常化されている。親が離婚して恥ずかしいというのは ないが、悩んでいる子どもはいる。

16

歳の女の子が、両親のどちらと住むかなどで悩んで いることが国内のニュースにもなった。同居のスタンダードなタイプは母親のところにいて、

週に

1

日、水曜日か木曜日は父親のところに行って、学校が終わってから金曜日から土日、

2

週間に

1

回はお父さんのところに行って、春休み、夏休みは半分に分けるのが普通のパター ン。最近、変わってきているのは、両親の半分ずつが増えてきている。子どもがまだ

6

か月 くらいで、お父さんとお母さんが半分ずつにしたいが合意できないというケースが増えてい る。ここで長く仕事をしているセラピストの経験によると以前に比べると父親の占める位置 が大きくなってきたという。

 

40

年くらい前のノルウェーも、子どもは親が離婚したことを恥ずかしいことと思っていた。

もちろん、子どもによっては恥ずかしいので友達にも言えない子どももいるが、以前ほどで はない。子どもの年齢も関係すると思うが、子どもの抱える悩みは両親の葛藤のレベルのあ り方が子どもに与える影響が大きい。年齢よりも親とのかかわりが大きい。ノルウェーで子 どもが母親を置いて出ることはない。半分は親としての権利があるので。女性が家を出ると いうのは、それは大きな問題だ。

⑦ノルウェーの人たちの離婚の原因は

 DVなど、日本で言われた内容は、ノルウェーの

50

年前。現在のノルウェーでは、女性 は仕事を持っているし、社会保障の制度も充実している。最大の原因は、コミュニケーショ ンがなくなったりするなど、

2

人が愛しあえなくなる、または、他に愛する人を見つけたな どの理由もある。

50

年前の夫婦の離婚は、夫の暴力が原因であったが、今は

2

人の愛情がな くなってきたというのがある。

⑧スタッフとして心がけていること

 一番大切な仕事は、親同士がコミュニケーションを良くするように方向づけて、お互いに 理解しあえるような協定を作ることであるが、予防とその後の指導によって、夫婦が互いに 交流できるようにすることが大切になる。親同士の理解の仕方によって子どもへのかかわり も違ってくる。

(12)

4

)小冊子『私の意見はどうなるの?』

 子どもの意見がどのように尊重されているのか、当事者である子どもにはどのように説明 をするのかについて、家族保護課で受け取った子ども向け小冊子『私の意見はどうなるの?』

を紹介したい(写真

2

)。『私の意見はどうなるの?』の大きさはB

5

版よりも若干小さなサイ ズであり、

3

つの章から構成され、総ページ数は

13

ページである。ノルウェー語から日本語 への翻訳は、日本に在住するノルウェー人であり、日本語に堪能な

Michal Berg

氏に依頼した。

なお、『私の意見はどうなるの?』という小冊子のノルウェー語のタイトルは「

HVA MED MIN MENING DA ?

」であり、英語では「

What about my opinion?

」となる。

写真

2

 『私の意見はどうなるの?』

私の意見はどうなるの?

自分の親が別居するのを親から聞きましたか?

これは親が別々に住むことを決意したときに読むパンフレットです。

【混乱する気持ち】

自分の親が別々に住む、もう仲良しじゃなくなるときは苦しいときもある。あなたはもしか したら悲しんでいる、不安を感じる、絶望している、もしくは怒りを感じているかもしれま せん。(途中省略)

親が別居する選択までたどり着く前、自分の親が沢山喧嘩していたことを見た子どもいます。

(13)

そのときは親が別々に住むことでやっと落ち着ける子どももいます。

親の喧嘩をみた子どももいれば、まったく見ていないのに、親が別れるときもあります。こ の場合、なぜ親が一緒に住めないのが「子どもに」わからないときがあります。

これから別居して一緒に住まないといっても、あなたの親でいるのはかわりないよ、これは 忘れてはいけません。私のせいで親はこれから一緒に住みたくないのかなと悩んでいる子ど ももいます。でもそれは違います。二人の間には大人の関係のことで何かがあったから、別々 に暮らしたいと思って決めたことです。そいうときは、話せる相手見つけるのが大切です。

これから住むところの学校に通うことになるでしょう。これから一緒に住まない方の親とど のくらいの頻度で会えるのかも決まります。親によって、決め方も、決めた内容も様々です。

(途中省略)

【私が主役。私の意見はどうなるの?】

親が離婚を決意したとき、子どもについてのことは基本的に親が決めますが、あなたが

7

歳 になったら、今までの生活状況について親はあなたの意見を聞く義務があります。言い換え るとあなたには意見を言う権利があります。あなたの親は全てを決める役を務めますが、必 ずあなたの意見を聞いてから決断しなければなりません。同時に、両親が決めたことについ て、何も言いたくない場合や分からない場合は、あなたが無理やり意見を言わなくてもいい のです。この権利があなたを守っています。あなた次第です。親はあなたが何も言いたくな い場合も、その権利に敬意を払わなくてはなりません。

(途中省略)

自分にとって何が大切かを親に伝えることは大事。あなたが安心できる環境を作るのは親の 責任です。

(途中省略)

【親が意見を合わせられないときはどうなる?】

親が話し合っても子どもが誰と住むのを決められないときもある。その理由は子どもにとっ て、また親自身にとって何が一番良いか決めかねているからです。あなたの親がこのことを 決められないときは誰かに手伝ってもらうことが大事です。家族センターで仲介をしてくれ る方に相談するか、裁判官に判断してもらうこともできます。裁判官は専門家(子どもにつ いて詳しいエキスパート)からアドバイスを聞くこともあります。この三者(仲介、裁判官、

専門家)の中の人があなたに意見や考え事を聞きに来ることもあるでしょう。あなたの意見 を誰か話すのはあなたの権利、その反面、何も言いたくないときは、それでもいいのです。

5

)家族保護課でのインタビューの考察

 家族保護課の機能を端的に表現するならば、離婚の紛争も含めた個別の男女間紛争のカウ

(14)

ンセリングによって、子どもの福祉と利益を担保する機関であると言える。このような意味 では、子ども青少年家族局の管轄する部署の中でも家族保護課の担う機能は、一般家庭の相 談であり、例えば虐待事案はバーンナ・バーンと呼ばれる他の機関が担当していることが分 かった。当事者の方のインタビューにおいて、Cさんが「別居する前に、ファミリーテラピー にいるサイコロジストを訪問して面談を受けた」、またDさんは「義務付けられているので、

別居が決まった際に、役所に出向いて面談を受けた」と述べているが、おそらく該当する機 関が家族保護課であると思われる。子ども手当や税金など、経済的な事情が関与する点もあ るが、離婚後の子どもの養育について、親同士が話し合うことを法的に義務付けられている のは、子どもの利益が担保されやすくなる制度であると言えよう。

 子ども向け小冊子『私の意見はどうなるの?』においては、別居・離婚後の親子の面会の 取り決めや親の養育責務の所在など、子どもの権利や意見の尊重について明記されており、

別居・離婚後の子どもへの社会的な支援が分かりやすく説明されている。『私の意見はどう なるの?』にも示されているように、法律では

7

歳からの子どもの意見を親は聞くことになっ

ており(

Toris

弁護士のインタビューでは、子どもが意見を言えるのであれば

7

歳とは限らな

い)、子どもは両親の所有物ではなく、社会の一員という考え方が反映されているのではな いかと考えた。

4

.まとめと今後の展望

 短いノルウェーでの滞在日数ではあったが、

17

時を過ぎると、ベビーカーを押す男性の 姿を多く見た。男女問わず、仕事か家庭かではなく、仕事も家庭も大事にしているように見 受けられた。ノルウェーの社会保障に詳しい上掛(

2008

)は、ノルウェーはモノやお金(そ れを手に入れるための競走)によって豊かというよりも、子育てや家族の形成を通じて、女 性も男性も自分の人生を自由に生きることができるという意味で人生の質が高いと述べてい る。豊かな資源によりもたらされた健全な財政と充実した社会保障によって、離婚後の子育 てをめぐる環境の整備や子どもの権利擁護が実現されているのだと言えよう。

 また、ノルウェーではサンボウエという同性婚が普及していることを実感したが、法律婚 の子どもと同棲婚の子どもは社会制度上の扱いにおいては全く同じである。ノルウェーでは、

0

歳から

18

歳までの子どもを「バーン」と呼び、子どもが

18

歳になるまでの親と国の責任が 意識されているようであった。ノルウェー人であるCさんのインタビューにもあったように、

ノルウェーでは、結婚の形態の如何によらず、子どもが

18

歳になるまでは両親は責任を持 つという意識が強いように思われた。このように、たとえ、両親が離婚しても、子どもへの 責任は父親と母親が継続して持つという文化的な背景に加えて、国もそのための政策を打ち 出している点にノルウェーの離婚後の子どもの養育支援の特徴があるのだろう。

(15)

 子どもの意見の尊重を謳うなど、ノルウェーにおいて離婚後の子どもの権利が保障されて いることや離婚後の子どもの養育環境に対する国民の意識の高さや法制度の整備については 既述してきた通りであるが、その一方で、『パパと怒り鬼』にみるような、子ども虐待や家 庭内暴力の実情に関する調査を行うことはできなかった。ノルウェーは、

1981

年に世界で 初めて子どもオンブッドを設立した国でもあるので、子どもオンブッドが子どもの虐待や家 庭内暴力に対してどのような機能を有しており、そして活動をしているのか、関係機関への 視察を行ってみたい。また、

Arve

氏へのインタビューにおいて、親の離婚においては子ど もの年齢よりも親同士の葛藤が子どもの心理発達に影響を及ぼすという発言があり、その点 については当事者へのインタビューも可能であれば試みたい。さらに、オスロ市内において 路上生活者の姿を多く目にしたことから、ノルウェーの人口の約

1

割以上を占めるようになっ た移民(ノルウェーデータ

2014

)の家族や子どもの養育環境についても関心を持った。特に、

北欧以外の中東や東欧からの移民については、経済的・社会的平等、平等な権利と義務、寛 容で差別のない社会をどのように実現しようとしているのか、ノルウェー国内においても議 論がされていると聞いた。機会があれば、移民の子どもを支援する相談機関にも訪問をして みたいと考えた。

【付記】

 本調査は文部科学省の科学研究費助成事業(研究課題番号:

25350921

)の助成を受けて 行ったものです。ノルウェーでの関係機関への訪問においては、ノルウェー王国大使館のス タッフの皆様に多大なご尽力をいただきましたこと、厚く御礼を申し上げます。また、家族 保護課への訪問の際に、通訳の労を取っていただいた、ノードストッケ和美様にも感謝する とともに、現地でのインタビュー調査にご協力していただいた皆様にもあらためて感謝の意 を申し上げます。

【文献】

広井多鶴子(

2006

)親権の登場-明治前期の親の位地-.実践女子大学人間社会学部紀要,

2

61-79

上掛利博(

2008

)ノルウェーの父親が受けられる子育て支援政策.エクセレント・ノルウェー・イコー

ル,

5

54-59

,紀伊国屋書店.

野口康彦(

2015

)離婚後の親子の面会交流と子どもの心理発達-

2

つの支援機関のインタビュー調査か ら-.茨城大学人文コミュニケーション学科論集,

18

45-62

大島美穂・岡本健志編(

2014

)ノルウェーを知るための

60

章.明石書店.

上村昌代(

2012

)離婚後の子どもの共同養育に向けて-共同親権・共同監護をめぐる問題-.京都女

(16)

子大学大学院現代社会研究科紀要,

6

33-58.

【参考資料】

ノルウェーデータ 

2014

 ノルウェー外務省

毎日新聞

2013

12

24

日付朝刊「論説委員が行く 男女平等後押しノルウェーの制度 働くから産め る」

内閣府男女共同参画局

www.gender.go.jp/research/kenkyu/sekkyoku/.../sec3-1-1.pdf 2015

5

4

日最終閲覧

ノルウェー王国大使館HP

www.norway.or.jp

【注】

1

 人口移動調査「福岡県」平成

27

1

参照

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